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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】PC鋼棒体
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20240222BHJP
   E04C 5/08 20060101ALI20240222BHJP
   E04C 5/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
E04G21/12 104D
E04G21/12 104C
E04C5/08
E04C5/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020115025
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012876
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿子生 悟
(72)【発明者】
【氏名】福田 真沙人
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-227343(JP,A)
【文献】特開2018-184796(JP,A)
【文献】実開平06-016612(JP,U)
【文献】特開2016-098563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/12
E04C5/08-5/18
E04B1/06、1/21-1/22
1/41、1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC鋼材と、
前記PC鋼材を覆うシース管と、
前記シース管と前記PC鋼材との間に配置され、前記PC鋼材に螺合すると共に、前記シース管の内面に支持され、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に螺合することにより、前記固定する方向側の前記シース管の端部を押圧する押圧部材と、
を備えるPC鋼棒体。
【請求項2】
PC鋼材と、
前記PC鋼材が貫通するアンカープレートと、
前記アンカープレートから突出するPC鋼材に螺合して、前記PC鋼材を前記アンカープレートに固定する固定部材と、
前記固定部材及び前記突出するPC鋼材を覆うシース管と、
前記シース管前記PC鋼材との間に配置され、前記PC鋼材に螺合すると共に、前記シース管の内面に支持され、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に螺合することにより、前記固定する方向側の前記シース管の端部を押圧する押圧部材と、
を備えるPC鋼棒体。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記シース管の内面に支持される外周部及び前記固定する方向に貫通する複数の貫通孔を有する板状部材と、前記PC鋼材に螺合し、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に前記板状部材を押圧する螺合部材とを備える請求項1又は2記載のPC鋼棒体。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記PC鋼材の外面を支持する第1支持部及び前記シース管の内面に支持される第2支持部を有し、中心軸が前記固定する方向の前記PC鋼材の中心軸と一致するように配置され、かつ、前記固定する方向に弾性を有するばね部材と、前記PC鋼材に螺合し、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に螺合することにより、前記ばね部材を押圧する螺合部とを備える請求項1又は2記載のPC鋼棒体。
【請求項5】
前記固定する方向側の前記シース管の端部には、パッキンが設けられている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPC鋼棒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC鋼棒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC鋼材の端部がナットに螺合され、ナットと建築構造物等との間にアンカープレートが設けられており、シース管は、一端開口がアンカープレートに当接するシース本体を備え、シース管とPC鋼材との間にはグラウト材が充填されているPC鋼棒体が知られている(特許文献1、[図7]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-184796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなPC鋼棒体では、グラウト材を充填した後に、シース管が回転等する場合は、アンカープレートと該アンカープレートに当接するシース管との間(すなわち、シース管のアンカープレートに当接する側の端部)からグラウト材が漏出する可能性がある。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、グラウト材を充填した後に、シース管が回転等した場合でも、シース管のアンカープレートに当接する側の端部からグラウト材が漏出するのを抑制できるPC鋼棒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかわるPC鋼棒体は、PC鋼材と、前記PC鋼材を覆うシース管と、前記シース管と前記PC鋼材との間に配置され、前記PC鋼材に螺合すると共に、前記シース管の内面に支持され、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に螺合することにより、前記固定する方向側の前記シース管の端部を押圧する押圧部材と、を備える。
【0007】
また、本発明にかかわるPC鋼棒体は、PC鋼材と、前記PC鋼材が貫通するアンカープレートと、前記アンカープレートから突出するPC鋼材に螺合して、前記PC鋼材を前記アンカープレートに固定する固定部材と、前記固定部材及び前記突出するPC鋼材を覆うシース管と、前記シース管、前記固定部材及び前記PC鋼材との間に配置され、前記PC鋼材に螺合すると共に、前記シース管の内面に支持され、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に螺合することにより、前記固定する方向側の前記シース管の端部を押圧する押圧部材と、を備える。
【0008】
前記押圧部材は、前記シース管の内面に支持される外周部及び前記固定する方向に貫通する複数の貫通孔を有する板状部材と、前記PC鋼材に螺合し、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に前記板状部材を押圧する螺合部材とを備えることが好ましい。
【0009】
前記押圧部材は、前記PC鋼材の外面を支持する第1支持部及び前記シース管の内面に支持される第2支持部を有し、中心軸が前記固定する方向の前記PC鋼材の中心軸と一致するように配置され、かつ、前記固定する方向に弾性を有するばね部材と、前記PC鋼材に螺合し、かつ、前記PC鋼材に固定する方向に螺合することにより、前記ばね部材を押圧する螺合部とを備えることが好ましい。
【0010】
前記固定する方向側の前記シース管の端部には、パッキンが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グラウト材を充填した後に、シース管が回転等した場合でも、シース管のアンカープレートに当接する側の端部からグラウト材が漏出するのを抑制できるPC鋼棒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態にかかるPC鋼棒体の断面模式図。
図2】本発明の第2実施形態にかかるPC鋼棒体の断面模式図。
図3】本発明の第3実施形態にかかるPC鋼棒体の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態の説明において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図1から図3には、本発明の第1実施形態から第3実施形態にかかるPC鋼棒体の断面模式図が示されている。これらの実施形態は、2つのPC鋼材のうち予めコンクリートに定着されている一方のPC鋼材に対して、他方のPC鋼材を連結する例である。
【0014】
本発明に係わるPC鋼棒体(図中の符号1、2、3に相当)は、PC鋼材(図中の符号11に相当)と、PC鋼材11を覆うシース管(図中の符号21に相当)と、シース管21とPC鋼材11との間に配置され、PC鋼材11に螺合すると共に、シース管21の内面20Aに支持され、かつ、PC鋼材11に固定する方向Fに螺合することにより、前記固定する方向F側の前記シース管21の端部αを押圧する押圧部材(図中の符号30、30A、30Bに相当)と、を備える。
前記シース管21の押圧Pの調整は、押圧部材30、30A、30BをPC鋼材11に固定する方向Fに螺合する位置や力の調整により行うことができる。
【0015】
このように、本発明に係わるPC鋼棒体1、2、3は、押圧部材30、30A、30Bによって、PC鋼材11に固定する方向F側のシース管21の端部αが例えば、アンカープレート40に押圧Pされた状態になる。従って、PC鋼材11とシース管21との間にグラウト材Gを充填した後に、シース管21がPC鋼材11の中心軸FLと平行(好ましくは一致)する該シース管21の中心軸を軸として回転等(以下、単に「回転等」という)した場合でも、押圧部材30、30A、30Bによりシース管21が押圧Pされた状態で回転等することになるため、シース管21の端部α(シース管21のアンカープレート40に当接する側の端部α)からグラウト材Gが漏出するのを抑制できる。
【0016】
本発明に係わるPC鋼棒体1、2、3は、具体的には、PC鋼材11と、PC鋼材11が貫通するアンカープレート40と、アンカープレート40から突出するPC鋼材11に螺合して、PC鋼材11をアンカープレート40に固定する固定部材50と、固定部材50及び前記突出するPC鋼材11を覆うシース管21と、シース管21、固定部材50及びPC鋼材11との間に配置され、PC鋼材11に螺合すると共に、シース管21の内面20Aに支持され、かつ、PC鋼材11に固定する方向Fに螺合することにより、前記固定する方向F側のシース管21の端部αを押圧Pする押圧部材30、30A、30Bと、を備える。固定部材50は、好ましくは、PC鋼材11をアンカープレート40に当接して固定する。
【0017】
このように、本発明に係わるPC鋼棒体1、2、3は、PC鋼材11をアンカープレート40に固定することで、押圧部材30、30A、30Bにより、シース管21の端部αはアンカープレート40に押圧Pされた状態になる。従って、グラウト材Gを充填した後に、シース管21が回転等した場合でも、押圧部材30、30A、30Bによりシース管21がアンカープレート40に押圧Pされた状態で回転等することになるため、シース管21の固定する方向F側のシース管21の端部αからグラウト材Gが漏出するのを抑制できる。
前記シース管21の押圧Pの調整は、同様に、押圧部材30、30A、30BをPC鋼材11に固定する方向Fに螺合する位置や力の調整により行うことができる。
【0018】
前記固定する方向F側のシース管21の端部αには、パッキン213が設けられていることが好ましい。具体的には、前記シース管21の端部αとアンカープレート40との間には、パッキン213が設けられていることが好ましい。
このように、前記シース管21の端部αに、パッキン213を備えることで、押圧部材30、30A、30Bにより押圧Pされたシース管21の端部αがパッキン213にめり込んで押圧された状態で回転等することになるため、よりシース管21の端部αからグラウト材Gが漏出するのを抑制することができる。
【0019】
本発明に係わるPC鋼棒体について、より具体的に説明する。
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態にかかるPC鋼棒体の断面模式図である。
図1において、PC鋼棒体1は、それぞれ同芯上であって図中紙面上左側に配置された第一PC鋼材11(上述したPC鋼材11に相当)、同じく右側に配置された第二PC鋼材12と、これらの端部同士を連結するカプラ13とを有するPC鋼棒10と、カプラ13で連結された第一PC鋼材11及び第二PC鋼材12を覆うシース管20と、シース管20の第一カプラシース継手21(上述したシース管21に相当)の位置を固定する押圧部材30とを備えている。
【0020】
第一PC鋼材11は、外周に雄ねじ部10Aを有する。
第一PC鋼材11の一部の周囲(図中紙面上左側)は、例えば黒色のポリエチレンのシース10Bで覆われており、シース10Bの内部には防錆材Bが充填されている。雄ねじ部10Aには防錆材Bの漏れを防止するブレーキングナット10Cが螺合されている。シース10Bの端部は、防錆材Bを封止するために、ブレーキングナット10Cの周面を覆っている(図中右側のシース10B及びブレーキングナット10Cも同様の構成である)。シース10Bの外周には雄ねじ10BAが形成されている。
【0021】
第二PC鋼材12は第一PC鋼材11と同様の構造である。
カプラ13は、第一PC鋼材11の端部と第二PC鋼材12の端部とを連結するものであり、雄ねじ部10Aに螺合する雌ねじ部(図示せず)を有する。
【0022】
第一PC鋼材11は、ブレーキングナット10Cの部分までが第一のコンクリート41に埋設されており、ブレーキングナット10Cは、第一のコンクリート41に設けられたアンカープレート40に当接している。
第一PC鋼材11は、アンカープレート40を貫通しており、この貫通した部分の根元は、アンカープレート40にワッシャー51を介して当接するナット50(上述した固定部材50に相当)に螺合されている。
【0023】
シース管20は、第一PC鋼材11及びナット50を覆う第一カプラシース継手21と、第二PC鋼材12を覆う第二カプラシース継手22と、カプラ13を覆い、第一カプラシース継手21と第二カプラシース継手22とを連結する連結シース継手23とを有するものであり、それらの内部空間にグラウト材Gが充填される。シース管20の周囲には、図示しない第二のコンクリートが設けられている。
第一カプラシース継手21、第二カプラシース継手22及び連結シース継手23は、それぞれ高密度ポリエチレンから形成され、かつ、例えば乳白色半透明とされている。
【0024】
第一カプラシース継手21は、一端が連結シース継手23に接続される筒状本体部211と、筒状本体部211の外周部に設けられ、シース管20の内外を連通する筒状部212とを有する。
筒状本体部211は、軸方向の両端部が開口した筒状とされ、一方の端部の開口がゴムや樹脂等で構成されたパッキン213でシールされる。筒状本体部211は、その内面の互いに対抗する位置から内方に突出した複数の突出部211Aを備えている。
筒状部212は、その軸芯が斜め上方、つまり、図中紙面上、鉛直と水平との間にある角度(「鉛直」は第一のコンクリート41の外面と平行な方向であってアンカープレート40から遠ざかる方向、「水平」は第一PC鋼材11と第二PC鋼材とを連結している方向)になるように、筒状本体部211に接合されている。筒状部212は、図示しないホースと接続され、グラウト材Gをシース管20に充填する際の流路とされる。
【0025】
第二カプラシース継手22は、シース10B(図中右側のシース10B)を挿通する小径部221と、小径部221より径の大きい大径部222と、小径部221と大径部222との間に設けられたテーパ部223と、テーパ部223に設けられ、シース管20の内外を連通する筒状部224とを有する。大径部222の端部には、雌ねじ222Aが形成されている。
小径部221の内径は、ブレーキングナット10Cの外径より大きい。
筒状部224は、図示しないホースと接続され、グラウト材Gがシース管20に充填される際に、空気が放出される流路とされる。
【0026】
小径部221とシース10Bとの間には、グラウト材Gをシース10Bから外部へ漏出することを防止する弾性の封止部材4が設けられている。小径部221の開口端側221Aと、シース10Bの外周面から露出している部分との間には、テーピング24が周方向に設けられている。
【0027】
本実施形態では、封止部材4は、気泡が混入されたエチレンプロピレンゴム(EPDM)等から形成されるスポンジゴムである。気泡は独立気泡でも半独立気泡でもよい。
封止部材4は、シース10Bの外周面全体に渡って配置されるものが好ましい。封止部材4をシース10Bに装着するために、予め筒状に形成された封止部材4の一部にスリットを軸方向に形成してもよい。
【0028】
連結シース継手23は、第一カプラシース継手21及び第二カプラシース継手22と同じ材質から形成された筒状部材である。
連結シース継手23の端部には、第一カプラシース継手21の筒状本体部211と第二カプラシース継手22の大径部222とに螺合するねじ部が形成されている。
【0029】
押圧部材30は、第一カプラシース継手21内に配置され、第一カプラシース継手21の位置を固定する。押圧部材30は、第一カプラシース継手21と第一PC鋼材11との間に配置され、第一PC鋼材11に螺合し、かつ、第一PC鋼材11に固定する方向Fに第一カプラシース継手21を押圧Pする。
押圧部材30は、第一カプラシース継手21の内面20Aに支持され、貫通孔31Bが設けられた板状部材31と、第一PC鋼材11に固定する方向Fに前記板状部材31を押圧する螺合部材32とを備えている。
【0030】
板状部材31は、例えば、図1(B)に示すように、円環板状の金属板に複数の貫通孔31Bが形成されたパンチングメタルや、円環板部分を格子状(メッシュ状)とすることで複数の貫通孔31Bが設けられた金属板で構成され、中央部に第一PC鋼材11が挿通される挿通孔31Cが設けられている。板状部材31は、外周部31Aが第一カプラシース継手21の内面20Aの突出部211Aに支持される。なお、板状部材31は、弾性を有していてもよいし、弾性を有していなくてもよい。
螺合部材32は、図1(C)に示すように、ナット状に形成された部材であり、高密度ポリエチレンから形成されている。
【0031】
(施工方法)
第1実施形態のPC鋼棒体1の施工方法について説明する。
まず、第一のコンクリート41に埋設させた第一PC鋼材11の一部を、アンカープレート40に貫通させておく。この状態は、第一PC鋼材11の一部が図1の紙面左側の構成(第一PC鋼材11、防錆材B、シース10B及びブレーキングナット10C)で、第一のコンクリート41に定着された状態である。そして、第一PC鋼材11のアンカープレート40に貫通した部分にワッシャー51を装着するとともに、ナット50を第一PC鋼材11の雄ねじ部10Aに螺合させて、ワッシャー51を介してナット50をアンカープレート40に当接させて固定する。ここで、第一PC鋼材11の一部は、ナット50から突出している。
【0032】
さらに、第一PC鋼材11に第一カプラシース継手21を設置し、第一カプラシース継手21内に板状部材31を設置する。
次いで、螺合部材32を第一PC鋼材11に螺合させて、螺合部材32で固定する方向Fに螺合させながら板状部材31をナット50方向に押圧する。これにより、第一カプラシース継手21は、パッキン213を介してアンカープレート40に押し付けられ、位置が固定されるとともに、パッキン213によって封止される。また、第一カプラシース継手21の内面がワッシャー51もしくはナット50の外周に接するため、第一カプラシース継手21の移動が強固に拘束される。
【0033】
そして、第二PC鋼材12のシース10Bの外周に封止部材4を巻き付けた状態で、あるいは、第二カプラシース継手22の小径部221の内周に封止部材4を這わせた状態で、第二PC鋼材12を小径部221に挿通する。その後、テーピング24を、小径部221とシース10Bの露出部分とに設ける。
さらに、連結シース継手23を第二カプラシース継手22の一方向にねじ込んでおき、カプラ13を第二PC鋼材12に先端が露出するまで一方向にねじ込んでおく。
この状態で、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12との端部同士を突き合わせ、カプラ13を逆方向に回して第一PC鋼材11と第二PC鋼材12とを連結する。さらに、第一カプラシース継手21と連結シース継手23とを逆方向に回してシース管20を形成する。
シース管20の筒状部212,224に図示しないホースを接続し、ホースを通じてグラウト材Gを筒状部212からシース管20の内部に充填する。
【0034】
筒状部212から充填されるグラウト材Gは、シース管20の底部から溜まり始め、徐々に上昇する。グラウト材Gの充填に伴って、シース管20の上部に溜まっている空気は、筒状部224を通じて外部に排出される。グラウト材Gが筒状部212の内側開口に達しても、シース管20は筒状部224と連通しているので、空気の外部への排出が円滑に行われる。
ここで、シース管20に充填されたグラウト材Gは、シース管20の小径部221と第二PC鋼材12のシース10Bとの間に設けられた封止部材4によって、外部に漏出しない。
仮に、グラウト材Gが封止部材4を通じて外部に漏出しようとしても、テーピング24により、グラウト材Gの外部への漏出が確実に阻止される。
グラウト材Gがシース管20に充填されたら、ホースを外し、必要に応じて、グラウト材Gがシース管20から漏れないようにするため筒状部212,224を封止する。
【0035】
その後、PC鋼棒10及びシース管20の周囲に第二のコンクリートを打設する。
そして、PC鋼棒10の緊張作業をする。つまり、第一PC鋼材11が第一のコンクリート41に固定された第二PC鋼材12に対して、第二PC鋼材12を引っ張ることで、PC鋼棒10を緊張する。
このPC鋼棒10の緊張作業に伴って、PC鋼棒10が軸方向に移動してシース管20に充填されたグラウト材Gがシース管20の小径部221と第二PC鋼材12のシース10Bとの間から漏出しようとするが、これらの間に設けられた封止部材4が第二PC鋼材12の移動に伴って弾性変形するので、シース管20の外へのグラウト材Gの漏出が阻止される。
【0036】
(実施形態のその他の効果)
(1)押圧部材30は、第一カプラシース継手21の内面に支持される外周部31A及び前記固定する方向に貫通する複数の貫通孔31Bを有する板状部材31と、前記第一PC鋼材11に螺合し、かつ、前記第一PC鋼材11に固定する方向Fに前記板状部材31を押圧する螺合部材32とを備えることにより、第一カプラシース継手21をアンカープレート40に押し付けて位置を固定する。そのため、シース管20内にグラウト材Gを充填する際、グラウト材Gが板状部材31の貫通孔31B部分を通ることができるので、グラウト材Gの充填が妨げられることを防止できる。
(2)板状部材31の貫通孔31Bの大きさと配置とを適宜設定することで、板状部材31にグラウト材Gが一旦せき止められ、グラウト材Gの先流れが抑制される。このため、シース管20において、筒状部212側(注入口側)のグラウト材Gの充填度が高まった後に、筒状部224側(排気口側)へグラウト材Gが流入することになり、グラウト材Gの充填度の向上に寄与することもできる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図2に基づいて説明する。
(構成)
第2実施形態のPC鋼棒体2は、押圧部材30Aの構成が第1実施形態と相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じであるため、押圧部材30A以外の説明は省略する。
図2において、押圧部材30Aは、第一PC鋼材11の外面を支持する第1支持部33A及び前記第一カプラシース継手21の内面20Aに支持される第2支持部33Bを有し、中心軸HLが前記固定する方向Fの第一PC鋼材11の中心軸FLと一致するように配置され、かつ、前記固定する方向Fに弾性を有するばね部材33と、前記第一PC鋼材11に螺合し、かつ、第一PC鋼材11に固定する方向Fに螺合することにより、前記ばね部材33を押圧する螺合部材32とを備えている。
【0038】
ばね部材33は、例えば、平面視において、図2(B)に示すように、第一PC鋼材11の外面を支持する第1支持部33Aにおいては、第一PC鋼材11への支持前は、第一PC鋼材11の外径より、内径が小さい円が連続する連続円形状のばね部分であり、前記第一カプラシース継手21の内面20Aに支持される第2支持部33Bにおいては、前記第一カプラシース継手21の内径への支持前は、第一カプラシース継手21の内径より大きい円が連続する連続円形状のばね部分であり、第1支持部33Aと第2支持部33Bが連結部33Cで連結されているものである。ばね部材33を第一PC鋼材11に取り付ける際には、第1支持部33Aを弾性で広げて支持するとともに、第一カプラシース継手21の内面20Aに取り付ける際には、第2支持部33Bを弾性で縮めて支持する。
【0039】
ばね部材33は、例えば、異なる形状の円が連続する多重円形状のものや、ばね部材33の径方向の中心に向かって円の直径が小さくなる渦巻き形状のもの(いわゆるゼンマイとは異なる)を用いてもよい。ばね部材33は、第2支持部33Bが第一カプラシース継手21の内面20Aの突出部211Aに支持され、第1支持部33Aが螺合部材32で押圧されることで、上述したような第一PC鋼材11に固定する方向Fに第一カプラシース継手21の固定する方向Fの端部αが押圧Pされる。
【0040】
(施工方法)
第2実施形態のPC鋼棒体2の施工方法は、板状部材31に代えてばね部材33を用いること以外は第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0041】
(実施形態のその他の効果)
第2実施形態では、上述した第1実施形態等の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(3)第一カプラシース継手21の内面20Aの突出部211Aに支持されたばね部材33で第一カプラシース継手21の固定する方向Fの端部αを押圧するため、ばね部材33の付勢力で第一カプラシース継手21をアンカープレート40に押し付けることができ、万一何らかの外力によって第一カプラシース継手21が移動してもばねの弾性力で元の位置に復帰させることができるため、第一カプラシース継手21の位置を固定することができる。
【0042】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図3に基づいて説明する。
(構成)
第3実施形態のPC鋼棒体3は、押圧部材30Bの構成が第1実施形態と相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じであるため、押圧部材30B以外の説明は省略する。
図3において、押圧部材30Bは、板状部材31と、螺合部材32と、板状部材31と螺合部材32との間に配置されるばね部材34とを備えている。
ばね部材34は、例えば、図3(B)に示すように、第一PC鋼材11の外面を支持する支持部34Aを有している。ばね部材34を第一PC鋼材11に取り付ける際には、支持部34Aを弾性で広げて支持する。ばね部材34は、例えば、図3(B)に示すような円錐コイルばねや、等円螺旋形状の一般的なものが用いられる。円錐コイルばねが用いられる場合、頂点側を螺合部材32に向けて配置するとよい。
【0043】
(施工方法)
第一カプラシース継手21内に板状部材31を設置するまでは、第1実施形態と同じである。
板状部材31を設置した後は、第一PC鋼材11の外面にばね部材34の支持部34Aを設置する。
その後、螺合部材32を第一PC鋼材11に螺合し、螺合部材32でばね部材34を介して板状部材31を押圧する。これにより、第一カプラシース継手21の端部αは、アンカープレート40に押し付けられ、位置が固定される。
これ以降は、第1実施形態と同じであるので、記載を省略する。
【0044】
(実施形態のその他の効果)
第3実施形態では、上述した第2実施形態の(3)の効果を奏することができる。
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態の板状部材31、又は、ばね部材33、34を皿ばねで構成してもよい。この場合、皿ばねの周部が第一カプラシース継手21の内面20Aの突出部211Aに支持され、皿ばねの内周部が螺合部材32で押圧する構成とすることができる。
【0045】
さらに、板状部材31、又は、ばね部材33、34を硬質ゴムやプラスチックで形成してもよい。
第1実施形態又は第3実施形態において、板状部材31は、金属以外の材質の部材であってもよいし、例えばその一部または全部を湾曲面で構成するなどで構成されていてもよい。
前記各実施形態では、封止部材4をスポンジゴムから構成するものとしたが、本発明では、これに限定されるものではなく、例えば、布や紙等から構成するものでもよい。
前記各実施形態では、第一カプラシース継手21の小径部221には、シース10Bの雄ねじに螺合する雌ねじを形成するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,2,3…PC鋼棒体、10…PC鋼棒、10A…雄ねじ部、10B…シース、11…第一PC鋼材(PC鋼材)、12…第二PC鋼材、13…カプラ、20…シース管、21…第一カプラシース継手(シース管)、22…第二カプラシース継手、224…筒状部、211…筒状本体部、30、30A、30B…押圧部材、32…螺合部材、40…アンカープレート、50…ナット、51…ワッシャー、B…防錆材、G…グラウト材
図1
図2
図3