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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】電池の包装構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/88 20060101AFI20240222BHJP
   B65D 71/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B65D85/88
B65D71/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019188665
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021062895
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-147564(JP,A)
【文献】特開2002-240853(JP,A)
【文献】米国特許第04971197(US,A)
【文献】米国特許第05443668(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/88
B65D 67/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる外周面が互いに接触するように平面的に配列された複数の電池を熱収縮性フィルムで被覆し、前記熱収縮性フィルムを加熱収縮させた包装体で前記電池を包装する電池の包装構造であって、
前記包装体は、前記電池の各々の正電極の全体及び負電極の全体を覆うと共に、前記配列された複数の電池のうち最外端に位置する最外端電池において、前記正電極の中心と前記負電極の中心とを結ぶ軸線に関して、隣り合う電池との接触部とは反対側に位置する外周面の部分を少なくとも露出させる開口を有し、
前記開口は、前記長手方向における一端側において、前記最外端電池の正電極が設けられた一端面の周縁部の一部を露出させると共に、前記長手方向の他端側において、前記最外端電池の負電極が設けられた他端面の周縁部の一部を露出させることを特徴とする電池の包装構造。
【請求項2】
前記包装体にて覆われる前記最外端電池の正電極の中心から前記開口の縁部までの距離の、前記最外端電池の一端面の半径に対する割合は、42.8%以上85.7%以下であり、
前記包装体にて覆われる前記最外端電池の負電極の中心から前記開口の縁部までの距離の、前記最外端電池の他端面の半径に対する割合は、42.8%以上85.7%以下であることを特徴とする請求項1記載の電池の包装構造。
【請求項3】
前記電池は、単3型電池及び単4型電池のいずれか一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池の包装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の包装構造に関し、特にシュリンクパックにより複数の電池をひとまとめに包装する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池を熱収縮性フィルムにて梱包したシュリンクパックは、電池の正電極と負電極との絶縁性を確保する目的の他に、電池の移送途中の振動や落下衝撃によりシュリンクパックが破れて電池がバラバラにならないようにするために、電極のみならず電極のある端面の全体をすっぽり覆うように包装されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-096865
【文献】特開2004-348976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、移送時の振動や落下衝撃に耐え得るように電池をシュリンクパックで包装すると、特に、電池の本数が少量であったり、電池が単3や単4など小型の場合は、シュリンクパックそのものが硬いために、容易に開封することができない場合があった。
【0005】
また、電池を梱包するために熱収縮性フィルムを熱収縮させたときに、電極がある端面と外周面との接合部分が角張っているために、その部分にフィルムの突起形状のバリが発生する場合があった。バリがあると、シュリンクパック後の電池を箱に梱包するときにバリが箱の内面にひっかかって電池をスムーズに収納できないことがあり、また、外観を損なうことにもなっていた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルムのバリの発生を抑制した電池の包装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電池の包装構造は、長手方向に延びる外周面が互いに接触するように平面的に配列された複数の電池を熱収縮性フィルムで被覆し、前記熱収縮性フィルムを加熱収縮させた包装体で前記電池を包装する電池の包装構造であって、前記包装体は、前記電池の各々の正電極の全体及び負電極の中心を含む領域を覆うと共に、前記配列された複数の電池のうち最外端に位置する最外端電池において、前記正電極の中心と前記負電極の中心とを結ぶ軸線に関して、隣り合う電池との接触部とは反対側に位置する外周面の部分を露出させる開口を有し、前記開口、前記長手方向における一端側において、前記最外端電池の正電極が設けられた一端面の周縁部の一部を露出させると共に、前記長手方向の他端側において、前記最外端電池の負電極が設けられた他端面の周縁部の一部を露出させることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、複数の電池を、長手方向に延びる外周面が互いに接触するように平面的に配列させて包装体にて固定保持するときに、電池の各々の正電極の全体及び負電極の中心を含む領域がフィルムによって覆われているために、他の電池や金属片に対する絶縁性を確保すると共に、移送時の振動や衝撃による包装体からの電池の外れや、包装体そのものの損傷を防止することができる。
【0009】
また、熱収縮性フィルムを熱収縮させるときに、複数の電池のうち最外端に位置する最外端電池の端面において、正電極と負電極とを結ぶ軸線に関して、隣り合う電池との接触部とは反対側の周縁部が、包装体の開口より露出されるので、この周縁部近傍でのフィルムのバリの発生を抑制できる。これにより、シュリンクパック後の電池の外観を良くすることができる。また、包装体にバリが無いので、電池を収容した包装体を箱に円滑に梱包することができる。
【0010】
好ましくは、前記包装体にて覆われる前記最外端電池の正電極の中心から前記開口の縁部までの距離の、前記最外端電池の一端面の半径に対する割合は、42%以上であり、前記包装体にて覆われる前記最外端電池の負電極の中心から前記開口の縁部までの距離の、前記最外端電池の他端面の半径に対する割合は、42%以上である。
【0011】
好ましくは、前記包装体は、前記電池の各々の正電極及び負電極の全体を覆う。
【0012】
好ましくは、前記電池は、単3型電池及び単4型電池のいずれか一方である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電池の包装構造によれば、梱包強度を維持しつつも包装体の外観を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による電池の包装構造の一実施形態を示す斜視図である。
図2】電池を熱収縮性フィルムにて包装するときの工程を示す概念図である。
図3図1に示す電池の包装構造の正面図である。
図4図1に示す電池の包装構造の上面図である。
図5図1に示す電池の包装構造の下面図である。
図6図1に示す電池の包装構造の側面図である。
図7】包装体の幅と電池のサイズとの関係を説明する図である。
図8】実施例としての包装体の評価を説明する表であり、(A)は単3型電池、(B)は単4型電池である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に示す電池の包装体1は、帯状の熱収縮性フィルムを熱収縮させたものであり、2本の電池2を、長手方向に延びる本体20を互いに接触させると共に同極同士が互いに近接するように、いわゆる並列に配列させた状態で固定保持する。熱収縮性フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製の厚みが40μmの透明フィルムである。なお、電池2は、電池は単1、単2、単3及び単4型電池のいずれであっても良い。
【0016】
電池2は、長手方向に延びる円筒状の外周面21を有する本体20と、本体20の長手方向の一端側の端面22に設けられた正電極23と、本体20の長手方向の他端側の他端面24に設けられた負電極25とを有している。正電極23は、導電性金属からなり、長手方向に沿って外方に向けて突出する突起部23Aを中心に有する。負電極25は、平板状の導電性金属からなる。正電極23の中心と負電極25の中心とを結ぶ線を「軸線L」とする。
【0017】
包装体1は、例えば図2に示すように、2本の電池2の本体20の外周面21が互いに接触するように並列に配列させてから、電池2の長手方向に沿って例えば熱収縮性フィルム1Aで帯状に包み込む。その後、熱処理により、熱収縮性フィルム1Aを熱収縮させることにより、図3に示すように、包装体1内に電池2を固定保持させる。
【0018】
次に、包装体1の形状について説明する。
【0019】
包装体1は、図1図3から図5に示すように、一方の電池2について、軸線Lに関して、隣り合う他方の電池2の外周面21との接触部2aとは反対側に位置する外周面21の部分を少なくとも露出させる開口11を有する。従って、包装体1には、2つの開口11が形成される。
【0020】
開口11は、図6に示すように、電池2の長手方向に沿って、開口縁部としての周縁部が、外周面21の一端から他端までに達するように形成される。そして、外周面21の一端側に位置する開口11からは、図4に示すように、一端面22において接触部2aとは軸線Lに関して反対側に位置する一端面22の一部分である周縁部22aを露出させている。また、外周面21の他端側に位置する開口11からは、図5に示すように、他端面24において接触部2aとは軸線Lに関して反対側に位置する他端面24の一部分である周縁部24aを露出させている。
【0021】
従って、開口11を介して、電池2の外周面21の長手方向における一端から他端に至るまでの部分と、一端面22の周縁部22aと他端面24の周縁部24aとを、包装体1から露出させて、熱収縮性フィルム1Aで覆わない状態にしている。
【0022】
このとき、包装体1は、図4に示すように、正電極23の中心Lから、接触部2aに向かう方向とは反対方向に向けて、一端面22の半径Rの42~100%に亘る部位まで延びて一端面22を部分的に覆い、それ以外の一端面22の部分を包装体1より露出させている。同様に、包装体1は、図5に示すように、負電極25の中心Lから、接触部2aに向かう方向とは反対方向に向けて、他端面24の半径Rの42~100%に亘る部位まで延びて他端面24を部分的に覆い、それ以外の他端面24の部分を包装体1より露出させている。なお、電池2の一端面22のフィルム1Aの幅W1と、他端面24におけるフィルム1Aの幅W2とは、原則同じであるが、互いに異なっていても良い。また、一端面22のフィルム1Aの幅W1が狭いと、すなわち、正電極23の中心Lから、接触部2aに向かう方向とは反対方向に向けてフィルム1Aによって覆われる部分の長さが、一端面22の半径Rの42%未満であると、正電極23の突起部23Aが露出して電極間の絶縁性の確保が困難になるので、好ましくない。
【0023】
上記構成の包装体1は、従前の包装体に比較して、一方の電池2の一端面22及び他端面24について、他方の電池2との接触部2aとは電池2の軸線Lに関して反対側に位置する周縁部22a、24aをフィルム1Aで覆わずに露出させているので、従前はこの領域近傍に熱収縮時に形成されたフィルムのバリの発生を抑制することができる。従って、フィルムのバリが無いので、包装体1にて固定保持された電池2を、円滑にケースに梱包することができる。
【0024】
次に、電池2を固定保持する上記包装体1に対して行った振動試験、落下試験、外観検査について説明する。
【0025】
振動試験は、2本の電池を収容した包装体を、加速度:7.35m/s2(0.75G)、振動数:5~50Hz(300~3000cpm)で、振動時間:20分(掃引/片道:10分)にわたり振動させて、その後の様子を判定した。判定は、包装体1の傷やフィルム破れの有無で行った。
【0026】
落下試験は、電池を包装体にて固定保持した状態で、高さ30cmから1回コンクリート床へ底面落下させて行い、その語の様子を判定した。判定は、包装体1への傷やフィルムの破れの有無で行った。
【0027】
以下、単3型電池及び単4型電池を電池2として包装体1にて包装した実施例1及び実施例2の結果について説明する。
【0028】
実施例1
2本の単3型電池2を包装体1にて包装したとき、図7に示すように、包装体1の半径Rの端面において、正電極23の中心Lから開口11の縁部までの距離をdとし、dの長さを図8(A)に示すように変えた場合の正電極23のフィルムからの露出の有無、バリの発生、振動試験・落下試験に対する評価を示す。電池2が単3型電池の場合、正電極23の中心から一端面22の周縁部22aまでの半径Rは、7.2mmである。dが0、1、2mm(被覆割合:0、14.2、28.5%)までは、正電極23の突起部23Aがフィルム1Aに被覆されず包装体1より露出する。dが3、4、5、6mm(被覆割合:42.8、57.1、71.4、85.7%)までは、振動実験及び落下実験に対して、電池2が包装体1内に保持されると共にフィルム1Aの破損も無く、フィルムのバリも発生しなかった。dが7mm(被覆割合:100%)では、梱包強度は十分であるが、フィルムにバリの発生が懸念された。
【0029】
以上から、電池2が単3型電池の場合、電池2の一端面22の半径Rに対する、正電極23の中心から開口11の縁部までの距離dによるフィルムの被覆割合は、42.8%から100%未満とするのが好ましく、より好ましくは、42.8%から85.7%とするのが良い。
【0030】
実施例2
2本の単4型電池2を包装体1にて包装したとき、図7に示すように、包装体1の半径Rの端面において、正電極23の中心Lから開口11の縁部までの距離をdとし、dの長さを図8(B)に示すように変えた場合の正電極のフィルムからの露出の有無、バリの発生、振動試験・落下試験に対する評価を示す。電池2が単4型電池の場合、電極の中心から周縁部までの半径Rは、5.1mmである。dが0、1、2mm(被覆割合:0、20、40.0%)までは、電池2は包装体1内に保持されるが、正電極の突出部が包装体1より露出してしまった。dが3、4mm(被覆割合:60.0、80.0%)までは、振動実験及び落下実験に対して、電池2が包装体1内に保持されると共にフィルムの破損も無いため梱包強度も十分あり、フィルムのバリも発生しなかった。dが5mm(被覆割合:100%)では、梱包強度は十分であるが、フィルムにバリの発生が懸念された。
【0031】
以上から、電池2が単4型電池の場合、電池2の一端面22の半径Rに対する、正電極23の中心から開口11の縁部までの距離dによるフィルムの被覆割合は、42.8%から100%未満とするのが好ましく、より好ましくは、42.8%から85.7%とするのが良い。
【0032】
上記実施形態では、包装体1に収容保持される電池の数は2本としたが、包装体1に収容保持する電池の本数は2本に限定されず、4本、8本、12本等適宜の本数の電池を収容することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 包装体
1A 熱収縮性フィルム
2 電池
11 開口
22 一端面
22a 周縁部
23 正電極
24 他端面
24a 周縁部
25 負電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8