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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】包装ロール体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/195 20060101AFI20240222BHJP
   B65H 18/10 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B65H23/195
B65H18/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020046699
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021147135
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 利香
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-133973(JP,U)
【文献】特開2015-209290(JP,A)
【文献】特開2014-152029(JP,A)
【文献】特開2018-193159(JP,A)
【文献】特開2018-197156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/195-23/198
B65H 18/10- 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙管供給領域から紙管巻き替え領域に移動した紙管に接触するロールと、紙管巻き替え領域における紙管の両端部をエンドレスのヘルパーベルトによりロール方向に押さえ付ける左右一対の駆動機構とを含み、この左右一対の駆動機構のヘルパーベルトをそれぞれ循環させて紙管を回転させ、この回転する紙管にラップフィルムを多層に巻いて包装ロール体を得る包装ロール体の製造方法であって、
左右一対の駆動機構をロールの軸方向に対向させ、各駆動機構を、紙管巻き替え領域の紙管端部を回転可能なチャック部でチャッキングするチャッキング機構と、回転可能な複数のローラと、この複数のローラの間に巻架されるヘルパーベルトとから構成し、複数のローラのいずれかに制御判定手段に接続されるエンコーダを取り付け、このエンコーダによりローラの回転速度をヘルパーベルトの循環速度と看做して計測し、
制御判定手段は、左右一対のヘルパーベルトの循環速度から速度差を演算して閾値と比較し、比較の結果、速度差が閾値以上の場合には、左右一対の駆動機構の駆動を停止するとともに、速度差が閾値未満の場合には、左右一対の駆動機構の駆動を継続することを特徴とする包装ロール体の製造方法。
【請求項2】
制御判定手段は、左右一対のヘルパーベルトの循環速度から速度差を演算して閾値と比較し、比較の結果、速度差が閾値以上の場合には、ヘルパーベルト用の交換時期報知信号を出力する請求項1記載の包装ロール体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯に包装用の帯体が巻かれる包装ロール体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
料理の保存、乾燥や異物の付着の防止には、食品包装用の包装ロール体が利用されているが、この包装ロール体1は、図5に示すように、巻芯2である紙管3に透明のラップフィルム5がリワインダー(巻取機)により多層に巻回されてその最外層の目視可能な取付領域には、最外層の自由端部の把握を容易にする口取紙6が挿入され、口取紙6やシワ7の有無、巻姿等が検査されて良否が判定され、その後、良品が専用の包装箱に挿入される(特許文献1参照)。
【0003】
リワインダーは、図示しないが、紙管3に摺接するドラムロールと、このドラムロールに摺接する紙管3の両端部をヘルパーベルトによりドラムロール方向に押圧する左右一対の駆動機構とを備え、この一対の駆動機構のヘルパーベルトをそれぞれ循環させて紙管3を回転させ、回転する紙管3に原反4からのラップフィルム5を巻き替えて包装ロール体1を製造する。一対の駆動機構のヘルパーベルトは、ラップフィルム5の巻き替え時におけるシワ7の発生を防止するため、紙管3の両端部をドラムロール方向に同等の押圧力で押さえ付けることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018‐193159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来におけるリワインダーは、以上のように構成され、紙管3の両端部を一対のヘルパーベルトによりドラムロール方向に同等の押圧力で押さえ付けることが要求されるが、ヘルパーベルトの摩耗や劣化等により、一対のヘルパーベルトの押圧力に差異が生じた場合には、紙管3に捻りが発生し、この捻りの発生に伴い、ラップフィルム5の幅方向に、周方向に伸びるシワ7が複雑に生じることがある(図5参照)。このラップフィルム5のシワ7は、ラップフィルム5が多層に重ねて巻回される関係上、経時変化の巻き締りにより、修正して消すことができず、その結果、外観や体裁が大きく悪化した不良品の包装ロール体1が連続的に製造されることとなる。
【0006】
この包装ロール体1の不良化を解消する手段として、(1)リワインダーのメンテナンス時に各ヘルパーベルトのテンションを確認する方法、(2)ラップフィルム5が巻き替えられた包装ロール体1の巻回状態、具体的にはシワ7の程度や巻き硬さを検査する方法等が提案されている。しかしながら、これら(1)、(2)の方法の場合には、包装ロール体1に異常が連続して発生した後には、ラップフィルム5のシワ7を検出することができるものの、異常が連続して発生する前には、ラップフィルム5のシワ7を効果的に検出することは困難である。また、(2)の方法の場合、検査が検査員の熟練の程度に左右されることがあり、検査にバラツキが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、異常の発生前にラップフィルムのシワ等を検出することができ、しかも、シワ等の検出精度が検査員の熟練の程度に左右されることのない包装ロール体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、上記課題を達成するため、紙管供給領域から紙管巻き替え領域に移動した紙管に接触するロールと、紙管巻き替え領域における紙管の両端部をエンドレスのヘルパーベルトによりロール方向に押さえ付ける左右一対の駆動機構とを含み、この左右一対の駆動機構のヘルパーベルトをそれぞれ循環させて紙管を回転させ、この回転する紙管にラップフィルムを多層に巻いて包装ロール体を得る包装ロール体の製造方法であって、
左右一対の駆動機構をロールの軸方向に対向させ、各駆動機構を、紙管巻き替え領域の紙管端部を回転可能なチャック部でチャッキングするチャッキング機構と、回転可能な複数のローラと、この複数のローラの間に巻架されるヘルパーベルトとから構成し、複数のローラのいずれかに制御判定手段に接続されるエンコーダを取り付け、このエンコーダによりローラの回転速度をヘルパーベルトの循環速度と看做して計測し、
制御判定手段は、左右一対のヘルパーベルトの循環速度から速度差を演算して閾値と比較し、比較の結果、速度差が閾値以上の場合には、左右一対の駆動機構の駆動を停止するとともに、速度差が閾値未満の場合には、左右一対の駆動機構の駆動を継続することを特徴としている。
【0009】
なお、制御判定手段は、左右一対のヘルパーベルトの循環速度から速度差を演算して閾値と比較し、比較の結果、速度差が閾値以上の場合には、ヘルパーベルト用の交換時期報知信号を出力することができる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲におけるロールは、ドラムロールでも良いし、サーフェイス式のサーフェイスロール等でも良い。また、ラップフィルムは、食品包装用が主な用途ではあるが、可能であれば、それ以外の包装用途に利用しても良い。このラップフィルムには、少なくとも透明、不透明、半透明の長い各種の樹脂フィルムや樹脂シートが含まれる。駆動機構のヘルパーベルトは、水平横方向に伸びる紙管に間接的に接触して回転させることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、紙管が回転する場合、左右一対の駆動機構におけるヘルパーベルトの循環速度がそれぞれ計測され、各計測値が制御判定手段等に出力される。制御判定手段等は、左右一対のヘルパーベルトの循環速度から速度差を演算し、この演算した速度差を閾値と比較する。比較した結果、ヘルパーベルトに摩耗や劣化が生じ、ヘルパーベルトのテンション等が低下しているときには、速度差の値が閾値以上となり、紙管に巻いているラップフィルムにシワが生じる蓋然性が高いので、少なくとも駆動機構が停止する。これに対し、ヘルパーベルトに摩耗や劣化が未だ生じていないときには、速度差が閾値未満となり、紙管に巻いているラップフィルムにシワ等が生じる蓋然性が低いので、包装ロール体の製造が継続される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、左右一対のヘルパーベルトの循環速度の速度差に基づき、紙管の捻りやラップフィルムのシワを予測可能なので、包装ロール体に異常が発生する前の段階で包装ロール体の製造を中断したり、駆動機構のヘルパーベルトを交換することができる。したがって、包装ロール体の外観や体裁を悪化させることが少なく、製造される包装ロール体が連続して不良化するのを未然に防止することができるという効果がある。また、シワ等の検出精度が検査員の熟練の程度に左右されることが少ないという効果がある。また、紙管に対する押圧力を計測するのではなく、ヘルパーベルトの循環速度を計測するので、紙管の変形やラップフィルムの厚さ精度等に計測値が影響されることが少なく、計測値のバラツキを減少させて高精度な値を得ることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、左右一対ヘルパーベルトの循環速度から速度差を演算して閾値と比較し、比較の結果、速度差が閾値以上の場合には、ヘルパーベルト用の交換時期報知信号を出力するので、交換時期報知信号に基づき、例えばスリップし始めたヘルパーベルトの摩耗の程度を迅速に点検したり、ヘルパーベルトを交換してリワインダーの稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る包装ロール体の製造方法の実施形態におけるリワインダーを模式的に示す全体説明図である。
図2】本発明に係る包装ロール体の製造方法の実施形態におけるリワインダーの駆動機構等を模式的に示す斜視説明図である。
図3】本発明に係る包装ロール体の製造方法の実施形態における駆動機構のヘルパーベルト等を模式的に示す要部斜視図である。
図4】本発明に係る包装ロール体の製造方法の実施形態におけるリワインダーのドラムロールと駆動機構の関係を模式的に示す説明図である。
図5】紙管にラップフィルムが多層に巻回されたシワ入りの包装ロール体を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における包装ロール体の製造方法は、図1ないし図5に示すように、巻芯2に近接対向するリワインダー10のドラムロール18と、このドラムロール18に近接対向する巻芯2の両端部をヘルパーベルト22によりドラムロール18方向に押さえ付ける左右一対の駆動機構19とを含み、この一対の駆動機構19のヘルパーベルト22をそれぞれ循環させて巻芯2を回転させ、この回転する巻芯2に原反4のラップフィルム5を巻回して包装ロール体1を得る製造方法であり、一対の駆動機構19におけるヘルパーベルト22の循環速度の速度差を閾値と比較し、この比較結果に応じ、少なくとも一対の駆動機構19の駆動を停止したり、継続するようにしている。
【0018】
包装ロール体1の巻芯2は、図5等に示すように、例えば再生用紙がスパイラル巻きに巻装されることにより、防塵性や表面平滑性等に優れる細長い円筒形の安価な紙管3とされる。この紙管3は、リワインダー10の紙管供給領域に多数本が貯えられ、倒れた状態で順次取り出されてその外周面に食品包装用のラップフィルム5が平巻方式で多層に巻回され、このラップフィルム5の最外層中央の目視可能な取付領域には、最外層の自由端部の把握を容易にする紙片形で白色の口取紙6が挿入される。
【0019】
リワインダー10は、図1ないし図4に示すように、太巻きの原反4のラップフィルム5を多数のローラ13を介してドラムロール18に巻架し、この巻架したラップフィルム5を紙管3に巻き替える装置であり、上流部に、原反4用のターレットアーム11が回転可能に支持され、中流部に、ラップフィルム5を案内する多数のローラ13が回転可能に軸支されており、下流部には、回転可能なドラムロール18と左右一対の駆動機構19とがそれぞれ配設される。原反4は、巻芯に透明帯形のラップフィルム5が巻回され、ターレットアーム11に複数個が回転可能に支持される。この原反4のラップフィルム5は、例えば耐熱性や耐水性等に優れるポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等により柔軟な薄膜に成形される。
【0020】
ターレットアーム11は、相対向して原反4を挟持する一対のアーム12を備え、この一対のアーム12が供給位置と待機位置との間に回転可能に支持されており、一対のアーム12の一端部に、供給用の原反4の巻芯が進退動可能なチャック部を介し交換可能に支持されるとともに、一対のアーム12の他端部に、予備の原反4の巻芯が進退動可能なチャック部を介し交換可能に支持される。
【0021】
このようなターレットアーム11は、一端部の原反4を供給位置に位置決め配置してラップフィルム5を下流の多数のローラ13に繰り出し供給するが、供給位置の原反4のラップフィルム5の残量が不足する場合には、180°回転してラップフィルム5の残量不足の原反4を供給位置から待機位置に移動させるとともに、待機位置の予備の原反4を供給位置に移動させ、この供給位置に移動した予備の原反4のラップフィルム5を待機位置に移動した原反4の未だ切断されていないラップフィルム5にシールを介して接続し、その後、待機位置の原反4を制動してそのラップフィルム5を引き千切るよう機能する。これら一連の動作により、ラップフィルム5は、連続して下流の多数のローラ13に供給される。
【0022】
多数のローラ13は、供給位置に位置決め配置された原反4からのラップフィルム5が巻架される巻出ローラ14と、この巻出ローラ14からのラップフィルム5が巻架される複数のガイドローラ15と、この複数のガイドローラ15からのラップフィルム5が巻架されるエキスパンダローラ16と、このエキスパンダローラ16と下流のドラムロール18との間のラップフィルム5が巻架されるピンチローラ17とを備える。複数の(本実施形態では3本)のガイドローラ15は、下方上流の巻出ローラ14と下流のエキスパンダローラ16との間に介在され、上下方向に所定の間隔をおき自由回転可能に軸支される。各ガイドローラ15は、巻出ローラ14の下流に位置してラップフィルム5の供給方向を変更したり、ラップフィルム5の皺や弛みを除去するよう機能する。
【0023】
エキスパンダローラ16は、例えばゴム質のローラ部に支持軸が嵌通され、この支持軸のローラ部から突出した両端部が軸受を介し回転可能に支持されており、最下流のガイドローラ15の下流に湾曲して位置し、ラップフィルム5の皺や弛みを除去する。また、ピンチローラ17は、例えばゴム質の円柱形のローラ部に支持軸が嵌通され、この支持軸のローラ部から突出した両端部が軸受を介し回転可能に支持されており、エキスパンダローラ16の下流に位置してラップフィルム5を一定速度でドラムロール18に供給する。
【0024】
ドラムロール18は、図1図4に示すように、周囲に少なくとも紙管供給領域、紙管巻き替え領域、包装ロール体待機領域、包装ロール体排出領域がそれぞれ形成され、これらの間を回転する。このドラムロール18は、下方の紙管供給領域から上方の紙管巻き替え領域に移動した紙管3の外周面に摺接して回転させ、紙管3の外周面にピンチローラ17から供給された所定の長さのラップフィルム5を多層に重ねて巻き付ける。
【0025】
一対の駆動機構19は、図1ないし図4に示すように、ドラムロール18の軸方向(図1の奥方向)に相対向して対設され、紙管巻き替え領域における紙管3を水平にチャッキングして挟持し、この紙管3の両端部に駆動力を伝達して回転させる。各駆動機構19は、紙管巻き替え領域の紙管端部を回転可能なチャック部でチャッキングするチャッキング機構20と、回転可能な複数のローラ21と、この複数のローラ21の間に巻架されるヘルパーベルト22とから構成され、複数のローラ21のいずれかに、ヘルパーベルト22の循環速度を計測するエンコーダ23が装着されており、紙管巻き替え領域、換言すれば、ドラムロール18の上方に設置される。
【0026】
複数のローラ21は、ドラムロール18の上方に位置して回転駆動する上下方向に揺動可能な拡径ローラ24と、この拡径ローラ24の下方に離れて回転する縮径のベアリングローラ25と、これら拡径ローラ24とベアリングローラ25間の上方に位置して回転する縮径のテンションローラ26とを備え、拡径ローラ24にロータリ方式のエンコーダ23が装着されるとともに、このエンコーダ23が制御判定手段27に接続されており、ベアリングローラ25と隣接する駆動機構19のベアリングローラ25とには、一対のヘルパーベルト22の循環速度を均一にする観点から、連結シャフトが接続される。
【0027】
エンコーダ23は、特に限定されるものではないが、例えばTRD‐N2500‐RZ[光洋電子工業株式会社製:製品名]等からなり、拡径ローラ24やその近傍に装着されて回転速度を計測するが、この拡径ローラ24の回転速度がヘルパーベルト22の循環速度と看做されて計測される。ヘルパーベルト22の循環速度が計測されるのは、例えば紙管3に対する押圧力を計測しようとすると、紙管3の変形やラップフィルム5の厚さ精度等に影響されて押圧力の計測値にバラツキが生じるが、循環速度を計測すれば、計測値のバラツキが非常に少なくなるからである。
【0028】
制御判定手段27は、特に限定されるものではないが、例えばノート型のパーソナルコンピュータからなり、専用のソフトウェアがインストールされており、少なくとも一対のヘルパーベルト22の循環速度から速度差を演算(減算)する機能と、演算した速度差の値を基準値となる閾値と比較する機能と、比較の結果、速度差の値が閾値以上の場合には、一対の駆動機構19を含むリワインダー10の稼働を停止する機能と、比較の結果、速度差の値が閾値未満の場合には、一対の駆動機構19を含むリワインダー10の稼働を継続する機能とを実現する。
【0029】
制御判定手段27は、必要に応じ、演算した速度差の値を閾値と比較した結果、速度差が閾値以上の場合には、ヘルパーベルト22用の交換時期報知信号を出力する機能を実現し、この機能の実現により、警告灯やブザー等が動作し、ヘルパーベルト22の交換時期を把握することができる。また、閾値は、特に限定されるものではないが、過去の経験則等からすると、速度差の5.0%以上、好ましくは5.1%以上、より好ましくは5.2%以上に設定されると良い。
【0030】
各ヘルパーベルト22は、例えば所定の材料によりエンドレスの平ベルトに形成され、拡径ローラ24、ベアリングローラ25、テンションローラ26に緊張して巻架されており、略U字形のガイドに遊貫状態で案内されながら循環して紙管巻き替え領域に移動した紙管3の端部にチャック部を介して摺接し、コイルスプリングの弾圧付勢作用に基づき、紙管3をドラムロール18方向に押圧しながら回転させるよう機能する。ヘルパーベルト22の所定の材料としては、少なくとも食品衛生等に資するポリエステル織布、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等のいずれかがあげられ、好ましくはこれらが選択的に積層される。
【0031】
上記構成において、包装ロール体1を製造する場合、リワインダー10を起動すると、太巻きの原反4のラップフィルム5は、巻出ローラ14、複数のガイドローラ15、エキスパンダローラ16、ピンチローラ17、及びドラムロール18に順次供給される。また、紙管3は、紙管供給領域から紙管巻き替え領域に移動し、両端部が一対の駆動機構19の循環するヘルパーベルト22によりドラムロール18方向に押圧され、かつヘルパーベルト22に摺接されて回転する。
【0032】
こうして原反4のラップフィルム5がドラムロール18に供給され、紙管3が紙管巻き替え領域で回転すると、ドラムロール18上で回転する紙管3の外周面に原反4のラップフィルム5が所定の長さ分多層に重ねて巻き付けられ、その後、ラップフィルム5の外層と最外層中央の取付領域との間に口取紙6が挿入されることにより、包装ロール体1が製造される。
【0033】
紙管3が回転し、ラップフィルム5の巻き替え量が増大すると、一対の駆動機構19の拡径ローラ24は、下方から上方にそれぞれ徐々に揺動し、ラップフィルム5の巻き替えを円滑化する。また、紙管3が回転する際、一対のヘルパーベルト22の循環速度は、エンコーダ23によりそれぞれ計測され、各計測値が制御判定手段27に出力される。制御判定手段27は、一対のヘルパーベルト22の循環速度から速度差を演算し、この演算した速度差の値を基準値となる閾値と比較する。
【0034】
比較の結果、少なくとも一方のヘルパーベルト22に摩耗や劣化が生じ、ヘルパーベルト22のテンションが低下している場合には、速度差の値が閾値以上となり、紙管3が捻じれたり、巻き替え中のラップフィルム5の周方向にシワ7が生じるおそれが高いので、リワインダー10が停止したり、ヘルパーベルト22用の交換時期報知信号が出力される。これに対し、少なくとも一方のヘルパーベルト22に摩耗や劣化が未だ生じていない場合には、速度差の値が閾値未満となり、紙管3が捻じれたり、巻き替え中のラップフィルム5にシワ7が生じるおそれがないので、リワインダー10の稼働が継続する。
【0035】
上記によれば、一対のヘルパーベルト22の循環速度の速度差に基づき、紙管3の捻りやラップフィルム5のシワ7を予測することができるので、包装ロール体1に異常が連続して発生する前に包装ロール体1の製造を一次中断し、摩耗し始めたヘルパーベルト22を迅速に検査・交換することができる。したがって、包装ロール体1の外観や体裁を大きく悪化させることがなく、包装ロール体1の連続した不良化を未然に防止することができ、良品の包装ロール体1を量産することができる。また、ラップフィルム5が巻き替えられた包装ロール体1のシワ7の程度や巻き硬さを検査員が検査する必要がないので、検査が検査員の熟練の程度に左右されることがない。
【0036】
また、紙管3の平行度や上下左右のブレ値を計測して閾値を比較しようとすると、紙管3の変形やラップフィルム5の厚さ精度等に影響されて計測値にバラツキが少なからず生じるが、ヘルパーベルト22の循環速度を計測するので、高精度な計測値を容易に得ることができる。さらに、ドラムロール18や駆動機構19周辺の狭い設置空間に、シワ7を検出する検査カメラや光源等を特に設置する必要がないので、部品点数の削減が大いに期待できる。
【0037】
なお、上記実施形態では紙管供給領域を下方に示したが、特に限定されるものではなく、上方に設けても良い。また、上記実施形態ではドラムロール18を示したが、何らこれに限定されるものではなく、例えばリワインダー10がサーフェイス式の装置の場合、ドラムロール18を複数本のサーフェイスロールに変更して各サーフェイスロールと紙管3とを回転可能に接触させ、一対のヘルパーベルト22を紙管3の補助的な回転に使用しても良い。また、上記実施形態ではロータリ方式の小型のエンコーダ23を使用したが、何らこれに限定されるものではない。拡径ローラ24の回転速度を計測可能であれば、光学式、磁気式、電磁誘導式のエンコーダ23を特に問うものではない。
【0038】
また、拡径ローラ24にロータリ方式のエンコーダ23を装着したが、ベアリングローラ25あるいはテンションローラ26に、エンコーダ23を装着しても良い。また、ヘルパーベルト22の視認を容易にするため、ヘルパーベルト22の少なくとも露出面を有彩色(例えば、青色や赤色)に着色することもできる。さらに、拡径ローラ24、ベアリングローラ25、テンションローラ26の数や位置は、適宜増減変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る包装ロール体の製造方法は、ラップフィルム等の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0040】
1 包装ロール体
2 巻芯
3 紙管
4 原反
5 ラップフィルム(帯体)
7 シワ
10 リワインダー
11 ターレットアーム
13 ローラ
18 ドラムロール(ロール)
19 駆動機構
20 チャッキング機構
21 ローラ
22 ヘルパーベルト(ベルト)
23 エンコーダ
24 拡径ローラ(ローラ)
25 ベアリングローラ(ローラ)
26 テンションローラ(ローラ)
27 制御判定手段
図1
図2
図3
図4
図5