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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20240222BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/34 101A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019138985
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021020173
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-501845(JP,A)
【文献】特開2017-018876(JP,A)
【文献】国際公開第2005/095289(WO,A1)
【文献】特開2003-033790(JP,A)
【文献】特表平07-507714(JP,A)
【文献】特表2017-519630(JP,A)
【文献】特開2003-010874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28 - 3/34
3/02 - 3/10
11/00 - 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する排水処理装置において、
前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するアンモニア酸化細菌と、
前記アンモニア性窒素及び前記酸化された亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成するアナモックス細菌が活性汚泥によって包含されている汚泥包含菌と、
前記排水の上向流を形成するカラムであって、前記汚泥包含菌を、前記上向流によって前記カラムの内部に滞留する滞留菌と、前記カラムの外部に流出する流出菌とに分級するカラムと、を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記排水処理装置が、前記排水に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する第1の処理槽と、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素を含む排水が前記第1の処理槽から送水されるとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する第2の処理槽と、を備え、
前記第1の処理槽は、前記アンモニア酸化細菌と前記汚泥包含菌と前記カラムとを有し、
前記第2の処理槽は、前記アナモックス細菌を有することを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記滞留菌の比重は前記流出菌の比重よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記カラムにおける上向流の線速度は100m/day以上1000m/day以下に制御されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記第1の処理槽は、前記流出菌を含む排水の上向流を形成し、前記流出菌を当該上向流によって分級する他のカラムをさらに有し、前記他のカラムは、前記流出菌を、前記他のカラムの内部に滞留する他の滞留菌と、前記他のカラムの外部に流出する他の流出菌とに分級し、前記他の滞留菌の比重は前記他の流出菌の比重よりも大きいことを特徴とする請求項記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記他のカラムにおける上向流の線速度は50m/day以上500m/day以下に制御されていることを特徴とする請求項5記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記第1の処理槽から前記第2の処理槽に送水される排水に含まれるアンモニア性窒素濃度及び亜硝酸性窒素濃度の比率が1.5:1~1:1であり、又は、前記第1の処理槽から前記第2の処理槽に送水される排水の全窒素濃度が500mg-N/L以下であることを特徴とする請求項2、5及び6のいずれか1項に記載の排水処理装置。
【請求項8】
排水に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する排水処理装置であって、前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するアンモニア酸化細菌と、前記アンモニア性窒素及び前記酸化された亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成するアナモックス細菌が活性汚泥によって包含されている汚泥包含菌と、前記排水の上向流を形成し、前記汚泥包含菌を前記上向流によって分級するカラムと、を有する排水処理装置を用いた排水処理方法において、
前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化する酸化ステップと、
前記汚泥包含菌を、前記上向流によって前記カラムの内部に滞留する滞留菌と、前記カラムの外部に流出する流出菌とに分級する分級ステップと、
前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する生成ステップと、を有することを特徴とする排水処理方法。
【請求項9】
前記排水処理装置が、前記排水に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する第1の処理槽と、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素を含む排水が前記第1の処理槽から送水されるとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する第2の処理槽と、を備え、
前記酸化ステップ及び前記分級ステップは前記第1の処理槽において実行されるとともに、前記生成ステップは前記第2の処理槽において実行されることを特徴とする請求項8記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水に含まれる窒素成分を除去する排水処理装置及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排水に含まれている窒素成分、具体的に、アンモニアを構成するアンモニア性窒素及び亜硝酸を構成する亜硝酸性窒素を窒素ガスに変換するアナモックス反応が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1において、まず、アンモニアを含む排水が第1の排水及び第2の排水に分割され、アンモニアを酸化して亜硝酸を生成するアンモニア酸化細菌が第1の排水に混合され、有機物を必要としない独立栄養細菌であるアナモックス細菌が第2の排水に混合される。
【0003】
次いで、空気が第1の排水に供給され、これにより、第1の排水に含まれているアンモニアはアンモニア酸化細菌によって酸化されて亜硝酸が生成される。続いて、第1の排水で生成された亜硝酸と、第2の排水に含まれるアンモニアとに基づくアナモックス反応(式1)がアナモックス細菌によって進行され、これにより、窒素ガスが生成される。
【0004】
【数1】
【0005】
排水に含まれるアンモニアを安定的に除去するためにアナモックス反応を制御する必要があり、一般的に、細菌によって実行される生物反応の制御は細菌の生菌数に基づいて制御され、細菌の生菌数は、例えば、平板上で細菌を培養する平板培養法によって細菌を培養した上で計測される。ところが、アナモックス細菌は平板培養法では成長しないため、リアルタイムでアナモックス細菌の生菌数を把握することができず、その結果、アナモックス細菌の生菌数に基づいてアナモックス反応を制御することはできない。これに対応して、アナモックス反応は、除去すべきアンモニアの濃度に基づいて第1の排水で生成される亜硝酸の濃度を制御することにより、間接的に制御される。
【0006】
例えば、除去すべきアンモニアの濃度が上昇したとき、第1の排水に供給される空気がアンモニアの濃度の上昇に応じて増量され、これにより、生成される亜硝酸の濃度は上昇し、除去すべきアンモニアの濃度が低下したとき、第1の排水に供給される空気がアンモニアの濃度の低下に応じて減量され、これにより、生成される亜硝酸の濃度は低下する。このようにして、生成された亜硝酸は緩やかに第2の排水に供給され、アナモックス反応は制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-235287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、除去すべきアンモニアの濃度が、例えば、1000mg-N/L以上のとき、第1の排水に供給される空気量の制御が難しく、所望の濃度以上の亜硝酸が生成される場合がある。換言すると、アナモックス反応に必要な亜硝酸濃度よりも高い濃度の亜硝酸が第1の排水から第2の排水に供給される場合がある。アナモックス細菌は高濃度の亜硝酸、例えば、20mg-N/Lに暴露されることによって不活性化するため、第2の排水に含まれる亜硝酸性窒素濃度が20mg-N/L以上のとき、第2の排水に含まれているアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は窒素ガスに変換されず、その結果、第2の排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は除去されないという問題があった。
【0009】
すなわち、アナモックス細菌を用いて排水に含まれている窒素成分を安定的に除去することができないという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、アナモックス細菌を用いて排水に含まれている窒素成分を安定的に除去することができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の排水処理装置は、排水に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する排水処理装置において、前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するアンモニア酸化細菌と、前記アンモニア性窒素及び前記酸化された亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成するアナモックス細菌が活性汚泥によって包含されている汚泥包含菌と、前記排水の上向流を形成するカラムであって、前記汚泥包含菌を、前記上向流によって前記カラムの内部に滞留する滞留菌と、前記カラムの外部に流出する流出菌とに分級するカラムと、を有することを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の排水処理方法は、排水に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するとともに、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する排水処理装置であって、前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化するアンモニア酸化細菌と、前記アンモニア性窒素及び前記酸化された亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成するアナモックス細菌が活性汚泥によって包含されている汚泥包含菌と、前記排水の上向流を形成し、前記汚泥包含菌を前記上向流によって分級するカラムと、を有する排水処理装置を用いた排水処理方法において、前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化する酸化ステップと、前記汚泥包含菌を、前記上向流によって前記カラムの内部に滞留する滞留菌と、前記カラムの外部に流出する流出菌とに分級する分級ステップと、前記アンモニア性窒素及び前記亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを生成する生成ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アナモックス細菌を用いて排水に含まれている窒素成分を安定的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る排水処理装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図2図1の排水処理装置によって実行される窒素除去処理の手順を示すフローチャートである。
図3図1の排水処理装置の変形例を示すブロック図である。
図4図3の排水処理装置によって実行される窒素除去処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る排水処理装置10の構成を概略的に示すブロック図である。
【0017】
図1の排水処理装置10は、排水に含まれるアンモニア性窒素を除去する窒素除去処理を実行するために用いられ、処理槽10a(第1の格納手段)及び処理槽10b(第2の格納手段)を備える。処理槽10aは、散気装置11(変換手段)、ポンプP1、及びカラム12(分級手段)を有するとともに、酸素存在下でアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に変換するアンモニア酸化細菌(変換手段)を有し、ポンプP1及びカラム12は接続されている。処理槽10bはポンプP2及び窒素除去領域13を有し、窒素除去領域13にはアナモックス細菌(他の生成手段)が存在している。
【0018】
窒素除去処理が施される排水(以下、「原水」という。)が処理槽10aに充水され、散気装置11が駆動する。散気装置11は空気を原水に供給し、これにより、アンモニア酸化細菌は原水に含まれるアンモニアを酸化して亜硝酸を生成する。すなわち、アンモニアを構成するアンモニア性窒素は亜硝酸を構成する亜硝酸性窒素に変換され、原水はアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を含む排水(以下、「第1の中間排水」という。)に変化する。
【0019】
ポンプP1が駆動すると、第1の中間排水が処理槽10aを循環し、第1の中間排水はポンプP1からカラム12に供給される。カラム12は、例えば、円筒管であり、カラム12の一端は処理槽10aの底部に固定されることによって閉塞され、カラム12の他端は処理槽10aに充水されている第1の中間排水の水面から突出して開口している。したがって、カラム12は処理槽10aの底部に固定される固定部12aと、第1の中間排水の水面から突出している開口部12bとを有する。
【0020】
また、カラム12は、固定部12aの周辺にポンプP1から第1の中間排水をカラム12の内部に供給するための供給部12cと、開口部12bの周辺に供給部12cからカラム12の内部に供給された第1の中間排水を流出する流出部12dとを備える。第1の中間排水は供給部12cからカラム12の内部に供給され、固定部12aから開口部12bの方向に流れる上向流12e(分級手段)をカラム12の内部に形成し、流出部12dからカラム12の外部に流出する。上向流12eの線速度はポンプP1によって制御されている。本実施の形態において、例えば、上向流12eの線速度は100m/day以上1000m/day以下の範囲内で制御されるのがよい。
【0021】
処理槽10aには活性汚泥(保護手段)に包含されたアナモックス細菌(以下、「汚泥包含菌」という。)が存在している。第1の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は、汚泥包含菌を構成する活性汚泥を通過してアナモックス細菌(生成手段)に到達する。アナモックス細菌はアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素に基づいて窒素ガスを産生して第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する。
【0022】
汚泥包含菌は、上向流12eがカラム12の内部を通過したとき、上向流12eの線速度に応じて分級される。具体的に、汚泥包含菌は、上向流12eがカラム12の内部を通過したときにカラム12の内部に滞留する滞留菌(第1の窒素除去手段)と、上向流12eがカラム12の内部を通過したときに流出部12dから流出する流出菌(第2の窒素除去手段)とに分級される。したがって、滞留菌においてアナモックス細菌を包み込む活性汚泥の量は、大抵の場合、流出菌においてアナモックス細菌を包み込む活性汚泥の量よりも多い。そのため、アナモックス細菌が滞留菌及び流出菌のそれぞれの中心に位置し、滞留菌及び流出菌が高濃度の亜硝酸に暴露されるとき、滞留菌のアナモックス細菌は流出菌のアナモックス細菌よりも高濃度の亜硝酸から隔離されているため、不活性化し難い。そのような滞留菌はカラム12の内部で第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する機能を十分に発揮することができる。
【0023】
原水が処理槽10aに充水されるとともに、散気装置11及びポンプP1が駆動されてから一定時間が経過し、第1の中間排水が所定の基準を充足するとき、所定の基準を充足する第1の中間排水は、第2の中間排水として処理槽10bに送水される。本実施の形態において、所定の基準は、例えば、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素等の無機態窒素化合物濃度に基づいて決定される。具体的に、第1の中間排水のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度との比率が1.5:1~1:1になるようにアンモニア性窒素が低減されたとき、第1の中間排水は所定の基準を充足し、第2の中間排水として処理槽10aから処理槽10bに送水される。
【0024】
処理槽10bが第2の中間排水によって充水されると、処理槽10bのポンプP2が駆動し、第2の中間排水は処理槽10bを循環する。第2の中間排水は、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を有し、処理槽10bを循環するとき、窒素除去領域13を通過する。窒素除去領域13は、例えば、アナモックス細菌が付着した担体を有する。アナモックス細菌を付着させる担体には、例えば、樹脂成形体、活性炭、又は不織布等が用いられる。窒素除去領域13において、アナモックス細菌は第2の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素に基づくアナモックス反応(式1)に従って窒素ガスを産生する。窒素ガスは第2の中間排水から放出され、その結果、第2の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は除去される。
【0025】
処理槽10aから処理槽10bへ送水された第2の中間排水は所定の基準を充足する第1の中間排水である。所定の基準を充足する第1の中間排水は原水に含まれるアンモニア性窒素及びこれに伴って生成された亜硝酸性窒素が処理槽10aにおいて予め処理されているため、高濃度の亜硝酸を含まない。したがって、窒素除去領域13のアナモックス細菌は第2の中間排水によって不活性化しない。
【0026】
図2は、図1の排水処理装置10によって実行される窒素除去処理の手順を示すフローチャートである。
【0027】
図2において、まず、酸素存在下でアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に変換するアンモニア酸化細菌を含む原水が処理槽10aに充水され、散気装置11が駆動される(S21)。散気装置11は駆動して空気を原水に供給し、アンモニア酸化細菌は原水に含まれるアンモニアを酸化して亜硝酸を生成する。すなわち、アンモニアを構成するアンモニア性窒素は亜硝酸を構成する亜硝酸性窒素に変換され、原水は第1の中間排水に変化する(変換ステップ)。
【0028】
次いで、ポンプP1が駆動し、第1の中間排水を、供給部12cを経由してカラム12の内部に供給する(S22)。第1の中間排水がカラム12の内部に供給されると、上向流12eが形成される(S23)。なお、図2の窒素除去処理では、上向流12eの線速度は150m/dayで制御されている。
【0029】
ところで、処理槽10aには汚泥包含菌が存在し、汚泥包含菌にはカラム12の内部に滞留する滞留菌と、カラム12の外部に流出する流出菌とがある。汚泥包含菌は、第1の中間排水がカラム12の内部に供給され、上向流12eの影響を受けつつもカラム12の内部に滞留する滞留菌と、上向流12eの影響を受けてカラム12の外部に流出する流出菌とに分級される。すなわち、汚泥包含菌は、上向流12eの線速度に応じて滞留菌及び流出菌に分級される(分級ステップ)。したがって、一般的に、滞留菌の比重は流出菌の比重よりも大きく、滞留菌を構成する活性汚泥の量は流出菌を構成する活性汚泥の量よりも多い。
【0030】
滞留菌はカラム12の内部の第1の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する(S24)。具体的に、カラム12の内部の第1の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は、滞留菌を構成する活性汚泥を通過してアナモックス細菌に到達する。アナモックス細菌は滞留菌を構成する活性汚泥を経由して到達したアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素から窒素ガスを産生し、カラム12の内部の第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する(生成ステップ)。
【0031】
流出菌は、流出菌を構成する活性汚泥の量が滞留菌を構成する活性汚泥の量よりも少ないため、滞留菌よりも外部の亜硝酸濃度に影響を受けやすい。したがって、カラム12の外部に流出した流出菌が存在する領域の亜硝酸濃度が高濃度(例えば、200mg-N/L以上)のため、流出菌によるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の除去は期待することができない。
【0032】
続いて、処理槽10aを充水する第1の中間排水が所定の基準を充足するか否かを判別する(S25)。本実施の形態において、第1の中間排水のアンモニア性窒素濃度が、S21~S24の各処理が実行されることによって第1の中間排水のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度との比率が1.5:1~1:1になるように低減されたとき、第1の中間排水は所定の基準を充足する。
【0033】
S25の判別の結果、第1の中間排水が所定の基準を充足していないと判別されたとき、本処理はS25に戻り、第1の中間排水が所定の基準を充足していると判別されたとき、第1の中間排水は第2の中間排水として処理槽10bに送水される(S26)。
【0034】
処理槽10bが第2の中間排水によって充水されると、処理槽10bのポンプP2が駆動し、第2の中間排水は処理槽10bを循環して窒素除去領域13を通過する(S27)。第2の中間排水は、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を有し、窒素除去領域13は、例えば、アナモックス細菌が付着した担体を有する。したがって、窒素除去領域13において、アナモックス細菌は第2の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素に基づくアナモックス反応(式1)に従って窒素ガスを産生し、第2の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去し(S28)、本処理は終了する。
【0035】
図2の窒素除去処理によれば、散気装置11が駆動され(S21)、アンモニア性窒素を有する原水はアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を有する第1の中間排水に変化し、滞留菌は第1の中間排水が有するアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素に基づいてカラム12の内部で窒素ガスを産生し、第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する(S24)。このとき、滞留菌は活性汚泥がアナモックス細菌を包含することによって構成されているので、高濃度の亜硝酸が原水のアンモニアから生成されても、高濃度の亜硝酸が直ちにアナモックス細菌に暴露するのを防止することができ、もって、アナモックス細菌が不活性化するのを防止することができる。
【0036】
また、汚泥包含菌は上向流12eによって滞留菌及び流出菌に分級される。滞留菌を構成する活性汚泥の量は流出菌を構成する活性汚泥の量よりも多く、汚泥包含菌が分級されることにより、滞留菌がカラム12の内部に存在し、流出菌はカラム12の外部に存在する。すなわち、滞留菌はカラム12の内部でアナモックス細菌を亜硝酸から保護しつつ窒素除去処理を実行するので、アナモックス細菌が不活性化することなく長期間アンモニア性窒素を窒素ガスに変換することができ、もって、アナモックス細菌を用いて排水に含まれている窒素成分を安定的に除去することができる。
【0037】
さらに、第1の中間排水のアンモニア性窒素濃度は処理槽10aで十分に低減され、その結果、第1の中間排水は第2の中間排水として処理槽10bに送水されるので、処理槽10bでのアナモックス細菌への負荷を低下することができる。
【0038】
図3は、図1の排水処理装置10の変形例を示すブロック図である。
【0039】
図3の排水処理装置30は、その構成、作用が図1の排水処理装置10と基本的に同じであり、2つ(複数)のカラム12,31を備える点で図1の排水処理装置10と異なる。以下、図1の排水処理装置10と重複した構成、作用については説明を省略し、異なる構成、作用についての説明を行う。
【0040】
図3の排水処理装置30は、カラム12,31を備え、カラム31(他の分級手段)はカラム12に接続されている。カラム31は、例えば、円筒管であり、カラム31の一端は処理槽10aの底部に固定されることによって閉塞され、カラム31の他端は処理槽10aに充水されている第1の中間排水の水面から突出して開口している。したがって、カラム31は処理槽10aの底部に固定される固定部31aと、第1の中間排水の水面から突出している開口部31bとを有する。
【0041】
また、カラム31は、固定部31aの周辺にカラム12から第1の中間排水をカラム31の内部に供給するための供給部31cと、開口部31bの周辺に供給部31cからカラム31の内部に供給された第1の中間排水を流出する流出部31dとを備える。第1の中間排水は供給部31cからカラム31の内部に供給され、固定部31aから開口部31bの方向に流れる上向流31e(他の分級手段)をカラム31の内部に形成し、流出部31dからカラム31の外部に流出する。本実施の形態において、上向流31eの線速度はポンプP1によって制御されているが、上向流31eの線速度を独立して制御するポンプ等の制御手段が設けられてもよい。また、本実施の形態において、上向流12e,31eは異なる線速度であることを前提とし、例えば、上向流12eの線速度は100m/day以上1000m/day以下の範囲内で制御し、上向流31eの線速度は50m/day以上500m/day以下の範囲内で制御するのがよい。
【0042】
ポンプP1が駆動すると、第1の中間排水は、供給部12c、カラム12の内部、流出部12d、供給部31c、及びカラム31の内部を経由して流出部31dからカラム31の外部に流出する。このとき、カラム12の内部に存在する汚泥包含菌は、上向流12eによって滞留菌及び流出菌に分級され、流出菌は第1の中間排水と共にカラム31の内部に供給される。カラム31の内部に供給された流出菌は上向流31eの線速度に応じて再度分級される。
【0043】
具体的に、流出菌は、上向流31eがカラム31の内部を通過したときにカラム31の内部に滞留する他の滞留菌(第3の窒素除去手段)と、カラム31の外部に流出する第1の中間排水と共に流出する他の流出菌(第4の窒素除去手段)とに分級される。したがって、他の滞留菌はカラム31の内部の第1の中間排水に分散されるとともに、他の流出菌はカラム31の外部に流出した第1の中間排水に分散される。
【0044】
そうすると、滞留菌はカラム12の内部の第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去し、他の滞留菌はカラム31の内部の第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する。
【0045】
具体的に、カラム12の内部の第1の中間排水のアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は滞留菌を構成する活性汚泥を通過してアナモックス細菌に到達し、そのアナモックス細菌は到達したアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素から窒素ガスを産生し、カラム12の内部の第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する。カラム31の内部の第1の中間排水のアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は他の滞留菌を構成する活性汚泥を通過してアナモックス細菌に到達し、そのアナモックス細菌は到達したアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素から窒素ガスを産生し、カラム31の内部の第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する。
【0046】
原水が処理槽10aに充水されるとともに、散気装置11及びポンプP1が駆動されてから一定時間が経過し、第1の中間排水が所定の基準を充足するとき、所定の基準を充足する第1の中間排水は、第2の中間排水として処理槽10bに送水される。
【0047】
図4は、図3の排水処理装置30によって実行される窒素除去処理の手順を示すフローチャートである。図4のS21~S28の処理は図2のS21~S28の処理と同一であるため、以下において、図2の処理と異なる点のみ説明する。
【0048】
図4において、カラム12の内部に存在する汚泥包含菌はカラム12の内部に形成された上向流12eの線速度に応じて滞留菌及び流出菌に分級され(S23)、滞留菌は上向流12eを形成する第1の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去し(S24)、流出菌は第1の中間排水と共に流出部12d及び供給部31cを経由してカラム31の内部に供給される。カラム31の内部に供給された第1の中間排水は上向流31eを形成し、カラム31の内部に供給された流出菌は上向流31eの線速度によって再度分級される(S41)。なお、図4の窒素除去処理では、上向流12eの線速度は200m/dayで制御され、上向流31eの線速度は100m/dayで制御されている。
【0049】
具体的に、カラム31の内部に供給された流出菌は、カラム31の内部に形成された上向流31eの線速度に応じてカラム31の内部に滞留する他の滞留菌と、カラム31の外部に流出する他の流出菌とに分級される。すなわち、流出菌は、上向流31eの線速度に応じて他の滞留菌及び他の流出菌に分級される。したがって、一般的に、他の滞留菌の比重は他の流出菌の比重よりも大きく、例えば、他の滞留菌を構成する活性汚泥の量は他の流出菌を構成する活性汚泥の量よりも多い。
【0050】
他の滞留菌はカラム31の内部の第1の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する(S42)。具体的に、カラム31の内部の第1の中間排水に含まれるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素は、他の滞留菌を構成する活性汚泥を通過してアナモックス細菌に到達する。アナモックス細菌は他の滞留菌を構成する活性汚泥を経由して到達したアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素から窒素ガスを産生し、カラム31の内部の第1の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去する。その後、本処理はS25に進む。
【0051】
図4の処理によれば、カラム31の内部に供給された流出菌は上向流31eの線速度によって再度分級される(S41)。これにより、滞留菌、他の滞留菌、及び他の流出菌の各汚泥包含菌は、滞留菌がカラム12の内部に分布し、他の滞留菌がカラム31の内部に分布し、他の流出菌がカラム31の外部に流出した第1の中間排水に分布するように分級される。
【0052】
通常、滞留菌を構成する活性汚泥の量は他の滞留菌及び他の流出菌のそれぞれを構成する活性汚泥の量よりも多く、他の滞留菌を構成する活性汚泥の量は他の流出菌を構成する活性汚泥の量よりも多い。したがって、高濃度の亜硝酸が滞留菌、他の滞留菌、又は他の流出菌に暴露したとき、滞留菌を構成するアナモックス細菌は、他の滞留菌を構成するアナモックス細菌及び他の流出菌を構成するアナモックス細菌よりも不活性化し難く、他の滞留菌を構成するアナモックス細菌は、他の流出菌を構成するアナモックス細菌よりも不活性化し難い。
【0053】
一方、他の滞留菌を構成するアナモックス細菌は、滞留菌を構成するアナモックス細菌よりも窒素除去処理を効率的に実行する。他方、他の流出菌は、他の流出菌を構成する活性汚泥の量が滞留菌及び他の滞留菌のそれぞれを構成する活性汚泥の量よりも少ないため、滞留菌及び他の滞留菌よりも外部の亜硝酸濃度に影響を受けやすい。したがって、カラム31の外部に流出した他の流出菌が存在する領域の亜硝酸濃度が高濃度(例えば、200mg-N/L以上)のため、他の流出菌によるアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の除去は期待することができない。
【0054】
すなわち、カラム12,31が配置されることにより、処理槽10a内部の亜硝酸濃度はカラム12の内部、カラム31の内部、及びカラム31の外部に流出した第1の中間排水の3つの領域に分割され、滞留菌、他の滞留菌、及び他の流出菌が各領域の亜硝酸濃度に応じて分布される。その結果、滞留菌及び他の滞留菌は各領域の亜硝酸から適切に保護されるとともに、各領域での窒素除去処理を効率的に実行するので、カラム12,31が配置されている排水処理装置30はカラム12のみが配置されている排水処理装置10よりも効率的な窒素除去処理を実行することができる。
【0055】
本実施の形態において、処理槽10bは、窒素除去領域13に存在するアナモックス細菌が第2の中間排水からアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を除去している。第2の中間排水が高濃度の亜硝酸を含むとき、窒素除去領域13のアナモックス細菌は不活性化するが、原水に含まれるアンモニア性窒素及びこれに伴って生成された亜硝酸性窒素は処理槽10aで予め処理され、所定の基準を充足する第1の中間排水が第2の中間排水として処理槽10bに送水されるので、窒素除去領域13のアナモックス細菌は高濃度の亜硝酸を含まないように制御された第2の中間排水によって不活性化することはない。
【0056】
また、図2及び図4のS25の処理において、第1の中間排水のアンモニア性窒素濃度が第1の中間排水のアンモニア性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度との比率が1.5:1~1:1になるように低減されたときに所定の基準を充足しているとしたが、第1の中間排水の全窒素濃度が、例えば、500mg-N/L以下のときに所定の基準を充足しているとしてもよい。この場合も、また、処理槽10bでのアナモックス細菌への負荷を低下することができる。
【0057】
ところで、従来の排水処理装置において、原水に含まれるアンモニア性窒素が1000mg-N/L以上のとき、第2の排水に混合されたアナモックス細菌は不活性化する場合があったが、本実施の形態の排水処理装置10,30を用いることによってアナモックス細菌は不活性化することなく原水に含まれるアンモニア性窒素は除去される。実際に、全窒素濃度2000mg-N/Lの原水が排水処理装置10,30の処理槽10aに供給されたとき、アンモニア性窒素濃度及び亜硝酸性窒素濃度のそれぞれが500mg-N/Lである全窒素濃度が1000mg-N/Lの第1の中間排水が得られ、その後、処理槽10bのアナモックス細菌によって第2の中間排水の全窒素濃度が100mg-N/Lまで低下した。すなわち、原水の窒素成分は排水処理装置10,30によって95%除去され、その結果、排水処理装置10,30はアナモックス細菌が不活性化する恐れのある全窒素濃度1000mg-N/L以上の原水から窒素を除去する際に使用することができることがわかった。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
10 排水処理装置
10a,10b 処理槽
11 散気装置
12 カラム
12e 上向流
図1
図2
図3
図4