(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】構造物検査装置、および構造物検査方法
(51)【国際特許分類】
B64U 20/80 20230101AFI20240222BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240222BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20240222BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240222BHJP
G01V 1/00 20240101ALI20240222BHJP
B64U 101/26 20230101ALN20240222BHJP
【FI】
B64U20/80
B64C39/02
G01M17/007 C
G01M99/00 Z
G01V1/00 A
B64U101:26
(21)【出願番号】P 2020016570
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593135000
【氏名又は名称】日本工業検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢二
(72)【発明者】
【氏名】出牛 利重
(72)【発明者】
【氏名】内橋 寛晴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐基
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136914(JP,A)
【文献】特開2016-211878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/00
B64C 29/00
B64C 39/02
B64U 20/00
B64U 101/00
G01M 17/00
G01M 99/00
G01V 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面を検査する構造物検査装置であって、
無線により操縦される飛行体と、
上記構造物の壁面に近接して壁面の検査をするセンサを有するセンサ部と、
上記飛行体とセンサ部とを連結する連結部とを備え、
上記連結部は伸縮可能、かつ、伸張方向に付勢されるように設けられ、
上記センサ部は、上記構造物の壁面に転接する少なくとも3輪の車輪を備えるとともに、
上記少なくとも3輪の車輪、および上記センサが、上記連結部に対して2軸方向に揺動可能に設けられ
、
上記少なくとも3輪の車輪が、上記2軸方向の揺動により上記壁面に押し付けられることによって、上記センサ部に備えられる上記センサと上記壁面との位置関係が、上記飛行体の姿勢に係わらず保たれるように構成されていることを特徴とする構造物検査装置。
【請求項2】
請求項1の構造物検査装置であって、
上記センサ部には、4輪の上記車輪が設けられていることを特徴とする構造物検査装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の構造物検査装置であって、
上記センサ部は、
上記連結部に対して第1の揺動軸回りに揺動可能な第1の揺動部材と、
上記第1の揺動部材に対して、上記第1の揺動軸と交差する方向の第2の揺動軸回りに揺動可能な第2の揺動部材とを有し、
上記第2の揺動部材に上記センサが取り付けられていることを特徴とする構造物検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の構造物検査装置であって、
上記連結部には、伸縮量を検出する伸縮量センサが設けられるとともに、
さらに、上記伸縮量が所定の範囲にあることを表示する表示部を備えたことを特徴とする構造物検査装置。
【請求項5】
請求項4の構造物検査装置であって、
上記センサは、超音波の発射部と受信部とが一体的に形成され、超音波によって上記壁面の肉厚を測定する超音波センサであることを特徴とする構造物検査装置。
【請求項6】
請求項5の構造物検査装置であって、
上記超音波センサは、上記壁面との間に接触媒質を介在させて上記測定を行うように構成されていることを特徴とする構造物検査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうち何れか1項の構造物検査装置を用いた構造物検査方法であって、
上記センサ部の車輪を上記構造物の壁面に直接または接触媒質を介して当接させるとともに、
上記連結部が所定の範囲の伸縮量になるようにして、上記検査を行うことを特徴とする構造物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンなどの無人飛行体を用いて構造物の高所の壁面など、点検が困難な箇所を検査する構造物検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
煙突やタンクの壁面などを目視検査するためにドローン等の無人飛行体を用いることがある。また、上記検査を高精度に行うために、構造物の壁面に転接し、壁面との転接状態でドローンの飛行に伴って走行することによりドローンと壁面との間隔を一定に保つ走行車輪とを備える装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検査の内容によっては、ドローンと壁面との距離を一定に保つだけでなく、ドローンの姿勢を一定に保つことが必要な場合もある。そのような場合には、上記のような装置を用いても、操縦者の目視による操縦によってドローンの姿勢を制御する必要があり、高精度な検査を行うことは必ずしも容易ではなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、構造物の壁面などの検査をより容易に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
構造物の壁面を検査する構造物検査装置であって、
無線により操縦される飛行体と、
上記構造物の壁面に近接して壁面の検査をするセンサを有するセンサ部と、
上記飛行体とセンサ部とを連結する連結部とを備え、
上記連結部は伸縮可能、かつ、伸張方向に付勢されるように設けられ、
上記センサ部は、上記構造物の壁面に転接する少なくとも3輪の車輪を備えるとともに、上記連結部に対して2軸方向に揺動可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
これにより、センサ部が2軸方向に揺動可能に設けられていることによって、車輪を測定対象の壁面に適切に押しつけることが可能となり、飛行体の位置や姿勢の自由度を高くして、飛行体の操縦を容易にしたり、計測精度を向上させたりすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造物の高所の壁面など、点検が困難な箇所の検査をより容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】構造物検査装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】センサ部の具体的な構成を示す斜視図である。
【
図3】センサと壁面との関係の例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】センサと壁面との関係の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図5】センサと壁面との関係のさらに他の例を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
構造物検査装置は、
図1に示すように、いわゆるドローン等の飛行体100にセンサ部200が連結されて構成されている。このような飛行体100を用いた構造物検査装置では、例えば従来の磁気吸着車輪等を用いた検査装置などでは、検査対象に付属等するステフナや、ウィンドガーダ、補強環、消火設備配管などの影響によって、検査対象にアクセスすることが困難な場合でも、検査対象に直接近接するなどして検査をすることができる。
【0012】
飛行体100は、本体101にモータ102が取り付けられ、プロペラ103(ロータ)の回転によって飛ぶもので、図示しない無線の操縦装置による遠隔操作によって制御されるようになっている。上記本体101には、また、ブラケット104を介して円筒部105が取り付けられている。上記円筒部105には、センサ部200のロッド201aが摺動、伸縮可能に挿入されて支持去れるとともに、ばね202によって飛行体100とセンサ部200との間の距離が離間する方向に付勢されるようになっている。すなわち、上記円筒部105と、ロッド201aと、ばね202とによって、飛行体100とセンサ部200とを連結する連結部が構成されている。
【0013】
上記円筒部105には、上記センサ部200のロッド201aの挿入量に応じた2カ所の位置を検出する近接センサ111・112(伸縮量センサ)が取り付けられている。また、ブラケット104には、上記近接センサ111の検出結果に応じて点灯する例えば黄色、緑色、赤色などのLED113a~113cから成る表示部113が設けられている。より詳しくは、例えばロッド201aが円筒部105に挿入される挿入量が少なく、近接センサ111・112の何れもロッド201aの近接を検出しない場合には、黄色のLED113aが点灯し、もう少し飛行体100を測定対象の壁面に近づけて、センサ部200を壁面に押しつけた方がよいことを操縦者に知らせることができる。また、近接センサ111は円筒部105に挿入されたロッド201aの近接を検出する一方、近接センサ112は検出しない場合には、緑色のLED113bが点灯して、センサ部200の押しつけ力や飛行体100と壁面との距離が適切であることが示される。また、近接センサ111・112が両方ともロッド201aの近接を検出した場合には、センサ部200を壁面に押しつけすぎ、または飛行体100が壁面に近づきすぎであることを操作者に容易に伝えることができる。
【0014】
センサ部200は、
図2に示すように、上記ロッド201aの端部にヨーク部201bが設けられてヨーク201が構成されている。上記ヨーク部201bの先端部には、回動軸203を介して、枠型の枠フレーム204(第1の揺動部材)が例えば±10°程度揺動可能に設けられている。枠フレーム204における上記回動軸203が設けられている辺と隣り合う辺には、回動軸205を介して、センサフレーム206(第2の揺動部材)が例えば±10°程度揺動可能に設けられている。すなわち、枠フレーム204とセンサフレーム206とは、それぞれ互いに直交する(交差する)2軸方向に揺動可能に設けられている。上記センサフレーム206には、4隅付近に車輪207が回転自在に設けられ、構造物の壁面に転接し得るようになっている。なお、車輪は3輪設けられていれば構造物の壁面に位置決めすることが可能であるが、対象の壁面等に応じては、壁面への接触安定性などの面で4輪設けられることが、より好ましい。
【0015】
また、上記センサフレーム206の中央部付近には、センサ211(探触子)が設けられている。このセンサ211は、超音波を発射し、反射波を受信することによって、検査対象の壁面を構成する部材の肉厚測定、板厚測定、厚さ測定などを計測、検査するようになっている。超音波の発射部と受信部とが別個に設けられた分割探触子が用いられてもよいが、検査対象の表面に肌あれがある場合などを考慮すると、発射部と受信部とが一体的に形成されたものが好ましい。
【0016】
ここで、上記センサ211は、検査対象の壁面に直接当接させるようにしてもよいが、例えば
図3~
図5に示すように、接触媒質(カプラント)を介して当接させるようにしてもよい。具体的には、例えば
図3に示すように、センサ211として、振動子211aがノズル211b内に設けられるとともに、飛行体100に搭載されたタンク等から水やアルコール、これらの混合液体などを供給し、超音波が振動子211aと壁面300との間に形成される水流中を伝播するようにする、いわゆるジェット水流探触子を構成してもよい。このような構成では、連続的な測定が容易になる。また、例えば
図4に示すように、振動子211aの先端にゲル状ウェッジ211cを付着させ、上記ゲル状ウェッジ211cを壁面300に接触させる、いわゆるゲル状ウェッジ探触子を構成してもよい。このような構成では、使用される水を微量にすることができるので、飛行体100への搭載負荷を軽減することが容易にできる。また、例えば
図5に示すように、円筒状のローラ211d内に振動子211aを設けるとともに、超音波伝達液体211eを充填することによって、わずかな水でローラ211dを濡らすことで連続的な測定を容易にすることができる。
【0017】
上記のように、センサフレーム206が2軸方向に揺動可能に設けられていることによって、飛行体100の位置や姿勢が多少ずれていても、例えばいわゆるイコライズ機能によって4輪の車輪207が適切に測定対象の壁面に押しつけられるようにできる。すなわち、センサ211を壁面に適切に向き合わせ、または超音波の発射、受信方向の軸心を壁面に例えば2~3°以内程度の誤差などで垂直に位置させることなどが容易にできる。それゆえ、そのようなセンサ211の姿勢等が得られるようにできる飛行体100の位置や姿勢の許容範囲が大きくなるので、飛行体100の操縦を容易にし、操縦者の操縦負担を軽減することが可能となり、センサ211による計測精度を向上させることが容易にできる。また、上記のようにセンサ211の姿勢等を適切に保ちやすくなることから、前記のような種々の媒質を用いた計測方式の適用が容易になり、一層、超音波肉厚測定の計測精度を向上させることが容易になる。
【0018】
なお、上記の例では、壁面の肉厚を計測する例を示したが、これに限らず、高所配管の肉厚測定を付帯工事を要することなく行うことなどもできる。
【符号の説明】
【0019】
100 飛行体
101 本体
102 モータ
103 プロペラ
104 ブラケット
105 円筒部
111・112 近接センサ
113 表示部
113a~113c LED
200 センサ部
201 ヨーク
201a ロッド
201b ヨーク部
202 ばね
203 回動軸
204 枠フレーム
205 回動軸
206 センサフレーム
207 車輪
211 センサ
211a 振動子
211b ノズル
211c ゲル状ウェッジ
211d ローラ
211e 超音波伝達液体
300 壁面