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特許7441705コンクリート柱体、コンクリート柱、および構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】コンクリート柱体、コンクリート柱、および構造体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/21 20060101AFI20240222BHJP
   E04B 1/22 20060101ALI20240222BHJP
   E04C 3/26 20060101ALI20240222BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E04B1/21 C
E04B1/22
E04C3/26
E04G21/12 105E
E04G21/12 104A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020063341
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161717
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大庭 正俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019664(JP,A)
【文献】特開2009-097212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00- 3/46
E04B 1/00- 1/61
E04G 21/12
E04H 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸するアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱であって、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体と前記第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた緊張材と、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体および前記第2のプレキャストコンクリート柱体の1つに埋設されたスリーブと、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設され第1の鉄筋と、
前記第2のプレキャストコンクリート柱体に埋設された第2の鉄筋と、を含み、
前記第1の鉄筋の端面と前記第2の鉄筋の端面とが対向するように、前記スリーブ内に前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が挿入されるアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項2】
さらに、前記第2のプレキャストコンクリート柱体に埋設され、前記緊張材が挿通される連結シース管を含み、
前記スリーブは前記第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設され、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体と前記第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨るように、前記第2の鉄筋が前記第2のプレキャストコンクリート柱体から突出している請求項1に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項3】
前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋は、組立筋である請求項1または請求項2に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項4】
前記緊張材は、前記組立筋よりも内側に設けられている請求項3に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項5】
前記組立筋は、前記第1のプレキャストコンクリート柱体の四隅に設けられている請求項3または請求項4に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項6】
第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸するアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱であって、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体と前記第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた緊張材と、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体と前記第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた鉄筋と、を含み、
前記鉄筋は、
前記鉄筋の一端が、前記第1のプレキャストコンクリート柱体の一端側の最も外側に配置された横補強筋と接するとともに、前記第1のプレキャストコンクリート柱体から突出し、
前記鉄筋の他端が、前記第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設された補助鉄筋であるアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項7】
前記補助鉄筋の前記第1のプレキャストコンクリート柱体の中に埋設される長さは、定着長さ以上であって、前記第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設された組立筋の長さ以下である請求項6に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱。
【請求項8】
隅柱または側柱として、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を含む構造体。
【請求項9】
コア部に、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を含む構造体。
【請求項10】
第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、
第3のプレキャストコンクリート柱体と第4のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、を含み、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体は、第1の階層に属し、
前記第2のプレキャストコンクリート柱体および前記第3のプレキャストコンクリート柱体は、前記第1の階層と鉛直方向に隣接する第2の階層に属し、
前記第4のプレキャストコンクリート柱体は、前記第2の階層と鉛直方向に隣接する第3の階層に属し、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体と前記第2のプレキャストコンクリート柱体との第1の接合部では、前記第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設された第1の鉄筋の端面と前記第2のプレキャストコンクリート柱体に埋設された第2の鉄筋の端面とが対向するように、前記第1のプレキャストコンクリート柱体および前記第2のプレキャストコンクリート柱体の1つに埋設された第1のスリーブ内に前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が挿入され、
前記第3のプレキャストコンクリート柱体と前記第4のプレキャストコンクリート柱体との第2の接合部では、前記第3のプレキャストコンクリート柱体
に埋設された第3の鉄筋の端面と前記第4のプレキャストコンクリート柱体に埋設された第4の鉄筋の端面とが対向するように、前記第3のプレキャストコンクリート柱体および第4のプレキャストコンクリート柱体の1つに埋設された第2のスリーブ内に前記第3の鉄筋および前記第4の鉄筋が挿入される構造体。
【請求項11】
第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、
第3のプレキャストコンクリート柱体と第4のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体と前記第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた第1の緊張材と、
前記第3のプレキャストコンクリート柱体と前記第4のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた第2の緊張材と、を含み、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体および前記第3のプレキャストコンクリート柱体は、第1の階層に属し、
前記第2のプレキャストコンクリート柱体および前記第4のプレキャストコンクリート柱体は、前記第1の階層と鉛直方向において隣接する第2の階層に属し、
前記第1のプレキャストコンクリート柱体と前記第2のプレキャストコンクリート柱体との接合部では、前記第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設された第1の鉄筋の端面と前記第2のプレキャストコンクリート柱体に埋設された第2の鉄筋の端面とが対向するように、前記第1のプレキャストコンクリート柱体および前記第2のプレキャストコンクリート柱体の1つに埋設された第1のスリーブ内に前記第1の鉄筋および前記第2の鉄筋が挿入され
前記第3のプレキャストコンクリート柱体と前記第4のプレキャストコンクリート柱体との接合部には鉄筋が跨って設けられていない構造体。
【請求項12】
鉛直方向に第1端および前記第1端の反対側の第2端を有し、積層させてアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を形成するプレキャストコンクリート柱体であって、
緊張材および鉄筋を含み、
前記緊張材の一端と前記鉄筋の一端は、前記第1端から突出し、
前記第2端は、第1凹部および第2凹部を含み、
前記第1凹部内で、前記緊張材の他端が突出するように設けられ
前記第2凹部内で、前記鉄筋の他端が突出するように設けられているプレキャストコンクリート柱体。
【請求項13】
鉛直方向に第1端および前記第1端の反対側の第2端を有し、積層させてアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を形成するプレキャストコンクリート柱体であって、
緊張材および鉄筋を含み、
前記第1端は第2凹部を含み、
前記第2端は第1凹部を含み、
前記緊張材の一端は前記第1端から突出し、前記緊張材の他端は前記第1凹部内に突出するように設けられ、
前記鉄筋の一端は前記第2端から突出し、前記鉄筋の他端は前記第2凹部内に突出するように設けられているプレキャストコンクリート柱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の骨組みに用いられるプレキャストコンクリート柱体、およびプレキャストコンクリート柱体を接合したアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱に関する。また、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を用いる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
アンボンドプレストレストコンクリート(アンボンドPC)構造は、シース管内に挿通された緊張材を油圧ジャッキなどで緊張(プレストレス)させた構造である。プレストレスによってコンクリートに圧縮応力を与え、固定荷重および積載荷重による曲げ応力でコンクリートに生じる引張応力を相殺し、引張応力が生じないコンクリート断面を実現する。
【0003】
緊張材が設けられたコンクリートは、主に、建物の梁として利用されてきたが、近年、建物の柱としての利用が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-19664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
緊張材が設けられたコンクリート柱は、建物に振動が生じた際には、プレストレス力が保持され、緊張材が全長にわたって変形することができるため、耐震性に優れている。一方で、万が一、コンクリート柱の緊張材が破断した場合には、プレストレスが保持されなくなり、建物に大きな被害が発生するおそれがある。そのため、安全性の高いアンボンドPC構造を有するコンクリート柱が求められていた。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、安全性に優れたアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱およびアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱に用いられるプレキャストコンクリート柱体を提供することを課題の一つとする。また、本発明は、安全性に優れた構造体を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱は、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸するアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱であって、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた緊張材と、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた鉄筋と、を含む。
【0008】
鉄筋は、組立筋であってもよい。また、組立筋は、第1のプレキャストコンクリート柱体から突出した第1の鉄筋であってもよい。また、緊張材は、組立筋よりも内側に設けられていてもよい。組立筋は、前記第1のプレキャストコンクリート柱体の四隅に設けられていてもよい。
【0009】
鉄筋は、鉄筋の一端が、第1のプレキャストコンクリート柱体の一端側の最も外側に配置された横補強筋と接するとともに、第1のプレキャストコンクリート柱体から突出し、鉄筋の他端が、第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設された補助鉄筋であってもよい。補助鉄筋の第1のプレキャストコンクリート柱体の中に埋設される長さは、定着長さ以上であって、第1のプレキャストコンクリート柱体に埋設された組立筋の長さ以下であってもよい。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る構造体は、隅柱または側柱として、上記アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を含む。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る構造体は、コア部に、上記アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を含む。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る構造体は、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、第3のプレキャストコンクリート柱体と第4のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、を含み、第1のプレキャストコンクリート柱体は、第1の階層に属し、第2のプレキャストコンクリート柱体および第3のプレキャストコンクリート柱体は、第1の階層と鉛直方向に隣接する第2の階層に属し、第4のプレキャストコンクリート柱体は、第2の階層と鉛直方向に隣接する第3の階層に属し、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体との接合部、および第3と第4の接合部の各々には、鉄筋および緊張材が跨って設けられている。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る構造体は、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、第3のプレキャストコンクリート柱体と第4のプレキャストコンクリート柱体とが接合されて鉛直方向に延伸する第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた第1の緊張材と、第3のプレキャストコンクリート柱体と第4のプレキャストコンクリート柱体とに跨って設けられた第2の緊張材と、を含み、第1のプレキャストコンクリート柱体および第3のプレキャストコンクリート柱体は、第1の階層に属し、第2のプレキャストコンクリート柱体および第4のプレキャストコンクリート柱体は、第1の階層と鉛直方向において隣接する第2の階層に属し、第1のプレキャストコンクリート柱体と第2のプレキャストコンクリート柱体とに跨って第1の鉄筋が設けられ、第3のプレキャストコンクリート柱体と第4のプレキャストコンクリート柱体とには第1の鉄筋が跨って設けられていない。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート柱体は、鉛直方向に第1端および第1端の反対側の第2端を有し、積層させてアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱を形成するプレキャストコンクリート柱体であって、緊張材および鉄筋を含み、緊張材の一端と鉄筋の一端は、第1端から突出し、第2端は、第1凹部および第2凹部を含み、第1凹部内で、緊張材の他端が突出するように設けられている。
【0015】
第2凹部内で、鉄筋の他端が突出するように設けられていてもよい。また、鉄筋の他端は、プレキャストコンクリート柱体に埋設されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱およびアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱に用いられるプレキャストコンクリート柱体は安全性に優れる。そのため、これらを用いた構造体も、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱(コンクリート柱)を含む建物の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート柱体(コンクリート柱体)の接合を説明する模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の断面模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の接合部を拡大した断面模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱のPC部材の断面模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の接合部の斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の断面模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の接合部において、鉄筋の固定を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の接合部において、PC部材の連結を説明する図である。
図10】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の接合部を拡大した断面模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート柱体(コンクリート柱体)の接合を説明する模式図である。
図12】本発明の一実施形態に係るコンクリート柱の接合部を拡大した断面模式図である。
図13】本発明の一実施形態に係る構造体の平面断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る構造体の平面断面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る構造体を説明する断面模式図である。
図16】従来のプレキャストコンクリート柱体の接合を説明する模式図である。
図17】従来のコンクリート柱の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0019】
本発明細書において、説明の便宜上、「上」、「上方」、または「上部」もしくは「下」、「下方」、または「下部」という語句を用いて説明するが、各構成の上下関係を説明しているに過ぎない。例えば、構造体(例えば、コンクリート柱体など)の構成の位置関係を説明する場合、構造体の通常使用する態様を基準とし、鉛直方向の地面側を「下」、「下方」、または「下部」とすることがある。
【0020】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、「第3」、「第4」の文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0021】
本明細書および図面において、同一又は類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字又は小文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、一つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0022】
本明細書において、「組立筋」とは、鉄筋の一端が、プレキャストコンクリート柱体の長手方向の一端側の最も外側に配置された横補強筋と接するとともに、プレキャストコンクリート柱体の該一端から突出し、鉄筋の他端が、プレキャストコンクリート柱体の他端側に設けられた凹部内に突出する鉄筋をいう。また、1つのプレキャストコンクリート柱体において、プレキャストコンクリート柱体内の長手方向に複数配置された横補強筋のうち、プレキャストコンクリート柱体の一端側の最も外側に配置された横補強筋と接し、かつ他端側の最も外側に配置された横補強筋と接して設けられる鉄筋を含む。
【0023】
本明細書において、「補助鉄筋」とは、鉄筋の一端が、プレキャストコンクリート柱体の長手方向の一端側の最も外側に配置された横補強筋と接するとともに、プレキャストコンクリート柱体の該一端から突出し、鉄筋の他端が、プレキャストコンクリート柱体に埋設されている鉄筋をいう。なお、鉄筋の一端とは、鉄筋の長手方向において、中央から該一端側の範囲を含む。鉄筋の他端とは、鉄筋の長手方向において、中央から該他端側の範囲を含む。
【0024】
以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0025】
<第1実施形態>
図1図7を参照して、本発明の一実施形態に係るアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱20について説明する。なお、以下では、便宜上、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱20を、コンクリート柱20と記載して説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20を含む建物10の概略図である。図1に示すように、建物10は、鉛直方向に延伸するコンクリート柱20と、コンクリート柱20に連結されたコンクリート梁30とを含み、コンクリート梁30に囲まれた範囲にはスラブ(図示せず)が設けられている。言い換えると、建物10は、コンクリート柱20およびコンクリート梁30を含む構造体である。コンクリート柱20は、複数のプレキャストコンクリート柱体100が接合されて構成されている。
【0027】
なお、吹き抜け構造の場合等、スラブが設けられていない階層があってもよい。また、コンクリート柱20に対するコンクリート梁30の接合部の位置は、特に限定されず、接合部はコンクリート柱20のいずれかに設けられていればよい。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート柱体100の接合を説明する模式図である。なお、以下では、便宜上、プレキャストコンクリート柱体100を、コンクリート柱体100と記載して説明する。
【0029】
図2に示すように、コンクリート柱体100は、コンクリート、鉄筋110、および緊張材121を含む。コンクリート柱体100の長手方向の一端側(第1端101-1側)では、鉄筋110の一端および緊張材121の一端が第1端101-1から突出している。鉄筋110は、100mm以上500mm以下程度の長さが、第1端101-1から突出していることが好ましい。一方、コンクリート柱体100の他端側(第1端101-1の反対側である第2端101-2側)には、第1凹部102-1および第2凹部102-2が設けられている。第1凹部102-1の深さと第2凹部102-2の深さは、特に限定されないが、第2凹部102-2の深さは、200mm以上800mm以下が好ましい。図2に示すように、第1凹部102-1の深さを第2凹部102-2の深さよりも深くてもよく、浅くてもよい。
【0030】
第1凹部102-1には、連結シース管270が埋設され、第2凹部102-2には、スリーブ210が埋設されている。連結シース管270内では、緊張材121の他端が突出するように設けられている。また、スリーブ210内では、鉄筋110の他端が突出するように設けられている。なお、鉄筋110の他端および緊張材121の他端は、コンクリート柱体100の第2端101-2よりも長手方向に内側に位置している。言い換えると、コンクリート柱体100から第1凹部102-1内に突出している緊張材121の長さは、第1凹部102-1の長さよりも短い。コンクリート柱体100から第2凹部102-2内に突出している鉄筋110の長さは、第2凹部102-2の長さよりも短い。鉄筋110は、100mm以上400mm以下程度の長さが第2凹部102-2内に突出していることが望ましい。
【0031】
コンクリート柱20は、鉛直方向において、1つのコンクリート柱体100の第2端101-2と、もう1つのコンクリート柱体100の第1端101-1とが圧着接合されて構成される。具体的には、緊張材121をプレストレスさせて、複数のコンクリート柱体100同士が圧着接合される。また、コンクリート柱20の接合部では、1つのコンクリート柱体100から突出した鉄筋の一端が、鉛直方向に隣接するコンクリート柱体100のスリーブ210内に挿入され、固定される。すなわち、コンクリート柱20は、接合する2つのコンクリート柱体100に跨って設けられた鉄筋110および緊張材121を含む。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の断面模式図である。図3に示すように、コンクリート柱20は、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とを含み、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とは接合部200において圧着接合されている。ここでは、便宜上、第1のコンクリート柱体100-1上に、第2のコンクリート柱体100-2が位置するとして説明する。なお、以下では、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とを特に区別しない場合には、コンクリート柱体100として説明する。第1のコンクリート柱体100-1および第2のコンクリート柱体100-2は、プレキャスト製である。
【0033】
図3では、第1のコンクリート柱体100-1および第2のコンクリート柱体100-2を示したが、コンクリート柱20は、n個(nは整数)のコンクリート柱体100が圧着接合されていてもよい。
【0034】
コンクリート柱20は、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート(アンボンドPCaPC)を含む柱である。なお、アンボンドプレストレスト工法とは、緊張材にプレストレスを導入後、緊張材とシース管との間にグラウトが注入されない工法である。なお、本明細書では、便宜上、緊張材およびシース管を含む部材をPC部材として説明する。詳細は後述するが、PC部材において、緊張材がシース管に挿通され、コンクリート柱20の鉛直方向において、緊張材がアンボンド状態(緊張材の外周面とシース管の内周面との間に間隙が設けられた状態)で配置されている。言い換えると、PC部材の緊張材は、コンクリート柱20のコンクリートと直接接していないということもできる。
【0035】
本実施形態におけるアンボンド状態は、上述したようにPC部材の緊張材が当初からコンクリート柱20のコンクリートと接していない状態のほか、例えば、緊張材の外周面が鏡面のように滑らかに加工され、緊張材の外周面とシース管の内周面との間の間隙にグラウトが充填され、建物に振動が生じない状態でPC部材の外周面がグラウトを介してシース管の内周面に接合され一体化されていても、建物に振動が生じた際に、その接合が解除され、緊張材がシース管内でその長手方向に自由に変形できる状態になる場合も含む。すなわち、本実施形態におけるアンボンド状態とは、建物に振動が生じた際に、コンクリート柱20の内部において、緊張材がその長手方向に自由に変形できる状態をいう。
【0036】
ここで、図16および図17を参照して、従来のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱50について説明する。
【0037】
図16は、従来のプレキャストコンクリート柱体500の接合を説明する模式図である。なお、以下では、便宜上、プレキャストコンクリート柱体500を、コンクリート柱体500と記載して説明する。
【0038】
図16に示すように、コンクリート柱体500は、緊張材521を含み、コンクリート柱体500の第1端501-1から緊張材521の一端が突出している。一方、コンクリート柱体500の第2端501-2には、凹部502が設けられており、また、凹部502には、連結シース管570が設けられている。連結シース管570内では、緊張材521の他端が突出するように設けられている。
【0039】
コンクリート柱50は、鉛直方向において、緊張材521をプレストレスさせて、1つのコンクリート柱体500の第2端501-2と、もう1つのコンクリート柱体500の第1端501-1とが圧着接合される。
【0040】
図17は、従来のコンクリート柱50の断面模式図である。図17に示すように、コンクリート柱50は、第1のコンクリート柱体500-1と第2のコンクリート柱体500-2とを含み、第1のコンクリート柱体500-1と第2のコンクリート柱体500-2とは接合部600において圧着接合されている。
【0041】
第1のコンクリート柱体500-1は、コンクリート、第1の鉄筋510-1、および第1の緊張材521-1を含む。第2のコンクリート柱体500-2は、コンクリート、第2の鉄筋510-2、および第2の緊張材521-2を含む。接合部600において、第1の緊張材521-1と第2の緊張材521-2とが連結されている。一方、第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2は、それぞれ、第1のコンクリート柱体500-1および第2のコンクリート柱体500-2のコンクリート内に埋設されている。そのため、第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2は、いずれも第1のコンクリート柱体500-1と第2のコンクリート柱体500-2とに跨って設けられていない。
【0042】
再び図3に戻り、本実施形態に係るコンクリート柱20について説明する。
【0043】
第1のコンクリート柱体100-1は、複数の第1の鉄筋110-1および複数の第1の緊張材121-1を含む。第2のコンクリート柱体100-2は、複数の第2の鉄筋110-2および複数の第2の緊張材121-2を含む。なお、以下では、第1の鉄筋110-1と第2の鉄筋110-2とを特に区別しない場合には、鉄筋110として説明する。同様に、第1の緊張材121-1と第2の緊張材121-2とを特に区別しない場合には、緊張材121として説明する。
【0044】
第1の鉄筋110-1の端部および第1の緊張材121-1の端部は、第1のコンクリート柱体100-1の端部から突出している。一方、第2の鉄筋110-2の端部および第2の緊張材121-2の端部は、第2のコンクリート柱体100-2の端部から突出しないように、第2のコンクリート柱体100-2内に設けられている。接合部200において、第1の緊張材121-1と第2の緊張材121-2とが連結されている。また、第1のコンクリート柱体100-1から突出した第1の鉄筋110-1の端部が、第2のコンクリート柱体100-2に挿入され、固定されている。すなわち、第1の鉄筋110-1は、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とに跨って設けられている。そこで、接合部200の一例について、図4および図5を参照して説明する。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の接合部200を拡大した断面模式図である。また、図5は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20のPC部材120の断面図である。具体的には、図5(A)は、図4に示したA-A’線で切断したPC部材120の断面図であり、図5(B)は、図4に示したB-B’線で切断したPC部材120の断面図である。
【0046】
図4に示すように、第1のPC部材120-1は、第1の緊張材121-1および第1のシース管122-1を含む。第2のPC部材120-2は、第2の緊張材121-2および第2のシース管122-2を含む。なお、以下では、第1のPC部材120-1と第2のPC部材120-2とを特に区別しない場合には、PC部材120として説明する。同様に、第1のシース管122-1と第2のシース管122-2とを特に区別しない場合には、シース管122として説明する。
【0047】
また、図4に示すように、接合部200は、スリーブ210、グラウト220、カプラー230、支圧板240、ワッシャー250、ナット260、連結シース管270、蛇腹シース管275、インクリーザー278、およびグリース280を含む。
【0048】
スリーブ210は、第2のコンクリート柱体100-2に埋設されている。第2の鉄筋110-2の端部は、スリーブ210内に設けられ、第1の鉄筋110-1の端部は、スリーブ210内に挿入されている。また、スリーブ210内には、グラウト220が充填され、硬化されている。したがって、第1の鉄筋110-1の端部と第2の鉄筋110-2の端部とは、スリーブ210内において、グラウト220によって固定されている。
【0049】
スリーブ210は、グラウトが充填されることによって鉄筋を固定することができる継手である。そのため、スリーブ210には、グラウトを注入するための注入口と排出口が設けられている(図4では図示せず)。スリーブ210の注入口および排出口については、グラウトの注入の説明と併せて後述する。
【0050】
第2の鉄筋110-2の端部が突設されたスリーブ210の一端は、閉じられていることが好ましい。例えば、スリーブ210内に設けられた第2の鉄筋110-2とスリーブ210の一端とを、シール材を用いて接着し、スリーブ210の一端を閉じてもよい。一方、スリーブ210の他端は、解放されている。そのため、スリーブ210内に注入されたグラウト220は、スリーブ210の他端から、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2との間の間隙に入り込む。
【0051】
グラウト220は、例えば、モルタルのなどのセメント系グラウト材、水ガラスなどのガラス系グラウト材、またはエポキシ樹脂などの合成樹脂系グラウト材などを用いることができる。
【0052】
グラウト220は、硬化前は、スリーブ210内に注入しやすいように適度な流動性を有することが好ましい。一方、グラウト220は、硬化後は、高い強度を保持することが好ましい。建物10のコンクリート柱20に用いるグラウト220としては、モルタルが好ましい。モルタルは、セメントを含む。セメントとしては、例えば、ポルトランドセメントなどを用いることができる。
【0053】
連結シース管270は、第2のコンクリート柱体100-2の第1凹部102-1(図2参照)に埋設されている。第2の緊張材121-2の端部は、連結シース管270内に設けられ、第1の緊張材121-1の端部は、連結シース管270内に挿入されている。また、連結シース管270内には、グリース280が充填されている。
【0054】
第2の緊張材121-2の端部が設けられた連結シース管270の一端は、充填されたグリース280が漏れないように閉じられていることが好ましい。図4に示すように、連結シース管270の一端は、インクリーザー278によってキャップされている。一方、連結シース管270の他端も、グラウト220が侵入することを防止するため、閉じられていることが好ましい。図4に示すように、連結シース管270の他端に蛇腹シース管275を設けて、連結シース管270と支圧板240との間を閉じるようにしてもよい。
【0055】
連結シース管270の他端の構成はこれに限られない。連結シース管270の一端および他端の構成は、グリース280が漏れ出さず、第1の緊張材121-1とグラウト220との接触を防止することができる構成であればよい。例えば、連結シース管270の一端と第2のシース管122-2とをシール材を用いて接着し、連結シース管270の一端を閉じてもよい。また、連結シース管270の他端と支圧板240とをシール材を用いて接着してもよい。また、シール材の代わりに、モルタルを用いてもよい。連結シース管270内へのグラウト220の侵入を防止することにより、第1の緊張材121-1および第2の緊張材121-2とグラウト220との接触を防止するができる。また、グラウト220との接触を防止することにより、第1の緊張材121-1および第2の緊張材121-2の腐食を抑制することができる。
【0056】
図5(B)に示すように、PC部材120は、緊張材121、シース管122、および保護層(シース)123を含む。保護層123は、外部の水や酸素から緊張材121を保護する機能を有する。すなわち、保護層123によって緊張材121の腐食を防止することができる。そのため、PC部材120は、耐久性が向上する。保護層123の材料は、例えば、ポリエチレンなどの有機樹脂である。なお、保護層123は、複数層から構成されていてもよい。
【0057】
図5(A)に示すように、連結シース管270内においては、緊張材121を覆っていた保護層123が取り除かれる。そのため、緊張材121の腐食を防止するために、グリース280が充填される。連結シース管270内において、第1のPC部材120-1は、第1のシース管122-1が取り除かれ、第1の緊張材121-1が露出している。第2のPC部材120-2も、第2のシース管122-2の一部が取り除かれ、第2の緊張材121-2が露出している。また、連結シース管270内において、第1のPC部材120-1の第1の緊張材121-1と第2のPC部材120-2の第2の緊張材121-2は、それぞれ、カプラー230と螺合している。すなわち、第1のPC部材120-1の第1の緊張材121-1と第2のPC部材120-2の第2の緊張材121-2とは、カプラー230を介して連結されている。
【0058】
第1のPC部材120-1の第1の緊張材121-1は、第1のコンクリート柱体100-1の端部から突出している。第1のコンクリート柱体100-1の端部には、貫通孔が設けられた支圧板240が配設され、第1のコンクリート柱体100-1の端部から突出した第1の緊張材121-1が支圧板240の貫通孔を貫通している。また、突出した第1の緊張材121-1は、支圧板240上に配設されたワッシャー250に挿通され、ワッシャー250上に配設されたナット260によって螺合されている。すなわち、第1のPC部材120-1の露出された第1の緊張材121-1はナット260と螺合し、第1の緊張材121-1の端部が第1のコンクリート柱体100-1の端部に固定されている。
【0059】
支圧板240は、第1のコンクリート柱体100-1のコンクリートに固定され、第1の緊張材121-1の緊張力をコンクリートに伝達させる機能を有する。支圧板240の大きさは、第1のPC部材120-1の直径より大きく、連結シース管270の直径よりも大きいことが好ましい。なお、図4に示すように、支圧板240は、第1のコンクリート柱体100-1の凹部に設けられていてもよいし、凹部に設けられていなくともよい。支圧板240の形状は、例えば矩形であるが、支圧板240の形状の構成はこれに限られない。支圧板240の形状は、例えば、円形であってもよい。
【0060】
シース管122は、例えば、鋼シース管またはポリエチレンシース管を用いることができるが、PC部材120では、ポリエチレンシース管が好ましい。ポリエチレンシース管は腐食に強いため、シース管122にポリエチレンシース管を用いたPC部材120は、耐久性が向上する。
【0061】
続いて、接合部200における鉄筋110とPC部材120との位置関係について、図6を参照して説明する。
【0062】
図6は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の接合部200の斜視図である。なお、図6では、鉄筋110とPC部材120との位置関係をわかりやすくするため、上述した構成の一部を省略し、第2のコンクリート柱体100-2が透明なものとして表されている。
【0063】
図6に示すように、第1のコンクリート柱体100-1は、12本の第1の鉄筋110-1および8本の第1のPC部材120-1を含む。12本の第1の鉄筋110-1の一端および8本の第1のPC部材120-1の一端は、第1のコンクリート柱体100-1の第1端から突出している。第2のコンクリート柱体100-2も、12本の第2の鉄筋110-2および8本の第2のPC部材120-2を含む。接合部200では、12本の第1の鉄筋110-1の第1端が第2のコンクリート柱体100-2内に挿入され、固定されている。また、8本の第1のPC部材120-1と8本の第2のPC部材120-2とがカプラー230を介して第2のコンクリート柱体100-2内で連結されている。
【0064】
12本のうちの4本の第1の鉄筋110-1は、第1のコンクリート柱体100-1の角部近傍の位置に設けられている。同様に、12本のうちの4本の第2の鉄筋110-2は、第2のコンクリート柱体100-2の角部近傍の位置に設けられている。一方、水平方向において、8本の第1のPC部材120-1は、角部近傍の4本の第1の鉄筋110-1で囲まれる領域の内側に設けられている。同様に、水平方向において、8本の第2のPC部材120-2は、4本の第2の鉄筋110-2で囲まれる領域の内側に設けられている。言い換えると、コンクリート柱体100において、PC部材120は、角部近傍に位置する鉄筋110よりも内側の位置に設けられているということもできる。
【0065】
図6に示す鉄筋110は、いわゆる組立筋である。ここで、本実施形態に係るコンクリート柱20の組立筋について、図7を参照して説明する。
【0066】
図7は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の断面模式図である。具体的には、図7(A)は、鉛直方向と平行に切断したコンクリート柱20の断面図であり、図7(B)は、鉛直方向と垂直に切断したコンクリート柱20(第2のコンクリート柱体100-2)の断面図である。コンクリート柱20は、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とが接合部200で接合されている。具体的には、第1の鉄筋110-1と第2の鉄筋110-2とが第2のコンクリート柱体100-2内で固定され、第1の緊張材121-1と第2の緊張材121-2とが第2のコンクリート柱体100-2内で連結されている。
【0067】
図7に示す第1の鉄筋110-1および第2の鉄筋110-2は、いわゆる組立筋である。第1の鉄筋110-1および第2の鉄筋110-2のそれぞれは、鉛直方向に対して垂直な平面内において、横補強筋130が巻き付けられ、横補強筋130と接している。横補強筋130は、鉛直方向において、複数の箇所で設けられている。図7に示すように、第1の鉄筋110-1は、1つのコンクリート柱体(第1のコンクリート柱体110-1)において、第1のコンクリート柱体内の長手方向に複数配置された横補強筋130のうち、第1のコンクリート柱体110-1の一端側の最も外側に配置された横補強筋130と接し、かつ他端側の最も外側に配置された横補強筋130(図示せず)と接して設けられている。第2の鉄筋110-2は、1つのコンクリート柱体(第2のコンクリート柱体110-2)において、第2のコンクリート柱体内の長手方向に複数配置された横補強筋130のうち、第2のコンクリート柱体110-2の一端側の最も外側に配置された横補強筋130(図示せず)と接し、かつ他端側の最も外側に配置された横補強筋130と接して設けられている。なお、角部近傍の4本の鉄筋110に巻き付けられた横補強筋130以外に、横補強筋をさらに設けてもよい。また、横補強筋130の形状はこれに限られず、長方形や多角形でもよい。本発明の第1の鉄筋110-1および第2の鉄筋110-2が組立筋であることにより、作業量やコストの負担を増大させることなく安全性を向上させることができる。
【0068】
なお、第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2は、従来の組立筋である。第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2は、それぞれ第1のコンクリート柱体100-1および第2のコンクリート柱体100-2の中に埋設されている。すなわち、第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2は、いずれも第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とに跨って設けられていない。本実施形態に係るコンクリート柱20は、2つのコンクリート柱体100に跨って設けられる鉄筋110だけでなく、コンクリート柱体100内に埋設される鉄筋510も含むことができる。
【0069】
なお、コンクリート柱体100における鉄筋110とPC部材120との位置は、図7に示す構成に限られない。コンクリート柱体100において、鉄筋110が、PC部材120よりも内側に設けられていてもよい。
【0070】
鉄筋110の本数は、特に限定されない。鉄筋110の本数は、12本未満であってもよく、13本以上であってもよい。同様に、PC部材120の本数も8本に限られない。PC部材120の本数は、8本未満であってもよく、9本以上であってもよい。
【0071】
図2図7においては、第1のコンクリート柱体100-1の上方に位置する第2のコンクリート柱体100-2内に、第1のコンクリート柱体100-1から突出した第1の鉄筋110-1が挿入されるコンクリート柱20の構成について説明したが、第2のコンクリート柱体100-2の下方に位置する第1のコンクリート柱体100-1内に、第2のコンクリート柱体100-2から突出した第2の鉄筋110-2が挿入されるコンクリート柱20の構成にすることもできる。
【0072】
図8は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の接合部200において、鉄筋110の固定を説明する図である。
【0073】
図8に示すように、スリーブ210には、第2のコンクリート柱体100-2の内部にあるスリーブ210内の空間と、第2のコンクリート柱体100-2の外部の空間とを連通する注入口211および排出口212が設けられている。
【0074】
注入口211および排出口212は、第1のコンクリート柱体100-1の上に第2のコンクリート柱体100-2が設置された後に、グラウト220を注入し、および排出するための開口である。グラウト220は、注入口211から注入され、スリーブ210内の空間および第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2との間の空間を埋め、余剰なグラウト220が排出口212から排出される。注入口211は、排出口212よりも下方に設けられる。注入口211が排出口212の下方に位置することで、下方から空気を押し出すことが可能となり、空間内の空気溜りを減少させることができる。ただし、注入口211を、排出口212の上方に設けることもできる。また、複数の排出口212を設けることもできる。
【0075】
第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2との間の空間は、当て板290によって塞がれ、閉じた空間となっている。そのため、注入されたグラウト220は、当て板290によって堰き止められ、第1のコンクリート柱体100-1および第2のコンクリート柱体100-2の外側に漏れ出ることはない。当て板290は、グラウト220の注入前に、第1のコンクリート柱体100-1および第2のコンクリート柱体100-2の外側に設けておくことができる。なお、グラウト220の硬化後、当て板290は、取り外すことができる。
【0076】
図9は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の接合部200において、PC部材120の連結を説明する図である。
【0077】
図9に示すように、連結シース管270には、第2のコンクリート柱体100-2の内部にある連結シース管270内の空間と、第2のコンクリート柱体100-2の外部の空間とを連通する注入口271および排出口272が設けられている。
【0078】
注入口271および排出口272は、第1のPC部材120-1の第1の緊張材121-1と第2のPC部材120-2の第2の緊張材121-2とがカプラー230によって連結された後に、グリース280を注入し、排出するための開口である。グリース280は、注入口271から注入され、連結シース管270内の空間を埋め、余剰なグリース280が排出口272から排出される。注入口271は、排出口272よりも上方に設けられる。ただし、注入口271を排出口272の下方に設けることもできる。また、複数の注入口271および排出口272を設けることもできる。
【0079】
なお、注入したグリース280は、連結シース管270の下方部においては、支圧板240および蛇腹シース管275によって堰き止められるため、外部に漏れることはない。
【0080】
以上の説明は、主に、プレキャスト工法を用いたコンクリート柱20の組み立てについての説明である。すなわち、建物10の建設現場で使用するコンクリート柱体100は、予め工場などで製造され、建物10の建設現場に運搬される。工場などで製造されるコンクリート柱体100は、コンクリートに、鉄筋110およびPC部材120が設けられている。コンクリート柱体100の一方の端部では、鉄筋110の一端およびPC部材120の緊張材121の一端が突出している。一方、コンクリート柱体100の他方の端部では、スリーブ210および連結シース管270が埋設され、スリーブ210内では、鉄筋110の他端がコンクリート柱体100内に収まるように設けられ、連結シース管270内では、PC部材120の緊張材121の他端がコンクリート柱体100内に収まるように設けられている。建物10の建設現場において、工場で製造された複数のコンクリート柱体100を圧着接合し、コンクリート柱20を形成する。プレキャスト工法を用いることで建設現場での作業効率を向上させ、工期および費用を短縮することができ、施工性を向上することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係るコンクリート柱20は、コンクリート柱20は、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とが接合されて鉛直方向に延伸するコンクリート柱20であって、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とに跨って設けられた緊張材121と、第1のコンクリート柱体100-1と第2のコンクリート柱体100-2とに跨って設けられた鉄筋110と、を含む。よって、万が一PC部材120の緊張材121が破断した場合には、第1のコンクリート柱体100-1および第2のコンクリート柱体100-2が鉄筋110で繋がれていることになり、柱20の一体化を維持することができる。そのため、柱20が構成する建物10の崩壊を防ぐことができ安全性が向上する。
【0082】
<第1変形例>
図10を参照して、第1実施形態に係るコンクリート柱20の接合部200とは異なる接合部200Aについて説明する。なお、接合部200Aの説明において、接合部200の構成と同様である場合は、説明を省略する場合がある。
【0083】
図10は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の接合部200Aを拡大した断面模式図である。図10に示すように、第1のPC部材120-1は、第1の緊張材121-1および第1のシース管122-1を含む。第2のPC部材120-2は、第2の緊張材121-2および第2のシース管122-2を含む。また、接合部200Aは、スリーブ210A、グラウト220、カプラー230、支圧板240、ワッシャー250、ナット260、連結シース管270、蛇腹シース管275、インクリーザー278、およびグリース280を含む。
【0084】
スリーブ210Aは、第1のコンクリート柱体100A-1に埋設されている。第1の鉄筋110A-1の端部は、スリーブ210A内に設けられ、第2の鉄筋110A-2の端部は、スリーブ210A内に挿入されている。また、スリーブ210A内には、グラウト220が充填され、硬化されている。したがって、第2の鉄筋110A-2は、第1のコンクリート柱体100A-1と第2のコンクリート柱体100A-2とに跨って設けられ、固定されている。
【0085】
本変形例に係るコンクリート柱20の接合部200Aでは、第1のコンクリート柱体100A-1の端部に鉄筋110が挿入され、第2のコンクリート柱体100A-2の端部でPC部材120の緊張材121が連結される。グラウト220は第1のコンクリート柱体100A-1の端部から注入され、グリース280は第2のコンクリート柱体100-2の端部から注入され、グラウト220およびグリース280を注入する位置が異なる。そのため、作業者が誤った注入材を注入するような作業ミスを減少させることができる。また、スリーブ210Aと連結シース管270とを埋設する位置が分散されるため、接合部200Aの強度が向上する。
【0086】
<第2変形例>
図11および図12を参照して、第1実施形態に係るコンクリート柱20のコンクリート柱体100とは異なるコンクリート柱体100Bおよび接合部200Bについて説明する。なお、コンクリート柱体100Bおよび接合部200Bの説明において、コンクリート柱体100および接合部200の構成と同様である場合は、説明を省略する場合がある。
【0087】
図11は、本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート柱体100Bの接合を説明する模式図である。なお、以下では、便宜上、プレキャストコンクリート柱体100Bを、コンクリート柱体100Bと記載して説明する。
【0088】
図11に示すように、コンクリート柱体100Bは、鉄筋110Bおよび緊張材121Bを含む。コンクリート柱体100Bの第1端101B-1側では、鉄筋110Bの一端および緊張材121Bの一端がコンクリート柱体100Bの第1端101B-1から突出している。一方、コンクリート柱体100Bの第1端101B-1の反対側である第2端101B-2側には、第1凹部102B-1および第2凹部102B-2が設けられている。第1凹部102B-1には、連結シース管270Bが設けられ、第2凹部102B-2には、スリーブ210Bが設けられている。
【0089】
連結シース管270B内では、緊張材121Bの他端が突出するように設けられている。一方、スリーブ210内では、鉄筋110Bの他端は突出していない。すなわち、鉄筋110Bの他端は、コンクリート柱体100Bに埋設されている。
【0090】
コンクリート柱20は、鉛直方向において、1つのコンクリート柱体100Bの第2端101B-2と、もう1つのコンクリート柱体100Bとが圧着接合されて構成される。その際、1つのコンクリート柱体100Bに設けられたスリーブ210B内に、もう1つのコンクリート柱体100Bから突出した鉄筋110Bが挿入され、固定される。
【0091】
図12は、本発明の一実施形態に係るコンクリート柱20の接合部200Bを拡大した断面模式図である。図12に示すように、接合部200Bでは、第1の緊張材121-1と第2の緊張材121-2とが連結されている。また、第1のコンクリート柱体100B-1および第2のコンクリート柱体100B-2には、それぞれ、第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2が埋設されている。すなわち、第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2は、いずれも第1のコンクリート柱体100B-1と第2のコンクリート柱体100B-2とに跨って設けられていない、いわゆる従来の組立筋である。
【0092】
接合部200Bでは、上記構成だけでなく、さらに、第1のコンクリート柱体100B-1と第2のコンクリート柱体100B-2とに跨って、鉄筋110Bが設けられている。鉄筋110Bは、第1の鉄筋510-1および第2の鉄筋510-2とは異なり、第1のコンクリート柱体100B-1の長手方向の一端側の最も外側に配置された横補強筋(図示せず)と接し、他端側の最も外側に配置された横補強筋(図示せず)とは接していない。言い換えると、鉄筋110Bの一端が、第1のコンクリート柱体100B-1の長手方向の一端側の最も外側に配置された横補強筋(図示せず)と接するとともに、第1のコンクリート柱体100B-1の該一端から突出し、鉄筋110Bの他端が、第1のコンクリート柱体110Bに埋設されている。すなわち、鉄筋110Bは、補助鉄筋である。鉄筋110Bが補助鉄筋であることにより、定着長さ以上での長さを設ければよいことから、作業量およびコストの負担を大幅に増大させることなく安全性を高めることができる。
【0093】
鉄筋110Bの一端は、第2のコンクリート柱体100B-2内に挿入されて固定され、鉄筋110Bの他端は、第1のコンクリート柱体100B-1内に埋設される。鉄筋110Bの他端の埋設される長さは、接合部200Bにおいて十分な強度が確保できるように、定着長さ以上であって、第1の鉄筋510-1の長さ以下であることが好ましい。
【0094】
本変形例に係るコンクリート柱20の接合部200Bでは、補助鉄筋である鉄筋110Bが設けられている。つまり、補助鉄筋である鉄筋110Bが、第1のコンクリート柱体100B-1と第2のコンクリート柱体100B-2とに跨って設けられている。よって、緊張材121が破断した場合でも、第1のコンクリート柱体100B-1および第2のコンクリート柱体100B-2が鉄筋110Bで繋がれていることになり一体化を維持することができる。したがって、本変形例に係るコンクリート柱20も安全性が向上する。
【0095】
<第2実施形態>
図13を参照して、本発明の一実施形態に係る構造体について説明する。
【0096】
図13は、本発明の一実施形態に係る構造体12の平面断面図である。具体的には、構造体12は、建物10に含まれるコンクリート柱20およびコンクリート梁30を組み合せた構造を有し、図13は、鉛直方向に垂直な平面において、コンクリート梁30を含むように切断した断面図である。
【0097】
構造体12は、コンクリート柱20、アンボンドプレストレストコンクリート(アンボンドPC)柱21、およびコンクリート梁30を含む。構造体12の隅柱および側柱はコンクリート柱20で構成され、構造体12の中柱はアンボンドPC柱21で構成されている。また、隣接するコンクリート柱20の間、隣接するアンボンドPC柱21の間、または隣接するコンクリート柱20とアンボンドPC柱21との間には、コンクリート梁30が設けられている。なお、構造体12の隅柱および側柱がコンクリート柱20で構成されていれば、コンクリート柱20、アンボンドPC柱21及びコンクリート梁30の数や配置、構造体12の形状等は限定されない。
【0098】
コンクリート柱20は、第1実施形態で説明したコンクリート柱20と同様である。すなわち、構造体12のコンクリート柱20は、鉄筋および緊張材のそれぞれが、鉛直方向に隣接する2つのプレキャストコンクリート柱体に跨って設けられている。一方、構造体12のアンボンドPC柱21は、緊張材は鉛直方向に隣接する2つのプレキャストコンクリート柱体に跨って設けられているが、鉄筋は鉛直方向に隣接する2つのプレキャストコンクリート柱体に跨って設けられていない。
【0099】
隅柱、側柱、および中柱の大きな違いは、接合されているコンクリート梁30の数である。それぞれ、1つの隅柱、1つの側柱、および1つの中柱に着目すると、1つの隅柱には2つのコンクリート梁30が接合され、1つの側柱には3つのコンクリート梁30が接合され、1つの中柱には4つのコンクリート梁30が接合されている。すべての柱をアンボンドPC柱21で構造体12を構成した場合、万が一、緊張材が破断した場合には、構造体12は崩れるおそれがある。そこで、本実施形態では、隅柱および側柱の接合部に緊張材だけでなく、鉄筋も含むコンクリート柱20を適用する。これにより、たとえコンクリート柱20の緊張材が破断したとしても、第1のプレキャストコンクリート柱体100-1および第2のプレキャストコンクリート柱体100-2が鉄筋110で繋がれていることになり、コンクリート柱20が一体となることを維持することができる。そのため、構造体12の崩壊を防ぐことができ安全性が向上する。
【0100】
<変形例1>
図14を参照して、第2実施形態に係る構造体12とは異なる構造体12Aについて説明する。なお、構造体12Aの説明において、構造体12の構成と同様である場合は、説明を省略する場合がある。
【0101】
図14は、本発明の一実施形態に係る構造体12Aの平面断面図である。構造体12Aは、コア構造を有する。ここで、コア構造とは、エレベーター、階段、機械室、または配管などの設備を集めて建物のコア部とする構造をいう。または、地震力に抵抗する構造部材を集中させた構造体をいう。なお、コア部は、複数の階層に亘って設けられていてもよい。
【0102】
構造体12Aは、コンクリート柱20、コンクリート柱22、ダンパー35、コンクリート梁30、および鉄筋コンクリート柱40を含む。コンクリート柱20とコンクリート柱22とは、形状等が異なるが、いずれもアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱又は壁柱である。コンクリート柱20およびコンクリート柱22の少なくとも一方は、鉄筋がプレキャストコンクリート柱体の接合部を跨いで圧着接合されているコンクリート柱を含む。一方、鉄筋コンクリート柱40は、緊張材を含まない。構造体12Aの隅柱および側柱は鉄筋コンクリート柱40で構成され、コア部15はコンクリート柱20、コンクリート柱22、およびダンパー35で構成されている。コア部15において、隣接するコンクリート柱20とコンクリート柱22とは、ダンパー35を介して接合されている。また、隣接するコンクリート柱22の間には、コンクリート梁30が接合されている。
【0103】
コア部15のコンクリート柱20およびコンクリート柱22は、ダンパー35と連結されているものの、万が一コンクリート柱20またはコンクリート柱22の緊張材が破断した場合においては、ダンパー35は梁30よりも弱い。そのため、構造体12Aは大きく崩れてしまう可能性があるが、本変形例においては、接合部に緊張材だけでなく、鉄筋も含むコンクリート柱20またはコンクリート柱22によってコア部15が構成されている。そのため、万が一緊張材が破断した場合には、第1のプレキャストコンクリート柱体100-1および第2のプレキャストコンクリート柱体100-2が鉄筋110で繋がれていることになり、コンクリート柱20の一体化を維持することができる。そのため、コンクリート柱20およびコンクリート柱22が構成する構造体12Aの崩壊を防ぐことができ安全性が向上する。
【0104】
さらに、構造体のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱(以下、コンクリート柱とする)は、種類の異なるプレキャストコンクリート柱体が組み合わされた構成であってもよい。ここでいう種類の異なるプレキャストコンクリート柱体とは、鉄筋および緊張材がプレキャストコンクリート柱体から突出しているプレキャストコンクリート柱体と、緊張材はプレキャストコンクリート柱体から突出し、かつ鉄筋はプレキャストコンクリート柱体から突出していないプレキャストコンクリート柱体とを含む。そこで、図15を参照して、第2実施形態に係る構造体12とは異なる構造体12Dについて説明する。
【0105】
<変形例2>
図15は、本発明の一実施形態に係る構造体12Dを説明する断面模式図である。なお、構造体12Dの説明において、構造体12の構成と同様である場合は、説明を省略する場合がある。
【0106】
構造体12Dは、階層13Dごとに種類の異なるプレキャストコンクリート柱体を含むアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱(コンクリート柱)が設けられていてもよい。例えば、図15(A)に示すように、コンクリート柱20Dは、第1の階層13D-1に属する第1のプレキャストコンクリート柱体100D-1、第1の階層13D-1に隣接する第2の階層13D-2に属する第2のプレキャストコンクリート柱体100D-2、第2の階層13D-2に隣接する第3の階層13D-3に属する第3のプレキャストコンクリート柱体100D-3、第3の階層13D-3に隣接する第4の階層13D-4に属する第4のプレキャストコンクリート柱体100D-4を含む。この場合において、第1のプレキャストコンクリート柱体100D-1と第2のプレキャストコンクリート柱体100D-2との接合部および第3のプレキャストコンクリート柱体100D-3と第4のプレキャストコンクリート柱体100D-4との接合部には、鉄筋110Dおよび緊張材(図示せず)が跨って設けられ、第2のプレキャストコンクリート柱体100D-2と第3のプレキャストコンクリート柱体100D-3との接合部には、鉄筋が跨って設けられていない。
【0107】
また、構造体12Dは、階層13D内で種類の異なるプレキャストコンクリート柱体100Bが設けられていてもよい。言い換えると、水平方向にコンクリート柱20Dが複数設けられている場合、同一水平面に設けられる複数のプレキャストコンクリート柱体100Dの接合部のうち、いずれか一つの接合部に鉄筋110Dが跨って設けられていればよい。例えば、図15(B)に示すように、第1のコンクリート柱20D-1は、第1の階層13D-1に属する第1のプレキャストコンクリート柱体100D-1、第1の階層13D-1に隣接する第2の階層13D-2に属する第2のプレキャストコンクリート柱体100D-2、および第2の階層13D-2に隣接する第3の階層13D-3に属する第3のプレキャストコンクリート柱体100D-3を含み、第2のコンクリート柱20D-2は、第1の階層13D-1に属する第4のプレキャストコンクリート柱体100D-4、第2の階層13D-2に属する第5のプレキャストコンクリート柱体100D-5、および第3の階層13D-3に属する第6のプレキャストコンクリート柱体100D-6を含む。この場合において、第1のプレキャストコンクリート柱体100D-1と第2のプレキャストコンクリート柱体100D-2との接合部には、鉄筋110Dおよび緊張材(図示せず)が跨って設けられていることから、第4のプレキャストコンクリート柱体100D-4と第5のプレキャストコンクリート柱体100D-5との接合部には、鉄筋が跨って設けられていなくともよい。第5のプレキャストコンクリート柱体100D-5と第6のプレキャストコンクリート柱体100D-6との接合部には、鉄筋110および緊張材(図示せず)が跨って設けられていることから、第2のプレキャストコンクリート柱体100D-2と第3のプレキャストコンクリート柱体100D-3との接合部には、鉄筋が跨って設けられていなくともよい。
【0108】
なお、鉄筋110Bは、組立筋であってもよく、補助鉄筋であってもよい。
【0109】
上述した第1のコンクリート柱20D-1と第2のコンクリート柱20D-2とは、大きさまたは形状などが異なっていてもよい。そのため、例えば、上述した構造体12Aのコンクリート柱20とコンクリート柱22との構成において、構造体Dの構成を適用することもできる。
【0110】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0111】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0112】
10:建物、 12、12A、12D:構造体、 13D:階層、 13D-1:第1の階層、 13D-2:第2の階層、 13D-3:第3の階層、 13D-4:第4の階層、 15:コア部、 20、20D:アンボンドプレストレストコンクリート柱(コンクリート柱)、 20D-1: 第1のコンクリート柱、 20D-2:第2のコンクリート柱、 21:アンボンドPC柱、 22:コンクリート柱、 30:コンクリート梁、 35:ダンパー、 40:鉄筋コンクリート柱、 50:アンボンドプレストレストコンクリート柱(コンクリート柱)、 100、100B、100D:プレキャストコンクリート柱体(コンクリート柱体)、 100-1、100A-1、100B-1:第1のコンクリート柱体、 100-2、100A-2、100B-2:第2のコンクリート柱体、 100D-1:第1のプレキャストコンクリート柱体、 100D-2:第2のプレキャストコンクリート柱体、 100D-3:第3のプレキャストコンクリート柱体、 100D-4:第4のプレキャストコンクリート柱体、 100D-5:第5のプレキャストコンクリート柱体、 100D-6:第6のプレキャストコンクリート柱体、 101-1、101B-1:第1端、 101-2、101B-2:第2端、 102-1、102B-1:第1凹部、 102-2、102B-2:第2凹部、 110、110D:鉄筋、 110-1、110A-1:第1の鉄筋、 110-2、110A-2:第2の鉄筋、 120、120A、120B:PC部材、 120-1:第1のPC部材、 120-2:第2のPC部材、 121、121B:緊張材、 121-1:第1の緊張材、 121-2:第2の緊張材、 122:シース管、 122-1:第1のシース管、 122-2:第2のシース管、 123:保護層、 125:中空部、 130:横補強筋、 130-1:第1の横補強筋、 130-2:第2の横補強筋、 200、200A、200B:接合部、 210、210A、210B:スリーブ、 210C-1:第1のスリーブ、 210C-2:第2のスリーブ、 211:注入口、 212:排出口、 220:グラウト、 230:カプラー、 240:支圧板、 250:ワッシャー、 260:ナット、 270:連結シース管、 271:注入口、 272:排出口、 275:蛇腹シース管、 278:インクリーザー、 280:グリース、 290:当て板、500:プレキャストコンクリート柱体(コンクリート柱体)、 500-1:第1のコンクリート柱体、 500-2:第2のコンクリート柱体、 501-1:第1端、 501-2:第2端、 502:凹部、 510:鉄筋、 510-1:第1の鉄筋、 510-2:第2の鉄筋、 521:緊張材、 521-1:第1の緊張材、 521-2:第2の緊張材、 570:連結シース管、 600:接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17