(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、及び、レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20240222BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240222BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240222BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240222BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/03
B23K26/00 P
B23K26/064 A
H01L21/78 B
H01L21/78 R
(21)【出願番号】P 2020040951
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】佐野 いく
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158811(JP,A)
【文献】特開2016-219756(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030039(WO,A1)
【文献】特許第5789802(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/110238(WO,A1)
【文献】特開2002-129765(JP,A)
【文献】特開2006-315017(JP,A)
【文献】特開2006-150385(JP,A)
【文献】特開2019-012849(JP,A)
【文献】特開2019-140167(JP,A)
【文献】特開2017-204574(JP,A)
【文献】特開2009-172668(JP,A)
【文献】特開2020-077767(JP,A)
【文献】特開2013-126682(JP,A)
【文献】特許第4322881(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/53
B23K 26/03
B23K 26/00
B23K 26/064
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザ光を照射するための照射部と、
前記対象物を撮像するための撮像部と、
少なくとも前記照射部、及び前記撮像部を制御する制御部と、
を備え、
前記対象物には、複数のラインが設定されており、
前記制御部は、
前記照射部の制御により、前記複数のラインのそれぞれに沿って前記対象物に前記レーザ光を照射して、前記対象物の
前記レーザ光の入射面である第1表面及び前記第1表面の反対側の第2表面を含む外表面に至らないように、改質スポット及び前記改質スポットから延びる亀裂を前記対象物に形成する第1処理と、
前記第1処理の後に、前記撮像部の制御により、前記対象物に対して透過性を有する光によって前記対象物を撮像し、前記複数のラインのそれぞれについて前記改質スポット及び/又は前記亀裂の形成状態を示す情報を取得する第2処理と、
を実行し、
前記第1処理では、前記複数のラインのそれぞれにおいて、互いに異なる照射条件により前記レーザ光を前記対象物に照射し、
前記第2処理では、前記複数のラインのそれぞれについて、前記第1処理における前記レーザ光の照射条件を示す情報と前記形成状態を示す情報とを互いに関連付けて取得
し、
前記第2処理では、少なくとも、前記第2表面から、前記改質スポットから前記第2表面側に延びる前記亀裂である下亀裂の前記第2表面に関して対称的な位置の虚像までの区間を撮像する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1処理よりも前に、前記照射条件が、前記亀裂が前記外表面に至らない条件である未到達条件であるか否かの判定を行う第3処理を実行し、
前記第3処理の判定の結果、前記照射条件が前記未到達条件である場合に前記第1処理を実行する、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
情報を表示するための表示部と、
入力を受け付けるための入力部と、
を備える請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2処理の後に、前記表示部の制御によって、前記第2処理で取得した情報を前記表示部に表示させる第4処理を実行する、
請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2処理の後であって前記第4処理よりも前に、前記第2処理で取得された前記形成状態を示す情報に基づいて、前記亀裂が前記外表面に至っていないか否かの判定を行う第5処理を実行し、
前記第5処理の判定の結果、前記改質スポット及び前記亀裂が前記外表面に至っていない場合に前記第4処理を実行する、
請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1処理よりも前に、前記表示部の制御により、前記第1処理での前記照射条件に含まれる複数の照射条件項目のうちの前記ラインごとに異ならせる可変項目の選択を促す情報を前記表示部に表示させる第6処理を実行し、
前記入力部は、前記可変項目の選択の入力を受け付け、
前記制御部は、前記照射部の制御により、前記入力部が受け付けた前記可変項目が前記ラインごとに異なるように前記第1処理を実行する、
請求項3~5のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記照射条件は、前記照射条件項目として、
前記レーザ光のパルス波形、
前記レーザ光のパルスエネルギー、
前記レーザ光のパルスピッチ、
前記レーザ光の集光状態、及び、
前記第1処理において前記対象物の前記レーザ光の入射面に交差する方向に互に異なる位置に複数の前記改質スポットを形成する場合における前記入射面に交差する方向の前記改質スポットの間隔、
の少なくとも1つを含む、
請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記レーザ光の球面収差を補正するための球面収差補正パターンを表示する空間光変調器と、
前記空間光変調器において前記球面収差補正パターンにより変調された前記レーザ光を前記対象物に集光するための集光レンズと、
を備え、
前記集光状態は、前記集光レンズの瞳面の中心に対する前記球面収差補正パターンの中心のオフセット量を含む、
請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2処理で前記形成状態のピーク値が得られた場合には、前記第4処理において、前記表示部の制御により、当該ピーク値に対応する前記照射条件を前記表示部に表示させる、
請求項4又は5に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第4処理よりも前において、前記形成状態に含まれる複数の形成状態項目のうちの前記第4処理で前記表示部に表示させる前記形成状態項目の選択を促す情報を前記表示部に表示させる第7処理を実行し、
前記入力部は、前記形成状態項目の選択の入力を受け付け、
前記制御部は、前記第4処理において、前記表示部の制御により、前記形成状態のうちの前記入力部が受け付けた前記形成状態項目を示す情報を、前記照射条件を示す情報と関連付けて表示する、
請求項4、5、及び、9のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記対象物は、前記レーザ光の入射面である第1表面と、前記第1表面の反対側の第2表面と、を含み、
前記亀裂は、前記改質スポットから前記第1表面側に延びる第1亀裂と、前記改質スポットから前記第2表面側に延びる第2亀裂と、を含み、
前記形成状態は、前記形成状態項目として、
前記第1表面に交差する第1方向における前記第1亀裂の長さ、
前記第1方向における前記第2亀裂の長さ、
前記第1方向における前記亀裂の長さの総量、
前記第1方向における前記第1亀裂の前記第1表面側の先端である第1端の位置、
前記第1方向における前記第2亀裂の前記第2表面側の先端である第2端の位置、
前記第1方向からみたときの前記第1端と前記第2端とのずれ幅、
前記改質スポットの痕の有無、
前記第1方向からみたときの前記第2端の蛇行量、及び、
前記第1処理において前記第1表面に交差する方向に互に異なる位置に複数の前記改質スポットを形成した場合における、前記第1表面に交差する方向に並ぶ前記改質スポット間の領域の前記亀裂の先端の有無、
の少なくとも1つを含む、
請求項10に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
対象物に設定された複数のラインのそれぞれに沿って前記対象物にレーザ光を照射して、前記対象物の
前記レーザ光の入射面である第1表面及び前記第1表面の反対側の第2表面を含む外表面に至らないように、改質スポット及び前記改質スポットから延びる亀裂を前記対象物に形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記対象物に対して透過性を有する光によって前記対象物を撮像し、前記複数のラインのそれぞれについて前記改質スポット及び/又は前記亀裂の形成状態を示す情報を取得する第2工程と、
を備え、
前記第1工程では、前記複数のラインのそれぞれにおいて、互いに異なる照射条件により前記レーザ光を前記対象物に照射し、
前記第2工程では、前記複数のラインのそれぞれについて、前記第1工程における前記レーザ光の照射条件を示す情報と前記形成状態を示す情報とを互いに関連付けて取得
し、
記第2工程では、少なくとも、前記第2表面から、前記改質スポットから前記第2表面側に延びる前記亀裂である下亀裂の前記第2表面に関して対称的な位置の虚像までの区間を撮像する、
レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置、及び、レーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザダイシング装置が記載されている。このレーザダイシング装置は、ウェハを移動させるステージと、ウェハにレーザ光を照射するレーザヘッドと、各部の制御を行う制御部と、を備えている。レーザヘッドは、ウェハの内部に改質領域を形成するための加工用レーザ光を出射するレーザ光源と、加工用レーザ光の光路上に順に配置されたダイクロイックミラー及び集光レンズと、AF装置と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、照射条件と加工結果との関連が把握されていない未知の対象物に対するレーザ光の照射条件を、望ましい加工結果が得られる条件となるように調整するためには、次のような工程を経ることが考えられる。すなわち、互に異なる複数の照射条件下においてレーザ加工を行う。続いて、改質領域等が形成された断面が露出するように対象物を切断する。そして、その切断面を観察することにより、互に異なる複数の照射条件に対する実際の加工結果を把握する。
【0005】
一方で、このような方法では、照射条件の調整に際して、時間がかかるうえに高度な断面観察のノウハウが必要となる。したがって、上記技術分野にあっては、照射条件の調整を容易化することが望ましい。
【0006】
本発明は、レーザ光の照射条件の調整を容易化可能なレーザ加工装置、及び、レーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射するための照射部と、対象物を撮像するための撮像部と、少なくとも照射部、及び撮像部を制御する制御部と、を備え、対象物には、複数のラインが設定されており、制御部は、照射部の制御により、複数のラインのそれぞれに沿って対象物にレーザ光を照射して、対象物の外表面に至らないように、改質スポット及び改質スポットから延びる亀裂を対象物に形成する第1処理と、第1処理の後に、撮像部の制御により、対象物に対して透過性を有する光によって対象物を撮像し、複数のラインのそれぞれについて改質スポット及び/又は亀裂の形成状態を示す情報を取得する第2処理と、を実行し、第1処理では、複数のラインのそれぞれにおいて、互いに異なる照射条件によりレーザ光を対象物に照射し、第2処理では、複数のラインのそれぞれについて、第1処理における照射条件を示す情報と形成状態を示す情報とを互いに関連付けて取得する。
【0008】
本発明に係るレーザ加工方法は、対象物に設定された複数のラインのそれぞれに沿って対象物にレーザ光を照射して、対象物の外表面に至らないように、改質スポット及び改質スポットから延びる亀裂を対象物に形成する第1工程と、第1工程の後に、対象物に対して透過性を有する光によって対象物を撮像し、複数のラインのそれぞれについて改質スポット及び/又は亀裂の形成状態を示す情報を取得する第2工程と、を備え、第1工程では、複数のラインのそれぞれにおいて、互いに異なる照射条件によりレーザ光を対象物に照射し、第2工程では、複数のラインのそれぞれについて、第1工程における照射条件を示す情報と形成状態を示す情報とを互いに関連付けて取得する。
【0009】
これらの装置及び方法では、複数のラインのそれぞれに沿って対象物に対してレーザ光を照射して改質スポット等(改質スポット及び改質スポットから延びる亀裂)を形成する。このとき、ラインごとに異なる照射条件とする。続いて、対象物を透過する光により対象物を撮像し、複数のラインのそれぞれについて、改質スポット等の形成状態(加工結果)を取得する。そして、その後に、複数のラインのそれぞれについて、レーザ光の照射条件と改質スポット等の形成状態とを互いに関連付けて取得する。したがって、レーザ光の照射条件の調整に際して、対象物を切断したり、断面観察を行ったりする必要がない。よって、この装置及び方法によれば、レーザ光の照射条件の調整が容易化される。
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、第1処理よりも前に、照射条件が、亀裂が外表面に至らない条件である未到達条件であるか否かの判定を行う第3処理を実行し、第3処理の判定の結果、照射条件が未到達条件である場合に第1処理を実行してもよい。この場合、確実に、亀裂が対象物の外表面に至らないように加工を行うことが可能となる。
【0011】
本発明に係るレーザ加工装置は、情報を表示するための表示部と、入力を受け付けるための入力部と、を備えてもよい。この場合、ユーザへの情報の提示が可能となると共に、ユーザからの情報の入力を受け付けることが可能となる。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、第2処理の後に、表示部の制御によって、第2処理で取得した情報を表示部に表示させる第4処理を実行してもよい。この場合、レーザ光の照射条件のそれぞれと改質スポット等の形成状態とが関連付けられた情報をユーザに提示できる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、第2処理の後であって第4処理よりも前に、第2処理で取得された形成状態を示す情報に基づいて、亀裂が外表面に至っていないか否かの判定を行う第5処理を実行し、第5処理の判定の結果、亀裂が外表面に至っていない場合に第4処理を実行してもよい。この場合、確実に、亀裂が対象物の外表面に到達していない状態において、レーザ光の照射条件と改質スポット等の形成状態とを関連付けて表示可能となる。
【0014】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、第1処理よりも前に、表示部の制御により、第1処理での照射条件に含まれる複数の照射条件項目のうちのラインごとに異ならせる可変項目の選択を促す情報を表示部に表示させる第6処理を実行し、入力部は、可変項目の選択の入力を受け付け、制御部は、照射部の制御により、入力部が受け付けた可変項目がラインごとに異なるように第1処理を実行してもよい。この場合、所望の照射条件の調整が容易となる。
【0015】
本発明に係るレーザ加工装置では、照射条件は、照射条件項目として、レーザ光のパルス波形、レーザ光のパルスエネルギー、レーザ光のパルスピッチ、レーザ光の集光状態、及び、第1処理において対象物のレーザ光の入射面に交差する方向に互に異なる位置に複数の改質スポットを形成する場合における入射面に交差する方向の改質スポットの間隔、の少なくとも1つを含んでもよい。
【0016】
このとき、本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ光の球面収差を補正するための球面収差補正パターンを表示する空間光変調器と、空間光変調器において球面収差補正パターンにより変調されたレーザ光を対象物に集光するための集光レンズと、を備え、集光状態は、集光レンズの瞳面の中心に対する球面収差補正パターンの中心のオフセット量を含んでもよい。
【0017】
これらの場合、レーザ光の照射条件のうちの上記の項目の調整が容易となる。
【0018】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、第2処理で形成状態のピーク値が得られた場合には、第4処理において、表示部の制御により、当該ピーク値に対応する照射条件を表示部に表示させてもよい。この場合、レーザ光の照射条件を、改質スポット等の形成状態がピークとなる条件に容易に調整可能となる。
【0019】
本発明に係るレーザ加工装置では、対象物は、レーザ光の入射面である第1表面と、第1表面の反対側の第2表面と、を含み、亀裂は、改質スポットから第1表面側に延びる第1亀裂と、改質スポットから第2表面側に延びる第2亀裂と、を含み、形成状態は、形成状態項目として、第1表面に交差する第1方向における第1亀裂の長さ、第1方向における第2亀裂の長さ、第1方向における亀裂の長さの総量、第1方向における第1亀裂の第1表面側の先端である第1端の位置、第1方向における第2亀裂の第2表面側の先端である第2端の位置、第1方向からみたときの第1端と第2端とのずれ幅、改質スポットの痕の有無、第1方向からみたときの第2端の蛇行量、及び、第1処理において第1表面に交差する方向に互に異なる位置に複数の改質スポットを形成した場合における、第1表面に交差する方向に並ぶ改質スポット間の領域の亀裂の先端の有無、の少なくとも1つを含んでもよい。この場合、改質スポット等の形成状態のうち、上記の項目に基づいたレーザ光の照射条件の調整が容易に可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザ光の照射条件の調整を容易化可能なレーザ加工装置、及び、レーザ加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図2に示されるウェハの一部分の断面図である。
【
図4】
図1に示されたレーザ照射ユニットの構成を示す模式図である。
【
図5】
図4に示されたリレーレンズユニットを示す図である。
【
図6】
図4に示された空間光変調器の部分的な断面図である。
【
図7】
図1に示された撮像ユニットの構成を示す模式図である。
【
図8】
図1に示された撮像ユニットの構成を示す模式図である。
【
図9】
図7に示される撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウェハの断面図、及び当該撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図10】
図7に示される撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウェハの断面図、及び当該撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図11】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
【
図12】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
【
図13】
図7に示される撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
【
図14】
図7に示される撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
【
図15】
図7に示される撮像ユニットによる検査原理を説明するためのウェハの断面図、ウェハの切断面の画像、及び当該用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図16】
図7に示される撮像ユニットによる検査原理を説明するためのウェハの断面図、ウェハの切断面の画像、及び当該用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図17】形成状態の取得方法を説明するための対象物の断面図である。
【
図18】改質領域間隔を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図19】改質領域間隔を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図20】レーザ光のパルス幅を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図21】レーザ光のパルス幅を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図22】レーザ光のパルスエネルギーを3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図23】レーザ光のパルスエネルギーを3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図24】レーザ光のパルスピッチを4点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図25】レーザ光のパルスピッチを4点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図26】レーザ光の集光状態(球面収差補正レベル)を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図27】レーザ光の集光状態(球面収差補正レベル)を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図28】レーザ光の集光状態(非点収差補正レベル)を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図29】レーザ光の集光状態(非点収差補正レベル)を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
【
図30】レーザ光のパルスピッチを4点で変化させた場合の黒スジの有無の変化を示す図である。
【
図31】レーザ光のパルスピッチを4点で変化させた場合の黒スジの有無の変化を示す図である。
【
図32】合否判定方法の主要な工程を示すフローチャートである。
【
図33】
図1に示された入力受付部の一例を示す図である。
【
図34】基本加工条件の一例を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図35】補正項目の選択を促す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図36】再加工の条件の設定画面を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図37】判定結果(合格)を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図38】判定結果(不合格)を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図39】照射条件の導出方法の主要な工程を示すフローチャートである。
【
図40】
図1に示された入力受付部の一例を示す図である。
【
図41】選択された加工条件の一例を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図42】加工結果を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図43】照射条件と形成状態との関係を示すグラフでる。
【
図44】Yオフセット量と形成状態との関係を示す図である。
【
図45】LBAオフセット量の導出方法の主要な工程を示すフローチャートである。
【
図46】LBAオフセット量の導出方法の主要な工程を示すフローチャートである。
【
図47】検査条件の選択を促すための情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図48】設定画面を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図49】加工結果を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
【
図50】Yオフセット量と判定項目との関係を示す図である。
【
図51】Yオフセット量と判定項目との関係を示す図である。
【
図52】Yオフセット量と判定項目との関係を示す図である。
【
図53】Yオフセット量と判定項目との関係を示す図である。
【
図54】Xオフセット量と判定項目との関係を示す図である。
【
図55】Xオフセット量と判定項目との関係を示す図である。
【
図56】Xオフセット量と判定項目との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、各図には、X軸、Y軸、及びZ軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。
【0023】
図1は、一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、ステージ2と、レーザ照射ユニット3と、複数の撮像ユニット4,7,8と、駆動ユニット9と、制御部10と、を備えている。レーザ加工装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することにより、対象物11に改質領域12を形成する装置である。
【0024】
ステージ2は、例えば対象物11に貼り付けられたフィルムを吸着することにより、対象物11を支持する。ステージ2は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動可能であり、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。なお、X方向及びY方向は、互いに交差(直交)する第1水平方向及び第2水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0025】
レーザ照射ユニット(照射部)3は、対象物11に対して透過性を有するレーザ光Lを集光して対象物11に照射する。ステージ2に支持された対象物11の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点Cに対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物11の内部に改質領域12が形成される。
【0026】
改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、改質領域12からレーザ光Lの入射側及びその反対側に亀裂が延びるように形成され得る。そのような改質領域12及び亀裂は、例えば対象物11の切断に利用される。
【0027】
一例として、ステージ2をX方向に沿って移動させ、対象物11に対して集光点CをX方向に沿って相対的に移動させると、複数の改質スポット12sがX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12sは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポット12sの集合である。したがって、改質スポット12sは、改質領域12と同様に、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質部分とは異なるスポットである。隣り合う改質スポット12sは、対象物11に対する集光点Cの相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0028】
撮像ユニット(撮像部)4は、対象物11に形成された改質領域12、及び改質領域12から延びた亀裂の先端を撮像する(詳細は後述する)。撮像ユニット7及び撮像ユニット8は、制御部10の制御のもとで、ステージ2に支持された対象物11を、対象物11を透過する光により撮像する。撮像ユニット7,8が撮像することにより得られた画像は、一例として、レーザ光Lの照射位置のアライメントに供される。
【0029】
駆動ユニット9は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,7,8を支持している。駆動ユニット9は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,7,8をZ方向に沿って移動させる。
【0030】
制御部10は、ステージ2、レーザ照射ユニット3、複数の撮像ユニット4,7,8、及び駆動ユニット9の動作を制御する。制御部10は、処理部101と、記憶部102と、入力受付部(表示部、入力部)103と、を有している。処理部101は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。処理部101では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。記憶部102は、例えばハードディスク等であり、各種データを記憶する。入力受付部103は、各種情報を表示すると共に、ユーザから各種情報の入力を受け付けるインターフェース部である。本実施形態では、入力受付部103は、GUI(Graphical User Interface)を構成している。
[対象物の構成]
【0031】
図2は、一実施形態のウェハの平面図である。
図3は、
図2に示されたウェハの一部分の断面図である。本実施形態の対象物11は、一例として
図2,3に示されるウェハ20である。ウェハ20は、半導体基板21と、機能素子層22と、を備えている。半導体基板21は、表面21a及び裏面21bを有している。一例として、裏面21bは、レーザ光L等の入射面となる第1表面であり、表面21aは、当該第1表面の反対側の第2表面である。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。機能素子層22は、半導体基板21の表面21aに形成されている。機能素子層22は、表面21aに沿って2次元に配列された複数の機能素子22aを含んでいる。
【0032】
機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。なお、半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられているが、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。なお、対象物11はベアウェハであってもよい。
【0033】
ウェハ20は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断される。複数のライン15は、ウェハ20の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子22aのそれぞれの間を通っている。より具体的には、ライン15は、ウェハ20の厚さ方向から見た場合にストリート領域23の中心(幅方向における中心)を通っている。ストリート領域23は、機能素子層22において、隣り合う機能素子22aの間を通るように延在している。本実施形態では、複数の機能素子22aは、表面21aに沿ってマトリックス状に配列されており、複数のライン15は、格子状に設定されている。なお、ライン15は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。
[レーザ照射ユニットの構成]
【0034】
図4は、
図1に示されたレーザ照射ユニットの構成を示す模式図である。
図5は、
図4に示されたリレーレンズユニットを示す図である。
図6は、
図4に示された空間光変調器の部分的な断面図である。
図4に示されるように、レーザ照射ユニット3は、光源31と、空間光変調器5と、集光レンズ33と、4fレンズユニット34と、を有している。光源31は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出力する。なお、レーザ照射ユニット3は、光源31を有さず、レーザ照射ユニット3の外部からレーザ光Lを導入するように構成されてもよい。
【0035】
空間光変調器5は、光源31から出力されたレーザ光Lを変調する。集光レンズ33は、空間光変調器5によって変調されたレーザ光Lを集光する。4fレンズユニット34は、空間光変調器5から集光レンズ33に向かうレーザ光Lの光路上に配列された一対のレンズ34A,34Bを有している。一対のレンズ34A,34Bは、空間光変調器5の反射面5aと集光レンズ33の入射瞳面(瞳面)33aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、空間光変調器5の反射面5aでのレーザ光Lの像(空間光変調器5において変調されたレーザ光Lの像)が、集光レンズ33の入射瞳面33aに転像(結像)される。
【0036】
空間光変調器5は、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。空間光変調器5は、半導体基板51上に、駆動回路層52、画素電極層53、反射膜54、配向膜55、液晶層56、配向膜57、透明導電膜58及び透明基板59がこの順序で積層されることで、構成されている。
【0037】
半導体基板51は、例えば、シリコン基板である。駆動回路層52は、半導体基板51上において、アクティブ・マトリクス回路を構成している。画素電極層53は、半導体基板51の表面に沿ってマトリックス状に配列された複数の画素電極53aを含んでいる。各画素電極53aは、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。各画素電極53aには、駆動回路層52によって電圧が印加される。
【0038】
反射膜54は、例えば、誘電体多層膜である。配向膜55は、液晶層56における反射膜54側の表面に設けられており、配向膜57は、液晶層56における反射膜54とは反対側の表面に設けられている。各配向膜55,57は、例えば、ポリイミド等の高分子材料によって形成されており、各配向膜55,57における液晶層56との接触面には、例えば、ラビング処理が施されている。配向膜55,57は、液晶層56に含まれる液晶分子56aを一定方向に配列させる。
【0039】
透明導電膜58は、透明基板59における配向膜57側の表面に設けられており、液晶層56等を挟んで画素電極層53と向かい合っている。透明基板59は、例えば、ガラス基板である。透明導電膜58は、例えば、ITO等の光透過性且つ導電性材料によって形成されている。透明基板59及び透明導電膜58は、レーザ光Lを透過させる。
【0040】
以上のように構成された空間光変調器5では、変調パターンを示す信号が制御部10から駆動回路層52に入力されると、当該信号に応じた電圧が各画素電極53aに印加され、各画素電極53aと透明導電膜58との間に電界が形成される。当該電界が形成されると、液晶層56において、各画素電極53aに対応する領域ごとに液晶分子216aの配列方向が変化し、各画素電極53aに対応する領域ごとに屈折率が変化する。この状態が、液晶層56に変調パターンが表示された状態である。
【0041】
液晶層56に変調パターンが表示された状態で、レーザ光Lが、外部から透明基板59及び透明導電膜58を介して液晶層56に入射し、反射膜54で反射されて、液晶層56から透明導電膜58及び透明基板59を介して外部に出射させられると、液晶層56に表示された変調パターンに応じて、レーザ光Lが変調される。このように、空間光変調器5によれば、液晶層56に表示する変調パターンを適宜設定することで、レーザ光Lの変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等の変調)が可能である。
【0042】
本実施形態では、レーザ照射ユニット3は、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウェハ20にレーザ光Lを照射することにより、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の内部に2列の改質領域12a,12bを形成する。改質領域(第1改質領域)12aは、2列の改質領域12a,12bのうち表面21aに最も近い改質領域である。改質領域(第2改質領域)12bは、2列の改質領域12a,12bのうち、改質領域12aに最も近い改質領域であって、裏面21bに最も近い改質領域である。
【0043】
2列の改質領域12a,12bは、ウェハ20の厚さ方向(Z方向)において隣り合っている。2列の改質領域12a,12bは、半導体基板21に対して2つの集光点O1,O2がライン15に沿って相対的に移動させられることにより形成される。レーザ光Lは、例えば集光点O1に対して集光点O2が進行方向の後側且つレーザ光Lの入射側に位置するように、空間光変調器5によって変調される。
【0044】
レーザ照射ユニット3は、一例として、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が半導体基板21の表面21aに至る条件で、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウェハ20にレーザ光Lを照射することができる。一例として、厚さ775μmの単結晶シリコン基板である半導体基板21に対し、表面21aから54μmの位置及び128μmの位置に2つの集光点O1,O2をそれぞれ合わせて、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウェハ20にレーザ光Lを照射する。
【0045】
このとき、レーザ光Lの波長は1099nm、パルス幅は700n秒、繰り返し周波数は120kHzである。また、集光点O1におけるレーザ光Lの出力は2.7W、集光点O2におけるレーザ光Lの出力は2.7Wであり、半導体基板21に対する2つの集光点O1,O2の相対的な移動速度は800mm/秒である。
【0046】
このような2列の改質領域12a,12b及び亀裂14の形成は、次のような場合に実施される。すなわち、後の工程において、半導体基板21の裏面21bを研削することにより半導体基板21を薄化すると共に亀裂14を裏面21bに露出させ、複数のライン15のそれぞれに沿ってウェハ20を複数の半導体デバイスに切断する場合である。ただし、レーザ照射ユニット3は、後述するように、半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に至らないように、改質領域(改質スポット)12a,12b及び改質領域12a,12bから延びる亀裂14を半導体基板21に形成してもよい。
[撮像ユニットの構成]
【0047】
図7は、
図1に示された撮像ユニットの構成を示す模式図である。
図7に示されるように、撮像ユニット4は、光源41と、ミラー42と、対物レンズ43と、光検出部44と、を有している。光源41は、ウェハ20(少なくとも半導体基板21)に対して透過性を有する光I1を出力する。光源41は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I1を出力する。光源41から出力された光I1は、ミラー42によって反射されて対物レンズ43を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウェハ20に照射される。このとき、ステージ2は、上述したように2列の改質領域12a,12bが形成されたウェハ20を支持している。
【0048】
対物レンズ43は、半導体基板21の表面21aで反射された光I1を通過させる。つまり、対物レンズ43は、半導体基板21を伝搬した光I1を通過させる。対物レンズ43の開口数(NA)は、0.45以上である。対物レンズ43は、補正環43aを有している。補正環43aは、例えば対物レンズ43を構成する複数のレンズにおける相互間の距離を調整することにより、半導体基板21内において光I1に生じる収差を補正する。光検出部44は、対物レンズ43及びミラー42を透過した光I1を検出する。光検出部44は、例えば、InGaAsカメラを含む赤外カメラによって構成されており、近赤外領域の光I1を検出する。すなわち、撮像ユニット4は、半導体基板21に対して透過性を有する光I1によって半導体基板21を撮像するためのものである。なお、光I1に生じる収差を補正するための構成としては、上述した補正環43aに代えて(或いは加えて)、空間光変調器5や他の構成を採用してもよい。また、光検出部44は、InGaAsカメラに限らず、透過型コンフォーカル顕微鏡等の透過型の撮像を利用した任意の撮像手段とされ得る。
【0049】
撮像ユニット4は、2列の改質領域12a,12bのそれぞれ、及び、複数の亀裂14a,14b,14c,14dのそれぞれの先端を撮像することができる(詳細については、後述する)。亀裂14aは、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14bは、改質領域12aから裏面21b側に延びる亀裂である。亀裂14cは、改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14dは、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂である。
【0050】
すなわち、亀裂14b,14dは、改質領域12a,12bから第1表面である裏面21b側に延びる第1亀裂であり、亀裂14a,14cは、改質領域12a,12bから第2表面である表面21a側に延びる第2亀裂である。以下では、Z方向の正方向を上とした場合に合わせて、第1亀裂のうちの亀裂14dを上亀裂と称し、第2亀裂のうちの亀裂14aを下亀裂と称する場合がある。
[アライメント補正用撮像ユニットの構成]
【0051】
図8は、
図1に示された撮像ユニットの構成を示す模式図である。
図8に示されるように、撮像ユニット7は、光源71と、ミラー72と、レンズ73と、光検出部74と、を有している。光源71は、半導体基板21に対して透過性を有する光I2を出力する。光源71は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I2を出力する。光源71は、撮像ユニット4の光源41と共通化されていてもよい。光源71から出力された光I2は、ミラー72によって反射されてレンズ73を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウェハ20に照射される。
【0052】
レンズ73は、半導体基板21の表面21aで反射された光I2を通過させる。つまり、レンズ73は、半導体基板21を伝搬した光I2を通過させる。レンズ73の開口数は、0.3以下である。すなわち、撮像ユニット4の対物レンズ43の開口数は、レンズ73の開口数よりも大きい。光検出部74は、レンズ73及びミラー72を通過した光I2を検出する。光検出部75は、例えば、InGaAsカメラを含む赤外カメラによって構成されており、近赤外領域の光I2を検出する。
【0053】
撮像ユニット7は、制御部10の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウェハ20に照射すると共に、表面21a(機能素子層22)から戻る光I2を検出することにより、機能素子層22を撮像する。また、撮像ユニット7は、同様に、制御部10の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウェハ20に照射すると共に、半導体基板21における改質領域12a,12bの形成位置から戻る光I2を検出することにより、改質領域12a,12bを含む領域の画像を取得する。これらの画像は、レーザ光Lの照射位置のアライメントに用いられる。撮像ユニット8は、レンズ73がより低倍率(例えば、撮像ユニット7においては6倍であり、撮像ユニット8においては1.5倍)である点を除いて、撮像ユニット7と同様の構成を備え、撮像ユニット7と同様にアライメントに用いられる。なお、撮像ユニット4,7,8においては、後述するように形成状態を取得するための撮像と、上記のようにアライメントのための撮像とにおいて、共用されてもよい。
[撮像ユニットによる撮像原理]
【0054】
撮像ユニット4を用い、
図9に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る(改質スポットから延びる亀裂)亀裂14が表面21aに至っている半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点F(対物レンズ43の焦点)を移動させる。この場合、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、当該先端14eを確認することができる(
図9における右側の画像)。しかし、亀裂14そのもの、及び表面21aに至っている亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、それらを確認することができない(
図9における左側の画像)。なお、半導体基板21の表面21aに裏面21b側から焦点Fを合わせると、機能素子層22を確認することができる。
【0055】
また、撮像ユニット4を用い、
図10に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っていない半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点Fを移動させる。この場合、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、当該先端14eを確認することができない(
図10における左側の画像)。しかし、表面21aに対して裏面21bとは反対側の領域(すなわち、表面21aに対して機能素子層22側の領域)に裏面21b側から焦点Fを合わせて、表面21aに関して焦点Fと対称な仮想焦点Fvを当該先端14eに位置させると、当該先端14eを確認することができる(
図10における右側の画像)。なお、仮想焦点Fvは、半導体基板21の屈折率を考慮した焦点Fと表面21aに関して対称な点である。
【0056】
以上のように亀裂14そのものを確認することができないのは、照明光である光I1の波長よりも亀裂14の幅が小さいためと想定される。
図11及び
図12は、シリコン基板である半導体基板21の内部に形成された改質領域12及び亀裂14のSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。
図11の(b)は、
図11の(a)に示される領域A1の拡大像、
図12の(a)は、
図11の(b)に示される領域A2の拡大像、
図12の(b)は、
図12の(a)に示される領域A3の拡大像である。このように、亀裂14の幅は、120nm程度であり、近赤外領域の光I1の波長(例えば、1.1~1.2μm)よりも小さい。
【0057】
以上を踏まえて想定される撮像原理は、次のとおりである。
図13の(a)に示されるように、空気中に焦点Fを位置させると、光I1が戻ってこないため、黒っぽい画像が得られる(
図13の(a)における右側の画像)。
図13の(b)に示されるように、半導体基板21の内部に焦点Fを位置させると、表面21aで反射された光I1が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(
図13の(b)における右側の画像)。
図13の(c)に示されるように、改質領域12に裏面21b側から焦点Fを合わせると、改質領域12によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について吸収、散乱等が生じるため、白っぽい背景の中に改質領域12が黒っぽく映った画像が得られる(
図13の(c)における右側の画像)。
【0058】
図14の(a)及び(b)に示されるように、亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、例えば、先端14e近傍に生じた光学的特異性(応力集中、歪、原子密度の不連続性等)、先端14e近傍で生じる光の閉じ込め等によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について散乱、反射、干渉、吸収等が生じるため、白っぽい背景の中に先端14eが黒っぽく映った画像が得られる(
図14の(a)及び(b)における右側の画像)。
図14の(c)に示されるように、亀裂14の先端14e近傍以外の部分に裏面21b側から焦点Fを合わせると、表面21aで反射された光I1の少なくとも一部が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(
図14の(c)における右側の画像)。
[撮像ユニットによる検査原理]
【0059】
制御部10が、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が半導体基板21の表面21aに至る条件で、レーザ照射ユニット3にレーザ光Lを照射させた結果、予定どおり、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っている場合、亀裂14の先端14eの状態は、次のとおりとなる。すなわち、
図15に示されるように、改質領域12aと表面21aとの間の領域、及び改質領域12aと改質領域12bとの間の領域には、亀裂14の先端14eが現れない。改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端14eの位置(以下、単に「先端位置」という)は、改質領域12bと裏面21bとの間の基準位置Pに対して裏面21b側に位置する。
【0060】
それに対し、制御部10が、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っていない場合、亀裂14の先端14eの状態は、次のとおりとなる。すなわち、
図16に示されるように、改質領域12aと表面21aとの間の領域には、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14aの先端14eが現れる。改質領域12aと改質領域12bとの間の領域には、改質領域12aから裏面21b側に延びる亀裂14bの先端14e、及び改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂14cの先端14eが現れる。改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端位置は、改質領域12bと裏面21bとの間の基準位置Pに対して表面21aに位置する。
【0061】
以上により、次の第1検査、第2検査、第3検査及び第4検査のうち少なくとも1つの検査を制御部10が実施すれば、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が半導体基板21の表面21aに至っているか否かを評価することができる。第1検査は、改質領域12aと表面21aとの間の領域を検査領域R1とし、検査領域R1に、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14aの先端14eが存在するか否かの検査である。
【0062】
第2検査は、改質領域12aと改質領域12bとの間の領域を検査領域R2とし、検査領域R2に、改質領域12aから裏面21b側に延びる亀裂14bの先端14eが存在するか否かの検査である。第3検査は、検査領域R2に、改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂14cの先端14eが存在するか否かの検査である。第4検査は、基準位置Pから裏面21b側に延び且つ裏面21bに至っていない領域を検査領域R3とし、検査領域R3に、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端位置が位置するか否かの検査である。
【0063】
なお、以上の検査によれば、所定の領域に亀裂14の先端14eが存在するか否かに加えて、それぞれの先端14eの位置、改質領域12a,12bの位置、亀裂14a~14dの長さ、亀裂14の全体の長さ等の、改質領域及び亀裂の形成状態を示す情報を取得することもできる。上述したように、亀裂14b,14dは、第1表面である裏面21b側に延びる第1亀裂であり、それらの先端14eは、第1亀裂の裏面21b側の先端である第1端である。特に、亀裂14dは上亀裂である。また、亀裂14a,14cは、第2表面である表面21a側に延びる第2亀裂であり、それらの先端14eは、第2亀裂の表面21a側の先端である第2端である。特に、亀裂14aは下亀裂である。
[形成状態の取得方法]
【0064】
引き続いて、改質領域及び亀裂の形成状態を示す情報を取得すための方法について説明する。
図17は、形成状態の取得方法を説明するための対象物の断面図である。
図17では、ウェハ20の機能素子層22が省略されている。また、
図17では、改質領域12a、改質領域12b、亀裂14a、亀裂14b、亀裂14d、亀裂14c、及び、亀裂14dのそれぞれに対して、表面21aに関して対称的な位置の虚像12aI、虚像12bI、虚像14aI、虚像14bI、虚像14cI、及び、虚像14dIを図示している。
【0065】
さらに、
図17では、一方向に延在する改質領域12a,12bが図示されている。上述したように、改質領域12a,12bのそれぞれは、改質スポット12sの集合を含む。よって、改質領域12a,12bから延びる亀裂14a~14dは、改質スポット12sから延びる亀裂14a~14dでもある。特に、改質領域12a,12bの延在方向に交差する断面内では、改質領域12a,12bはそれぞれ単一の改質スポット12sと同一である。したがって、改質領域12a,12bは改質スポット12sと読み替えることができる。
【0066】
ウェハ20には、外表面(表面21a,裏面21b)に至らないように、改質領域12a,12b、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14a(下亀裂)、改質領域12aから裏面21b側に延びる亀裂14b、改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂14c、及び、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14d(上亀裂)が形成されている。
【0067】
なお、
図17の例では、亀裂14bと亀裂14cとが互につながって単一の亀裂を形成しているが、互に離間している場合もある。また、亀裂14d(上亀裂)の裏面21b側の先端14eを第1端(上亀裂先端)14deと称し、亀裂14a(下亀裂)の表面21a側の先端14eを第2端(下亀裂先端)14aeと称する場合がある。
【0068】
改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dの形成状態は、複数の項目を含む。形成状態に含まれる項目(以下、形成状態項目という)の一例は、次のとおりである。なお、以下のZ方向は、表面21a及び裏面21bに交差(直交)する第1方向の一例である。また、以下の形成状態項目のそれぞれには、説明の容易化のために、図示しない符号を付す。さらに、各値は表面21aを基準位置(0点)とする値である。
【0069】
上亀裂先端位置F1:第1端14deのZ方向についての位置。
上亀裂量F2:Z方向における亀裂14dの長さ。
下亀裂先端位置F3:第2端14aeのZ方向についての位置。
下亀裂量F4:Z方向における亀裂14aの長さ。
総亀裂量F5:Z方向における亀裂14a~14dの長さの総量であって、Z方向についての第1端14deと第2端14aeと距離。
上下亀裂先端位置ずれ幅F6:加工進行方向(X方向)に交差(直交)する方向(Y方向)についての第1端14deの位置と第2端14aeの位置とのずれ幅。
改質領域だ痕の有無F7:改質領域12a,12bのそれぞれを構成する改質スポットの痕の有無。
下亀裂先端の蛇行量F8:Y方向における第2端14aeの蛇行量。
改質領域間の黒スジの有無F9:改質領域12aと改質領域12bとの間の領域における亀裂14bの裏面21b側の先端、及び、亀裂14cの表面21a側の先端の有無(亀裂14bと亀裂14cとがつながっているか否か)。亀裂14b,14cの先端がある場合には黒スジが観察され(黒スジ有に対応し)、亀裂14b,14cの先端がない(つながっている)場合には黒スジが観察されない(黒スジ無しに対応する)。
【0070】
以上の形成状態項目を含む形成状態を取得するために、撮像ユニット4の光I1による以下の撮像C1~C11を行うことができる。
【0071】
撮像C1:亀裂14dの第1端14deに撮像ユニット4の対物レンズ43の焦点Fを合せるように光I1により半導体基板21を撮像する。このとき、焦点Fが合ったZ方向の位置(裏面21bを基準とした位置)を位置P1として取得できる。
撮像C2:改質領域12bの裏面21b側の先端に焦点Fを合わせるように光I1により半導体基板21Wを撮像する。このとき、焦点Fが合ったZ方向の位置(裏面21bを基準とした位置)を位置P2として取得できる。
撮像C3:亀裂14bの裏面21b側の先端に焦点Fを合わせるように光I1により半導体基板21を撮像する。このとき、焦点Fが合ったZ方向の位置(裏面21bを基準とした位置)を位置P3として取得できる。
撮像C4:改質領域12aの裏面21b側の先端に焦点Fを合わせるように光I1により半導体基板21を撮像する。このとき、焦点Fが合ったZ方向の位置(裏面21bを基準とした位置)を位置P4として取得できる。
撮像C5:亀裂14aの第2端14aeに対して表面21a側から焦点Fを合わせるように(虚像14aIの先端に焦点Fを合せるように)光I1により半導体基板21を撮像する。このとき、焦点Fが合ったZ方向の位置(裏面21bを基準とした位置)を位置P5Iとして取得できる。位置P5Iは、虚像14aIの先端に対応する位置であるため、半導体基板21の外部(表面21aよりも下側)の位置となる。また、半導体基板21の厚さTを裏面21bから位置P5Iまでの距離から減算することにより、亀裂14a(実像)の第2端14aeの位置P5を取得できる。
撮像C6:改質領域12aの表面21a側の先端に対して表面21a側から焦点Fを合わせるように(虚像12aIの先端に焦点Fを合わせるように)光I1により半導体基板21を撮像する。このとき、焦点Fが合ったZ方向の位置(裏面21bを基準とした位置)を位置P6Iとして取得できる。位置P6Iは、虚像12aIの先端に対応する位置であるため、半導体基板21の外部(表面21aよりも下側)の位置となる。また、半導体基板21の厚さTを裏面21bから位置P6Iまでの距離から減算することにより、改質領域12a(実像)の先端の位置P6を取得できる。さらに、位置P6は、改質領域12aを形成する際の対物レンズ43のZ方向の移動量であるZハイトと、半導体基板21の材料(例えばシリコン)の屈折率を考慮するための係数であるDZレートと、の乗算によっても取得され得る。
撮像C7:位置P1と位置P2との間の範囲P7に焦点Fを走査しながら光I1により半導体基板21を撮像する。
撮像C8:位置P5と位置P6との間の範囲P8に焦点Fを走査しながら光I1により半導体基板21を撮像する。
撮像C9:改質領域12aと改質領域12bとの間の範囲P9に焦点Fを走査しながら光I1により半導体基板21を撮像する。
撮像C10:改質領域12aの裏面21b側の先端を跨ぐ範囲P10に焦点Fを走査しながら光I1により半導体基板21を撮像する。
撮像C11:改質領域12bの表面21a側の先端に対して表面21a側から焦点Fを合わせるように(虚像12bIの先端に焦点Fを合わせるように)光I1により半導体基板21を撮像する。このとき、焦点Fが合ったZ方向の位置(裏面21bを基準とした位置)を位置P11Iとして取得できる。位置P11Iは、虚像12bIの先端に対応する位置であるため、半導体基板21の外部(表面21aよりも下側)の位置となる。また、半導体基板21の厚さTを裏面21bから位置P11Iまでの距離から減算することにより、改質領域12b(実像)の先端の位置P11を取得できる。なお、位置P11は、改質領域12bを形成する際の対物レンズ43のZ方向の移動量であるZハイトと、半導体基板21の材料(例えばシリコン)の屈折率を考慮するための係数であるDZレートと、の乗算によっても取得され得る。
【0072】
上記の形成状態項目のそれぞれは、以下のとおり、以上の撮像C1~C10を行うことにより取得できる。
【0073】
上亀裂先端位置F1:半導体基板21の厚さTから、撮像C1で取得された位置P1と裏面21bとの距離を減算した値(T-P1)として取得される。
上亀裂量F2:撮像C2で取得された位置P2と裏面21bとの距離から、位置P1と裏面21bとの距離を減算した値(P2-P1)として取得される。
下亀裂先端位置F3:上述したように、撮像C5により取得された位置P5Iと裏面21bとの距離から半導体基板21の厚さTを減算した値(P5I-T=P5)として取得される。
下亀裂量F4:上述したように、撮像C6により取得された位置P6Iと裏面21bとの距離から半導体基板21の厚さTを減算した値(P6I-T=P6)を位置P5から減算した値(P5-P6)として取得される。
総亀裂量F5:位置P5と裏面21bとの距離から位置P1と裏面21bとの距離を減算した値(P5-P1)との距離として取得できる。
上下亀裂先端位置ずれ幅F6:撮像C10により範囲P10で取得される画像から測定できる。
改質領域だ痕の有無F7:改質領域12bについては、撮像C2により位置P2で取得される画像、又は、撮像C11により位置P11(位置P11I)で取得される画像から判定され、改質領域12aについては、撮像C4により位置P4で取得される画像、又は、撮像C6により位置P6(位置P6I)で取得される画像から判定できる。
下亀裂先端の蛇行量F8:撮像C5により位置P5(位置P5I)で取得された画像から測定できる。
改質領域間の黒スジの有無F9:撮像C9により範囲P9で取得される画像から判定できる(範囲P9で取得された画像において亀裂14b,14cの先端が確認された場合に、黒スジ有と判定できる)。
[照射条件と形成状態との関係]
【0074】
改質領域12a,12bを形成する際に、レーザ光Lの照射条件を変更すると、改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dの形成状態も変化し得る。引き続いて、レーザ光Lの照射条件と、改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dの形成状態との相関について、形成状態項目のうちの上亀裂量F2、下亀裂量F4、及び総亀裂量F5を例に説明する。
【0075】
まず、改質領域12a,12bを形成するためのレーザ光Lの照射条件は、複数の項目を含む。照射条件に含まれる項目(以下、「照射条件項目」という)の一例は、以下のとおりである。なお、以下の照射条件項目のそれぞれには、説明の容易化のために、図示しない符号を付す。
【0076】
改質領域間隔D1:Z方向における改質領域12aと改質領域12bとの間隔。
パルス幅D2:レーザ光Lのパルス幅。
パルスエネルギーD3:レーザ光Lのパルスエネルギー。
パルスピッチD4:レーザ光Lのパルスピッチ。
集光状態D5:レーザ光の集光状態であって、一例として、球面収差補正レベルD6や非点収差補正レベルD7やLBAオフセット量D8(後述)である。
【0077】
図18及び
図19は、改質領域間隔を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。
図18の(a),(b)のグラフの横軸は、改質領域間隔D1をZハイトで示したものである。改質領域間隔D1の3点は、Lv4、Lv8、Lv12となっており、それぞれ、
図19の(a)、(b)及び(c)に対応する。なお、
図19は、切断面である。
【0078】
図18及び
図19に示されるように、往路及び復路のいずの加工においても、改質領域間隔D1の増大に応じて、上亀裂量F2、下亀裂量F4、及び、総亀裂量F5も増大している。なお、一例として、レーザ光Lの集光点がX正方向に進行する(加工進行方向がX正方向である)場合を往路での加工と称し、レーザ光Lの集光点がX負方向に進行する(加工進行方向がX負方向である)場合を復路での加工と称する。
【0079】
図20及び
図21は、レーザ光のパルス幅を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。パルス幅D2の3点は、Lv2、Lv3、及び、Lv5となっており、それぞれ、
図21の(a)、(b)、及び、(c)に対応する。なお、
図21は切断面である。
図20,21に示されるように、パルス幅D2の増大に応じて、上亀裂量F2、下亀裂量F4、及び、総亀裂量F5も増大している。ただし、総亀裂量F5については、パルス幅D2がLv2である場合には、改質領域12aと改質領域12bとの間に黒スジが発生し(改質領域間の黒スジ有)、撮像ユニット4による総亀裂量F5の測定ができていない(切断面の観察から総亀裂量F5は領域Aにある)。
【0080】
図22及び
図23は、レーザ光のパルスエネルギーを3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。パルスエネルギーD3の3点は、Lv2、Lv7、及び、Lv12となっており、それぞれ、
図23の(a)、(b)、及び、(c)に対応する。なお、
図23は切断面である。
図22,23に示されるように、パルスエネルギーD3の増大に応じて、上亀裂量F2、下亀裂量F4、及び、総亀裂量F5も増大している。
【0081】
図24及び
図25は、レーザ光のパルスピッチを4点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。パルスピッチD4の4点は、Lv2.5、Lv3.3、Lv4.1、及び、Lv6.7となっており、それぞれ、
図24の(a)、(b)、(c)、及び、(d)に対応する。なお、
図25は切断面である。
図24及び
図25に示されるように、パルスピッチD4の変化に応じて、上亀裂量F2、下亀裂量F4、及び、総亀裂量F5も変化している。
【0082】
特に、往路及び復路における下亀裂量F4と復路における上亀裂量F2と復路における総亀裂量F5では、4点のパルスピッチD4のなかにピークが表れている。ただし、総亀裂量F5については、パルスピッチD4がLv6.7である場合には、改質領域12aと改質領域12bとの間に黒スジが発生し(改質領域間の黒スジ有)、撮像ユニット4による総亀裂量F5の測定ができていない(切断面の観察から総亀裂量F5は領域Bにある)。
【0083】
図26及び
図27は、レーザ光の集光状態(球面収差補正レベル)を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である。球面収差補正レベルD6の3点は、Lv-4、Lv-10、及び、Lv-16であり、それぞれ、
図27の(a)、(b)、及び、(d)に対応している。なお、
図27は、切断面である。
図26及び
図27に示されるように、球面収差補正レベルD6の増大に応じて、上亀裂量F2、下亀裂量F4、及び、総亀裂量F5は減少している。
【0084】
図28及び
図29は、レーザ光の集光状態(非点収差補正レベル)を3点で変化させた場合の亀裂量の変化を示す図である非点収差補正レベルD7の3点は、Lv2.5、Lv10、及び、Lv17.5であり、それぞれ、
図28の(a)、(b)、及び、(d)に対応している。なお、
図29は、切断面である。
図28及び
図29に示されるように、非点収差補正レベルD7の変化に応じて、上亀裂量F2、下亀裂量F4、及び、総亀裂量F5も変化している。特に、往路及び復路における上亀裂量F2を除き、3点の非点収差補正レベルD7のなかにピークが表れている。
【0085】
図30及び
図31は、レーザ光のパルスピッチを4点で変化させた場合の黒スジの有無の変化を示す図である。パルスピッチD4の4点は、Lv2.5、Lv3.3、Lv4.1、及び、レベル6.7となっており、それぞれ、
図30及び31の(a)、(b)、(c)、及び、(d)に対応する。なお、
図31は切断面である。
図30に示されるように、パルスピッチD4がLv6.7のときに、亀裂14b,14cの先端が確認されている(
図30の(d)参照)。実際に、
図31の(d)に示されるように、切断面の観察では改質領域12aと改質領域12bとの間に黒スジBsの発生が確認された。
【0086】
以上のように、レーザ光Lの照射条件と、改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dの形成状態との間には相関がある。したがって、改質領域12a,12bの形成の後に、撮像ユニット4による撮像で形成状態の各項目を取得することによって、レーザ光Lの照射条件の合否を判定したり、望ましいレーザ光Lの照射条件を導出したりすることが可能である。
[レーザ加工装置の参考実施形態]
【0087】
引き続いて、レーザ加工装置1の参考形態について説明する。ここでは、レーザ光Lの照射条件の合否判定を行う動作の一例について説明する。
図32は、合否判定方法の主要な工程を示すフローチャートである。以下の方法は、レーザ加工方法の参考形態である。ここでは、まず、レーザ加工装置1の制御部10が、ユーザからの入力を受け付ける(工程S1)。この工程S1についてより詳細に説明する。
【0088】
図33は、
図1に示された入力受付部の一例を示す図である。
図33の(a)に示されるように、工程S1では、まず、制御部10が、入力受付部103の制御により、機差・ウェハ補正検査を実行するか否かの選択をユーザに促すための情報H1、及び、検査内容の選択をユーザに促すための情報H2を表示させる。機差・ウェハ補正検査とは、改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dの所望する形成状態を実現するためのレーザ光Lの照射条件が、レーザ加工装置1の機差やウェハに応じて異なるおそれがあることから、所定の照射条件にてレーザ光Lの照射(加工)を行い、その照射条件の合否判定を行うモードである。なお、以下では、改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dの形成状態を単に「形成状態」と称し、レーザ光Lの照射条件を単に「照射条件」と称する場合がある。
【0089】
また、検査内容の選択を促すための情報H2としては、
図33の(b)に示されるように、加工位置、加工条件、及び、ウェハ厚さを1セットとする複数の検査内容H21~H24等を表示する。加工位置は、レーザ光Lの入射面(ここでは裏面21b)から改質領域12aの表面21a側の先端の位置である。加工条件は、ここでは、所定のウェハ厚さ及び加工位置において亀裂が外表面に至らない(ST)各種の条件である。
【0090】
続いて、工程S1では、入力受付部103が、機差・ウェハ補正検査を実行するか否かのユーザの選択を受け付ける。また、工程S1では、入力受付部103が、検査内容H21~H24等の選択を受け付ける。続いて、工程S1では、制御部10が、入力受付部103が機差・ウェハ補正検査を実行する旨の選択を受け付け、且つ、検査内容H21~H24等の選択を受け付けた場合に、検査内容H21~H24等に応じた加工条件(レーザ光Lの照射条件を含む)を基本加工条件として設定する。
【0091】
図34は、基本加工条件の一例を表示した状態の入力受付部を示す図である。
図34に示されるように、工程S1では、制御部10が、入力受付部103が機差・ウェハ補正検査を実行する旨の選択を受け付け、且つ、検査内容H21~H24等の選択を受け付けた場合に、入力受付部103の制御により、設定された基本加工条件を示す情報H3を入力受付部103に表示させる。基本加工条件を示す情報H3は、複数の項目を含む。
【0092】
複数の項目のうち、機差・ウェハ補正検査を実行することを示す項目H31、加工条件H32、ウェハ厚さH33、及び、加工位置H34は、先に検査内容H21~H24等の選択結果を示すものであり、現時点でユーザからの選択を受け付けるものではない。一方、焦点数H41、パス数H42、加工速度H43、パルス幅H44、周波数H45、パルスエネルギーH46、判定項目H47、目標値H48、及び、規格H49は、制御部10が基本加工条件として一例を提示するものの、現時点で、ユーザからの選択(変更)を受け付ける。
【0093】
なお、焦点数H41は、レーザ光Lの分岐数(焦点の数)を示しており、パス数H42は、ラインに沿ってレーザ光Lの走査を行う回数を示し、加工速度H43は、レーザ光Lの集光点の相対速度を示す。したがって、レーザ光Lのパルスピッチは、加工速度H43及びレーザ光Lの(繰り返し)周波数H45によって規定され得る。一方、判定項目H47は、上述した複数の形成状態項目のうち、レーザ光Lの照射条件の合否判定に用いる形成状態項目を示している。
【0094】
ここでは、判定項目H47として、一例として亀裂量(下側)、すなわち、下亀裂量F4が設定されている(他の形成状態項目も選択可能である)。また、目標値H48は、レーザ光Lの照射条件の合格範囲の中央の値を示し、規格H49は、合格範囲の中央の値(目標値H48)からの上下幅を示す。すなわち、ここでは、基本加工条件として、下亀裂量F4が35μm以上45μm以下の範囲であった場合に、当該レーザ光Lの照射条件が合格と判定されるように、目標値H48及び規格H49が設定されている(他の範囲にも選択可能である)。
【0095】
以上が工程S1であり、レーザ加工の基本加工条件が設定される。続く工程では、制御部10が、工程S1で設定された照射条件である基本加工条件が、実際に、亀裂14a,14dが外表面(表面21a及び裏面21b)に至らない条件である未到達条件(ST条件)であるか否かの判定を行う処理を実行する(工程S2)。ここでは、制御部10が、入力を受け付けた条件が未到達条件であるか否かを、(撮像を行うことなく)データベースを参照することにより判定する。一例として、制御部10は、入力を受け付けた加工位置に応じた集光位置が、表面21aに近すぎるために、亀裂14aが表面21aに至る条件(BHC条件)になっていないか等を判定することができる。
【0096】
続く工程では、工程S2の判定の結果が、基本加工条件が未到達条件であることを示す結果であった場合(工程S2:YES)、工程S1で設定された基本加工条件にて、加工を行う(工程S3)。ここでは、制御部10が、レーザ照射ユニット3の制御により、半導体基板21にレーザ光Lを照射して、半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に至らないように、改質領域12a,12b及び改質領域12a,12bから延びる亀裂14a~14dを半導体基板21に形成する処理(加工処理)を実行する。より具体的には、この工程S3では、制御部10が、レーザ照射ユニット3及びステージ2の制御によって、レーザ光Lの集光点O1,O2を半導体基板21の内部に位置させた状態において、当該集光点O1,O2をX方向に沿って相対移動させることにより、半導体基板21の内部に改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dを形成する。なお、工程S2の判定の結果が、基本加工条件が未到達条件でないことを示す結果であった場合(工程S2:NO)、工程S1に戻り照射条件を再設定する。
【0097】
続いて、制御部10が、撮像ユニット4の制御により、半導体基板21に対して透過性を有する光I1によって半導体基板21を撮像し、改質領域12a,12b及び/又は亀裂14a~14bの形成状態を示す情報を取得する処理を実行する(工程S4)。ここでは、工程S1において、判定項目H47として下亀裂量F4が指定されているため、少なくとも、下亀裂量F4を取得するために必要な撮像C5及び撮像C6を実行する(他の撮像を実行してもよい)。
【0098】
続いて、制御部10が、入力受付部103の制御によって、工程S3でのレーザ光Lの照射条件を示す情報と、工程S4で取得した形成状態を示す情報と、を互いに関連付けて入力受付部103に表示させる処理を実行する(工程S5)。この工程S5で表示する形成状態を示す情報(形成状態項目)は、工程S1で設定された判定項目H47の下亀裂量F4である(他の形成状態項目も併せて表示してもよい)。上述たように、判定項目H47は、選択され得る。
【0099】
したがって、工程S1では、制御部10は、入力受付部103の制御により、複数の形成状態項目のうちの工程S5で入力受付部103に表示させる形成状態項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる処理を実行したこととなる。また、入力受付部103は、工程S1において、形成状態項目の選択を受け付けることとなる。そして、制御部10は、工程S5において、入力受付部103の制御により、入力受付部103が受け付けた形成状態項目(ここでは下亀裂量F4)を示す情報を、レーザ光Lの照射条件(ここではパルスエネルギーD3)を示す情報と関連付けて入力受付部103に表示させることとなる。
【0100】
さらに、制御部10は、入力受付部103の制御により、レーザ光Lの照射条件に含まれる項目である複数の照射条件項目のうちの工程S5で入力受付部103に表示させる照射条件項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる処理を実行してもよい。この処理を実行した場合、入力受付部103は、照射条件項目の選択の入力を受け付け、制御部10は、入力受付部103の制御により、照射条件のうちの入力受付部103が受け付けた照射条件項目を示す情報を、形成状態を示す情報と関連付けて入力受付部103に表示させてもよい。
【0101】
続く工程では、制御部10が、工程S4で取得された改質領域12a,12b及び/又は亀裂14a~14bの形成状態を示す情報に基づいて、工程S3におけるレーザ光Lの照射条件の合否判定を行う処理を実行する(工程S6)。より具体的には、工程S1で設定された判定項目H47が下亀裂量F4であり、目標値H48が40μmであり、規格が±5μmであるから、工程S4で取得された下亀裂量F4が35μm以上45μm以下の範囲である場合に、制御部10は、工程S3におけるレーザ光Lの照射条件が合格であると判定する。
【0102】
上述したように、判定項目H47は選択され得る。したがって、工程S1では、制御部10は、入力受付部103の制御により、形成状態に含まれる複数の形成状態項目のうちの合否判定に用いる項目である判定項目H47の選択を促すための情報を入力受付部103に表示させる処理を実行することとなる。また、入力受付部103は、工程S1において、判定項目H47の選択を受け付けることとなる。そして、制御部10は、入力受付部103が受け付けた判定項目H47を示す情報に基づいて合否判定を行うこととなる。
【0103】
さらに、上述したように、目標値H48及び規格H49は選択され得る。したがって、工程S1では、制御部10は、入力受付部103の制御により、形成状態の目標値H48及び規格H49の入力を促すための情報を入力受付部103に表示させる処理を実行することとなる。また、入力受付部103は、工程S1において、目標値H48及び規格H49の入力を受け付けている。そして、制御部10は、工程S6において、工程S3における照射条件での形成状態(下亀裂量F4)と目標値H48及び規格H49とを比較することにより、合否判定を行う。
【0104】
工程S6の結果が、合格であることを示す結果である場合(工程S6:YES)、制御部10が、入力受付部103の制御により、合格であることを示す判定結果(合否判定の結果)を入力受付部103に表示させる処理を実行した(工程S7)後に、合否判定を完了とするか否かの判定を行う(工程S8)。この工程S8では、制御部10は、入力受付部103の制御により、合否判定を完了とするか否かの選択を促す情報を入力受付部103に表示させると共に、入力受付部103が合否判定を完了とする旨の入力を受け付けた場合(工程S8:YES)に、処理を終了する。一方、この工程S8では、入力受付部103が合否判定を完了とせずに再判定を行う旨の入力を受け付けた場合(工程S8:NO)には、後述する工程S10に移行する。これは、制御部10による判定結果が合格である場合であっても、例えば不合格からより離れた好条件を設定すべく合否判定を続ける要望がある場合があるためである。
【0105】
一方、工程S6の結果が、不合格であることを示す結果である場合(工程S6:NO)、制御部10が、入力受付部103の制御により、不合格であることを示す判定結果(合否判定の結果)を入力受付部103に表示させる処理を実行する(工程S9)と共に、複数の照射条件項目のうちの少なくとも1つを補正項目として補正して加工処理以降の処理を再度実行する再判定を行う。
【0106】
再判定についてより具体的に説明する。制御部10は、工程S6における合否判定の結果が不合格であった場合、及び、工程S8において再判定を行う旨の入力を受け付けた場合に、入力受付部103の制御により、照射条件に含まれる複数の照射条件項目の少なくとも1つを補正項目として補正して、加工処理以降の処理を再度実行する再判定を行う。すなわち、再判定を行う場合としては、合否判定の結果が不合格であった場合に限らない。換言すれば、ここでは、工程S6における合否判定の結果に応じて、再判定を行う。なお、再判定を行うか否かの選択を促す情報を入力受付部103に表示させ、再判定を行う選択を入力受付部103が受け付けた場合に、再判定を実行するようにしてもよい。
【0107】
そのために、制御部10は、まず、
図35に示されるように、入力受付部103の制御により、補正項目H5の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる処理を実行する(工程S10)。補正項目H5は、例えば、上述した照射条件項目のなかから選択され得る。なお、制御部10は、補正項目H5と同時に、判定項目H47、及び加工条件H32の選択を促す情報を入力受付部103に表示させることができる。そして、入力受付部103は、少なくとも補正項目H5のユーザの選択を受け付ける(工程S10)。
【0108】
続いて、制御部10は、
図36に示されるように、入力受付部103の制御により、入力受付部103が受け付けた選択結果の補正項目H5を可変条件とした設定画面H6を入力受付部103に表示させる。この設定画面H6は、一例として、補正項目H5をパルスエネルギーD3と選択された場合の画面である。このため、可変条件として、パルスエネルギーH46が表示されている。ここでは、パルスエネルギーH46として基本加工条件の値が表示されており、可変範囲H61としてLv2の範囲が表示されており、可変ポイント数H62として3ポイントが表示されている。これらの項目についても、ユーザにより選択(変更)が可能である。
【0109】
また、設定画面H6では、調整方法H63として最大値が表示されている。このため、以下の再判定では、Lv2の範囲で互に異なる3つのパルスエネルギーD3でのレーザ光Lの照射(加工)が行った結果、複数のパルスエネルギーD3で合格判定がなされた場合に、そのうちの最大の下亀裂量F4が得られたパルスエネルギーD3が調整候補として表示される。なお、設定画面H6のうち、補正項目H5、判定項目H47、及び、ウェハ厚さH33以外の項目は、現時点でユーザにより選択され得る。そして、制御部10は、設定画面H6に表示された照射条件等を、再判定のための条件として設定する。また、調整方法H63では、照射条件によっては最大値に変えて最小値や平均値等が選択され得る。
【0110】
続いて、制御部10は、設定画面H6に表示された条件にて、加工を行う(工程S11)。すなわち、以下では、制御部10が、入力受付部103が受け付けた補正項目H5を補正して再判定を行うこととなる。この工程S11では、制御部10が、レーザ照射ユニット3の制御により、半導体基板21にレーザ光Lを照射して、半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に至らないように、改質領域12a,12b及び改質領域12a,12bから延びる亀裂14a~14dを半導体基板21に形成する処理を実行する。特に、ここでは、補正項目H5であるパルスエネルギーが、互いに異なる3つの場合について、それぞれ加工を行う。
【0111】
続いて、制御部10が、撮像ユニット4の制御により、半導体基板21に対して透過性を有する光I1によって半導体基板21を撮像し、改質領域12a,12b及び/又は亀裂14a~14bの形成状態を示す情報を取得する処理を実行する(工程S12)。ここでは、工程S1及び工程S10(設定画面H6)において、判定項目H47として下亀裂量F4が指定されているため、少なくとも、下亀裂量F4を取得可能な撮像C6を実行する。
【0112】
続いて、制御部10が、工程S12で取得された形成状態を示す情報に基づいて、亀裂14a,14dが外表面(表面21a及び裏面21b)に至っていないか否かの判定を行う処理を実行する(工程S13)。ここでは、撮像C5で取得された画像において亀裂14aの第2端14aeが確認されなかった場合、撮像C0で取得された画像において裏面21bに亀裂14dが確認された場合の少なくとも一方の場合に、亀裂14a,14dが外表面に至っており、未到達(ST)でないと判定することができる。なお、撮像C0では、光I1により裏面21bを撮像する(
図17参照)。
【0113】
工程S13の判定結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていることを示す結果であった場合、すなわち、未到達でない場合(工程S13:NO)、工程S10における照射条件の再設定が行われるように工程S10に移行する。
【0114】
一方、工程S13の判定結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていないことを示す結果であった場合、すなわち、未到達である場合(工程S13:YES)、制御部10が、入力受付部103の制御によって、工程S11でのレーザ光Lの照射条件を示す情報と、工程S12で取得した形成状態を示す情報と、を互いに関連付けて入力受付部103に表示させる処理を実行する(工程S14)。この工程S14で表示する形成状態項目は、工程S10で設定された判定項目H47の下亀裂量F4である。上述したように、判定項目H47は、選択され得る。
【0115】
したがって、工程S10では、制御部10は、入力受付部103の制御により、複数の形成状態項目のうちの工程S14で入力受付部103に表示させる形成状態項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる処理を実行したこととなる。また、入力受付部103は、工程S10において、形成状態項目の選択を受け付けることとなる。そして、制御部10は、工程S14において、入力受付部103の制御により、入力受付部103が受け付けた形成状態項目(ここでは下亀裂量F4)を示す情報を、レーザ光Lの照射条件を示す情報と関連付けて入力受付部103に表示させることとなる。
【0116】
続く工程では、制御部10が、工程S12で取得された形成状態を示す情報に基づいて、工程S11におけるレーザ光Lの照射条件の合否判定を行う処理を実行する(工程S15)。より具体的には、工程S10で設定された判定項目H47が下亀裂量F4であり、目標値H48が40μmであり、規格が±5μmであるから、工程S12で取得された下亀裂量F4が35μm以上45μm以下の範囲である場合に、制御部10は、工程S11におけるレーザ光Lの照射条件が合格であると判定する。
【0117】
上述したように、目標値H48及び規格H49は選択され得る。したがって、工程S10では、制御部10は、入力受付部103の制御により、形成状態の目標値H48及び規格H49の入力を促すための情報を入力受付部103に表示させる処理を実行することとなる。また、入力受付部103は、工程S10において、目標値H48及び規格H49の入力を受け付けることとなる。そして、制御部10は、工程S15において、工程S11における照射条件での形成状態(下亀裂量F4)と目標値H48及び規格H49とを比較することにより、合否判定を行うこととなる。
【0118】
その後、工程S15の結果が、合格であることを示す結果である場合(工程S15:YES)、制御部10が、入力受付部103の制御により、判定結果を示す情報H7を入力受付部103に表示させ(工程S16)、処理を終了する。
図37は、判定結果(合格)を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
図37に示されるように、判定結果を示す情報H7では、上述した補正項目H5、判定項目H47、及びウェハ厚さH33に加えて、加工出力H72、合否判定H73、調整結果H74、内部観察画像H75、及び、グラフH76が表示されている。
【0119】
加工出力H72は、補正項目H5であるパルスエネルギーD3を可変とするための項目である。すなわち、ここでは、加工出力H72を3点で可変とすることにより、パルスエネルギーD3を3点で可変としている。調整結果H74では、加工出力H72(パルスエネルギー)の3点のうち、最も下亀裂量F4が大きかった(仮にピーク値と表示されている)加工出力H72(パルスエネルギー)を表示している。
【0120】
なお、照射条件項目としてのパルスエネルギーD3は、上記のように加工出力によって可変とされ得る。加工出力は、例えば、アッテネータ等での調整や、レーザ照射ユニット3の元出力・周波数によって調整され得る。一方、例えば、改質領域間隔D1は、レーザ光Lの集光点がレーザ光の分岐により複数形成される場合には、空間光変調器5を用いて集光点のZ方向の位置を制御することにより可変とされ得る。また、改質領域間隔D1は、レーザ光の集光点が単一である場合には、複数のパス間においてレーザ照射ユニット3のZ方向の位置を調整することにより、可変とされ得る。
【0121】
また、パルス幅D2は、レーザ照射ユニット3の設定切り替え(搭載波形メモリ・周波数と元出力との組み合わせ)や、複数の光源31が搭載されている場合に当該光源31の切り替え等によって可変とされ得る。なお、照射条件項目としては、パルス幅D2を含むパルス波形として設定され得る。この場合、パルス波形は、パルス幅D2に加えて波形状(矩形波、ガウシアン、バーストパルス)等も可変とされ得る。
【0122】
また、パルスピッチD4は、レーザ光Lの集光点の相対速度(ステージ2の移動速度)や、レーザ光Lの周波数等により可変とされ得る。また、球面収差補正レベルD6は、補正環レンズや変調パターンにより可変とされ得る。非点収差補正レベルD7(又はコマ収差補正レベル)は、光学系の調整や変調パターンにより可変とされ得る。さらに、LBAオフセット量D8は、空間光変調器5の制御により可変とされ得る。
【0123】
引き続き
図37を参照する。内部観察画像H75では、3つの加工出力H72(パルスエネルギーD3)のそれぞれでの亀裂14a(下亀裂)の第2端14ae(下亀裂先端)に焦点Fがあった状態の画像(撮像C5で取得される画像)を表示している。グラフH76では、パルスエネルギーD3と下亀裂量F4とが関連付けられている。すなわち、ここでは、制御部10は、入力受付部103の制御により、形成状態のうちの入力受付部103が受け付けた形成状態項目(下亀裂量F4)を示す情報を、照射条件を示す情報のうちの補正項目H5(パルスエネルギーD3)と関連付けて(関連付けられたグラフH76を)入力受付部103に表示させている。
【0124】
なお、判定結果を示す情報H7では、補正項目を変更して調整を完了するか否かの選択を促す情報H77が表示されている。これにより、ユーザは、補正項目(ここではパルスエネルギーD3)を調整結果H74で示された値(合格値)に設定するか否かの選択が可能である。
【0125】
続く工程では、制御部10が、合否判定を完了とするか否かの判定を行う(工程S17)。この工程S17では、制御部10は、入力受付部103の制御により、合否判定を完了とするか否かの選択を促す情報を入力受付部103に表示させると共に、入力受付部103が合否判定を完了とする旨の入力を受け付けた場合(工程S17:YES)に、処理を終了する。一方、この工程S17では、入力受付部103が合否判定を完了とせずに再判定を行う旨の入力を受け付けた場合(工程S17:NO)には、工程S10に移行する。これは、制御部10による再判定結果が合格である場合であっても、例えば不合格からより離れた好条件を設定すべく合否判定を続ける要望がある場合があるためである。
【0126】
一方、工程S15の結果が、不合格であることを示す結果である場合(工程S15:NO)、制御部10が、入力受付部103の制御により、不合格であることを示す判定結果(合否判定の結果)を入力受付部103に表示させる処理を実行する(工程S18)と共に、工程S10に移行する。
図38は、判定結果(不合格)を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
図38に示されるように、判定結果を示す情報H8では、
図37に示される情報H7と比較して、合否判定H73で不合格と表示される点、調整結果H74で調整不可と表示される点、及び、グラフH76の内容で相違している。なお、判定結果を示す情報H8には、再調整を実施するか否かの選択を促す情報H81が表示されている。これにより、ユーザは、上述したように工程S10に移行して再判定を繰り返すことを避け、処理を終了させることも可能である。
【0127】
なお、以上の参考形態では、形成状態項目として下亀裂量F4を例示すると共に、照射条件項目(補正項目)としてパルスエネルギーD3を例示した。しかしながら、照射条件項目(補正項目)としては、上述した任意のものが選択され得るし、形成状態項目としては、選択された照射条件項目(補正項目)と相関のある(ここでは照射条件項目の合否判定に使用し得る)任意のものが選択され得る。
【0128】
例えば、照射条件項目(補正項目)として改質領域間隔D1から集光状態D5のいずれが選択された場合であっても、形成状態項目として、上亀裂先端位置F1から総亀裂量F5、下亀裂先端の蛇行量F8、及び、改質領域間の黒スジの有無F9を選択し得る(相関がある)。また、照射条件項目(補正項目)として集光状態D5が選択された場合には、形成状態項目として、さらに、上下亀裂先端位置ずれ幅F6及び改質領域だ痕の有無F7が選択され得る。この点については、他の実施形態でも同様である。
[レーザ加工装置の第1実施形態]
【0129】
引き続いて、レーザ加工装置1の一実施形態について説明する。ここでは、レーザ光Lの照射条件の導出(パラメータ管理)を行う動作の一例について説明する。
図39は、照射条件の導出方法の主要な工程を示すフローチャートである。以下の方法は、レーザ加工方法の第1実施形態である。ここでは、まず、レーザ加工装置1の制御部10は、ユーザからの入力を受け付ける(工程S21)。この工程S21についてより詳細に説明する。
【0130】
図40に示されるように、この工程S21では、まず、制御部10が、入力受付部103の制御により、パラメータ管理を実行するか否かの選択をユーザに促すための情報J1、可変項目の選択をユーザに促すための情報J2、判定項目の選択をユーザに促すための情報J3、及び、加工条件の選択が自動であることを示す情報J4を入力受付部103に表示させる。パラメータ管理とは、例えば、所望の形成状態を得るための照射条件(パラメータ)が未知である対象物に対して、照射条件を導出するためのモードである。
【0131】
このため、本実施形態では、後述するように、互に異なる照射条件によって、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21にレーザ光Lを照射し、改質領域12a,12b等を形成する。可変項目は、照射条件のうちのライン15ごとに異ならせる照射条件項目を示す。また、判定項目は、形成状態項目のうちの可変項目を判定(評価)する項目である。加工条件は、ここでは、亀裂が外表面に至らない(ST)各種の条件である。
【0132】
続いて、工程S21では、入力受付部103が、パラメータ管理を実行するか否か、可変項目、及び、判定項目のユーザの選択を受け付ける。続いて、制御部10が、パラメータ管理を実行する旨の選択、可変項目の選択、及び、判定項目の選択がなされた場合に、加工条件の一例を自動選択し、選択された加工条件を示す情報を入力受付部103に表示させる。
【0133】
図41は、選択された加工条件の一例を表示した状態の入力受付部を示す図である。
図41に示されるように、加工条件を示す情報J5が入力受付部103に表示されてユーザに提示される。加工条件を示す情報J5は、複数の項目を含む。複数の項目のうち、パラメータ管理を実行することを示す項目J51、可変項目J52、及び、判定項目J53は、先の選択結果を示すものであり、現時点でユーザからの選択を受け付けるものではない(ウェハ厚さJ54についても同様)。
【0134】
一方、焦点数J55、パス数J56、加工速度J57、パルス幅J58、周波数J59、及び、ZH(Zハイト:Z方向における加工位置)J60は、制御部10が一例を提示するものの、ユーザから選択(変更)を受け付ける。なお、焦点数J55~周波数J59の意味は、
図32に示される焦点数H41~周波数H45と同様である。
【0135】
また、この例では、可変項目としてパルスエネルギーD3が選択されている。このため、可変条件として、パルスエネルギーJ61が表示されている。ここでは、パルスエネルギーJ61として初期値が表示されており、可変範囲J62としてLv1~12の範囲が表示されている。また、可変ポイント数J63として3ポイントが表示されている。これは、照射条件を異ならせるライン15の数が3であることを意味している。これらの項目についても、現時点で、ユーザにより選択(変更)が可能である。
【0136】
続く行程では、工程S21で設定された照射条件が、実際に、亀裂14a,14dが外表面に至らない条件である未到達条件(ST条件)であるか否かの判定を行う第3処理を実行する(工程S22)。ここでは、制御部10が、上記の工程S2と同様に、入力を受け付けた条件が未到達条件であるか否かを判定することができる。
【0137】
続く工程では、工程S22の判定の結果が、工程S21で設定された照射条件が未到達条件であることを示す結果であった場合(工程S22:YES)、上述したように、加工条件を示す情報J5に基づいて、加工を行う(工程S23)。すなわち、ここでは、制御部10が、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21にレーザ光Lを照射して、半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に至らないように、改質領域12a,12b等を半導体基板21に形成する第1処理を実行する(工程S23、第1工程)。
【0138】
特に、この工程S23では、複数のライン15のそれぞれについて、互いに異なる照射条件によりレーザ光Lを半導体基板21に照射する。一例として、ここでは、加工条件を示す情報J5に提示されているように、パルスエネルギーD3をLv1からLv12までの間において3点(3つのライン15)で変化させつつ、レーザ光Lの照射を行う。これにより、ライン15のそれぞれにおいて、形成状態の異なる改質領域12a,12b等が形成されることとなる。なお、工程S22の判定の結果が、照射条件が未到達条件でないことを示す結果であった場合(工程S22:NO)、工程S21に戻り照射条件を再設定する。
【0139】
続いて、制御部10が、撮像ユニット4の制御により、半導体基板21に対して透過性を有する光I1によって半導体基板21を撮像し、改質領域12a,12b及び/又は亀裂14a~14bの形成状態を示す情報を取得する第2処理を実行する(工程S24、第2工程)。特に、この工程S24では、複数のライン15のそれぞれについて形成状態を示す情報を取得する。ここでは、工程S21において、判定項目J53として下亀裂量F4が指定されているため、少なくとも、下亀裂量F4を取得するために必要な撮像C5及び撮像C6を実行する(他の撮像が実行されてもよい)。
【0140】
続いて、制御部10が、入力受付部103の制御によって、加工結果を示す情報(工程S24で取得した情報)を入力受付部103に表示させる第4処理を実行する(工程S25)。
図42は、加工結果を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
図42に示されるように、工程S25では、加工結果を示す情報J7が表示される。加工結果を示す情報J7では、上述した可変項目J52、判定項目J53、及びウェハ厚さJ54に加えて、パルスエネルギーJ72、結果表示J73、内部観察画像J74、及び、グラフJ75が表示されている。
【0141】
パルスエネルギーJ72は、可変項目J52であるパルスエネルギーの可変値を示す項目である。すなわち、ここでは、パルスエネルギーD3を図示の3点で異ならせている。内部観察画像J74では、3つの加工出力(パルスエネルギーD3)のそれぞれでの亀裂14a(下亀裂)の第2端14ae(下亀裂先端)に焦点Fがあった状態の画像(撮像C5で取得される画像)を表示している。
【0142】
グラフJ75では、パルスエネルギーD3と下亀裂量F4との関係を示している。すなわち、この工程S25では、制御部10は、入力受付部103の制御により、工程S23(第1処理)でのレーザ光Lの照射条件を示す情報と、工程S24(第2処理)で取得した形成状態を示す情報と、を互いに関連付けて(関連付けられたグラフJ75を)入力受付部103に表示させる第4処理を実行することとなる。
【0143】
また、この工程S25で表示する形成状態を示す情報(形成状態項目)は、工程S21で設定された判定項目J53の下亀裂量F4である。上述たように、判定項目J53は、選択され得る。したがって、工程S21では、制御部10は、入力受付部103の制御により、複数の形成状態項目のうちの工程S25で入力受付部103に表示させる形成状態項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる第7処理を実行したこととなる。
【0144】
また、入力受付部103は、工程S21において、形成状態項目の選択を受け付けることとなる。そして、制御部10は、工程S25において、入力受付部103の制御により、入力受付部103が受け付けた形成状態項目(ここでは下亀裂量F4)を示す情報を、レーザ光Lの照射条件を示す情報(ここではパルスエネルギーD3)と関連付けて入力受付部103に表示させることとなる。
【0145】
同様に、制御部10は、工程S21において、入力受付部103の制御により、レーザ光Lの照射条件に含まれる複数の照射条件項目のうちの工程S25で入力受付部103に表示させる照射条件項目であって、ライン15ごとに異ならせる可変項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる第6処理を実行したこととなる。さらに、入力受付部103は、照射条件項目(可変項目)の選択の入力を受け付け、制御部10は、レーザ照射ユニット3の制御により、入力受付部103が受け付けた可変項目(ここではパルスエネルギーD3)がライン15ごとに異なるように工程S23を実行すると共に、入力受付部103の制御により、照射条件のうちの入力受付部103が受け付けた可変項目(ここではパルスエネルギーD3)を示す情報を、形成状態を示す情報(ここでは下亀裂量F4)と関連付けて入力受付部103に表示させたこととなる。
【0146】
特に、グラフJ75に示されるように、制御部10は、工程S24での撮像によって、複数のライン15のそれぞれについて、工程S23における照射条件を示す情報(ここではパルスエネルギーD3)と形成状態を示す情報(ここでは下亀裂量F4)とを互いに関連付けて取得することとなる。これにより、レーザ加工装置1では、例えば未知の対象物に対して、照射条件と形成状態との関係を取得できる(パラメータ管理ができる)。特に、
図43に示されるように、横軸AXを可変項目(パラメータ)とし、縦軸AYをその可変項目での形成状態としたグラフを表示することにより、視覚的にパラメータ管理が可能となる。したがって、ユーザは、改質領域12a,12b等が所望の形成状態となるような照射条件に調整可能である。
【0147】
続く工程においては、制御部10が、パラメータ管理を続けるか否かの選択を促す情報J76を入力受付部103に表示させる。
図42に示されるように、この情報J76は、工程S25で既に表示されている。したがって、ここでは、入力受付部103がパラメータ管理を続けるか否かの選択を受け付ける(工程S26)。パラメータ管理を続けるとは、可変項目や判定項目を変更しつつ、再加工を行うことである。工程S26の結果が、再加工が不要であることを示す結果である場合(工程S26:YES)、処理を終了する。
【0148】
一方、工程S26の結果が、再加工が必要であることを示す結果である場合(工程S26:NO)、制御部10は、工程S21と同様に、入力受付部103の制御により、可変項目の選択をユーザに促すための情報J2、判定項目の選択をユーザに促すための情報J3、加工条件の選択が自動であることを示す情報J4、及び、加工条件を示す情報J5を入力受付部103に表示させ、その入力を受け付ける(工程S27)。ここでは、例えば、工程S21で選択された可変項目と異なる照射条件項目を可変項目に設定したり、工程S21で選択された判定項目と異なる形成状態項目を判定項目に設定したりすることができる。
【0149】
続いて、制御部10が、工程S27での入力受付に応じて、工程S23と同様に加工を行い(工程S28)、工程S24と同様に撮像を行う(工程S29)ことにより、改質領域12a,12b等の形成状態を示す情報を取得する。
【0150】
続いて、制御部10が、工程S29で取得された形成状態を示す情報に基づいて、亀裂14a,14dが外表面に至っていないか否かの判定を行う第5処理を実行する(工程S30)。ここでは、撮像C5で取得された画像において亀裂14aの第2端14aeが確認されなかった場合、撮像C0で取得された画像において裏面21bに亀裂14dが確認された場合の少なくとも一方の場合に、亀裂14a,14dが外表面に至っており、未到達でないと判定することができる。
【0151】
工程S30の判定の結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていることを示す結果であった場合、すなわち、未到達でない場合(工程S30:NO)、工程S27に移行する。一方、工程S30の判定の結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていないことを示す結果であった場合、すなわち、未到達である場合(工程S30:YES)、制御部10が、工程S25と同様に、加工結果を示す情報を入力受付部103に表示させ(工程S31)、再加工の要否について判定する(工程S32)。工程S32の結果が、再加工が不要であることを示す結果である場合には処理を終了し、再加工が必要であることを示す結果である場合には、工程S27に処理を移行する。
[レーザ加工装置の第2実施形態]
【0152】
引き続いて、レーザ加工装置1の別の一実施形態について説明する。ここでも、第1実施形態と同様に、レーザ光Lの照射条件の導出を行う。ただし、ここでは、可変項目を、照射条件項目のうち集光状態D5に含まれるLBAオフセット量D8とする。まずは、LBAオフセット量について説明する。上述したように、レーザ照射ユニット3は、空間光変調器5と、空間光変調器5で変調されたレーザ光Lを集光する集光レンズ33と、を有している。そして、空間光変調器5の反射面5aに表示された変調パターンは、集光レンズ33の入射瞳面33aに転像される。
【0153】
集光レンズ33の入射瞳面33aの中心に対して、変調パターンの中心をオフセットさせた状態でレーザ光Lの照射を行うことにより、改質領域12a,12b等の形成状態が変化する。特に、変調パターンのうちの少なくとも球面収差補正パターンの中心を集光レンズ33の入射瞳面33aの中心に対してオフセットさせることにより、形成状態を好適にコントロールできる。LBAオフセット量D8は、このような集光レンズ33の入射瞳面33aの中心に対する球面収差補正パターンの中心のオフセット量である。LBAオフセット量D8のうち、X方向に関するオフセット量をXオフセット量と称し、Y方向に関するオフセット量をYオフセット量と称する。X方向は、レーザ光の集光点の進行方向であって、レーザ加工進行方向に平行な方向であり、Y方向は、レーザ光の集光点の進行方向に直交する方向であって、レーザ加工進行方向に垂直な方向である。
【0154】
図44は、Yオフセット量と形成状態との関係を示す図である。
図44の(a)では、Yオフセット量を-2.0から+2.0まで0.5刻みで変化させた場合の改質領域12及び改質領域12から延びる亀裂14を示している。それぞれのYオフセット量に対して、一対の改質領域12(及び対応する亀裂14)を示しているが、左側が往路(X正方向)での加工時のもの示し、右側が復路(X負方向)での加工時のものを示す。また、Yオフセット量は、空間光変調器5の画素に対応している。
図44の(b)は、各Yオフセット量での加工後の切断面である。なお、
図44の例ではXオフセット量は一定とされている。
【0155】
図44に示されるように、レーザ光Lの照射によって半導体基板21に改質領域12及び亀裂14を形成する際に、Yオフセット量を変化させると、改質領域12及び亀裂14の形成状態も変化する。したがって、改質領域12及び亀裂14の形成状態を取得することにより、改質領域12及び亀裂14が所望の形成状態となるレーザ光Lの照射条件を導出できる。なお、LBAオフセット量D8は、形成状態のうち、上述した上亀裂先端位置F1から改質領域間の黒スジの有無F9の全てに相関がある。以下、レーザ光Lの照射条件のうちのLBAオフセット量D8の導出方法について説明する。
【0156】
図45及び
図46は、LBAオフセット量の導出方法の主要な工程を示すフローチャートである。以下の方法は、レーザ加工方法の第2実施形態である。
図45に示されるように、ここでは、まず、制御部10が、ユーザからの入力を受け付ける(工程S41)。この工程S41についてより詳細に説明する。この工程S41では、まず、入力受付部103の制御により、LBAオフセット検査を実行するか否かの選択をユーザに促すための情報(不図示)を入力受付部103に表示させる。LBAオフセット検査とは、LBAオフセット量の導出を行うための検査である。
【0157】
続いて、工程S41では、入力受付部103が、LBAオフセット検査を実行するか否かのユーザの選択を受け付ける。続いて、工程S41では、制御部10が、入力受付部103がLBAオフセット検査を実行する旨の選択を受け付けた場合に、
図47に示されるように、検査条件の選択を促すための情報K1を入力受付部103に表示させる。情報K1は、複数の項目を含む。複数の項目のうち、LBAオフセット検査K2は、Xオフセット量の検査(導出)を行うか、Yオフセット量の検査(導出)を行うか、或いは、Xオフセット量及びYオフセット量の両方の検査(導出)を行うか、の選択をユーザに促すための項目である。
【0158】
LBA-XオフセットK3は、Xオフセット量の可変範囲(例えば±6)を示し、ユーザにより選択され得る(自動選択でもよい)。LBA-YオフセットK4は、Yオフセット量の可変範囲(例えば±2)を示し、ユーザにより選択され得る(自動選択でもよい)。判定項目K5は、LBAオフセット量の導出に用いる形成状態項目を示し、ユーザにより選択され得る(自動選択でもよい)。なお、ウェハ厚さK6についても、ユーザにより選択され得る(自動選択でもよい)。
【0159】
続いて、工程S41では、入力受付部103が、少なくとも、LBAオフセット検査K2入力を受け付ける。そして、制御部10は、入力受付部103が、LBAオフセット検査K2の入力を受け付けた場合に(LBA-XオフセットK3、LBA-YオフセットK4、判定項目K5、及び、ウェハ厚さK6については、ユーザからの入力がない場合には自動選択する)、入力受付部103の制御により、この選択結果を含む設定画面を入力受付部103に表示させる。
【0160】
図48は、設定画面を表示した状態の入力受付部を示す図である。
図48に示されるように、設定画面K7は、複数の項目を含む。複数の項目のうち、LBAオフセット検査K71、判定項目K72、Xオフセット可変範囲K73、Yオフセット可変範囲K74、及び、ウェハ厚さK75は、先の選択結果を示すものであり、現時点でユーザからの選択を受け付けるものではない。なお、LBAオフセット検査K71では、
図47のLBAオフセット検査K71でXオフセット量及びYオフセット量の両方の検査(導出)を行うことが選択されたことが示されている。
【0161】
一方、焦点数K81、パス数K82、加工速度K83、パルス幅K84、周波数K85、ZH(Zハイト:Z方向における加工位置)K86は、及び、加工出力K87は、制御部10が一例を提示するものの、現時点でユーザから選択(変更)を受け付ける。なお、焦点数K81~周波数K85の意味は、
図34に示される焦点数H41~周波数H45と同様である。
【0162】
続く工程では、制御部10が、工程S41で設定された加工条件(照射条件)が、実際に、亀裂14a,14dが外表面(表面21a及び裏面21b)に至らない条件である未到達条件(ST条件)であるか否かの判定を行う第3処理を実行する(工程S42)。ここでは、制御部10が、上記の工程S2と同様に、入力を受け付けた条件が未到達条件であるか否かを判定することができる。この工程S42の判定の結果が、加工条件が未到達条件でないことを示す結果であった場合(工程S42:NO)、工程S41に移行する。
【0163】
一方、工程S42の判定の結果が、加工条件が未到達条件であることを示す結果であった場合(工程S42:YES)、この設定画面K7に表示された選択内容及び加工条件に基づいて加工を行う(工程S43、第1工程)。すなわち、ここでは、制御部10が、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21にレーザ光Lを照射して、半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に至らないように、改質領域12a,12b等を半導体基板21に形成する第1処理を実行する。
【0164】
特に、この工程S43では、複数のライン15のそれぞれについて、互いに異なるLBAオフセット量D8(照射条件、集光状態D5)にてレーザ光Lを半導体基板21に照射する。一例として、ここでは、Xオフセット量を一定とすると共に、Yオフセット可変範囲K74に示されるようにYオフセット量を-2から+2まで0.5刻みで変化させつつ、レーザ光Lの照射を行う。これにより、ライン15のそれぞれにおいて、形成状態の異なる改質領域12a,12b等が形成されることとなる。
【0165】
続いて、制御部10が、撮像ユニット4の制御により、半導体基板21に対して透過性を有する光I1によって半導体基板21を撮像し、改質領域12a,12b及び/又は亀裂14a~14bの形成状態を示す情報を取得する第2処理を実行する(工程S44、第2工程)。特に、この工程S44では、複数のライン15のそれぞれについて形成状態を示す情報を取得する。ここでは、工程S41において、判定項目K5(判定項目K72)として下亀裂量F4が指定されているため、少なくとも、下亀裂量F4を取得するために必要な撮像C5及び撮像C6を実行する(他の撮像を実行してもよい)。
【0166】
続いて、制御部10が、入力受付部103の制御によって、加工結果を示す情報(工程S44で取得した情報)を入力受付部103に表示させる第4処理を実行する(工程S45)。
図49は、加工結果を示す情報を表示した状態の入力受付部を示す図である。
図49に示されるように、工程S45では、加工結果を示す情報K9が表示される。加工結果を示す情報K9では、上述したLBAオフセット検査K71、判定項目K72、Xオフセット可変範囲K73、Yオフセット可変範囲K74、及び、ウェハ厚さK75に加えて、判定K91、Xオフセット判定K92、Yオフセット判定K93、XオフセットK95、及び、YオフセットK96が示されている。
【0167】
判定K91は、所望の形成状態となるLBAオフセット量の判定(すなわち、LBAオフセット量の導出)が完了したか否かを示す。ここでは、所望の形成状態となるLBAオフセット量の一例として、下亀裂量F4がピーク値を示すLBAオフセット量を例示するが、ピーク値でなくもてもよく、ユーザにより設定可能である。ここでは、判定K91では、判定が完了したこと、すなわち、下亀裂量F4がピーク値を示すLBAオフセット量が得られたことが示されている。
【0168】
また、Xオフセット判定K92では、所望の形成状態が得られる(下亀裂量F4がピーク値を示す)Xオフセット量の値を示しており、Yオフセット判定K93では、所望の形成状態が得られる(下亀裂量F4がピーク値を示す)Yオフセット量の値を示している。すなわち、制御部10は、形成状態のピーク値が得られた場合には、入力受付部103の制御により、当該ピーク値に対応する照射条件(ここではLBAオフセット量D8)を入力受付部103に表示させる。なお、制御部10は、上記第1実施形態においても、ピーク値が得られた場合には、当該ピーク値に対応する照射条件を入力受付部103に表示させることができる。なお、仮に、形成状態のピーク値が得られた場合であっても、制御部10は、当該ピーク値からシフトした値に対応する照射条件を入力受付部103に表示させてもよい。これは、望ましい形成状態が得られる照射条件にマージンを持たせるためである。
【0169】
XオフセットK95は、グラフK951及び内部画像下亀裂先端K952を含み、YオフセットK96は、グラフK961及び内部画像下亀裂先端K962を含む。グラフK951では、Xオフセット量と下亀裂量F4とが関連付けられて表示されている。また、グラフK961では、Yオフセット量と下亀裂量F4とが関連付けられて表示されている。なお、加工結果を示す情報K9では、便宜上、Yオフセットに関する情報に加えてXオフセットに関する情報も表示されているが、現時点では、Yオフセット量を可変とした加工のみを行っているため、Xオフセットに関する情報は表示されない。
【0170】
グラフK961に示されるように、下亀裂量F4は、Yオフセット量が±0のときにピーク値となる。よって、Yオフセット判定K93では、下亀裂量F4のピーク値を与えるYオフセット量として±0が表示される。また、判定K91では、下亀裂量F4のピーク値を与えるYオフセット量の判定(導出)が完了した旨の表示がなされる。
【0171】
このように、グラフK961では、LBAオフセット量D8のうちのYオフセット量と下亀裂量F4との関係を示している。すなわち、この工程S45では、制御部10は、入力受付部103の制御により、工程S43(第1処理)でのレーザ光Lの照射条件を示す情報と、工程S44(第2処理)で取得した形成状態を示す情報と、を互いに関連付けて(関連付けられたグラフK961を)入力受付部103に表示させる第4処理を実行したこととなる。
【0172】
また、この工程S45で表示する形成状態を示す情報(形成状態項目)は、工程S41で設定された判定項目K5(判定項目K72)の下亀裂量F4である。上述たように、判定項目K5は、選択され得る。したがって、工程S41では、制御部10は、入力受付部103の制御により、複数の形成状態項目のうちの工程S45で入力受付部103に表示させる形成状態項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる第7処理を実行したこととなる。
【0173】
また、入力受付部103は、工程S41において、形成状態項目の選択を受け付けることとなる。そして、制御部10は、工程S45において、入力受付部103の制御により、入力受付部103が受け付けた形成状態項目(ここでは下亀裂量F4)を示す情報を、レーザ光Lの照射条件を示す情報(ここではLBAオフセット量D8)と関連付けて入力受付部103に表示させることとなる。
【0174】
続く工程では、制御部10が、LBAオフセット量D8(ここではYオフセット量)の判定(導出)が完了したか否か、すなわち、下亀裂量F4がピーク値を示すLBAオフセット量が得られたか否かを判定する(工程S46)。工程S46の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了したことを示す結果である場合(工程S46:YES)、設定画面K7に表示された選択内容及び加工条件に基づいて加工を行う(工程S47、第1工程)。すなわち、ここでは、制御部10が、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21にレーザ光Lを照射して、半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に至らないように、改質領域12a,12b等を半導体基板21に形成する第1処理を実行する。
【0175】
特に、この工程S47では、複数のライン15のそれぞれについて、互いに異なるLBAオフセット量D8(照射条件、集光状態)によりレーザ光Lを半導体基板21に照射する。ここでは、Yオフセット量を一定とすると共に、Xオフセット可変範囲K73に示されるようにXオフセット量を-6から+6まで変化させつつ、レーザ光Lの照射を行う。これにより、ライン15のそれぞれにおいて、形成状態の異なる改質領域12a,12等が形成されることとなる。
【0176】
続いて、制御部10が、撮像ユニット4の制御により、半導体基板21に対して透過性を有する光I1によって半導体基板21を撮像し、改質領域12a,12b及び/又は亀裂14a~14bの形成状態を示す情報を取得する第2処理を実行する(工程S48、第2工程)。特に、この工程S48では、複数のライン15のそれぞれについて形成状態を示す情報を取得する。ここでは、工程S41において、判定項目K5(判定項目K72)として下亀裂量F4が指定されているため、少なくとも、下亀裂量F4を取得するために必要な撮像C5及び撮像C6を実行する(他の撮像を実行してもよい)。
【0177】
続いて、制御部10が、工程S48で取得された形成状態を示す情報に基づいて、亀裂14a,14dが外表面に至っていないか否かの判定を行う第5処理を実行する(工程S49)。ここでは、撮像C5で取得された画像において亀裂14aの第2端14aeが確認されなかった場合、撮像C0で取得された画像において裏面21bに亀裂14dが確認された場合の少なくとも一方の場合に、亀裂14a,14bが外表面に至っており、未到達(ST)でないと判定することができる。工程S49の判定の結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていることを示す結果であった場合、すなわち、未到達でない場合(工程S49:NO)、工程S41に移行する。
【0178】
一方、工程S49の判定の結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていないことを示す結果であった場合、すなわち、未到達である場合(工程S49:YES)、制御部10が、入力受付部103の制御によって、加工結果を示す情報(工程S48で取得した情報)を入力受付部103に表示させる第4処理を実行する(工程S50、第3工程)。ここで表示される情報は、
図49に示される加工結果を示す情報K9である。工程S45の時点では、Yオフセット量を可変とした加工のみを行っているため、Xオフセットに関する情報は表示されないが、ここでは、Xオフセット量を可変とした加工も完了しているため、Xオフセットに関する情報も表示される(
図49の全ての項目が表示される)。グラフK951に示されるように、下亀裂量F4は、往路の加工では、Xオフセット量が±0のときにピーク値となる。また、下亀裂量F4は、袋の加工では、Xオフセット量が+3のときに最大となる。よって、Xオフセット判定K92では、下亀裂量F4のピーク値を与えるXオフセット量として±0,+3(最大値を与えるXオフセット量)が表示される。また、判定K91では、下亀裂量F4のピーク値を与えるXオフセット量の判定(導出)が完了した旨の表示がなされる。
【0179】
グラフK951では、LBAオフセット量D8のうちのXオフセット量と下亀裂量F4との関係を示している。すなわち、この工程S50では、制御部10は、入力受付部103の制御により、工程S47(第1処理)でのレーザ光Lの照射条件を示す情報と、工程S48(第2処理)で取得した形成状態を示す情報と、を互いに関連付けて(関連付けられたグラフK951)入力受付部103に表示させる第4処理を実行したこととなる。
【0180】
また、この工程S50で表示する形成状態を示す情報(形成状態項目)は、工程S41で設定された判定項目K5(判定項目K72)の下亀裂量F4である。上述したように、判定項目K5は、選択され得る。したがって、工程S41では、制御部10は、入力受付部103の制御により、複数の形成状態項目のうちの工程S48で入力受付部103に表示させる形成状態項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる第7処理を実行したこととなる。
【0181】
また、入力受付部103は、工程S41において、形成状態項目の選択を受け付けることとなる。そして、制御部10は、工程S50において、入力受付部103の制御により、入力受付部103が受け付けた形成状態項目(ここでは下亀裂量F4)を示す情報を、レーザ光Lの照射条件を示す情報(ここではLBAオフセット量D8)と関連付けて入力受付部103に表示させることとなる。
【0182】
続く工程では、制御部10が、LBAオフセット量D8(ここではXオフセット量)の判定(導出)が完了したか否かを判定する(工程S51)。工程S51の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了したことを示す結果である場合(工程S51:YES)、処理を終了する。なお、加工結果を示す情報K9には、LBAオフセット量D8の値を判定された値(Xオフセット判定K92及びYオフセット判定K93に表示された値)に変更するか否かの選択を促す情報K97が表示されている。これにより、ユーザは、情報K9が表示されたタイミングで、LBAオフセット量D8の値を判定された値に変更するか否かの選択が可能である。
【0183】
これに対して、工程S46の判定の結果が、Yオフセット量の判定が完了していないことを示す結果である場合(工程S46:NO)、及び、工程S51の判定の結果が、Xオフセット量の判定が完了していないことを示す結果である場合(工程S51:NO)、先に選択されたLBAオフセット量D8の可変範囲、及び、判定項目では、所望の形成状態(ここではピーク値)が得られないと判断して、
図46に示された工程S52に移行する。
【0184】
すなわち、続く工程では、制御部10が、LBAオフセット量D8の可変範囲を拡大する(工程S52)。工程S46から工程S52に移行した場合には、LBAオフセット量D8のうちのYオフセット量の可変範囲を、Yオフセット可変範囲K74(±2)から拡大し、工程S51から工程S52に移行した場合には、LBAオフセット量D8のうちのXオフセット量の可変範囲を、Xオフセット可変範囲K73(±6)から拡大する。なお、以下の工程は、Yオフセット量の判定について説明するが、Xオフセット量の判定の場合も同様である。
【0185】
続く工程では、工程S52において拡大された可変範囲に応じた加工条件(照射条件)が、亀裂14a,14dが外表面に至らない条件である未到達条件であるか否かの判定を行う第3処理を実行する(工程S53)。ここでは、制御部10が、上記の工程S2と同様に、拡大された可変範囲に応じた条件が未到達条件であるか否かを判定することができる。この工程S53の判定の結果が、加工条件が未到達条件でないことを示す結果であった場合(工程S53:NO)、工程S52に移行して可変範囲の拡大の程度を調整する。
【0186】
一方、工程S53の判定の結果が、加工条件が未到達条件であることを示す結果であった場合(工程S53:YES)、拡大された可変範囲にて加工を行う(工程S54、第1工程)。すなわち、ここでは、制御部10が、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21にレーザ光Lを照射して、半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に至らないように、改質領域12a,12b等を半導体基板21に形成する第1処理を実行する。
【0187】
特に、この工程S54では、複数のライン15のそれぞれについて、互いに異なるYオフセット量(照射条件、集光状態)にてレーザ光Lを半導体基板21に照射する。ここでは、Xオフセット量を一定とすると共に、Yオフセット量を拡大された可変範囲で変化させつつ、レーザ光Lの照射を行う。これにより、ライン15のそれぞれにおいて、形成状態の異なる改質領域12a,12b等が形成されることとなる。
【0188】
続いて、制御部10が、撮像ユニット4の制御により、半導体基板21に対して透過性を有する光I1によって半導体基板21を撮像し、改質領域12a,12b及び/又は亀裂14a~14bの形成状態を示す情報を取得する第2処理を実行する(工程S55、第2工程)。この工程S55は、
図45に示された工程S44と同様である。続いて、制御部10が、入力受付部103の制御によって、加工結果を示す情報を入力受付部103に表示させる(工程S56)。この工程S56は、
図45に示された工程S45と同様である。
【0189】
続いて、制御部10が、LBAオフセット量D8(ここではYオフセット量)の判定(導出)が完了したか否か、すなわち、拡大された可変範囲において、下亀裂量F4がピーク値を示すLBAオフセット量D8が得られていないか否かの判定を行う(工程S57)。工程S57の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了したことを示す結果である場合(工程S57:NO)、処理を終了する。
【0190】
一方、工程S57の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了していないことを示す結果である場合(工程S57:YES)、制御部10が、判定項目を変更する(工程S58)。より具体的には、この場合には、形成状態項目のうちのLBAオフセット量D8の判定に用いる項目を、
図47に示された情報K1で指定された判定項目K5(ここでは下亀裂量F4)以外の項目に設定する。
【0191】
図50に示されるように、判定項目が下亀裂先端位置F3である場合(
図50の(a))、及び、上亀裂先端位置F1である場合(
図50の(b))のいずれについても、Yオフセット量の変化に応じてピーク値が得られ、且つ、当該ピーク値を与えるYオフセット量が断面観察による従来法(
図50の(c))でのYオフセット量Ocと一致している。また、
図51に示されるように、判定項目が上下亀裂先端位置ずれ幅F6である場合でも、Yオフセット量の変化に応じて、近似式からピーク値が求められ、且つ、当該ピーク値を与えるYオフセット量が断面観察による従来法(
図51の(c))でのYオフセット量Ocと一致している。
【0192】
さらに、
図52及び
図53に示されるように、判定項目が改質領域だ痕の有無F7である場合にも、Yオフセット量の変化に応じて、だ痕の見え方に変化が見られ、Yオフセット量±0付近で最も明瞭なだ痕が確認された(他の判定項目及び従来法と同様のYオフセット量であった)。このように、工程S58では、上述した下亀裂量F4に代えて、種々の判定項目が利用可能である。
【0193】
なお、Xオフセット量の判定についても同様である。一例として、
図54に示されるように、判定項目が下亀裂量F4である場合、Xオフセット量の変化に応じてピーク値が得られ、且つ、当該ピーク値を与えるXオフセット量が断面観察による従来法(
図54の(b)の±0(往路)及び+2(復路))と一致する。また、
図55(往路)及び
図56(復路)に示されるように、判定項目が下亀裂先端の蛇行量F8である場合にも、Xオフセット量の変化に応じて下亀裂先端の蛇行量F8に変化が見られ、最も下亀裂先端の蛇行量F8が少なくなるXオフセット量が上記の場合と一致した。このように、Xオフセット量の判定についても、種々の判定項目が利用できる。
【0194】
続いて、加工(工程S59)、撮像(工程S60)、及び、結果表示(工程S62)を行う。工程S59は、上記の工程S54と同様であり、工程S60は、上記の工程S55と同様であり、工程S62は、上記の工程S56と同様である。ただし、工程S60では、撮像C1~C11のうち、工程S58で変更された判定項目を取得可能な撮像を行う。
【0195】
また、ここでは、工程S60の後であって工程S62よりも前において、制御部10が、工程S60で取得された形成状態を示す情報に基づいて、亀裂14a,14dが外表面に至っていないか否かの判定を行う第5処理を実行する(工程S61)。ここでは、撮像C5で取得された画像において亀裂14aの第2端14aeが確認されなかった場合、撮像C0で取得された画像において裏面21bに亀裂14dが確認された場合の少なくとも一方の場合に、亀裂14a,14bが外表面に至っており、未到達でないと判定することができる。工程S61の判定の結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていることを示す結果であった場合、すなわち、未到達でない場合(工程S61:NO)、工程S58に移行すると共に、亀裂14a,14bが外表面に至っていないことを示す結果であった場合、すなわち、未到達である場合(工程S61:YES)、上記のとおり工程S62に移行する。
【0196】
続いて、制御部10が、LBAオフセット量D8(ここではYオフセット量)の判定(導出)が完了したか否か、すなわち、変更された判定項目がピーク値(所望の状態)を示すLBAオフセット量D8が得られていないか否かの判定を行う(工程S63)。工程S63の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了したことを示す結果である場合(工程S63:NO)、処理を終了する。
【0197】
一方、工程S63の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了していないことを示す結果である場合(工程S63:YES)、制御部10が、例えば、集光補正を強くする等の、上述した照射条件項目以外の照射条件を変更する(工程S64)。そして、加工(工程S65)、撮像(工程S66)、及び、結果表示(工程S68)を行う。工程S65は、上記の工程S54と同様であり、工程S66は、上記の工程S55と同様であり、工程S68は、上記の工程S56と同様である。
【0198】
ただし、ここでは、工程S66の後であって工程S68よりも前において、制御部10が、工程S65で取得された形成状態を示す情報に基づいて、亀裂14a,14dが外表面に至っていないか否かの判定を行う第5処理を実行する(工程S67)。ここでは、撮像C5で取得された画像において亀裂14aの第2端14aeが確認されなかった場合、撮像C0で取得された画像において裏面21bに亀裂14dが確認された場合の少なくとも一方の場合に、亀裂14a,14bが外表面に至っていると判定することができる。工程S67の判定の結果が、亀裂14a,14dが外表面に至っていることを示す結果であった場合、すなわち、未到達でない場合(工程S67:NO)、工程S64に移行すると共に、亀裂14a,14bが外表面に至っていないことを示す結果であった場合、すなわち、未到達である場合(工程S67:YES)、上記のとおり工程S68に移行する。
【0199】
続いて、制御部10が、LBAオフセット量D8(ここではYオフセット量)の判定(導出)が完了したか否か、すなわち、変更された照射条件にてピーク値(所望の状態)を示すLBAオフセット量D8が得られていないか否かの判定を行う(工程S69)。工程S69の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了したことを示す結果である場合(工程S69:NO)、処理を終了する。
【0200】
一方、工程S69の判定の結果が、LBAオフセット量D8の判定が完了していないことを示す結果である場合(工程S69:YES)、制御部10が、入力受付部103の制御により、ユーザにエラーを通知する情報を入力受付部103に表示させ(工程S70)、処理を終了する。これは、LBAオフセット量D8の可変範囲の拡大、判定項目の変更、及び、照射条件の変更のいずれによっても、所望の形成状態が得られないことから、装置状態に異常がある可能性があるためである。
[効果の説明]
【0201】
以上説明したように、上記実施形態に係るレーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21に対してレーザ光Lを照射して改質領域12a,12b等(改質領域12a,12b及び改質領域12a,12bから延びる亀裂14a~14d)を形成する。このとき、ライン15ごとに異なる照射条件とする。続いて、半導体基板21を透過する光I1により半導体基板21を撮像し、複数のライン15のそれぞれについて、改質領域12a,12b等の形成状態(加工結果)を取得する。そして、その後に、複数のライン15のそれぞれについて、レーザ光Lの照射条件と改質領域12a,12b等の形成状態とを互いに関連付けて取得する。したがって、レーザ光Lの照射条件の調整に際して、半導体基板21を切断したり、断面観察を行ったりする必要がない。よって、上記実施形態に係るレーザ加工装置1及びレーザ加工方法によれば、レーザ光Lの照射条件の調整が容易化される。
【0202】
特に上記実施形態に係るレーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、改質領域12a,12b及び亀裂14a~14dが半導体基板21の外表面(表面21a及び裏面21b)に露出していない状態において、当該改質領域12a,12bの形成状態とレーザ光Lの照射条件との関連性を把握できる。したがって、亀裂14a~14dが外表面に到達している状態と比較して、外部からの影響(例えば振動や経時変化)を受けにくい。したがって、搬送時に意図せず亀裂14a~14dが進展して半導体基板21が分断されたりすることが避けられる。
【0203】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、制御部10は、第1処理よりも前に、照射条件が、亀裂14a,14dが外表面に至らない条件である未到達条件であるか否かの判定を行う第3処理を実行する。そして、第3処理の判定の結果、照射条件が未到達条件である場合に第1処理を実行する。このため、確実に、亀裂14a,14dが外表面に至らないように加工を行うことが可能となる。
【0204】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1は、情報を表示するため、及び、入力を受け付けるための入力受付部103を備える。このため、ユーザへの情報の提示、及び、ユーザからの情報の入力を受け付けることが可能である。
【0205】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、制御部10は、第2処理の後に、入力受付部103の制御によって、第2処理で取得した情報を入力受付部103に表示させる第4処理を実行する。このため、レーザ光Lの照射条件のそれぞれと改質領域12a,12b等の形成状態とが関連付けられた情報をユーザに提示できる。
【0206】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、制御部10は、第2処理の後であって第4処理よりも前に、第2処理で取得された形成状態を示す情報に基づいて、亀裂14a,14dが外表面に至っていないか否かの判定を行う第5処理を実行する。そして、第5処理の判定の結果、亀裂14a,14bが外表面に至っていない場合に第4処理を実行する。このため、確実に、亀裂14a,14dが外表面に到達していない状態において、レーザ光Lの照射条件と改質領域12a,12b等の形成状態とを関連付けて表示可能となる。
【0207】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、制御部10は、第1処理の前に、入力受付部103の制御により、第1処理での照射条件に含まれる複数の照射条件項目のうちのライン15ごとに異ならせる可変項目の選択を促す情報を入力受付部103に表示させる第6処理を実行する。また、入力受付部103は、可変項目の選択の入力を受け付ける。そして、制御部10は、レーザ照射ユニット3の制御により、入力受付部103が受け付けた可変項目がライン15ごとに異なるように第1処理を実行する。このため、所望の照射条件の調整が容易である。
【0208】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、照射条件は、照射条件項目として、レーザ光Lのパルス幅(パルス幅D2)、レーザ光Lのパルスエネルギー(パルスエネルギーD3)、レーザ光Lのパルスピッチ(パルスピッチD4)、及び、レーザ光Lの集光状態(集光状態D5)を含む。
【0209】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1は、レーザ光Lの球面収差を補正するための球面収差補正パターンを表示する空間光変調器5と、空間光変調器5において球面収差補正パターンにより変調されたレーザ光Lを半導体基板21に集光するための集光レンズ33と、を備えている。集光状態D5は、集光レンズ33の入射瞳面33aの中心に対する球面収差補正パターンの中心のオフセット量(LBAオフセット量D8)を含む。
【0210】
また、照射条件は、第1処理において半導体基板21のレーザ光Lの入射面(裏面21b)に交差するZ方向に互に異なる位置に複数の改質領域12a,12bを形成する場合には、照射条件項目として、Z方向における改質領域12a,12bの間隔(改質領域間隔D1)を含む。
【0211】
これらの場合、レーザ光Lの照射条件のうちの上記の項目の調整が容易となる。
【0212】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、制御部10は、第2処理で形成状態のピーク値が得られた場合には、第3処理において、入力受付部103の制御により、当該ピーク値に対応する照射条件を入力受付部103に表示させる。このため、レーザ光Lの照射条件を、改質領域12a,12b等の形成状態がピークとなる条件に容易に調整可能である。
【0213】
また、上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、半導体基板21は、レーザ光Lの入射面である裏面21bと、裏面21bの反対側の表面21aと、を含む。亀裂は、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14dと、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14aと、を含む。そして、形成状態は、形成状態項目として、Z方向における亀裂14bの長さ(上亀裂量F2)、Z方向における亀裂14aの長さ(下亀裂量F4)、Z方向における亀裂14a~14dの長さの総量(総亀裂量F5)、Z方向における亀裂14dの裏面21b側の先端である第1端14deの位置(上亀裂先端位置F1)、Z方向における亀裂14aの表面21a側の先端である第2端14aeの位置(下亀裂先端位置F3)、Z方向からみたときの第1端14deと第2端14aeとのずれ幅(上下亀裂先端位置ずれ幅F6)、改質領域12a,12bのだ痕の有無(改質領域だ痕の有無F7)、及び、Z方向からみたときの第2端14aeの蛇行量(下亀裂先端の蛇行量F8)を含む。このため、改質領域12a,12b等の形成状態のうち、上記の項目に基づいたレーザ光Lの照射条件の調整が容易に可能である。
[変形例についての説明]
【0214】
以上の実施形態は、本発明の一側面を説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、任意の変更がなされ得る。
【0215】
例えば、上記実施形態では、レーザ加工装置1の加工として、ウェハ20を複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断する例(ダイシングの例)を挙げた。しかしながら、レーザ加工装置1は、対象物におけるレーザ光の入射面に対向する(対象物内の)仮想面に沿って対象物を切断する加工(厚さ方向に剥離する加工)や、対象物の外縁を含む環状の領域を対象物から切断するトリミング加工等に適用され得る。
【0216】
また、上記実施形態では、レーザ加工装置1の対象物として、シリコン基板である半導体基板21を含むウェハ20を例示した。しかしながら、レーザ加工装置1の対象としては、シリコンを含むものに限定されない。
【0217】
また、上記の各実施形態では、照射条件項目、形成状態項目、及びそれらの組み合わせとして、一部を例示したが、上記実施形態で例示された照射条件項目、形成状態項目、及びそれらの組み合わせに限定されず、任意に選択され得る。例えば、第1実施形態において、第3実施形態に例示したLBAオフセット量D8の合否判定を行うようにしてもよい。
【0218】
また、上記の実施形態において、第2処理で改質領域12a,12b等の形成状態に関する情報を取得した後に、所定の形成状態となる照射条件に自動的に調整する場合には、第2処理で得られた情報を表示する工程は不要である。
【0219】
さらに、上記の例では、加工を行う処理を実行するよりも前に、当該加工のための照射条件の設定を受けて、当該照射条件が未到達条件であるか否かの判定を行う処理(第3処理)を実行する場合と、加工を行う処理を実行し、且つ、形成状態を示す情報を取得する処理を実行した後に、亀裂14a,14dが外表面に至っていないか否かの判定を行う処理(第5処理)を実行する場合と、について、実行のタイミングの一例を示したが、これらの処理の実行のタイミングは、上述した例に限定されず、任意である。
【符号の説明】
【0220】
1…レーザ加工装置、3…レーザ照射ユニット(照射部)、4…撮像ユニット(撮像部)、5…空間光変調器、10…制御部、11…対象物、21…半導体基板、33…集光レンズ、33a…入射瞳面、103…入力受付部(入力部、表示部)。