(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】トーションビーム式サスペンション
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B60G9/04
(21)【出願番号】P 2020037778
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592037790
【氏名又は名称】株式会社エフテック
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【氏名又は名称】多原 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正幸
(72)【発明者】
【氏名】古木 圭
(72)【発明者】
【氏名】高草木 遥
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-162080(JP,A)
【文献】特表2016-515064(JP,A)
【文献】特開2001-088525(JP,A)
【文献】特開2006-103570(JP,A)
【文献】特開2001-146110(JP,A)
【文献】特開2019-026012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229575(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0264614(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が車体に支持される一方で他端部に車輪を支持し前記車体の一対のトレーリングアームを連結して前記車体の幅方向に延在すると共に、前記幅方向における中央に配置されて前記幅方向に延在する中央部、前記中央部に接続し前記幅方向において前記中央部の一方の側に配置されて前記幅方向に延在する第1延在部、前記第1延在部を前記一対のトレーリングアームの一方に接続する第1接続部、前記中央部に接続し前記幅方向において前記中央部の他方の側に配置されて前記幅方向に延在する第2延在部、及び前記第2延在部を前記一対のトレーリングアームの他方に接続する第2接続部を有するトーションビームを備えるトーションビーム式サスペンションであって、
前記第1接続部と前記第2接続部とにわたって、前記トーションビームの前記車体の上下方向における上方側を塞ぐ上壁、前記車体の前後方向の前方側で前記上壁から垂下する前壁、及び前記前後方向の後方側で前記上壁から垂下する後壁を備え、
前記前後方向及び前記上下方向で規定される平面に平行な平面で前記トーションビームを切った断面で、前記第1延在部の断面積及び前記第2延在部の断面積よりも前記中央部の断面積の方が小さく設定され、
前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記前壁は、前記後方側に向かって陥設された前凹部を有すると共に、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記後壁は、前記前方側に向かって陥設された後凹部を有し、
前記中央部における前記前壁には、前記前凹部が配置されず、前記中央部における前記後壁には、前記後凹部が配置され
ず、
前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記前壁は、前記中央部における前記前壁よりも前記前方側に向かって張り出して膨らんだ前膨出壁を有し、前記前凹部は、前記前膨出壁の前記上下方向における下方側であって、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記前壁の下端側に偏位して配置され、
前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記後壁は、前記中央部における前記後壁よりも前記後方側に向かって張り出して膨らんだ後膨出壁を有し、前記後凹部は、前記後膨出壁の前記下方側であって、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記後壁の下端側に偏位して配置されるトーションビーム式サスペンション。
【請求項2】
前記第1延在部及び前記第2延在部の前記断面においては、各々、前記前後方向の長さと前記上下方向の長さとが異なるように設定される請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項3】
前記中央部の前記断面においては、前記前後方向の長さよりも前記上下方向の長さが長くなるように設定される請求項1又は2に記載のトーションビーム式サスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションビーム式サスペンションに関し、特に、四輪自動車等の車両に装着されるトーションビーム式サスペンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、四輪自動車等の車両用サスペンション装置に対しては、部品点数が少なく、構造が比較的簡素で、スペース効率に優れるトーションビーム式サスペンションが、小排気量車等を中心に多く採用されてきている。
【0003】
そのため、かかるトーションビーム式サスペンションに対しては、その生産性等を向上させながら、その強度や剛性をより増大させることが求められている。
【0004】
かかる状況下で、特許文献1は、自動車用のツイストビームアクスルに関し、重量増加を抑えつつ捩率を調節可能なものとするために、トーション部の幅方向における中央部分では、その断面がオメガ形状である構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1のツイストビームアクスルの構成においては、トーション部の幅方向における中央部分の断面形状をその他の部分のものとは異形のオメガ形状に設定しているものであるため、トーション部を捩るモーメントに対して応力が集中する傾向の高い幅方向における中央部分で、その必要な強度を確保しつつ所望の捩り特性を得ることが前提となっており、捩り特性の調節自由度は決して高いものとはいえず、多種多様な車両の仕様に適用すべく捩り特性の調整自由度を上げるという観点では改善の余地がある。
【0007】
ここで、本発明者の更なる検討により、ツイストビームアクスルといったトーションビーム式サスペンションのトーションビームについて、それに支持される両輪への逆位相の上下荷重入力に起因する捩りモーメント印加時の応力解析を行ったところ、特許文献1が開示する構成とは異なる構成で、その応力集中を効果的に緩和しながら捩り特性の調整幅を拡大することができることを知見した。
【0008】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、良好な生産性や高い強度を確保しながら捩り特性を高い自由度で調整することができるトーションビーム式サスペンションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成すべく、本発明の第1の局面においては、一端側が車体に支持される一方で他端部に車輪を支持し前記車体の一対のトレーリングアームを連結して前記車体の幅方向に延在すると共に、前記幅方向における中央に配置されて前記幅方向に延在する中央部、前記中央部に接続し前記幅方向において前記中央部の一方の側に配置されて前記幅方向に延在する第1延在部、前記第1延在部を前記一対のトレーリングアームの一方に接続する第1接続部、前記中央部に接続し前記幅方向において前記中央部の他方の側に配置されて前記幅方向に延在する第2延在部、及び前記第2延在部を前記一対のトレーリングアームの他方に接続する第2接続部を有するトーションビームを備えるトーションビーム式サスペンションであって、前記第1接続部と前記第2接続部とにわたって、前記トーションビームの前記車体の上下方向における上方側を塞ぐ上壁、前記車体の前後方向の前方側で前記上壁から垂下する前壁、及び前記前後方向の後方側で前記上壁から垂下する後壁を備え、前記前後方向及び前記上下方向で規定される平面に平行な平面で前記トーションビームを切った断面で、前記第1延在部の断面積及び前記第2延在部の断面積よりも前記中央部の断面積の方が小さく設定され、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記前壁は、前記後方側に向かって陥設された前凹部を有すると共に、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記後壁は、前記前方側に向かって陥設された後凹部を有し、前記中央部における前記前壁には、前記前凹部が配置されず、前記中央部における前記後壁には、前記後凹部が配置されず、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記前壁は、前記中央部における前記前壁よりも前記前方側に向かって張り出して膨らんだ前膨出壁を有し、前記前凹部は、前記前膨出壁の前記上下方向における下方側であって、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記前壁の下端側に偏位して配置され、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記後壁は、前記中央部における前記後壁よりも前記後方側に向かって張り出して膨らんだ後膨出壁を有し、前記後凹部は、前記後膨出壁の前記下方側であって、前記第1延在部及び前記第2延在部における各々の前記後壁の下端側に偏位して配置される構成を有する。
【0010】
また、本発明は、かかる第1の局面に加え、前記第1延在部及び前記第2延在部の前記断面においては、各々、前記前後方向の長さと前記上下方向の長さとが異なるように設定されることを第2の局面とする。
【0011】
また、本発明は、かかる第1の局面に加え、前記中央部の前記断面においては、前記前後方向の長さよりも前記上下方向の長さが長くなるように設定されることを第3の局面とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の局面における構成によれば、前後方向及び上下方向で規定される平面に平行な平面でトーションビームを切った断面で、第1延在部の断面積及び第2延在部の断面積よりも中央部の断面積の方が小さく設定され、第1延在部及び第2延在部における各々の前壁は、後方側に向かって陥設された前凹部を有すると共に、第1延在部及び第2延在部における各々の後壁は、前方側に向かって陥設された後凹部を有し、中央部における前壁には、前凹部が配置されず、中央部における後壁には、後凹部が配置されず、第1延在部及び第2延在部における各々の前壁が、中央部における前壁よりも前方側に向かって張り出して膨らんだ前膨出壁を有し、前凹部が、前膨出壁の上下方向における下方側であって、第1延在部及び第2延在部における各々の前壁の下端側に偏位して配置され、第1延在部及び第2延在部における各々の後壁が、中央部における後壁よりも後方側に向かって張り出して膨らんだ後膨出壁を有し、後凹部が、後膨出壁の下方側であって、第1延在部及び第2延在部における各々の後壁の下端側に偏位して配置される構成を有することにより、良好な生産性や高い強度を確保しながら捩り特性を高い自由度で調整することができる。
【0013】
また、本発明の第2の局面における構成によれば、前後方向及び上下方向で規定される平面に平行な平面でトーションビームを切った断面で、第1延在部及び第2延在部が、各々、互いに異なる長さに設定された前後方向の長さと上下方向の長さとを有することにより、応力集中を緩和しながら捩り特性をより自由度高く調整することができる。
【0014】
また、本発明の第3の局面における構成によれば、前後方向及び上下方向で規定される平面に平行な平面でトーションビームを切った断面で、中央部が、前後方向の長さよりも長く設定された上下方向の長さを有することにより、応力集中を緩和しながら捩り特性をより自由度高く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態におけるトーションビーム式サスペンションのトーションビームを示す平面図である。
【
図2】本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションのトーションビームを示す底面図である。
【
図3】本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションのトーションビームを示す前面図である。
【
図4】本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションのトーションビームを示す後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1から
図6を適宜参照して、本発明の実施形態におけるトーションビーム式サスペンションのトーションビームにつき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成す。また、x軸の正方向が車体の右方向であり、y軸の正方向が車体の前方向であり、かつ、z軸の正方向が車体の上方向である。また、x軸の方向を幅方向、y軸の方向を長手方向、及びz軸の方向を上下方向と呼ぶことがある。
【0017】
図1から
図4は、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションのトーションビームを示す平面図、底面図、前面図及び後面図である。また、
図5は、
図1のA-A断面図であり、
図6は、
図1のB-B断面図である。なお、
図6においては、便宜上、トーションビームの左側の構成要素の符号に加え、トーションビームの右側の構成要素の符号を括弧内に示している。
【0018】
まず、本実施形態におけるトーションビーム式サスペンションのトーションビームの全体構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、トーションビーム式サスペンションのトーションビーム1は、図示を省略する四輪自動車等の車両のリアサスペンションに適用され、トーションビーム1の幅方向の両端に左右で一対のトレーリングアームTAを装着する。
【0020】
一対のトレーリングアームTAは、各々、それらの後方の部分で車輪を支持しながらそれらの前方の部分でブッシュ部材等を介してリヤサイドフレーム等の車体に回動自在に装着され、それらの長手方向の中間部分にトーションビーム1が接続するものであり、典型的には、鋼材等の金属製の板部材やパイプ部材から成る筒状部材であって、トーションビーム1とアーク溶接等で溶接されるものである。
【0021】
また、トーションビーム1は、上方側に凸の形状を呈しその下方側が開放された鋼板等の金属板から成るプレス成形板部材であって、幅方向に延在しながら、その幅方向の両端で一対のトレーリングアームTAの長手方向における中間部分を各々連結するものである。
【0022】
次に、トーションビーム1の構成につき、更に
図2から
図6をも参照しながら、より詳細に説明する。
【0023】
トーションビーム1は、その幅方向における中央に配置されると共に幅方向に延在する中央部2、中央部2に接続し幅方向において中央部2の左方側に配置されると共に幅方向に延在する左延在部4、左延在部4を左側のトレーリングアームTAに接続する左接続部24、中央部2に接続し幅方向において中央部2の右方側に配置されると共に幅方向に延在する右延在部6、及び右延在部6を右側のトレーリングアームTAに接続する右接続部26を有する。
【0024】
ここで、トーションビーム式サスペンションは、トーションビーム1の幅方向の中央、つまり中央部2の幅方向における中央でy-z平面に平行な平面に対して左右対称であり、
図5が示す
図1のA-A断面図は、中央部2の幅方向おける中央をy-z平面に平行な平面で切った縦断面を示し、
図6が示す
図1のB-B断面図は、左延在部4をy-z平面に平行な平面で切ってその幅方向おける代表的な縦断面を示すと共に、かかる
図6が示す
図1のB-B断面図は、右延在部6の幅方向おける代表的な縦断面と同一である。
【0025】
左延在部4は、左側のトレーリングアームTAと溶接される際にそのトレーリングアームTAの対応部分の形状に整合するように切り欠かれた左切欠部25を有し、左切欠部25が左側のトレーリングアームTAに当接した状態で、左延在部4のかかる当接部がそのトレーリングアームTAに溶接されることにより、左延在部4が左接続部24で左側のトレーリングアームTAに接続されることになる。同様に、右延在部6は、右側のトレーリングアームTAと溶接される際にそのトレーリングアームTAの対応部分の形状に整合するように切り欠かれた右切欠部27を有し、右切欠部27が右側のトレーリングアームTAに当接した状態で、右延在部6のかかる当接部がそのトレーリングアームTAに溶接されることにより、右延在部6が右接続部26で右側のトレーリングアームTAに接続されることになる。
【0026】
詳しくは、左接続部24と右接続部26とにわたって、つまりトーションビーム1の幅方向における全体にわたって、中央部2、左延在部4及び右延在部6は、それらの上方側を塞ぐ上壁22、上壁22の前端部から下方側に向かって垂下する前壁12、及び上壁22の後端部から下方側に向かって垂下する後壁16を備える。典型的には、上壁22は、x-y平面に平行な平坦面部から成り、前壁12及び後壁16は、x-z平面に平行な平坦面部から成って、前壁12と後壁16とは、前後方向で対向して配設されることになる。なお、トーションビーム1における強度や捩り特性を設定する際の必要に応じて、前壁12の下端から前方向に延在する前フランジ13及び後壁16の下端から後方向に延在する後フランジ17を設けてもよい。また、トーションビーム1は、上壁22が上下方向に直交する姿勢のみならず、必要に応じて、上壁22が上下方向に斜めに交差するような姿勢をとるものであってもよい。
【0027】
中央部2でトーションビーム1の捩り特性の基本特性を規定する観点から、中央部2をy-z平面に平行な平面で切った縦断面の断面積は、左延在部4をy-z平面に平行な平面で切った縦断面の断面積及び右延在部6をy-z平面に平行な平面で切った縦断面の断面積よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0028】
図5及び
図6に代表して示すように、一対のトレーリングアームTAの各々の車輪支持部に典型的には逆相の上下荷重入力を与えた場合のモーメントMにより、トーションビーム1の各部位には応力が生じるが、かかる場合のトーションビーム1への応力集中を緩和する観点から、左延在部4及び右延在部6における各々の前壁12は、後方側に向かって陥設された所謂インバース形状の前左凹部32及び前右凹部34を有すると共に、左延在部4及び右延在部6における各々の後壁16は、前方側に向かって陥設された所謂インバース形状の後左凹部36及び後右凹部38を有する。また、中央部2における前壁12には、前左凹部32及び前右凹部34のような前凹部が一切配置されず、中央部2における後壁16には、後左凹部36及び後右凹部38のような後凹部が一切配置されない。つまり、
図3に代表して示すように、前左凹部32及び前右凹部34間の幅方向における距離L0は、前左凹部32の右端部と前右凹部34の左端部との間が中央部2で途切れて互いに接続されないように、中央部2の幅方向における長さ(ゼロより長い所定長さ)以上に設定されている。また、一対のトレーリングアームTAとトーションビーム1との溶接性を確保できる場合には、前左凹部32及び左接続部24の左切欠部25間の幅方向における距離L1は、前左凹部32の左端部を左切欠部25まで延ばすこともできるため、かかる場合には、距離L1は、ゼロに設定されてもかまわない。かかる構成は、後左凹部36及び後右凹部38においても同様である。
【0029】
また、トーションビーム1の強度や捩り特性を設定する際の煩雑さを回避してかかる設定を簡素化し、更にそのプレス成形性を向上する観点からは、前左凹部32及び前右凹部34、並びに後左凹部36及び後右凹部38は、中央部2の幅方向における中央でy-z平面に平行な平面に対して左右対称に配置されていることに加え、それらをy-z平面に平行な平面で切った縦断面で典型的には同一の大きさの円弧状である。なお、トーションビーム1の応力集中を緩和しながらそれを所望の捩り特性に調整する際の確実性やそれを成形する際のいわゆる形状凍結性を向上する観点からは、前左凹部32及び前右凹部34、並びに後左凹部36及び後右凹部38は、円弧状壁から成るのではなく直状壁から成るものであってもよい。
【0030】
トーションビーム1の捩り特性を高い自由度で調整する観点からは、中央部2をy-z平面に平行な平面で切った縦断面の形状においては、上下方向の長さが前後方向の長さよりも長く設定されていることが好ましい。つまり、
図5に代表的に示すように、中央部2において、前壁12の上下方向における長さ(
図5のように、前フランジ13が設けられる場合には、前フランジ13を含む長さ)H0は、上壁22の前後方向における長さW0よりも長く設定されている。また、トーションビーム1の応力集中を緩和しながらトーションビーム1の捩り特性を高い自由度で調整することを可能とする観点からは、左延在部4をy-z平面に平行な平面で切った縦断面の形状、及び右延在部6をy-z平面に平行な平面で切った縦断面の形状においては、上下方向の長さと前後方向の長さとは、互いに等しい長さに設定するのではなくて、互いに異なる長さに設定することが好ましい。つまり、
図6に一例として示すように、左延在部4及びそれと左右対称な右延在部6において、前壁12の上下方向における長さ(
図6のように、前フランジ13が設けられる場合には、前フランジ13を含む長さ)H1は、上壁22の前後方向における長さW1よりも長く設定されているが、周辺部品等のレイアウト等の拘束条件を満足するように、長さH1よりも長さW1が長く設定されることも可能である。
【0031】
また、中央部2に加え、左延在部4及び右延在部6で少なくとも前左凹部32、前右凹部34、後左凹部36及び後右凹部38が設けられている部分では、強度や捩り特性を設定する際の煩雑さを回避する観点からは、前壁12及び後壁16は、上壁22の前後方向における中央でx-z平面に平行な平面に対して前後対称であることが好ましいため、かかる場合、中央部2における後壁16の上下方向における長さ(後フランジ17が設けられる場合には、後フランジ17を含む長さ)はH0であり、左延在部4及びそれと左右対称な右延在部6における後壁16の上下方向における長さ(後フランジ17が設けられる場合には、後フランジ17を含む長さ)はH1である。
【0032】
左延在部4及び右延在部6の各々の縦断面を大きく確保する観点からは、左延在部4及び右延在部6における各々の前壁12は、中央部2における前壁12よりも前方側に向かって張り出して膨らんだ前左膨出壁14及び前右膨出壁15となり、左延在部4及び右延在部6における各々の後壁16は、中央部2における後壁16よりも後方側に向かって張り出して膨らんだ後左膨出壁18及び後右膨出壁19となることが好ましい。また、プレス成形性を向上する観点からは、前左凹部32及び前右凹部34、並びに後左凹部36及び後右凹部38がそれらをy-z平面に平行な平面で切った縦断面で同一の大きさの円弧状を有していることに加えて、前左膨出壁14、前右膨出壁15、後左膨出壁18及び後右膨出壁19は、直状壁であることが好ましい。
【0033】
また、トーションビーム1の曲げや捩りに対する剛性を向上する観点からは、前左凹部32及び前右凹部34は、左延在部4及び右延在部6における各々の前壁12の下端側に向けて偏位して配置(前フランジ13が設けられる場合には、前フランジ13と連なるように)され、後左膨出壁18及び後右膨出壁19との両立を図る観点からは、後左凹部36及び後右凹部38は、左延在部4及び右延在部6における各々の後壁16の下端側に向けて偏位して配置(後フランジ17が設けられる場合には、後フランジ17と連なるように)されることが好ましい。
図6に一例としてに示すように、左延在部4及びそれと左右対称な右延在部6において、前左凹部32及び前右凹部34の上下方向における長さH11は、前左膨出壁14及び前右膨出壁15の上下方向における長さH12よりも短く設定されているが、必要に応じて、長さH11が長さH12よりも長く設定されていてもよい。また、かかる事情は、左延在部4及びそれと左右対称な右延在部6における後左凹部36及び後右凹部38において、同様である。
【0034】
また、図示を省略するスプリング載置部材の支持強度を確保しながらトーションビーム1と一対のトレーリングアームTAとの接合強度を各々増強する観点からは、左延在部4の左接続部24側における左切欠部25の後部及び右延在部6の右接続部26における右切欠部27の後部は、各々後方側に向かって偏位した形状を有することが好ましい。
【0035】
以上の本実施形態のトーションビーム式サスペンションにおいては、前後方向及び上下方向で規定される平面に平行な平面でトーションビーム1を切った断面で、第1延在部4の断面積及び第2延在部6の断面積よりも中央部2の断面積の方が小さく設定され、第1延在部4及び第2延在部6における各々の前壁12は、後方側に向かって陥設された前凹部32、34を有すると共に、第1延在部4及び第2延在部6における各々の後壁16は、前方側に向かって陥設された後凹部36、38を有し、中央部2における前壁12には、前凹部が配置されず、中央部2における後壁16には、後凹部が配置されない構成を有することにより、良好な生産性や高い強度を確保しながら捩り特性を高い自由度で調整することができる。
【0036】
また、本実施形態のトーションビーム式サスペンションにおいては、前後方向及び上下方向で規定される平面に平行な平面でトーションビーム1を切った断面で、第1延在部4及び第2延在部6が、各々、互いに異なる長さに設定された前後方向の長さW1と上下方向の長さH1とを有することにより、応力集中を緩和しながら捩り特性をより自由度高く調整することができる。
【0037】
また、本実施形態のトーションビーム式サスペンションにおいては、前後方向及び上下方向で規定される平面に平行な平面でトーションビーム1を切った断面で、中央部2が、前後方向の長さW0よりも長く設定された上下方向の長さH0を有することにより、応力集中を緩和しながら捩り特性をより自由度高く調整することができる。
【0038】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明においては、良好な生産性や高い強度を確保しながら捩り特性を高い自由度で調整することができるトーションビーム式サスペンションを提供することができるものであるため、その汎用普遍的な性格から広範に車両等の移動体のトーションビーム式サスペンションの分野に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0040】
1…トーションビーム
2…中央部
4…左延在部
6…右延在部
12…前壁
13…前フランジ
14…前左膨出壁
15…前右膨出壁
16…後壁
17…後フランジ
18…後左膨出壁
19…後右膨出壁
22…上壁
24…左接続部
25…左切欠部
26…右接続部
27…右切欠部
32…前左凹部
34…前右凹部
36…後左凹部
38…後右凹部
TA…トレーリングアーム