(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】赤外線測定システム
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
G01J1/02 H
(21)【出願番号】P 2019166300
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 邦之
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-021764(JP,A)
【文献】特開2010-216817(JP,A)
【文献】特開2010-032292(JP,A)
【文献】特開昭52-060674(JP,A)
【文献】特開平02-066415(JP,A)
【文献】特公昭46-000400(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第109506786(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0238741(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0132809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-1/60
G01J 5/00-5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間と内部空間との間の熱の伝達を低減する断熱壁と、前記外部空間に位置する
熱源から放射される赤外線を前記内部空間の集光位置に集光するレンズが備えられた測定窓と、前記集光位置に赤外線センサの赤外線入射部を保持する保持部と、前記内部空間の温度を所定の温度に制御する温度制御部とを備える恒温槽と、
前記外部空間に備えられ前記測定窓に対して赤外線を放射する熱源と、
前記内部空間の前記保持部に保持され、前記レンズが集光する前記熱源から発せられる赤外線のエネルギー量を検出する赤外線センサと、
を備え、
前記熱源は、平面熱源であり、
前記赤外線センサは、二次元配列された複数の画素を備え、前記画素は、それぞれ前記熱源から発せられる赤外線のエネルギー量を検出し、
前記レンズは、前記熱源から放射された赤外線が直接入射する位置
であって前記恒温槽が有する開放穴に備えられ、
前記レンズは正のパワーを有する凸レンズであ
り、
前記レンズは、前記恒温槽の前記内部空間でありかつ前記赤外線センサの画角に含まれる空間である内部視野空間と、前記恒温槽の前記外部空間でありかつ前記赤外線センサの画角に含まれる空間である外部視野空間との間に位置し、
前記レンズは凸メニスカス型レンズであり、
前記内部視野空間のうち少なくとも一部が前記恒温槽の外形と前記レンズとの間に位置し、
前記保持部は、前記赤外線センサが備える赤外線入射部の少なくとも一部を、前記恒温槽が有する開放穴より前記レンズに近い位置に保持する、
赤外線測定システム。
【請求項2】
前記熱源は黒体炉である
請求項1に記載の赤外線測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線測定装置に備えられる光学系自身の熱エネルギーが測定結果に影響を与えることが問題となっていた。この問題を解決するための技術として、光学系自身の熱エネルギー量を測定し、赤外線センサが測定した赤外線量を補正する環境温度補正技術が知られている。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術による環境温度補正技術では、赤外線センサの周囲温度を所定温度に制御した状態で、黒体炉から放射された熱エネルギー量を測定する。赤外線センサを温度制御可能な恒温槽の内部空間に配置し、黒体炉を恒温槽の外部空間に配置した場合、恒温槽の内部空間から恒温槽の外部空間に備えられた黒体炉が放射する赤外線のエネルギー量を検出するため、赤外線センサの画角に基づいた大きさの赤外線透過部を備えることが考えられる。しかしながら赤外線センサの画角に基づいた大きさの赤外線透過部を備えることにより、恒温槽内部の熱が外部に放射される問題が生じていた。
【0005】
すなわち、従来手法によると、赤外線センサの環境温度を所望の温度に制御した状態で温度測定をする場合、恒温槽内の温度管理が容易でないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、恒温槽内の温度管理が容易な赤外線測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る赤外線測定システムは、外部空間と内部空間との間の熱の伝達を低減する断熱壁と、前記外部空間に位置する熱源から放射される赤外線を前記内部空間の集光位置に集光するレンズが備えられた測定窓と、前記集光位置に赤外線センサの赤外線入射部を保持する保持部と、前記内部空間の温度を所定の温度に制御する温度制御部とを備える恒温槽と、前記外部空間に備えられ前記測定窓に対して赤外線を放射する熱源と、前記内部空間の前記保持部に保持され、前記レンズが集光する前記熱源から発せられる赤外線のエネルギー量を検出する赤外線センサと、を備え、前記熱源は、平面熱源であり、前記赤外線センサは、二次元配列された複数の画素を備え、前記画素は、それぞれ前記熱源から発せられる赤外線のエネルギー量を検出し、前記レンズは、前記熱源から放射された赤外線が直接入射する位置であって前記恒温槽が有する開放穴に備えられ、前記レンズは正のパワーを有する凸レンズであり、前記レンズは、前記恒温槽の前記内部空間でありかつ前記赤外線センサの画角に含まれる空間である内部視野空間と、前記恒温槽の前記外部空間でありかつ前記赤外線センサの画角に含まれる空間である外部視野空間との間に位置し、前記レンズは凸メニスカス型レンズであり、前記内部視野空間のうち少なくとも一部が前記恒温槽の外形と前記レンズとの間に位置し、前記保持部は、前記赤外線センサが備える赤外線入射部の少なくとも一部を、前記恒温槽が有する開放穴より前記レンズに近い位置に保持する赤外線測定システム。
【0008】
また、本発明の一態様に係る赤外線測定システムにおいて、前記熱源は黒体炉である。
【0009】
また、本発明の一態様に係る赤外線測定システムにおいて、前記レンズは、前記恒温槽の前記内部空間でありかつ前記赤外線センサの画角に含まれる空間である内部視野空間と、前記恒温槽の前記外部空間でありかつ前記赤外線センサの画角に含まれる空間である外部視野空間との間に位置する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る赤外線測定システムにおいて、前記レンズは、凸メニスカス型レンズであり、前記内部視野空間のうち少なくとも一部が前記恒温槽の外形と前記レンズとの間に位置する。
【0011】
また、本発明の一態様に係る赤外線測定システムにおいて、前記レンズは、前記内部視野空間側の面が平面である平凸レンズである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、恒温槽内の温度管理が容易な赤外線測定システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態における赤外線測定システムの一例を示す図である。
【
図2】実施形態における恒温槽の一例を示す図である。
【
図3】実施形態における平凸型レンズを使用した場合の一例を示す図である。
【
図4】実施形態における凸メニスカス型レンズを使用した場合の一例を示す図である。
【
図5】従来技術における測定対象熱源が放射する赤外線を恒温槽内に配置された赤外線センサが検出する方法を示す図である。
【
図6】従来技術における測定対象熱源が放射する赤外線を恒温槽内に配置された赤外線センサが複数位置から検出する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、従来技術について説明する。
[従来技術について]
従来技術によると、所定の温度環境下で赤外線センサの出力を測定する場合、赤外線センサを、温度制御可能な恒温槽の内部空間に配置し、黒体炉を恒温槽の外部空間に配置していた。赤外線センサは恒温槽の内部空間から、恒温槽の外部空間に備えられた黒体炉が放射する赤外線のエネルギー量を検出する。恒温槽の内部空間に備えられた赤外線センサは、恒温槽の外部空間に備えられた黒体炉が放射する赤外線のエネルギー量を検出するため、恒温槽の壁には赤外線センサの画角に基づいた大きさの赤外線透過部を備えることがあった。
【0015】
図5は、従来技術における測定対象熱源が放射する赤外線を恒温槽内から赤外線センサが検出する方法を示す図である。
従来技術において、赤外線センサ90は、恒温槽91の内部空間に備えられる。測定対象熱源95は、恒温槽91の外部空間に備えられる。赤外線センサ90は、恒温槽91の外部空間に備えられる測定対象熱源95が放射する赤外線のエネルギー量を検出する。そのため、赤外線の透過率が高い赤外線透過部材93を開放穴92に配置することが考えられる。
赤外線センサ90は、赤外線透過部材93を通して測定対象熱源95が放射する赤外線のエネルギー量を検出する。そのため、赤外線センサ90の画角に応じて、開放穴及び赤外線透過部材93を大きくしなければならない。
したがって、開放穴及び赤外線透過部材93を大きくすればするほど、恒温槽91の内部空間から外部空間へ赤外線が放射されてしまっていた。
【0016】
図6は、従来技術における測定対象熱源が放射する赤外線を恒温槽内から赤外線センサが複数位置から検出する方法を示す図である。
例えば、赤外線センサ90の画角が赤外線透過部材93の大きさを超えてしまう場合には、センサの配置位置を光軸が異なる複数位置に配置し、それぞれの配置位置からの測定結果を得ることにより、赤外線センサの画角全てについて測定することが考えられる。
赤外線センサ90の画角が赤外線透過部材93よりも広い場合には、全ての画角を複数回に分けて測定するため、赤外線センサ90を複数位置に移動し、それぞれの位置からの測定を行う。この場合、赤外線センサ90の画角に併せた大きさの、測定対象熱源95を使用しなければならない。
別の方法として、センサが向く角度を変えながら複数回の測定を行うことも考えられるが、複数回の測定を行わなければならず、測定に時間がかかる。また、赤外線センサ90の画角に併せた大きさの、測定対象熱源95を使用しなければならない。
【0017】
以下、本実施形態についてについて説明する。
[本実施形態について]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[赤外線測定システム100の概要]
図1は、実施形態における赤外線測定システム100の一例を示す図である。
赤外線測定システム100は、赤外線センサ10と、恒温槽20と、測定対象熱源40とを備える。赤外線測定システム100において、赤外線センサ10は恒温槽20の内部空間に備えられる。赤外線センサ10は、恒温槽20の外部空間に備えられる測定対象熱源40から放射される赤外線のエネルギー量を検出する。
以降の説明において、x軸、y軸及びz軸の三次元直交座標系(xyz軸座標系)によって赤外線センサ10、恒温槽20及び測定対象熱源40の向きを示す場合がある。
【0018】
赤外線センサ10は、一例としてアレイ型赤外線センサである。赤外線センサ10は、不図示の画素配列面内にアレイ状に配列された複数の画素を備える。ここでアレイ状に配列されるとは、一例として、赤外線検出素子がy軸方向とz軸方向とに等間隔において配列されることである。複数の画素が配列された画素配列面は、x軸に垂直に配置される。複数の画素のそれぞれは赤外線検出素子である。つまり、赤外線センサ10とは、複数の赤外線検出素子がアレイ状に配列された赤外線センサである。
本実施形態において、赤外線センサ10は赤外線センサ窓部11を備えている。赤外線センサ10は、赤外線センサ窓部11を通して、測定対象熱源40が放射する赤外線のエネルギー量を検出する。つまり赤外線センサ窓部11は、赤外線センサ10の赤外線入射部である。
【0019】
本実施形態において、赤外線センサ10は、検出した赤外線のエネルギー量を電圧値として出力する。
なお、赤外線センサ10は、不図示のCPU又はアナログデジタルコンバータ等の信号変換ICを備えていてもよい。赤外線センサ10は、検出した赤外線のエネルギー量をシリアル通信信号や、パラレル通信信号等のデジタルデータに変換して出力してもよい。赤外線センサ10が出力するデジタルデータは、有線接続による出力であるか、無線接続による出力であるかを問わない。
【0020】
恒温槽20は、外部空間と内部空間との間の熱の伝達を低減する断熱壁を備えている。本実施形態において、恒温槽20は断熱壁を六面に備える直方体である。恒温槽20は不図示の温度制御部を備えており、温度制御部は内部空間の温度を所定の温度に制御する。赤外線測定システム100は、温度制御部により恒温槽20の内部空間を所定の温度に制御することにより、低温環境下又は高温環境下等の所定の温度環境下での環境試験(信頼性評価試験等)を行うことが可能である。
【0021】
図2に示すように、恒温槽20は、断熱壁のうち一面に開放穴21を有する。以後、開放穴21を測定窓とも表す場合がある。恒温槽20は、開放穴21を有することにより、恒温槽20の内部空間と恒温槽20の外部空間とが結合され、内部空間と外部空間との間での物質の往来が可能となる。
【0022】
図1に戻って、レンズ30について説明する。本実施形態において、恒温槽20は、開放穴21にレンズ30を備える。
レンズ30は、赤外線透過率が高い部材により構成される。赤外線透過率が高い部材とは、フッ化カルシウム、フッ化バリウム又は硫化亜鉛等である。
レンズ30は、恒温槽20の外部空間に位置する物体から放射される赤外線を、恒温槽20の内部空間の集光位置SPに集光する。つまり、レンズ30は正のパワーを有する凸レンズである。
恒温槽20の内部空間には、レンズ30の集光位置SPに赤外線センサ10の赤外線入射部が位置するように、赤外線センサ10を保持する保持部12が備えられる。赤外線センサ10は恒温槽20が備える保持部12により、恒温槽20の内部空間に保持され、レンズ30が集光する測定対象熱源40から発せられる赤外線のエネルギー量を検出する。
【0023】
測定対象熱源40は、恒温槽20の外部空間に備えられ、測定窓に対して赤外線を放射する熱源である。測定対象熱源40は、恒温槽20のレンズ30を備える面に対向して、距離Lの位置に設置される。
一例として、測定対象熱源40は黒体炉である。本実施形態において、測定対象熱源40は平面黒体炉であるとして説明する。
【0024】
黒体とは、黒体自体の温度に対応した赤外線量の赤外線を放射するものであり、予め設定された温度に保持される。黒体炉では、ノイズの影響がない状態での温度測定が可能である。
平面黒体炉とは、平面形の黒体面を有する黒体炉である。
黒体炉には、平面黒体炉の他に、球形をした黒体面を有するキャビティ型黒体炉も含まれる。本実施形態においては、測定対象熱源40は平面黒体炉である場合について説明する。
【0025】
測定対象熱源40は、赤外線センサ10によって観察される面である放射面OPを備える。
測定対象熱源40が備える放射面OPの高さH及び幅Wは、赤外線センサ10のセンサ画角SA、レンズ30の屈折率及び距離Lによって決定される。
【0026】
[平凸型レンズを使用した場合の実施形態の一例]
図3は、実施形態における平凸型レンズを使用した場合の一例を示す図である。
赤外線測定システム101は、赤外線センサ10と、恒温槽20と、測定対象熱源40とを備える。本実施形態において、恒温槽20は、開放穴21に平凸型レンズ31を備える。
図3における赤外線測定システム101は、
図1におけるx-y平面である。
【0027】
平凸型レンズ31は、熱源側レンズ面32及びセンサ側レンズ面33を備える。平凸型レンズ31は、熱源側レンズ面32が凸曲面、センサ側レンズ面33が平面で構成され、正のパワーを有するレンズである。
熱源側レンズ面32は、平凸型レンズ31が恒温槽20の外部空間に面する側の面であり、センサ側レンズ面33は、平凸型レンズ31が恒温槽20の内部空間に面する側の面である。
平凸型レンズ31は、レンズ30の一例である。
【0028】
内部視野空間AR1は、恒温槽20の内部空間であり、かつ赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である。
拡張外部視野空間AR2は、恒温槽20の外部空間であり、かつ平凸型レンズ31による屈折を考慮しない場合の赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である。
外部視野空間AR3は、恒温槽20の外部空間であり、かつ平凸型レンズ31による屈折を考慮する場合の赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である。外部視野空間AR3は、拡張外部視野空間AR2に含まれる。
平凸型レンズ31は、内部視野空間AR1と外部視野空間AR3との間に位置する。つまり、平凸型レンズ31は、恒温槽20の内部空間でありかつ赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である内部視野空間AR1と、恒温槽20の外部空間でありかつ赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である外部視野空間AR3との間に位置する。
平凸型レンズ31は、内部視野空間側の面であるセンサ側レンズ面33が平面である。
【0029】
測定対象熱源40は、恒温槽20の外部空間に位置し、恒温槽20から距離L離れた位置に設置される。本実施形態において、測定対象熱源40は、平面黒体炉である。
測定対象熱源40の放射面OPによって放射される赤外線は、平凸型レンズ31によって集光位置SPに集光される。平凸型レンズ31によって集光される赤外線は、赤外線センサ10の赤外線センサ窓部11に入射する。赤外線センサ10は、測定対象熱源40によって放射される赤外線のエネルギー量を検出する。
【0030】
熱源幅W2は、本実施形態における測定対象熱源40のy軸方向における幅である。測定対象熱源40から放射される赤外線は、平凸型レンズ31により屈折し、赤外線センサ10の赤外線センサ窓部11に入射する。熱源幅W2の最小値は、距離L、センサ画角SA及び平凸型レンズ31の屈折率により決定される。
【0031】
熱源幅W1は、恒温槽20が平凸型レンズ31を備えない場合の、測定対象熱源40のy軸方向における幅である。センサ画角SAを有する赤外線センサ10は、平凸型レンズ31による屈折を考慮しない場合、測定対象熱源40の放射面OPにおいて熱源幅W1の幅を検出可能である。したがって、熱源幅W1の最小値は、距離L、センサ画角SAにより決定される。
【0032】
ここで、熱源幅W2は、熱源幅W1に比べて小さい。したがって、本実施形態において赤外線測定システム101は、平凸型レンズ31を備えない場合の測定対象熱源の大きさに比べて、より小さい測定対象熱源を使用することが可能となる。
【0033】
[凸メニスカス型レンズを使用した場合の実施形態の一例]
図4は、実施形態における凸メニスカス型レンズを使用した場合の一例を示す図である。
赤外線測定システム102は、赤外線センサ10と、恒温槽20と、測定対象熱源40とを備える。本実施形態において、恒温槽20は、開放穴21に凸メニスカス型レンズ35を備える。
図4における赤外線測定システム102は、
図1におけるx-y平面である。
【0034】
凸メニスカス型レンズ35は、熱源側レンズ面36及びセンサ側レンズ面37を備える。凸メニスカス型レンズ35は、熱源側レンズ面36及びセンサ側レンズ面37のいずれもが曲面で構成され、正のパワーを有するレンズである。
熱源側レンズ面36は、凸メニスカス型レンズ35の外部空間側であり、センサ側レンズ面33は、凸メニスカス型レンズ35の内部空間側である。
凸メニスカス型レンズ35は、レンズ30の一例である。
【0035】
内部視野空間AR1は、恒温槽20の内部空間であり、かつ赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である。
拡張外部視野空間AR2は、恒温槽20の外部空間であり、かつ凸メニスカス型レンズ35による屈折を考慮しない場合の赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である。
外部視野空間AR3は、恒温槽20の外部空間であり、かつ凸メニスカス型レンズ35による屈折を考慮する場合の赤外線センサ10のセンサ画角SAに含まれる空間である。外部視野空間AR3は、拡張外部視野空間AR2に含まれる。
凸メニスカス型レンズ35は、内部視野空間AR1と外部視野空間AR3との間に位置する。本実施形態において内部視野空間AR1のうち少なくとも一部は、恒温槽20の外形と凸メニスカス型レンズ35との間に位置する。
【0036】
測定対象熱源40は、恒温槽20の外部空間に位置し、恒温槽20から距離L離れた位置に設置される。本実施形態において、測定対象熱源40は、平面黒体炉である。
測定対象熱源40によって放射される赤外線は、凸メニスカス型レンズ35によって集光位置SPに集光される。凸メニスカス型レンズ35によって集光される赤外線は、赤外線センサ10の赤外線センサ窓部11に入射する。赤外線センサ10は、測定対象熱源40によって放射される赤外線のエネルギー量を検出する。
【0037】
熱源幅W3は、本実施形態における測定対象熱源40のy軸方向における幅である。測定対象熱源40から放射される赤外線は、凸メニスカス型レンズ35により屈折し、赤外線センサ10の赤外線センサ窓部11に入射する。熱源幅W3の最小値は、距離L、センサ画角SA及び凸メニスカス型レンズ35の屈折率により決定される。
【0038】
熱源幅W1は、恒温槽20が凸メニスカス型レンズ35を備えない場合の、測定対象熱源40のy軸方向における幅である。センサ画角SAを有する赤外線センサ10は、凸メニスカス型レンズ35による屈折を考慮しない場合、測定対象熱源40の放射面OPにおいて熱源幅W1の幅を検出可能である。したがって、熱源幅W1の最小値は、距離L、センサ画角SAにより決定される。
【0039】
ここで、熱源幅W3は、熱源幅W1に比べて小さい。したがって、本実施形態において赤外線測定システム102は、凸メニスカス型レンズ35を備えない場合の測定対象熱源の大きさに比べて、より小さい測定対象熱源を使用することが可能となる。
【0040】
[実施形態の効果のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の赤外線測定システム100は、恒温槽20と、測定対象熱源40と、赤外線センサ10とを備える。恒温槽20は、開放穴21に、レンズ30を備える。レンズ30は外部空間に配置された熱源が放射する赤外線を恒温槽20の内部空間へ集光する。赤外線センサ10は、レンズ30により集光された赤外線のエネルギー量を検出する。恒温槽20は、開放穴21にレンズ30を備えることにより、開放穴21を小さくすることができる。つまり、恒温槽20は、開放穴21を小さくすることにより、内部空間から外部空間に対する熱の放出を抑えることができる。
したがって、本実施形態において、恒温槽内の温度管理が容易な赤外線測定システムを提供することができる。
【0041】
また、従来技術による方法を用いた温度測定では、赤外線センサの環境温度を所定の温度に制御した状態で対象熱源の温度測定をするため、赤外線センサ及び対象熱源を恒温槽の内部空間に配置した状態で測定することも考えられる。その場合、赤外線センサ及び測定対象熱源を収容可能な大きさの恒温槽を用意しなければならなかった。赤外線センサ及び対象熱源を共に恒温槽の内部空間に配置する場合、大型の恒温槽を用いなければならず、大型の恒温槽を用意する手間と費用がかかってしまう。
本願発明によれば、測定対象熱源40を恒温槽20の外部空間に配置する。測定対象熱源40を恒温槽20の内部空間に配置する場合と比較し、恒温槽20を小さくすることが可能となる。したがって本願発明によれば、大型の恒温槽を用意する手間と費用がからない。
【0042】
また、従来技術による方法を用いた温度測定では、赤外線センサの画角に対応する大きさの測定対象熱源を用いなければならなかった。例えば、広角の赤外線センサを用いた測定をする場合には、赤外線センサの画角に応じて、測定対象熱源も大きな熱源を用いなければならなかった。また、赤外線センサの画角よりも測定対象熱源が小さい場合、センサの配置位置を光軸が異なる複数位置に配置し、それぞれの配置位置からの測定結果を得ることにより、赤外線センサの画角全てについて測定していた。もしくは、センサが向く角度を変えながら複数回の測定を行っていた。
本実施形態によれば、レンズ30は、外部空間に位置する物体から放射される赤外線を内部空間の集光位置に集光する凸レンズである。したがって、レンズ30により物体が放射する赤外線を集光することにより、本実施形態における赤外線測定システム100は、一度の測定で、赤外線センサ10の画角全てについて測定を行うことができる。
また、本実施形態における赤外線測定システム100では、レンズ30により物体が放射する赤外線を集光することにより、測定対象熱源40の大きさを小さくすることができる。
【0043】
また、上述した実施形態によれば、測定対象熱源40は黒体炉である。
本実施形態では、赤外線センサ10は内部空間の温度を所定の温度に制御可能な恒温槽20の内部空間に備えられ、測定対象熱源40から発せられる赤外線のエネルギー量を検出する。
したがって、赤外線測定システム100は、所定の温度環境下での、赤外線センサ10の特性を測定することができる。
【0044】
また、上述した実施形態によれば、レンズ30は内部視野空間AR1と、外部視野空間AR2との間に位置する。レンズ30が内部視野空間AR1と、外部視野空間AR2との間に位置するため、レンズ30と赤外線センサ10との間には、空気が流れる空間が確保される。恒温槽20の内部空間には、空気が流れる空間が確保されるため、空気が滞留しない。
したがって、本実施形態における恒温槽20は、空気が滞留しないため、温度調整が容易である。
【0045】
また、上述した実施形態によれば、レンズ30は、凸メニスカス型レンズである。凸メニスカス型レンズ35は、内部視野空間のうち少なくとも一部が恒温槽20の外形と凸メニスカス型レンズ35との間に位置するように配置される。凸メニスカス型レンズ35を使用した場合は、平凸型レンズ31を使用した場合と比較して、赤外線センサ10をより凸メニスカス型レンズ35に近い位置に配置することができる。赤外線センサ10をより凸メニスカス型レンズ35に近い位置に配置することができるため、より高い屈折率を得ることができる。
したがって、測定対象熱源40をより小さくすることができる。
【0046】
また、上述した実施形態によれば、レンズ30は、内部視野空間側の面が平面である平凸レンズである。レンズ30の内部視野空間側の面が凸曲面である場合と比較して、空気の滞留が生じない。したがって、レンズ30に平凸レンズを使用した場合、レンズ30の内部視野空間側の面が凸曲面である場合と比較して、温度調整が容易である。
また、平凸レンズは凸メニスカス型レンズと比較して、安価である。そのため、平凸レンズを使用する場合、凸メニスカス型レンズと比較して安価に赤外線測定システム100を構成することができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0048】
100、101、102…赤外線測定システム、10…赤外線センサ、11…赤外線センサ窓部、12…保持部、20…恒温槽、21…開放穴、30…レンズ、31…平凸型レンズ、32…熱源側レンズ面、33…センサ側レンズ面、35…凸メニスカス型レンズ、36…熱源側レンズ面、37…センサ側レンズ面、40…測定対象熱源、SA…センサ画角、SP…集光位置、OP…放射面、W1、W2、W3…熱源幅、AR1…内部視野空間、AR2…拡張外部視野空間、AR3…外部視野空間