(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】発泡体形成用組成物、発泡体、発泡体の製造方法及び皮革用材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/30 20060101AFI20240222BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20240222BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20240222BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240222BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240222BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240222BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240222BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240222BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240222BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20240222BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20240222BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20240222BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20240222BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240222BHJP
D06N 3/14 20060101ALI20240222BHJP
B29K 75/00 20060101ALN20240222BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240222BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
C08J9/30 CFF
B29C39/10
B29C39/24
B32B5/18
B32B27/26
B32B27/40
C08G18/00 C
C08G18/76
C08K5/09
C08K5/42
C08L1/00
C08L3/00
C08L5/00
C08L75/04
D06N3/14 101
B29K75:00
B29K105:04
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2020110899
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-217006(JP,A)
【文献】特開2020-075441(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162986(WO,A1)
【文献】特開2007-031482(JP,A)
【文献】特開平05-295072(JP,A)
【文献】特開2020-109152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/10
B29C 39/24
B32B 1/00-43/00
C08G 18/00-18/87
C08G 71/00-71/04
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
D06N 1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(B)カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(C)架橋剤、(D)起泡剤、(E)多糖類系増粘剤、及び、(F)水を含有することを特徴とする発泡体形成用組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、有機ポリイソシアネートに由来する構造単位を有し、該構造単位に芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の発泡体形成用組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、有機ポリイソシアネートに由来する構造単位を有し、かつ、該有機ポリイソシアネートに由来する構造単位の総量の5~60モル%が芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡体形成用組成物。
【請求項4】
前記(D)成分が下記化合物(D1)と下記化合物(D2)とを含むものであることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の発泡体形成用組成物;
[化合物(D1)]
下記一般式(1):
R
1COOX ・・・(1)
(式中、R
1はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基であり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物;
[化合物(D2)]
下記一般式(2):
【化1】
(式中、2つのAはそれぞれ独立に、式:R
2O-、R
2N(H)-、(R
2)
2N-及びXO-で表される基からなる群から選択されるいずれかであり、かつ、該2つのAのうちの少なくとも一方が式:R
2O-、R
2N(H)-及び(R
2)
2N-で表される基からなる群から選択されるいずれかであるという条件を満たし、R
2はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基であり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物。
【請求項5】
前記(D)成分が、下記化合物(D3)を更に含有することを特徴とする請求項4に記載の発泡体形成用組成物;
[化合物(D3)]
下記一般式(3):
R
3-OSO
3X ・・・(3)
(R
3は炭素数6~30のアルキル基、炭素数6~30のアルケニル基及び炭素数6~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかであり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物。
【請求項6】
前記(E)成分が、グアガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、及び、カラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類からなることを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の発泡体形成用組成物。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の発泡体形成用組成物を発泡させた発泡組成物を得る工程と、該発泡組成物を基材に塗布し、乾燥硬化せしめて基材上に前記発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層が形成された発泡体を得る工程とを含むことを特徴とする発泡体の製造方法。
【請求項8】
前記発泡組成物を得る工程において、前記発泡体形成用組成物を1.5~5倍の発泡倍率で発泡させることを特徴とする請求項7に記載の発泡体の製造方法。
【請求項9】
基材と、
該基材上に積層された、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層と、
を備えることを特徴とする発泡体。
【請求項10】
請求項9に記載の発泡体を備えることを特徴とする皮革用材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体形成用組成物、発泡体、発泡体の製造方法並びに皮革用材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然皮革の代替品として、ポリウレタン樹脂と不織布からなる繊維基材とを備える人工皮革、及びポリウレタン樹脂と織物又は編物からなる繊維基材とを備える合成皮革が製造されてきている。このような人工皮革や合成皮革といった擬革様物は、例えば、含浸又は塗布により繊維基材にポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を付与させたものを、ポリウレタン樹脂に対し貧溶媒で、かつ前記有機溶剤と相溶性のある凝固液(通常は水)中に通して凝固させ、次いで、水洗、乾燥させる湿式凝固法と呼ばれる方法で製造されていた。
【0003】
しかしながら、このような湿式凝固法において多く使用されている有機溶剤は、引火性が強く火災の危険性がある他、作業環境の悪化や大気、水質等の環境汚染の問題も懸念されていた。このような問題点を解消するために、発生する有機溶剤を回収する工程を組み入れた製造方法も実施されているが、多額の廃棄コストや労力がかかるといった課題が残っていた。そのため、近年では、繊維基材に固着するポリウレタン樹脂を有機溶剤タイプから水性ポリウレタン樹脂に移行すべく検討がなされてきている。そして、人工皮革、合成皮革などの擬革様物を形成するための材料(皮革用材)に、基材上に水性ポリウレタン樹脂の発泡硬化物からなる発泡層が積層されてなる発泡体を利用することが提案されており、そのような発泡体を製造するための種々の方法が提案されてきた。
【0004】
例えば、特開2005-273083号公報(特許文献1)には、繊維基材に、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イミノ基及びこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を分子骨格中に有する固形分濃度が55%以上の水系ポリウレタン樹脂を含有する発泡体形成用組成物を発泡させた発泡コーティング層を形成した発泡基材(A層)と、水系ポリウレタン樹脂を用いて形成される表皮層(C層)とを、水系ポリウレタン樹脂及びポリイソシアネート系架橋剤を含有する接着剤(B層)を用いてドライラミネート法により接着することで発泡体を得る方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献1に記載のような従来の発泡体の製造方法においては、用いる発泡体形成用組成物の発泡倍率を十分に高いものとすることができず、かかる発泡体形成用組成物を用いて得られる発泡体を皮革用材として利用して擬革様物(人工皮革、合成皮革等)を製造した場合には、十分な風合いを有するものとすることができなかった。
【0005】
また、特開2006-070232号公報(特許文献2)には、ポリエーテル系又はポリカーボネート系の水性ウレタンの単独あるいはその混合乃至共重合物からなる水性ウレタン主剤の分子鎖の一部にカルボキシル基を導入し、かつ高曇点界面活性剤と共に強制的に水分散させた感熱ゲル化タイプの水性ウレタン分散液を撹拌しながら、少なくとも起泡剤、整泡剤、オキサゾリン系架橋剤、更に増粘剤を添加して得られる発泡体形成用組成物を機械発泡した後に基材に塗布し、乾燥・熱処理を1回以上行うことを特徴とする発泡体の製造方法が記載されている。しかしながら、このような特許文献2に記載のような従来の発泡体の製造方法においては、得られる発泡体の材料破壊強度を十分なものとすることができず、また、表皮層(基材)と発泡層との接着性も十分なものとすることができなかった。
【0006】
さらに、国際公開第2012/008336号(特許文献3)には、(A)水系エマルジョン性ポリウレタン樹脂と、(B)アンモニウム塩と、(C)ノニオン性増粘剤とを含み、(B)成分の配合量が、(A)成分の固形分100質量部に対して0.25~10質量部である水系分散液(I)からなる発泡体形成用組成物を調製する工程(1)と、水系分散液(I)を基材の少なくとも一方の面に塗布して塗膜を形成する工程(2)と、当該塗膜を感熱ゲル化処理してゲル化膜を形成する工程(3)と、当該ゲル化膜を乾燥固化させて皮膜を形成する工程(4)とを有し、かつ、工程(1)において、得られた水系分散液(I)を発泡倍率1.1~2.5倍に発泡する発泡体の製造方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献3に記載のような従来の発泡体の製造方法においては、上記水系分散液(I)からなる発泡体形成用組成物を発泡させて塗膜を形成した後に硬化させた場合に、塗膜の収縮が大きく、発泡層の厚みが十分なものとならず、得られる発泡体を皮革用材として利用して擬革様物(人工皮革、合成皮革等)を製造した場合に、十分な風合いを有するものとすることができなかった。
【0007】
また、国際公開第2014/162986号(特許文献4)には、脂肪族イソシアネートとメラミン誘導体とのいずれか一方、ウレタンエマルション、およびアニオン系起泡安定剤を含む原料である発泡体形成用組成物をメカニカルフロス法により発泡させて、前記原料のフロスを形成し、前記フロスを加熱して乾燥させるポリウレタン発泡体の製造方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献4に記載のような従来の発泡体の製造方法においては、用いる前記発泡体形成用組成物の起泡性が十分なものではなく、例えば発泡倍率が3倍以上となるように発泡させようとした場合にはかなりの長時間を要していた(例えば、発泡倍率が3倍となるまでの時間であっても20分以上となるような長時間を要し、更に発泡倍率が4倍となるまでの時間は20分を超えるような長時間を要していた)。また、特許文献4に記載のような従来の発泡体の製造方法において、上記原料の起泡性を高めるために仮に発泡剤の配合量を増やした場合には、発泡体の強度が低下してしまうという問題があった。
【0008】
さらに、特開2019-112564号公報(特許文献5)においては、(A)スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(B)強制乳化型水性ポリウレタン樹脂、(C)架橋剤、(D)起泡剤、(E)増粘剤、及び、(F)水を含有する発泡体形成用組成物が開示されている。このような発泡体形成用組成物は、水性ポリウレタン樹脂を含む発泡体形成用組成物でありながら、起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能であるとともに、その組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層の厚みを十分なものとすることも可能であり、更には、その組成物を用いて皮革用材を製造した場合に、得られる皮革用材に十分な水準の風合いと材料破壊強度とを付与することが可能であった。しかしながら、このような特許文献5に記載のような発泡体形成用組成物においても、皮革用材を製造した場合に、その材料破壊強度をより高い水準のものとするといった点においては改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-273083号公報
【文献】特開2006-070232号公報
【文献】国際公開第2012/008336号
【文献】国際公開第2014/162986号
【文献】特開2019-112564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、水性ポリウレタン樹脂を含む発泡体形成用組成物でありながら、起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能であるとともに、その組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層の厚みを十分なものとすることが可能であり、しかも、その組成物を用いて皮革用材を製造した場合に、得られる皮革用材に十分な風合いと、より高い水準の材料破壊強度とを付与することが可能な発泡体形成用組成物;その発泡体形成用組成物を用いた発泡体の製造方法;その発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層を備える発泡体;並びに、その発泡体を備える皮革用材;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(B)カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(C)架橋剤、(D)起泡剤、(E)多糖類系増粘剤、及び、(F)水を含有することにより、得られる発泡体形成用組成物が水性ポリウレタン樹脂を含む組成物でありながら、起泡性が十分に高くなり効率よく発泡可能なものとなるとともに、その組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層の厚みを十分なものとすることも可能となり、更には、その組成物を用いて皮革用材を製造した場合に、得られる皮革用材に十分な風合いと、より高い水準の材料破壊強度とを付与することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の発泡体形成用組成物は、(A)スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(B)カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(C)架橋剤、(D)起泡剤、(E)多糖類系増粘剤、及び、(F)水を含有することを特徴とするものである。
【0013】
上記本発明の発泡体形成用組成物においては、前記(B)成分(前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)が、有機ポリイソシアネートに由来する構造単位を有し、該構造単位に芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位が含まれていることが好ましい。また、上記本発明にかかる前記(B)成分(前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)は、有機ポリイソシアネートに由来する構造単位を有し、かつ、該有機ポリイソシアネートに由来する構造単位の総量の5~60モル%が芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位であることがより好ましい。
【0014】
さらに、本発明にかかる前記(D)成分(前記起泡剤)は、下記化合物(D1)と下記化合物(D2)とを含むものであることが好ましく、また、かかる(D)成分が下記化合物(D1)と下記化合物(D2)とを含む場合、下記化合物(D3)を更に含有することがより好ましい。
【0015】
[化合物(D1)]
下記一般式(1):
R1COOX ・・・(1)
(式中、R1はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基であり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物。
【0016】
[化合物(D2)]
下記一般式(2):
【0017】
【0018】
(式中、2つのAはそれぞれ独立に、式:R2O-、R2N(H)-、(R2)2N-及びXO-で表される基からなる群から選択されるいずれかであり、かつ、該2つのAのうちの少なくとも一方が式:R2O-、R2N(H)-及び(R2)2N-で表される基からなる群から選択されるいずれかであるという条件を満たし、R2はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基であり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物。
【0019】
[化合物(D3)]
下記一般式(3):
R3-OSO3X ・・・(3)
(R3は炭素数6~30のアルキル基、炭素数6~30のアルケニル基及び炭素数6~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかであり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物。
【0020】
上記本発明の発泡体形成用組成物においては、前記(E)成分(多糖類系増粘剤)が、グアガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、及び、カラギーナンからなる群から選択される少なくとも1種の多糖類からなることが好ましい。
【0021】
また、本発明の発泡体の製造方法は、上記本発明の発泡体形成用組成物を発泡させた発泡組成物を得る工程と、該発泡組成物を基材に塗布し、乾燥硬化せしめて基材上に前記発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層が形成された発泡体を得る工程とを含むことを特徴とする方法である。
【0022】
また、上記本発明の発泡体の製造方法においては、前記発泡組成物を得る工程において、前記発泡体形成用組成物を1.5~5倍の発泡倍率で発泡させることが好ましい。
【0023】
本発明の発泡体は、基材と、該基材上に積層された、上記本発明の発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層とを備えることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の皮革用材は、上記本発明の発泡体を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、水性ポリウレタン樹脂を含む発泡体形成用組成物でありながら、起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能であるとともに、その組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層の厚みを十分なものとすることが可能であり、しかも、その組成物を用いて皮革用材を製造した場合に、得られる皮革用材に十分な風合いと、より高い水準の材料破壊強度とを付与することが可能な発泡体形成用組成物;その発泡体形成用組成物を用いた発泡体の製造方法;その発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層を備える発泡体;並びに、その発泡体を備える皮革用材;を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0027】
[発泡体形成用組成物]
本発明の発泡体形成用組成物は、(A)スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(B)カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、(C)架橋剤、(D)起泡剤、(E)多糖類系増粘剤、及び、(F)水を含有することを特徴とするものである。以下、先ず、各成分を分けて説明する。
【0028】
<(A)成分:第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂>
本発明において(A)成分として含有される第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂である(以下、場合により、このような(A)成分を単に「第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂」と称する)。ここで、第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)に関して「水性」とは、そのポリウレタン樹脂の水中濃度が40質量%である乳化分散液(溶媒:水)を調製した後に該乳化分散液を20℃で12時間静置しても分離や沈降が観察されないような状態とすることが可能であることを意味する。
【0029】
このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)は、スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有するものである。このように、本発明にかかる自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)はスルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有するため、乳化剤(樹脂を乳化させるための界面活性剤)を用いることなく、水中に乳化分散することが可能な自己乳化性を有するものとなる。このように、前記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)は、乳化剤(樹脂を乳化させるための界面活性剤)を用いることなく水中に乳化分散することが可能なタイプの水性ポリウレタン樹脂、すなわち、自己乳化が可能なタイプ(自己乳化性を有するタイプ)の水性ポリウレタン樹脂である。
【0030】
このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)は、スルホ基及び/又はスルホネート基からなる親水性官能基を有し、界面活性剤を用いることなく乳化分散できる自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であればよく、スルホ基及び/又はスルホネート基以外に、カルボキシ基、カルボキシレート基、第4級アンモニウム基などの他の親水性官能基を有していてもよい。なお、本発明において「スルホ基」とは式:-SO3Hで表される基をいい、「スルホネート基」とは式:-SO3
-で表される基をいい、「カルボキシ基」とは式:-COOHで表される基をいい、「カルボキシレート基」とは式:-COO-で表される基をいう。
【0031】
このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)においては、スルホ基及び/又はスルホネート基以外に、カルボキシ基、カルボキシレート基、第4級アンモニウム基などの他の親水性官能基を有している場合、他の親水性官能基を含む全ての親水性官能基中におけるスルホ基及び/又はスルホネート基の含有割合は70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。このようなスルホ基及びスルホネート基の含有割合が前記下限未満では、ポリウレタン樹脂の水分散液を製造した場合に樹脂の割合を高濃度化(高固形分化)することが困難となり、得られる発泡体形成用組成物に所望の性能を発揮させることが困難となる傾向にある。
【0032】
このように、第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)は、スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有し、かつ、スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が該樹脂中に含まれる全ての親水性官能基(スルホ基、スルホネート基及びそれ以外の全ての親水性の官能基)の合計量に対して70~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましく、90~100モル%であることが特に好ましい。
【0033】
また、このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)としては、より高い発泡倍率で発泡させることを可能としつつ、より高い剥離強度を得ることが可能であるといった観点から、前記親水性官能基として、実質的に、樹脂骨格中にスルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基のみを有する水性ポリウレタン樹脂(例えば、全ての親水性の官能基の総量に対して98モル%以上の割合でスルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を含むもの等)が好ましく、中でも、前記親水性官能基として、樹脂骨格中にスルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基のみを有する水性ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0034】
さらに、このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)としては、より高い発泡倍率で発泡させることを可能としつつ、より高い剥離強度を得ることが可能であるといった観点から、スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基の含有量が、ポリウレタン樹脂100gあたり0.1~15ミリ当量であることが好ましい。なお、同様の観点から、(A)成分が、親水性官能基(アニオン性基)として、スルホ基及び/又はスルホネート基とともに、カルボキシ基、カルボキシレート基を含有する場合には、これらの親水性官能基の含有量が、ポリウレタン樹脂100gあたり0.1~15ミリ当量であることが好ましい。なお、ポリウレタン樹脂100gあたり親水性官能基の含有量は、例えば、親水性官能基として、スルホ基及び/又はスルホネート基とともに、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を含有する場合、ポリウレタン樹脂100gあたりのSO3量とCOO量との合計を計算することで求めることができる(なお、親水性官能基としてスルホ基及び/又はスルホネート基のみを含有する場合には、ポリウレタン樹脂100gあたりのSO3量の合計を計算することで求めることができる)。
【0035】
このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)としては特に制限されるものではないが、例えば、(a)有機ポリイソシアネート、(b)ポリオール、(c)スルホ基及び/又はスルホネート基と2個以上の活性水素とを有する化合物を反応させて得られるスルホ基及び/又はスルホネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を、水中に自己乳化させた後、(d)鎖伸長剤を用いて、鎖伸長反応させることにより得られる、スルホ基及び/又はスルホネート基を有する水性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。このような(a)~(d)成分を分けて説明する。
【0036】
(a)有機ポリイソシアネート
このような水性ポリウレタン樹脂の原料として用いられる有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)としては、特に制限されず、2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート、2個以上のイソシアネート基を有する脂環式ポリイソシアネート及び2個以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0037】
このような2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等を挙げることができる。また、前記2個以上のイソシアネート基を有する脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート化合物等を挙げることができる。更に、前記2個以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。また、このような(a)成分として用いられる有機ポリイソシアネートは、前述のような、2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート、2個以上のイソシアネート基を有する脂環式ポリイソシアネート及び2個以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物以外に、これらのポリイソシアネート化合物のアルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコールとのプレポリマー型変性体、これらのポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体、これらのポリイソシアネート化合物のウレア変性体、これらのポリイソシアネート化合物のビュレット変性体、これらのポリイソシアネート化合物のダイマー化又はトリマー化反応生成物、等を適宜利用することもできる。このような有機ポリイソシアネート((a)成分)は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
また、このような有機ポリイソシアネートの中でも、形成される皮膜の耐黄変性、熱安定性及び光安定性の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
【0039】
(b)ポリオール
このような水性ポリウレタン樹脂の原料として用いられるポリオール(前記(b)成分)としては、2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限されず、ポリウレタン樹脂の原料として利用することが可能な公知のポリオールを適宜用いることができる。このようなポリオール(前記(b)成分)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルエステルポリオール等を適宜使用することができる。
【0040】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)アジペートジオール、1,6-ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物、ノナンジオールとダイマー酸の重縮合物、エチレングリコールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物等が挙げられる。
【0041】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジオールと炭酸ジエステルを原料とし、エステル交換触媒を用いて製造されるポリカーボネートジオールを挙げることができる。前記ジオールとしてはヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20のジオールを挙げることができ、直鎖又は分岐鎖の鎖状基、環状基、いずれの構造のジオールであってもよい。また、前記ヘテロ原子としては酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられる。また、前記炭酸ジエステルとしては、例えば、アルキルカーボネート、アリールカーボネート、及びアルキレンカーボネートなどが挙げられる。このようなポリカーボネートジオールとしては、市販品を適宜利用してもよく、例えば、三菱化学株式会社製のBENEBiOL NLシリーズ、旭化成株式会社製のデュラノールシリーズ、株式会社クラレ製のクラレポリオールシリーズ等を挙げることができる。
【0042】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、トリメチレンオキサイド及びテトラメチレンオキサイド等の炭素数2~4のアルキレンオキサイドの単独付加重合物又は共付加重合物であるジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールに前記炭素数2~4のアルキレンオキサイドをランダム又はブロック付加させたポリオールが挙げられる。
【0043】
このようなポリオール(前記(b)成分)は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このようなポリオールの重量平均分子量としては、500~5,000であることが好ましく、1,000~3,000であることがより好ましい。また、得られるポリウレタン樹脂によって基材に十分な耐久性を付与できるという観点から、前記ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
【0044】
(c)スルホ基及び/又はスルホネート基と2個以上の活性水素とを有する化合物
スルホ基及び/又はスルホネート基と2個以上の活性水素とを有する化合物(前記(c)成分)としては、例えば、3,4-ジアミノブタンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸、エチレンジアミンブチルスルホン酸、1,2-または1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、2-(3-アミノプロピルアミノ)-エタンスルホン酸、2,4-ジアミノベンゼンスルホン酸などのジアミノスルホン酸;及びそれらの塩(例えばアルカリ金属の塩等)が挙げられる。
【0045】
また、前記スルホ基及び/又はスルホネート基と2個以上の活性水素とを有する化合物としては、2-ブテン-1,4-ジオールへの重亜硫酸ナトリウムの付加物などのジヒドロキシスルホン酸;スルホ基及びスルホネート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有するジオールと芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等とを反応させて得られるペンダント型の親水性官能基を有するポリエステルポリオール;等も挙げられる。これらの(c)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
さらに、得られる水性ポリウレタン樹脂にカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を導入させる場合には、前記(c)成分とともに、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物を利用することが好ましい。このようなカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物としては、例えば、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシカルボン酸などを挙げることができる。
【0047】
(d)鎖伸長剤
このような水性ポリウレタン樹脂の原料として用いられる鎖伸長剤((d)成分)としては、特に制限されないが、例えば、アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物を挙げることができる。
【0048】
このようなアミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、ヒドラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン等のポリアミン;ジ第一級アミン及びモノカルボン酸から誘導されるアミドアミン;ジ第一級アミンのモノケチミン等の水溶性アミン誘導体;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、琥珀酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、1,1’-エチレンヒドラジン、1,1’-トリメチレンヒドラジン、1,1’-(1,4-ブチレン)ジヒドラジン等のヒドラジン誘導体が挙げられる。このようなアミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
〈第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の調製方法について〉
前記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分:以下、場合により「スルホ基及び/又はスルホネート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂」と称する)は、上記(a)成分、上記(b)成分、上記(c)成分を反応させて、スルホ基及び/又はスルホネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を調製し、水中に自己乳化させた後、(d)鎖伸長剤を用いて、鎖伸長反応させることにより得られるものを好適に利用できる。
【0050】
このように、スルホ基及び/又はスルホネート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、スルホネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーの中和物(以下、場合により「SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物」という)の自己乳化による水への乳化分散及び鎖伸長反応により得ることができ、このような調製方法によれば、かかるポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂の乳化分散液(後述の水分散液(I)として好適に利用することが可能)として得ることができる。なお、このような自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、前記乳化分散液から樹脂成分のみを取り出して利用してもよいが、組成物の調製がより容易となることから、ポリウレタン樹脂の乳化分散液の状態で組成物の調製に利用することが好ましい。
【0051】
SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物は、スルホ基及び/又はスルホネート基と2個以上の活性水素とを有する化合物(前記(c)成分)に由来するスルホ基が中和されたスルホネート基(-SO3
-)を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物であり、前記(a)有機ポリイソシアネート、前記(b)ポリオール及び(c)スルホ基及び/又はスルホネート基と2個以上の活性水素とを有する化合物を反応させて得られるものである。このようなSUイソシアネート基末端プレポリマー中和物を得るための具体的な方法としては特に制限されず、例えば、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等により製造することができる。この時の反応温度は、40~150℃であることが好ましい。
【0052】
また、このような反応の際には、必要に応じて2個以上の活性水素原子を有する低分子量鎖延長剤を使用することができる。前記低分子量鎖延長剤としては、分子量が400以下のものが好ましく、特に300以下のものが好ましい。また、前記低分子量鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミンが挙げられる。さらに、前記低分子量鎖延長剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
さらに、前記反応の際には、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫-2-エチルヘキサノエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等の反応触媒を添加することができる。また、反応の際又は反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加することができる。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0054】
前記(c)スルホ基と2個以上の活性水素とを有する化合物に由来するスルホ基の中和は、イソシアネート基末端プレポリマーの調製と同時であってもよく、調製前であっても調製後であってもよい。このような中和は、適宜公知の方法を用いて行うことができ、このような中和に用いる化合物としては、特に制限されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチル-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルモノエタノールアミン、N,N-ジエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;アンモニア等が挙げられる。これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン類が特に好ましい。
【0055】
前記SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物の水への乳化分散方法に特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等の乳化機器を用いた方法を挙げることができる。また、前記SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物を水に乳化分散させる際には、該プレポリマー中和物を、特に乳化剤を用いずに室温~40℃の温度範囲で自己乳化により水に乳化分散させて、イソシアネート基と水との反応を極力抑えることが好ましい。さらに、このように乳化分散させる際には、必要に応じて、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加することができる。
【0056】
前記SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物の鎖伸長反応は、前記SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物に、前記(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物を添加するか、あるいは、前記(d)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物に、前記SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物を添加することにより行うことができる。このような鎖伸長反応は、反応温度20~40℃で行うことが好ましく、通常は30~120分間で完結する。
【0057】
このようなスルホ基及び/又はスルホネート基を有する水性ポリウレタン樹脂を調製するための方法においては、前記乳化分散及び前記鎖伸長反応は同時であってもよく、前記SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめた後に鎖伸長反応せしめても鎖伸長反応せしめた後に乳化分散せしめてもよい。また、SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物を製造する際に前述の有機溶剤を使用した場合には、例えば、鎖伸長反応又は乳化分散後に、減圧蒸留等により有機溶剤を除去することが好ましい。さらに、このような調製方法によってポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂の乳化分散液として得ることができるが、このような乳化分散液においては、乳化剤を更に含有させてもよい。このような乳化剤としては、ポリウレタン樹脂を乳化する際に利用可能な公知の乳化剤を適宜利用でき、中でも、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。また、このような非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、プルロニック型非イオン界面活性剤を特に好適に使用することができる。
【0058】
<(B)第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂>
本発明において(B)成分として含有される第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂である(以下、場合により、このような(B)成分を単に「第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂」と称する)。ここで、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)に関して「水性」とは、そのポリウレタン樹脂の水中濃度が40質量%である乳化分散液(溶媒:水)を調製した後に該乳化分散液を20℃で12時間静置しても分離や沈降が観察されないような状態とすることが可能であることを意味する。
【0059】
このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)は、カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有するものである。このように、本発明にかかる自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)はカルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有するため、乳化剤(樹脂を乳化させるための界面活性剤)を用いることなく、水中に乳化分散することが可能な自己乳化性を有するものとなる。このように、前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)は、乳化剤(樹脂を乳化させるための界面活性剤)を用いることなく水中に乳化分散することが可能なタイプの水性ポリウレタン樹脂、すなわち、自己乳化が可能なタイプ(自己乳化性を有するタイプ)の水性ポリウレタン樹脂である。
【0060】
このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)は、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基からなる親水性官能基を有し、界面活性剤を用いることなく乳化分散できる自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であればよく、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基以外に、スルホ基、スルホネート基、第4級アンモニウム基などの他の親水性官能基を有していてもよい。
【0061】
このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)においては、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基以外に、スルホ基、スルホネート基、第4級アンモニウム基などの他の親水性官能基を有している場合、他の親水性官能基を含む全ての親水性官能基中におけるカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基の含有割合は70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。このようなカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基の含有割合が前記下限未満では、ポリウレタン樹脂の水分散液を製造した場合に樹脂の割合を高濃度化(高固形分化)することが困難となり、得られる発泡体形成用組成物に所望の性能を発揮させることが困難となる傾向にある。
【0062】
このように、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)は、カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を有し、かつ、カルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が該樹脂中に含まれる全ての親水性官能基(カルボキシ基、カルボキシレート基及びそれ以外の全ての親水性の官能基)の合計量に対して70~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましく、90~100モル%であることが特に好ましい。
【0063】
また、このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)としては、より高い発泡倍率で発泡させることを可能としつつ、より高い剥離強度を得ることが可能であるといった観点から、前記親水性官能基として、実質的に、樹脂骨格中にカルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基のみを有する水性ポリウレタン樹脂(例えば、全ての親水性の官能基の総量に対して98モル%以上の割合でカルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基を含むもの等)が好ましく、中でも、前記親水性官能基として、樹脂骨格中にカルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基のみを有する水性ポリウレタン樹脂がより好ましい。このように、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)としては、親水性官能基としてカルボキシ基及び/又はカルボシキレート基のみを有し、その他のアニオン性基や第4級アンモニウム基などのその他のイオン性の親水性官能基を有しない自己乳化型水性ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0064】
さらに、このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)としては、より高い発泡倍率で発泡させることを可能としつつ、より高い剥離強度を得ることが可能であるといった観点からカルボキシ基及びカルボキシレート基からなる群から選択される少なくとも1種の親水性官能基の含有量が、ポリウレタン樹脂100gあたり2~120ミリ当量であることが好ましく、2~60ミリ当量であることがより好ましい。なお、同様の観点から、(B)成分が、親水性官能基(アニオン性基)として、カルボキシ基及びカルボキシレート基とともに、スルホ基、スルホネート基を含有する場合には、これらの親水性官能基の含有量が、ポリウレタン樹脂100gあたり2~120ミリ当量(より好ましくは2~60ミリ当量)であることが好ましい。なお、ポリウレタン樹脂100gあたり親水性官能基の含有量は、例えば、親水性官能基として、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基とともに、スルホ基及び/又はスルホネート基を含有する場合、ポリウレタン樹脂100gあたりのCOO量とSO3量との合計を計算することで求めることができる(なお、親水性官能基として、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基のみを含有する場合には、ポリウレタン樹脂100gあたりのCOO量の合計を計算することで求めることができる)。
【0065】
このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)としては特に制限されるものではないが、例えば、(a)有機ポリイソシアネート、(b)ポリオール、(e)カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物を反応させて得られるカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を、水中に自己乳化させた後、(d)鎖伸長剤を用いて、鎖伸長反応させることにより得られる、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する水性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0066】
また、このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)としては、特に制限されるものではないが、有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)に由来する構造単位を有し、該構造単位中に芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位が含まれていることが好ましい。このように、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂が芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位を含むことで、強度(材料破壊強度)が更に向上する傾向にある。
【0067】
さらに、このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)としては、有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)に由来する構造単位を有し、かつ、該有機ポリイソシアネートに由来する構造単位の総量の5~70モル%(更に好ましくは20~60モル%、特に好ましくは40~60モル%)が芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位であることがより好ましい。このような芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位の含有量が前記下限未満では、該構造単位を利用することによる効果(強度(材料破壊強度)の更なる向上)を十分に得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリウレタン樹脂の水への乳化性が低下する傾向にあるとともに、それに伴って各種物性が低下する傾向にある。以下、このような有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)や、前述の(b)成分、(d)成分及び(e)成分について分けて説明する。
【0068】
(a)有機ポリイソシアネート
このような水性ポリウレタン樹脂の原料として用いられる有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)としては、特に制限されず、上記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)の原料として説明したものと同様のものを好適に利用することができ、例えば、前述の2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート、前述の2個以上のイソシアネート基を有する脂環式ポリイソシアネート及び前述の2個以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートを適宜使用することができる。このような有機ポリイソシアネート((a)成分)は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)を製造する場合には、このような有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)の中でも、形成される皮膜の材料破壊強度の観点から、芳香族ポリイソシアネート化合物と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物の少なくとも一種と、を併用することが好ましい。このような芳香族ポリイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。また、前記脂肪族ポリイソシアネート化合物及び前記脂環式ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
【0070】
また、有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)として、芳香族ポリイソシアネート化合物と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも一種と、を併用する場合において、芳香族ポリイソシアネート化合物の含有比率は、有機ポリイソシアネート(上記(a)成分)の全量に対して5~70モル%であることが好ましく、20~60モル%であることがより好ましく、40~60モル%であることが特に好ましい。芳香族ポリイソシアネート化合物の含有比率が前記上限(70モル%)を超えると、最終的に得られる(B)成分の水への乳化性が低下してしまう傾向にあり、他方、前記下限未満では、芳香族ポリイソシアネート化合物を利用することによる効果(強度(材料破壊強度)の更なる向上)を十分に得ることが困難となる傾向にある。
【0071】
(b)ポリオール
このような水性ポリウレタン樹脂の原料として用いられるポリオール(前記(b)成分)としては、2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限されず、上記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)の原料として説明したものと同様のものを好適に利用することができる。なお、前記(e)成分が2個以上のヒドロキシル基を有する場合、かかる(b)成分として利用するポリオールとしては(e)成分とは異なるもの(例えば、カルボキシ基及びカルボキシレート基を有していないポリオール)を利用することが好ましい。
【0072】
このようなポリオール(前記(b)成分)としては、ポリウレタン樹脂の原料として利用することが可能な公知のポリオールを適宜用いることができ、例えば、前述のポリエステルポリオール、前述のポリカーボネートポリオール、前述のポリエーテルポリオール、前述のエーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルエステルポリオール等を適宜使用することができる。このようなポリオール(前記(b)成分)は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
また、このようなポリオール(前記(b)成分)としては、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)を製造する場合には、製造時に、重量平均分子量500~5000(より好ましくは1000~3000)の高分子量ジオール、及び、分子量400以下の低分子量ジオールの双方を利用することが好ましい。なお、このような「重量平均分子量」としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求められる重量平均分子量を採用し、GPC(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)を用い、移動相:テトラヒドロフラン(THF)、検出器:RI、UV(254nm)、流速:0.25ml/min、カラム:Tsk-gel SuperHZ2000×25cm×2本/SuperHZ4000×15cm×1本、温調:カラムオーブン(40℃)/インレットオーブン(40℃)/RI検出器(35℃)、サンプル濃度:0.2%THF溶液、サンプル注入量:5μlの条件で測定し、重量平均分子量が既知の標準物質(ポリエチレングリコール)の測定結果から得られた検量線を用いて換算することにより求めるられる値を採用することができる。
【0074】
このような重量平均分子量500~5000の高分子量ジオールとしては、2個のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限されず、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール等の他、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルエステルジオール、シリコーンジオール、フッ素ジオールも使用することができる。これらの高分子量ジオールは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
また、このようなポリエステルジオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)アジペートジオール、1,6-ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物、ノナンジオールとダイマー酸の重縮合物、エチレングリコールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物等が挙げられる。前記ポリカーボネートジオールとしては、ジオールと炭酸ジエステルを原料とし、エステル交換触媒を用いて製造されるものが好ましく、ジオールとしては、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20のジオールが挙げられる。炭酸ジエステルとしては、例えばアルキルカーボネート、アリールカーボネート、及びアルキレンカーボネートが挙げられる。また、前記ポリエーテルジオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、トリメチレンオキサイド及びテトラメチレンオキサイド等の炭素数2~4のアルキレンオキサイドの単独付加重合物又は共付加重合物であるジオールが挙げられる。
【0076】
更に、前記シリコーンジオールとしては、ジメチルポリシロキサンの末端及び/又は側鎖に、ヒドロキシ基及び/又はヒドロキシ基を有する有機基を2個導入したものが挙げられ、例えば、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール末端シリコーンオイルが挙げられる。また、前記フッ素ジオールとしては、例えば、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ-1,8-オクタンジオールが挙げられる。
【0077】
また、前記分子量400以下の低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらの低分子量ジオールは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
このような前記分子量400以下の低分子量ジオールとしては、中でも、形成される皮膜の機械的強度の観点から、分子量が300以下の低分子量ジオールがより好ましく、エチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、1,4-ブタンジオールがより好ましい。前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のアルキレン基としてはエチレン基が好ましく、その平均付加モル数はビスフェノールAに対して1~3モルであることが好ましい。
【0079】
このような低分子量ジオールは、形成される皮膜の機械的強度の観点と、皮膜化した場合の耐水性の観点から、上記(a)成分と反応させる際に、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物((e)成分)と同時に反応させること(低分子量ジオールと(e)成分を併用して反応させること)が好ましい。この場合、形成される皮膜の機械的強度の観点から、低分子量ジオールの使用量は、低分子量ジオールと(e)成分との合計量に対して3~40mol%であることが好ましい。
【0080】
(d)鎖伸長剤
このような水性ポリウレタン樹脂の原料として用いられる鎖伸長剤((d)成分)としては、特に制限されず、上記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)の原料として説明したもの(例えば前述のアミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物等)と同様のものを好適に利用することができる。また、このような鎖伸長剤は、1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(e)カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物
カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物(前記(e)成分)としては、例えば、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシカルボン酸などを挙げることができる。このような(e)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0082】
〈第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の調製方法について〉
前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分:以下、場合により「カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂」と称する)は、上記(a)成分、上記(b)成分、上記(e)成分を反応させて、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を調製し、水中に自己乳化させた後、(d)鎖伸長剤を用いて、鎖伸長反応させることにより得られるものを好適に利用できる。
【0083】
このように、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、カルボキシレート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーの中和物(以下、場合により「CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物」という)の自己乳化による水への乳化分散及び鎖伸長反応により得ることができ、このような調製方法によれば、かかるポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂の乳化分散液(後述の水分散液(II)として好適に利用することが可能)として得ることができる。なお、このような自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、前記乳化分散液から樹脂成分のみを取り出して利用してもよいが、組成物の調製がより容易となることから、ポリウレタン樹脂の乳化分散液の状態で組成物の調製に利用することが好ましい。
【0084】
CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物は、カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物(前記(e)成分)に由来するカルボキシ基が中和されたカルボキシレート基(-COO-)を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物であり、前記(a)有機ポリイソシアネート、前記(b)ポリオール及び(e)カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物を反応させて得られるものである。このようなCAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を得るための具体的な方法としては特に制限されず、例えば、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等により製造することができる。この時の反応温度は、40~150℃であることが好ましい。
【0085】
また、このようなCAイソシアネート基末端プレポリマー中和物の調製の際には、必要に応じて2個以上の活性水素原子を有する低分子量鎖延長剤を使用することができる。前記低分子量鎖延長剤としては、分子量が400以下のものが好ましく、特に300以下のものが好ましい。また、前記低分子量鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミンが挙げられる。さらに、前記低分子量鎖延長剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
さらに、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物の調製の際には、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫-2-エチルヘキサノエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等の反応触媒を添加することができる。また、反応の際又は反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加することができる。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0087】
前記(e)カルボキシ基と2個以上の活性水素とを有する化合物に由来するカルボキシ基の中和は、イソシアネート基末端プレポリマーの調製と同時であってもよく、調製前であっても調製後であってもよい。このような中和は、適宜公知の方法を用いて行うことができ、このような中和に用いる化合物としては、特に制限されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチル-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルモノエタノールアミン、N,N-ジエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;アンモニア等が挙げられる。これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン類が特に好ましい。
【0088】
前記CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物の水への乳化分散方法に特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等の乳化機器を用いた方法を挙げることができる。また、前記CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を水に乳化分散させる際には、該プレポリマー中和物を、特に乳化剤を用いずに室温~40℃の温度範囲で自己乳化により水に乳化分散させて、イソシアネート基と水との反応を極力抑えることが好ましい。さらに、このように乳化分散させる際には、必要に応じて、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加することができる。
【0089】
また、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の調製に際しては、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物の調製に、多段式のイソシアネート重付加反応法を採用することが好ましく、中でも、下記工程(A)~(D):
[工程(A)]
上記(a)成分としての有機ポリイソシアネートと、上記(b)成分としての前記重量平均分子量500~5000の高分子量ジオールとを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー(S1)を得る工程;
[工程(B)]
前記イソシアネート基末端プレポリマー(S1)と、上記(b)成分としての前記分子量400以下の低分子量ジオールと、上記(e)成分であるカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物と、を反応させて、CA水酸基末端プレポリマー(S2)を得る工程;
[工程(C)]
前記CA水酸基末端プレポリマー(S2)と、(a)成分である有機ポリイソシアネートとを反応させてCAイソシアネート基末端プレポリマー(S3)を得る工程;
[工程(D)]
前記CAイソシアネート基末端プレポリマー(S3)を中和して、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を得る工程;
を含む方法(X);又は、下記工程(i)~(iv):
[工程(i)]
上記(a)成分としての有機ポリイソシアネートと、上記(b)成分としての前記分子量400以下の低分子量ジオールと、上記(e)成分であるカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物と、を反応させて、CAイソシアネート基末端プレポリマー(S11)を得る工程;
[工程(ii)]
前記CAイソシアネート基末端プレポリマー(S11)と、上記(b)成分としての前記重量平均分子量500~5000の高分子量ジオールとを反応させて、CA水酸基末端プレポリマー(S12)を得る工程;
[工程(iii)]
前記CA水酸基末端プレポリマー(S12)と、(a)成分である有機ポリイソシアネートとを反応させてCAイソシアネート基末端プレポリマー(S13)を得る工程;
[工程(iv)]
前記CAイソシアネート基末端プレポリマー(S13)を中和して、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を得る工程;
とを含む方法(Y);を利用することが好ましい。
【0090】
このような方法(X)を採用する場合において、工程(A)と工程(C)とにおいて用いる有機ポリイソシアネート((a)成分)の種類を異なるものとすることが好ましく、更に、工程(A)と工程(C)のうちの一方の工程において芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、もう一方の工程において脂肪族系のポリイソシアネート化合物(脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも1種)を用いることにより、結果的に、(a)成分として、芳香族ポリイソシアネート化合物と、脂肪族系のポリイソシアネート化合物とを併用することがより好ましい。更に、工程(A)と工程(C)とにおいて用いる有機ポリイソシアネート((a)成分)の種類を異なるものとする場合には、工程(A)において芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、工程(C)において脂肪族ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。また、同様に、方法(Y)を採用する場合においても、工程(i)と工程(iii)とにおいて用いる有機ポリイソシアネート((a)成分)の種類を異なるものとすることが好ましく、工程(i)と工程(iii)のうちの一方の工程において芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、もう一方の工程において脂肪族系のポリイソシアネート化合物(脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも1種)を用いることにより、結果的に、(a)成分として、芳香族ポリイソシアネート化合物と、脂肪族系のポリイソシアネート化合物とを併用することがより好ましい。更に、工程(i)と工程(iii)とにおいて用いる有機ポリイソシアネート((a)成分)の種類を異なるものとする場合には、工程(i)において芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、工程(iii)において脂肪族ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0091】
このようにして芳香族ポリイソシアネート化合物と脂肪族系のポリイソシアネート化合物とを併用する場合においては、芳香族ポリイソシアネート化合物と、脂肪族系のポリイソシアネート化合物との使用割合が、モル比([芳香族ポリイソシアネート化合物]:[脂肪族系のポリイソシアネート化合物])で5:95~70:30であることが好ましく、40:60~60:40であることがより好ましい。芳香族ポリイソシアネート化合物の使用割合が前記下限未満では、芳香族ポリイソシアネート化合物を利用することによる効果(強度(材料破壊強度)の更なる向上)を十分に得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、最終的に得られるポリウレタン樹脂の水への乳化性が低下する傾向にあり、それに伴って各種物性が低下する傾向にある。なお、このように、芳香族ポリイソシアネート化合物と、脂肪族系のポリイソシアネート化合物(脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも1種)とを併用した場合においては、最終的に得られる(B)成分中に、芳香族ポリイソシアネート化合物に由来する繰り返し単位を導入することも可能となり、最終的に得られる(B)成分を、前述の好適な形態のものとすることも可能となる。
【0092】
なお、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を得るための方法としては、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂及び該樹脂の水分散液の調製が容易であり、得られる皮革用材に、より十分な風合いと材料破壊強度とを付与することができるといった観点から、中でも、前記方法(X)を採用することがより好ましい。そのため、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物としては、方法(X)により得られる、CAイソシアネート基末端プレポリマー(S3)の中和物であることが好ましい(ここにおいて、CAイソシアネート基末端プレポリマー(S3)はCA水酸基末端プレポリマー(S2)と有機ポリイソシアネート((a)成分)との反応物であり、該CA水酸基末端プレポリマー(S2)はイソシアネート基末端プレポリマー(S1)と、前記分子量400以下の低分子量ジオール((b)成分)と、前記カルボキシ基及び/又はカルボキシレート基と2個以上の活性水素とを有する化合物((e)成分)との反応物であり、該イソシアネート基末端プレポリマー(S1)は、前記有機ポリイソシアネートと前記重量平均分子量500~5000の高分子量ジオール((b)成分の1種)との反応物である)。
【0093】
また、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を得た後においては、前述のようにして(d)鎖伸長剤を用いて、鎖伸長反応を行う。このようなCAイソシアネート基末端プレポリマー中和物の鎖伸長反応は、前記CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物に、前記(d)鎖伸長剤(アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物)を添加するか、あるいは、前記(d)鎖伸長剤(アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物)に、前記CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を添加することにより行うことができる。このような鎖伸長反応は、反応温度20~40℃で行うことが好ましく、通常は30~120分間で完結する。
【0094】
このようなカルボキシ基及び/又はカルボキシレート基を有する水性ポリウレタン樹脂を調製するための方法においては、前記乳化分散及び前記鎖伸長反応は同時であってもよく、前記CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめた後に鎖伸長反応せしめても鎖伸長反応せしめた後に乳化分散せしめてもよい。また、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物を製造する際に前述の有機溶剤を使用した場合には、例えば、鎖伸長反応又は乳化分散後に、減圧蒸留等により有機溶剤を除去することが好ましい。さらに、このような調製方法によってポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂の乳化分散液として得ることができるが、このような乳化分散液においては、乳化剤を更に含有させてもよい。このような乳化剤としては、ポリウレタン樹脂を乳化する際に利用可能な公知の乳化剤を適宜利用でき、中でも、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。また、このような非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、プルロニック型非イオン界面活性剤を特に好適に使用することができる。
【0095】
<(C)架橋剤>
本発明において(C)成分として用いられる架橋剤としては、特に制限されず、ポリウレタン樹脂を架橋することが可能な公知の架橋剤を適宜利用でき、例えば、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂を使用することができる。
【0096】
このような架橋剤((C)成分)としては、剥離強度がより向上するといった観点から、中でも、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。このようなイソシアネート系架橋剤としては、脂肪族、脂環族又は芳香族ポリイソシアネートを利用することができる。このようなイソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルポリメチルポリイソシアネート等の液状MDI、粗MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらのイソシアヌレート環である三量体、トリメチロールプロパンアダクト体等、これらをブロック化剤により処理して得られる化合物(ブロック化剤によりイソシアネート基を保護した化合物)等が挙げられる。
【0097】
また、このようなブロック化剤としては、フェノール、εカプロラクタム、2-ブタノンオキシム、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、ジメチルピラゾールなどが挙げられ、中でも、熱解離温度が比較的低いジメチルピラゾールがより好ましい。このようなイソシアネート系架橋剤としては、構造中に親水性官能基を有する自己乳化型ポリイソシアネートを使用することもできる。
【0098】
また、このようなイソシアネート系架橋剤としては、耐光性の観点からは、中でも、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートが好ましい。なお、このような脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートとしては、市販品を適宜利用してもよく、例えば、バイヒジュール3100(住化コベストロウレタン製)、アクアネート110、210(日本ポリウレタン製)、NKアシストIS-100N、NY-27、NY-30、NY-50(日華化学製)、TRIXENE AQUA BI220(BAXENDEN社製)などを適宜利用することができる。
【0099】
また、このような架橋剤((C)成分)は、乾燥時間をより短くすることができ、乾燥時の発泡体の収縮がより高度に抑制されるといった観点から、組成物の調製時には、希釈せずに、そのまま添加することが好ましい。
【0100】
<(D)起泡剤>
本発明において(D)成分として含有される起泡剤としては、特に制限されず、ポリウレタン樹脂を発泡させるために利用することが可能な公知の起泡剤を適宜利用できる。このような起泡剤((D)成分)としては、例えば、アニオン界面活性剤を使用することができる。
【0101】
このような起泡剤((D)成分)として利用することが可能なアニオン界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル系アニオン界面活性剤、アミノ酸系アニオン界面活性剤、リン酸エステル系アニオン界面活性剤、カルボン酸系アニオン界面活性剤、スルホン酸系アニオン界面活性剤が挙げられる。また、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること及び微細なセル構造を有する発泡体形成が可能となること、等といった観点からは、このようなアニオン界面活性剤としては、中和された塩の形態であることがより好ましい。
【0102】
また、このような硫酸エステル系アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルモノアルキロールアミド硫酸塩を挙げることができる。さらに、このようなアミノ酸系アニオン界面活性剤としてはアシルグリシネート、アシルサルコシンネート、アシルアラニネート、アシルアルキルアラニネート、アシルタウレート、アシルアルキルタウレート、アシルグルタメートを挙げることができる。また、前記リン酸エステル系アニオン界面活性剤としてはアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩などを挙げることができる。また、前記カルボン酸系アニオン界面活性剤としては高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩などを挙げることができる。さらに、前記スルホン酸系アニオン界面活性剤としては、オレフィン(C14-16)スルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルキル塩、アルキルエチルエステルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩アルキルアミド、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩などを挙げることができる。このような起泡剤としては、1種を単独で利用してもよく、あるいは、2種以上を任意に組合わせて用いてもよい。そのため、前記起泡剤としては、アニオン界面活性剤の1種を単独で利用してもよく、あるいは、2種以上を任意に組合わせて用いてもよい。
【0103】
また、本発明にかかる起泡剤((D)成分)としては、微細なセル構造を有する発泡体をより効率よく形成することが可能となるといった観点から、下記化合物(D1)~(D3):
[化合物(D1)]
下記一般式(1):
R1COOX ・・・(1)
(式中、R1はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基であり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物(D1)、
[化合物(D2)]
下記一般式(2):
【0104】
【0105】
(式中、2つのAはそれぞれ独立に、式:R2O-、R2N(H)-、(R2)2N-及びXO-で表される基からなる群から選択されるいずれかであり、かつ、該2つのAのうちの少なくとも一方が式:R2O-、R2N(H)-及び(R2)2N-で表される基からなる群から選択されるいずれかであるという条件を満たし、R2はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基であり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
で表される化合物(D2)、
[化合物(D3)]
下記一般式(3):
R3-OSO3X ・・・(3)
(R3は炭素数6~30のアルキル基、炭素数6~30のアルケニル基及び炭素数6~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかであり、XはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。)
のうちのいずれかの化合物を利用することが好ましい。
【0106】
上記一般式(1)で表される化合物(D1)に関して、式(1)中のR1はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数11~29のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基である。このような式(1)中のR1として利用され得るアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、いずれも炭素数11~29のものである。このような式(1)中のR1としては、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、ヒドロキシル基を有していない基であることが好ましく、その中でも炭素数13~23のアルキル基が好ましく、炭素数15~19のアルキル基がより好ましく、炭素数16~18のアルキル基が更に好ましく、炭素数17のアルキル基が特に好ましい。
【0107】
また、このような式(1)中のXはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。このような置換基を有していてもよいアンモニウムイオンにおける置換基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、メチル基、エチル基等が挙げられる。このようなXとしては、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、Na、K又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが好ましく、アンモニウムイオン(NH4
+)が特に好ましい。
【0108】
このような一般式(1)で表される化合物(D1)としては、例えば、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム等が挙げられるが、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、ステアリン酸アンモニウムが特に好ましい。なお、このような化合物(D1)は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組合わせて利用してもよい。
【0109】
上記一般式(2)で表される化合物(D2)に関して、式(2)中の2つのAはそれぞれ独立に、式:R2O-、R2N(H)-、(R2)2N-及びXO-で表される基からなる群から選択されるいずれかである。また、このような化合物(D2)において、2つのAのうちの少なくとも一方が式:R2O-、R2N(H)-及び(R2)2N-で表される基からなる群から選択されるいずれかであるという条件を満たす必要がある。
【0110】
このような式(2)中の2つのAとしては、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、Aの少なくとも一方が式:R2N(H)-で表される基であることが好ましく、2つのAのうちの少なくとも一方が式:R2N(H)-で表される基でありかつもう一方が式:XO-で表される基であることがより好ましい。
【0111】
また、このような式(2)中のAにおいて、R2はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキル基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルケニル基及びヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基である。このようなR2として利用され得るアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、いずれも炭素数8~30のものである。このようなR2としては、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、ヒドロキシル基を有していない基であることが好ましく、その中でも炭素数8~26のアルキル基が好ましく、炭素数10~20のアルキル基がより好ましく、炭素数12~18のアルキル基であることが特に好ましい。また、このような式(2)中のAが式:XO-で表される基である場合、かかるXはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。このようなAとしての式:XO-で表される基中のXとしては、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、Naであることがより好ましい(すなわち、Aが式:XO-で表される基である場合、式:NaO-で表される基であることがより好ましい)。
【0112】
また、このような式(2)において式:-SO3Xで表される部位におけるXも、H、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。このようなXとしては、R2の好適なものと同様の観点から、Na、K又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが好ましく、Na、Kであることがより好ましく、Naであることが特に好ましい。
【0113】
このような一般式(2)で表される化合物(D2)としては、例えば、スルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩(ここにおいてアルキル基は炭素数8~30のものであり、炭素数12~18のものが好ましい)、スルホコハク酸モノアルキルアミドカリウム塩(ここにおいてアルキル基は炭素数8~30のものであり、炭素数12~18のものが好ましい)が挙げられ、中でも、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、スルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩がより好ましい。なお、このような化合物(D2)は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組合わせて利用してもよい。
【0114】
上記一般式(3)で表される化合物(D3)に関して、式(3)中のR3は炭素数6~30のアルキル基、炭素数6~30のアルケニル基及び炭素数6~30のアルキニル基からなる群から選択されるいずれかの基である。このようなR3として利用され得るアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、いずれも炭素数6~30のものである。このようなR3としては、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、中でも、炭素数6~30のアルキル基が好ましく、炭素数6~12のアルキル基がより好ましく、炭素数8~10のアルキル基が更に好ましい。
【0115】
また、式(3)中のXはH、Na、K及び置換基を有していてもよいアンモニウムイオンからなる群から選択されるいずれかである。このようなXとしては、同様の観点から、Na、K又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンであることが好ましい。
【0116】
このような一般式(3)で表される化合物(D3)としては、例えば、炭素数6~12アルキル硫酸塩を好適なものとして挙げることができ、中でも、発泡性と発泡体の強度の観点から、炭素数8~10のアルキル硫酸塩がより好ましい。このような化合物(D3)としては、市販品(例えば、炭素数8のアルキル硫酸塩の市販品であるパールクリート(第一化成産業株式会社)等が挙げられる。なお、このような化合物(D3)は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組合わせて利用してもよい。
【0117】
また、本発明にかかる起泡剤((D)成分)としては、発泡体形成用組成物の安定性がより向上すること、微細なセル構造を有する発泡体の形成が可能となること、風合いと強度とがより高い発泡体の形成が可能となること、といった観点から、化合物(D1)と、化合物(D2)とを組合わせて利用すること(化合物(D1)及び化合物(D2)を含むもの)がより好ましい。また、本発明においては、起泡剤((D)成分)が化合物(D1)及び化合物(D2)を含むものである場合に、化合物(D1)及び化合物(D2)に加えて、前記化合物(D3)を含むものが更に好ましい。このように、起泡剤((D)成分)としては、化合物(D1)、化合物(D2)及び化合物(D3)を含むものが更に好ましい。
【0118】
また、前記起泡剤((D)成分)が化合物(D1)と化合物(D2)を含む場合((D)成分として化合物(D1)のうちの少なくとも1種と化合物(D2)のうちの少なくとも1種とを組合わせて利用する場合)、化合物(D1)と化合物(D2)の含有比は、質量比([化合物(D1)]:[化合物(D2)])で1:20~20:1とすることが好ましく、1:9~9:1とすることがより好ましい。
【0119】
また、このような起泡剤((D)成分)が化合物(D1)と化合物(D2)と化合物(D3)とを含む場合((D)成分として、化合物(D1)のうちの少なくとも1種と、化合物(D2)のうちの少なくとも1種と、化合物(D3)のうちの少なくとも1種とを組合わせて利用する場合)、化合物(D1)と化合物(D2)と化合物(D3)の含有比率は、質量比([化合物(D1)]:[化合物(D2)]:[化合物(D3)])で、45:45:10~10:45:45であることが好ましく、10:50:40~30:40:30であることがより好ましい。
【0120】
<(E)多糖類系増粘剤>
本発明において(E)成分として含有される多糖類系増粘剤は、多糖類からなる増粘剤である。ここにいう「多糖類」は、単糖(例えばグルコースやマンノース等)がグリコシド結合により多数結合することで構成された糖(多数の単糖がグリコシド結合により重合してなる糖)であればよく、そのような条件を満たす公知の多糖類を適宜利用することができる。
【0121】
このような多糖類系増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系誘導体;可溶性澱粉、カルボキシメチル澱粉、メチル澱粉等の澱粉系誘導体;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系の多糖類;グアガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ローカストビンガム、クインスシード、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、澱粉、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、及びその塩等の天然多糖類系の多糖類;及びこれらの混合物;等を好適に利用できる。このような多糖類系増粘剤としては、1種を単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0122】
また、このような多糖類系増粘剤として用いる多糖類の構造としては、例えば、直鎖状、側鎖状、分岐状、球状といった形態が挙げられる。このような多糖類系増粘剤((E)成分)としては、剥離強度がより向上するといった観点から、中でも側鎖状や直鎖状や分岐状の構造をもった多糖類からなる多糖類系増粘剤を用いることがより好ましい。このような側鎖状や直鎖状や分岐状の構造をもった多糖類としては、例えば、グアガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン等が挙げられる。このように、前記多糖類系増粘剤((E)成分)としては、剥離強度がより向上するといった観点から、グアガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カラギーナンがより好ましい。
【0123】
また、このような多糖類系増粘剤としては、市販品を適宜利用してもよい。このような多糖類系増粘剤の市販品としてはHEC AX-15(住友精化株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)、KELZAN(三晶株式会社製、キサンタンガム)、SUPERGEL200(三晶株式会社製、グアガム)、GENUVISCO CSW-2(三晶株式会社製、カラギーナン)等が挙げられる。
【0124】
<(F)水>
本発明において(F)成分として水を含有する。このように、本発明の発泡体形成用組成物は、(F)成分として水を含有する液状の組成物である。このような(F)成分として含有される水は、特に制限されず、イオン交換水又は蒸留水を好適に用いることができる。なお、このような水((F)成分)は、例えば、水に前記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)を乳化分散させた乳化分散液及び/又は水に第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)を乳化分散させた乳化分散液を用いて、(A)~(D)の各成分を水中で混合して発泡体形成用組成物を調製し、その後、該乳化分散液中の水を留去することなく、水をそのまま利用することで、該水をそのまま、発泡体形成用組成物中の(F)成分としてもよい。
【0125】
<組成について>
本発明の発泡体形成用組成物は、前述の(A)~(F)成分を含有するものである。このように、本発明の発泡体形成用組成物は、ポリウレタン樹脂成分として、上記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)及び上記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)を含有してなるものである。
【0126】
このような本発明の発泡体形成用組成物において、前記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)及び前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の合計量[前記(A)成分及び前記(B)成分からなるポリウレタン樹脂成分の総量]は、30~60質量%であることが好ましく、35~55質量%であることがより好ましい。このようなポリウレタン樹脂成分の含有量(前記(A)成分及び前記(B)成分の総量)が前記下限未満では、発泡体形成用組成物を用いて得られる発泡硬化物の厚み、風合い、強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると発泡体形成用組成物の粘度が高くなり取り扱いが困難になる傾向にある。
【0127】
また、このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)及び前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)からなるポリウレタン樹脂成分中において、(A)成分と(B)成分の含有割合は、発泡体の製造時により高度な発泡倍率で発泡させることができかつより高い剥離強度を有する発泡体を得ることが可能となるといった観点、並びに、得られる発泡体の耐水性向上と発泡体製造時のマイグレーション防止と、より優れた風合いを発泡体に付与することが可能となるといった観点等から、それらの質量比([(A)成分]:[(B)成分])を基準として、90:10~50:50が好ましく、80:20~60:40がより好ましく、80:20~70:30が特に好ましい。
【0128】
また、本発明の発泡体形成用組成物において、前記架橋剤((C)成分)の含有量は、剥離強度向上の観点から、前記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)及び前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の合計量(以下、場合により、単に「ポリウレタン樹脂成分の総量」と称する。)100質量部に対して0.5~30質量部(より好ましくは1~25質量部)であることが好ましい。このような架橋剤の含有量が前記下限未満では剥離強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、それ以上の性能向上が少なく、架橋剤の使用量とコストに見合うだけの性能向上が得られない傾向にある。
【0129】
さらに、本発明の発泡体形成用組成物において、前記起泡剤((D)成分)の含有量は、高発泡倍率でも高い材料破壊強度を示し、風合いが良好でかつ厚みのある皮革用材(皮革状積層体)を得ることが可能となるといった観点から、前記第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)及び前記第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の合計量(ポリウレタン樹脂成分の総量)100質量部に対して、0.2~40質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。また、前記起泡剤((D)成分)として前記化合物(D1)~(D3)を用いる場合、同様の観点から、前記化合物(D1)~(D3)の含有量は以下の範囲とすることが好ましい。すなわち、前記化合物(D1)の含有量は、ポリウレタン樹脂成分の総量100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましく、0.2~5質量部であることがさらに好ましい。前記化合物(D2)の含有量は、ポリウレタン樹脂成分の総量100質量部に対して、0.05~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、0.2~10質量部であることがさらに好ましい。前記化合物(D3)の含有量は、ポリウレタン樹脂成分の総量100質量部に対して、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることがさらに好ましい。
【0130】
さらに、本発明の発泡体形成用組成物において、前記多糖類系増粘剤((E)成分)の含有量は、発泡体の乾燥後の厚みをより十分に保持することが可能となるといった観点から、ポリウレタン樹脂成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましい。なお、多糖類系増粘剤の含有量が前記下限未満では発泡体の乾燥後の厚みを十分に保持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると発泡体の強度が低下したり、耐水性が低下する傾向にある。また、多糖類系増粘剤の含有量は、所定の発泡倍率になるまで発泡させるための時間がより短くなるとともに、より優れた風合い及び材料破壊強度を付与することが可能となるといった観点からは、0.1~5質量部とすることが特に好ましい。
【0131】
また、本発明の発泡体形成用組成物において、前記水((F)成分)の含有量は、25~60質量%であることが好ましく、30~55質量%であることがより好ましい。このような水の含有量が前記上限を超えると、発泡体形成用組成物を用いて得られる発泡硬化物の厚み、風合い、強度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では発泡体形成用組成物の粘度が高くなり取り扱いが困難になる傾向にある。
【0132】
また、本発明の発泡体形成用組成物には、必要に応じて、他の成分(好ましくは従来使用されている以下のような公知の添加成分)を、本発明の効果に影響がない範囲で併用してもよい。このような添加成分としては、例えば、発泡層形成用薬剤の加工適正や接着性を向上させるため、必要に応じて、フッ素系やアセチレングリコール系等の各種の界面活性剤、n-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤のハジキ防止剤、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂等の粘着付与剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤等の各種安定剤、鉱物油系、シリコーン系等の消泡剤、可塑剤、顔料等の着色剤、ウレタン反応触媒を併用してもよい。
【0133】
さらに、本発明の発泡体形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前述の(A)成分及び(B)成分以外の他の樹脂成分を適宜含有させてもよい。なお、このような他の樹脂成分を含有させるために、組成物の調製時に、該樹脂成分の水分散液(例えば、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系等のエマルジョン;スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系等のラテックス;ポリエチレン系、ポリオレフィン系等のアイオノマー、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ系樹脂等)を適宜利用してもよい。ここで、アクリル系エマルジョンとは、アクリル酸系モノマーと非イオン系モノマーとをラジカル重合させて得られる重合物、又は、アクリル酸系モノマーとスルホン酸系モノマーと非イオン系モノマーとをラジカル重合させて得られる重合物であり、モノマー混合物中のアクリル酸系モノマーとスルホン酸系モノマーとの含有量が30質量%未満の重合物を界面活性剤の存在下に水に乳化分散させたものである。このようなアクリル系エマルジョンは、製造した重合物を界面活性剤の存在下に水に乳化分散させたものであってもよいし、モノマーを界面活性剤の存在下に水に乳化分散させた後、乳化重合したエマルジョンであってもよい。
【0134】
また、本発明において、前記(A)第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、前記(B)第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、前記(C)架橋剤、前記(D)起泡剤、前記(E)多糖類系増粘剤、及び、前記(F)水を含有する発泡体形成用組成物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用することが可能である。なお、通常、前記(A)成分及び前記(B)成分はそれぞれ樹脂の乳化分散液(水乳化分散物:水性ポリウレタン樹脂の水分散液)として得られ、また、水性ポリウレタン樹脂は一般に乳化分散液(水乳化分散物:水性ポリウレタン樹脂の水分散液)の形態で市場に流通していることから、本発明の発泡体形成用組成物を製造する際には、製造効率の観点から、前記(A)成分及び前記(B)成分はそれぞれ乳化分散液(水乳化分散物:水性ポリウレタン樹脂の水分散液)のまま用いて、これらと前記(C)架橋剤、前記(D)起泡剤、及び、前記(E)多糖類系増粘剤を混合することで、前記(A)第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、前記(B)第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、前記(C)架橋剤、前記(D)起泡剤、前記(E)多糖類系増粘剤、及び、前記(F)水を含有する発泡体形成用組成物を調製することが好ましい。
【0135】
また、本発明の発泡体形成用組成物は、十分な風合い及び強度を得ることがより容易であることから、前記(A)成分の含有量が50~70質量%である水性ポリウレタン樹脂の水分散液(I)、前記(B)成分の含有量が30~70質量%である水性ポリウレタン樹脂の水分散液(II)、前記(C)成分、前記(D)成分及び前記(E)成分を混合することにより得られるものであることが好ましい。このようにして得られる発泡体形成用組成物においては、水性ポリウレタン樹脂をそれぞれ水に乳化分散させた状態で用いて混合することができ、ポリウレタン樹脂成分を、得られる発泡体形成用組成物(液状の組成物)中において、より均一に分散した状態とすることが可能となるとともに、前記水分散液(I)及び水分散液(II)を利用することで、水性ポリウレタン樹脂成分((A)成分及び(B)成分)の濃度が高濃度(好ましくは40質量%以上)である発泡体形成用組成物(液状の組成物)を効率よく製造することも可能となる。
【0136】
このような水分散液(I)は、前記(A)成分である第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が50~70質量%(より好ましくは50~65質量%)の水分散液(乳化分散液)であることが好ましい。このような水分散液(I)を用いることで、目的とする特性(十分な風合い及び強度)を有する発泡体を形成するために利用することが可能な本発明の発泡体形成用組成物をより効率よく製造することが可能となる。このような第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が前記下限未満では、得られる発泡体形成用組成物を用いて発泡体を形成しても、十分な強度を有する発泡体を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる発泡体の風合いが低下する傾向にある。このような水分散液(I)としては、第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の調製方法として上述の調製方法を採用した場合に、SUイソシアネート基末端プレポリマー中和物の自己乳化による水への乳化分散及び鎖伸長反応により得ることができる、前述のポリウレタン樹脂の乳化分散液をそのまま利用することができる。なお、水分散液(I)は第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含有するものであるが、適宜、乳化剤を含有させてもよい。
【0137】
また、このような水分散液(II)は、前記(B)成分である第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が30~70質量%(より好ましくは30~60質量%)の水分散液(乳化分散液)であることが好ましい。このような水分散液(II)を用いることで、目的とする発泡体をより効率よく形成することが可能となる。このような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が前記下限未満では、これを用いて得られる発泡体の風合いが低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると発泡体形成用組成物を効率よく製造することが困難になる傾向にある。このような水分散液(II)としては、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の調製方法として上述の調製方法を採用した場合に、CAイソシアネート基末端プレポリマー中和物の自己乳化による水への乳化分散及び鎖伸長反応により得ることができる、前述のポリウレタン樹脂の乳化分散液をそのまま利用することができる。なお、水分散液(II)は第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含有するものであるが、適宜、乳化剤を含有させてもよい。
【0138】
また、このような水分散液(I)及び(II)としては、より高い発泡倍率で発泡させることを可能としつつより高い剥離強度が得られるといった観点、並びに、本発明の発泡体形成用組成物を、より均一な状態とすることができるとともに、より容易に調製することができるといった観点から、水分散液(I)及び(II)中の第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)及び第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の総量(合計量)が、発泡体形成用組成物の総量に対して30~60質量%(より好ましくは35~55質量%)となるようにして、水分散液(I)及び(II)を利用することが好ましい。
【0139】
また、このような発泡体形成用組成物は、調製時に発泡しないように前記各成分を静かに撹拌して調製してもよく、あるいは、発泡体形成用組成物の調製後に該組成物を発泡体の調製に直ぐに利用する場合等には、調製時に、各成分を発泡するように混合(撹拌)して、発泡体形成用組成物を調製しつつ発泡させて、発泡組成物(発泡した泡が含まれる形態の発泡体形成用組成物)として発泡体形成用組成物を調製してもよい。なお、このような発泡組成物は、各成分の混合液からなる発泡体形成用組成物を予め調製しておき、これを機械発泡するように混合して製造してもよい。このように、本発明の発泡体形成用組成物は、その組成物中に発泡した泡が含まれる形態の発泡組成物として調製してもよい。
【0140】
また、本発明の発泡体形成用組成物(前述の発泡組成物の形態となっていてもよい)としては、粘度が500~100,000mPa・s(より好ましくは1,000~50,000mPa・s)のものが好ましい。このような粘度が前記下限未満では発泡時に泡が消えることを十分に抑制することが困難となる傾向にあり、これにより十分に高い発泡倍率で発泡させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると取り扱いが困難になる傾向があり、発泡させることが困難となる傾向にある。なお、このような粘度としては、20℃の温度条件下において、BM型粘度計、4号ローター、60rpm又は6rpmの条件にて測定する方法により測定される値を採用する。
【0141】
以上、本発明の発泡体形成用組成物について説明したが、以下、本発明の発泡体の製造方法、及び、発泡体について説明する。
【0142】
[発泡体の製造方法、及び、発泡体]
本発明の発泡体の製造方法は、上記本発明の発泡体形成用組成物を発泡させた発泡組成物を得る工程と、該発泡組成物を基材に塗布し、乾燥硬化せしめて基材上に前記発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層が形成された発泡体を得る工程とを含むことを特徴とする方法である。また、本発明の発泡体は、基材と、該基材上に積層された、上記本発明の発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層とを備えることを特徴とするものである。このような発泡体は、上記本発明の発泡体の製造方法により得られるものであることが好ましい。以下、上記本発明の発泡体の製造方法を各工程ごとに分けて説明する。
【0143】
(発泡組成物を得る工程)
このような発泡組成物を得る工程は、上記本発明の発泡体形成用組成物を発泡させた発泡組成物を得る工程(発泡した状態の発泡体形成用組成物である発泡組成物を得る工程)である。このような工程は、予め未発泡状態の上記本発明の発泡体形成用組成物を準備しておき、これを撹拌して機械発泡させて発泡組成物を得る工程(I)としてもよく、或いは、上記本発明の発泡体形成用組成物に含有させるための各成分(前記(A)第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、前記(B)第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂、前記(C)架橋剤、前記(D)起泡剤、前記(E)多糖類系増粘剤、前記(F)水)を準備して、これらを混合・撹拌して、各成分の混合物からなる発泡体形成用組成物を調製しつつ発泡させて組成物中に発泡した泡が含まれる形態の発泡組成物(発泡体形成用組成物を発泡させたもの:発泡体形成用組成物の一形態(発泡形態))を得る工程(II)としてもよい。
【0144】
このような工程において、前記発泡体形成用組成物としては、上記水分散液(I)、上記水分散液(II)、上記(C)成分、上記(D)成分及び上記(E)成分を混合することにより得られたものであること(なお、(F)成分の水は上記水分散液(I)及び上記水分散液(II)中の水により、得られる組成物中に含有される)が好ましい。
【0145】
また、このように発泡体形成用組成物(上記(A)~(E)成分の水分散液:液状の組成物)を発泡させる方法(工程(II)において組成物を調製しつつ発泡させる場合の発泡方法も含む。)としては、例えば、通常のバッチ式撹拌機、例えばホバートミキサー、ホィッパー、ディスパーなどにて所定の発泡倍率になるように空気を巻き込みながら機械的に撹拌することにより、クリーム状に発泡した分散液として得る方法を採用することができる。このような発泡方法としては、量産化の観点から、オークスミキサー、ピンミキサーなどにて定量の空気を送り込みながら連続的に撹拌する方法を採用することが好ましい。
【0146】
このようにして発泡させる際には、発泡体形成用組成物を1.5~5倍(より好ましくは1.5~4.5倍、更に好ましくは1.5~4倍)の発泡倍率で発泡させることが好ましい。このような発泡倍率が前記下限未満では、十分に高度な風合いを有する発泡体を形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる発泡体の強度が低下する傾向にある。このような発泡倍率は、発泡前後の組成物の体積に基づいて算出される値([発泡後の体積]/[発泡前の体積])を採用する。
【0147】
このような発泡組成物(液状の発泡物)としては、粘度が3,000~100,000mPa・s(より好ましくは5,000~80,000mPa・s)のものが好ましい。このような粘度が前記下限未満では、発泡させる際に破泡を十分に抑制することが困難となり(泡が消えることを十分に抑制することが困難となり)、十分な発泡倍率で発泡させることが困難となる傾向にあり、これにより得られる発泡体の風合いが低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると取り扱いが困難となり、塗工が困難となる傾向にある。なお、このような粘度としては、20℃の温度条件下において、BM型粘度計、4号ローター、6rpmの条件にて測定する方法により測定される値を採用する。
【0148】
(発泡体を得る工程)
本発明において、発泡体を得る工程は、前記工程により得られた発泡組成物を基材に塗布し、乾燥硬化せしめて基材上に前記発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層が形成された発泡体を得る工程である。
【0149】
このような基材としては、特に制限されず、離型紙、表皮層用材料、繊維基材等が挙げられ、用途に応じて公知の基材の中から適切なものを適宜選択して利用すればよい。なお、このような表皮層用材料、繊維基材等としては、後述の皮革用材において説明するものと同様のものを適宜利用してもよい。
【0150】
また、前記発泡組成物を基材に塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法を適宜利用でき、例えば、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、キスコーティング法、コンマコーティング法、リップコーティング法などを挙げることができる。
【0151】
また、前記発泡組成物を基材に塗布する際の条件は特に制限されるものではないが、得られる発泡体の風合いと強度がより高度なものとなることから、乾燥後の厚みの平均値が0.1~3.0mmになるように塗布することが好ましい。なお、このような厚みの平均値は、電子顕微鏡を用いて断面を観察し、該断面の電子顕微鏡写真に基づいて、任意の複数個所(好ましくは3箇所以上)の測定箇所の厚みを測定して、その平均値を計算することにより求めることができる。
【0152】
また、このように、前記発泡組成物(例えば、機械発泡した分散液状態の前記発泡体形成用組成物からなる組成物)を塗布した後に乾燥硬化する方法は特に制限されず、例えば、熱風乾燥機、赤外線照射乾燥機、マイクロ波照射乾燥機、湿熱乾燥機の従来公知の乾燥機内で乾燥させることで、硬化させる方法を適宜採用することができる。このような乾燥硬化工程における乾燥条件は、基材の耐熱温度により適宜変化させればよく、特に制限されるものではないが、温度を80~120℃とすることが好ましい。
【0153】
なお、本発明においては、発泡体の調製に前記発泡体形成用組成物を用いているため、前記乾燥硬化工程において前記発泡組成物の収縮を十分に抑制することができ、硬化した後の発泡層の厚みを十分なものとすることが可能であるとともに、前記発泡体形成用組成物の起泡性が十分に高いことから、得られる発泡体の柔軟さと反発弾性の観点から発泡体を十分な風合いを有するものとすることも可能である。
【0154】
このようにして、前記発泡組成物を基材に塗布し、乾燥硬化せしめることで、基材上に前記発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層が形成された発泡体を得ることができる。すなわち、このようにして得られる発泡体は、基材と、該基材上に積層された、上記本発明の発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層とを備えるものとなる。このような発泡樹脂層の厚みは特に制限されないが、得られる発泡体の風合いと強度がより高度なものとなることから、その厚みの平均値が0.1~3.0mm(より好ましくは0.1~2.0mm)であることが好ましい。このような発泡体は、皮革用の材料(皮革用剤:皮革状積層体)に好適に利用することができる。以下、本発明の皮革用材について説明する。
【0155】
[皮革用材]
本発明の皮革用材は、上記本発明の発泡体を備えることを特徴とするものである。このように、本発明の皮革用材は、少なくとも前記発泡体を備えるため、積層構造を有し、いわゆる皮革状積層体として利用されるものである。
【0156】
このように、本発明の皮革用材の構成は、上記本発明の発泡体を含むものであればよく特に制限されず、公知の発泡体を含む皮革用材と同様の構成とすることができる。このような本発明の皮革用材の構成としては、例えば、前記発泡体の基材として表皮層用材料(例えば、離型紙上に表皮層を形成したもの(離型紙を剥がして表皮層のみとしたものであってもよい)等)を用いる場合には、該発泡体の表皮層(基材)の側と反対側の表面上(発泡層の表面上)に接着層を介して繊維基材を積層した構成としてもよい。このような繊維基材としては、例えば、不織布や布帛が挙げられる。
【0157】
このような皮革用材を形成する方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、離型紙に表皮層形成用組成物を塗布し、乾燥させることにより離型紙上に表皮層(基材)を形成し、該表皮層(基材)の上に、前記発泡体形成用組成物を機械発泡した発泡組成物を塗布し、乾燥硬化することにより発泡体を形成し、更に、その発泡体の発泡層(発泡樹脂層)の表面上に接着層形成用組成物を塗布し、そのまま繊維基材(例えば、不織布や布帛等)を貼り合わせて乾燥させることで積層体からなる皮革用材を形成するウェットラミネート法、あるいは、接着層形成用組成物を先に乾燥した後に貼り合わせることで積層体からなる皮革用材を形成するドライラミネート法等の離型紙転写法;離型紙に表皮層形成用組成物を塗布し、乾燥させることにより表皮層用材料を形成するとともに、別途、基材として繊維基材を用いて繊維基材(基材)上に発泡樹脂層が形成された上記本発明の発泡体を形成し、前記表皮層用材料を熱により前記発泡体と貼り合わせることで積層体からなる皮革用材を形成する熱転写法;基材として繊維基材を用いて繊維基材(基材)上に発泡樹脂層が形成された上記本発明の発泡体を形成した後、該発泡体上に直接表皮層形成用組成物を塗布し乾燥する方法;等を挙げることができる。
【0158】
このような皮革用材の形成方法を採用する場合において、前記表皮層形成用組成物としては、特に制限されず、人工皮革や合成皮革の表皮層を形成するために利用することが可能な公知の樹脂組成物を適宜利用することができ、例えば、特開2008-248174号公報等に記載されている水性ポリウレタン樹脂組成物を好適に利用することができる。また、離型紙もしくは発泡体上に、表皮層形成用組成物を塗布する方法としては、特に制限されないが、スプレー法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、キスコーティング法、コンマコーティング法、リップコーティング法等にて塗布するダイレクトコート法等が挙げられる。
【0159】
さらに、表皮層形成用組成物を塗布する際には、加工適正を向上させるために表皮層形成用組成物の粘度を調整することが好ましく、例えば増粘剤を混合する等して、粘度を2500~15000mPa・s(BM型粘度形、4号ローター、6rpm)に調整することがより好ましい。このような表皮層形成用組成物の粘度調整に利用する前記増粘剤としては特に制限されず、表皮層形成用組成物に利用することが可能な公知の増粘剤を適宜利用できる。また、このような表皮層形成用組成物を塗布後に乾燥する方法としては特に制限されず、例えば、熱風乾燥機、赤外線照射乾燥機、マイクロ波照射乾燥機、湿熱乾燥機の従来公知の乾燥機内で、温度70~130℃程度で10秒~3分間乾燥させればよい。
【0160】
このような皮革用材(皮革状積層体)を形成する方法の中では、得られる皮革状積層体の品位や物性の面と、得られる表皮層の物性がより向上するという観点から、離型紙転写法が好ましく、そのような離型紙転写法の中でも、ドライラミネート法を採用することがより好ましい。
【0161】
ここで、ドライラミネート法について、更に詳細に説明する。このような接着層形成用組成物としては、特に制限されず、接着層を形成することが可能な公知の組成物を適宜利用することができる。そして、このようなドライラミネート法としては、例えば、接着層形成用組成物に増粘剤を混合して粘度を2500~15000mPa・s(BM型粘度形 4号ローター、6rpm)とした後に、該接着層形成用組成物を発泡体の発泡樹脂層の表面上にコーティングし、70~130℃の乾燥機にて10秒~3分間乾燥させ、次いで、接着層形成用組成物の塗布面と繊維基材とを、温度が20~150℃、圧力が10~300kg/cm2であるニップロールでラミネートした後、接着性安定化のため30~70℃で1~3日間エージングすることによりラミネートする方法を採用してもよい。これにより、積層状態の皮革用材(皮革状積層体)を得ることができる。
【0162】
また、このような皮革用材(皮革状積層体)が繊維基材を備える構成のものである場合、前記繊維基材としては、一般に皮革用材に用いられる繊維基材であればよく、特に制限はなく利用でき、公知のものを適宜使用することができる。このような繊維基材の素材としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル等の合成繊維及びこれらの改良繊維;羊毛、絹、木綿、麻等の天然繊維;アセテート、レーヨン等の半合成繊維が挙げられる。さらに、このような繊維基材の形状としては、例えば、織編布、不織布等の繊維シート状の形状が挙げられる。さらに、このような繊維基材としては、繊維シート状の繊維基材にポリウレタン樹脂組成物をコーティング加工(発泡コーティングも含む)或いは含浸加工してマイクロポーラスを形成した多孔質体を用いることができ、本発明においてはこのような多孔質体を用いることが特に好適である。また、皮革等の天然皮革素材も繊維基材として用いることができる。
【0163】
また、このような繊維基材にかかる繊維の太さ及び形状も特に限定されない。さらに、このような繊維として極細繊維を用いることも可能であり、例えば、極細繊維化に際して海島型、分割又は剥離型、直紡型、オレンジピール型のうちのいずれの繊維を用いてもよい。海島繊維を使用する場合、極細化方法としては海成分又は島成分をトルエン等の有機溶剤処理による溶解抽出法、アルカリ等による分解抽出法、高圧水流によるウォータージェット法等が挙げられるが、極細化方法について特に限定されるものではない。
【0164】
このような本発明の皮革用材(皮革状積層体)は、人工皮革や合成皮革の材料又はそのものとして利用することに適しており、例えば、車輌、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等に利用される擬革様物の材料といった用途等に特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0165】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0166】
先ず、各実施例等で用いる成分の調製方法を以下に記載する。
【0167】
(調製例1:表皮層形成用材料の調製)
〈表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物の調製工程〉
先ず、下記組成で各成分を混合して調液して液状の組成物を得た後、該液状の組成物を25℃の温度条件下において1日間(24時間)静置して表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物を得た。このようにして得られた組成物の粘度は3200mPa・s(BM型粘度計、4号ローター、60rpm)であった。
〔表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物の組成(各成分の使用量)〕
エバファノールHA-107C(日華化学株式会社製、水性ポリウレタン樹脂の水分散物)100g
ネオステッカーN(日華化学株式会社製、会合型増粘剤)3g
NXH-6022(日華化学株式会社製、消泡剤)0.1g。
【0168】
〈表皮層形成用材料の調製工程(表皮層の調製工程)〉
次に、上述のようにして得られた表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物を、離型紙(朝日ロール株式会社、アサヒリリースAR-148)上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように塗布し、ピンテンターを用いて温度80℃で2分間乾燥させた後、さらに温度120℃で時間1分の条件で乾燥して、離型紙上に表皮層を形成して、表皮層形成用材料を得た。
【0169】
(調製例2:スルホネート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((A)成分)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール(宇部興産社製の商品名「ETERNACOLL UH-100」、重量平均分子量1,000)213.8質量部、ジブチル錫ジラウレート0.002質量部及びアセトン75質量部を仕込み、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート73.0質量部を加え、80℃で90分間反応させ、遊離イソシアネート基の含有量が2.7質量%のイソシアネート基末端プレボリマーのアセトン溶液を得た。
【0170】
前記溶液を50℃以下に冷却した後、前記溶液に対してアセトン625.0質量部を加え、その後、更に30℃以下に冷却し、2-(2-アミノエチルアミノ)-エタンスルホン酸ナトリウムを含む水溶液(45質量%の水溶液)を2-(2-アミノエチルアミノ)-エタンスルホン酸ナトリウムの添加量が10.2質量部となるようにして加え、直ちにディスパー羽根を用いて撹拌しながら水425.7質量部を徐々に加えて、スルホネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを乳化分散せしめた乳化分散液を得た。そして、エチレンジアミンを水に溶解したポリアミン水溶液33質量部(エチレンジアミンの濃度:20質量%、エチレンジアミン:6.6質量部及び水:26.4質量部)を前記乳化分散液に添加し、35℃で60分間鎖伸長反応させた後、不揮発分の量が60.0質量%となるように、減圧(95KPa)条件下、35℃にて脱溶剤(脱アセトン)を行い、スルホネート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂(ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂:第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た。このようにして得られた乳化分散液は、第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が60質量%、粘度が120mPa・s(BM粘度計、2号ローター、60rpm)のものであり、スルホネート基を有するポリウレタン樹脂の平均粒子径は400nmであった。また、得られたポリウレタン樹脂は100gあたり8.1ミリ当量(計算値)のSO3を有するものであった。なお、得られた乳化分散液(水分散液)の一部を用いて、濃度が40質量%である乳化分散液(溶媒:水)を調製し、その乳化分散液を20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。また、得られた水性ポリウレタン樹脂が界面活性剤を使用することなく水に分散された状態となっていることから、自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であることも分かった。
【0171】
(調製例3:カルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の調製)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社製の商品名「デュラノールT5652」、水酸基価56.1mgKOH/g、数平均分子量:2000)282.1g、エチレングリコール1.8g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート38.8g、ジフェニルメタンジイソシアネート55.5g、2,2-ジメチロールプロピオン酸16.8gを加えた後、溶媒としてのメチルエチルケトン157.0gと、アミン系触媒(サンアプロ株式会社製の商品名「U-CAT SA-603」)の1質量%メチルエチルケトン溶液11.3gとを加えて、80℃で3時間反応させて、遊離イソシアネート基の含有量が1.10質量%のカルボキシ基を有するイソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
【0172】
次に、前記溶液を50℃以下に冷却した後、トリエチルアミン12.7gを加えて、40℃で30分間中和反応を行ってカルボキシ基を中和した。このようなカルボキシ基の中和を行った後の溶液を30℃以下に冷却し、次いで、ディスパー羽根をもちいて水633.8gを徐々に加えて、カルボキシレート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーの中和物を乳化分散せしめ、乳化分散液を得た。そして、ピペラジン2水和物9.3gを水23.1gに溶解したポリアミン水溶液を前記乳化分散液に添加し、40℃で60分間鎖伸長反応させた後、不揮発分の量が40.0質量%となるように、減圧(95KPa)条件下、35℃にて脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、カルボキシレート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た。このようにして得られた乳化分散液は、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が40質量%、粘度100mPa・s(BM粘度計、2号ローター、60rpm)のものであり、カルボキシレート基を有するポリウレタン樹脂の平均粒子径は110nmであった。また、得られたポリウレタン樹脂は100gあたり31ミリ当量(計算値)のCOOを有するものであった。なお、得られた乳化分散液(水分散液)の一部を用いて、20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。また、得られた水性ポリウレタン樹脂が界面活性剤を使用することなく水に分散された状態となっていることから、自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であることも分かった。
【0173】
(調製例4:カルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社製の商品名「デュラノールT5652」、水酸基価56.1mgKOH/g、数平均分子量:2000)282.1gおよびメチルエチルケトン110.0gを仕込み、均一に混合して混合液を得た後、該混合液中にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)55.5gを加えて、60℃で120分間反応させて、遊離イソシアネート基の含有量が0.5質量%のイソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液(イソシアネート基末端プレポリマー溶液)を得た(1段目の反応工程)。
【0174】
次に、前記イソシアネート基末端プレポリマー溶液を40℃以下に冷却した後、エチレングリコール1.8g、2,2-ジメチロールプロピオン酸16.8g、および、アミン系触媒(サンアプロ株式会社製の商品名「U-CAT SA-603」)の1質量%メチルエチルケトン溶液11.3gを加えて、60℃まで昇温し、60℃で120分間反応させることにより、カルボキシ基を有する水酸基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た(2段目の反応工程)。このとき、遊離イソシアネート基は観測されなかった。
【0175】
次いで、前記カルボキシ基を有する水酸基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液に、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)38.8g、および、ビスマス系触媒(日東化成株式会社製の商品名「ネオスタンU-600」)の10質量%メチルエチルケトン溶液1.1gを加えて80℃まで昇温し、80℃で180分間反応させて遊離イソシアネート基の含有量が1.10質量%のカルボキシ基を有するイソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た(3段目の反応工程)。
【0176】
その後、前記イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン12.7gを加えて、30℃で60分間中和反応を行って、カルボキシ基を中和した後、強撹拌下にイオン交換水633.8gを徐々に加えて、カルボキシレート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーの中和物を乳化分散せしめて、乳化分散物を得た。次に、前記乳化分散物に、ピペラジン2水和物9.3gを水23.1gに溶解して添加し、40℃で60分間鎖伸長反応させた後、不揮発分の量が40.0質量%となるように、減圧(95KPa)条件下、35~45℃にて脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、カルボキシレート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た(4段目の反応工程)。
【0177】
このようにして得られた乳化分散液は、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が40質量%、粘度93mPa・s(BM粘度計、2号ローター、60rpm)のものであり、カルボキシレート基を有するポリウレタン樹脂の平均粒子径は103nmであった。得られたポリウレタン樹脂100gあたり31ミリモル当量(計算値)のCOOを有するものであった。また、得られたポリウレタン樹脂は、製造に用いたジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のモル比(MDI:H12MDI)が60:40となるものであった。また、得られたカルボキシレート基を有するポリウレタン樹脂の水乳化分散物は、90℃に加熱してもゲル化せず、感熱凝固性がないものであった。なお、得られた乳化分散液(水分散液)の一部を用いて、20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。また、得られた水性ポリウレタン樹脂が界面活性剤を使用することなく水に分散された状態となっていることから、自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であることも分かった。
【0178】
(調製例5:カルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の調製)
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のモル比(MDI:H12MDI)が60:40から5:95となるように、MDIの使用量を4.6gに変更するとともに、H12MDIの使用量を91.5gに変更した以外は、調製例4と同様の方法を採用して、カルボキシレート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た。
【0179】
なお、このようにして得られた乳化分散液は、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が40質量%、粘度100mPa・s(BM粘度計、2号ローター、60rpm)のものであり、20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。また、得られた水性ポリウレタン樹脂が界面活性剤を使用することなく水に分散された状態となっていることから、自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であることも分かった。
【0180】
(調製例6:カルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の調製)
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のモル比(MDI:H12MDI)が60:40から10:90となるように、MDIの使用量を9.2gに変更するとともに、H12MDIの使用量を86.8gに変更した以外は、調製例4と同様の方法を採用して、カルボキシレート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た。
【0181】
なお、このようにして得られた乳化分散液は、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が40質量%、粘度98mPa・s(BM粘度計、2号ローター、60rpm)のものであり、20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。また、得られた水性ポリウレタン樹脂が界面活性剤を使用することなく水に分散された状態となっていることから、自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であることも分かった。
【0182】
(調製例7:カルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の調製)
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のモル比(MDI:H12MDI)が60:40から30:70となるように、MDIの使用量を27.6gに変更するとともに、H12MDIの使用量を67.6gに変更した以外は、調製例4と同様の方法を採用して、カルボキシレート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た。
【0183】
なお、このようにして得られた乳化分散液は、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が40質量%、粘度110mPa・s(BM粘度計、2号ローター、60rpm)のものであり、20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。また、得られた水性ポリウレタン樹脂が界面活性剤を使用することなく水に分散された状態となっていることから、自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であることも分かった。
【0184】
(調製例8:カルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂((B)成分)の調製)
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のモル比(MDI:H12MDI)が60:40から50:50となるように、MDIの使用量を46.2gに変更するとともに、H12MDIの使用量を48.4gに変更した以外は、調製例4と同様の方法を採用して、カルボキシレート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た。
【0185】
なお、このようにして得られた乳化分散液は、第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が40質量%、粘度180mPa・s(BM粘度計、2号ローター、60rpm)のものであり、20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。また、得られた水性ポリウレタン樹脂が界面活性剤を使用することなく水に分散された状態となっていることから、自己乳化タイプの水性ポリウレタン樹脂であることも分かった。
【0186】
ここで、調製例3~8で得られたカルボキシレート基を有する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂に関して、各樹脂の製造に使用した原料(モノマー)の使用割合(モル比)を表1に示す。
【0187】
【0188】
(調製例9:強制乳化型水性ポリウレタン樹脂((B’)成分)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、数平均分子量3,000のポリカーボネートジオール(株式会社クラレ製、商品名「クラレポリオールC-3090」)152.6質量部、トリメチロールプロパン1.8質量部、1,4-ブタンジオール1.8質量部、ポリエーテル系ポリオールであるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンランダム共重合グリコール(株式会社ADEKA製、商品名「アデカポリエーテルPR-3007」、数平均分子量:3,000、オキシエチレン基含有量:70質量%)6.0質量部、溶媒としてメチルエチルケトン49.2質量部を添加して均一に混合した後、更に、有機ポリイソシアネートであるジシクロヘキシルメタンジイソシアネート34.6質量部、触媒としてのビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)0.02質量部を加えて、温度が80±5℃となるようにして90分間反応させ、ウレタンプレポリマー中の遊離イソシアネート基含有量が1.34%の末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、前記メチルエチルケトン溶液に、反応抑制剤として燐酸二水素ナトリウム1.0質量部、乳化剤としてポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤(トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物)8.9質量部を添加して均一に混合した後、水290質量部を徐々に加えて撹拌し、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させた。このようにして得られた乳化分散液に、鎖伸長剤としてピペラジン6水和物の20%水溶液27.3質量部(ピペラジン6水和物として5.46質量部)及びジエチレントリアミンの20%水溶液3.75質量部(ジエチレントリアミンとして0.75質量部)を添加し、温度が40±5℃となるようにしながら90分間撹拌した後、不揮発分の量が47.0質量%となるように、減圧(95KPa)の条件下、40℃で脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、強制乳化型水性ポリウレタン樹脂(強制乳化型ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂)の乳化分散液(水分散液)を得た。このようにして得られた乳化分散液は、不揮発分の量が47.0質量%、強制乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量が45.0質量%、乳化剤(トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物)の含有量が2.0質量%、粘度(20℃)が40mPa・s、ポリウレタン樹脂の平均粒子径が0.3μmであった。なお、このようにして得られたポリウレタン樹脂は、そのモノマーの種類からも明らかなように、スルホ基、スルホネート基、カルボキシ基、カルボキシレート基、第4級アンモニウム基といった親水性官能基を有しておらず、また、水に分散させるために界面活性剤が必要であったことから、強制乳化タイプのポリウレタン樹脂(強制乳化型のポリウレタン樹脂)であることが分かった。また、得られた乳化分散液(水分散液)の一部を用いて、濃度が40質量%である乳化分散液(溶媒:水、前記乳化剤を含む)を調製し、その乳化分散液を20℃で12時間静置したところ、乳化分散液中において分離や沈降が観察されず、得られたポリウレタン樹脂が水性の樹脂であることが確認された。
【0189】
(調製例10:スルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩の調製)
無水マレイン酸1モルに対してファーミンCS(花王株式会社製)1モルを定法に従って反応させた後、苛性ソーダ(1.1モル)と水を加えて中和して反応液を得た。その後、得られた反応液に無水重亜硫酸ソーダ(1.2モル)を加えて更に反応させ、スルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩の35質量%水溶液を得た。
【0190】
(各実施例等で利用した乳化分散液等について)
以下、各実施例等で利用した乳化分散液の種類等について説明する。
【0191】
<i>組成物に(A)成分(第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)を導入するために利用した乳化分散液[(A)成分導入用の成分]について
調製例2で得られたスルホネート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液(水分散液:(A)成分(調製例2で得られた自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)の含有量60質量%、溶媒(水)の含有量40質量%)。
【0192】
<ii>組成物に(B)成分(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂)を導入するために利用した乳化分散液[(B)成分導入用の成分]について
調製例3~8で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液(水分散液:(B)成分(調製例3~8で得られた第二の自己乳化型ポリウレタン樹脂)の含有量40質量%、溶媒(水)の含有量60質量%)のうちのいずれか1種。
(なお、比較例3~6では組成物に(B’)成分(強制乳化型水性ポリウレタン樹脂)を導入するために、「(B’)成分導入用の成分」として調製例9で得られた強制乳化型水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液(水分散液)を利用した)。
【0193】
<iii>組成物に(C)成分(架橋剤)を導入するために利用した成分[(C)成分導入用の成分]について
バイヒジュール3100(ポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネート((C)成分)、ポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートの含有量(固形分)100質量%、住化コベストロウレタン製)。
【0194】
<iv>組成物に(D)成分(起泡剤)を導入するために利用した成分[(D)成分導入用の成分]について
ステアリン酸アンモニウムの水溶液(ステアリン酸アンモニウムの含有量(固形分)30質量%、溶媒(水)70質量%:以下、場合により「ステアリン酸アンモニウム」を「化合物(D1)」と称する)
調製例10で得られたスルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩の水溶液(スルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩の含有量(固形分)35質量%、溶媒(水)65質量%:以下、場合により「スルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩」を「化合物(D2)」と称する)
パールクリート(C8アルキル硫酸モノエタノールアミン塩、C8アルキル硫酸モノエタノールアミン塩の含有量(固形分)24質量%、溶媒(水)76質量%、第一化成産業株式会社社製:以下、場合により「C8アルキル硫酸モノエタノールアミン塩」を「化合物(D3)」と称する)。
【0195】
<v>組成物に(E)成分(多糖類系増粘剤)を導入するために利用した成分[(E)成分導入用の成分]について
下記(E1)~(E3):
(E1)KELZAN(キサンタンガム、三晶株式会社製、キサンタンガム含有量(固形分)100質量%:以下、場合により「キサンタンガム」を「多糖類系増粘剤(E1)」と称する。)
(E2)SUPERGEL200(グアガム、三晶株式会社製、グアガム含有量(固形分100質量%:以下、場合により「グアガム」を「多糖類系増粘剤(E2)」と称する。)
(E3)GENUVISCO CSW-2(カラギーナン、三晶株式会社製、カラギーナン含有量(固形分100質量%:以下、場合による「カラギーナン」を「多糖類系増粘剤(E3)」と称する。)
のうちのいずれか1種。
(なお、参考例1~2においては、組成物中に(E)成分(多糖類系増粘剤)を含有させる代わりに、増粘剤の参考成分としてノニオン系ポリマー(以下、ノニオン系ポリマーを場合により単に「(E’)成分」と称する)を含有させており、その組成物の製造時に、(E)成分導入用の成分を用いる代わりに、(E’)成分導入用の成分を用いた。また、かかる「(E’)成分導入用の成分」としては「ビスライザー AP-2(ノニオン系ポリマー(会合型エーテル系増粘剤)、三洋化成工業株式会社製、ノニオン系ポリマーの含有量(固形分)30質量%、溶媒(水)70質量%)」を利用した)。
【0196】
(実施例1)
先ず、(A)成分導入用の成分として調整例2で得られたスルホネート基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液(第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の含有量60質量%)を70質量部、及び、(B)成分導入用の成分として調製例3で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液(第二の自己乳化型ポリウレタン樹脂の含有量40質量%)を30質量部の割合でそれぞれ用い、これらの混合液をディスパーで撹拌することにより水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液を得た。
【0197】
次に、前記水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液に対して、(E)成分導入用の成分として(E1)KELZAN(キサンタンガム含有量(固形分)100質量%)を0.2質量部添加し、その後、前記乳化分散液中に(E)成分(キサンタンガム)が均一に溶解されるようにディスパーで撹拌することにより、混合液を得た。
【0198】
次いで、得られた混合液に対して、(D)成分導入用の成分として、ステアリン酸アンモニウムの水溶液(ステアリン酸アンモニウムの含有量(固形分)30質量%)を2質量部、調製例10で得られたスルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩の水溶液(スルホコハク酸モノアルキルアミドナトリウム塩の含有量(固形分)35質量%)を4質量部、パールクリート(C8アルキル硫酸モノエタノールアミン塩の含有量(固形分)24質量%)を4質量部添加した後、(C)成分導入用の成分としてバイヒジュール3100(ポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートの含有量(固形分)100質量%)を10質量部添加し、その後、ディスパーにて1,000RPMの回転数で10分間撹拌して発泡体形成用組成物(未発泡の組成物)を得た。次に、得られた発泡体形成用組成物(未発泡の組成物)に対して、発泡倍率が3倍となるように、卓上ホイッパーにて950RPMの回転数で更に撹拌を行い、粘度が30,000mPasである、クリーム状の機械発泡(発泡倍率3倍)した分散液[発泡組成物(発泡した状態の発泡体形成用組成物)、溶媒:水、分散液中の(A)成分及び(B)成分の総量:45質量%]を得た。なお、かかる発泡倍率は、卓上ホイッパーにて機械発泡させる前の未発泡の前記発泡体形成用組成物(未発泡の組成物)の体積と、発泡後の組成物の体積とに基づいて求めた値([発泡後の組成物の体積]/[未発泡の組成物の体積])である。なお、前述のようにして得られた発泡体形成用組成物の組成(総量:120.2質量部)は、(A)成分:42質量部、(B)成分:12質量部、(C)成分:10質量部、(D)成分:2.96質量部(化合物(D1):0.6質量部、化合物(D2):1.4質量部、化合物(D3):0.96質量部)、(E)成分:0.2質量部、及び、(F)成分(水):53.04質量部であった。
【0199】
次いで、得られた分散液(発泡組成物)を、調製例1で得られた表皮層形成用材料の表皮層の上に、ドクターナイフを用いたナイフコーティング法により塗膜の厚みが1.8mmの設定値(以下、かかる塗膜の厚みの設定値を、塗膜の厚み(塗布厚み)の平均値とみなす。なお、かかる塗布厚みの平均値を、以下、場合により単に「乾燥前の発泡層の厚み」と称する)となるように塗布し、熱風乾燥機を用いて温度120℃、時間5分の条件で乾燥して塗膜を硬化せしめて、表皮層上に発泡樹脂層が積層された発泡体を得た。なお、このようにして得られた発泡体の垂直方向の断面を電子顕微鏡にて測定したところ、乾燥後の発泡樹脂層の厚み(平均の厚み)は1.75mmであることが確認されるとともに、発泡樹脂層は、微細で均一なセル構造を有する多孔構造体であることが確認された。
【0200】
次いで、表皮層上に形成した発泡体の上に、下記組成の接着剤を乾燥後の厚みの平均値が50μmとなるよう塗布し、ピンテンターを用いて温度80℃で1分間乾燥した。このようにして乾燥後、直ちに、ポリエステルニット(色染社製の商品名「ポリエステルダブルピケ」、目付:241g/m2)と貼り合わせ、更にカレンダーを用いて温度150℃及び圧力30kg/cm2の条件でラミネートを行った。その後、温度45℃及び湿度40%RHの条件に調整した恒温恒湿器中で2日熟成を行い、離型紙を剥がして(皮革用の材料(皮革状積層体))を得た。
〔接着剤の組成(各成分の使用量)〕
エバファノールHO-38(日華化学株式会社製、二液型水性ポリウレタン樹脂系接着剤の主剤):100g
バイヒジュール3100:10g
ネオステッカーN(日華化学株式会社、会合型増粘剤):1g。
【0201】
(比較例1~5及び参考例1)
組成物の製造に利用する成分の種類及び使用量を、それぞれ表2に示す成分の種類及び使用量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。なお、表2中の記号「-」はその成分を含有していないこと(その成分の含有量が0であること)を示す。
【0202】
【0203】
[実施例1、比較例1~5及び参考例1で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性について]
実施例1、比較例1~5及び参考例1で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性を以下のようにして評価した。評価結果をそれぞれ表3に示す。
【0204】
〈風合いの評価〉
各実施例及び各比較例において得られた皮革用の材料(皮革状積層体)について、触感により以下の基準に従って風合いを評価した。なお、ここで評価する「風合い」について、3級以上であれば、十分に高い水準のものであると判断でき、風合いが3級以上の皮革用の材料(皮革状積層体)は、十分に良好な風合いを有するものであると言える。
〔風合いの評価基準〕
5級:柔軟かつ反発弾性に極めて富んだ触感で、非常に優れた風合い
4級:柔軟かつ反発弾性に富んだ触感で、優れた風合い
3級:柔軟でかつ反発弾性を感じられる触感で、十分な風合い
2級:やや粗硬かつペーパーライクな(紙のような)触感で、やや不十分な風合い
1級:粗硬かつペーパーライクな(紙のような)触感で、不十分な風合い。
【0205】
〈乾燥後の発泡層の厚みの測定〉
各実施例及び各比較例において皮革用の材料(皮革状積層体)の調製の際に得られた発泡体をそれぞれ用いて、発泡体の垂直方向の断面を電子顕微鏡にて観察し、該発泡体中の発泡樹脂層の平均厚みを算出した。この値を「乾燥後の発泡層の厚み」と称する。また、発泡樹脂層の平均厚みの測定に際しては、断面中の任意の3点の測定箇所においてそれぞれ厚みを測定して平均値を求めた。なお、各実施例等において形成された発泡樹脂層をそれぞれ電子顕微鏡により断面観察したところ、その表面はいずれも十分に滑らかであって各発泡樹脂層はいずれも厚みの均一性が十分に高いものとなっていたことから、本測定においては各実施例及び各比較例において形成された発泡樹脂層の平均厚み(乾燥後の発泡層の厚み)として、任意の3点の測定箇所の厚みの平均値を採用した。ここにおいて、乾燥後の発泡層の厚み(発泡樹脂層の平均厚み)が、乾燥前の発泡層の厚みの50%以上の大きさである場合には、十分な厚みを有する良好な発泡体であるものと評価できる。すなわち、下記計算式(I)を計算して求められる「発泡層の膜厚の保持率(以下、場合により単に「発泡層膜厚保持率」と称する)」が、50%以上の大きさである場合には、十分な厚みを有する良好な発泡体であるものと評価できる。
[計算式(I)]
[R]={[TA]/[TB]}×100
(式中、Rは発泡層の膜厚の保持率(発泡層膜厚保持率、単位:%)を示し、TAは乾燥後の発泡層の厚みを示し、TBは乾燥前の発泡層の厚みを示す。)。
【0206】
〈材料破壊強度の測定〉
各実施例及び各比較例において得られた皮革用の材料(皮革状積層体)に対して、JIS K6854-3:1999(接着剤-はく離接着強さ試験方法-第3部:T形はく離)に記載されている試験と同様の試験を行い、皮革用の材料(皮革状積層体)の材料破壊強度を測定した。なお、試験に際しては、皮革用の材料(皮革状積層体)を用いて幅が2cmの試験片を調製した。また、このような材料破壊強度が4.0N/cm以上であれば、十分に高度な水準の材料破壊強度を有する皮革用の材料(皮革状積層体)であると言え、更に5.0N/cm以上となるような場合には、非常に高度な材料破壊強度を有する、非常に良好な皮革用の材料(皮革状積層体)であると評価できる。
【0207】
〈発泡体形成用組成物の起泡性の評価〉
各実施例及び各比較例において、未発泡の前記発泡体形成用組成物(未発泡の組成物)から、クリーム状の機械発泡(発泡倍率3倍)した分散液(発泡組成物)を得る際に、未発泡の状態(未発泡の組成物)から発泡倍率が3倍となるまでに要した時間を「3倍発泡までに要した時間」として表3に示す。
【0208】
なお、表3に発泡体形成用組成物の組成も併せて示す。また、表3中、(A)成分は調製例2で得られた自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(B)成分は調製例3で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂を示し、(B’)成分は調製例9で得られた強制乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(C)成分はポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートを示し、(D)成分は化合物(D1)~化合物(D3)の混合物を示し、(E)成分は多糖類系増粘剤(E1)(KELZAN)を示し、(E’)成分はノニオン系ポリマー(増粘剤の参考成分)を示し、(F)成分は水を示す(ただし、比較例3~5の(F)成分の数値は、水のみの数値ではなく、水と、用いた強制乳化型水性ポリウレタン樹脂の乳化分散液中に含まれていた乳化剤とを含んだ数値である。なお、比較例3~5の(F)成分における乳化剤の含有量はそれぞれ2質量部(比較例3)、0.6質量部(比較例4)、0.6質量部(比較例5)である)。さらに、表3中の記号「-」は、その成分を含有していないこと(その成分の含有量が0であること)を示す。
【0209】
【0210】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例1)は、3倍発泡までに要した時間(分)が3分であり、3倍といった高倍率まで発泡させるための時間が十分に短いことから、組成物の起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能であることが確認された。
【0211】
また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例1)は、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値が、乾燥前の塗膜の厚みの平均値(1.8mm)とほぼ同じ大きさ(1.75mm)となっており、発泡層膜厚保持率が97%となっていることから、十分な厚みを有する良好な発泡体が得られることが確認された。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例1)には、得られる皮革用材(皮革用の材料)が非常に優れた風合いを有するものとなっていた。更に、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例1)は、得られる皮革用材(皮革用の材料)の材料破壊強度が6.5N/cmとなっており、材料破壊強度が非常に高いものとなることが確認された。
【0212】
これに対して、比較例1~3で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、発泡層膜厚保持率が50%未満となっており、十分な厚みを有する良好な発泡体を得ることができなかった。また、比較例4で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、材料破壊強度が3.5N/cmとなっており、4.0N/cm以上といった十分に高度な水準の材料破壊強度を得ることはできなかった。
【0213】
なお、比較例5で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値が、乾燥前の塗膜の厚みの平均値(1.8mm)とほぼ同じ大きさ(1.75mm)となっており、発泡層膜厚保持率が97%となっていることから、十分な厚みを有する良好な発泡体が得られることが確認された。更に、比較例5で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、得られる皮革用材(皮革用の材料)が非常に優れた風合いを有していた。また、比較例5で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、材料破壊強度が5.0N/cmといった十分に高度な水準の材料破壊強度を有していた。ここで、ポリウレタン樹脂成分の種類以外の組成がほぼ同様の組成となっている、比較例5で得られた発泡体形成用組成物と実施例1で得られた発泡体形成用組成物とを対比すると、ポリウレタン樹脂成分として(A)成分及び(B)成分を利用している実施例1の方が、ポリウレタン樹脂成分として(A)成分及び(B’)成分を利用している比較例5よりも、更に高い材料破壊強度(6.5N/cm)が得られることが分かった。このような結果から、本発明の発泡体形成用組成物によれば、材料破壊強度の点で更に優れた特性を有する皮革用材(皮革用の材料)を得ることが可能であることが分かった。
【0214】
また、参考例1で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値が、乾燥前の塗膜の厚みの平均値(1.8mm)とほぼ同じ大きさ(1.70mm)となっており、発泡層膜厚保持率が94%となっていることから、十分な厚みを有する良好な発泡体が得られることが確認された。更に、参考例1で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、得られる皮革用材(皮革用の材料)が非常に優れた風合いを有していた。また、参考例1で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、材料破壊強度が6.0N/cmといった十分に高度な水準の材料破壊強度を有していた。このような結果から、参考例1の組成とした場合にも、十分に優れた物性を有する皮革用材(皮革用の材料)を形成できることが確認された。なお、増粘剤の種類のみが異なる、実施例1で得られた発泡体形成用組成物と参考例1で得られた発泡体形成用組成物とを対比すると、多糖類系増粘剤を利用している実施例1で得られた発泡体形成用組成物の方が、より高い材料破壊強度を有していることが分かった。このような結果から、本発明の発泡体形成用組成物によれば、材料破壊強度の点で更に優れた特性を有する皮革用材(皮革用の材料)を得ることが可能であることが分かった。
【0215】
(実施例2~9)
組成物の製造に利用する成分の種類及び使用量を、それぞれ表4に示す成分の種類及び使用量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。なお、表4中の記号「-」はその成分を含有していないこと(その成分の含有量が0であること)を示す。また、表4には、参照のため、実施例1に関しても、組成物の製造に利用した成分の種類及び使用量を併せて示す。
【0216】
【0217】
[実施例2~9で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性について]
実施例1、比較例1~5及び参考例1で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性の評価方法と同様の方法を採用して、風合い、乾燥後の発泡体の厚み、材料破壊強度、起泡性(発泡倍率が3倍となるまでに要した時間)を評価した。得られた結果を表5に示す。なお、参照のため、実施例1の結果を表5に併せて示す。また、表5に各実施例で得られた発泡体形成用組成物の組成も併せて示す。表5中、(A)成分は調製例2で得られた自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(B)成分は調製例3~8で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂のうちのいずれかを示し、(C)成分はポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートを示し、(D)成分は「化合物(D1)~化合物(D3)の混合物(実施例1~6及び8~9で利用)」及び「化合物(D1)と化合物(D2)の混合物(実施例7で利用)」のうちのいずれかを示し、(E)成分は多糖類系増粘剤(E1)を示し、(F)成分は水を示す。
【0218】
【0219】
表4及び表5の記載からも明らかなように、(A)成分導入用の成分(調製例2で得られたスルホネート基含有タイプの自己乳化型水性ポリウレタン(第一の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂:(A)成分)の乳化分散液)と、(B)成分導入用の成分(カルボキシレート基含有タイプの自己乳化型水性ポリウレタン(第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂:(B)成分)の乳化分散液)の使用量(質量比)がいずれも70:30となっており、かつ、発泡体形成用組成物の組成として(B)成分の種類のみが異なる実施例1~6の対比から、(B)成分が多段式の反応形式で得られたものである場合(調製例4~8)には、(B)成分がいわゆるワンショットの反応形式で得られたものである場合(調製例3)よりも、材料破壊強度がより高い値となっており、(B)成分として、調製例4~8で得られるような第二の自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を用いた場合には材料破壊強度をより高度なものとすることが可能であることが分かった。このような表5に示す結果から、実施例2~6は、実施例1と対比して材料破壊強度の点でより優れた結果が得られていること、及び、他の評価項目(3倍発泡までに要した時間(分)、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値、風合い)については実施例1と同等の結果が得られていることが分かった。そのため、(B)成分が多段式の反応形式で得られたものである場合(調製例4~8)には、(B)成分がいわゆるワンショットの反応形式で得られたものである場合(調製例3)よりも、より優れた特性を有する皮革用材を製造できることが分かった。
【0220】
また、表4及び表5の記載からも明らかなように、発泡体形成用組成物の組成として、水((F)成分)の量以外には、(D)成分として「化合物(D3)」を含有しているか否かといった点のみが相違(組成物の製造にパールクリートを使用したか否かといった点のみが相違)する実施例6~7の対比から、(D)成分として化合物(D3)を利用した場合(化合物(D1)及び化合物(D2)とともに更に化合物(D3)を利用した場合:実施例6)には、材料破壊強度がより高度なものとなるとともに風合いもより高度なものとなること、更には、3倍発泡までに要する時間もより短いものとすることが可能であることが分かった。
【0221】
また、表4及び表5の記載からも明らかなように、(B)成分の種類が同じで発泡体形成用組成物の組成として、水((F)成分)の量以外には(A)成分及び(B)成分の含有量のみが異なる、実施例6((A)成分の含有量:42質量部、(B)成分の含有量:12質量部、質量比([(A)成分]:[(B)成分])は78:22)、実施例8((A)成分の含有量:30質量部、(B)成分の含有量:20質量部、質量比([(A)成分]:[(B)成分])は60:40)、実施例9((A)成分の含有量:36質量部、(B)成分の含有量:16質量部、質量比([(A)成分]:[(B)成分])は69:31)の評価結果を確認すると、実施例6及び8~9で得られた発泡体形成用組成物のいずれを用いた場合においても7.0N/cmといった、十分に高度な材料破壊強度が達成されていることが確認された。また、このように優れた特性を有する実施例6及び8~9で得られた発泡体形成用組成物の中で、更に対比した場合には、(A)成分及び(B)成分の総量に対して(A)成分の含有量を70質量%以上としている実施例6で得られた発泡体形成用組成物を用いることで、更に高度な水準の材料破壊強度を達成できるとともに、発泡層膜厚保持率もより高いものとすることが可能であることが分かった。
【0222】
(実施例10~11、比較例6及び参考例2)
組成物の製造に利用する成分の種類及び使用量を、それぞれ表6に示す成分の種類及び使用量に変更した以外は実施例8と同様の操作を行って、皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。なお、表6中の記号「-」はその成分を含有していないこと(その成分の含有量が0であること)を示す。また、表6には、参照のため、実施例10~11と(E)成分導入用の成分の種類とその使用量以外は、同じ成分を同量利用している実施例8に関しても、組成物の製造に利用した成分の種類及び使用量を併せて示す。
【0223】
【0224】
[実施例10~11、比較例6及び参考例2で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性について]
実施例1、比較例1~5及び参考例1で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性の評価方法と同様の方法を採用して、風合い、乾燥後の発泡体の厚み、材料破壊強度、起泡性(発泡倍率が3倍となるまでに要した時間)を評価した。得られた結果を表7に示す。なお、参照のため、実施例8の結果を表7に併せて示す。また、表7に各実施例等で得られた発泡体形成用組成物の組成も併せて示す。また、表7中、(A)成分は調製例2で得られた自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(B)成分は調製例3で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂を示し、(B’)成分は調製例9で得られた強制乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(C)成分はポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートを示し、(D)成分は、化合物(D1)~化合物(D3)の混合物を示し、(E)成分は多糖類系増粘剤(E1)~(E3)のいずれかを示し、(E’)成分はノニオン系ポリマー(増粘剤の参考成分)を示し、(F)成分は水を示す。
【0225】
【0226】
表6及び表7の記載からも明らかなように、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例10~11)は、3倍発泡までに要した時間(分)が3分であり、3倍といった高倍率まで発泡させるための時間が十分に短いことから、組成物の起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能であることが確認された。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例10~11)は、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値が、乾燥前の塗膜の厚みの平均値(1.8mm)とほぼ同じ大きさ(1.6mm)となっており、発泡層膜厚保持率が89%となっていることから、十分な厚みを有する良好な発泡体が得られることが確認された。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例10~11)には、得られる皮革用材(皮革用の材料)が非常に優れた風合いを有するものとなるとともに、得られる皮革用材(皮革用の材料)の材料破壊強度はいずれも6.2N/cm以上となっており、材料破壊強度が非常に高いものとなることが確認された。なお、(E)成分の種類及び使用量以外は同じ組成である実施例8及び実施例10~11の結果を対比することで、(E)成分(多糖類系増粘剤)として、多糖類系増粘剤(E1)~(E3)の中でも、多糖類系増粘剤(E1)(キサンタンガム)を利用した場合に、材料破強度を更に高いものとすることが可能であることが分かった。
【0227】
また、参考例2で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値が1.50mmとなっており、発泡層膜厚保持率が83%となっていることから、十分な厚みを有する良好な発泡体が得られることが確認された。更に、参考例2で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、得られる皮革用材(皮革用の材料)が非常に優れた風合いを有していた。また、参考例2で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、材料破壊強度が5.5N/cmといった十分に高度な水準の材料破壊強度を有していた。このような結果から、参考例2の組成とした場合にも、十分に優れた物性を有する皮革用材(皮革用の材料)を形成できることが確認された。なお、増粘剤の種類のみが異なる、実施例8及び実施例10~11で得られた発泡体形成用組成物と参考例2で得られた発泡体形成用組成物とを対比すると、多糖類系増粘剤を利用している実施例8及び実施例10~11で得られた発泡体形成用組成物(本発明)の方が、より高い材料破壊強度を有していることが分かった。このような結果から、本発明の発泡体形成用組成物によれば、材料破壊強度の点で更に優れた特性を有する皮革用材(皮革用の材料)を得ることが可能であることが分かった。
【0228】
さらに、比較例6で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値が1.50mmとなっており、発泡層膜厚保持率が83%となっていることから、十分な厚みを有する良好な発泡体が得られることが確認された。更に、比較例6で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、得られる皮革用材(皮革用の材料)が非常に優れた風合いを有していた。また、比較例6で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、材料破壊強度が4.8N/cmといった十分に高度な水準の材料破壊強度を有していた。ここで、ポリウレタン樹脂成分の種類以外の組成がほぼ同様の組成となっている、比較例6で得られた発泡体形成用組成物と実施例8で得られた発泡体形成用組成物との対比から、実施例8で得られた発泡体形成用組成物(本発明)の方が、更に高い材料破壊強度を有していることが分かった。このような結果から、本発明の発泡体形成用組成物によれば、材料破壊強度の点で更に優れた特性を有する皮革用材(皮革用の材料)を得ることが可能であることが分かった。
【0229】
(実施例12~15)
組成物中の(E)成分の含有比率(質量部)が0.2質量部(実施例8)から、それぞれ0.15質量部(実施例12)、0.08質量部(実施例13)、0.5質量部(実施例14)、1.8質量部(実施例15)となるように、(E)成分導入用の成分の使用量(質量比)をそれぞれ変更した以外は、実施例8と同様の操作を行って、皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。
【0230】
(比較例7)
(E)成分導入用の成分を利用しなかった以外は、実施例8と同様の操作を行って、皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。
【0231】
[実施例12~15及び比較例7で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性について]
実施例1、比較例1~5及び参考例1で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性の評価方法と同様の方法を採用して、風合い、乾燥後の発泡体の厚み、材料破壊強度、起泡性(発泡倍率が3倍となるまでに要した時間)を評価した。得られた結果を表8に示す。また、実施例8の結果も表8に併せて示す。さらに、実施例8、実施例12~15及び比較例7で得られた発泡体形成用組成物の組成及び実施例8で得られた発泡体形成用組成物の組成を表8に併せて示す。表8中の記号「-」はその成分を含有していないこと(その成分の含有量が0であること)を示す。また、表8中、(A)成分は調製例2で得られた自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(B)成分は調製例3で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂のうちのいずれかを示し、(C)成分はポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートを示し、(D)成分は化合物(D1)~化合物(D3)の混合物を示し、(E)成分は多糖類系増粘剤(E1)を示し、(F)成分は水を示す。なお、実施例12~15及び比較例7で得られた発泡体形成用組成物は、上述のような製造方法からも明らかなように、実施例8で得られた発泡体形成用組成物と(E)成分の含有量以外は、基本的に同一の組成を有する組成物である。
【0232】
【0233】
表8に示す結果からも明らかなように、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例12~15)は、3倍発泡までに要した時間(分)が3.0分又は3.5分と十分に短いことから、組成物の起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能であることが確認された。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例12~15)はいずれも、乾燥後の発泡樹脂層の厚みの平均値が1.55mm以上となっており、発泡層膜厚保持率が86%以上となっていることから、十分な厚みを有する良好な発泡体が得られることが確認された。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例12~15)には、得られる皮革用材(皮革用の材料)がいずれも4級以上の十分に高い水準の風合いを有するものとなることが確認された。更に、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例12~15)には、得られる皮革用材(皮革用の材料)の材料破壊強度はいずれも5.0N/cm以上となっており、材料破壊強度が非常に高いものとなることが確認された。
【0234】
これに対して、(E)成分を利用していない比較例7で得られた発泡体形成用組成物は、発泡層膜厚保持率が50%以下となっており、十分な厚みを有する発泡体を得ることができなかった。また、比較例7で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合には、得られる皮革用材(皮革用の材料)の風合いも十分なものとすることができず、更には、材料破壊強度も十分な水準のものとすることができなかった。
【0235】
このような実施例8及び実施例12~15で得られた発泡体形成用組成物並びに比較例7で得られた発泡体形成用組成物の結果(表8に示す結果)から、(E)成分の使用量(質量比)を0.08~1.8の範囲で変化させる場合について確認すると、(E)成分の使用量を0.15~0.5とした場合に、風合いと材料破壊強度とがより高い水準のものとなっていることが確認され、更に、(E)成分の使用量を0.2とした場合((A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.4質量部とした場合に相当する)には、材料破壊強度の値が最大となることが分かった。
【0236】
(実施例16~18)
得られた分散液(発泡組成物)を、調製例1で得られた表皮層形成用材料の表皮層の上に、ドクターナイフを用いたナイフコーティング法により塗膜の厚みが1.8mmの設定値となるように塗布する工程において、塗膜の厚みの設定値(乾燥前の発泡層の厚み)を1.8mmから、それぞれ1.00mm(実施例16)、0.50mm(実施例17)、0.30mm(実施例18)に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行って、皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。このように、実施例16~18においては、乾燥前の発泡層の厚みを変更した以外は、実施例8と同様にして皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。
【0237】
[実施例16~18で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性について]
実施例1、比較例1~5及び参考例1で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性の評価方法と同様の方法を採用して、風合い、乾燥後の発泡体の厚み、材料破壊強度、起泡性(発泡倍率が3倍となるまでに要した時間)を評価した。得られた結果を表9に示す。なお、実施例8の結果を表9に併せて示す。また、表9には、各実施例等で得られた発泡体形成用組成物の組成も併せて示す。ここで、表9中、(A)成分は調製例2で得られた自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(B)成分は調製例3で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂を示し、(C)成分はポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートを示し、(D)成分は化合物(D1)~化合物(D3)の混合物を示し、(E)成分は多糖類系増粘剤(E1)を示し、(F)成分は水を示す。なお、実施例16~18で得られた発泡体形成用組成物は、上述のような製造方法からも明らかなように、実施例8で得られた発泡体形成用組成物と同一の組成物である。
【0238】
【0239】
表9に示す結果からも明らかなように、実施例8及び実施例16~18では同じ発泡体形成用組成物を用いており、かかる組成物が3倍発泡までに要した時間(分)が3分と十分に短いものであることから、実施例8及び実施例16~18で用いた組成物は、起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能なものであることが確認された。
【0240】
また、表9に示す結果から、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合、乾燥前の発泡層の厚みを1.0mm以上とした場合(実施例8及び16)に発泡層膜厚保持率を80%以上とすることが可能となっており、発泡層膜厚保持率を十分に高い値に維持することができ、十分な厚みを有する良好な発泡体を製造することが可能であることが確認された。さらに、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合においては、乾燥前の発泡層の厚みを0.5mm以下と薄いものとした場合(実施例17~18)においても、発泡層膜厚保持率を60%以上とすることが可能となっており、乾燥前の発泡層の厚みを0.5mm以下に薄くした場合においても発泡層膜厚保持率を十分に維持して、十分な厚みを有する良好な発泡体を製造することが可能であることが確認された。このように、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例16~18)には、乾燥前の発泡層の厚み(塗膜の厚みの設定値)を0.3mm~1.8mmまで変化させたとしても、発泡層膜厚保持率を十分に高い値に維持することができ、十分な厚みを有する良好な発泡体を製造することが可能であることが分かった。
【0241】
また、表9に示す結果から、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例16~18)には、乾燥前の発泡層の厚み(塗膜の厚みの設定値)を0.3mm~1.8mmまで変化させたとしても、得られる皮革用材(皮革用の材料)の風合いが5級のままであり、乾燥前の発泡層の厚みを薄くした場合(例えば0.5mm以下に薄くする場合等)においてもその厚みが1.8mmである場合と同等の風合いを有し、非常に優れた風合いを有する皮革用材(皮革用の材料)となることが分かった。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例16~18)には、乾燥前の発泡層の厚みを0.3mm~1.8mmまで変化させたとしても、得られる皮革用材(皮革用の材料)の材料破壊強度がいずれも5.0N/cm以上となっており、乾燥前の発泡層の厚みを薄くした場合(例えば0.5mm以下に薄くする場合等)においても十分に高い材料破壊強度を有する皮革用材(皮革用の材料)を得ることが可能であることが分かった。このように、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例16~18)には、乾燥前の発泡層の厚みを薄くした場合(例えば0.5mm以下に薄くする場合等)においても、風合いと材料破壊強度とが十分に高い水準にある皮革用材(皮革用の材料)を得ることが可能であることが確認された。すなわち、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例16~18)には、風合いに対して発泡層(発泡樹脂層)の厚みによる影響がなく、風合いと材料破壊強度といった特性を、厚みによらず十分に高い水準に維持できることが分かった。このような結果から、本発明の発泡体形成用組成物は、皮革用材を形成するための材料として、非常に汎用性の高いものであることが分かる。
【0242】
(実施例19~23)
発泡体形成用組成物を発泡倍率が3倍となるように更に撹拌する工程を施す代わりに、発泡体形成用組成物を発泡倍率が表10に示す発泡倍率(1.5倍(実施例19)、2倍(実施例20)、2.5倍(実施例21)、4倍(実施例22)、又は、5倍(実施例23))となるように更に撹拌する工程を施した以外は、実施例8と同様の操作を行って、皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。このように、実施例19~23においては、発泡倍率を変更した以外は、実施例8と同様にして皮革用の材料(皮革状積層体)をそれぞれ得た。
【0243】
[実施例19~23で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性について]
実施例1、比較例1~5及び参考例1で得られた皮革用の材料(皮革状積層体)の特性の評価方法と同様の方法を採用して、風合い、乾燥後の発泡体の厚み、材料破壊強度を評価した。得られた結果を表10に示す。なお、実施例8の結果も表10に併せて示す。また、表10には、各実施例等で用いた発泡体形成用組成物の組成を併せて示す。ここで、表10中、(A)成分は調製例2で得られた自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を示し、(B)成分は調製例3で得られたカルボキシル基を有する自己乳化型の水性ポリウレタン樹脂を示し、(C)成分はポリエーテル変性脂肪族ポリイソシアネートを示し、(D)成分は、化合物(D1)~化合物(D3)の混合物を示し、(E)成分は多糖類系増粘剤(E1)を示し、(F)成分は水を示す。なお、実施例19~23で得られた発泡体形成用組成物は、上述のような製造方法から、実施例8で得られた発泡体形成用組成物と同一の組成物である。
【0244】
【0245】
表10の記載からも明らかように、実施例8及び実施例19~23では同じ組成の発泡体形成用組成物を用いており、実施例8で用いた発泡体形成用組成物が発泡倍率を3倍とするまでの時間が3.0分のものであることから、実施例19~23で用いた発泡体形成用組成物はいずれも、組成物の起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能なものであることは明らかである。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8及び実施例19~23)には、発泡倍率を1.5~5倍に変化させたとしても、発泡層膜厚保持率はいずれも88%以上となっており、十分な厚みを有する良好な発泡体を製造することが可能であることが確認された。さらに、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8~実施例19~23)には、発泡倍率を1.5~5倍に変化させた場合においても、得られる皮革用材(皮革用の材料)の風合いは3級以上(3級~5級)となっており、風合いが十分な水準のものとなることが確認された。また、本発明の発泡体形成用組成物を用いた場合(実施例8~実施例19~23)には、発泡倍率を1.5~5倍に変化させた場合においても、得られる皮革用材(皮革用の材料)の材料破壊強度がいずれも5.0N/cm以上となっており、材料破壊強度が非常に高い皮革用材(皮革用の材料)得ることが可能であることが確認された。
【0246】
以上説明した通り、実施例1~23で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合にはいずれも、起泡性が十分に高く効率よく発泡させることが可能なものであることが確認されるとともに、乾燥後の発泡層が十分な厚みを有しており、発泡樹脂層の厚みを十分なものとすることが可能なものであることが確認された。更に、実施例1~23で得られた発泡体形成用組成物を用いた場合にはいずれも、得られる皮革用材(皮革用の材料)が3級以上の十分に良好な風合いを有するとともに、材料破壊強度も5.0N/cm以上といった非常に高度なものとなることが確認された。このような結果から、本発明の発泡体形成用組成物(実施例1~23)は、これを利用して得られる皮革用材に十分な風合いと、より高い水準の材料破壊強度とを付与することが可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明によれば、水性ポリウレタン樹脂を含む発泡体形成用組成物でありながら、起泡性が十分に高く、効率よく発泡させることが可能であるとともに、その組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層の厚みを十分なものとすることが可能であり、しかも、その組成物を用いて皮革用材を製造した場合に、得られる皮革用材に十分な風合いと、より高い水準の材料破壊強度とを付与することが可能な発泡体形成用組成物;その発泡体形成用組成物を用いた発泡体の製造方法;その発泡体形成用組成物の発泡硬化物からなる発泡樹脂層を備える発泡体;並びに、その発泡体を備える皮革用材;を提供することが可能となる。このような本発明の発泡体形成用組成物は、例えば、車輌、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等に利用される擬革様物(人工皮革や合成皮革)の材料等として特に有用である。