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特許7441708使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケット
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20240222BHJP
   G21F 5/012 20060101ALI20240222BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20240222BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20240222BHJP
   G21C 19/07 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G21C19/32 040
G21F5/012
G21F9/36 501H
G21F3/00 N
G21C19/07 500
G21C19/07 600
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020067144
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021162540
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392009353
【氏名又は名称】株式会社オー・シー・エル
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 潤
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晃
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 博紀
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】塩津 英男
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-022889(JP,A)
【文献】特開2013-181798(JP,A)
【文献】特開2019-158636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00-7/06
G21C 19/00-19/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に収容されるバスケットの構造を呈し、
前記バスケットは、容器の内周面に沿って配置される周縁部と、周縁部よりも径方向に沿った内側の位置に配置される中央部とを有し、
周縁部は、周方向に沿って複数のピースに分割され、
各ピースは容器の内周面に面接触した状態で固定されるものであり、
前記周縁部と中央部とは、前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに隙間を保った状態と、前記隙間を保った状態からの中央部の変位により前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに面接触した状態との両方の状態をとることでできるように構成され
前記周縁部と中央部とは、使用済核燃料を収容する収容孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケット。
【請求項2】
容器内に収容されるバスケットの構造を呈し、
前記バスケットは、複数の盤体が上下に積み重ねられた構成であるとともに、使用済核燃料を収容するための第1の空間が上下の盤体にわたって設けられ、かつ中性子吸収体を収容するための第2の空間が上下の盤体にわたって設けられ
前記バスケットは、容器の内周面に沿って配置される周縁部と、周縁部よりも径方向に沿った内側の位置に配置される中央部とを有し、
周縁部は、周方向に沿って複数のピースに分割され、
各ピースは容器の内周面に面接触した状態で固定されるものであり、
前記周縁部と中央部とは、前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに隙間を保った状態と、前記隙間を保った状態からの中央部の変位により前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに面接触した状態との両方の状態をとることでできるように構成されていることを特徴とする使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケット。
【請求項3】
周縁部を容器の内周面に固定するための固定具を有し、
この固定具は、周方向に隣り合う一方のピースの端部と他方のピースの端部とを容器の内周面に共締めできるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケット。
【請求項4】
固定具は、
容器に締結されるように構成されるとともに、
容器に締結されたときに一方のピースの端部を容器の内面に向けて押圧するための一方押圧面と、容器に締結されたときに他方のピースの端部を容器の内面に向けて一方のピースと一緒に押圧するための他方押圧面とを有することを特徴とする請求項記載の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケット。
【請求項5】
バスケットは、複数の盤体にわたって上下方向に配置される長尺体にて構成された中性子吸収体を通すことができるスリットを有して、この中性子吸収体の長さ方向に沿った一部分を保持するように構成された第1の盤体と、前記スリットを有さずに、中性子吸収体の長さ方向に沿った他の部分を保持せずに通すように構成された第2の盤体とを有することを特徴とする請求項記載の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などの原子力施設で発生した使用済核燃料を安全に輸送または貯蔵するために、キャスクと称される容器や、キャニスタと称される容器が用いられる。これらの容器内のキャビティに使用済核燃料を安全に格納するために、バスケットと称されるラック状の構造物が用いられる(特許文献1)。
【0003】
バスケットには、使用済核燃料を収納するための容器に求められる4つの安全機能であるところの、除熱機能、密封機能、遮蔽機能、未臨界機能のうち、除熱機能および未臨界機能と、これらの機能を維持するための構造強度とが必要である。特に、9.0mの高さからの落下という条件下においても、安全機能が損なわれることなく、構造健全性を維持することが求められる。
【0004】
日本国内においては、バスケット材料として、これまで、熱伝導性と比強度とに優れるアルミニウム合金を採用することが期待されていた。しかし、近年、安全性の観点から、バスケット用アルミニウム合金の規格が廃止された。このため、構造強度部材に炭素鋼またはステンレス鋼を用いたバスケットが検討されたが、使用済核燃料の温度を低下させることを目的として、鋼材に比べて熱伝導率の高いアルミニウム合金を用いたバスケットの開発が依然として望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-287894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、バスケットの構造強度における材料強度への依存性を低減して、鋼材や従来のアルミニウム合金に比べてより強度の低い別のアルミニウム合金を用いても、構造健全性を維持できるバスケットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットは、
容器内に収容されるバスケットの構造を呈し、
前記バスケットは、容器の内周面に沿って配置される周縁部と、周縁部よりも径方向に沿った内側の位置に配置される中央部とを有し、
周縁部は、周方向に沿って複数のピースに分割され、
各ピースは容器の内周面に面接触した状態で固定されるものであり、
前記周縁部と中央部とは、前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに隙間を保った状態と、前記隙間を保った状態からの中央部の変位により前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに面接触した状態との両方の状態をとることでできるように構成され
前記周縁部と中央部とは、使用済核燃料を収容する収容孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0008】
この目的を達成するため、本発明の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットは、容器内に収容されるバスケットの構造を呈し、
前記バスケットは、複数の盤体が上下に積み重ねられた構成であるとともに、使用済核燃料を収容するための第1の空間が上下の盤体にわたって設けられ、かつ中性子吸収体を収容するための第2の空間が上下の盤体にわたって設けられ、
前記バスケットは、容器の内周面に沿って配置される周縁部と、周縁部よりも径方向に沿った内側の位置に配置される中央部とを有し、
周縁部は、周方向に沿って複数のピースに分割され、
各ピースは容器の内周面に面接触した状態で固定されるものであり、
前記周縁部と中央部とは、前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに隙間を保った状態と、前記隙間を保った状態からの中央部の変位により前記周縁部の内面と中央部の外面とが互いに面接触した状態との両方の状態をとることでできるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットによれば、
周縁部を容器の内周面に固定するための固定具を有し、
この固定具は、周方向に隣り合う一方のピースの端部と他方のピースの端部とを容器の内周面に共締めできるように構成されていることが好適である。
【0010】
本発明の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットによれば、
固定具は、
容器に締結されるように構成されるとともに、
容器に締結されたときに一方のピースの端部を容器の内面に向けて押圧するための一方押圧面と、容器に締結されたときに他方のピースの端部を容器の内面に向けて一方のピースと一緒に押圧するための他方押圧面とを有することが好適である。
【0011】
本発明の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットは、複数の盤体にわたって上下方向に配置される長尺体にて構成された中性子吸収体を通すことができるスリットを有して、この中性子吸収体の長さ方向に沿った一部分を保持するように構成された第1の盤体と、前記スリットを有さずに、中性子吸収体の長さ方向に沿った他の部分を保持せずに通すように構成された第2の盤体とを有することが好適である。
【0012】
公知のバスケットは、容器の収容空間よりも小サイズの構造体が容器の内部に収容されるだけの構造であるために、応力が加わった場合には特に外周部分の薄肉部に応力集中が発生する危険性があるが、本発明によると、バスケットは、容器の内周面に沿って配置される周縁部と、周縁部よりも径方向に沿った内側の位置に配置される中央部とを有し、周縁部は、周方向に沿って複数のピースに分割され、各ピースは容器の内周面に面接触した状態で固定されているため、各ピースに薄肉部が存在していても、各ピースは容器の内周面に面接触した状態で固定されているために容器と一体化された状態となっており、したがって応力が加わった場合であっても応力集中の発生を緩和することができる。しかも、周縁部の内面と中央部の外面とは、バスケットが横倒れ状態となったときに互いに面接触するように構成されているため、これによって構造部材を弾性域に保持することができる。したがって本発明の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットによれば、従来よりも構造強度が向上した状態で、熱伝導性の良好なアルミニウム合金を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットによれば、従来よりも構造強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットの要部の平面図である。
図2図1における要部を拡大して示す図である。
図3】同バスケットの全体構造を示す図である。
図4】同バスケットにおける一部の盤体の平面図である。
図5】同バスケットにおける要部の断面図である。
図6図5におけるVI-VI線に沿った断面図である。
図7図5におけるVII-VII線に沿った断面図である。
図8】同バスケットを含む容器の状態を示す図である。
図9】本発明の他の実施の形態の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットを含む容器の状態を示す図である。
図10】本発明のさらに他の実施の形態の使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットを含む容器の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、11は使用済核燃料を輸送や貯蔵するために収容する容器であり、この容器11の内部には収容空間12が形成されている。図示の例では、収容空間12は円柱状に形成されている。
【0016】
13は、使用済核燃料を容器11の内部に収納するための、本発明の実施の形態のバスケットである。このバスケット13は、図3に示すように、複数のブロック状の円形の盤体14が上下に積み重ねられた構成である。盤体14は、薄手の第1の盤体15と、第1の盤体15よりは厚手の第2の盤体16とを有する。そして、バスケット13の上端と下端とには、第2の盤体よりもさらに厚手の第3の盤体17が設けられている。図示は省略するが、複数の盤体14(15、16、17)は、上下方向のタイロッドなどによって互いに締結されて一体化されている。また、上下に隣り合う盤体14(15、16、17)どうしは、リーマピンなどによって互いに位置合わせされている。
【0017】
次に、盤体14(15、16、17)の詳しい構造について説明する。図1は上端の盤体17を平面視したときの構造を示す。図示のように盤体17は、容器11の内周面18に沿って配置される周縁部19と、周縁部19よりも径方向に沿った内側の位置に配置される中央部20とを有する。
【0018】
図示の例では、バスケット13の周縁部19は、周方向に沿って4つのピース22に分割された構成となっている。各ピース22は、平面視において弓形に形成されて、容器11の内周面18に接することができる外側の湾曲面23と、内側の平面24とを有する。周方向に沿った4つのピース22、22、・・・の平面24によって、周縁部19よりも径方向に沿った内側の部分には、平面視で矩形状の収容空間25が形成される。
【0019】
周縁部19を構成する4つのピース22、22、・・・は、周方向に沿った各ピース22、22どうしの間の位置に設けられた固定具27によって、それぞれ容器11の内周面18に固定されている。図2に詳しく示すように、固定具27は、固定部材28がボルト29によって容器11側のナット体30に締結されることで、各ピース22を容器11の内周面18に固定することができる。固定部材28は、一方押圧面としての一方傾斜面31と、他方押圧面としての他方傾斜面32とを有し、周方向に隣り合う一方のピース22における周方向の端部に形成された一方の被押圧面33に固定部材28の一方傾斜面31が接するとともに、周方向に隣り合う他方のピース22における周方向の端部に形成された他方の被押圧面34に他方傾斜面32が接する。これにより、一方のピース22における周方向の端部と、他方のピース22における周方向の端部とを、1つの固定具27によって共締めできるように構成されている。被押圧面33、34はピース22、22の平面24と平行な方向に形成されており、これによって、ピース22を固定具27によって容器11の内周面18に対し平面24と垂直な方向に押圧できるように構成されている。すなわち、ピース22を容器11の収容空間12の径方向に沿って収容空間12の内面に効率よく押圧して固定できるように構成されている。固定部材28には、固定具27によってピース22、22を容器の収容空間25の内周面18に固定したときに一方および他方のピース22の平面24と面一になる空間形成面35、35がそれぞれ形成されている。各固定部材28にそれぞれ一対の空間形成面35、35が形成されることで、収容空間25をその隅角部を含めて厳密に矩形状に形成することができる。固定部材28は、複数積み重ねられる各盤体15、16、17ごとにそれぞれ個別に設けることもできるし、複数の盤体15、16、17にわたって上下方向に連続した長尺体によって構成することもできる。ボルト29は、その頭部36が空間形成面35よりも径方向の内周側に突出しないように、頭部36が固定部材28の内部に沈み込んだ状態で締結機能を発揮するように構成されている。
【0020】
なお、固定具27の特に断面形状は、ピース22を適正に容器11に固定できるものであれば、図示したもの以外の任意の形状とすることもできる。また、図示のような固定具27を用いなくても、スタッドボルトやその他の締結要素などを用いてピース22を容器11に固定することも可能である。
【0021】
図示のように4つのピース22、22、・・・を周方向にわたって設置することで、これらのピース22、22、・・・よりも径方向の内側には、前述のように平面視で矩形状の収容空間25が形成される。この収容空間25には、バスケット13の中央部20が収容される。中央部20は、平面視で、収容空間25よりもわずかに小さい矩形状に形成されており、したがって中央部20は、収容空間25に収容されたときに、周縁部19の各ピース22の平面25との間にそれぞれ隙間37を形成することができるように構成されている。
【0022】
上述のように、複数の盤体14(15、16、17)は、上下方向のタイロッドなどによって互いに締結されて一体化され、上下に隣り合う盤体14(15、16、17)どうしは、リーマピンなどによって互いに位置合わせされている。詳細には、上下方向に複数の周縁部19どうし、すなわち上下方向に複数のピース22どうしと、上下方向に複数の中央部20どうしとが、上記した構成によって、互いに固定され、かつ互いに位置合わせされている。なお、場合によっては、各ピース22の上下方向の寸法と、各中央部20の上下方向の寸法とを互いに異ならせた構成を採用することも可能である。
【0023】
各盤体14(15、16、17)の中央部20と周縁部19のピース22とには、使用済核燃料を収容するための複数の収容孔38が、これら中央部20と周縁部19のピース22とを上下方向に貫通した状態でそれぞれ形成されている。各収容孔38は平面視で矩形状に形成されており、上下の盤体14(15、16、17)にそれぞれ設けられた収容孔38によって、上下方向に連続した、使用済核燃料のための第1の空間としての収容空間が形成されている。
【0024】
図4は、第2の盤体16の部分を平面視した図である。この第2の盤体16の主要構成は第3の盤体17と同様であるが、この第2の盤体16においては、それに加えて、中央部20と周縁部19のピース22とにおいて、収容孔38のほかに、多数の貯水用孔40が、高さ方向に貫通した状態で形成されている。図示の例では貯水用孔40は平面視で矩形状に形成され、図5に示すように上下の盤体16にそれぞれ設けられた貯水用孔40によって、上下方向に連続した、第2の空間としての水貯留空間41が形成されている。貯水用孔40に水が貯留されることで、水貯留空間41は、発電所プール内での冠水時において、中性子の減速を目的とした水ギャップとして機能する。
【0025】
貯水用孔40には、中性子吸収材42が配置されている。詳細には、中性子吸収材42は、たとえばボロン添加アルミ合金材にて形成され、上下の盤体16、16にわたって配置される長尺の帯板材にて構成されている。
【0026】
図5に示すように、第1の盤体15にも、水貯留空間41を形成するための貯水用孔43が形成されている。図5図7に示すように、中性子吸収材42は、第2の盤体16においては、貯水用孔40を形成するための壁面44に沿って配置されている。この第2の盤体16においては、中性子吸収材42を壁面44に保持するための特別な手段は設けられていない。これに対し第1の盤体15においては、横断面矩形状の中性子吸収材42を上下方向に挿し通すことができるスリット45が、盤体16における貯水用孔40よりも細く形成されかつ盤体16における貯水用孔40に連通された貯水用孔43の近傍に設けられている。
【0027】
このような構成であることで、中性子吸収材42は、第1の盤体15においてはスリット45に通されることによってこの第1の盤体15に保持され、第2の盤体16においては壁面44に沿って配置されるだけであって、特別な手段を用いて第2の盤体16に保持されるというものではない。そして、図示のように第2の盤体16は上下方向に一対の第1の盤体15、15どうしの間に3つが設けられているため、結局、中性子吸収材42は、4つの盤体ごとに設けられた1つのスリット45だけによって保持されることになる。すると、中性子吸収材42を保持するためには第1の盤体15のみにスリットを形成すれば足り、第2の盤体16にはそのためのスリットを形成する必要がないため、その分だけ、中性子吸収体42を保持するための構造に掛かるコストを低減することができる。
【0028】
本発明に係る、使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットは、このような構成であるために、たとえば各盤体15、16、17を構成する周縁部19のピース22を固定具27を用いて容器11の収容空間12の内周面18に固定したうえで、それにより形成される収容空間25に中央部20を挿入し、上下の盤体15、16、17どうしを図外のリーマピンにより互いに位置合わせしたうえで図外のタイロッドで締結することで、バスケット13を構築するとともに。構築されたバスケット13を容器11の収容空間25に収容することができる。
【0029】
そして、本発明に係る、使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットによれば、周縁部19のピース22はその湾曲面23が容器11の収容空間12の内周面に接した状態で容器11に固定されているため、容器11にたとえば衝撃的な外力が加わった場合においても、その特に外周部の薄肉部分に応力集中が生じるような事態の発生を効果的に緩和することができる。
【0030】
使用済核燃料を収容したバスケット13を保持した容器11が何らかの原因によってたとえば横向きの姿勢になったときには、収容空間12の内部のバスケット13は、図8(a)に示す横向きになる前の状態から、すなわちバスケット13の中央部20の周囲と周縁部19の内周との間に全周にわたって隙間37が形成されていた状態から変位して、図8(b)に示す横向きになった後の状態、すなわち中央部20における下側となってしまった面が周縁部19におけるピース22の平面24によって形成される内面に全面で一様に面接触する状態に変化する。この全面で一様に面接触した場合においては、使用済核燃料を収容したバスケット13を保持した容器11が落下(水平落下、傾斜落下、コーナー落下など)や転倒することによって容器11の横向きに衝撃荷重などが加わったときであっても、バスケット13には局所的な応力集中が発生しにくいようにすることができ、バスケット13の構成材料を概ね弾性域に保持することができる。なお、上記のように一様に面接触してから衝撃を受ける場合に限らず、別の場合として、たとえば衝撃を受ける前に隙間がある状態であったとしても、衝撃を受けた後に面接触する状態に変化することで応力集中の発生を抑制することもできる。
【0031】
このため本発明によれば、バスケット13を鋼材などによって構成せずに、それよりも強度の低いアルミニウム合金を用いた場合であっても、バスケット13に十分な強度を付与することができる。
【0032】
また使用済核燃料の貯蔵に用いる乾式キャニスタやキャスクのバスケットにアルミニウム合金を用いると、このアルミニウム合金は、設計供用期間である60年の間、100~200℃の温度条件下に曝されることになる。このとき、アルミニウム合金は時効性を持つものが多く、過時効を超過すると機械的強度が低下するおそれがある。このため、貯蔵期間を満了したキャニスタを再処理施設などへ輸送する貯蔵後輸送において過時効を考慮した機械的強度によりバスケットの構造強度およびそれに係る安全機能を評価しなければならない。
【0033】
本発明の、使用済核燃料を容器内に収納するためのバスケットによれば、上述のように最適配置により材料強度への依存性を低減させていることから、過時効を超過して機械的強度が低下したアルミニウム合金にてバスケットが構成されていた場合であっても、設計において所要の構造強度を成立させることができる。
【0034】
上記の実施の形態では、バスケット13の周縁部19によって形成される収容空間25の横断面形状と、バスケット13の中央部20の横断面形状とが矩形状であるものについて説明した。しかし、これらの横断面形状は、矩形状に限られるものではなく、容器11のバスケット13の中央部20と周縁部19とが面接触することで応力集中が発生しにくい構造であれば、任意の形態とすることができる。
【0035】
たとえば図9に示す他の実施の形態では、中央部20の外周面50は複雑な凹凸構造を呈している。収容空間25の内面もそれに対応した形状である。ただし、凹凸を構成する面は、第1の方向51を向いた面52、52、・・・と、この第1の方向51とは直角な第2の方向53を向いた第2の面54、54、・・・との2種類の方向の面52、54だけて構成されている。このような構成によっても、図9(a)に示す通常の起立状態から図9(b)に示す中央部20の一部分と周縁部19の一部分とが面接触した状態へ変わることができ、これによって、バスケット13に応力集中が発生しにくいようにすることができる。図9(b)に示す面接触状態になったときに、中央部20における一つの面52、54のうちに、周縁部19に接触した部分56を必要に応じた位置および面積で形成することができる。このように周縁部19に接触した部分56を形成することで、発生する応力集中を緩和できるという利点がある。
【0036】
図10は、本発明のさらに他の実施の形態を示す。ここでは、中央部20は八角柱状に形成されている。収容空間25の内面もそれに対応した形状である。この場合も、図10(a)に示す通常の起立状態から図10(b)に示す面接触状態になったときには、中央部20の一部分と周縁部19の一部分とが必要に応じた面積で面接触することで、バスケット13に応力集中が発生しにくいようにすることができる。
【0037】
上述のように、バスケット13の周縁部19によって形成される収容空間25の横断面形状と、バスケット13の中央部20の横断面形状とは、図示されたものに限られず、図示されたもののほかに、たとえば横断面三角形状やその他の任意の形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0038】
11 容器
13 バスケット
18 内周面
19 周縁部
20 中央部
22 ピース
25 収容空間
27 固定具
31 一方傾斜面(一方押圧面)
32 他方傾斜面(他方押圧面)
38 収容孔(第1の空間)
41 冷却水貯留空間(第2の空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10