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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】非接触給電無線作動システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20240222BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240222BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240222BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20240222BHJP
   B60L 53/22 20190101ALI20240222BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240222BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/40
H02J7/00 301D
B60L53/12
B60L53/22
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020131404
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028173
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 正治
(72)【発明者】
【氏名】勝野 政弘
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182003(JP,A)
【文献】米国特許第09130369(US,B2)
【文献】特開2010-252624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60M 1/00-7/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ユニットと、移動ユニットとからなる非接触給電無線作動システムであって、
前記固定ユニットが、第1の制御装置と、前記第1の制御装置につながる第1の無線装置と、非接触給電装置と、を有しており、
前記移動ユニットが、第2の制御装置と、第2の無線装置と、前記非接触給電装置の電力を受電する非接触受電装置と、第1の蓄電装置と、を有しており、前記第2の制御装置が、前記第2の無線装置を介して前記第1の無線装置と通信するとともに演算回路と出力段とを有しており、
さらに、前記移動ユニットが、前記非接触受電装置に接続して前記第2の無線装置および前記演算回路に電力を供給する第1の電源ラインと、前記非接触受電装置に接続して前記出力段に電力を供給する第2の電源ラインと、を有しており、
前記第1の蓄電装置は、前記第1の電源ラインに接続されており、前記第1の電源ラインの電力のみを蓄電し、
前記第1の電源ラインと前記第2の電源ラインが、前記非接触受電装置の段階から分離されていることを特徴とする非接触給電無線作動システム。
【請求項2】
固定ユニットと、移動ユニットとからなる非接触給電無線作動システムであって、
前記固定ユニットが、第1の制御装置と、前記第1の制御装置につながる第1の無線装置と、非接触給電装置と、を有しており、
前記移動ユニットが、第2の制御装置と、第2の無線装置と、前記非接触給電装置の電力を受電する非接触受電装置と、第1の蓄電装置と、を有しており、前記第2の制御装置が、前記第2の無線装置を介して前記第1の無線装置と通信するとともに演算回路と出力段とを有しており、
さらに、前記移動ユニットが、前記非接触受電装置に接続して前記第2の無線装置および前記演算回路に電力を供給する第1の電源ラインと、前記非接触受電装置に接続して前記出力段に電力を供給する第2の電源ラインと、を有しており、
前記第1の蓄電装置は、前記第1の電源ラインに接続されており、前記第1の電源ラインの電力のみを蓄電し、
前記第1の電源ラインの前記非接触受電装置と前記第1の蓄電装置との間に、逆流防止回路が配置されていることを特徴とする非接触給電無線作動システム。
【請求項3】
前記第1の電源ラインは、さらに前記第1の蓄電装置の後に安定化回路を有することを特徴とする請求項2に記載の非接触給電無線作動システム。
【請求項4】
前記非接触給電装置は第1の給電回路と第2の給電回路とを有し、
前記非接触受電装置は、
前記第1の給電回路と結合するとともに、前記第1の電源ラインと接続する第1の受電回路と、
前記第2の給電回路と結合するとともに、前記第2の電源ラインと接続する第2の受電回路と、
からなることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電無線作動システム。
【請求項5】
前記非接触受電装置は、
前記第1の電源ラインと接続する第1の受電回路と、
前記第2の電源ラインと接続する第2の受電回路と、からなり、
前記非接触給電装置と結合する受電回路が交互に入れ替わることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電無線作動システム。
【請求項6】
前記第1の受電回路と、前記第2の受電回路は、前記移動ユニットの移動方向に沿って並んでいることを特徴とする請求項5に記載の非接触給電無線作動システム。
【請求項7】
前記非接触給電装置は送電コイルを有し、前記非接触受電装置は受電コイルと有し、前記非接触給電装置と前記非接触受電装置とが磁気結合によって結合していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の非接触給電無線作動システム。
【請求項8】
前記第2の電源ラインには、第2の蓄電装置が備えられていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の非接触給電無線作動システム。
【請求項9】
前記第2の制御装置がセンサーを備えており、前記演算回路に前記センサーが接続されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の非接触給電無線作動システム。
【請求項10】
前記非接触給電無線作動システムは、 自動搬送装置、加工機、自動倉庫、ロボット、測定器、工作機械のいずれかであることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の非接触給電無線作動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電無線作動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、自動倉庫、測定器、搬送設備などの移動体を含む設備を稼働させるために、給電レールやケーブルベア(登録商標)が用いられている。しかし、給電レールや、ケーブルベア(登録商標)を使用した設備では、摩擦によるパーティクルの発生、円滑な動作を確保するための給油による汚れ、長期の使用による断線などが、メンテナンス性の低下の原因となっていた。
【0003】
特許文献1には、無接触給電設備を用いて移動体の移送を行う移載装置が開示されている。特許文献1の移載装置は、メンテナンス性の良い長寿命の移載装置として、移動体が走行する走行路に沿って高周波の正弦波電流を流す給電レールを敷設し、移動体にこの給電レールを流れる正弦波電流の周波数に共振し、起電力が生じるコイルを備えた無接触給電設備を設けるとともに、ハンドによる被移載物の把持、回転及び昇降をそれぞれ駆動するモータを備え、かつ被移載物の把持、回転及び昇降を駆動するそれぞれのモータの制御コントローラおよび移動体の停止位置を検出し、検出信号を通信する通信ユニットを内蔵し、移動体を走行路に沿ったガイドを案内としてベルトにより通信ユニットからの信号により任意の位置にて停止可能に移送を行う構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-135694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された移載装置では、駆動するモータの起動や、高負荷時に突入電流によって、無接点給電設備の容量を超える電流が流れることがある。この際、制御装置である通信ユニットにリセットがかかったり、設備の位置、状態を記録するメモリが消去されたり、誤差が生じたりする。このような異常の発生時には、一旦設備を原点復帰させなければ再稼働できず、加工中の製品が不良となったり、再スタートに多大な手間が発生したりする。
【0006】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであって、固定ユニットと、移動ユニットとの間で非接触給電を行うシステムにおいて、移動ユニット側のモータなどの負荷に大電流が流れた場合でもシステム異常が生じにくく、安定して稼働することのできる非接触給電無線作動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決するための本発明の非接触給電無線作動システムは、
【0008】
(1)固定ユニットと、移動ユニットとからなる非接触給電無線作動システムであって、
前記固定ユニットが、第1の制御装置と、前記第1の制御装置につながる第1の無線装置と、非接触給電装置と、を有しており、
前記移動ユニットが、第2の無線装置と、第2の制御装置と、前記非接触給電装置から電力を受電する非接触受電装置と、第1の蓄電装置と、を有しており、前記第2の制御装置が、前記第2の無線装置を介して前記第1の無線装置と通信するとともに演算回路と出力段とを備えており、
前記移動ユニットが、さらに、前記非接触受電装置に接続して前記第2の無線装置および前記演算回路に電力を供給する第1の電源ラインと、前記非接触受電装置に接続して前記出力段に電力を供給する第2の電源ラインと、を有しており、
前記第1の蓄電装置は、前記第1の電源ラインに接続されており、前記第1の電源ラインの電力のみを蓄電し、
前記第1の電源ラインと前記第2の電源ラインが、前記非接触受電装置の段階から分離されていることを特徴とする非接触給電無線作動システム、である。
【0009】
上記発明によれば、移動ユニットの出力段につながる負荷に大電流が流れ、第2の電源ラインの電圧が低下した場合であっても、第1の電源ラインに影響を及ぼさず、第1の無線装置および演算回路のリセットや、データの取りこぼしを回避することができ、システム異常を起こしにくい非接触給電無線作動システムを提供することができる。
【0010】
また本発明の非接触給電無線作動システムは、以下の態様であることが好ましい。
【0011】
(2)固定ユニットと、移動ユニットとからなる非接触給電無線作動システムであって、
前記固定ユニットが、第1の制御装置と、前記第1の制御装置につながる第1の無線装置と、非接触給電装置と、を有しており、
前記移動ユニットが、第2の制御装置と、第2の無線装置と、前記非接触給電装置の電力を受電する非接触受電装置と、第1の蓄電装置と、を有しており、前記第2の制御装置が、前記第2の無線装置を介して前記第1の無線装置と通信するとともに演算回路と出力段とを有しており、
さらに、前記移動ユニットが、前記非接触受電装置に接続して前記第2の無線装置および前記演算回路に電力を供給する第1の電源ラインと、前記非接触受電装置に接続して前記出力段に電力を供給する第2の電源ラインと、を有しており、
前記第1の蓄電装置は、前記第1の電源ラインに接続されており、前記第1の電源ラインの電力のみを蓄電し、
前記第1の電源ラインの前記非接触受電装置と前記第1の蓄電装置との間に、逆流防止回路が配置されていることを特徴とする非接触給電無線作動システム。
【0012】
上記発明によれば、逆流防止回路によって第1の蓄電装置から第2の電源ラインへの電流を妨げることができ、第1の電源ラインの電圧低下を一層確実に防止することができる。
【0013】
(3)第1の電源ラインは、さらに前記第1の蓄電装置の後に安定化回路を有することを特徴とする(2)に記載の非接触給電無線作動システム。
【0014】
前記第1の蓄電装置の後に安定化回路を有することによって、第2の電源ラインの変動があっても簡単な構造で第2の制御装置および第2の無線装置に安定して電力を供給でき、第1の電源ラインの安定化を図ることができる。
【0015】
(4)前記非接触給電装置は第1の給電回路と第2の給電回路とを有し、
前記非接触受電装置は、
前記第1の給電回路と結合するともに、前記第1の電源ラインに接続する第1の受電回路と、
前記第2の給電回路と結合するとともに、前記第2の電源ラインに接続する第2の受電回路と、
からなることを特徴とする(1)に記載の非接触給電無線作動システム。
【0016】
第1の電源ラインと第2の電源ラインを受電回路から分離することにより、第2の電源ラインにおける電圧変動が第1の電源ラインに及ぼす影響を容易に排除することができる。
【0017】
(5)前記非接触受電装置は、
前記第1の電源ラインに接続する第1の受電回路と、
前記第2の電源ラインに接続する第2の受電回路と、からなり、
前記非接触給電装置と結合する受電回路が交互に入れ替わることを特徴とする(1)に記載の非接触給電無線作動システム。
【0018】
上記発明によれば、1つの給電装置から効率よく第1の電源ラインおよび第2の電源ラインに電力を供給することができる。
【0019】
(6)前記第1の受電回路と、前記第2の受電回路は、前記移動ユニットの移動方向に沿って並んでいることを特徴とする(5)に記載の非接触給電無線作動システム。
【0020】
上記発明によれば、受電回路が受電ユニットの移動方向に沿って並んでいるので、受電ユニットの移動に伴って電力を供給する側を簡単に入れ替えることができる。
【0021】
(7)前記非接触給電装置は送電コイルを有し、前記非接触受電装置は受電コイルと有し、前記非接触給電装置と前記非接触受電装置とが磁気結合によって結合していることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の非接触給電無線作動システム。
【0022】
上記発明によれば、磁気結合を利用して給電装置と受電装置とが結合しているので、200kHz以下の低い周波数で大きな電力を伝送でき、スプリアス発射の影響を少なくすることができる。
【0023】
(8)前記第2の電源ラインには、第2の蓄電装置が備えられていることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の非接触給電無線作動システム。
【0024】
上記発明によれば、第2の電力ラインへの電力の供給の有無にかかわらず負荷に電力を供給できるので、負荷を安定稼働させることができる。特に電力が供給されない時がある(5)に係る発明には特に有効である。
【0025】
(9)前記制御装置がセンサーを備えており、前記演算回路にセンサーが接続されていることを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の非接触給電無線作動システム。
【0026】
上記発明によれば、制御装置がセンサーを備えており、センサーが演算回路に接続されていることによって、移動ユニットの位置、状態などに基づいてモータなどの負荷を精密に制御することができる。
【0027】
(10)前記非接触給電無線作動システムは、 自動搬送装置、加工機、自動倉庫、ロボット、測定器、工作機械のいずれかであることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の非接触給電無線作動システム。
【0028】
上記発明によれば、演算回路と無線装置を安定して運用できるので、システム異常が生じにくく、メンテナンス性の良いシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の非接触給電無線作動システムは、固定ユニットと移動ユニットとの間で非接触給電を行うシステムである。接触型の給電やケーブルによる給電が必要な移動体を含む従来型のシステムと比較すると、維持管理が容易であり、メンテナンス性が良い。
【0030】
本発明の非接触給電無線作動システムは、移動ユニットが、制御装置の演算回路に給電する第1の電源ラインと、出力段から負荷に給電する第2の電源ラインとを備えることによって、負荷の起動などにより第2の電源ラインに大電流が流れた場合であっても、制御側である第1の電源ラインの電圧変動を抑制することができる。この結果、移動ユニットの制御装置や無線装置にシステム異常を生じる恐れが未然に防止されており、安定してシステムを稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施の形態1の非接触給電無線作動システムのブロック図である。
図2】本発明の実施の形態2の非接触給電無線作動システムのブロック図である。
図3】本発明の実施の形態3の非接触給電無線作動システムのブロック図である。
図4】本発明の実施の形態4の非接触給電無線作動システムのブロック図である。
図5】本発明の非接触給電無線作動システムを利用した自動搬送装置の説明図であり、(a)は自動搬送装置の全体の構造を模式的に示し、(b)は移動ユニットである台車を示す。
図6】本発明の非接触給電無線作動システムを利用したX-Yテーブルの説明図である。
図7】本発明の実施の形態1の非接触給電無線作動システムの移動ユニットの一例の回路図である。
図8】本発明の実施の形態3の非接触給電無線作動システムの移動ユニットの一例の回路図である。
図9】実施の形態1の出力段の変形例であり、(a)はトランジスタによる出力段、(b)はリレーによる出力段、(c)はIGBTを用いた3相インバータ回路を示す。
図10】本発明の非接触給電無線作動システムの非接触給電装置と非接触受電装置の組み合わせを示し、(a)は共に円形のコイルを1個ずつ用いるもの、(b)は共に円形コイルを2個ずつ用いるもの、(c)は非接触受電装置のコイルにコアを使用したもの、(d)は長円形の給電コイルと円形の受電コイルを組み合わせたもの、(e)は複数の給電コイルと、1個の受電コイルを組合わせたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の非接触給電無線作動システムの実施の形態1から4について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1の非接触給電無線作動システムのブロック図である。非接触給電無線作動システムは、一又は複数の固定ユニット1と、一又は複数の移動ユニット2とを備えている。図1では、簡略化のために、一つの固定ユニット1と一つの移動ユニット2のみを示している。固定ユニット1は、第1の制御装置11と、第1の制御装置11に有線または無線の通信線で接続する第1の無線装置12と、非接触給電装置13と、を備えている。移動ユニット2は、第2の制御装置21と、第2の無線装置22と、非接触受電装置23と、第1の蓄電装置24とを備えている。第2の制御装置21は、演算回路211と出力段212とを備えている。出力段212は負荷27に接続している。本実施形態においては、負荷27は、移動ユニット2を移動させるモータである。
【0034】
移動ユニット2は、さらに、第1の電源ライン28と、第2の電源ライン29とを備えている。第1の電源ライン28と第2の電源ライン29は非接触受電装置23に接続しており、非接触受電装置23で得られた電力は第1の電源ライン28と第2の電源ライン29に分配される。第1の電源ラインは、第2の無線装置22および制御装置21の演算回路211の電力をまかなっている。第2の電源ライン29は、第2の制御装置21の出力段212の電力をまかなっている。
【0035】
固定ユニット1側の非接触給電装置13は、一系統の非接触の給電回路を備えている。移動ユニット2側の非接触受電装置23もまた、一系統の非接触の受電回路を備えている。非接触給電装置13と非接触受電装置23はそれぞれがコイルを有している。
【0036】
固定ユニット1側の非接触給電装置13と移動ユニット2の非接触受電装置23との間は、磁気結合による給電が行われる。非接触給電の方式は特に限定されないが、磁界結合を利用した誘導結合型(電磁誘導方式または磁界共鳴方式)の非接触給電であることが好ましい。
【0037】
図10(a)、図10(c)、図10(d)および図10(e)に、本実施形態の非接触給電装置13と非接触受電装置23に用いるコイルの組み合わせの例を示す。図10(a)は、非接触給電装置13と非接触受電装置23の両方に円形のコイル52を1個ずつ用いた組み合わせの例を示している。図10(c)は、非接触受電装置23のコイル53に、フェライトコアを使用した用いた組み合わせの例を示している。図10(d)は、非接触給電装置13に長円形の給電コイル54を適用し、非接触受電装置23に円形の受電コイル52を組み合わせた例を示している。図10(e)は複数の給電コイル52と1個の受電コイル52を組合わせた例を示している。
【0038】
図10(a)のコイル52の組み合わせでは、移動ユニット2が特定の位置でしか給電することができない。これに対して、図10(d)では、非接触給電装置13と非接触受電装置23に長円形コイル54を使っていることにより、常時磁気結合させて、常時負荷を稼働させることができる。なお図10(c)のように円形コイル53の内部にフェライトコアを用いることによって、コイルの巻き数を減らすことができる。また、コイル53に対するコアの大きさを適宜調整することによって、コイル53の位置がずれている時の電力の伝送効率を高めることができる。
【0039】
図7に移動ユニット2の回路図の一例を示す。非接触受電装置23はコイルを備えた受電回路からなる。第1の電源ライン28には、非接触受電装置23のあとに逆流防止回路26と第1の蓄電装置24が接続されている。第1の電源ライン28の非接触受電装置23と第1の蓄電装置24との間に、逆流防止回路26が配置されており、さらに、第1の蓄電装置24のあとに安定化回路41が配置されており、電圧を安定化している。第1の電源ライン28は、第2の無線装置22と演算回路211に直流の電力を供給する。
【0040】
本実施形態では、逆流防止回路26は、FET(Field Effect Transistor)によって構成されている。逆流防止回路26をON抵抗が小さくVDS間の電圧降下を少なくできるFETで構成したことにより非接触受電装置の出力電圧を小さくすることができる。ただし、逆流防止回路26に適用可能な素子は、FETに限定されない、ダイオード、DDコンバーター、リニアチャージャーなど、第2の電源ラインへ向かう第1の蓄電装置の電力を遮断できる機能を有するものであれば、素子の種類は特に限定されない。
【0041】
固定ユニット1の第1の無線装置12と移動ユニット2の第2の無線装置22との間では、無線通信によって情報をやり取りしている。通信の方式として、無線LAN基地局と無線LAN端末とによる通信、携帯電話基地局と通信モジュールとによる通信、もしくは無線マイコンモジュール同士の通信といった任意の無線通信方式を利用することができる。また、移動ユニット2の第2の制御装置21は、第2の無線装置22と有線または無線の通信線51で接続されており、第2の無線装置22を介して固定ユニット1の第1の無線装置12と通信する。
【0042】
第2の制御装置21の演算回路211は、出力段212に制御信号を送信して、負荷27に供給する電力を制御する。出力段212は、FETで構成することができる。図7には、例として、MOS-FETを適用した出力段212を示しているが、この他にも、トランジスタ(図9(a))、リレー(図9(b))、IGBTによるインバータ回路(図9(c))などを出力段212に適用可能である。
【0043】
本実施の形態では、負荷27のモータに対して、第1の制御装置11から発せられた制御信号が第1の無線装置から第2の無線装置22を経由して第2の制御装置21に入力され、演算回路211でモータを動作させるための制御信号に変換される。この制御信号が出力段212に伝達される。出力段212のFETが電力の供給を制御することで、モータの動作を制御して移動ユニット2全体の動きを制御する。すなわち、出力段212は、第2の電源ライン29から給電された電力を、第1の制御装置11の制御信号で規定された電流値とタイミングで、負荷27に供給する。
【0044】
本実施の形態では、第1の電源ラインの第1の蓄電装置24の後に、安定化回路41を有している。
たとえば、入力電圧範囲が4~5.5Vである第2の制御装置21に5Vの電圧を供給するよう設計し、非接触受電装置23の出力電圧を、1V以上高い10V以上と設計した場合について説明する。
非接触受電装置23からの出力は、そのまま負荷であるモータにつながる第2の電源ライン29と、逆流防止回路26、安定化回路41を経由して第2の無線装置22、第2の制御装置21につながる第1の電源ライン28に分かれている。第2の電源ライン29は、モータの起動時、大負荷時に大電流が流れ電圧を低下、変動させる。これに対し第1の電源ライン28には、逆流防止回路26を通して第1の蓄電装置24に充電し、さらに安定化回路41で安定化して第2の無線装置22、第2の制御装置21に供給しているので、安定して制御することができる。
なお、この構成は、電気二重層キャパシタや、電解コンデンサなど電圧に対応して蓄電する蓄電装置を用いた場合に特に有効である。このような蓄電装置は、寿命が長く、信頼性が高い特徴を有しているが、放電するにつれて電圧が低下する特性があり、入力電圧範囲の狭いICなどの電源として使用するこのような構成は特に有効である。
第2の電源ライン28では、例えば安定状態では非接触受電装置23の出力電圧10Vから、逆流防止回路26で1V低下し、安定化回路41で4V低下させ、5Vの安定化した電圧を第2の制御装置21および第2の無線装置22に供給する。このとき大容量の電解コンデンサからなる第1の蓄電装置24は9Vの電圧が加わっている。
モータに負荷がかかり非接触受電装置23の出力電圧が例えば3Vまで低下したとき、逆流防止回路26で第1の蓄電装置24の電気エネルギーが第2の電源ラインに流出するのを防止し、第1の蓄電装置24に蓄えられている電気エネルギーを、安定化回路41を通して第2の制御装置21および第2の無線装置22に供給する。最初第1の蓄電装置24は9Vの電圧を供給するが、放出とともに電圧が徐々に低下する。本実施の形態では、第1の蓄電装置24の後に安定化回路41を有しているので第1の蓄電装置24の電圧が低下しても安定して第2の制御装置21および第2の無線装置22を動作させることができ、簡単で信頼性の高い非接触無線作動システムを提供することができる。
安定化回路41の電位差は1V以上あることが好ましい。安定化回路41の電位差は、エネルギーのロスとなるが第2の無線装置22、第2の制御装置21が第1の電源ライン28で消費する電気エネルギーは小さいので発熱が問題となることがなく、むしろ安定化回路41に加わる電位差を大きく設計しておくことにより、非接触受電装置23の電圧低下が生じた場合の信頼性を高めることができる。
【0045】
本実施の形態では、第2の電源ライン29に蓄電装置が配置されていない。このため、負荷27は非接触給電が行われている間しか稼働することができないが、逆に常時非接触給電が行われているのであれば、負荷は常時稼働することができる。
【0046】
本実施の形態における第2の電源ライン29は、移動ユニット2の移動や、負荷27の起動によって電圧の変動が起きる構造を有している。しかしながら、第1の電源ライン28に逆流防止回路26が配置されていることにより、第1の電源ライン28は常に一定の電圧を維持することができる。結果として、第2の制御装置21の演算回路211や第2の無線装置22のリセットや誤作動などが生じにくくなっており、不具合の発生が抑制されたメンテナンス性の良いシステムを提供することができる。
【0047】
<実施の形態2>
図2に、本発明の実施の形態2の非接触給電無線作動システムのブロック図を示す。実施の形態1と同一の構成を有する要素については重複説明を割愛する。本実施形態の非接触給電無線作動システムは、固定ユニット3が一系統の非接触給電装置13を備えており、移動ユニット4が一系統の非接触受電装置23を備えている。非接触受電装置23で得られた電力は第1の電源ライン28と第2の電源ライン29に分配される。第1の電源ライン28側には非接触受電装置23のあとに、逆流防止回路26と第1の蓄電装置24が接続されている。第1の電源ライン28は、第2の無線装置22と、第2の制御装置21の演算回路211の電力を賄っている。
【0048】
本実施形態では、第2の電源ライン29の非接触受電装置23と出力段212との間に第2の蓄電装置25が接続されている。第2の蓄電装置25が蓄電することにより、非接触給電装置13から電力が送られていない間、負荷27へ電力を供給することができる。
【0049】
移動ユニット4の負荷27は、通常、第2の制御装置21と第2の無線装置22とよりも大きな電力を消費する。このため、負荷27に給電する第2の蓄電装置25は、第1の蓄電装置24よりも電圧の大きな変動に対応でき、かつ容量の大きなものを用いることが好ましい。本発明では、第1の蓄電装置24と第2の蓄電装置がそれぞれ異なる電源ライン上に配置されて切り離されているため、第1の蓄電装置24は、第2の電源ライン29に電力を供給しない。このため、第1の蓄電装置24に、容量が小さい蓄電装置を適用した場合であっても、安定して第2の無線装置22と第2の制御装置21の電力を賄うことができる。なお、出力段212は第1の電源ライン28と第2の電源ライン29の双方と関係し、第1の電源ライン28側の制御信号に基づいて第2の電源ライン29の電流を制御する働きをしている。しかしながら、負荷27のために第1の電源ライン28の電力をごくわずかしか消費しないため、出力段212で負荷27を制御しても第1の電源ライン28側の電圧には影響を与えない。
【0050】
出力段212にFET、サイリスタ、IGBTを適用した場合、これらはゲート電圧でスイッチングを行うため、負荷27に供給する電流の大きさによって第1の電源ラインに与える電圧変動を少なくすることができる。また出力段212にリレーを用いた場合、リレーはコイルに流れる電流で接点を開閉するので、負荷27に供給する電流の大きさによって第1の電源ラインに与える影響を少なくすることができる。
【0051】
さらに本実施の形態では、第2の制御装置21がセンサー213を備えている。センサー213としては、特に限定されないが、例えば位置を確認するエンコーダ、光電センサー、衛星測位システムのほか、スピンドルの回転をカウントする光電センサー、移動ユニット4の内部、周囲の温度、光、電圧、電流などを継続的に監視するセンサーなど、任意の検出器を接続することができる。また、同一または異なる種類のセンサーを複数個接続することができる。センサー213から入力されるデータは、非接触給電無線作動システム全体の動きを制御する重要な情報源となる。
【0052】
このようなセンサー213は、電源が遮断されるとデータの欠落が生じる。エンコーダにおいては位置ずれ、位置や回転を監視する光電センサーにおいては読み取りエラーにより、誤作動などの原因となる。また、継続的なデータを監視するセンサーにおいてはこの間のデータ欠落が生じ、例えば電流を監視する保護回路においては、突入電流発生時、正常に動作できない不具合のもととなる。しかしながら、本実施の形態では、センサー213は第1の電源ライン28から電力を供給されるので、第2の電源ライン29の電力の変動の影響を受けず、安定して各種のデータを検出することができる。
【0053】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、第2の電源ライン29は、移動ユニット4の移動や、負荷27の起動によって電圧の変動が起きる構造である。しかしながら、逆流防止回路26を備えていることによって第1の電源ライン28は常に一定の電圧を維持することができ、演算回路211のリセット、センサー213の読み取りエラーなどが生じにくく、メンテナンス性の良いシステムを提供することができる。
【0054】
<実施の形態3>
図3は、本発明の実施の形態3の非接触給電無線作動システムのブロック図である。
【0055】
実施の形態3において、固定ユニット5の非接触給電装置13は第1の給電回路131と第2の給電回路132とを有している。また、移動ユニット6の非接触受電装置23は、第1の電源ライン28と接続する第1の受電回路231と、第2の電源ライン29と接続する第2の受電回路232と、を備えている。第1の受電回路231は第1の給電回路131と結合する。第2の受電回路232は、第2の給電回路132と結合する。本実施形態において、逆流防止回路は、必須の構成要素ではない。本実施形態では、第1の電源ライン28と第2の電源ライン29とが、非接触受電装置23内の段階から分離されているので、互いに電圧変動の影響を及ぼしあうことはない。
【0056】
図10(b)に、本実施形態の非接触給電装置13と非接触受電装置23のコイル52の配置を示す。第1の給電回路131のコイル52と第1の受電回路231のコイル52がペアになっており、第2の給電回路132のコイル52と第2の受電回路232のコイル52がペアとなっている。図10(b)のコイル52は、移動ユニット6の移動方向に沿って並んでいるが、変形例として、移動ユニット6と垂直に並んでいてもよい。
【0057】
図8に、移動ユニット6の回路図の一例を示す。第1の受電回路231と第2の受電回路232は、それぞれがコイルを有する受電回路を備えている。本実施の形態では第2の無線装置22と、演算回路211が一体化したワンチップマイコンを用いている。リニアチャージャー42が、第1の電源ライン28の第1の受電回路231と第1の蓄電装置24との間に接続されており、直流電圧を受けて第1の蓄電装置24を充電する。第1の蓄電装置24の出力側にDC/DCコンバーター43が接続されており、第2の無線装置22と演算回路211とセンサー213に、それぞれの定格に合った安定化した直流の電力を供給する。また、第2の電源ライン29には、より大容量の電流に対応したリニアチャージャー42が配置されており、第2の蓄電装置25を充電する。出力段212は、実施形態1と同様にFETで構成されており、FETのゲート電圧制御素子としてフォトトランジスタを内蔵するフォトカプラーを用いている。このような構造をとっているので、第1の電源ライン28と第2の電源ライン29とはフォトカプラーを用いてアイソレートされている。
なお、本実施の形態においては、第1の蓄電装置、第2の蓄電装置ともにリチウムイオン2次電池を用いている。リチウムイオン2次電池に適正に充電するためにリニアチャージャーを用いている。また、第2の無線装置22と、演算回路211が一体化したワンチップマイコンを用いている。満充電で4.2Vとなるリチウムイオン2次電池の電圧がワンチップマイコンに加わらないようDC/DCコンバーターで3.3Vに安定化されている。
【0058】
本実施の形態によれば、第1の電源ライン28と第2の電源ライン29とが受電回路の段階で切り離されているので、互いに電圧変動の影響を及ぼしにくい。そのため、逆流防止回路を必須の構成要素とすることなく、演算回路211のリセット、センサー213の読み取りエラーなどが生じにくく、メンテナンス性の良いシステムを提供することができる。
【0059】
<実施の形態4>
図4は本発明の実施の形態4の非接触給電無線作動システムのブロック図である。
【0060】
本実施の形態は、実施の形態3に対して、移動ユニット8の第1の受電回路231と第2の受電回路232とが、固定ユニット7の非接触給電装置13の1つの給電回路を共有している点が異なっている。このような場合の例として、非接触給電装置13のコイル52の数が、非接触受電装置23のコイル52の数より少ない例が挙げられる。例えば1個の給電コイル52に対し、第1の電源ライン28の受電コイル52が1個と、第2の電源ライン29の受電コイル52が1個、交互に入れ替わって受電する。
【0061】
このような構造は、移動ユニット8が逐次移動する場合に、給電コイル52に対向する受電コイル52の配置を移動ユニット8の移動方向に沿わせることにより実現され、システム全体を簡略化することができる。たとえば、図4において、矢印で示した上下方向に移動ユニット8が移動する場合、1個の受電コイルによって、第1の受電回路231と第2の受電回路が充電される。
【0062】
本実施の形態によれば、第1の電源ライン28と第2の電源ライン29とが受電回路の段階で切り離されているので、互いに電圧変動の影響を及ぼしにくい。このため、実施形態3と同様に、互いの電源ラインが電圧変動の影響を及ぼしにくく、演算回路211のリセット、センサー213の読み取りエラーなどが生じにくく、メンテナンス性の良いシステムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
また、本発明の非接触給電無線作動システムは固定ユニットから給電される様々な移動ユニットを含む設備や機械装置に利用することができる。
【0064】
本発明の非接触給電無線作動システムの適用例として、図5に自動搬送装置を示す。図5(a)は固定ユニット3を備えた軌道31と、軌道上の複数の移動ユニット4を模式的に示している。図5(b)は移動ユニット4を具現化した台車の構成を示す。自動搬送装置では、センサー213として台車の位置を検出する光電センサー、ロータリーエンコーダ、衛星測位システムなどを適用することができる。
【0065】
本発明を具現化した他の例として、図6にXYテーブルを示す。XYテーブルは、Y軸スライダ10aとX軸スライダ10bの2つの移動ユニットを備えている。XYテーブルでは、センサー213として、精密な位置を検出するロータリーエンコーダ、距離計、など任意のセンサーを適用することができる。
【0066】
また、本発明の負荷としては、移動ユニットを移動させるモータに限定されず、ワークを加工するスピンドルモーター、移動ユニット上で行われる加工、操作に必要な動力、熱源といった、電力を消費する任意の機械装置を適用することができる。例として、ヒーター、スピーカー、電磁波を発生させるマグネトロン、誘導コイルなど様々なものを適用することができる。また、モータはどのような仕様のものであってもよく、DCモータ、交流モータ、ステッピングモータ、サーボモータなど、特に限定されない。
【符号の説明】
【0067】
1,3,5,7 固定ユニット
2,4,6,8,10a,10b 移動ユニット
11 第1の制御装置
12 第1の無線装置
13 非接触給電装置
21 第2の制御装置
22 第2の無線装置
23 非接触受電装置
24 第1の蓄電装置
25 第2の蓄電装置
26 逆流防止回路
27 負荷
28 第1の電源ライン
29 第2の電源ライン
131 第1の給電回路
132 第2の給電回路
211 演算回路
212 出力段
213 センサー
231 第1の受電回路
232 第2の受電回路
52 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10