(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】画像読取装置、電子機器及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
H04N1/00 885
(21)【出願番号】P 2020105288
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 恭平
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-229983(JP,A)
【文献】特開昭60-102961(JP,A)
【文献】特開2005-275154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取の対象となる媒体が搬送される搬送路と、
CPUと、
パルス信号を発生する発生器と、
前記パルス信号に応じたパルス光を前記搬送路に向かって投射する投光器と、前記搬送路を挟んで前記投光器に対向して配置される受光器とを有するセンサと、
前記パルス信号の電荷を蓄積すること、及び、蓄積された前記電荷を放出することが可能な充放電器と、
前記パルス光が前記受光器によって受光されているときに前記充放電器に前記電荷を放出させる一方で、前記媒体によって前記パルス光が遮られることにより前記パルス光が前記受光器によって受光されていないときに前記充放電器に前記電荷を蓄積させ、前記充放電器に蓄積された前記電荷の量が閾値以上になった時点で前記CPUへの電力の供給を開始する制御器と、
を具備する画像読取装置。
【請求項2】
前記投光器は、前記CPUへ電力の供給が開始される前は前記パルス光を投射する一方で、前記CPUへ電力の供給が開始された後は常時点灯する、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
CPUと、
パルス信号を発生する発生器と、
前記パルス信号に応じたパルス光を投射する投光器と、前記投光器に対向して配置される受光器とを有するセンサと、
前記パルス信号の電荷を蓄積すること、及び、蓄積された前記電荷を放出することが可能な充放電器と、
前記パルス光が前記受光器によって受光されているときに前記充放電器に前記電荷を放出させる一方で、前記パルス光が前記受光器によって受光されていないときに前記充放電器に前記電荷を蓄積させ、前記充放電器に蓄積された前記電荷の量が閾値以上になった時点で前記CPUへの電力の供給を開始する制御器と、
を具備する電子機器。
【請求項4】
CPUと、
パルス信号を発生する発生器と、
前記パルス信号に応じたパルス光を投射する投光器と、前記投光器に対向して配置される受光器とを有するセンサと、
前記パルス信号の電荷を蓄積すること、及び、蓄積された前記電荷を放出することが可能な充放電器と、を具備する電子機器の制御方法であって、
前記パルス光が前記受光器によって受光されているときに前記充放電器に前記電荷を放出させる一方で、前記パルス光が前記受光器によって受光されていないときに前記充放電器に前記電荷を蓄積させ、
前記充放電器に蓄積された前記電荷の量が閾値以上になった時点で前記CPUへの電力の供給を開始する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像読取装置、電子機器及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナの中には、スキャナの読取の対象となる媒体(以下では「読取対象媒体」と呼ぶことがある)がスキャナの開口部からスキャナの内部の搬送路へ挿入されるものがある。また、読取対象媒体が挿入されるスキャナの中には、読取対象媒体が搬送路に挿入されたか否かを光センサを用いて判定するものがある。例えば、透過型光センサが判定に用いられる場合は、投光器から投射された光が読取対象媒体で遮られるため、受光器での受光量の減少をCPU(Central Processing Unit)が検出したときに、読取対象媒体が搬送路に挿入されたとCPUが判定し、CPUが搬送ローラの回転を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-229983号公報
【文献】特開2015-165620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CPUへ電力が供給されていないとCPUは動作することができないため、CPUへの電力の供給開始前には、読取対象媒体が搬送路に挿入されたか否かをCPUによって判定することは困難である。一方で、読取対象媒体が搬送路に挿入されたか否かをCPUによって判定するために、搬送路への読取対象媒体の挿入前から、予めCPUへ電力を供給していたのでは、スキャナの消費電力が増大してしまう。
【0005】
そこで、本開示では、消費電力を抑制できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像読取装置は、搬送路と、CPUと、発生器と、センサと、充放電器と、制御器とを有する。前記搬送路では、読取の対象となる媒体が搬送される。前記発生器は、パルス信号を発生する。前記センサは、前記パルス信号に応じたパルス光を前記搬送路に向かって投射する投光器と、前記搬送路を挟んで前記投光器に対向して配置される受光器とを有する。前記充放電器は、前記パルス信号の電荷を蓄積すること、及び、蓄積された前記電荷を放出することが可能である。前記制御器は、前記パルス光が前記受光器によって受光されているときに前記充放電器に前記電荷を放出させる一方で、前記媒体によって前記パルス光が遮られることにより前記パルス光が前記受光器によって受光されていないときに前記充放電器に前記電荷を蓄積させる。そして、前記制御器は、前記電荷量が閾値以上になった時点で前記CPUへの電力の供給を開始する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、消費電力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施例1のスキャナの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例1のスキャナの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施例1のエンプティセンサの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施例1のエンプティセンサの動作例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施例1のエンプティセンサの動作例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施例1の信号処理器の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施例1のスキャナにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施例1のスキャナの動作例の説明に供する図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施例1のスキャナの動作例の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。以下の実施例において同一の構成、及び、同一の処理を行うステップには同一の符号を付す。
【0010】
以下では、画像読取装置の一例として、スキャナについて説明する。しかし、開示の技術が適用可能な画像読取装置はスキャナに限定されない。例えば、コピー機等のスキャナ以外の画像読取装置にも開示の技術を適用可能である。また、画像読取装置は、電子機器の一例であり、開示の技術が適用可能な電子機器は画像読取装置に限定されない。
【0011】
[実施例1]
<スキャナの構成>
図1及び
図2は、本開示の実施例1のスキャナの構成例を示す図である。
図1には側面図を示し、
図2には正面図を示す。
図1,2に示すスキャナ1に挿入される読取対象媒体の一例として、文字や図が記載された原稿が挙げられる。
【0012】
図1において、スキャナ1は、給送トレイ11と、下部筐体12と、上部筐体13と、とを有する。給送トレイ11は、回転軸RA1を介して上部筐体13に取り付けられており、回転軸RA1を中心にして開閉自在である。
図1には給送トレイ11が開いた状態を示し、
図2には給送トレイ11が閉じた状態を示す。
【0013】
また、スキャナ1は、媒体読取部17-1,17-2と、CPU21と、信号処理器50と、電力供給器60と、メモリ29と、ピックローラ22と、透過型光センサ24,25と、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2と、搬送路P1,P2,P3と、フラップ35とを有する。フラップ35の支点は、上部筐体13に形成される。フラップ35の支点はフラップ35の後端に位置し、フラップ35の先端が上部筐体13側に上がっている状態がフラップ35の初期位置となる。ピックローラ22、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2及びフラップ35はモータ(図示せず)によって駆動される。
【0014】
媒体読取部17-1,17-2は、ハードウェアとして、例えば、CIS(Contact Image Sensor)タイプのイメージセンサにより実現される。また、メモリの一例として、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0015】
搬送路P1は、スキャナ1の左側面に形成された開口部O1Lと、スキャナ1の右側面に形成された開口部O1Rと、上面S11と、下面S12とを有する。搬送路P1の上面S11は上部筐体13の下面に該当し、搬送路P1の下面S12は下部筐体12の上面に該当する。つまり、搬送路P1は、上部筐体13と下部筐体12との間に形成される。また、搬送路P1は、開口部O1Lから挿入される読取対象媒体(以下では「第一読取対象媒体」と呼ぶことがある)の搬送に用いられる。開口部O1Lからは、通常はオペレータの手によって、第一読取対象媒体が挿入される。
【0016】
搬送路P2は、上部筐体13の上面に形成された開口部O2と、上面S21と、下面S22とを有する。搬送路P2は、開口部O2から挿入される読取対象媒体(以下では「第二読取対象媒体」と呼ぶことがある)の搬送に用いられる。給送トレイ11に載置された第二読取対象媒体が開口部O2から挿入される。
【0017】
ここで、搬送路P2は、搬送路P1の途中に位置する合流点JP1において搬送路P1に合流する。また、搬送路P1の開口部O1L,O1Rの高さ方向の幅H1(つまり、上面S11と下面S12との間の距離)は、搬送路P2の開口部O2の高さ方向の幅H2(つまり、上面S21と下面S22との間の距離)より大きい。幅H1が幅H2より大きいため、通常、開口部O1Lには厚手の読取対象媒体が挿入され、開口部O2には薄手の読取対象媒体が挿入される。つまり、通常、第一読取対象媒体の厚さは、第二読取対象媒体の厚さより大きい。
【0018】
搬送路P3は、上部筐体13の上面に形成された開口部O3を有し、搬送路P1の途中に位置する合流点JP2において搬送路P1に合流する。
【0019】
透過型光センサ24は、投光器24Tと、受光器24Rとを有する。投光器24Tと受光器24Rとは搬送路P1を挟んで互いに対向して配置され、投光器24Tから上面S11側へ向かって投射された光が受光器24Rにより受光される。投光器24Tは下面S12側に配置され、受光器24Rは上面S11側に配置される。スキャナ1が「動作モード」にあるときは、投光器24Tが投射する光の投光量は、CPU21からの制御の下で、第一投光量QHで一定に保たれる。また、スキャナ1が、動作モードよりも消費電力が小さい「スリープモード」にあるときは、投光器24Tが投射する光の投光量は、信号処理器50から出力されるパルス信号に従って、一定時間T1毎に、第一投光量QHと、第一投光量QHより小さい第二投光量QLとに変化する。「スリープモード」は「スタンバイモード」と呼ばれることもある。
【0020】
透過型光センサ25は、投光器25Tと、受光器25Rとを有する。投光器25Tと受光器25Rとは搬送路P1を挟んで互いに対向して配置され、投光器25Tから上面S11側へ向かって投射された光が受光器25Rにより受光される。投光器25Tは下面S12側に配置され、受光器25Rは上面S11側に配置される。スキャナ1が動作モードにあるときは、投光器25Tが投射する光の投光量は、CPU21からの制御の下で、第一投光量QHで一定に保たれる。また、スキャナ1がスリープモードにあるときは、投光器25Tは消灯する。
【0021】
ここで、スキャナ1は、CPU21への電力の供給を開始するための「電源ボタン」を有しない。電力供給器60からCPU21への電力の供給は、閉じた状態にある給送トレイ11がスキャナ1のオペレータによって開いた状態にされた時点、または、開口部O1Lから搬送路P1に第一読取対象媒体が挿入され、信号処理器50によって搬送路P1に第一読取対象媒体が存在すると判定された時点で開始される。CPU21は、電力供給器60から電力を供給されることにより動作可能となる。スキャナ1がスリープモードにあるときはCPU21への電力の供給は行われず、スキャナ1が動作モードにあるときにCPU21への電力の供給が行われる。
【0022】
<第二読取対象媒体の搬送>
図3は、本開示の実施例1のエンプティセンサの構成例を示す図である。
図4及び
図5は、本開示の実施例1のエンプティセンサの動作例を示す図である。
【0023】
図3において、エンプティセンサ23は、透過型光センサ28と、可動部材50とを有する。透過型光センサ28は、投光器28Tと、受光器28Rとを有する。投光器28Tと受光器28Rとは互いに対向して配置され、投光器28Tから投射された光が受光器28Rにより受光される。投光器28Tが投射する光の投光量は、CPU21からの制御の下で、第一投光量QHで一定に保たれる。可動部材50は、アーム51と、アーム51に結合されたレバー52,53とを有する。可動部材50は、回転軸RA2を中心にして回転自在な部材である。
【0024】
給送トレイ11に第二読取対象媒体が載置されていないときには、
図4に示すように、搬送路P2には第二読取対象媒体が存在しないため、投光器28Tから投射された光はレバー53によって遮られることなく、受光器28Rによって受光される。
【0025】
閉じた状態にある給送トレイ11がスキャナ1のオペレータによって開いた状態にされた時点で、信号処理器50は、スキャナ1をスリープモードから動作モードに移行させ、電力供給器60からCPU21への電力の供給を開始する。
【0026】
CPU21及び後述する制御器53は、受光器24Rにおける受光量(以下では「第一受光量」と呼ぶことがある)が閾値THR以上であるときは、第一受光量のレベル(以下では「第一受光レベル」と呼ぶことがある)がハイレベルHにあると判定し、第一受光量が閾値THR未満であるときは、第一受光レベルが、ハイレベルHより小さいローレベルLにあると判定する。閾値THRは、メモリ29に予め記憶されている。
【0027】
また、CPU21は、受光器25Rにおける受光量(以下では「第二受光量」と呼ぶことがある)が閾値THR以上であるときは、第二受光量のレベル(以下では「第二受光レベル」と呼ぶことがある)がハイレベルHにあると判定し、第二受光量が閾値THR未満であるときは、第二受光レベルがローレベルLにあると判定する。
【0028】
また、CPU21は、受光器28Rにおける受光量(以下では「第三受光量」と呼ぶことがある)が閾値TH1以上であるときは、第三受光量のレベル(以下では「第三受光レベル」と呼ぶことがある)がハイレベルHにあると判定し、第三受光量が閾値TH1未満であるときは、第三受光レベルがローレベルLにあると判定する。
【0029】
給送トレイ11が開いた状態にあるときに、
図5に示すように給送トレイ11に第二読取対象媒体MDが載置されると、開口部O2から搬送路P2に第二読取対象媒体MDが挿入されるため、レバー52が第二読取対象媒体MDによって押し上げられる。レバー52が第二読取対象媒体MDによって押し上げられると、可動部材50が右回り(時計回り)に回転することに伴ってレバー53が
図4に示す位置から
図5に示す位置に移動する。これにより、投光器28Tから投射された光がレバー53によって遮られるため、第三受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。CPU21は、第三受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少した時点で、ピックローラ22及び搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転を開始させるとともに、フラップ35の先端を下部筐体12側に下げる。CPU21は、ピックローラ22及び搬送ローラ26-1,27-1を右回り(時計回り)に回転させる一方で、搬送ローラ26-2,27-2を左回り(反時計回り)に回転させる。また、フラップ35の先端が下部筐体12側に下げられることにより、搬送路P3と搬送路P1とが連結されるため、搬送路P2と搬送路P1と搬送路P3とにより一連の搬送路が形成される。
【0030】
ピックローラ22により搬送路P2を搬送される第二読取対象媒体の先端が合流点JP1を過ぎて搬送ローラ27-1と搬送ローラ27-2との間に達すると、第二読取対象媒体は搬送ローラ27-1,27-2によって搬送路P1を-X方向(図中左方向)へ搬送される。第二読取対象媒体が搬送ローラ27-1,27-2によって搬送路P1を-X方向へ搬送されて第二読取対象媒体の先端が透過型光センサ25まで達すると、投光器25Tから投射された光が第二読取対象媒体によって遮られるため、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。CPU21は、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少した時点で、媒体読取部17-1,17-2による第二読取対象媒体の読取を開始する。搬送路P1での第二読取対象媒体の-X方向への搬送に伴って、第二読取対象媒体は媒体読取部17-1,17-2によって読み取られる。媒体読取部17-1によって第二読取対象媒体の上面が読み取られ、媒体読取部17-2によって第二読取対象媒体の下面が読み取られる。
【0031】
さらに搬送路P1での第二読取対象媒体の-X方向への搬送に伴って、第二読取対象媒体の先端が搬送ローラ26-1と搬送ローラ26-2との間に達すると、第二読取対象媒体は搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1をさらに-X方向へ搬送される。搬送ローラ26-1,26-2により搬送路P1を-X方向へ搬送される第二読取対象媒体の先端は、第二読取対象媒体の搬送に伴ってフラップ35の上面に接しながら合流点JP2へ向かって進み、搬送路P3に進入する。よって、読取が為された後の第二読取対象媒体は、搬送路P3を+Z方向(図中上方向)へ搬送されて開口部O3から上部筐体13の上面に排出される。
【0032】
また、給送トレイ11に載置されていた最後の第二読取対象媒体の後端がエンプティセンサ23を通過して時点で、第三受光レベルがローレベルLからハイレベルHに増加する。CPU21は、第三受光レベルがハイレベルHからローレベルLに一旦減少した後、再びローレベルLからハイレベルHに増加した時点から所定時間だけ経過後に、ピックローラ22及び搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転を停止させる。
【0033】
<第一読取対象媒体の搬送>
スリープモードにおいて、フラップ35の先端が上部筐体13側に上がっている状態で、開口部O1Lから+X方向(図中右方向)に向かって搬送路P1に第一読取対象媒体が挿入されると、投光器24Tから投射された光が第一読取対象媒体によって遮られるため、第一受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。信号処理器50は、後述するように第一受光レベルに基づいて搬送路P1に第一読取対象媒体が存在すると判定する。信号処理器50は、搬送路P1に第一読取対象媒体が存在すると判定した時点で、スキャナ1をスリープモードから動作モードに移行させ、電力供給器60からCPU21への電力の供給を開始する。電力の供給を開始されたCPU21は、搬送ローラ26-1,27-1を左回りに回転させ始める一方で、搬送ローラ26-2,27-2を右回りに回転させ始める。第一読取対象媒体がさらに+X方向へ挿入されて第一読取対象媒体の先端が搬送ローラ26-1と搬送ローラ26-2との間に達すると、第一読取対象媒体は搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1を+X方向へ搬送される。
【0034】
第一読取対象媒体が搬送ローラ26-1,26-2によって+X方向へ搬送されて第一読取対象媒体の先端が透過型光センサ25まで達すると、投光器25Tから投射された光が第一読取対象媒体によって遮られるため、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。CPU21は、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少した時点で、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転を一旦停止させる。
【0035】
搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転が一旦停止した後、スキャナ1が有する「スキャン開始ボタン」(図示せず)がオペレータによって押下されると、CPU21は、再び、搬送ローラ26-1,27-1を左回りに回転させ始める一方で、搬送ローラ26-2,27-2を右回りに回転させ始める。第一読取対象媒体が搬送ローラ26-1,26-2によって搬送路P1をさらに+X方向へ搬送されて第一読取対象媒体の先端が搬送ローラ27-1と搬送ローラ27-2との間に達すると、第一読取対象媒体は搬送ローラ27-1,27-2によって搬送路P1をさらに+X方向へ搬送される。
【0036】
そして、第一読取対象媒体の後端が透過型光センサ25を過ぎた時点で、投光器25Tから投射された光が受光器25Rによって受光されるため、第二受光レベルがローレベルLからハイレベルHに増加する。CPU21は、搬送路P1における第一読取対象媒体の+X方向への搬送に伴って第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに一旦減少した後、再びローレベルLからハイレベルHに増加した時点で、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転方向を逆転させ、搬送ローラ26-1,27-1を右回りに回転させる一方で、搬送ローラ26-2,27-2を左回りに回転させる。これにより、搬送路P1における第一読取対象媒体の搬送方向が+X方向から-X方向に逆転する。第一読取対象媒体の搬送方向が+X方向から-X方向に逆転することに伴って第一読取対象媒体の後端が透過型光センサ25まで達すると、投光器25Tから投射された光が第一読取対象媒体によって遮られるため、第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに減少する。
【0037】
CPU21は、第一読取対象媒体の搬送方向を+X方向から-X方向へ逆転させた時点で、媒体読取部17-1,17-2による第一読取対象媒体の読取を開始する。搬送路P1での第一読取対象媒体の-X方向への搬送に伴って、第一読取対象媒体は媒体読取部17-1,17-2によって読み取られる。媒体読取部17-1によって第一読取対象媒体の上面が読み取られ、媒体読取部17-2によって第一読取対象媒体の下面が読み取られる。読取が為された後の第一読取対象媒体は、開口部O1Lから排出される。
【0038】
また、第一読取対象媒体の-X方向への搬送に伴って第一読取対象媒体の先端が透過型光センサ25を過ぎた時点で、投光器25Tから投射された光が受光器25Rによって受光されるため、第二受光レベルがローレベルLからハイレベルHに増加する。CPU21は、搬送路P1における第一読取対象媒体の-X方向への搬送に伴って第二受光レベルがハイレベルHからローレベルLに一旦減少した後、再びローレベルLからハイレベルHに増加した時点から所定時間だけ経過後に、搬送ローラ26-1,26-2,27-1,27-2の回転を停止させる。
【0039】
<信号処理器の構成>
図6は、本開示の実施例1の信号処理器の構成例を示す図である。
図6において、信号処理器50は、パルス発生器51と、充放電器52と、制御器53と、スイッチ54とを有する。充放電器52は、電荷を蓄積することと、蓄積した電荷を放出することが可能なコンデンサ(図示せず)を有する。制御器53の一例として、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサが挙げられる。
【0040】
スキャナ1がスリープモードにあるときに、電力供給器60から信号処理器50に電力が供給される。また、スキャナ1が動作モードにあるときに、スイッチ54を介して、電力供給器60からCPU21に電力が供給される。スキャナ1がスリープモードにあるときのスキャナ1の消費電力は例えば0.3W程度であり、スキャナ1が動作モードにあるときのスキャナ1の消費電力は例えば9W程度である。
【0041】
<スキャナにおける処理手順>
図7は、本開示の実施例1のスキャナにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、スキャナ1がスリープモードにあるときに開始される。また、
図7に示すフローチャートの開始時点で、スイッチ54はオフになっており、電力供給器60からCPU21への電力の供給は行われていない。
【0042】
ステップS100では、パルス発生器51はパルス信号を発生し、発生したパルス信号を投光器24T及び充放電器52へ出力し、投光器24Tは、入力されるパルス信号に従ってパルス点灯する。例えば、パルス発生器51は、デューティ比50%の矩形波のパルス信号を発生し、投光器24Tは、投光量がパルス信号に応じて一定時間T1毎に第一投光量QHと第二投光量QLとに変化する光(以下では「パルス光」と呼ぶことがある)を搬送路P1に向かって投射する。
【0043】
次いで、ステップS105では、制御器53は、パルス光が受光器24Rによって受光されているか否かを判定する。例えば、制御器53は、時間T1中に第一受光レベルがハイレベルHになる時間があるときは、パルス光が受光器24Rによって受光されていると判定し、第一受光レベルが時間T1だけ継続してローレベルLにあるときは、パルス光が受光器24Rによって受光されていないと判定する。パルス光が受光器24Rによって受光されていないときは(ステップS105:No)、処理はステップS110へ進み、パルス光が受光器24Rによって受光されているときは(ステップS105:Yes)、処理はステップS115へ進む。
【0044】
ステップS110では、制御器53は、充放電器52を充電させる。すなわち、ステップS110では、制御器53は、パルス発生器51から充放電器52へ出力されるパルス信号の電荷をコンデンサに蓄積するように充放電器52を制御する。ステップS110の処理後、処理はステップS120へ進む。
【0045】
一方で、ステップS115では、制御器53は、充放電器52を放電させる。すなわち、ステップS115では、制御器53は、コンデンサに蓄積されている電荷をコンデンサから放出するように充放電器52を制御する。ステップS115の処理後、処理はステップS100に戻る。
【0046】
ステップS120では、制御器53は、充放電器52における充電量、つまり、充放電器52が有するコンデンサに蓄積されている電荷量が、閾値THC以上であるか否かを判定する。充電量が閾値THC以上であるときは(ステップS120:Yes)、制御器53は、搬送路P1に第一読取対象媒体が存在すると判定し、処理はステップS125へ進む。一方で、充電量が閾値THC未満であるときは(ステップS120:No)、制御器53は、搬送路P1に第一読取対象媒体が存在しないと判定し、処理はステップS100に戻る。
【0047】
ステップS125では、制御器53は、オフになっているスイッチ54をオンにすることにより、電力供給器60からCPU21への電力の供給を開始する。また、ステップS125では、制御器53は、パルス発生器51でのパルス信号の発生を停止する。
【0048】
次いで、ステップS130では、ステップS125で電力の供給を開始されたCPU21は、投光器24Tが投射する光の投光量を第一投光量QHで一定に保つことで、投光器24Tを常時点灯させる。ステップS130の処理後、処理は終了する。
【0049】
<スキャナの動作>
図8及び
図9は、本開示の実施例1のスキャナの動作例の説明に供する図である。
図8には、充放電器52における充電量が閾値THCに達する前にパルス光が受光器24Rに受光された場合(以下では「場合C1」と呼ぶことがある)を示し、
図9には、充放電器52における充電量が閾値THC以上になった場合(以下では「場合C2」と呼ぶことがある)を示す。以下、場合C1と場合C2とに分けて、スキャナ1の動作例について説明する。場合C1,C2の何れでも、各々の間隔が一定の間隔T1のタイミングt1~t25の各タイミングにおいてステップS105,S120(
図7)の判定が行われる。
【0050】
<場合C1(
図8)>
図8において、タイミングt1~t6の各タイミングでは、時間T1中に第一受光レベルがハイレベルHになる時間があるため、制御器53は、受光器24Rがパルス光を受光していると判定し(ステップS105:Yes)、充放電器52を放電させる(ステップS115)。
【0051】
タイミングt6からタイミングt7までの時間T1には、第一受光レベルがハイレベルHになる時間がなく、第一受光レベルが時間T1だけ継続してローレベルLにあるため、タイミングt7において、制御器53は、受光器24Rがパルス光を受光していないと判定し(ステップS105:No)、充放電器52を充電させる(ステップS110)。同様に、タイミングt8~t12の各タイミングにおいても、制御器53は、受光器24Rがパルス光を受光していないと判定し(ステップS105:No)、充放電器52を充電させる(ステップS110)。また、タイミングt7~t12の各タイミングでは、充放電器52における充電量が閾値THC未満であるため(ステップS120:No)、処理はステップS120からステップS100に戻る。
【0052】
タイミングt12からタイミングt13までの時間T1には、第一受光レベルがハイレベルHになる時間があるため、タイミングt13において、制御器53は、受光器24Rがパルス光を受光していると判定し(ステップS105:Yes)、充放電器52を放電させる(ステップS115)。
【0053】
以下、タイミングt14~t20における動作はタイミングt1~t6における動作と同様であり、タイミングt21~t25における動作はタイミングt7~t12における動作と同様である。
【0054】
<場合C2(
図9)>
図9において、タイミングt1~t6の各タイミングでは、時間T1中に第一受光レベルがハイレベルHになる時間があるため、制御器53は、受光器24Rがパルス光を受光していると判定し(ステップS105:Yes)、充放電器52を放電させる(ステップS115)。
【0055】
タイミングt6からタイミングt7までの時間T1には、第一受光レベルがハイレベルHになる時間がなく、第一受光レベルが時間T1だけ継続してローレベルLにあるため、タイミングt7において、制御器53は、受光器24Rがパルス光を受光していないと判定し(ステップS105:No)、充放電器52を充電させる(ステップS110)。同様に、タイミングt8~t13の各タイミングにおいても、制御器53は、受光器24Rがパルス光を受光していないと判定し(ステップS105:No)、充放電器52を充電させる(ステップS110)。その結果、タイミングt13において充放電器52の充電量が閾値THC以上となるため(ステップS120:Yes)、タイミングt13では、制御器53は、搬送路P1に第一読取対象媒体が存在すると判定し、電力供給器60からCPU21への電力の供給を開始するとともに、パルス発生器51でのパルス信号の発生を停止する(ステップS125)。さらに、タイミングt13で電力の供給を開始されたCPU21は、タイミングt13以降において、投光器24Tでの投光量を第一投光量QHで一定に保つことで、投光器24Tを常時点灯させる。
【0056】
以上、実施例1について説明した。
【0057】
[実施例2]
CPU21での上記説明における各処理の全部または一部は、各処理に対応するプログラムをCPU21に実行させることによって実現しても良い。例えば、上記説明における各処理に対応するプログラムがメモリ29に記憶され、プログラムがCPU21によってメモリ29から読み出されて実行されても良い。また、プログラムは、任意のネットワークを介してスキャナ1に接続されたプログラムサーバに記憶され、そのプログラムサーバからスキャナ1にダウンロードされて実行されたり、スキャナ1が読み取り可能な記録媒体に記憶され、その記録媒体から読み出されて実行されても良い。スキャナ1が読み取り可能な記録媒体には、例えば、メモリカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD、及び、Blu-ray(登録商標)ディスク等の可搬の記憶媒体が含まれる。また、プログラムは、任意の言語や任意の記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。また、プログラムは必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールや複数のライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものも含む。
【0058】
以上、実施例2について説明した。
【0059】
以上のように、本開示の画像読取装置(実施例のスキャナ1)は、搬送路(実施例の搬送路P1)と、CPU(実施例のCPU21)と、発生器(実施例のパルス発生器51)と、センサ(実施例の透過型光センサ24)と、充放電器(実施例の充放電器52)と、制御器(実施例の制御器53)とを有する。搬送路では、読取の対象となる媒体が搬送される。発生器は、パルス信号を発生する。センサは、パルス信号に応じたパルス光を搬送路に向かって投射する投光器(実施例の投光器24T)と、搬送路を挟んで投光器に対向して配置される受光器(実施例の受光器24R)とを有する。充放電器は、パルス信号の電荷を蓄積すること、及び、蓄積された電荷を放出することが可能である。制御器は、パルス光が受光器によって受光されているときに充放電器に電荷を放出させる一方で、媒体によってパルス光が遮られることによりパルス光が受光器によって受光されていないときに充放電器に電荷を蓄積させる。そして、制御器は、電荷量が閾値以上になった時点でCPUへの電力の供給を開始する。
【0060】
こうすることで、搬送路へ媒体が挿入されたことをCPUを用いずに検出することができるため、搬送路に媒体が挿入された時点でCPUへの電力の供給を開始することができる。よって、搬送路への媒体の挿入前には、消費電力が大きいCPUへの電力の供給を停止することができるためスキャナの消費電力を抑制できる。換言すれば、搬送路へ媒体が挿入されたことを省電力で検出することができる。
【0061】
また、投光器は、CPUへ電力の供給が開始される前はパルス光を投射する一方で、CPUへ電力の供給が開始された後は常時点灯する。
【0062】
こうすることで、CPUへ電力の供給が開始される前の消費電力をさらに抑制することができるとともに、CPUへ電力の供給が開始された後の媒体有無の検出タイミングの設定の自由度をCPUへの電力供給開始前よりも高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 スキャナ
21 CPU
24 透過型光センサ
24T 投光器
24R 受光器
51 パルス発生器
52 充放電器
53 制御器
P1 搬送路