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特許7441660後席ディスプレイ装置、車載システムおよび制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】後席ディスプレイ装置、車載システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60R11/02 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020016953
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021123195
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 美帆
(72)【発明者】
【氏名】小原澤 正弘
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188181(JP,A)
【文献】特開2006-248253(JP,A)
【文献】特開2008-288731(JP,A)
【文献】特開2017-144916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の後席から視認聴可能な位置に設けられた後席ディスプレイ装置であって、
蔵スピーカと、
前記車両に搭載された車載オーディオ装置から、前記内蔵スピーカに出力される音声信号と、前記音声信号とは異なる通信経路を介して供給され且つ前記内蔵スピーカとは異なるスピーカに出力される音声信号の音量に関する信号とを取得して、前記音量に関する信号に基づいて、前記内蔵スピーカに出力される音声信号の音量を増減させる制御部と、
を備える後席ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記内蔵スピーカは、ディスプレイの表面を直接に振動させて放音するディスプレイスピーカである、請求項1に記載の後席ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記音量に関する信号に対して、複数段階に設定可能なゲイン値またはオフセット値を有し、前記ゲイン値またはオフセット値を用いて前記内蔵スピーカに出力される前記音声信号の音量をさらに増減させる、請求項1または2に記載の後席ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記音量に関する信号に対して、複数段階に設定可能なゲイン値またはオフセット値を有し、前記内蔵スピーカから出力される音と、前記車載オーディオ装置が前記スピーカに出力している音が異なる場合には、前記ゲイン値またはオフセット値を増加させること、および、前記車載オーディオ装置に対して、前記スピーカから出力される音量の設定値を下げる指示を通知する、ことの少なくとも1つを実行する請求項1または2に記載の後席ディスプレイ装置。
【請求項5】
車両内の後席から視認聴可能な位置に設けられた後席ディスプレイ装置と、
前記後席ディスプレイ装置にコンテンツを出力する車載オーディオ装置と、を備え、
前記後席ディスプレイ装置は、
蔵スピーカと、
前記車載オーディオ装置から、前記内蔵スピーカに出力される音声信号と、前記音声信号とは異なる通信経路を介して供給され且つ前記内蔵スピーカとは異なるスピーカに出力
される音声信号の音量に関する信号を取得して、前記音量に関する信号に基づいて、前記内蔵スピーカに出力される音声信号の音量を増減させる制御部と、
を備える車載システム。
【請求項6】
蔵スピーカを備え、車両内の後席から視認聴可能な位置に設けられた後席ディスプレイ装置が、前記車両に搭載された車載オーディオ装置から、前記内蔵スピーカに出力される音声信号と、前記音声信号とは異なる通信経路を介して供給され且つ前記内蔵スピーカとは異なるスピーカに出力される音声信号の音量に関する信号を取得することと、
前記音量に関する信号に基づいて、前記内蔵スピーカに出力される音声信号の音量を増減させることと、
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後席ディスプレイ装置、車載システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)の進展に伴い、車載後席ディスプレイを備える車両が普及してきている(例えば、特許文献1-2参照)。車載後席ディスプレイは、TV放送やDVD等に記録された映像等を提供する車載用オーディオ装置等とともに、車両内におけるRSE(Rear Seat Entertainment)シ
ステムを構成する。このような車載用オーディオ装置として、例えば、ナビゲーション機能、オーディオ機能、TV/ラジオ放送受信機能、画像再生機能、通信機能等を提供するAVN機(車載用オーディオ・ビジュアル・ナビゲーション一体機)が例示される。車載用オーディオ装置は、例えば、運転席側のセンターコンソール等に設けられる。後席に着座する乗員は、例えば、車両内の後席天井の、車幅方向略中央部等に設けられた車載後席ディスプレイを通じて、車載用オーディオ装置等から当該ディスプレイに出力されたTV放送やDVD映像等のコンテンツを楽しむことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-288731号公報
【文献】特開2006-248253号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両内に構築されたRSEシステムにおいては、車載後席ディスプレイに表示されるコンテンツの音声等(楽曲や効果音、会話音等)は、主に車両が備えるスピーカ(以下、車両スピーカともいう)を用いて提供される。車両スピーカは、例えば、運転席右側、助手席左側、運転席後部席右側、助手席後部席左側に対応する、それぞれのドアの下部内側(車室側)に設けられる。このため、車両スピーカを通じてコンテンツの音声等が出力されるときには、車載後席ディスプレイに表示されたコンテンツの映像と、車両スピーカ出力される当該映像に伴う音声との間に一体感や臨場感が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、車室内において、映像と音声との一体感や臨場感が提供可能な車載後席ディスプレイの技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示の一形態は、後席ディスプレイ装置として例示される。本後席ディスプレイ装置は、車両内の後席から視認聴可能な位置に設けられた後席ディスプレイ装置である。後席ディスプレイ装置は、ディスプレイと、内蔵スピーカと、車載オーディオ装置から、車両に搭載された車両スピーカに出力される音の制御に関する信号を取得して、該音の制御に関する信号に基づいて、内蔵スピーカから出力される音を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車室内において、映像と音声との一体感や臨場感が提供可能な車載後席ディスプレイの技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車載システムの機能ブロックの一例を示す図である。
図2】車載システムの配置位置を説明する図である。
図3】車両スピーカによる音像を説明する図である。
図4】実施形態に係る車載システムによる映像および音像を説明する図である。
図5】ECUのハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る音量調整処理に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施の形態に係る車載システムについて説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本車載システムは実施形態の構成には限定されない。
【0010】
〔実施形態1〕
1.システム概要
図1は、本実施形態に係る車載システム1の機能ブロックの一例を示す図である。本実施形態に係る車載システム1は、車両内の後席側に設けられた車載後席ディスプレイを用いて、TV放送やDVD等に記録された映像、ゲーム等の各種コンテンツを後席に着座する搭乗者に提供する車載用のオーディオシステムである。車載システム(情報システムともいう)1を搭載する車両では、RSE(Rear Seat Entertainment)システムが構築さ
れる。なお、以下の説明においては、車載後席ディスプレイを「RSE」、「後席ディスプレイ」とも称し、当該ディスプレイを備える装置を「後席ディスプレイ装置」と称する。
【0011】
本実施形態に係る車載システム1は、構成要素として車載用オーディオ装置が備えるHU-ECU(Head Unit-Electronic Control Unit)10と、後席ディスプレイ装置が備
えるRSE-ECU(Rear Seat Entertainment-Electronic Control Unit)20と、車
体(例えば、ドアの車室側)に設けられた車両スピーカ30を備える。
【0012】
HU-ECU10が設けられる車載用オーディオ装置として、例えば、ナビゲーション機能、オーディオ機能、TV/ラジオ放送受信機能、画像再生機能、通信機能等を一体的に提供可能なAVN機が例示される。但し、車載用オーディオ装置は、ナビゲーション機能を専用に提供するナビゲーション装置であってもよく、オーディオ機能やCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等に記録されたコンテンツ情報の再生機能を専用に提供するオーディオ装置であってもよい。また、車両に搭乗する搭乗者のスマートフォンやタブレット端末、音楽再生機等と連携し、ゲームや情報検索等を提供するオーディオ装置であってもよい。車載後席ディスプレイに表示可能な映像コンテンツが提供可能な車載装置であればよい。
【0013】
HU-ECU10は、音声処理機能を備える。車載用オーディオ装置では、搭乗者等によって設定された音量の設定情報(VOL設定)に基づいて、提供されるコンテンツの音声等に関する音量レベルが制御される。HU-ECU10は、設定された音量調整値のステップ値に従って、車体に設けられた車両スピーカ30の音量レベルを段階的に増加減させる。HU-ECU10は、音量レベルに従ってレベル値が調整されたコンテンツの音声等をハーネスケーブル1aによって接続された車両スピーカ30に出力する。
【0014】
また、HU-ECU10は、車載用オーディオ装置で車両スピーカ30に出力される音信号のフェーダー(前後)/バランス(左右)が設定される場合には、当該設定値に従って車両スピーカ30に出力する音量レベル値を増加減させる。例えば、運転席右側に設けられた車両スピーカ30からの出力レベルを大きくするとともに、運転席左側(助手席左
側)の車両スピーカ30からの出力レベルを小さくする。HU-ECU10は、フェーダー/バランスの設定に従って音量レベルのレベル値が調整されたコンテンツの音声等をフェーダー/バランスで設定された前後左右の対応する車両スピーカ30に出力する。
【0015】
また、HU-ECU10は、車載用オーディオ装置がイコライジング機能を有する場合には、イコライザで設定された音域(高音域、低音域、中音域)を示す情報を取得する。また、各音域に対する音量レベルの強弱を示す情報(音量レベル値、音量調整のためのステップ値等)を取得する。そして、HU-ECU10は、イコライジング機能で設定された音域および各音域に対する音量調整値に従って音量レベルを増減させたコンテンツの音声等を車両スピーカ30に出力する。
【0016】
なお、HU-ECU10とRSE-ECU20とは、車内に設けられた通信インターフェース1bを通じて接続される。このような通信インターフェースとして、GVIF(Gigabit Video Interface)が例示される。GVIFは、DVDやBD等の再生動画映像や
地デジ等のTV放送の動画映像、車載カメラ映像等を1対の差動信号による高速デジタル伝送が可能な、SERDES規格に準拠したI/F規格である。但し、HU-ECU10とRSE-ECUユニット20とが接続される通信インターフェースは、車載システム1に応じて適宜の通信方式が採用できる。
【0017】
HU-ECU10は、車載用オーディオ装置のディスプレイ等に表示されるコンテンツの映像を後席ディスプレイ装置に出力する。また、HU-ECU10は、コンテンツの映像信号とともに、後席ディスプレイ装置の備えるスピーカ20a用の音声信号(音レベル値は固定設定)をRSE-ECUユニット20に出力する。再生されたコンテンツの映像は後席ディスプレイ装置の備えるディスプレイに表示され、コンテンツの音声等は後席ディスプレイ装置の備えるスピーカ20aヘッドホン端子に出力される。
【0018】
本実施形態においては、後述するように、HU-ECU10とRSE-ECU20とは、車内に設けられたAVC-LAN(Audio Visual Communication-Local Area Network
)といった情報通信に関する車内ネットワーク1cを通じて接続される。HU-ECU10とRSE-ECU20とが接続される車内ネットワーク1cにおいても、車載システム1に応じて適宜の通信方式が採用できる。
【0019】
図2は、車両内における車載システム1の配置位置を説明する図である。図2においては、7人乗りのミニバンといった車両に搭載された車載システム1を上部側から見た一形態が例示される。図2に示す形態では、車載用オーディオ装置は、運転席が位置する車両前方側のセンターコンソール近傍に設けられる。そして、後席ディスプレイ装置は、車両内の後席が位置する天井の、車幅方向略中央部付近に設けられる。車両スピーカ30は、例えば、運転席右側に設けられた車両スピーカ30a、助手席左側に設けられた車両スピーカ30bを含む。また、運転席後部席右側に設けられた車両スピーカ30c、助手席後部席左側に設けられた車両スピーカ30dを含む。車両内においては、車載用オーディオ装置によって設定された音量調整値に従って制御された音情報が車両スピーカ30a、30b、30c、30dを通じて、搭乗者に提供される。HU-ECU10によって、各種の調整(音量レベルの段階的な増加減、車両スピーカ間バランス、再生音域の強弱等)がなされた音声信号は、車両スピーカ30a、30b、30c、30dを通じて出力される。なお、以下では、車体に設けられた車両スピーカ30a、30b、30c、30dを総称して「車両スピーカ30」ともいう。
【0020】
車載用オーディオ装置では、TV放送やDVD等に記録された映像、ゲーム等のコンテンツが車両に搭乗する搭乗者に提供される。運転席や助手席に乗車する搭乗者には、車載用オーディオ装置が備えるLCD等の表示デバイスを通じてコンテンツの映像が表示され
、主に車両スピーカ30a、30bを通じて当該コンテンツの音情報(楽曲や効果音、会話音等)が提供される。また、運転席後部席や助手席後部席に乗車する搭乗者には、RSEを通じてコンテンツの映像が表示され、主に車両スピーカ30c、30dを通じて当該コンテンツの音情報が提供される。
【0021】
図3は、車両スピーカ30を用いてコンテンツが提供される場合の音像および映像を説明する図である。車両スピーカ30は、図3示すように、車体下方側に設けられる。運転席や助手席の搭乗者には、センターコンソール付近に設けられた車載用オーディオ装置のディスプレイを通じてTV放送やDVD等のコンテンツの映像が提供され、主に車両スピーカ30a、30bを通じて当該コンテンツの音情報が提供される。このため、表示デバイスに表示されたコンテンツ映像の視認方向と、車両スピーカ30a、30bによるコンテンツ音像の定位領域(Z2)とは相互に重なり合い、一体感を持ってコンテンツを提供できる。しかしながら、後席においては、後席ディスプレイ装置は車両の天井側に位置し、車両スピーカ30c、30dは下方側に位置することになる。このため、後席ディスプレイ装置を通じて表示されたコンテンツ映像の視認方向は、車両スピーカ30c、30dによるコンテンツ音像の定位領域(Z1)には重ならないため、映像と音との一体感が乏しい。
【0022】
図1に戻り、本実施形態に係る車載システム1においては、後席ディスプレイ装置は、専用のスピーカ20aを内蔵する。そして、本実施形態に係るRSE-ECU20は、通信インターフェース1bを通じて映像とともに伝送される音情報を取得し、スピーカ(以下、「内蔵スピーカ」ともいう)20aに出力する。このようなスピーカとして、例えば、振動素子を通じてディスプレイ自体を振動させ、映像に伴う音を放音可能なDisplayスピーカ(「ディスプレイスピーカ」ともいう)が例示される。車室内においては、車両スピーカ30にDisplayスピーカが加わることで、後席での音像を映像が表示されるディスプレイ近傍に定位できる。この結果、本車載システムによれば、後席ディスプレイ装置を利用する搭乗者に対して、映像と音との一体感を確保したコンテンツの提供が可能になる。なお、後席ディスプレイ装置に内蔵される、専用の内蔵スピーカ20aは、Displayスピーカ以外のスピーカであってもよい。
【0023】
また、本実施形態に係るRSE-ECU20は、車両スピーカ30に設定された音量設定に関する情報(VOL情報)を、車内ネットワーク1cを通じてHU-ECU10から取得する。VOL情報には、例えば、音量を増減させるVOLステップ値、車両スピーカ間のフィーダー/バランスの設定値が含まれる。また、車載用オーディオ装置がイコライザ機能を有する場合には、当該イコライザ機能によって設定された音源に対する周波数帯域毎の音量設定値を取得してもよい。そして、RSE-ECU20は、AVC-LAN等の車内ネットワーク1cを通じて取得された車両スピーカ30の音量設定に関する情報に合わせて、内蔵スピーカ20aから出力される音量を連動して制御する。
【0024】
本実施形態の後席ディスプレイ装置においては、車載用オーディオ装置等のボリューム操作に連動しないような音源(例えば、ライン出力(-10dBV固定)等)を再生する場合でも、車載用オーディオ装置等のボリューム操作に連動して後席ディスプレイ装置から出力される音量が調整できる。すなわち、車載用オーディオ装置のボリューム操作に連動して、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aの音量を増減させることができる。この結果、車室内において、後席ディスプレイ装置を通じて提供されるコンテンツを視聴する搭乗者に対し、他のスピーカ(車両スピーカ30)との音量バランスを適正に保つことが可能になる。
【0025】
さらに、車両スピーカ30と後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aに供給される音情報を個々に処理することが可能になるため、例えば、それぞれの音響特性に対して適
切な音信号が供給可能になる。RSE-ECU20は、例えば、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aの周波数特性に合わせて再生する音の特性周波数を強調/弱めることで、音の周波数領域での調整を行い、後部席での音響を最適にすることが可能になる。
【0026】
本実施形態のRSE-ECU20においては、車載用オーディオ装置の音量設定値に対して可変可能なゲイン値(例えば、3dBV単位で増減)またはオフセット値を設定可能に持たせてもよい。RSE-ECU20は、例えば、車載用オーディオ装置の音量設定値に対して異なるゲイン値またはオフセット値が設定された複数のVOLカーブをメモリ等に保持する。そして、RSE-ECU20は、上記可変可能なゲイン値またはオフセット値を、HU-ECU10から取得した音量設定値に合わせて可変させ、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aから出力される音量を加減する。本実施形態においては、車載用オーディオ装置の音量設定値に連動して増減する後席ディスプレイ装置のスピーカ音量を、後部席の搭乗者の意図する好みに応じて調整できる。
【0027】
さらに、本実施形態のRSE-ECU20においては、前席側と後席側とで異なる音源を再生しているときには、同じ音源を再生しているときに比べ、後席側の音量を前席側に比べて大きく、または、小さくするようにしてもよい。RSE-ECU20は、例えば、車内ネットワーク1cを通じて前席側と後席側とで異なる音源を再生していることを示す情報、コンテンツの種別やコンテンツの提供源を示す情報を取得する。そして、RSE-ECU20は、前席側と後席側とで異なる音源を再生しているときには、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aから出力される音量レベルをコンテンツの種別やコンテンツの提供源に対応させて増加減させる。
【0028】
本実施形態においては、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aは、前席側と後席側とで異なる音源を再生しているときでも、提供されるコンテンツを、音源に適する音量バランスで視聴することが可能になる。例えば、車両スピーカ30を通じて音楽が提供されているときに、後席ディスプレイ装置でニュースを視聴している場合には、アナウンス音声が明確に聞こえるようにスピーカ20aから出力される音量を相対的に大きくする。また、前席側でニュース等を視聴し、後席側で音楽が提供されているときには、後席ディスプレイ装置のスピーカ20aから出力される音量を相対的に小さくすることができる。なお、このような音量調整は、例えば、車内ネットワーク1cを通じて接続されたHU-ECU10に対して、RSE-ECU20から音量レベルを大きく、または、小さくするように指示を通知してもよい。さらに、RSE-ECU20は、車内ネットワーク1cを通じて接続されたHU-ECU10から、音量設定に関する情報(音制御信号)のみを取得してもよい。後席ディスプレイ装置が内蔵するDVDプレイヤ、外部入力端子に接続されたゲーム機等の車載用オーディオ装置とは独立したコンテンツを再生する場合には、RSE-ECU20は、当該音量設定に関する情報に基づいた車室内の音量制御が可能になる。
【0029】
図4は、本実施形態に係る車載システム1によって提供されるコンテンツの映像および音像を説明する図である。本実施形態に係る車載システム1では、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aと車両スピーカ30c、30dから出力される音により、後部席の搭乗員に対する音像Z3が内蔵スピーカ20a近傍に定位するように提供される。後席ディスプレイ装置においては、HU-ECU10から取得された車載用オーディオ装置の音量設定に関する情報(VOL情報)に連動して調整された、コンテンツ音が内蔵スピーカ20aを通じて出力される。この結果、車室内においては、後席ディスプレイ装置に表示されるコンテンツを視聴する搭乗者に対し、他のスピーカ(車両スピーカ30)との間の音量バランスを適正に保つことが可能になる。本実施形態に係る車載システム1によれば、後席ディスプレイ装置の利用者に対して、映像と音声が一体になったコンテンツの提供が可能になり、臨場感を与えることが可能になる。
【0030】
2.構成
図5は、ECUのハードウェア構成の一例を示す図である。本実施形態のHU-ECU10、RSE-ECU20は、図5に示す構成のECU100によって実現される。図5に示すように、ECU100は、接続バス100fによって相互に接続されたプロセッサ100a、主記憶装置100b、補助記憶装置100c、通信IF100d、入出力IF100eを構成要素に含む制御用のコンピュータである。HU-ECU10およびRSE-ECU20を構成するECU100においては、接続バス100fには音声処理機能を提供する専用のプロセッサ(例えば、DSP等)が接続されてもよい。主記憶装置100bおよび補助記憶装置100cは、ECU100が読み取り可能な記録媒体である。上記の構成要素はそれぞれ複数に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0031】
プロセッサ100aは、ECU100全体の制御を行う中央処理演算装置である。プロセッサ100aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。プロセッサ100aは、例えば、補助記憶装置100cに記憶されたプログラムを主記憶装置100bの作業領域に実行可能に展開し、当該プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことで所定の目的に合致した機能を提供する。本実施形態では、RSE-ECU20を構成するECU100のプロセッサ100aは、「制御部」の一例である。
【0032】
但し、プロセッサ100aが提供する一部または全部の機能が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提
供されてもよい。同様にして、一部または全部の機能が、FPGA(Field-Programmable
Gate Array)、数値演算プロセッサ、ベクトルプロセッサ、画像処理プロセッサ等の専
用LSI(large scale integration)、その他のハードウェア回路で実現されてもよい
【0033】
主記憶装置100bは、プロセッサ100aが実行するプログラム、当該プロセッサが処理するデータ等を記憶する。主記憶装置100bは、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置100cは、プロセッサ100a等により実行されるプログラムや、動作の設定情報などを記憶する記憶媒体である。補助記憶装置100cは、例えば、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、
USBメモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等を含む。通信IF100dは、ECU100と他の装置とを接続させるための通信インターフェースである。本実施形態においては、GVIF、AVC-LAN等の通信インターフェースが例示される。但し、通信IF100dは、他の機器との接続方式に応じて適宜の構成を採用できる。入出力IF100eは、ECU100に接続される入力デバイス、出力デバイスとの間でデータの入出力を行うインターフェースである。入出力IF100eを通じて、HU-ECU10に接続される車載オーディオ装置のディスプレイや車両スピーカ30に対するコンテンツの映像情報、音声情報等が出力される。また、RSE-ECU20においては、入出力IF100eを通じて、後席ディスプレイ装置のディスプレイにコンテンツの映像情報が出力される。そして、本実施形態においては、車載オーディオ装置の音の設定に関する情報(VOLステップ値、フィーダー/バランス値、音域毎の音量設定値等)に連動して調整された音量レベルの音声情報が後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aに出力される。
【0034】
3.処理の流れ
次に、図6を参照して、本実施形態に係る音量調整処理に関する処理の流れを説明する。図6は、本実施形態に係るRES-ECU20で提供される音量調整処理に関する処理
の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理は、RSE-ECU20を構成するECU100のプロセッサ100aが補助記憶装置100c等に記憶されたプログラムを実行することで提供される。
【0035】
図6のフローチャートにおいて、処理の開始は、後席ディスプレイ装置に対するコンテンツの提供のときが例示される。RSE-ECU20は、通信インターフェース1b、車内ネットワーク(AVC-LAN等)1cを通じて、HU-ECU10との間の通信を確立する。そして、RSE-ECU20は、通信インターフェース1bを通じて伝送されたコンテンツの映像情報、音声情報、制御信号等を取得する(ステップS1)。また、RSE-ECU20は、車内ネットワーク1cを通じて接続されたHU-ECU10から、音量調整に関する情報を取得する(ステップS2)。音量調整に関する情報として、例えば、VOL情報、音量を増加減するステップ値を示す情報、車両スピーカ30の音量バランス値を示す情報(Fedar値等)、音域毎の強弱等を示す情報等が例示される。また、RSE-ECU20は、前席側と後席側とにおけるコンテンツの再生状態に関する情報を取得する(ステップS3)。コンテンツの再生状態を示す情報として、例えば、運転席側と後席側とで再生されるコンテンツ(音源)が異なることを示す情報、コンテンツの種別等を示す情報が例示される。
【0036】
そして、RSE-ECU20は、取得した情報に応じて、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aから出力される音情報の音量レベルを調整するための指示を、音声処理機能を提供するDSP等に通知する(ステップS4)。音量レベルの通知は、例えば、可変設定が可能なステップ単位の±ゲイン値やオフセット値等によって行われる。このようなステップ単位の±ゲイン値やオフセット値等はVOL情報に対するテーブル値として、補助記憶装置等に持たすことができる。そして、例えば、取得したVOL情報やステップ値に合わせて±ゲイン値やオフセット値等を特定し、内蔵スピーカ20aから出力される音量レベル値を増加減させる。また、取得された車両スピーカ間バランスに合わせて、内蔵スピーカ20aから出力される音量レベル値を増加減させる。例えば、取得されたFedar値が、後席側の車両スピーカ(30c、30d)の音量を相対的に強めている場合では、当該音量レベルに合わせて内蔵スピーカ20aから出力される音量レベル値を増加させる。
【0037】
さらに、例えば、取得された、音源に対する音域(低音域、中音域、高音域)の音量の強弱に合わせて内蔵スピーカ20aから出力される音量レベル値を増加減させる。例えば、中音域の音量が他の音域と比較して弱められている場合には、中音域の音量レベル値を減少させる。また、音源に対する音域(低音域、中音域、高音域)の音量の強弱設定に合わせて、内蔵スピーカ20aの周波数特性に沿って再生する音の特性周波数を強調/弱めることで、音の周波数領域での調整が行われる。
【0038】
また、前席側と後席側とで異なる音源を再生しているときには、同じ音源を再生しているときに比べ、後席ディスプレイ装置側の音量を車載オーディオ装置側に比べて大きく、または、小さくする。例えば、車両スピーカ30を通じて音楽が提供されているときに、後席ディスプレイ装置でニュースを視聴している場合には、アナウンス音声が明確に聞こえるように内蔵スピーカ20aから出力される音量を相対的に大きくする。また、前席側でニュース等を視聴し、後席側で音楽が提供されているときには、内蔵スピーカ20aから出力される音量を相対的に小さくする。このような音量調整は、例えば、車内ネットワーク1cを通じて接続されたHU-ECU10に対して、RSE-ECU20から音量レベルを大きく、または、小さくするように指示を通知するようにしてもよい。
【0039】
ステップS5において、RSE-ECU20では、S1からS4の処理で調整設定された音量レベル値で再生された音声情報が、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aに
出力される。後席ディスプレイ装置を視聴する後席の搭乗者には、内蔵スピーカ20aと車両スピーカ30との連動によって、映像と音声が一体になったコンテンツが提供される。ステップS5の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態に係る車載システム1においては、車載後席ディスプレイ(RSE)は、専用のスピーカ20aを内蔵する構成とした。そして、本実施形態に係るRSE-ECU20は、車内ネットワーク(例えば、AVC-LAN)1cを通じて、車載用オーディオ装置で設定された音量調整に関する情報をHU-ECU10から取得する構成とした。音量調整に関する情報として、例えば、VOL情報、音量を増加減するステップ値を示す情報、車両スピーカ30の音量バランス値を示す情報(Fedar値等)、音域毎の強弱等を示す情報等が取得される。さらに、本RSE-ECUは、前席側と後席側とにおけるコンテンツの再生状態に関する情報を取得する構成とした。コンテンツの再生状態を示す情報として、例えば、運転席側と後席側とで再生されるコンテンツ(音源)が異なることを示す情報、コンテンツの種別等を示す情報が取得される。
【0041】
そして、本実施形態に係る車載システム1においては、取得された音量調整情報に合わせて、後席ディスプレイ装置の内蔵スピーカ20aから出力される音量レベルを連動させて調整する構成とした。この結果、他のスピーカ(車両スピーカ30)との間の音量バランスを適正に保つことが可能になり、後席ディスプレイ装置の利用者に対して、映像と音声が一体になったコンテンツの提供が可能になる。
【0042】
(その他)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本実施の形態の開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組合せて実施することができる。
【0043】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0044】
《コンピュータが読み取り可能な記録媒体》
情報処理装置その他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記何れかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0045】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0046】
1 車載システム(情報システム)
1a ハーネスケーブル
1b 通信インターフェース(GVIF)
1c 車内ネットワーク(AVC-LAN)
10 HU-ECU(ECU)
20 RSE-ECU(ECU)
20a スピーカ(内蔵)
30 車両スピーカ
100 ECU
100a プロセッサ
100b 主記憶装置
100c 補助記憶装置
100d 通信IF
100e 入出力IF
100f 接続バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6