(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】作業システム及び作業制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2020078258
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特許第7152614(JP,B2)
【文献】特開2017-030106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のリンクが複数個の関節で連続的に連結されているアーム装置と、
前記アーム装置の最先端の前記リンクに設けられた画像センサと、
前記アーム装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記駆動制御部によって前記アーム装置の最も先端側からi番目の前記関節の動きを固定して前記アーム装置の最も先端側からi+1番目の前記関節を駆動しながら前記画像センサで所定の対象位置を複数回撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像した各画像を用い前記対象位置を基準とした座標系での前記各画像における前記画像センサの位置を求める座標取得部と、
前記座標取得部で求めた前記画像センサの位置に基づいて前記アーム装置の最も先端側からi番目の前記関節の関節状態量を求める関節状態量判定部とを備えていることを特徴とする作業システム。
【請求項2】
複数の前記関節は、それぞれ回転関節、直動関節、又はパラレルリンク関節であり、且つ一つ以上の前記回転関節を含むことを特徴とする請求項1に記載の作業システム。
【請求項3】
前記駆動制御部、前記撮像部、前記座標取得部、及び前記関節状態量判定部を用いて、前記アーム装置の最先端側から順次基端側の前記各関節の関節状態量を求める順次判定部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業システム。
【請求項4】
前記画像センサは、単眼カメラ、ステレオカメラ、及び深度カメラのうち少なくとも一種類を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかの一項に記載の作業システム。
【請求項5】
前記画像センサで撮像した画像、前記座標取得部で求めた位置を示す画像、及び前記関節状態量判定部で求めた関節状態量のうちの少なくとも一部を表示装置に表示する表示部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかの一項に記載の作業システム。
【請求項6】
前記画像センサで撮像した画像、前記座標取得部で求めた位置を示す画像、及び前記関節状態量判定部で求めた関節状態量のデータうちの少なくとも一部を記憶装置に記憶する記憶部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかの一項に記載の作業システム。
【請求項7】
複数個のリンクが複数個の関節で連続的に連結されているアーム装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記駆動制御部によって前記アーム装置の最も先端側からi番目の前記関節の動きを固定して前記アーム装置の最も先端側からi
+1番目の前記関節を駆動しながら、前記アーム装置の最先端の前記リンクに設けられた画像センサで所定の対象位置を複数回撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像した各画像を用い前記対象位置を基準とした座標系での前記各画像における前記画像センサの位置を求める座標取得部と、
前記座標取得部で求めた前記画像センサの位置に基づいて前記アーム装置の最も先端側からi番目の前記関節の関節状態量を求める関節状態量判定部とを備えていることを特徴とする作業制御装置。
【請求項8】
前記駆動制御部、前記撮像部、前記座標取得部、及び前記関節状態量判定部を用いて、前記アーム装置の最先端側から順次基端側の前記各関節の関節状態量を求める順次判定部を備えていることを特徴とする請求項7に記載の作業制御装置。
【請求項9】
前記画像センサで撮像した画像、前記座標取得部で求めた位置を示す画像、及び前記関節状態量判定部で求めた関節状態量のうちの少なくとも一部を表示装置に表示する表示部を備えていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の作業制御装置。
【請求項10】
前記画像センサで撮像した画像、前記座標取得部で求めた位置を示す画像、及び前記関節状態量判定部で求めた関節状態量のデータうちの少なくとも一部を記憶装置に記憶する記憶部を備えていることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れかの一項に記載の作業制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業システム及び作業制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平2017-30106号公報(特許文献1)がある。この公報には、「実施形態によるロボット制御装置は、目標値を座標変換する第1座標変換部と、減算部と、減算部の出力に基づいてロボットへの関節角度の制御指令を計算する逆運動学計算部と、ロボットからの関節角度信号に基づき手先の位置・姿勢を計算する順運動学計算部と、座標変換式導出部と、逆運動学・順運動学計算式導出部と、カメラ画像を処理するカメラ画像処理部と、カメラ画像から手先の位置・姿勢を推定する位置・姿勢推定部と、位置・姿勢を座標変換する第2座標変換部と、順運動学計算部の出力と第2座標変換部の出力に基づいてフィードバック情報を作成するフィードバック情報生成部とを有する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、カメラ画像に基づいてロボットの手先の位置を検出する技術について記載されている。しかし、特許文献1の技術では、ロボットの各関節の関節状態量を検出することができない。
そこで、本発明は、高放射線等の過酷環境下でもアーム装置の関節状態量を検出することができる作業システム及び作業制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、複数個のリンクが複数個の関節で連続的に連結されているアーム装置と、前記アーム装置の最先端の前記リンクに設けられた画像センサと、前記アーム装置の駆動を制御する駆動制御部と、前記駆動制御部によって前記アーム装置の最も先端側からi番目の前記関節の動きを固定して前記アーム装置の最も先端側からi+1番目の前記関節を駆動しながら前記画像センサで所定の対象位置を複数回撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像した各画像を用い前記対象位置を基準とした座標系での前記各画像における前記画像センサの位置を求める座標取得部と、前記座標取得部で求めた前記画像センサの位置に基づいて前記アーム装置の最も先端側からi番目の前記関節の関節状態量を求める関節状態量判定部とを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高放射線等の過酷環境下でもアーム装置の関節状態量を検出することができる作業システム及び作業制御装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例1に係る作業システムの全体の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る作業制御装置が、主に作業制御プログラムに基づいて実行する機能の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る作業システムの撮像部で撮像した画像の一例を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る作業システムの座標取得部で座標変換後のxy座標に示された各画像センサの位置を示すグラフである。である。
【
図5】本発明の実施例1に係る作業システムの関節状態量判定部による関節状態量の求め方を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る作業システムの全体の概略構成図である。
【
図7】本発明の実施例2に係る作業システムの座標取得部で座標変換後のxy座標に示された各画像センサの位置を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例2に係る作業システムの関節状態量判定部による関節状態量の求め方を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施例3に係る作業システムの全体の概略構成図である。
【
図10】本発明の実施例3に係る作業システムの座標取得部で座標変換後のxy座標に示された各画像センサの位置を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例3に係る作業システムの関節状態量判定部による関節状態量の求め方を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施例4に係る作業システムの全体の概略構成図である。
【
図13】本発明の実施例4に係る作業システムの座標取得部で座標変換後のxy座標に示された各画像センサの位置を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施例4に係る作業システムの関節状態量判定部による関節状態量の求め方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
まず、人間の立ち入りが困難な災害現場等の過酷環境において状況を改善していくためには、遠隔地にいるオペレータが遠隔操作装置を用いながら、未知な作業対象物の把持、切断、穿孔等の作業を安全に行う必要がある。その際、高放射線環境等の過酷環境では、電子機器を搭載したロボット状態センサでは高放射線に耐性がなく、ロボット等の状態を把握する手段が求められる。
【0009】
そこで、耐放射線性を有する画像センサを用いて、ロボット等の状態を把握することが考えられる。
この点で、前記特許文献1では、カメラ画像に基づいてロボットの手先の位置及び方向を検出する技術について開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術では、ロボットの各関節の関節状態量を検出することができない。
【0010】
そこで、以下では、高放射線等の過酷環境下でもアーム装置の関節状態量を検出することができる作業システム(及び作業制御装置)の実施例について複数例説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例1に係る作業システム1の全体の概略構成図である。作業システム1は、アーム装置2と、アーム装置2と通信可能な作業制御装置3とを備えている。
アーム装置2は、複数個、
図1の例では3個のリンク11~13が、複数個、
図1の例では2個の関節14,15で連続的に連結されている。本例では、関節14,15は回転関節である。アーム装置2は、
図1の例(以下の各実施例でも同様)では、ロボットアームであるが、パワーショベルやクレーン等として構成してもよい。アーム装置2の最先端のリンク11の先端にはエンドエフェクタ7が設けられている。アーム装置2は、各種アクチュエータによって駆動するが、アクチュエータの詳細については便宜上説明を省略する。例えば、アーム装置2の基端部は便宜上図示を省略するが自律走行する台車に取り付けられていて、アーム装置2は当該台車の走行によって移動することができる。
【0012】
アーム装置2の最先端のリンク11の先端側には画像センサ21が設けられている。画像センサ21はアーム装置2の先端の先の情景を撮像することができる。画像センサ21は、単眼カメラ、ステレオカメラ、及び深度カメラのうち少なくとも一種類を備えて構成することができる。画像センサ21は、高い線量の放射線に対しても耐性を有している機種である。
作業制御装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成され、アプリケーションソフト等として作業制御プログラム4がセットアップされている。作業制御装置3は、作業制御プログラム4に基づく処理により以下に説明する機能を実行する。
【0013】
図2は、作業制御装置3が、主に作業制御プログラム4に基づいて実行する機能の機能ブロック図である。
通信部31は、無線又は有線によりアーム装置2と作業制御装置3との通信を行う。以下の処理で言及する、アーム装置2側への作業制御装置3からの指令の送信、及びアーム装置2側からの作業制御装置3への各種データの送信は、通信部31を介して行う。
駆動制御部32は、アーム装置2の駆動を制御する。これによって、関節14,15を駆動し、エンドエフェクタ7を駆動する等することができる。
【0014】
撮像部33は、駆動制御部32によってアーム装置2の最も先端側からi番目の関節の動きを固定して、アーム装置2の最も先端側からi+1番目の関節を駆動しながら画像センサ21で所定の対象位置102(
図1)を複数回撮像する。i番目の関節の動きの固定、i+1番目の関節の駆動、画像センサ21の撮像は、撮像部33を用いて手動で行うこともできるが、撮像部33が一連の動作を自動で行う方が、作業性が高い。
座標取得部34は、撮像部33で撮像した各画像を用い、対象位置102(
図1)を基準とした座標系での当該各画像における画像センサ21の位置を求める。
【0015】
関節状態量判定部35は、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置に基づいて、アーム装置2の最も先端側からi番目の関節の関節状態量を求める。
順次判定部36は、駆動制御部32、撮像部33、座標取得部34、及び関節状態量判定部35を用いて、アーム装置2の最先端側から順次基端側の各関節の関節状態量を求める。
表示部37は、画像センサ21で撮像した画像、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置を示す画像、及び関節状態量判定部35で求めた関節状態量のうちの少なくとも一部を表示装置5(
図1)に表示する。
【0016】
記憶部38は、画像センサ21で撮像した画像、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置を示す画像、及び関節状態量判定部35で求めた関節状態量のうちの少なくとも一部を記憶装置6(
図1)に記憶する。
【0017】
次に、作業システム1の作用効果について説明する。
以下では、回転関節である関節14の関節状態量(リンク11の長手方向とリンク12の長手方向とがなす角度)を求める例について説明する。この場合は、関節14がアーム装置2の最も先端側からi番目の関節となり、関節15がアーム装置2の最も先端側からi+1番目の関節になる。そこで、撮像部33は、
図1を参照して、駆動制御部32によって関節14の動きを固定し、関節15を駆動しながら画像センサ21で所定の対象位置102を複数回撮像する。アーム装置2の関節15よりも更に基端側に関節が存在する場合は、当該関節も固定する。本例では、
図1に示すように、所定の対象位置102は、アーム装置2の作業対象となる作業対象物101の上部の特定ポイントであるが、所定の対象位置102は、画像センサ21で撮像可能な様々なポイントに設定してよい。
【0018】
図3は、撮像部33で撮像した画像の一例を示している。この画像201には、関節15を駆動しながら画像センサ21の位置を変えつつ画像センサ21で例えば4回撮像した画像を重ね合わせて表示している。画像センサ21の位置を変えつつ各画像は撮影されているので、画像201中の所定の対象位置102は各撮像画像で位置が異なる。これによって、各撮像画像における画像201中の所定の対象位置102の座標がわかる。
次に、座標取得部34は、撮像部33で撮像したこのような画像を用い、対象位置102を基準とした座標系に変換する。そして、変換後の座標系で
図3の各対象位置102に対応する画像センサ21の位置を求める。このような座標変換は、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)の技術を用いることで行うことができる。
【0019】
図4は、この座標変換後のxy座標に示された各画像センサ21の位置を示すグラフである。
図4のグラフにプロットされている各ポイント41が撮像部33で撮像した各画像に対応する画像センサ21の位置座標を示している。関節15の駆動によって画像センサ21は円弧42上を移動するので、各ポイント41も円弧42上に並ぶ。そのため、円弧42から当該円弧42の中心位置43もわかる。この中心位置43は関節15の位置である。駆動角度θ2は、撮像部33で撮像したある画像から次に撮像した画像までの間における関節15の回転角度である。
図4中には、対応するアーム装置2の部材も破線で示している。
【0020】
次に、関節状態量判定部35は、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置に基づいて関節14の関節状態量を求める。
図5は、関節状態量の求め方を示す説明図である。座標取得部34によって各撮像画像に対応した画像センサ21の位置であるポイント41の位置が判明している。また、関節15の位置も中心位置43の位置として判明している。画像センサ21の位置がリンク11の先端部であるとみなせば、リンク11,12それぞれの長さも予め既知であるため、関節14、関節15、画像センサ21を3つの角とする三角形の形状、大きさが明らかとなる。そのため、リンク11の長手方向とリンク12の長手方向とがなす角度である関節14の回転角度θ1(関節状態量)の値を求めることができる。
【0021】
なお、画像センサ21の位置がリンク11の先端部にあるとは限らず、
図1に例示するように当該先端部からずれていることを考慮し、関節14の回転角度θ1を更に正確に推定しようとする場合は、次のようにする。リンク11,12それぞれと長手方向が平行な疑似的なリンク11A,12Aを想定し、リンク11Aを画像センサ21位置から関節14側に向かって伸ばし、リンク12Aを中心位置43(関節15)位置から伸ばす。すると、この両者は先端部が関節14の近傍で接続し、その接続点を各疑似的なリンク11A,12Aの終点とすれば、リンク11A,12Aのそれぞれの長さ、位置も判明する。したがって、リンク11A,12Aを二辺とし、画像センサ21、関節15を二つの角とする三角形の形状、大きさが明らかとなる。そのため、リンク11Aの長手方向とリンク12Aの長手方向とがなす角度である関節14の回転角度θ1(関節状態量)の値を更に正確に求めることができる。
【0022】
以上の処理によってアーム装置2の最先端の関節14の関節状態量が求められる。順次判定部36は、駆動制御部32、撮像部33、座標取得部34、及び関節状態量判定部35を用いて、前記と同様の処理を実行することで、アーム装置2の最先端側から順次基端側の各関節の関節状態量を求める。
表示部37は、画像センサ21で撮像した画像(
図3に例示)、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置を示す画像(
図4に例示)、及び関節状態量判定部35で求めた関節状態量(
図5のような図も含める)を表示装置5(
図1)に表示する。
【0023】
また、記憶部38は、画像センサ21で撮像した画像(
図3に例示)、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置を示す画
像(
図4に例示)、及び関節状態量判定部35で求めた関節状態量(
図5のような図も含める)を記憶装置6(
図1)に記憶する。
以上説明した作業システム1、作業制御装置3によれば、高放射線等の過酷環境下でもアーム装置2の各関節の関節状態量を検出することができる。特に、アーム装置2の先端側からi番目の関節が回転関節、アーム装置2の先端側からi+1番目の関節も回転関節である場合に、当該i番目の関節の関節状態量を検出することができる。
【実施例2】
【0024】
図6は、本実施例2に係る作業システム1の全体の概略構成図である。本実施例2のシステム構成が実施例1と異なる点は、回転関節である関節15に代えて直動関節である関節15aを用いている点である。以下では、本実施例2が実施例1と異なる点を中心に説明する(以下の各実施例においても同様)。
【0025】
関節15aは直動関節であるからリンク11の長手方向に伸縮するのが当該関節の動きとなる。そこで、まず、撮像部33は、
図6を参照して、駆動制御部32によって関節14の動きを固定し、関節15aを駆動(伸長又は縮小)しながら画像センサ21で所定の対象位置102(
図3)を複数回撮像する。アーム装置2の関節15aよりも更に基端側に関節が存在する場合は、当該関節も固定する。この撮像部33による処理によって、実施例1と同様、
図3に示すような画像を取得することができる。
なお、実施例1では、画像センサ21は関節15を中心とした旋回運動をするが、この実施例2では、画像センサ21は、関節15aの伸長などに基づく直線運動をする。
【0026】
次に、座標取得部34は、実施例1と同様に、撮像部33で撮像したこのような画像を用い、対象位置102を基準とした座標系に変換する。
図7は、この座標変換後のxy座標に示された各画像センサ21の位置を示すグラフである。
図7から明らかなように、関節15aは直線的に動くので、各ポイント41も直線51の上に並ぶ。そして、撮像部33で撮像したある画像から次に撮像した画像までの間に画像センサ21が移動した距離が隣接するポイント41間の距離であり、直線51の長手方向が移動の方向である。また、この距離と方向は、関節15aが伸縮した長さと方向も示している。
【0027】
次に、関節状態量判定部35は、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置に基づいて関節14の関節状態量を求める。
図8は、関節状態量の求め方を示す説明図である。リンク11,12の元々の長さは既知である。画像センサ21の位置や、関節15aの伸縮の長さや方向も判明している。よって、関節15aの基端部、関節14、画像センサ21の位置を3つの角とする三角形の形状や大きさを特定することができる。よって、関節14の回転角度θ1(関節状態量)の値を求めることができる。
【0028】
この場合、実施例1と同様に、画像センサ21の位置とリンク11の先端部との位置ずれは既知である。そこで、実施例1と同様に、疑似的なリンク11A,12Aを想定し、この2つの疑似的なリンクを含む三角形から、更に正確な関節14の回転角度θ1(関節状態量)の値を求めることができる。
以上説明した作業システム1、作業制御装置3によれば、高放射線等の過酷環境下でもアーム装置2の各関節の関節状態量を検出することができる。特に、アーム装置2の先端側からi番目の関節が回転関節、アーム装置2の先端側からi+1番目の関節が直動関節である場合に、当該i番目の関節の関節状態量を検出することができる。
【実施例3】
【0029】
図9は、本実施例3に係る作業システム1の全体の概略構成図である。本実施例3のシステム構成が実施例1と異なる点は、回転関節である関節14に代えて直動関節である関節14aを用いている点である。
【0030】
まず、撮像部33は、
図9を参照して、駆動制御部32によって関節14aの動き(伸縮動作)を固定し、関節15を駆動しながら画像センサ21で所定の対象位置102を複数回撮像する。
次に、座標取得部34は、実施例1と同様に、撮像部33で撮像したこのような画像を用い、対象位置102を基準とした座標系に変換する。
図10は、この座標変換後のxy座標に示された各画像センサ21の位置を示すグラフである。
図10から明らかなように、実施例1と同様、画像センサ21の軌跡は円弧状となり、撮像部33で撮像した際の画像センサ21の位置、関節15(円弧42の中心位置43)の位置がわかる。
【0031】
次に、関節状態量判定部35は、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置に基づいて関節14の関節状態量を求める。
図11は、関節状態量の求め方を示す説明図である。前記のように、画像センサ21の位置、関節15の位置は判明している。リンク11,12の長さは既知である。リンク11の長手方向とリンク12の長手方向とがなす回転角度θ1は固定であり、既知である。よって、関節15、画像センサ21を2つの角とし、リンク11,12(関節14aの伸長分も含む)を2つの辺とする三角形の形状、大きさを想定でき、関節14aの伸長した長さ(関節状態量)がわかる。
【0032】
また、実施例1と同様に、疑似的なリンク11A,12Aを想定し、当該リンク11A,12Aを二辺とする前記のような三角形の形状、大きさを想定することで、より正確に関節14aの伸長した長さ(関節状態量)がわかる。
以上説明した作業システム1、作業制御装置3によれば、高放射線等の過酷環境下でもアーム装置2の各関節の関節状態量を検出することができる。特に、アーム装置2の先端側からi番目の関節が直動関節、アーム装置2の先端側からi+1番目の関節が回転関節である場合に、当該i番目の関節の関節状態量を検出することができる。
【実施例4】
【0033】
図12は、本実施例4に係る作業システム1の全体の概略構成図である。本実施例4のシステム構成が実施例1と異なる点は、回転関節である関節14に代えてパラレルリンク関節である関節14bを用いている点である。パラレルリンク関節は、複数のリンクと関節とを組み合わせて構成されている。この場合、リンク12の先端(関節14bの基端部)から、エンドエフェクタ7が設けられている関節14bの先端部までの長さを有する1本の直線軸状のリンクを想定することができ、この想定上のリンクがアーム装置2の最先端のリンク11に相当する。
【0034】
まず、撮像部33は、
図9を参照して、駆動制御部32によって関節14bの動きを固定し、関節15を駆動しながら画像センサ21で所定の対象位置102を複数回撮像する。
【0035】
次に、座標取得部34は、実施例1と同様に、撮像部33で撮像したこのような画像を用い、対象位置102を基準とした座標系に変換する。
図13は、この座標変換後のxy座標に示された各画像センサ21の位置を示すグラフである。
図13から明らかなように、実施例1と同様、画像センサ21の軌跡は円弧状となり、撮像部33で撮像した際の画像センサ21の位置、関節15(円弧42の中心位置43)の位置がわかる。
【0036】
次に、関節状態量判定部35は、座標取得部34で求めた画像センサ21の位置に基づいて関節14の関節状態量を求める。
図14は、関節状態量の求め方を示す説明図である。前記のように、画像センサ21の位置、関節15の位置は判明している。前記のような仮想的なリンク11、及びリンク12の長さは既知である。よって、画像センサ21の位置、関節15の位置を二つの角とし、リンク11、及びリンク12を二つの辺とする三角形の形状、大きさを想定することができる。そのため、リンク11の長手方向とリンク12の長手方向とがなす角度である関節14bの回転角度θ1(関節状態量)の値を求めることができる。
【0037】
また、実施例1と同様に、疑似的なリンク11A,12Aを想定し、前記の三角形の二辺を当該リンク11A,12Aとすることで、更に正確に関節14bの回転角度θ1(関節状態量)を求めることができる。
以上説明した作業システム1、作業制御装置3によれば、高放射線等の過酷環境下でもアーム装置2の各関節の関節状態量を検出することができる。特に、アーム装置2の先端側からi番目の関節がパラレルリンク関節、アーム装置2の先端側からi+1番目の関節が回転関節である場合に、当該i番目の関節の関節状態量を検出することができる。
【0038】
以上、複数の事例について説明してきた。本発明によれば、アーム装置2が備えている関節が、回転関節、直動関節、又はパラレルリンク関節であり、且つアーム装置2に一つ以上の回転関節を含んでいれば、各関節の関節状態量を検出することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0039】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれ機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0040】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0041】
1 作業システム
2 アーム装置
3 作業制御装置
5 表示装置
6 記憶装置
11~13 リンク
14,14a,14b 関節
15,15a 関節
21 画像センサ
32 駆動制御部
33 撮像部
34 座標取得部
35 関節状態量判定部
36 順次判定部
37 表示部
38 記憶部
102 対象位置