IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エアウィーヴの特許一覧

特許7441691フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法
<>
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図1
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図2
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図3
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図4
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図5
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図6
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図7
  • 特許-フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】フィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/14 20120101AFI20240222BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20240222BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20240222BHJP
   B29C 48/05 20190101ALI20240222BHJP
【FI】
D04H3/14
A47C27/12 F
D01D5/08 A
B29C48/05
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020050595
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147733
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】小島 昌和
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051069(JP,A)
【文献】特開2014-168683(JP,A)
【文献】特開平01-207463(JP,A)
【文献】特開2015-143406(JP,A)
【文献】特開2021-083920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C27/00-27/22
31/00-31/12
B29C48/00-48/96
D01D1/00-13/02
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溶融フィラメントを並進させてなる溶融フィラメント群を排出する排出部と、
前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する形成部と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、
前記並進の向きと直交する所定方向について、前記溶融フィラメント群の内部の溶融フィラメントを外向きに導くことにより、反発力を高めた高反発層を内部に有する前記フィラメント3次元結合体を形成することを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記溶融フィラメント群の前記所定方向内部の溶融フィラメントが接触し、当該接触した溶融フィラメントを前記所定方向外向きに導く誘導部を有することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記溶融フィラメント群の前記所定方向内部の溶融フィラメントが接触する前記誘導部の上部に、当該溶融フィラメントを滑らせて前記所定方向外向きへ導く傾斜面が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記溶融フィラメント群の前記所定方向端部の溶融フィラメントに接触し、当該接触した溶融フィラメントを前記所定方向中央側へ導く受け部を有する請求項1から請求項3の何れかに記載の製造装置。
【請求項5】
前記高反発層は、前記フィラメント3次元結合体の前記所定方向両端部それぞれよりも反発力が高いことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の製造装置を用いて前記フィラメント3次元結合体を製造することを特徴とする、フィラメント3次元結合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント3次元結合体の製造装置およびこれを用いたフィラメント3次元結合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットレスやソファー用クッション等に用いられるクッション体(上側の使用者を支持するクッション体)が広く利用されている。このようなクッション体としては、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、熱可塑性樹脂からなるフィラメントを3次元的に融着結合させて得られるフィラメント3次元結合体(立体網状構造体)により形成されるものがある。
【0003】
特許文献1によれば、水平に配置された複数のノズルから溶融状態のポリエチレン樹脂を鉛直方向下向きに押し出した後、直径が1mm前後の溶融フィラメントを冷却水中に落下させて、水の浮力で溶融フィラメントのループを形成させると同時に、複数の溶融フィラメントどうしを3次元的に融着結合させることで、空隙率が90%を超える極めて風通しのよいフィラメント3次元結合体を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/122370号
【文献】特開2010-154965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したクッション体は、一般的に反発力が低い方が使用者に柔らかい使用感を与えることができ、また、例えば寝たきりの患者等に対しては褥瘡の発生を出来るだけ予防する効果が期待できる。但し、クッション体の反発力が全体的に低すぎると、クッション体の下の床等に体が当たる状態、或いはこれに近い状態となり、底突き感が生じたり褥瘡を誘発したりする虞がある。
【0006】
この点を考慮し、クッション体は、使用感等への影響が比較的大きくなる表面近傍(厚み方向端部)については反発力を抑えつつも、このような影響が小さい厚み方向内部の反発力を比較的高めとすることにより、柔らかい使用感を極力維持しながらも底突き感を抑えることができ、褥瘡の予防にも効果的となる。クッション体は、このように使用者にとって適切な反発力を有するように形成されることが望まれる。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となるフィラメント3次元結合体の製造装置、およびこれを用いたフィラメント3次元結合体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造装置は、複数の溶融フィラメントを並進させてなる溶融フィラメント群を排出する排出部と、前記溶融フィラメント群を冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する形成部と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、前記並進の向きと直交する所定方向について、前記溶融フィラメント群の内部の溶融フィラメントを外向きに導くことにより、反発力を高めた高反発層を内部に有する前記フィラメント3次元結合体を形成する構成とする。本構成によれば、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となる。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記溶融フィラメント群の前記所定方向内部の溶融フィラメントが接触し、当該接触した溶融フィラメントを前記所定方向外向きに導く誘導部を有する構成としても良い。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記溶融フィラメント群の前記所定方向内部の溶融フィラメントが接触する前記誘導部の上部に、当該溶融フィラメントを滑らせて前記所定方向外向きへ導く傾斜面が設けられた構成としても良い。本構成によれば、誘導部に当たる溶融フィラメントをスムーズに外向きへ導くことが可能となる。
【0011】
また上記構成としてより具体的には、前記溶融フィラメント群の前記所定方向端部の溶融フィラメントに接触し、当該接触した溶融フィラメントを前記所定方向中央側へ導く受け部を有する構成としても良い。また上記構成において、前記高反発層は、前記フィラメント3次元結合体の前記所定方向両端部それぞれよりも反発力が高い構成としても良い。また本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造方法は、上記構成の製造装置を用いて前記フィラメント3次元結合体を製造する方法とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造装置によれば、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となる。また本発明に係るフィラメント3次元結合体の製造方法によれば、本発明に係る製造装置の利点を享受することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】フィラメント3次元結合体の製造装置の概念図である。
図2図1に示すA-A’断面の矢視図である。
図3】受け部の一構成例を示す斜視図である。
図4】受け部および誘導部の上方視による概略的な構成図である。
図5】受け部および誘導部の周辺の概略的な構成図である。
図6】ノズル部を下方から視た底面図である。
図7】受け部および別形態である誘導部の周辺の概略的な構成図である。
図8】クッション体の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について各図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィラメント3次元結合体の製造装置1の概念図である。また、図2は、図1に示すA-A’断面の矢視図である。なお、製造装置1の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、図1等に示すとおりである。これらの各方向は、鉛直方向が上下方向となり、後述する一対の受け板30同士の対向向きが前後方向となるように、便宜的に定めたものに過ぎない。但し、クッション体の説明においては、上下方向はクッション体の厚み方向に相当する。
【0016】
フィラメント3次元結合体の製造装置1は、直径が0.5mm~3mmの複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFを鉛直方向下方へ排出する溶融フィラメント供給部10と、溶融フィラメント群MFを3次元的に絡め合わせて接触点を融着結合させた後、冷却固化させてフィラメント3次元結合体3DFを形成する融着結合形成部20を備える。
【0017】
溶融フィラメント供給部10は、加圧溶融部11(押出機)とフィラメント排出部12(ダイ)を含む。加圧溶融部11は、材料投入部13(ホッパー)、スクリュー14、スクリュー14を駆動するスクリューモーター15、スクリューヒーター16、および不図示の複数の温度センサーを含む。加圧溶融部11の内部には、材料投入部13から供給された供給された熱可塑性樹脂をスクリューヒーター16により加熱溶融しながら搬送するためのシリンダー11aが形成されている。
【0018】
シリンダー11a内には、スクリュー14が回転可能に収容されている。シリンダー11aの下流側端部には、熱可塑性樹脂をフィラメント排出部12に向けて排出するためのシリンダー排出口11bが形成されている。スクリューヒーター16の加熱温度は、例えば溶融フィラメント供給部10に設けた温度センサーの検知信号に基づいて制御される。
【0019】
フィラメント排出部12は、ノズル部17、ダイヒーター18、および図示しない複数の温度センサーを含み、内部にはシリンダー排出口11bから排出された溶融熱可塑性樹脂をノズル部17に導く導流路12aが形成されている。
【0020】
ノズル部17は、複数の開口部が形成された略直方体の金属製の厚板であり、導流路12aの最下流部にあたるフィラメント排出部12の下部に設けられている。なお、ノズル部17に形成される複数の開口部については、改めて説明する。
【0021】
ダイヒーター18は、左右方向に複数個(図2に示す例では6個)が設けられており、フィラメント排出部12を加熱する。ダイヒーター18の加熱温度は、例えばフィラメント排出部12に設けた温度センサーの検知信号に基づいて制御される。
【0022】
フィラメント3次元結合体3DFの材料として用いることのできる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0023】
材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂は、シリンダー11a内で加熱溶融され、例えばスクリュー14により押し出されるようにして、溶融熱可塑性樹脂としてシリンダー排出口11bからフィラメント排出部12の導流路12aに供給される。その後、ノズル部17の複数のノズル(開口部)それぞれから下方へ並進するように、複数の溶融フィラメントからなる溶融フィラメント群MFが排出される。
【0024】
融着結合形成部20は、冷却水槽23、一対のコンベア24、複数の搬送ローラ25a~25h、受け部300、および誘導部38を含む。受け部300は、第1受け板31と第2受け板32を含む。第1受け板31(前側の受け板30)と第2受け板32(後側の受け板30)は前後一対の受け板30として設けられており、主に、フィラメント3次元結合体3DFの厚みを規制する役割を果たす。
【0025】
冷却水槽23は、冷却水Wを溜めておくための水槽である。冷却水槽23の内部には、一対のコンベア24と、複数の搬送ローラ25a~25hが配設されている。一対のコンベア24a、24bおよび複数の搬送ローラ25a~25hは、不図示の駆動モーターにより駆動される。
【0026】
図3は、受け部300の概略的な斜視図である。受け部300は、第1受け板31と、第2受け板32と、第3受け板33と、第1側面板34と、第4受け板35と、第2側面板36と、を有する。
【0027】
第1受け板31は、後方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜部31Aと、当該傾斜部31Aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直部31Bを含む屈曲部を有する金属板である。第2受け板32は、前方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜部32Aと、当該傾斜部32Aの下端から鉛直方向下向きに延びる平板状の鉛直部32Bを含む屈曲部を有する金属板である。これらの鉛直部31B,32Bは互いに平行であり、前後方向に対向している。
【0028】
第3受け板33は、傾斜部31A,32Aの左端に溶接等により固定される金属板であり、右方に向けて下り傾斜となる平板状を有する。第1側面板34は、鉛直部31B,32Bの左端および第3受け板33の下端に溶接等により固定される金属板である。
【0029】
第4受け板35は、傾斜部31A,32Aの右端に溶接等により固定される金属板であり、左方に向けて下り傾斜となる平板状を有する。第2側面板36は、鉛直部31B,32Bの右端および第4受け板35の下端に溶接等により固定される金属板である。鉛直部31B、32B、第1側面板34、および第2側面板36により直方体状の筒部300Aが形成される。
【0030】
誘導部38は、溶融フィラメント群MFの内部の溶融フィラメントに接触するように受け部300の内側に配置されている。図4は、受け部300および誘導部38の上方視による概略的な構成図であり、図5は、受け部300および誘導部38の周辺の右方視による概略的な構成図であって、ノズル部17から溶融フィラメント群MFが排出されている様子を示している。
【0031】
これらの図に示すように誘導部38は、上部に傾斜を設けた略板状体に形成されており、上方視により先述した筒部300Aの内側に配置されているが、筒部300Aとの間には全周に亘って隙間が設けられている。上方から排出される溶融フィラメント群MFは、一部が誘導部38や受け部300に接触するが、全て当該隙間を通って下方へ進むことになる。なお誘導部38は、溶融フィラメント群MFの進行を阻害しないように受け部300の内側に支持されている。例えば、溶融フィラメント群MFと干渉しない位置(ノズル部17の開口部と上下方向に重ならない位置)に受け部300から内側へ突出する突起が設けられ、誘導部38はこの突起により支持される。
【0032】
また図5に示すように、誘導部38の上部には、後端から前端に向けて下り傾斜となる傾斜面38aが形成されており、上方から誘導部38に当たる溶融フィラメントは傾斜面38aを滑るようにして下方へ進む。すなわち、誘導部38の上部には溶融フィラメントを滑らせて前後方向(形成されるフィラメント3次元結合体やクッション体の厚み方向に対応する)の外向きへ導く傾斜面38aが設けられており、誘導部38に当たる溶融フィラメントをスムーズに、図5に白抜き矢印で示す向きへ導くことが可能である。
【0033】
このように、溶融フィラメント群MFの内部の溶融フィラメントを前後方向外向きに導くことにより、図5に点線枠Hで示す箇所における溶融フィラメントの密集の度合が上がり、反発力を高めた高反発層を内部に有するフィラメント3次元結合体3DFを形成することができる。なお、傾斜部31A,32Aに当たる溶融フィラメントは、図5に着色矢印で示す向きへ導かれる。但し傾斜部31A,32Aによって前後方向中央側へ導かれる溶融フィラメントの量は、誘導部38によって外向きへ導かれる溶融フィラメントの量に比べると十分に少ないため、これによるフィラメント3次元結合体3DFの反発力への影響は小さい。
【0034】
図6は、ノズル部17を下方から視た底面図である。ノズル部17には、溶融フィラメント群を排出する複数の開口部171が形成されている。開口部171は、左右方向に配列されて1列を形成し、当該1列が前後方向に配列され、全体として千鳥配列となっている。開口部171の断面形状は、例えば内径1mmの円形である。なお、図4に示す開口部171の個数や配列形態等は一例に過ぎない。
【0035】
図6に点線で示す投影領域17Aは、図3に示す傾斜部31A,32Aの下端縁、第3受け板33の下端縁、および第4受け板35の下端縁で形成される投入口3001(すなわち筒部300Aの上端開口)を上方へ投影した領域である。図6において投影領域17Aの外側に位置する開口部171から下方へ排出される溶融フィラメントは、受け部300における傾斜部31A,32A、第3受け板33、および第4受け板35に接触し、投入口3001へ導かれる。
【0036】
すなわち、受け部300は、ノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFの下方視外縁全周部分に接触し、当該部分を中央側へ導く。これにより、溶融フィラメント群MFの下方視外縁全周の位置を安定させ、後に冷却されて形成されるフィラメント3次元結合体3DFの形状およびサイズを安定させることが可能となる。
【0037】
また図6に破線で示す投影領域17Bは、誘導部38を上方へ投影した領域である。図6において投影領域17Bの内側に位置する開口部171から下方へ排出される溶融フィラメントは、先述した誘導部38の傾斜面38aによって前後方向外向きへ誘導されることになる。
【0038】
ノズル部17から排出された溶融フィラメント群MFは、受け部300を介して冷却水槽23へ進み、冷却水槽23内の冷却水Wの浮力作用によって撓み、ランダムなループを形成する。ランダムなループは隣接するランダムなループと3次元的に溶融状態で絡み合い、接触点が融着結合して3次元的なフィラメントの結合体が形成される。この際に溶融フィラメントの密集の度合が高い部分ほど、形成される3次元フィラメント結合体において反発力が高くなる。
【0039】
その後、コンベア24と複数の搬送ローラ25a~25hによって、冷却水槽23内の冷却水Wで冷却されながら搬送されることによって、当該結合体はフィラメント3次元結合体3DFとして冷却水槽23外へ排出される。このようにして搬送方向へ連続的に形成されるフィラメント3次元結合体3DFを、搬送方向の所定長さごとに切断することにより、寝具に用いるクッション材等として好適なサイズのクッション体が得られることになる。
【0040】
なお先述した誘導部38の具体的形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。図7は、図5に示すものとは異なる形状の誘導部38を採用した場合における、受け部300および誘導部38の周辺の右方視による概略的な構成図である。図7に示す誘導部38の上部には、前後方向中央から前後方向両方の外側に向けて下り傾斜となる各傾斜面38aが形成されており、上方から誘導部38に当たる溶融フィラメントは傾斜面38aを滑るようにして下方へ進む。
【0041】
これらの傾斜面38aも溶融フィラメントを滑らせて前後方向の外向きへ導く役割を果たし、溶融フィラメントをスムーズに、図7に白抜き矢印で示す向きへ導くことが可能である。このように、溶融フィラメント群MFの内部の溶融フィラメントを前後方向外向きに導くことにより、図7に点線枠Hで示す箇所における溶融フィラメントの密集の度合が上がり、反発力を高めた高反発層を内部に有するフィラメント3次元結合体3DFを形成することができる。
【0042】
図8は、上述した製造装置1により形成されるクッション体(切断後のフィラメント3次元結合体3DF)の概略的な断面図を示している。なお、図8(a)は図5に示す誘導部38を採用した場合に形成されるクッション体51の図であり、図8(b)は図7に示す誘導部38を採用した場合に形成されるクッション体52の図である。本図に示すクッション体51,52では、誘導部38による溶融フィラメントの誘導によって形成された高反発層が内部に設けられている。なお、各クッション体51,52の厚み方向および幅方向は、先述した製造装置1の前後方向および左右方向に対応する。
【0043】
より詳細に説明すると、図8(a)に示すクッション体51においては、誘導部38の真下に対応する位置(厚み方向中央)に形成された空洞511の厚み方向の一方側(図8(a)の例では上側)に、高反発層51aが形成されている。この高反発層51aは、誘導部38が溶融フィラメントを前後方向外向きへ導くことにより形成されたものである。
【0044】
高反発層51aの反発力は、クッション体51の厚み方向両端部それぞれの反発力よりも高くなっている。クッション体51の上側(厚み方向の一端側)に使用者が乗ると、その重みで空洞511はほぼ無くなり、クッション体51は、厚み方向の内部に高反発層51aを有しその上下に低反発層(高反発層51aに比べると低反発である層)を有した状態となる。
【0045】
また図8(b)に示すクッション体52においては、誘導部38の真下に対応する位置(厚み方向中央)に形成された空洞521の厚み方向の両側に、高反発層52aが形成されている。これらの高反発層52aは、誘導部38が溶融フィラメントを前後方向外向きへ導くことにより形成されたものである。
【0046】
高反発層52aの反発力は、クッション体52の厚み方向両端部それぞれの反発力よりも高くなっている。このクッション体52の上側(厚み方向の一端側)に使用者が乗ると、その重みで空洞521はほぼ無くなって上下の高反発層52aが一体化し、クッション体52は、厚み方向の内部に当該一体化した高反発層52aを有しその上下に低反発層(高反発層52aに比べると低反発である層)を有した状態となる。
【0047】
図8に示したクッション体51,52は、厚み方向に人を支持する用途のクッション体として特に好適である。クッション体51,52の使用形態としては、上面に使用者の身体の一部が直接的に或いはカバー等を介して間接的に接触し、使用者がクッション体により支持される格好となる。このとき、クッション体51,52においては、上方に露出された低反発層の下側に高反発層が配置されている。このように、クッション体51,52の上側部分(使用者に近い部分)について反発力を低くしつつも、その下側の反発力を比較的高めとすることにより、柔らかい使用感を極力維持しながらも底突き感を抑えることができ、褥瘡の予防にも効果的となる。つまりクッション体51,52は、使用者にとって適切な反発力を有するように形成されている。
【0048】
従って、例えばクッション体51,52をベッドマットレスに用いた場合は、マットレスにより支持される使用者の褥瘡を抑制しつつ、底突き感を解消することができる。なお、クッション体51,52は、マットレス以外にも、例えばソファー用のクッション、枕、座布団などに用いることができる。
【0049】
またクッション体51,52は、上下を逆向きとしても、上方に露出された低反発層の下側に高反発層が配置される形態となる。そのため、上下を逆にしても同様に利用することが可能なリバーシブル仕様とすることができ、例えば、使用中に上側表面が汚れた際には、一時的に上下を引っ繰り返し、汚れていない下側表面を上に向けて清潔に使用するといった使い方が可能となる。
【0050】
またクッション体51,52を用いてマットレスを形成する場合には、寝姿勢をとる使用者の身長方向にクッション体51,52を複数個並べるようにして形成しても良い。例えば、使用者の腰部近傍を支持するクッション体、腰部近傍より頭側を支持するクッション体、および腰部近傍より足側を支持するクッション体を、それぞれマットレスのパーツとして用意し、これらを並べるようにして形成しても良い。更にこの場合、パーツごとに反発力が異なるバリエーションを用意しておき、使用者の好み等に合わせた反発力のパーツを採用してマットレスを形成しても良い。
【0051】
なおクッション体51,52については、空洞511,521を無くしておく、或いは小さくしておく処理が施されても良い。例えば、空洞511,521の幅方向両側の部分を加熱処理等により潰しておいても良い。また、クッション体51,52とは別に用意した板状材を挿入して、空洞511,521を埋めておくようにしても良い。当該板状材としては、空洞511,521の大きさに合わせて形成したフィラメント3次元結合体を採用しても良く、その他の素材を採用しても良い。このような板状材を用いる場合、反発力等の特性が異なる板状材のバリエーションを用意しておき、その中から使用者に合う板状材を採用して、クッション体51,52の使い心地などを調節することが可能である。
【0052】
4.その他
以上に説明したとおり本実施形態に係る製造装置1は、複数の溶融フィラメントを並進させてなる溶融フィラメント群MFを排出するフィラメント排出部12と、溶融フィラメント群MFを冷却して融着結合させ、フィラメント3次元結合体を形成する融着結合形成部20と、を有するフィラメント3次元結合体の製造装置であって、前記並進の向きと直交する前後方向について、溶融フィラメント群MFの内部の溶融フィラメントを外向きに導くことにより、反発力を高めた高反発層を内部に有するフィラメント3次元結合体を形成する。
【0053】
そのため製造装置1によれば、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体を容易に製造することが可能となる。すなわち、厚み方向の両端側を低反発層としてその内側に高反発層が連接したようなフィラメント3次元結合体を得ることは一般的に容易とは言えない。しかし製造装置1によれば、使用者にとって適切な反発力を有するクッション体、つまり厚み方向の端部(使用者に近い部分)について反発力を低くしつつも、その下側の反発力を比較的高めとしたクッション体を容易に製造することが可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えばマットレス、ソファー用クッション等に用いられるフィラメント3次元結合体の製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 フィラメント3次元結合体の製造装置
10 溶融フィラメント供給部
11 加圧溶融部
11a シリンダー
11b シリンダー排出口
12 フィラメント排出部
12a 導流路
13 材料投入部
14 スクリュー
15 スクリューモーター
16 スクリューヒーター
17 ノズル部
17A,17B 投影領域
171 開口部
18 ダイヒーター
20 融着結合形成部
23 冷却水槽
24 コンベア
25a~25h 搬送ローラ
300 受け部
31 第1受け板
32 第2受け板
33 第3受け板
34 第1側面板
35 第4受け板
36 第2側面板
38 誘導部
38a 傾斜面
51,52 クッション体
51a,52b 高反発層
511,521 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8