(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】施釉磨きセラミックス
(51)【国際特許分類】
C04B 41/86 20060101AFI20240222BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20240222BHJP
E04F 15/08 20060101ALI20240222BHJP
G01N 21/57 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C04B41/86 R
E04F13/14 103A
E04F15/08 A
G01N21/57
(21)【出願番号】P 2020015478
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】高久 秀之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸央
(72)【発明者】
【氏名】相川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩行
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104272(JP,A)
【文献】特開平10-043059(JP,A)
【文献】特開平11-207724(JP,A)
【文献】特開平05-229884(JP,A)
【文献】特開平04-132672(JP,A)
【文献】特開2017-218356(JP,A)
【文献】特開平05-229883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/80-41/91
G01N 21/00-21/958
E04F 13/00-13/30
E04F 15/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地と、
前記素地に施釉された透明釉層と、を含み、
前記透明釉層の表面の光沢度が15~35であり、
前記透明釉層の表面の光沢面積が10~50%である
ことを特徴とする施釉磨きセラミックス。
【請求項2】
前記透明釉層の厚さが40~120μmであることを特徴とする請求項1に記載の施釉磨きセラミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施釉磨きセラミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁やタイルなどの建材の表面に所望の光沢感を付与して、独特の美感や高い意匠性を有する建材を製造する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、窯業系建築基材の一面に、特定の粒径の砂状物質を含む樹脂塗料の層を形成し、樹脂塗料が形成する層の表面が平滑な光沢面に研摩され、研摩された樹脂塗料層の上面にクリヤー層を設けてなる研摩石材調化粧板が記載されている。また、特許文献2には、予め造粒して粉体化した釉薬を用いて形成したシート状成形体をタイル素地の上に積層するか又はこの釉薬をプレス成形すると同時にタイル素地の上に積層し、その後、これを焼成した上で表面研磨することによって、深み感、奥行感に富み、表面光沢度の高い施釉磨きタイルを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-059481号
【文献】特開平5-229883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2のような方法によって所望の光沢感のある表面を有する建材が得られることは知られているが、表面に光沢感があり、さらに表面のキズが目立ちにくい建材は未だ提案されていない。
【0006】
本発明のある態様は、このような課題に鑑みてなされ、その目的の1つは、表面に所望の光沢感を有し、かつ表面のキズが目立ちにくい新たな施釉磨きセラミックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様は施釉磨きセラミックスである。この施釉磨きセラミックスは、素地と、素地に施釉された透明釉層と、を含み、透明釉層の表面の光沢度が15~35であり、透明釉層の表面の光沢面積が10~50%である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の施釉磨きセラミックスを説明するための概略断面図である。
【
図2】実施例および比較例のサンプルの製造工程を説明するための概略図である。
【
図3】実施例1~3、比較例4のサンプルの225mm
2の範囲内の表面を顕微鏡で撮影し、得られた写真を画像処理することで得られた図である。
【
図4】実施例1~3、比較例1~4のサンプルの表面の一部の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、第1実施形態の施釉磨きセラミックスを概略的に示す断面図である。施釉磨きセラミックス10は、素地12と、素地12に施釉された透明釉層14と、を含む。
【0010】
素地12を構成するセラミックスの種類は特に限定されず、施釉磨きセラミックス10の用途に適した公知のセラミックス材を適宜選択することができる。
【0011】
透明釉層14の表面の光沢度は15~35であり、透明釉層14の表面の光沢面積は10~50%である。
【0012】
ここで、光沢度は、300mm角の施釉磨きセラミックスの透明釉層の表面16箇所を、コニカミノルタ社製光沢計GM268を用いて、測定角度60°で測定して得られた値を指す。「光沢度が15~35である」とは、16箇所の光沢度の測定値すべてが「15~35」の範囲内であることを意味する。透明釉層14の表面の光沢度が15~35であることによって、所望の光沢感と意匠を実現しつつ、傷がつきにくい表面を有する施釉磨きセラミックスとすることができる。高い光沢とキズの目立ちにくさとを両立させるという観点から、光沢度は好ましくは20~30である。
【0013】
また、光沢面積は、キーエンスデジタルマイクロスコープVHX-6000シリーズにて透明釉層の225mm2の範囲内の表面を撮影した後、この装置内のソフトウェアによって画像処理し、算出した光沢面積を指す。透明釉層14の表面の光沢面積が10~50%であることによって、高い光沢を有し、擦り傷に強く、かつ衣服が引っかかりにくい表面を有する施釉磨きセラミックスとすることができる。高い光沢と、キズの目立ちにくさとを両立させるという観点から、光沢面積は、好ましくは20~40%であり、より好ましくは25~35%である。
【0014】
透明釉層14の厚さは、光沢と熱衝撃性能を両立させる観点から、好ましくは40~120μmであり、より好ましくは60~100μmであり、さらにより好ましくは70~90μmである。
【0015】
透明釉層14は、素地12上に、透明釉薬を塗布し、
焼成して硬化することによって形成された層の表面の一部を研磨することによって形成することができる。これにより、
図1に示すように、透明釉層14の表面に、凸部の頂点が平坦となった凹凸が形成される。
【0016】
透明釉薬の素地上への塗布は、公知の方法で行うことができ、例えば、スプレー、幕掛けなどによって行うことができる。層の表面の研磨は、湿式研磨装置などの公知の研磨装置を用いて行うことができる。
【0017】
図1には、素地12と透明釉層14のみ示されているが、素地12と透明釉層との間に、着色釉層を1層以上形成してもよい。着色釉層は、例えば、素地12上に、求める意匠に応じた着色釉薬を、インクジェット、転写設備などの公知の手段で塗布することによって形成することができる。
【0018】
本発明の第1実施形態の施釉磨きセラミックスは、半光沢面を有し、独特の美感を有する。このような施釉磨きセラミックスは、床、壁などの建築仕上げ材、キッチン天板、洗面台天板、テーブルなどに好適に用いることができる。特に、キッチンや洗面台に使用される天板材は、その表面で同様の硬さのものが摺動するリスクが高く、使用者に近く、照明があたることから、キズが目立ちやすい。したがって、本発明の第1実施形態の施釉磨きセラミックスは、天板材として特に適している。
【0019】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0020】
図2は、実施例および比較例のサンプルの製造工程を説明するための概略図である。まず、
図2に示すように、セラミックスの素地22上に、顔料インクをインクジェットで塗布することによって、顔料インク層24を形成する。次いで、顔料インク層24上に、同様にインクジェットによって、顔料インク層26をさらに形成する。その後、顔料インク層26の上に透明釉をスプレー塗布し、自然乾燥させ
、焼成することによって、透明釉層28を形成する。次いで、
図2中の「a」で示す点線部まで研磨し、透明釉層28の表面を半光沢面に仕上げる。すべての実施例および比較例のサンプルでの透明釉層の厚さ(透明釉層28の表面の研磨面と顔料インク層26の表面との差)は約80μmであった。
【0021】
各実施例および各比較例のサンプルの光沢度は、300mm角のサンプルの透明釉層の表面16箇所を、コニカミノルタ社製光沢計GM268を用いて、測定角度60°で測定した。
【0022】
各実施例および各比較例のサンプルの
透明釉層の225mm
2の範囲内の表面を、キーエンスデジタルマイクロスコープVHX-6000シリーズにて撮影した後、この装置内のソフトウェアによって画像処理した。
図3は、実施例1~3、比較例4のサンプルの225mm
2の範囲内の表面を顕微鏡で撮影し、得られた写真を画像処理することで得られた図である。
図3において、光沢面は白色で示されている。
【0023】
各実施例および各比較例のサンプルの光沢度および光沢面積の計測結果を表1に示す。
【表1】
【0024】
図4は、実施例1~3、比較例1~4のサンプルの表面の一部の写真である。
図4に示すように、比較例1、2のサンプルの表面は、光沢面が実施例1~3、比較例3、4よりも少ない。また、表1に示すように、比較例1、2のサンプルの表面の光沢度は、15~35の範囲内に入っていない。そのため、比較例1、2サンプルの表面の意匠は、実施例1~3、比較例3、4よりも低下していた。比較例3、4のサンプルは、高い光沢を有するものの、擦り傷がつきやすく、特に光沢度が一番高い比較例4のサンプルは擦り傷が多かった。また、比較例4のサンプルは、光沢面積が10~50%の範囲内であり、衣服への引っかかりはないものの、擦り傷が目立つものであった。
【0025】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0026】
以上の実施形態により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0027】
第2態様の施釉磨きセラミックスは、第1態様において、透明釉層の厚さが40~120μmである。この態様によれば、第1態様の光沢度および光沢面積を満たす施釉磨きセラミックスを提供できる。
【符号の説明】
【0028】
10 施釉磨きセラミックス、 12 素地、 14 透明釉層。