IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンカーン グローバル,インコーポレイテッドの特許一覧

特許7441629溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム
<>
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図1
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図2
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図3
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図4
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図5
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図6
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図7
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図8
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図9
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図10
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図11
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図12
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図13
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図14
  • 特許-溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】溶接又は付加製造二重ワイヤ駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/133 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B23K9/133 501Z
B23K9/133 501A
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019187626
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2020062687
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】16/159,805
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/815,036
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/527,328
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード ダブリュー.ペトット
(72)【発明者】
【氏名】エリオット アール.アッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ケント アール.ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ディー.カセッラ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン アール.ピーターズ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シー.メールマン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エー.ウィークス
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03751628(US,A)
【文献】実開昭53-029726(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0041910(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0224486(US,A1)
【文献】米国特許第02866079(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0152921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接又は付加製造ワイヤ駆動システムであって、
第1の溶接ワイヤスプール用の第1のスピンドルと、
第2の溶接ワイヤスプール用の第2のスピンドルと、
第1の駆動ロールと、
第2の駆動ロールと、を備え、前記第1の駆動ロール及び前記第2の駆動ロールの一方又は両方は、周方向溝を有し、
前記周方向溝内の前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間に位置する、前記第1の溶接ワイヤスプールからの第1の溶接ワイヤと、
前記周方向溝内の前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間に位置する、前記第2の溶接ワイヤスプールからの第2の溶接ワイヤと、を備え、
前記第1の溶接ワイヤは前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間で前記第2の溶接ワイヤと当接し、前記第1の溶接ワイヤは、更に、前記周方向溝の第1の側壁部分に当接ほし、前記第2の溶接ワイヤは、更に、前記周方向溝の第2の側壁部分に当接し、前記周方向溝は、前記第1の側壁部分と前記第2の側壁部分との間に溝基部を含み、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤの両方は、前記周方向溝の溝基部から径方向にオフセットされる、
溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項2】
前記周方向溝の前記溝基部は凹状である、請求項1に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項3】
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤは異なる直径を有する、請求項1に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項4】
前記第1のスピンドル及び前記第2のスピンドルはリールスタンドの対向側面上に位置する、請求項1に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項5】
前記第1のスピンドル及び前記第2のスピンドルはリールスタンドの共通側面上に位置する、請求項1に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項6】
前記第1の溶接ワイヤスプールは、前記リールスタンド上で前記第2の溶接ワイヤスプールの上に位置し、
前記第1の駆動ロール及び前記第2の駆動ロールは回転して、同時に、前記第1の溶接ワイヤを前記第1の溶接ワイヤスプールから繰り出し、前記第2の溶接ワイヤを前記第2の溶接ワイヤスプールから繰り出し、
前記第1の溶接ワイヤスプール及び前記第2の溶接ワイヤスプールは繰り出し中に反対方向に回転する、
請求項5に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項7】
溶接又は付加製造ワイヤ駆動システムであって、
第1の溶接ワイヤスプール用の第1のスピンドルと、
第2の溶接ワイヤスプール用の第2のスピンドルと、
第1の内側壁と、第1の外側壁と、前記第1の内側壁と前記第1の外側壁との間に延在する第1の凹状溝基部とを備える第1の周方向溝を有する第1の駆動ロールと、
第2の内側壁と、第2の外側壁と、前記第2の内側壁と前記第2の外側壁との間に延在する第2の凹状溝基部とを備える第2の周方向溝を有する第2の駆動ロールと、を備え、前記第2の周方向溝は前記第1の周方向溝と整列し、
前記第1の周方向溝及び前記第2の周方向溝の両方における前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間に位置する、前記第1の溶接ワイヤスプールからの第1の溶接ワイヤと、
前記第1の周方向溝及び前記第2の周方向溝の両方における前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間に位置する、前記第2の溶接ワイヤスプールからの第2の溶接ワイヤと、
前記第1の駆動ロールを前記第2の駆動ロールに向かって付勢して、前記第1の溶接ワイヤを前記第2の溶接ワイヤに強制的に当接させる付勢部材と、を備え、
前記第1の溶接ワイヤは、前記第1の内側壁、前記第2の内側壁、及び前記第2の溶接ワイヤのそれぞれと当接し、
前記第2の溶接ワイヤは、前記第1の外側壁、前記第2の外側壁、及び前記第1の溶接ワイヤのそれぞれと当接し、
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤは、前記第1の凹状溝基部及び前記第2の凹状溝基部の両方からオフセットされる、
溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項8】
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤは異なる直径を有する、請求項7に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項9】
前記第1のスピンドル及び前記第2のスピンドルはリールスタンドの対向側面上に位置する、請求項7に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項10】
前記第1のスピンドル及び前記第2のスピンドルはリールスタンドの共通側面上に位置する、請求項7に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項11】
前記第1の溶接ワイヤスプール及び前記第2の溶接ワイヤスプールの一方は、前記リールスタンド上で前記第1の溶接ワイヤスプール及び前記第2の溶接ワイヤスプールの他方の上に位置し、
前記第1の駆動ロール及び前記第2の駆動ロールは回転して、同時に、前記第1の溶接ワイヤを前記第1の溶接ワイヤスプールから繰り出し、前記第2の溶接ワイヤを前記第2の溶接ワイヤスプールから繰り出し、
前記第1の溶接ワイヤスプール及び前記第2の溶接ワイヤスプールは繰り出し中に反対方向に回転する、
請求項10に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項12】
前記第1の溶接ワイヤは、前記第1の凹状溝基部及び前記第2の凹状溝基部の両方からオフセットされてクランプされるように、前記第1の内側壁、前記第2の内側壁、及び前記第2の溶接ワイヤによってクランプされ、
前記第2の溶接ワイヤは、前記第1の凹状溝基部及び前記第2の凹状溝基部の両方からオフセットされてクランプされるように、前記第1の外側壁、前記第2の外側壁、及び前記第1の溶接ワイヤによってクランプされる、
請求項11に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項13】
溶接又は付加製造ワイヤ駆動システムであって、
第1の溶接ワイヤスプール用の第1のスピンドルと、第2の溶接ワイヤスプール用の第2スピンドルとを備えるリールスタンドであって、前記第1の溶接ワイヤスプールは、前記リールスタンド上で前記第2の溶接ワイヤスプールの上に位置する、リールスタンドと、
第1の環状溝を有する第1の駆動ロールと、
前記第1の環状溝と整列する第2の環状溝を有する第2の駆動ロールと、
前記第1の環状溝及び前記第2の環状溝の両方における前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間に位置する、前記第1の溶接ワイヤスプールからの第1の溶接ワイヤと、
前記第1の環状溝及び前記第2の環状溝の両方における前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間に位置する、前記第2の溶接ワイヤスプールからの第2の溶接ワイヤと、
前記第1の駆動ロールを前記第2の駆動ロールに向かって付勢して、前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤを前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間にクランプする付勢部材と、を備え、
前記第1の駆動ロール及び前記第2の駆動ロールは回転して、同時に、前記第1の溶接ワイヤを前記第1の溶接ワイヤスプールから繰り出し、前記第2の溶接ワイヤを前記第2の溶接ワイヤスプールから繰り出し、前記第1の溶接ワイヤスプール及び前記第2の溶接ワイヤスプールは繰り出し中に反対方向に回転する、
溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項14】
前記第1のスピンドル及び前記第2のスピンドルはリールスタンドの共通側面上に位置する、請求項13に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項15】
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤは異なる直径を有する、請求項13に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項16】
前記第1の溶接ワイヤ及び前記第2の溶接ワイヤは、前記第1の環状溝及び前記第2の環状溝のそれぞれの溝基部から径方向にオフセットされる、請求項13に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項17】
前記第1の環状溝及び前記第2の環状溝のそれぞれの溝基部は凹状である、請求項16に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項18】
前記第1の溶接ワイヤは前記第1及び第2の環状溝のそれぞれの第1の側壁部分と当接し、前記第2の溶接ワイヤは前記第1及び第2の環状溝のそれぞれの第2の側壁部分と当接し、前記第1の溶接ワイヤは前記第1及び第2の環状溝の間で前記第2の溶接ワイヤと当接する、請求項16に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【請求項19】
前記第1の溶接ワイヤは、前記第1の環状溝及び前記第2の環状溝のそれぞれの溝基部から径方向にオフセットされてクランプされるように、前記第1及び第2の環状溝のそれぞれの第1の側壁部分、及び前記第2の溶接ワイヤによってクランプされ、
前記第2の溶接ワイヤは、前記第1の環状溝及び前記第2の環状溝のそれぞれの溝基部から径方向にオフセットされてクランプされるように、前記第1及び第2の環状溝のそれぞれの第2の側壁部分、及び前記第1の溶接ワイヤによってクランプされる、
請求項18に記載の溶接又は付加製造ワイヤ駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年10月15日出願の米国特許出願第16/159,805号明細書の一部継続出願であり、その開示を引用して本明細書中に組み込む。本願は、2019年3月7日出願の米国仮特許出願第62/815,036号明細書に対する優先権を主張するものであり、その開示を引用して本明細書中に組み込む。
【背景技術】
【0002】
本発明と一致する装置、システム、及び方法は、二重ワイヤ構成による材料溶着に関する。
【0003】
溶接する場合、多くの場合、溶接ビードの幅を大きくするか、又は溶接中に溶接パドルの長さを長くすることが望ましい。この要望には溶接業界において周知の多くの様々な理由がある可能性がある。例えば、ポロシティを低減するために、溶接パドルを長くして溶接部及び溶加材を長時間溶融状態に保つことが望ましい場合がある。すなわち、溶接パドルが長時間溶融した場合、ビードが凝固する前に、有害ガスが溶接ビードから排出される時間が長くなる。更に、より広い溶接ギャップを被覆するか、又はワイヤ溶着速度を増加させるために、溶接ビードの幅を増加させることが望ましい場合がある。どちらの場合も、電極直径を大きくして用いるのが一般的である。溶接パドルの幅又は長さの両方ではなく、どちらか一方のみを増加させることが望ましい場合でさえも、直径を大きくすると、溶接パドルが長くなり幅が広くなる。しかし、これにはそれなりの欠点がないわけではない。具体的には、より大きな電極が用いられるため、適切な溶接を容易にするために、より多くのエネルギーが溶接アークに必要となる。このエネルギーの増加により、溶接部への入熱量の増加を生じ、用いられる電極の直径が大きいため、溶接作業においてより多くのエネルギーを用いる結果となる。更に、ある特定の機械的用途に対して理想的ではない溶接ビードのプロフィル又は断面を作成する場合がある。電極の直径を大きくするのではなく、2つの小さな電極を同時に用いることが望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5,816,466号明細書
【文献】米国特許第8,569,653号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の概要は、本明細書中で検討する装置、システム、及び/又は方法の幾つかの態様の基本的な理解を提供するために、簡易化した概要を呈示する。この概要は、本明細書中で検討する装置、システム、及び/又は方法の広範な概略ではない。それは、かかる装置、システム、及び/又は方法の重要な構成要素を特定し、又はそれらの適用範囲を詳細に描写する意図はない。その唯一の目的は、後半で呈示するより詳細な説明への前置きとして、簡略化した形態で幾つかの概念を呈示することにある。
【0006】
本発明の一態様によれば、溶接又は付加製造ワイヤ駆動システムが提供される。システムは、第1の溶接ワイヤスプール用の第1のスピンドルと、第2の溶接ワイヤスプール用の第2スピンドルと、第1の駆動ロールと、第2の駆動ロールとを含み、ここで第1の駆動ロール及び第2の駆動ロールの一方又は両方は周方向溝を有する。第1の溶接ワイヤスプールからの第1の溶接ワイヤは、周方向溝内の第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間に位置する。第2の溶接ワイヤスプールからの第2の溶接ワイヤは、周方向溝内の第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間に位置する。第1の溶接ワイヤは第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間で第2の溶接ワイヤと当接する。第1の溶接ワイヤは、更に、周方向溝の第1の側壁部分に当接する。第2の溶接ワイヤは、更に、周方向溝の第2の側壁部分に当接する。第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤの両方は、周方向溝の中央部分から径方向にオフセットされる。
【0007】
本発明の別の態様によれば、溶接又は付加製造ワイヤ駆動システムが提供される。システムは、第1の溶接ワイヤスプール用の第1のスピンドルと、第2の溶接ワイヤスプール用の第2スピンドルとを含む。第1の駆動ロールは、第1の内側壁と、第1の外側壁と、第1の内側壁と第1の外側壁との間に延在する第1の凹状溝基部とを備える第1の周方向溝を有する。第2の駆動ロールは、第2の内側壁と、第2の外側壁と、第2の内側壁と第2の外側壁との間に延在する第2の凹状溝基部とを備える第2の周方向溝を有する。第2の周方向溝は、第1の周方向溝と整列している。第1の溶接ワイヤスプールからの第1の溶接ワイヤは、第1の周方向溝及び第2の周方向溝の両方における第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間に位置する。第2の溶接ワイヤスプールからの第2の溶接ワイヤは、第1の周方向溝及び第2の周方向溝の両方における第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間に位置する。付勢部材は、第1の駆動ロールを第2の駆動ロールに向かって付勢して、第1の溶接ワイヤを第2の溶接ワイヤに強制的に当接させる。第1の溶接ワイヤは、第1の内側壁、第2の内側壁、及び第2の溶接ワイヤのそれぞれと当接する。第2の溶接ワイヤは、第1の外側壁、第2の外側壁、及び第1の溶接ワイヤのそれぞれと当接する。第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤは、第1の凹状溝基部及び第2の凹状溝基部の両方からオフセットされる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、溶接又は付加製造ワイヤ駆動システムが提供される。システムは、第1の溶接ワイヤスプール用の第1のスピンドルと第2の溶接ワイヤスプール用の第2のスピンドルとを備えるリールスタンドを含む。第1の溶接ワイヤスプールは、リールスタンド上で第2の溶接ワイヤスプールの上に位置する。第1の駆動ロールは第1の環状溝を有し、第2の駆動ロールは第1の環状溝と整列する第2の環状溝を有する。第1の溶接ワイヤスプールからの第1の溶接ワイヤは、第1の環状溝及び第2の環状溝の両方における第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間に位置する。第2の溶接ワイヤスプールからの第2の溶接ワイヤは、第1の環状溝及び第2の環状溝の両方における第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間に位置する。付勢部材は、第1の駆動ロールを第2の駆動ロールに向かって付勢して、第1の溶接ワイヤ及び第2の溶接ワイヤを第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間にクランプする。第1の駆動ロール及び第2の駆動ロールは回転して、同時に、第1の溶接ワイヤを第1の溶接ワイヤスプールから繰り出し、第2の溶接ワイヤを第2の溶接ワイヤスプールから繰り出す。第1の溶接ワイヤスプール及び第2の溶接ワイヤスプールは繰り出し中に反対方向に回転する。
【0009】
発明の前述及び他の態様は、添付図面を参照して以下の説明を読み取った上で発明に関係する当業者にとって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、例示的な溶接システムの略図である。
図2図2は、例示的な溶接システムの斜視図である。
図3図3は、例示的なワイヤ送給装置の側面図である。
図4図4は、例示的なワイヤ送給装置の斜視図である。
図5図5は、例示的なワイヤ送給装置の側面図である。
図6図6は、例示的なリールスタンドの斜視図である。
図7図7は、例示的な駆動ロールを示す。
図8図8は、例示的な駆動ロールの斜視図である。
図9図9は、二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面を示す。
図10図10は、二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面を示す。
図11図11は、二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面を示す。
図12図12は、二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面を示す。
図13図13は、二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面を示す。
図14図14は、二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面を示す。
図15図15は、二重ワイヤを送給する駆動ロールの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の例示的な実施形態を、ここで、添付図面を参照して以下で説明する。説明する例示的な実施形態は、発明の理解を支援することを目的としており、どのような形でも発明の適用範囲を限定することを意図していない。全体を通して同様の参照符号は同様の構成要素を指している。
【0012】
本明細書中で用いるように、「少なくとも1つ」、「1つ以上」、及び「及び/又は」は、動作において接続的及び離接的の両方である非限定的表現である。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ以上」、「A、B、又はCのうちの1つ以上」、及び「A、B、及び/又はC」という表現のそれぞれは、A単体、B単体、C単体、AとBと共に、AとCと共に、BとCと共に、或いは、A、B、及びCと共に、を意味する。2つ以上の代替用語を呈する任意の離接語又は句は、実施形態、特許請求の範囲、又は図面内であろうとなかろうと、その用語のうちの含まれる1つ、用語のどちらか一方、又は両方の用語の可能性を考慮するよう理解するべきである。例えば、「A又はB」という句は「A」或いは「B」若しくは「A及びB」の可能性を含むよう理解するべきである。
【0013】
本発明の実施形態を、溶接システムの文脈において本明細書中で説明する。溶接システム例は、ガスメタルアーク溶接(GMAW)システム、サブマージアーク溶接(SAW)システム、フラックス入りアーク溶接(FCAW)システム、メタル入りアーク溶接(MCAW)システム等を含む。更に、本明細書中で説明する電極は固体電極であり得るが、本発明の実施形態を固体電極の使用に限定しない。例えば、フラックス入り電極及びメタル入り電極も、本発明の精神又は適用範囲から逸脱することなく用いることができる。更に、本発明の実施形態は、手動、半自動、及びロボット溶接作業でも用いることができる。かかるシステムは周知であるため、それらを本明細書中で詳細に説明しない。
【0014】
本発明の実施形態を、溶接システムの文脈において説明する。しかし、溶接作業に加えて、実施形態は、付加製造プロセス及び駆動ワイヤ電極を含む他の溶接型プロセス(例えば、硬化肉盛)において用いることができる。
【0015】
ここで図面を参照すると、図1は、溶接システム100の例示的な実施形態を示している。溶接システム100は、溶接トーチ111及びワイヤ送給装置105の両方に結合される溶接電源すなわち電力供給装置109を含む。電源109は、溶接電流及び溶接波形、例えば、パルス溶射、STT、及び/又はショートアーク型溶接波形を送出することが可能な任意の公知の種類の溶接電源とすることができる。かかる電力供給装置の構成、設計、及び動作は周知されているため、それらを本明細書中で詳細に説明する必要はない。また、溶接電力は1つを超える電力供給装置によって同時に供給することができ、かかるシステムの動作も重ねて公知であることに留意されたい。電源109は、また、ユーザが溶接作業のための制御又は溶接パラメータを入力することができるようユーザインターフェースに結合されるコントローラ120も含むことができる。コントローラ120は、溶接プロセスの動作及び溶接波形の生成を制御するために用いられるプロセッサ、CPU、メモリ等を有することができる。トーチ111は、公知の手動、半自動、又はロボット溶接トーチと同様に構成することができ、ストレート又はグースネック型のものとすることができる。ワイヤ送給装置105は、電極ソース101及び103からそれぞれワイヤ電極E1及びE2を引き出し、これらは、リール、スプール、コンテナ等の任意の公知の種類のものとすることができる。ワイヤ送給装置105は、駆動ロール107を用いて電極すなわち溶接ワイヤE1及びE2を引き出し、電極をトーチ111に押したり又は引いたりする。駆動ロール107の詳細を、以下で更に検討する。駆動ロール107及びワイヤ送給装置105は、二重電極溶接作業用に構成されている。すなわち、それらは、アークを生成し、母材Wを溶接するためのトーチ111へ同時に両方の電極E1及びE2を供給する。図示するように、ワイヤ送給装置105は、溶接動作の公知の構成と一致する電源109に動作可能に接続される。
【0016】
駆動ロール107によって駆動されると、電極E1及びE2は、ライナ113を通過して、電極E1及びE2をトーチ111に送ることができる。ライナ113は、トーチ111への電極E1及びE2の通過を可能にするよう適切な大きさとなっている。例えば、直径0.030インチの2つの電極に対して、標準的な内径0.0625インチのライナ113(通常、単一の直径0.0625インチの電極に用いられる)は修正せずに用いることができる。
【0017】
ある特定の実施形態において、ワイヤ電極E1、E2は異なる直径を有することができる。すなわち、本発明の実施形態は、第1の大きな直径の電極と第2の小さな直径の電極とを用いることができる。かかる実施形態において、異なる厚さの2つの母材をより便利に溶接することが可能であってもよい。例えば、大きな電極を大きな母材に向けることができる一方で、小さな電極を小さな母材に向けることができる。更に、本発明の実施形態は、GMAW、SAW、FCAW、及びMCAWを含むがこれらに限定されない多くの異なる種類の溶接作業に用いることができる。加えて、本発明の実施形態は、異なる電極種類で利用することができる。例えば、有芯電極(例えば、フラックス入り又はメタル入り)は無芯又は固体電極と結合することができると考えられる。更に、異なる組成の電極を用いて、所望の溶接特性及び最終溶接ビードの組成を達成することができる。2つの異なるが互換性のある消耗品を組み合わせて、所望の溶接継手を作成することができる。例えば、異なる組成の硬化肉盛ワイヤ、ステンレスワイヤ、ニッケル合金、及び鋼線等の互換性のある消耗品を組み合わせることができる。具体的な一例として、軟鋼線をオーバーアロイワイヤと組み合わせて、309ステンレス鋼組成物を作成することができる。これは、要望する種類の単一消耗品が望ましい溶接特性を持たない場合に有利である可能性がある。例えば、特殊溶接用の幾つかの消耗品は、所望の溶接化学的性質を提供するが、用いるのが非常に難しく、満足のいく溶接を提供するのが困難である。しかし、本発明の実施形態は、所望の溶接化学的性質を作成するために組み合わされるよう、より溶接し易い2つの消耗品の使用を可能にする。本発明の実施形態は、さもなければ市販されていないか、又はさもなければ製造するのに非常に高価な合金/溶着化学的性質を生成するために用いることができる。従って、2つの異なる消耗品は、高価な又は入手できない消耗品の必要をなくすために用いることができる。更に、実施形態は希釈合金を作成するために用いることができる。例えば、第1の溶接ワイヤは一般的な安価な合金であってもよく、第2の溶接ワイヤは特殊ワイヤであってもよい。結果として生じる溶着は、2つのワイヤの平均であり、溶滴の形成において良好に混合され、高価な特殊ワイヤに優って2つのワイヤの平均コストはより低くなる。更に、幾つかの用途において、所望の溶着は、適切な消耗品の化学的性質に欠けるため利用できない可能性があるが、溶滴内で混合され、単一の液滴として溶着する2つの標準合金ワイヤを混合することによって達成することができる。更に、耐摩耗性金属の用途等の幾つかの用途において、所望の溶着は、1つのワイヤからの炭化タングステン粒子と別のワイヤからの炭化クロム粒子との組み合わせであってもよい。更に別の用途において、より大きな粒子を内部に収容するより大きなワイヤを、より少ない粒子又はより小さな粒子を含むより小さなワイヤと混合されて、2つのワイヤの混合物を溶着させる。ここで、各ワイヤからの予想される寄与は、ワイヤの大きさに比例する。更に、2つのワイヤ電極を同時に利用する例示的な実施形態が本明細書中で検討されるが、本発明の他の実施形態は3つ以上の電極を利用することができる。例えば、本明細書中に記載される説明及び検討と一致する3つ以上の電極構成を利用できることが考えられる。
【0018】
図2は、溶接システム100の斜視図を提供する。ワイヤ送給装置105は、特定用途において用いるための電極ソース101、103からワイヤ電極E1、E2を搬送するための駆動ロールを備えている。ワイヤ電極E1、E2は、リール、スプール、又はコンテナ(例えば、ボックス又はドラム)から連続的に引き出され、現在の実施形態において溶接物である母材Wに送出されてもよい。ワイヤ送給装置105は、ワイヤ電極E1、E2を適用作業現場又は母材Wへ駆動する電動機等の1つ以上の原動装置からの電力を利用する駆動アセンブリを含んでいてもよい。
【0019】
溶接電源109は、図示されていない搭載変圧器及びプロセッサ制御インバータ又はチョッパ回路に向けられる外部供給源(例えば、商用電源)からの電気入力電力を受け取ってもよい。電源109からの出力は、溶接出力端子121又は溶接電源のスタッドを介して提供されてもよい。溶接ガン又はトーチ111及びワイヤ導管は、当該技術分野において公知の方法で母材Wに溶接電流を送出するために溶接ワイヤ送給装置105を介して溶接電源109に電気的に接続されてもよい。結果として、溶接ワイヤE1、E2はトーチ111を介して送給され、溶接プロセスを実施するために適した任意の方法で、用途及び/又はエンドユーザの裁量で計量供給、すなわち定量投入される。電極E1、E2は溶接アークを生じさせるために電気を伝導し、電極は、グラウンドよりも実質的に大きくてもよい溶接電源109の出力電圧に等しいか又は略等しい電位を有する母材Wに搬送されることに留意されたい。
【0020】
ワイヤ電極E1、E2を搬送する異なる形態は当該技術分野において公知であり、その例には、原動装置によって供給される動力又はトルクを介して電極をトーチ111に押すことが含まれる。電極を運ぶ他の形態には、複数の原動装置を利用するプッシュ/プル形態が含まれる。電極E1、E2はトーチ111に送出され、トーチ111はユーザの裁量で電極を分配するためのトリガ又は他の作動機構を有していてもよい。時には、電極E1、E2を可変送給速度で送出する必要があってもよい。従って、原動装置は、電極E1、E2のワイヤ送給速度(WFS)を変更するために調整可能な出力を有している。特に、ワイヤ送給装置105の駆動モータは、WFSを調整する可変速モータであってもよい。
【0021】
駆動モータ123を図3に示す。ワイヤ送給装置105及び/又は駆動モータ123は、溶接電源109又は完全に別個の電源から動作電力を引き出してもよい。溶接ワイヤ送給装置105及び/又は駆動モータ123を動作させる電力を供給する任意の方法は、本発明の実施形態で用いるのに適切であるような、確実な技術的判断により選択されてもよい。
【0022】
図2及び図3を参照すると、溶接ワイヤ送給装置105は、駆動アセンブリ又は駆動ロールアセンブリを含んでいてもよい。上述のように、ワイヤ送給装置モータとも称される駆動モータ123は、第1及び第2の溶接ワイヤE1、E2をワイヤ送給装置を介してトーチ111に、その後母材Wに搬送するよう動力、すなわちトルクを伝達する。溶接ワイヤを適切な方向、すなわち、母材Wに向かって押したり又は引いたりするために溶接ワイヤE1、E2を把持する駆動ロール107が含まれる。駆動ロール107のセットは垂直に整列され、溶接ワイヤE1、E2が同時に通過する、対応して整列する環状又は円周溝を有する。駆動ロール107の垂直に整列されたセットが反対方向に回転して、ワイヤ送給装置105を介して溶接ワイヤE1、E2を駆動することが見て取ることができる。例えば、図3において、上部駆動ロール107は時計回りに回転し、下部駆動ロールは反時計回りに回転する。駆動ロール107は、円筒形構成、又はより具体的には円盤状であってもよいが、特定の構成は制限するものとして解釈すべきではない。駆動ロール107の表面、すなわち外周は、耐久性があり、溶接ワイヤE1、E2を把持するのに適した鋼等の十分に硬化した材料で構成されてもよい。図示するように、駆動ロール107はワイヤ軌道に沿って対で配設されてもよく、対のうちの各駆動ロールは、ロールのそれぞれの外周部分がワイヤの両側に(例えば、上下から)係合するように、溶接ワイヤE1、E2の両側に支持される。それぞれの駆動ロール107の中心軸は、互いに略平行に延在し、溶接ワイヤE1、E2の軌道を概して横断することに留意されたい。
【0023】
ワイヤ送給装置105は、駆動ロール107の垂直に整列されたセットを互いに向かって付勢する付勢部材を含むことができる。付勢部材は、駆動ロール107が溶接ワイヤE1、E2に印加するクランプ力又は圧縮を設定する。例えば、ワイヤ送給装置105は、駆動ロールが溶接ワイヤE1、E2に印加する圧縮を設定するよう、1つ以上の駆動ロール107に付勢力を印加する付勢ばね125を含むことができる。図3の例示的な実施形態において、付勢ばね125は、付勢ばね125の圧縮を調整するよう内側及び外側に移動することができる調整ロッド127に取り付けられている。付勢ばね125の力は、枢動レバー129を介して上部駆動ロール107に伝達される。上述したように、駆動ロール107の垂直に整列されたセットは、溶接ワイヤE1、E2が同時に通過する対応する整列された環状又は円周溝を有する。すなわち、溶接ワイヤE1、E2は、共に上部駆動ロール及び下部駆動ロールの溝に位置する。溶接ワイヤE1、E2は、付勢ばね125によって駆動ロール107に印加される付勢力により、溝内で加圧又は圧縮される。以下で更に説明するように、溶接ワイヤE1、E2は、駆動ロール107によって加圧されると、溝内で互いに当接させられる。溶接ワイヤE1、E2に印加される上/下方向の圧縮力に加えて、横方向の圧縮力も溶接ワイヤE1、E2に印加されて、それらを共に溝の内側に押し付ける。横方向の圧縮力は溝の側壁の形状を介して提供される。
【0024】
図4及び図5は、マルチワイヤ溶接用途のために取り付けられるリールスタンド118を有するワイヤ送給装置105aを示している。ワイヤ送給装置105aは共通ベース122を有し、ワイヤ送給装置及びリールスタンド118は互いに及び共通ベースに取り付けられている(例えば、ボルト締め、ねじ止め等)。リールスタンド118は、溶接ワイヤE1、E2が巻回されるそれぞれの溶接ワイヤスプール101、103を支持するための少なくとも2つのスピンドル124、126を有する。モータ及び駆動ロールアセンブリ128(例えば、図3に関して上で検討したような)は、溶接ワイヤE1、E2の両方を同時に溶接トーチに送出することができる。溶接ワイヤE1、E2は、上で検討したように、同じ直径及び組成を有するか、又は異なる直径及び/又は組成を有することができる。
【0025】
スピンドル124、126及びワイヤスプール101、103は、オペレータにより容易にアクセス可能である。スプール101、103は、他のスプールを妨害することなく個々に取り外し、交換することができる。リールスタンド118によって提供される容易なアクセスは、オペレータが、溶着作業(例えば、溶接、付加製造等)に対する最小限の中断でスプールを迅速に交換することを可能にする。
【0026】
図4及び図5において、スピンドル124、126は、リールスタンド118から同じ方向に横方向に突出し、モータ及び駆動ロールアセンブリ128の後方でリールスタンドの共通側面上に位置している。上部スピンドル124は下部スピンドル126よりもリールスタンド118上で高く位置し、上部スプール101は下部スプール103の上方に位置している。モータ内の駆動ロール及び駆動ロールアセンブリ128が回転すると、溶接ワイヤE1、E2は同時にスプール101、103から繰り出される。スプール101、103がスピンドル124、126上でどのように配向されるかに応じて、スピンドル及びスプールは反対方向又は同じ方向に回転することができる。図5において、上部スピンドル124及びスプール101は繰り出し中に時計回りに回転し、下部スピンドル126及びスプール103は反時計回りに回転する。かかる構成は、溶接ワイヤE1、E2の両方が、モータ及び駆動ロールアセンブリの送給方向に対して適度な角度でモータ及び駆動ロールアセンブリ128に送給されることを可能にする。
【0027】
スピンドルは、また、横方向の反対に突出するようリールスタンドの対向側面上にも位置することができる。かかるリールスタンド130の一実施例を図6に示す。図6のリールスタンド130は、ワイヤ送給装置に構造的に取り付けられていない自由リールスタンドである。スピンドル124a、126aはリールスタンド130の対向側面上に位置している。ある特定の実施形態において、リールスタンド130は、リールスタンドを吊設するためのリフトベイル132を含むことができる。
【0028】
図に示す例示的な実施形態は二重ワイヤ溶接システム用のワイヤ送給装置及びリールスタンドを示しているが、ワイヤ送給装置及びリールスタンドは、3、4、又は4つを超えるワイヤ電極等の2つを超えるワイヤ電極を駆動及び/又は支持するよう構成することができることは言うまでもない。溶接ワイヤ送給装置の構造に関する更なる詳細は、1998年10月6日に発行された(特許文献1)及び2013年10月29日に発行された(特許文献2)において見ることができ、その両方を本明細書中に引用して組み込む。
【0029】
図7及び図8は、例示的な駆動ロール107を示している。駆動ロールは中央の穴を有している。ボアの内面は、駆動ギア等の駆動機構上の突出部を受け入れて駆動トルクを駆動ロール107に伝達するための輪郭凹部131を含むことができる。駆動ロール107は、1つ以上の環状又は周方向のワイヤ受入溝133、135を含む。ワイヤ受入溝133、135は、駆動ロール107の円周に沿って軸方向に間隔を空けて配置されている。ワイヤ受入溝133、135は、2本の溶接ワイヤを受け入れるよう設計されている。駆動ロール107と共に用いる例示的な標準溶接ワイヤ直径は、0.030インチ、0.035インチ、0.040インチ、0.045インチ等を含む。ワイヤ受入溝133、135は、互いに同じ幅及び深さを有することができるか、又は二重溶接ワイヤの様々な大きさ若しくは組み合わせに対応するよう異なる幅及び深さを有することができる。ワイヤ受入溝133、135がそれぞれ同じ幅及び深さを有する場合、駆動ロール107は、1つの溝が摩耗した場合に、単に駆動ロールをひっくり返して、それをワイヤ送給装置に再設置することによって再利用することができる。ワイヤ受入溝133、135は、同じ直径を有する2本のワイヤ、又は異なる直径を有する2本のワイヤを同時に駆動するよう構成することができる。図7において、ワイヤ受入溝133、135は、直線状、角度のある、又は内側にテーパの付いた側壁と、側壁間に延在する平坦な基部として構成される中央部分とを有する台形状を有する。しかし、ワイヤ受入溝133、135は、例えば、湾曲した凹状の中央部分又は溝基部を有する等、台形状以外の他の形状を有することができる。ある特定の実施形態において、溝133、135は、溶接ワイヤを把持するのを助けるようローレット加工又は他の摩擦表面処理を含むことができる。
【0030】
図9図14は、二重溶接ワイヤを供給するためのワイヤ送給装置に取り付けられる場合の例示的な駆動ロール107の部分断面図を示している。駆動ロール107は、第1のE1及び第2のE2溶接ワイヤにクランプ力を提供するよう共に付勢される。溶接ワイヤE1、E2は両方とも、上部及び下部駆動ロール107の環状溝に位置している。環状溝は整列しており、台形状を有することができる。図9において、台形状は、内側壁137、外側壁139、及び側壁間に延在する溝基部141によって形成される二等辺台形である。二等辺台形状は、駆動ロール107の外周面からの断面凹部として反転している。
【0031】
駆動ロール107に印加される付勢力により、溶接ワイヤE1、E2は、溝を形成する上部側壁137及び下部側壁139と隣接する溶接ワイヤとの間において環状溝内でクランプされる。溶接ワイヤE1、E2は、環状溝内の3つの接触点を介して安定して保持される。このクランプシステムにより、両方のワイヤを一貫した方法でワイヤ送給装置に供給することが可能となる。2本の溶接ワイヤE1、E2は、送給中に互いを支持し、摩擦によって互いを引き寄せる。環状溝の内側137及び外側139の側壁は傾斜しているため、それらは溶接ワイヤE1、E2に垂直及び水平両方のクランプ力を印加する。水平クランプ力は溶接ワイヤE1、E2を共に押圧し、それらを上下ロール107上の溝の間で互いに当接させる。ある特定の実施形態において、溶接ワイヤE1、E2は、溝の中央部分から径方向にオフセットされるように、例えば、溝基部141から径方向にオフセットされるように、環状溝内でクランプされる。すなわち、溶接ワイヤE1、E2は、溶接ワイヤと溝基部141との間に間隙が存在するように、互いと溝の傾斜側壁137、139との間に押し付けられる。これは図9において明確に見て取ることができる。
【0032】
上で検討したクランプシステムは、溶接ワイヤE1、E2の直径における幾らかの変動(例えば、製造公差による)を可能にする。各溶接ワイヤE1、E2が駆動ロール107内にそれ専用の環状溝を有し、溶接ワイヤの一方が他方よりわずかに大きい場合、小さい溶接ワイヤは駆動ロール間に適切にクランプされない可能性がある。かかる状況において、より大きな溶接ワイヤは、互いに向かう駆動ロール107の径方向変位を制限し、それにより、より小さなワイヤの適切なクランプを妨げる。これは、送給問題と、送給中の小さい溶接ワイヤのいわゆるバードネスティングの原因となる可能性がある。クランプシステムは自己調整式であるため、上で検討したクランプシステムは異なる大きさのワイヤに適応することができる。図10において見て取ることができるように、一方の溶接ワイヤE1が他方E2よりも大きい場合、ワイヤ間の接触点は、環状溝内の中央位置から小さいワイヤに向かって軸方向にシフトする。3つの接触点は、溝の側壁137、139及び隣接する溶接ワイヤにより、各溶接ワイヤE1、E2上に維持される。
【0033】
図11は、二等辺台形の代わりに鋭角の台形状を有する断面を持つ環状溝143を有する駆動ロール107を示している。溝の内側145及び外側147の側壁は、異なる長さを有し、駆動ロールの外周面と異なる角度を形成している。図12において、駆動ロール107は、直角台形状を有する環状溝149を有している。鋭角及び直角台形溝は、二等辺台形よりも溶接ワイヤ直径の大きな差に対応することができる。従って、溝が0.045インチ溶接ワイヤを有する0.040インチ溶接ワイヤ等、異なる直径同士を有する溶接ワイヤを駆動するよう意図される場合、鋭角及び直角台形溝を用いることができる。ある特定の実施形態において、溝の側壁及び/又は基部は湾曲していてもよい(例えば、凹面又は凸面)。また、台形溝の側壁と基部との間の内角移行部は、湾曲又は丸みを帯びていてもよい。図13は、凹状湾曲又は丸みを帯びた中央部分(例えば、溝基部152)によって接合された直線状の角度付き側壁150を持つ環状溝を有する例示的な駆動ロールを示している。例示的な実施形態において、側壁150と駆動ロール107の外周との間の角度は約150°であるが、他の角度も可能であり、確実な技術的判断により特定することができる。
【0034】
図14は、一方の駆動ロール107が溶接ワイヤE1、E2用の台形溝を有し、他方の駆動ロール107aが非台形溝を有する例示的な実施形態を示している。図14において、非台形溝の形状は長方形であるが、他の形状も可能である。例えば、非台形溝は、楕円形又は丸みを帯びた形状等、湾曲していてもよい。更に、台形溝は、下部駆動ロール107に位置するように示されている。しかし、台形溝は上部駆動ロール107aに位置し、非台形溝は下部駆動ロールに位置してもよい。溶接ワイヤE1、E2は台形溝のそれぞれの側壁137、139と非台形溝151の基部153との間にクランプされ、溶接ワイヤは上で検討したように互いに強制的に当接する。従って、溶接ワイヤE1、E2は、駆動ロール107、107aの環状溝内部の3つの接触点を介して安定して保持される。
【0035】
図15は、一方の駆動ロール107が溶接ワイヤE1、E2用の台形溝を有し、他方の駆動ロール107bには溝がないが、むしろその外周面155上で溶接ワイヤと直接接触する例示的な実施形態を示している。台形溝は、下側駆動ロール107に位置するように示されている。ただし、台形溝は上部駆動ロールに位置してもよい。溶接ワイヤE1、E2は台形溝のそれぞれの側壁137、139と上部駆動ロール107bの外周面155との間にクランプされ、溶接ワイヤは上で検討したように互いに強制的に当接する。従って、溶接ワイヤE1、E2は、3つの接触点を介して安定して保持される。
【0036】
本開示は一例としてであり、本開示に含まれる教示の公正な適用範囲から逸脱することなく、詳細を追加、修正、又は削除することによって、様々な変更が行われてもよいことは明らかであろう。本発明は、従って、以下の特許請求の範囲がやむを得ずそのように限定する場合を除き、本開示の特定の詳細に限定されない。
【符号の説明】
【0037】
100 溶接システム
101 上部スプール
103 下部スプール
105、105a ワイヤ送給装置
107、107a、107b 駆動ロール
109 電源
111 トーチ
113 ライナ
118、130 リールスタンド
120 コントローラ
121 溶接出力端子
122 共通ベース
123 駆動モータ
124 上部スピンドル
124a、126a スピンドル
125 付勢ばね
126 下部スピンドル
127 調整ロッド
128 駆動ロールアセンブリ
129 枢動レバー
131 輪郭凹部
132 リフトベイル
133、135 ワイヤ受入溝
137 内側壁
139 外側壁
141、152、153 溝基部
143、149 環状溝
145 内側の側壁
147 外側の側壁
150 側壁
151 非台形溝
155 外周面
E1、E2 溶接ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15