(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240222BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2020011812
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】宮永 朋治
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-138581(JP,A)
【文献】特開2004-181756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン基材と、
前記ポリオレフィン基材の上に配置されるアンカーコート層と、
前記アンカーコート層の上に配置されるガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層は、
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、炭素数2~6のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物との反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを少なくとも反応させた反応生成物であるポリウレタン樹脂と、層状無機化合物とを含み、
前記アンカーコート層は、ポリエチレンイミンを含み、
前記アンカーコート層の量が、0.3g/m
2以上で
あり、
前記ガスバリア層の量が、0.5g/m
2
以上である
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記層状無機化合物の割合が、前記ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記アンカーコート層の量が、3.0g/m
2以下である
ことを特徴とする、請求項1
または2に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、詳しくは、ガスバリア性を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバリア性に優れたフィルムとして、例えば、基材フィルム層と、その基材フィルム層に配置されるガスバリア性のポリウレタン層とを備えるガスバリア性複合フィルムが、提案されている。また、ガスバリア性の向上を図るため、ポリウレタン層に層状無機化合物を分散させることも、提案されている。
【0003】
そのようなガスバリア性複合フィルムとしては、例えば、膨潤性無機層状化合物の水分散液と、ポリウレタンディスパージョンおよび水とを混合してコーティング剤を調製し、そのコーティング剤を基材フィルムとしての二軸延伸ポリプロピレンフィルムに塗布および乾燥させることにより、膨潤性無機層状化合物およびポリウレタン樹脂を含む層を基材フィルムに積層したガスバリア性積層体が、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、基材フィルムとしてポリプロピレンフィルムが用いられる場合、ポリウレタン樹脂と基材フィルムとの密着性が、充分ではない場合がある。とりわけ、ポリウレタン樹脂中に膨潤性無機層状化合物が偏在する場合には、膨潤性層状無機化合物が、ポリウレタン樹脂の密着性を低下させる場合がある。
【0006】
また、ガスバリア性積層体としては、さらなるガスバリア性の向上が、要求される場合がある。
【0007】
本発明は、密着性およびガスバリア性に優れる積層体である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ポリオレフィン基材と、前記ポリオレフィン基材の上に配置されるアンカーコート層と、前記アンカーコート層の上に配置されるガスバリア層とを備え、前記ガスバリア層は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、炭素数2~6のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物との反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを少なくとも反応させた反応生成物であるポリウレタン樹脂と、層状無機化合物とを含み、前記アンカーコート層は、ポリエチレンイミンを含む、積層体を含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記層状無機化合物の割合が、前記ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下である、上記[1]に記載の積層体を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記ガスバリア層の量が、0.5g/m2以上である、上記[1]または[2]に記載の積層体を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、前記アンカーコート層の量が、0.05g/m2以上3.0g/m2以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層体を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層体では、所定のポリウレタン樹脂および層状無機化合物を含むガスバリア層と、ポリオレフィン基材との間に、ポリエチレンイミンを含むアンカーコート層が、配置されている。
【0013】
そのため、上記の積層体では、アンカーコート層中のポリエチレンイミンが、ポリウレタン樹脂中の層状無機化合物の分散性を向上させ、層状無機化合物の偏在を抑制できる。
【0014】
その結果、本発明の積層体では、密着性の低下の抑制、および、ガスバリア性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、積層体1は、ガスバリア性を有する積層体(ガスバリア性積層体)であり、ポリオレフィン基材2と、ポリオレフィン基材2の上に配置されるアンカーコート層3と、アンカーコート層3の上に配置されるガスバリア層4とを備える。
【0017】
なお、ガスバリア性とは、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定される酸素透過量(OTR、温度20℃、相対湿度80%)が、200cc/m2・day・atm以下、好ましくは、160cc/m2・day・atm以下、より好ましくは、100cc/m2・day・atm以下、さらに好ましくは、50cc/m2・day・atm以下、とりわけ好ましくは、10cc/m2・day・atm以下であることを示す。
【0018】
ポリオレフィン基材2は、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体など)を含む基材である。基材としては、例えば、フィルム、シート、ボトル、カップなどの基材が挙げられる。好ましくは、フィルムが挙げられる。
【0019】
ポリオレフィン基材2として、より具体的には、例えば、ポリオレフィン樹脂からなるフィルム(ポリオレフィンフィルム)が挙げられる。なお、ポリオレフィン基材2は、単数層の基材であってもよく、また、複数層を備える基材(積層体)であってもよい。
【0020】
また、ポリオレフィン基材2は、無延伸基材、一軸延伸基材、二軸延伸基材のいずれでもよい。また、ポリオレフィン基材2には、表面処理(コロナ放電処理など)がされていてもよい。
【0021】
ポリオレフィン基材2として、好ましくは、二軸延伸ポリオレフィンフィルムが挙げられ、より好ましくは、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)が挙げられる。
【0022】
ポリオレフィン基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0023】
アンカーコート層3は、ポリエチレンイミンを含んでいる。
【0024】
ポリエチレンイミンは、エチレンイミン(-CH2CH2NH-)の繰り返し単位からなるポリマーであり、公知の方法で製造することができる。
【0025】
ポリエチレンイミンとして、より具体的には、エチレンイミン単位が直鎖状に重合した直鎖状ポリエチレンイミン、例えば、エチレンイミン単位が分岐鎖状に重合した分岐鎖状ポリエチレンイミンなどが挙げられる。また、ポリエチレンイミンは、例えば、シクロアルキルなどの公知の変性剤により変性されていてもよい。
【0026】
これらポリエチレンイミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0027】
ポリエチレンイミンの数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算分子量)は、例えば、100以上、好ましくは、200以上、より好ましくは、300以上であり、例えば、300万以下、好ましくは、200万以下、より好ましくは、100万以下である。
【0028】
アンカーコート層3は、製造効率の観点から、好ましくは、ポリエチレンイミンを含むアンカーコート剤を、ポリオレフィン基材2に塗布および乾燥させることにより、形成されている。
【0029】
アンカーコート剤は、例えば、水性溶剤に、ポリエチレンイミンを溶解および/または分散させることにより、調製される。
【0030】
水性溶剤としては、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)などが挙げられる。これら水性溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。水性溶剤として、好ましくは、水が挙げられる。
【0031】
ポリエチレンイミンの溶液および/または分散液を得る方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。
【0032】
また、ポリエチレンイミンの溶液および/または分散液は、市販品として入手することができる。そのような市販品としては、例えば、商品名A-131-X(Mica Corporation製)、商品名エポミン(日本触媒製)、商品名Lupasolシリーズ(BASF製)などが挙げられる。
【0033】
また、ポリエチレンイミンの溶液および/または分散液の固形分濃度は、上記水性溶剤の除去または添加によって、調整することができる。
【0034】
アンカーコート剤において、ポリエチレンイミンの固形分濃度は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0035】
また、アンカーコート剤は、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
【0036】
なお、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0037】
そして、このようなアンカーコート剤から、アンカーコート層3を形成するには、例えば、上記方法により得られたアンカーコート剤を、ポリオレフィン基材2の上に塗布し、乾燥させる。
【0038】
アンカーコート剤の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
【0039】
また、ポリオレフィン基材2を作成するときに、インラインで塗布してもよい。
【0040】
具体的には、ポリオレフィン基材2がフィルム状の場合、フィルム製膜時の縦方向の一軸延伸処理後にグラビアコート法などにより、アンカーコート剤を塗布および乾燥した後、二軸延伸処理してアンカーコート層3をポリオレフィン基材2上に設けることができる。
【0041】
また、ポリオレフィン基材2がボトル状の場合、ブロー成型前のプリフォームにディッピング法などによりアンカーコート剤を塗布および乾燥した後、ブロー成型してアンカーコート層3をポリオレフィン基材2上に設けることができる。
【0042】
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0043】
これにより、ポリオレフィン基材2の上に、ポリエチレンイミンを含むアンカーコート層3を形成することができる。
【0044】
アンカーコート層3の量(厚み)は、ポリエチレンイミン(乾燥後)の積層量として、密着性およびガスバリア性の観点から、例えば、0.01g/m2以上、好ましくは、0.05g/m2以上、より好ましくは、0.1g/m2以上、さらに好ましくは、0.3g/m2以上であり、積層体の外観の観点から、例えば、5.0g/m2以下、好ましくは、3.0g/m2以下、より好ましくは、1.0g/m2以下、さらに好ましくは、0.6g/m2以下である。
【0045】
ガスバリア層4は、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン層である。
【0046】
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物である。
【0047】
なお、ガスバリア層4は、製造効率の観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタンディスパージョンを、アンカーコート層3に塗布および乾燥させることにより、形成されている。
【0048】
ポリウレタン樹脂を含むポリウレタンディスパージョンを調製するには、ポリウレタン樹脂を水性ポリウレタン樹脂として合成するとともに、得られた水性ポリウレタン樹脂を、水分散させる。
【0049】
より具体的には、この方法では、例えば、まず、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。
【0050】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含んでいる。
【0051】
キシリレンジイソシアネート(XDI)として、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-XDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0052】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0053】
また、水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(H6XDI)として、1,2-水添キシリレンジイソシアネート(o-H6XDI)、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(m-H6XDI)、1,4-水添キシリレンジイソシアネート(p-H6XDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0054】
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0055】
また、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとしては、それらの誘導体が含まれる。
【0056】
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したキシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体、5量体、7量体など(例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体))、アロファネート誘導体(例えば、上記したキシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、公知の1価アルコールまたは2価アルコールとの反応より生成するアロファネート誘導体など)、ポリオール誘導体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、公知の3価以上のアルコールとの反応より生成するポリオール誘導体(アルコール付加体)など)、ビウレット誘導体(例えば、上記したキシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット誘導体など)、ウレア誘導体(例えば、上記したキシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア誘導体など)、オキサジアジントリオン誘導体(例えば、上記したキシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド誘導体(上記したキシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド誘導体など)、ウレトジオン誘導体、ウレトンイミン誘導体などが挙げられる。これら誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0057】
ポリイソシアネート成分として、好ましくは、キシリレンジイソシアネート(単量体)、水添キシリレンジイソシアネート(単量体)が挙げられ、より好ましくは、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートの併用が挙げられる。
【0058】
キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを併用することにより、密着性の向上を図ることができる。
【0059】
キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを併用する場合、それらの併用割合は、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートの総量100質量部に対して、キシリレンジイソシアネートが、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、93質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。また、水添キシリレンジイソシアネートが、例えば、5質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0060】
また、ポリイソシアネート成分は、任意成分として、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネート以外のポリイソシアネート(以下、その他のポリイソシアネートと称する。)を含有することができる。
【0061】
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)、脂肪族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)などのポリイソシアネート単量体が挙げられる。
【0062】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0063】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0064】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0065】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。
【0066】
脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)としては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0067】
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0068】
また、その他のポリイソシアネートには、上記と同様、ポリイソシアネート単量体の誘導体が含まれる。
【0069】
より具体的には、例えば、ポリイソシアネート単量体(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除く。)の多量体、アロファネート誘導体、ポリオール誘導体、ビウレット誘導体、ウレア誘導体、オキサジアジントリオン誘導体、カルボジイミド誘導体、ウレトジオン誘導体、ウレトンイミン誘導体などが挙げられる。これらの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0070】
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0071】
ポリイソシアネート成分が、その他のポリイソシアネートを含有する場合、その含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0072】
ポリイソシアネート成分は、好ましくは、その他のポリイソシアネートを含有せず、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートからなる。
【0073】
ポリオール成分は、必須成分として、低分子量ポリオールを含んでいる。
【0074】
低分子量ポリオールは、必須成分として、炭素数2~6のジオール(2価アルコール)を含んでいる。
【0075】
炭素数2~6のジオールは、水酸基を2つ有する炭素数2~6の有機化合物であって、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールなどの炭素数2~6のアルカンジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2~6のエーテルジオール、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンなどの炭素数2~6のアルケンジオールなどが挙げられる。
【0076】
これら炭素数2~6のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0077】
炭素数2~6のジオールとして、好ましくは、ガスバリア性の観点から、炭素数2~6のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0078】
炭素数2~6のジオールの含有割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0079】
また、低分子量ポリオールは、さらに、任意成分として、上記した炭素数2~6のジオールを除く低分子量ポリオール(以下、その他の低分子量ポリオールと称する。)を含有することもできる。
【0080】
その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数7~20のアルカン-1,2-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどの炭素数7以上の2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0081】
また、その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、数平均分子量400未満のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などが挙げられる。
【0082】
その他の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
その他の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0084】
その他の低分子量ポリオール(上記した炭素数2~6のジオールを除く)が配合される場合には、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0085】
なお、低分子量ポリオールは、好ましくは、炭素数2~6のジオールと、その他の低分子量ポリオールとを含有し、より好ましくは、炭素数2~6のジオールと3価アルコールとを含有する。炭素数2~6のジオールと3価アルコールとを含有することにより、上記ポリウレタン樹脂を高分子量化することができ、塗膜強度の向上が期待できる。
【0086】
炭素数2~6のジオールと3価アルコールとを含有する場合、それらの割合は、炭素数2~6のジオールと3価アルコールとの総量100質量部に対して、3価アルコールが、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0087】
また、ポリオール成分は、必須成分として、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する。
【0088】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基を含有し、アミノ基または水酸基などの活性水素基を含有する化合物であって、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0089】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、ノニオン性基と、活性水素基とを含有する。
【0090】
ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレン基が挙げられる。
【0091】
ポリオキシエチレン基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。
【0092】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の水酸基を有する化合物であって、次のように合成することができる。
【0093】
すなわち、まず、上記したジイソシアネートと、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1~4のアルキル基で片末端封鎖したアルコキシポリオキシエチレンモノオールであって、数平均分子量200~6000、好ましくは300~3000)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
【0094】
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
【0095】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールを得るためのジイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4-または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0096】
これらノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、ポリオキシエチレン基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールが挙げられる。
【0097】
なお、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、ノニオン性基、具体的には、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、400以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、600以上であり、例えば、10000以下、好ましくは、8000以下、より好ましくは、6000以下である。
【0098】
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基や、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを併有する化合物(アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物)が挙げられ、より好ましくは、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど))が挙げられる。
【0099】
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0100】
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。イオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
【0101】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
【0102】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物として、ガスバリア性の観点から、好ましくは、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、より好ましくは、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
【0103】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物の含有割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、25質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0104】
また、ポリオール成分は、任意成分として、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、高分子量ポリオールを含有することもできる。
【0105】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上、好ましくは、500以上、例えば、10000以下の化合物である。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールなどが挙げられる。これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0106】
高分子量ポリオールが配合される場合には、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、高分子量ポリオールが、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下である。
【0107】
なお、ポリオール成分は、好ましくは、高分子量ポリオールを含有せず、上記の低分子量ポリオールと、上記の親水性基を含有する活性水素基含有化合物とからなる。
【0108】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、上記各成分を、ポリオール成分の水酸基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)において、1を超える割合、好ましくは、1.1~10、より好ましくは、1.1~2.0の割合で配合する。そして、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
【0109】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75~85℃で、1~20時間程度反応させる。
【0110】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、公知の有機溶媒に、上記成分を配合して、反応温度20~80℃で、1~20時間程度反応させる。
【0111】
この重合反応は、反応溶液中のイソシアネート基含有率が15質量%以下、好ましくは、10質量%以下になるまで反応させる。
【0112】
また、上記重合では、必要に応じて、公知のウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0113】
また、例えば、親水性基としてアニオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して中和し、アニオン性基の塩を形成させる。
【0114】
中和剤としては、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1~4のトリアルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0115】
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
【0116】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量)が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0117】
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0118】
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定したポリウレタン樹脂のディスパージョンを得ることができ、基材密着性、ガスバリア性などを確保することができる。
【0119】
また、その数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下である。
【0120】
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンを得る。
【0121】
鎖伸長剤としては、例えば、上記の低分子量ポリオール(2価アルコール、3価アルコールなど)、ポリアミンなどが挙げられ、好ましくは、ポリアミンが挙げられる。
【0122】
ポリアミンとしては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンなどが挙げられる。
【0123】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
【0124】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0125】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0126】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0127】
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
【0128】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などが挙げられる。
【0129】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR-148、XTJ-512などが挙げられる。
【0130】
これらポリアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0131】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0132】
鎖伸長剤として、密着性およびガスバリア性の観点から、好ましくは、ポリアミン、より好ましくは、アミノアルコールが挙げられる。
【0133】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させる方法は、特に制限されないが、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0134】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100~1000質量部の割合において、水を撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
【0135】
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、撹拌下、鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6~1.2、好ましくは、0.7~0.9の割合となるように、滴下する。
【0136】
鎖伸長剤は、滴下することで反応させ、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
【0137】
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0138】
これにより、ポリウレタン樹脂を得ることができ、また、ポリウレタン樹脂が水中に分散したディスパージョンを得ることができる。また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
【0139】
また、ポリウレタンディスパージョンは、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。また、添加剤としては、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類など)も挙げられる。
【0140】
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0141】
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度とウレア基濃度との合計値は、仕込み計算値で、例えば、20質量%以上、好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0142】
また、ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
【0143】
また、ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上、より好ましくは、7以上、さらに好ましくは、8以上であり、また、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
【0144】
また、ポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度は、例えば、3mPa・s以上、好ましくは、5mPa・s以上であり、また、例えば、2000mPa・s以下、好ましくは、1000mPa・s以下である。
【0145】
また、ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは、100nm以下である。
【0146】
また、ガスバリア層4は、必須成分として、層状無機化合物を含有する。
【0147】
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0148】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。
【0149】
膨潤性の層状無機化合物として、具体的には、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
【0150】
これら膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
【0151】
層状無機化合物の平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、通常、100μm以下であり、例えば、75μm以下、好ましくは、50μm以下である。また、層状無機化合物のアスペクト比は、例えば、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは、100以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下である。
【0152】
そして、ガスバリア層4を形成するには、上記で得られたポリウレタンディスパージョンに、層状無機化合物を分散させ、バリアコート剤(混合物)を調製する。そして、得られたバリアコート剤をアンカーコート層3の上に塗布し、乾燥させる。
【0153】
ポリウレタンディスパージョンと層状無機化合物とを混合する方法としては、特に制限されないが、例えば、水に層状無機化合物を分散させた分散液に、ポリウレタンディスパージョンを添加する。
【0154】
なお、混合物(バリアコート剤)中で層状無機化合物が2次凝集するおそれがあるため、水に層状無機化合物を分散させた分散液の調製では、好ましくは、層状無機化合物を分散させた後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
【0155】
ポリウレタン樹脂と層状無機化合物との配合割合は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、層状無機化合物が、密着性およびガスバリア性の観点から、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1.0質量部以上、さらに好ましくは、3.0質量部以上、とりわけ好ましくは、5.0質量部以上であり、積層体の外観の観点から、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下、さらに好ましくは、10質量部以下である。
【0156】
また、得られる混合物(バリアコート剤)において、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物の総濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下である。
【0157】
また、ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて、硬化剤を配合することができる。
【0158】
硬化剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤などが挙げられる。これらのうち、イソシアネート硬化剤としては、例えば、水分散性イソシアネート硬化剤(例えば、ブロックイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネートなど)、親水性基を含有する非ブロックポリイソシアネートなど)などが挙げられる。
【0159】
これら硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0160】
硬化剤として、好ましくは、イソシアネート硬化剤が挙げられ、より好ましくは、水分散性イソシアネート硬化剤が挙げられる。
【0161】
硬化剤を配合する場合には、その配合割合は、ポリウレタン樹脂(固形分)100質量部に対して、硬化剤が、固形分換算で、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0162】
そして、このようなバリアコート剤から、ガスバリア層4を形成するには、例えば、上記方法により得られたバリアコート剤を、アンカーコート層3の上に塗布し、乾燥させる。
【0163】
バリアコート剤の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知のコーティング方法が挙げられる。
【0164】
乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0165】
これにより、アンカーコート層3の上に、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物を含み、さらに、硬化剤が添加される場合には硬化剤を含むガスバリア層4を形成することができる。
【0166】
ガスバリア層4の量(厚み)は、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物(さらに、硬化剤が添加される場合には、硬化剤)を含む固形分の積層量(乾燥後)として、ガスバリア性の観点から、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.5g/m2以上、より好ましくは、1.0g/m2以上であり、密着性の観点から、例えば、10g/m2以下、好ましくは、5.0g/m2以下、より好ましくは、3.0g/m2以下、より好ましくは、1.0g/m2以下である。
【0167】
そして、上記のように、ポリオレフィン基材2の上にアンカーコート層3を形成し、さらに、アンカーコート層3の上にガスバリア層4を形成することにより、積層体1を得ることができる。
【0168】
積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0169】
また、積層体1において、アンカーコート層3とガスバリア層4との総厚み(ポリオレフィン基材2を除く厚みの合計)は、乾燥後の積層量として、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.2g/m2以上、より好ましくは、0.8g/m2以上であり、また、例えば、20g/m2以下、好ましくは、15g/m2以下、より好ましくは、10g/m2以下、さらに好ましくは、5g/m2以下である。
【0170】
また、アンカーコート層3とガスバリア層4との比率は、アンカーコート層3とガスバリア層4との総厚みに対して、高さ(μm)基準で、アンカーコート層3が、例えば、1%以上、好ましくは、2%以上であり、例えば、50%以下、好ましくは、20%以下である。また、ガスバリア層4が、例えば、50%以上、好ましくは、80%以上であり、例えば、99%以下、好ましくは、98%以下である。
【0171】
また、ガスバリア層4の厚みは、アンカーコート層3よりも厚く、例えば、アンカーコート層3の厚みに対して、例えば、0.8倍以上、好ましくは、1.0倍以上、さらに好ましくは、1.5倍以上であり、通常、5倍以下である。
【0172】
また、積層体1において、層状無機化合物の質量割合は、アンカーコート層3の質量と、ガスバリア層4の質量との総量100質量部に対して、層状無機化合物の質量が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0173】
層状無機化合物の質量割合が上記範囲であれば、密着性およびガスバリア性に優れた積層体1を得ることができる。
【0174】
また、必要に応じて、得られた積層体1を、例えば、30~50℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
【0175】
そして、上記の積層体1では、所定のポリウレタン樹脂および層状無機化合物を含むガスバリア層4と、ポリオレフィン基材2との間に、ポリエチレンイミンを含むアンカーコート層3が、配置されている。
【0176】
そのため、このような積層体1では、アンカーコート層3中のポリエチレンイミンが、ポリウレタン樹脂中の層状無機化合物の分散性を向上させ、層状無機化合物の偏在を抑制できる。
【0177】
その結果、上記の積層体1では、ポリエチレンイミンと、ポリウレタン樹脂中に分散する層状無機化合物との相乗効果により、密着性の低下の抑制、および、ガスバリア性の向上を図ることができる。
【0178】
そのため、積層体1は、ガスバリア性フィルムの分野、具体的には、食品包装用フィルム、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用される。また、積層体1は、例えば、印刷分野においても、好適に使用される。すなわち、上記ポリウレタン樹脂を含むバリアコート剤に、顔料などの着色剤を含ませて印刷用インキとして調製し、これをプラスチックフィルム、紙、各種容器などへ塗装することで印刷フィルムや印刷体としても好適に使用することができる。
【0179】
なお、上記した実施例では、アンカーコート層3およびガスバリア層4は、ポリオレフィン基材2の厚み方向一方面全面に積層されているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、ポリオレフィン基材2の厚み方向両面、さらには、アンカーコート層3およびガスバリア層4を部分的に積層することができる。また、アンカーコート層3およびガスバリア層4の上に、さらに、アンカーコート層3および/またはガスバリア層4を積層することもできる。また、アンカーコート層3は、各熱可塑性フィルムの製膜時のインラインコートにて形成してもよい。
【0180】
また、積層体1は、ガスバリア層4の上に、さらに、シーラント層(図示せず)を備えることもできる。シーラント層(図示せず)としては、例えば、ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルムなどのヒートシール性のポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。シーラント層(図示せず)は、例えば、公知の接着剤を介して、ガスバリア層4に積層される。
【実施例】
【0181】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0182】
製造例1(アンカーコート剤)
市販のポリエチレンイミンの水溶液(商品名A-131-X、固形分濃度5%、Mica Corporation製)60gを、マグネチックスターラーにて混合しながら、40gのイオン交換水を徐々に添加した。
【0183】
これにより、アンカーコート剤を得た。
【0184】
製造例2(ポリウレタンディスパージョンA)
ポリイソシアネート成分として1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)(商品名:タケネート500、三井化学社製)169.9質量部、および、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(m-H6XDI)(商品名:タケネート600、三井化学社製)29.2質量部を準備した。
【0185】
また、ポリオール成分として、エチレングリコール35.9質量部、トリメチロールプロパン3.4質量部、および、ジメチロールプロピオン酸18.2質量部を準備した。
【0186】
そして、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分および溶剤としてメチルエチルケトン115.8質量部を混合して、窒素雰囲気下65~70℃で、反応溶液のイソシアネート基含有率が6.79質量%以下になるまで反応させた。これによって、イソシアネート基末端プレポリマーを合成した。
【0187】
なお、この反応において、ポリオール成分の水酸基に対するポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)は、1.4であった。
【0188】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーの溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミン13.6質量部にて中和させた。
【0189】
その後、イソシアネート基末端プレポリマーをイオン交換水に分散させた。そこに、鎖伸長剤としての2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール29.8質量部をイオン交換水59.6質量部に溶解した水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
【0190】
なお、この反応において、鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)に対する、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、0.95であった。
【0191】
そして、鎖伸長反応後、1時間熟成反応させ、その後、メチルエチルケトンおよびイオン交換水をエバポレーターにより留去し、固形分が30質量%となるようにイオン交換水で調製した。これにより、ポリウレタンディスパージョン(PUD)Aを得た。
【0192】
なお、PUD AのpH(JIS Z 8802(2011)に準拠)は8.5であり、25℃での粘度(JIS K 7117(1999)に準拠)は15mPa・sであり、平均粒子径(コールターカウンターN5(ベックマン社製)にて測定)は80nmであった。また、ウレタン基濃度とウレア基濃度との合計値(仕込み計算値)は、40.7質量%であった。
【0193】
製造例3(ポリウレタンディスパージョンB)
ジメチロールプロピオン酸18.2質量部に代えて、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(商品名DHD1000S、三井化学製、分子量1000、オキシエチレン含有量76.0質量%)135.8質量部を用い、さらに、トリエチルアミンにより中和しなかった以外は、製造例2と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン(PUD)Bを得た。
【0194】
なお、PUD BのpH(JIS Z 8802(2011)に準拠)は6.95であり、25℃での粘度(JIS K 7117(1999)に準拠)は18mPa・sであり、平均粒子径(コールターカウンターN5(ベックマン社製)にて測定)は88nmであった。また、ウレタン基濃度とウレア基濃度との合計値(仕込み計算値)は、29.4質量%であった。
【0195】
調製例1~7(バリアコート剤)
表1に記載の処方で、ポリウレタンディスパージョン(固形分濃度33%)と、硬化剤としてのタケネートWD-726(水分散性イソシアネート硬化剤、三井化学社製、固形分濃度80質量%)と、合成マイカ(商品名:NTS-5、トピー工業製、固形分濃度6質量%)とを混合し、バリアコート剤(BC)1~7を得た。
【0196】
実施例1~7、参考例8、実施例9、参考例10、実施例11~14、比較例1~3および参考例1~2
表2~表5に従い、ポリオレフィン基材としてのポリエチレンフィルム(厚み30μm)に、アンカーコート剤を、バーコーターで表中に記載の厚みとなるように塗布し、90℃で1分乾燥させた。これにより、ポリオレフィン基材の表面に、アンカーコート層を配置した。
【0197】
次いで、表2~表5に従い、アンカーコート層の表面に、表中に記載のバリアコート剤(BC1~7)を、バーコーターで表中に記載の厚みとなるように塗布し、90℃で1分乾燥させた。これにより、アンカーコート層の表面に、バリアコート層を配置した。これにより積層体を得た。
【0198】
評価
(1)サンプル作成
積層体のバリアコート層に、タケネートA-969V(三井化学社製)およびタケネートA-5(三井化学社製)の混合物(タケネートA-969V/タケネートA-5=3/1(質量比))からなるドライラミネート用接着剤を、乾燥厚み3.0g/m2となるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥させた。
【0199】
その後、ドライラミネート接着剤の乾燥面に、ポリエチレンフィルム(厚み100μm)を貼り付け、40℃で2日間養生した。
【0200】
これにより、評価サンプルを得た。
【0201】
また、参考例1として、アンカーコート層およびバリアコート層を配置せず、ポリエチレンフィルム(厚み30μm)とポリエチレンフィルム(厚み100μm)とを、上記ドライラミネート用接着剤で接着したサンプルを作成した。
【0202】
また、参考例2として、バリアコート層を配置せず、ポリエチレンフィルム(厚み30μm)にアンカーコート層を配置し、そのアンカーコート層とポリエチレンフィルム(厚み100μm)とを上記ドライラミネート用接着剤で接着したサンプルを作成した。
【0203】
(2)外観
サンプルの外観を、以下の基準で、目視により評価した。
【0204】
〇:問題なし。
【0205】
△:部分的に白化が観察された。
【0206】
×:全体的に白化、または、一部にスジが観察された。
【0207】
(3)密着性
サンプルのポリオレフィン基材(およびアンカーコート層)と、バリアコート層との間のラミネート強度を、JIS K 6854(1999)に準拠して、180度剥離試験、および、T字剥離試験(15mm幅)にて測定した。
【0208】
(4)ガスバリア性
酸素透過測定装置(OX-TRAN2/20、MOCON社製)を用いて、20℃、相対湿度80%の条件で、サンプルの1m2、1日および1気圧当たりの酸素透過量(OTR)を測定した。
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0215】
タケネートWD-725:水分散性のイソシアネート硬化剤、三井化学社製、固形分濃度100質量%
NTS-5:合成マイカ、トピー工業製、固形分濃度6質量%