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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】磁気ディスク基板用研磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/84 20060101AFI20240222BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20240222BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240222BHJP
【FI】
G11B5/84 A
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020018012
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021125278
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000178310
【氏名又は名称】山口精研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】安藤 順一郎
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077764(JP,A)
【文献】特開2019-008846(JP,A)
【文献】特開2019-079583(JP,A)
【文献】特開2019-006935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/84 - 5/858
C09K 3/14
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカと、
水溶性高分子化合物と、
酸と、
水と
を含み、
前記酸は、
リン含有無機酸、及び/または、リン含有有機酸であり、
前記水溶性高分子化合物は、
カルボン酸基を有する単量体、N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体、及び、スルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である、粗研磨後の磁気ディスク基板の研磨に使用する、磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項2】
前記水溶性高分子化合物は、
カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が50~95mol%、
N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体に由来する構成単位の割合が5~40mol%、
アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体に由来する構成単位の割合が0.3~10mol%、
スルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が0.01~20mol%
の範囲にある請求項1に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸基を有する単量体は、
アクリル酸またはその塩、及び、メタクリル酸またはその塩から選ばれる単量体である請求項1または2に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項4】
前記スルホン酸基を有する単量体は、
イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれる単量体である請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項5】
前記リン含有無機酸は、
リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、及びトリポリリン酸
からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である請求項1に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項6】
前記リン含有有機酸は、
2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、及びα―メチルホスホノコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物である請求項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項7】
前記研磨剤組成物は、
酸化剤を更に含有する請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【請求項8】
無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に用いられる請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、ハードディスクといった磁気記録媒体等の電子部品の研磨に使用される磁気ディスク基板用研磨剤組成物に関する。特に、ガラス磁気ディスク基板やアルミニウム磁気ディスク基板などの磁気記録媒体用基板の表面研磨に使用される研磨剤組成物に関し、更に、アルミニウム合金製の基板表面に無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成した磁気記録媒体用アルミニウム磁気ディスク基板の表面研磨に使用される磁気ディスク基板用研磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム磁気ディスク基板の無電解ニッケル-リンめっき皮膜表面を研磨するための磁気ディスク基板用研磨剤組成物には、磁気記録密度の向上を目的として、種々の研磨特性の向上が期待されている。例えば、スクラッチの存在により、当該スクラッチ部分で書き込みエラーや読み込みのエラー等の原因となることがあり、或いは、スクラッチ部分の周囲に生じたバリによって、ヘッドの衝突等の原因となったりすることもある。
【0003】
そこで、スクラッチを低減する目的で、磁気ディスク基板用研磨剤組成物の機械研磨を担う砥粒部分として、コロイダルシリカがアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に主に使用されるようになっている。この場合、工業的な研磨において、磁気ディスク基板用研磨剤組成物による機械研磨を担う砥粒部分と、化学研磨を担う薬剤成分とが、実際の研磨の直前に混合されて使用されること多い。
【0004】
しかしながら、砥粒部分としてのコロイダルシリカと薬剤成分とが混合されると、コロイダルシリカは一般に凝集傾向を示す。かかる現象への対策として、例えば、粗大粒子や凝集粒子を除去したり、粒子の形状を調整したり、研磨剤の腐食性を調整したりする試み(特許文献1)、粒子の形状の調整を図る試み(特許文献2)、凝集粒子の含有量の調整を図る試み(特許文献3)、及び、特定の共重合体添加によりコロイダルシリカの凝集を抑制し、研磨後の基板の表面状態を改善する試み(特許文献4)等の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-120850号公報
【文献】特開2009-172709号公報
【文献】特開2010-170650号公報
【文献】特開2019- 79583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
更に、磁気記録密度の向上の観点から、スクラッチの低減に加え、新たに「ハレーションの低減」と「うねりの低減」が求められている。ここで、ハレーションとは、基板全表面欠陥検査機((株)日立ハイテクファインシステムズ社製NS2000H)を用い、特定の検査条件下で検出可能な基板表面の微細な欠陥であり、ハレーションカウントとして定量評価することができるものである。なお、基板全表面欠陥検査機の詳細については後述する。
【0007】
「ハレーション」は、基板表面の何らかの微細な不均一性が基板の広範囲に存在することに起因する現象と考えられており、研磨パッド、キャリア、基板、研磨剤組成物のそれぞれの持つ特性の不調和が原因として一般に考えられている。特に近年において、ハレーションの存在が磁気記録密度の向上の阻害要因となることが新たな問題として提起されており、かかるハレーションの低減が求められている。
【0008】
一方、「うねり」は、従来から基板表面全体のうねりの平均値を低減させることが求められている。更に、基板表面の中心部から外周部に向かうにつれて平均値及びバラツキが増加傾向になることもあり、磁気記録密度の向上の阻害要因として問題となっている。
【0009】
これに対し、例えば、特許文献4には、特定の共重合体を添加することにより、研磨後の基板表面のうねり及びハレーションを改善することが提案されている。しかしながら、研磨速度とのバランスにおいてこれらの性能について、より一層の改善が求められている。
【0010】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、生産性を低下させることなく、研磨後の基板のうねりの低減化及びハレーションの低減化の双方を可能とするための磁気ディスク基板用研磨剤組成物の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願出願人は鋭意検討を行った結果、以下に示す磁気ディスク基板用研磨剤組成物を用いることにより、生産性を損なうことなく、かつうねり及びハレーションの低減化を実現可能とする本発明に到達した。
【0012】
[1] コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、酸と、水とを含み、前記酸は、リン含有無機酸、及び/または、リン含有有機酸であり、前記水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体、N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体、及び、スルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である、粗研磨後の磁気ディスク基板の研磨に使用する、磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0014】
] 前記水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が50~95mol%、N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体に由来する構成単位の割合が5~40mol%、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体に由来する構成単位の割合が0.3~10mol%、スルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位の割合が0.01~20mol%の範囲にある前記[1]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0015】
] 前記カルボン酸基を有する単量体は、アクリル酸またはその塩、及び、メタクリル酸またはその塩から選ばれる単量体である前記[1]または[2]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0016】
] 前記スルホン酸基を有する単量体は、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれる単量体である前記[1]~[]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0017】
] 前記リン含有無機酸は、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、及びトリポリリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である前記[]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0018】
] 前記リン含有有機酸は、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、及びα―メチルホスホノコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物である前記[]に記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0019】
] 前記研磨剤組成物は、酸化剤を更に含有する前記[1]~[]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【0020】
] 無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板の研磨に用いられる前記[1]~[]のいずれかに記載の磁気ディスク基板用研磨剤組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物は、研磨速度の向上をさせることにより生産性を損なうことがなく、かつ、研磨後のうねり及びハレーションの低減を可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物の実施の形態について説明する。なお、本発明の磁気ディスク基板用研磨剤組成物は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲において、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0023】
1. 磁気ディスク基板用研磨剤組成物
本発明の一実施形態の磁気ディスク基板用研磨剤組成物(以下、単に「研磨剤組成物」と称す。)は、コロイダルシリカと、水溶性高分子化合物と、酸と、水とを含むものである。以下に、各構成についてそれぞれ詳述する。
【0024】
1.1 コロイダルシリカ
本実施形態の研磨剤組成物に含有されるコロイダルシリカは、平均粒子径(D50)が1~100nmであることが好ましく、更に3~80nmであることが好ましい。
【0025】
コロイダルシリカの形状は、球状、金平糖型(表面に凸部を有する粒子状)、異形型などの形状が知られており、水中に一次粒子が単分散してコロイド状をなしている。本発明で使用されるコロイダルシリカとしては、球状、または球状に近いコロイダルシリカが好ましい。球状、または球状に近いコロイダルシリカを用いることで、研磨後の基板の表面平滑性をより向上させることができる。
【0026】
コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸アルカリ金属塩を原料とし、当該原料を水溶液中で縮合反応させて粒子を成長させる水ガラス法、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを原料とし、当該原料をアルコール等の水溶性有機溶媒を含有する水中で、酸またはアルカリでの加水分解による縮合反応によって粒子を成長させるアルコキシシラン法、金属ケイ素と水をアルカリ触媒の存在下、反応させてシリカ粒子を合成する方法などがある。
【0027】
コロイダルシリカは球状、鎖状、金平糖型(表面に凸部を有する粒子状)、異形型などの形状が知られており、水中に一次粒子が単分散してコロイド状をなしている。本発明で使用されるコロイダルシリカとしては、球状または球状に近いコロイダルシリカが好ましい。
【0028】
研磨剤組成物中のコロイダルシリカの濃度は、1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、2~40質量%である。
【0029】
1.2 水溶性高分子化合物
本発明で使用される水溶性高分子化合物は、カルボン酸基を有する単量体、N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体、及び、スルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体である。
【0030】
1.2.1 カルボン酸基を有する単量体
カルボン酸基を有する単量体としては、不飽和脂肪族カルボン酸及びその塩が好ましく用いられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0031】
1.2.2 N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体
N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体の具体例としては、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-iso-プロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-iso-ブチルアクリルアミド、N-sec-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-iso-プロピルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-iso-ブチルメタクリルアミド、N-sec-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0032】
1.2.3 スルホン酸基を有する単量体
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0033】
1.2.4 共重合体
本発明の研磨剤組成物に含有される水溶性高分子化合物は、上記したカルボン酸基を有する単量体、N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体、及び、スルホン酸基を有する単量体を必須単量体として構成される共重合体である。
【0034】
カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位が共重合体に占める割合は、50~95mol%が好ましく、60~93mol%がより好ましく、70~90mol%が更に好ましい。
【0035】
N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体に由来する構成単位が共重合体に占める割合は、5~40mol%が好ましく、6~35mol%がより好ましく、7~30mol%が更に好ましい。
【0036】
アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体に由来する構成単位が共重合体に占める割合は、0.3~10mol%が好ましく、0.6~9mol%がより好ましく、1.0~8mol%が更に好ましい。
【0037】
スルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位が共重合体に占める割合は、0.01~20mol%が好ましく、0.1~10mol%がより好ましく、0.2~5mol%が更に好ましい。
【0038】
水溶性高分子化合物において、カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位及びスルホン酸基を有する単量体に由来する構成単位が、酸の状態で存在する割合が多いか、塩の状態で存在する割合が多いかは、水溶性高分子化合物のpH値で評価できる。すなわち、酸として存在する割合が多い場合、pH値は低くなり、塩として存在する割合が多い場合、pH値は高くなる。本発明の研磨剤組成物において、例えば、濃度10質量%の水溶性高分子化合物水溶液におけるpH値(25℃)が0.1~13.0の範囲の水溶性高分子化合物を用いることができる。
【0039】
1.2.5 水溶性高分子化合物の製造方法
水溶性高分子化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、水溶液重合法を用いて製造するものが好ましい。かかる水溶液重合法によれば、均一な溶液として水溶性高分子化合物を得ることができる。
【0040】
上記水溶液重合の重合溶媒としては、水性の溶媒であることが好ましく、特に好ましくは水である。また、上記単量体成分の溶媒への溶解性を向上させるために、各単量体の重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えてもよい。上記有機溶媒としては、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
以下に、上記水性溶媒を用いた水溶性高分子化合物の製造方法を説明する。重合反応では公知の重合開始剤を使用できるが、特にラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0042】
ラジカル重合開始剤として、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、過酸化水素等の水溶性過酸化物、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等の油溶性過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物が挙げられる。これらの過酸化物系のラジカル重合開始剤は、1種類のみ使用しても、または2種類以上併用してもよい。
【0043】
上述した過酸化物系のラジカル重合開始剤の中でも、生成する水溶性高分子化合物の分子量の制御が容易に行えることから、過硫酸塩やアゾ化合物が好ましく、アゾビスイソブチロニトリルが特に好ましい。
【0044】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、水溶性高分子化合物の全単量体合計質量に基づいて、0.1~15質量%、特に0.5~10質量%の割合で使用することが好ましい。この割合を0.1質量%以上にすることにより、共重合率を向上させることができ、15質量%以下とすることにより、水溶性高分子化合物の安定性を向上させることができる。
【0045】
また、場合によっては、水溶性高分子化合物は、水溶性レドックス系重合開始剤を使用して製造してもよい。レドックス系重合開始剤としては、酸化剤(例えば上記の過酸化物)と、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、ハイドロサルファイトナトリウム等の還元剤や、鉄明礬、カリ明礬等の組み合わせを挙げることができる。
【0046】
水溶性高分子化合物の製造において、分子量を調整するために、連鎖移動剤を重合系に適宜添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-プロパンチオール、2-メルカプトエタノール及びチオフェノール等が挙げられる。
【0047】
水溶性高分子化合物を製造する際の重合温度は、特に制限されないが、重合温度は60~100℃で行うのが好ましい。重合温度を60℃以上にすることで、重合反応が円滑に進行し、かつ生産性に優れるものとなり、100℃以下とすることで着色を抑制することができる。また、重合反応は、加圧または減圧下に行うことも可能であるが、加圧あるいは減圧反応用の設備にするためのコストが必要になるので、常圧で行うことが好ましい。重合時間は2~20時間、特に3~10時間で行うことが好ましい。
【0048】
重合反応後、必要に応じて、塩基性化合物で中和を行う。中和に使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類が挙げられる。
【0049】
中和後のpH値(25℃)は、水溶性高分子化合物濃度が10質量%の水溶液の場合、2~9が好ましく、更に好ましくは3~8である。
【0050】
1.2.6 重量平均分子量
水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、1,000~1,000,000が好ましく、より好ましくは2,000~800,000であり、更に好ましくは3,000~600,000である。なお、水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリアクリル酸換算で測定したものである。水溶性高分子化合物の重量平均分子量が、1,000未満の場合は、研磨後のうねりが悪化する。また1,000,000を超える場合には、水溶液の粘度が高くなり取扱いが困難になる。
【0051】
1.2.7 濃度
研磨剤組成物中の水溶性高分子化合物の濃度は、好ましくは固形分換算で0.0001~3.0質量%であり、より好ましくは0.0005~2.0質量%であり、更に好ましくは0.001~1.0質量%である。水溶性高分子化合物の濃度が0.0001質量%より少ない場合には、水溶性高分子化合物の添加効果が十分には得られず、3.0質量%より多い場合には、水溶性高分子化合物の添加効果は頭打ちとなり、必要以上の水溶性高分子化合物を添加することになるので、経済的でない。
【0052】
1.3 酸
本願発明の研磨剤組成物は、酸を含有する。酸としては、無機酸及び有機酸が挙げられるが、中でもリン含有無機酸及び/またはリン含有有機酸が好ましい。
【0053】
無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸などが挙げられる。リン含有無機酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等が挙げられる。
【0054】
有機酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、ニトロ酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、などが挙げられる。
【0055】
リン含有有機酸としては、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。
【0056】
上記の化合物は、2種以上を組み合わせて使用することも好ましい実施態様であり、リン含有無機酸とリン含有有機酸の組み合わせが好ましく、具体的には、リン酸と1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸の組み合わせが挙げられる。
【0057】
研磨剤組成物中の酸の濃度は、研磨剤組成物のpH調整の必要量により適宜設定される。
【0058】
1.4 酸化剤
本発明の研磨剤組成物は、研磨促進剤として酸化剤を含有してもよい。酸化剤としては過酸化物、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、ハロゲンオキソ酸またはその塩、酸素酸またはその塩、これらの酸化剤を2種以上混合したもの等を用いることができる。
【0059】
具体的には、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過酸化カリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸の金属塩、ジクロム酸の金属塩、過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキソリン酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。中でも過酸化水素、過硫酸及びその塩、次亜塩素酸及びその塩、などが好ましく、更に好ましくは過酸化水素である。
【0060】
研磨剤組成物中の酸化剤含有量は、0.01~10.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1~5.0質量%である。
【0061】
本発明の研磨剤組成物は、上記成分の他に、緩衝剤、防かび剤、防菌剤などを含有してもよい。
【0062】
1.5 物性
本発明の研磨剤組成物のpH値(25℃)は0.1~4.0であることが好ましく、より好ましくは0.5~3.0である。研磨剤組成物のpH値(25℃)が0.1以上であることにより、表面平滑性の悪化を抑制することができる。研磨剤組成物のpH値(25℃)が4.0以下であることにより、研磨速度の低下を抑制することができる。無電解ニッケル-リンめっきにおいて、pH値(25℃)が4.0以下の条件ではニッケルが溶解傾向に向かうため、めっきが進行しにくくなる。一方、研磨においては、例えば、pH値(25℃)が4.0以下の条件下でニッケルが溶解傾向になるため、本発明の研磨剤組成物を用いることにより、研磨速度を高めることが可能になる。
【0063】
2. 磁気ディスク基板の研磨方法
本発明の研磨剤組成物は、無電解ニッケル-リンめっきされたアルミニウム磁気ディスク基板(以下、「アルミディスク」)やガラス磁気ディスク基板等の磁気ディスク基板の研磨での使用に適している。特に、アルミディスクの研磨での使用に適している。
【0064】
本発明の研磨剤組成物を適用することが可能な研磨方法としては、例えば、研磨機の定盤に研磨パッドを貼り付け、研磨対象物(例えばアルミディスク)の研磨する表面または研磨パッドに研磨剤組成物を供給し、研磨する表面を研磨パッドで擦り付ける方法(ポリッシングと呼ばれている)がある。
【0065】
例えば、アルミディスクの表面と裏面とを同時に研磨する場合には、上定盤及び下定盤それぞれに研磨パッドを貼り付けた両面研磨機を用いる方法がある。この方法では、上定盤及び下定盤に貼り付けた研磨パッドの間に研磨剤組成物を供給し、2つの研磨パッドを同時に回転させることによって、アルミディスクの表面と裏面を研磨する。研磨パッドは、ウレタンタイプ、スウェードタイプ、不織布タイプ、その他いずれのタイプも使用することができる。
【実施例
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
【0067】
2.1 研磨剤組成物の調製方法
実施例1~18、参考例1~3、及び、比較例1~5としてそれぞれ調製した研磨剤組成物は、下記に示す表1に記載した材料を、同表1に記載の含有量または添加量で含んで構成される。なお、表1の水溶性高分子化合物の中の、ポリマー7については、共重合体が均一に溶解した水溶液として得ることができなかった為、研磨試験は実施しなかった。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1において、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸の略号をHEDP、アクリル酸の略号をAA、アクリルアミドの略号をAM、N-tert-ブチルアクリルアミドの略号をTBAA、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の略号をATBSとした。かかる略号を後述の表2,3、及び、考察等においても用いる。
【0070】
水溶性高分子化合物は、表1に記載した通り、ポリマー1~10の重合体を使用した。なお、水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリアクリル酸換算で測定したものであり、以下にGPC測定条件を示す。
【0071】
2.2 GPC条件
カラム:G4000PWXL(東ソー(株)製)+G2500PWXL(東ソー(株)製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1(容量比)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
検出:210nm(UV)
サンプル:濃度5mg/ml(注入量100μl)
検量線用ポリマー:ポリアクリル酸 分子量(ピークトップ分子量:Mp)11.5万、2.8万、4100、1250(創和化学(株)、American Polymer Standards Corp.)
【0072】
2.3 コロイダルシリカの粒子径
コロイダルシリカの粒子径(Heywood径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子(株)製、透過型電子顕微鏡 JEM2000FX(200kV))を用いて倍率10万倍の視野を撮影し、この写真を解析ソフト(マウンテック(株)製、Mac-View Ver.4.0)を用いて解析することによりHeywood径(投射面積円相当径)として測定した。コロイダルシリカの平均粒子径は前述の方法で2000個程度のコロイダルシリカの粒子径を解析し、小粒径側からの積算粒径分布(累積体積基準)が50%となる粒子径を上記解析ソフト(マウンテック(株)製、Mac-View Ver.4.0)を用いて算出した平均粒子径(D50)である。
【0073】
2.4 研磨条件
無電解ニッケル-リンめっきされた外径95mmのアルミニウム磁気ディスク基板を粗研磨したものを研磨対象とした。
研磨機:スピードファム(株)製、9B両面研磨機
研磨パッド:(株)FILWEL社製 P2用パッド
定盤回転数:上定盤 -8.3min-1
下定盤 25.0min-1
研磨剤組成物供給量: 50ml/min
研磨時間: 300秒
加工圧力: 14kPa
【0074】
各成分を混合して研磨剤組成物を調製した後、目開き0.45μmのフィルターを通して研磨機に導入し、研磨試験を実施した。研磨試験結果を表2及び表3に示す。なお、表2の比較例4は、水溶性高分子化合物として表1のポリマー7を使用したものであるが、共重合体が均一な水溶液として得られなかったので、研磨試験は実施しなかった。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
2.5 研磨したディスク表面の評価
2.5.1 研磨速度比
研磨速度は、研磨後に減少したアルミニウム磁気ディスク基板の質量を測定し、下記式に基づいて計算した。
研磨速度(mg/min)=アルミニウム磁気ディスク基板の質量減少(mg)/研磨時間(min)
【0078】
研磨速度比は、表2では、比較例1で基板を研磨した時に上記式を用いて求めた研磨速度を1(基準)とした場合の相対値であり、表3では、比較例5で基板を研磨した時に上記式を用いて求めた研磨速度を1(基準)とした場合の相対値である。研磨速度比は、数値が大きいほうが、研磨特性としては良好である。
【0079】
2.5.2 研磨後の基板表面のうねり評価方法
基板表面のうねりは、アメテック(株)製、3次元光学プロファイラーNew View 8300を使用して測定した。
【0080】
基板表面の測定条件は以下の通りである。
レンズ 10倍 Mirau型
ZOOM 1.0倍
Measurement Type Surface
Measure Mode CSI
Scan Length 5μm
Camera Mode 1024×1024
Filter Band Pass
Cut Off Short 20.000μm
Long 100.000μm
測定ポイント
半径 30.00mm
角度 10°毎に36点
【0081】
うねり比は、表2では、比較例1で基板を研磨した時に上記方法を用いて求めた値を1(基準)とした場合の相対値であり、表3では、比較例5で基板を研磨した時に上記方法を用いて求めた値を1(基準)とした場合の相対値である。うねり比は、数値が小さいほうが、研磨特性としては良好である。
【0082】
2.5.3 研磨後の基板表面のハレーション評価方法
ハレーションは、基板全表面欠陥検査機(株)日立ハイテクファインシステムズ社製NS2000Hを使用して測定した。
【0083】
ハレーションの測定条件は以下の通りである。
PMT/APD Power Control Voltage
Hi-Light 1 OFF
Hi-Light 2 822V
Scan Pitch 3μm
Inner/Outer Radius 18.0000-47.0000mm
Positive Level 77mV
H2 White Spot Level 80.0mV
【0084】
ハレーションは、上記検査条件において、基板表面に微細な欠陥として検出され、ハレーションカウントとして定量評価できる。
【0085】
2.5.4 ハレーション比
ハレーション比は、表2では、比較例1で基板を研磨した時に上記方法を用いて求めたハレーションカウントを1(基準)とした場合の相対値であり、表3では、比較例5で基板を研磨した時に上記方法を用いて求めたハレーションカウントを1(基準)とした場合の相対値である。ハレーション比は、数値が小さいほうが、研磨特性としては良好である。
【0086】
3. 考察
下記に上記実験結果に基づいて検討した考察を示す。表2は、研磨剤組成物中の共重合体のTBAA含有量が16mol%の場合の研磨試験結果であるが、AA/TBAA/AM/ATBS共重合体はAA/TBAA/ATBS共重合体よりも研磨速度が向上している(参考例1と比較例1の対比、参考と比較例2,3との対比)。
【0087】
なお、AA/TBAA/AM共重合体は、水溶液が均一溶液とならなかった為、研磨試験を実施しなかった(比較例4)。
【0088】
実施例は、参考例1において無機酸を硫酸とリン酸の併用にした場合の結果であるが、研磨速度が向上し、ハレーションが改善されている。同様のことが実施例参考の対比においても見られる。
【0089】
実施例は、参考例1において無機酸を硫酸からリン酸に変更した場合の結果であるが、研磨速度が向上し、うねりとハレーションが改善されている。同様のことが実施例参考の対比においても見られる。
【0090】
実施例は、参考例1において使用する酸を硫酸からHEDPに変更した場合の結果であるが、研磨速度が向上し、うねりとハレーションが改善されている。同様のことが実施例参考の対比においても見られる。
【0091】
実施例は、実施例においてリン酸に加えてHEDPを併用した場合の結果であるが、うねりとハレーションが改善されている。同様のことが実施例と実施例の対比においても見られる。
【0092】
実施例は、実施例において共重合体の重量平均分子量を変更した場合の結果であり、実施例1,1は実施例においてコロイダルシリカ砥粒の平均粒子径を変更した場合の結果である。
【0093】
表3は、研磨剤組成物中の共重合体のTBAA含有量が12mol%の場合の研磨試験結果であるが、AA/TBAA/AM/ATBS共重合体はAA/TBAA/ATBS共重合体よりも研磨速度が向上している。(参考と比較例5の対比)
【0094】
実施例1は、参考において無機酸を硫酸とリン酸の併用にした場合の結果であるが、研磨速度が向上し、ハレーションが改善されている。
【0095】
実施例1は、参考において無機酸を硫酸からリン酸に変更した場合の結果であるが、研磨速度が向上し、うねりとハレーションが改善されている。
【0096】
実施例1は、参考において使用する酸を硫酸からHEDPに変更した場合の結果であるが、研磨速度が向上し、うねりとハレーションが改善されている。
【0097】
実施例1は、実施例1においてリン酸に加えてHEDPを併用した場合の結果であるが、研磨速度が向上し、うねりとハレーションが改善されている。
【0098】
実施例1は、実施例1において共重合体の重量平均分子量を変更した場合の結果であり、実施例1718は実施例1においてコロイダルシリカ砥粒の平均粒子径を変更した場合の結果である。

【0099】
以上のことから明らかなように、研磨剤組成物中の水溶性高分子化合物として、カルボン酸基を有する単量体、N-アルキルアクリルアミドまたはN-アルキルメタクリルアミドから選択される単量体、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される単量体、及びスルホン酸基を有する単量体を必須単量体とする共重合体を使用することにより、研磨速度、うねり、ハレーションのバランスを良好なものにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の研磨剤組成物は、半導体、ハードディスクといった磁気記録媒体などの電子部品の研磨に使用することができる。特に、ガラス磁気ディスクやアルミニウム磁気ディスクなどの磁気記録媒体用基板の表面研磨に使用することができる。更には、アルミニウム合金製の基板表面に無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成した磁気記録媒体用アルミニウム基板の表面研磨に使用することができる。