(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】PC鋼棒体及びPC鋼棒体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
E04G21/12 104D
(21)【出願番号】P 2020138577
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿子生 悟
(72)【発明者】
【氏名】福田 真沙人
(72)【発明者】
【氏名】小泉 卓也
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184796(JP,A)
【文献】特開2009-035892(JP,A)
【文献】特開2019-094651(JP,A)
【文献】特開2006-124964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/12
E04C5/08-5/18
E04B1/06、1/21-1/22
1/41、1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一PC鋼材と第二PC鋼材とがカプラで連結されたPC鋼棒と、
前記第一PC鋼材及び前記第二PC鋼材をそれぞれ被覆し前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材
との
それぞれの隙間に充填された防錆材を封止するシースと、
前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材にそれぞれ設けられ前記防錆材の漏れを防止するブレーキングナットと、
前記PC鋼棒のうち少なくとも前記カプラが内部に配置されグラウト材が充填されるシース管とを備え、
前記シース管は、前記第一PC鋼材の端部を覆う第一カプラシース継手と、前記第二PC鋼材の端部を覆う第二カプラシース継手と、を有し、
前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方と、前記シースとの間に、弾性を有する封止部材が設けられ、当該封止部材が前記ブレーキングナットを覆うように延設されている
ことを特徴とするPC鋼棒体。
【請求項2】
請求項1に記載されたPC鋼棒体において、
前記封止部材が設けられた前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方は、前記シースを挿通する小径部と前記小径部より大きな径の大径部とを有し、前記小径部の内径は前記ブレーキングナットの外径より大きい
ことを特徴とするPC鋼棒体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたPC鋼棒体において、
前記シースの端部は、前記ブレーキングナットの周面を覆って前記防錆材を封止する
ことを特徴とするPC鋼棒体。
【請求項4】
第一PC鋼材と第二PC鋼材とがカプラで連結された連結部を有するPC鋼棒と、
前記連結部に対向する前記第一PC鋼材及び前記第二PC鋼材のそれぞれの対向側を被覆し、かつ、前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とのそれぞれの隙間に充填された防錆材を封止するシースと、
前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材にそれぞれ設けられ前記防錆材の漏れを防止するブレーキングナットと、
前記PC鋼棒のうち前記連結部及び前記ブレーキングナットが内部に配置され、かつ、グラウト材が充填されるシース管とを備え、
前記シースの端部は、前記ブレーキングナットの周面を覆って前記防錆材を封止し、
前記シース管は、前記第一PC鋼材に設けられたブレーキングナットを少なくとも覆う第一カプラシース継手と、前記第二PC鋼材に設けられたブレーキングナットを少なくとも覆う第二カプラシース継手と、を有し、
前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方と、前記シース及びブレーキングナットとの間に、前記グラウト材を封止する封止部材が設けられ、当該封止部材が前記ブレーキングナットを覆うように接触して延設されている
ことを特徴とするPC鋼棒体。
【請求項5】
請求項4に記載されたPC鋼棒体において、
前記封止部材が設けられた前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方は、前記シースを挿通する小径部、前記小径部より大きな径の大径部及び前記小径部と前記大径部との間に設けられたテーパ部を有し、前記小径部の内径は前記ブレーキングナットの外径より大きく、
前記シースは少なくとも前記小径部内に、前記ブレーキングナットは前記テーパ部内にそれぞれ配置され、
前記封止部材は、前記小径部から前記テーパ部まで延設されている
ことを特徴とするPC鋼棒体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載されたPC鋼棒体を施工する方法であって、
前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とを直列配置するとともに前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とをカプラで連結し、
前記第一PC鋼材の端部を前記第一カプラシース継手で覆うとともに、前記第二PC鋼材の端部を前記第二カプラシース継手で覆い、かつ、前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方と、前記シースとの間に前記封止部材を設け、
前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手とを連結して前記シース管を形成し、
前記シース管の内部にグラウト材を充填し、
その後、前記PC鋼棒及び前記シース管の周囲にコンクリートを打設し、
前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とを軸方向に相対的に引張して前記PC鋼棒に緊張力を付与する
ことを特徴とするPC鋼棒体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC鋼棒体及びPC鋼棒体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC鋼材の端部がナットに螺合され、ナットと建築構造物等との間にアンカープレートが設けられており、シース管は、一端開口がアンカープレートに当接するシース本体を備え、シース管とPC鋼材との間にはグラウト材が充填されているPC鋼棒体が知られている(特許文献1、[
図7]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなPC鋼棒体では、PC鋼材がシース管に対して軸方向に移動等した場合は、PC鋼材とシース管との間の隙間からグラウト材が漏出するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、グラウト材がシース管から漏出することを防止できるPC鋼棒体及びPC鋼棒体の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のPC鋼棒体は、第一PC鋼材と第二PC鋼材とがカプラで連結されたPC鋼棒と、前記第一PC鋼材及び第二PC鋼材をそれぞれ被覆し前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材の隙間に充填された防錆材を封止するシースと、前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材にそれぞれ設けられ前記防錆材の漏れを防止するブレーキングナットと、前記PC鋼棒のうち少なくとも前記カプラが内部に配置されグラウト材が充填されるシース管とを備え、前記シース管は、前記第一PC鋼材の端部を覆う第一カプラシース継手と、前記第二PC鋼材の端部を覆う第二カプラシース継手と、を有し、前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方と、前記シースとの間に、弾性を有する封止部材が設けられ、当該封止部材が前記ブレーキングナットを覆うように延設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のPC鋼棒体の施工方法は、前述の構成のPC鋼棒体を施工する方法であって、前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とを直列配置するとともに前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とをカプラで連結し、前記第一PC鋼材の端部を前記第一カプラシース継手で覆うとともに、前記第二PC鋼材の端部を前記第二カプラシース継手で覆い、かつ、前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方と、前記シースとの間に前記封止部材を設け、前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手とを連結して前記シース管を形成し、前記シース管の内部にグラウト材を充填し、その後、前記PC鋼棒及び前記シース管の周囲にコンクリートを打設し、前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とを軸方向に相対的に引張して前記PC鋼棒に緊張力を付与することを特徴とする。
【0008】
本発明では、第一PC鋼材と第二PC鋼材とをカプラで連結し、第一PC鋼材の端部を第一カプラシース継手で覆うとともに、第二PC鋼材の端部を第二カプラシース継手で覆い、かつ、第一カプラシース継手と第二カプラシース継手との少なくとも一方とシースとの間に封止部材を設けておく。
さらに、第一カプラシース継手と第二カプラシース継手とを連結してシース管を形成しておく。その後、シース管の内部にグラウト材を充填する。これらの作業により、PC鋼棒体が組み立てられる。
さらに、コンクリートを打設した後、PC鋼棒に緊張力を付与してPC鋼棒体を施工する。
PC鋼棒に緊張力を付与するにあたり、シース管はコンクリートによって、動きが拘束されるのに対して、第一PC鋼材と第二PC鋼材とがシース管に対して相対的に軸方向に移動しようとする。しかしながら、第一カプラシース継手と第二カプラシース継手との少なくとも一方と、シースとの間に封止部材が設けられ、当該封止部材がブレーキングナットを覆うように延設されているので、封止部材がブレーキングナットの位置で径方向外側に張り出してシース継手に押し付けられる。これにより、シース管に対するPC鋼材の移動が抑制される上、封止部材がシース継手に密着してグラウト材の封止性が向上する。また、第一PC鋼材と第二PC鋼材の軸方向の移動により、シース管に充填されたグラウト材が漏出しようとしても、封止部材が弾性変形してシース管とPC鋼棒との間の隙間が封止されたままとなる。
従って、本発明では、コンクリート打設作業やPC鋼棒の緊張作業の前にシース管にグラウト材を充填するプレグラウトの場合に、PC鋼棒の緊張作業において、PC鋼棒がシース管に対して軸方向に移動しようとしても、封止部材がPC鋼棒とシースとの間を封止したままとなり、グラウト材がシース管から漏出することを防止できる。
【0009】
本発明のPC鋼棒体において、前記封止部材が設けられた前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方は、前記シースを挿通する小径部と前記小径部より大きな径の大径部とを有し、前記小径部の内径は前記ブレーキングナットの外径より大きい構成としてもよい。
この構成では、PC鋼棒体を組み立てるに際して、第一カプラシース継手と第二カプラシース継手との少なくとも一方の小径部、つまり、第一カプラシース継手の小径部、第二カプラシース継手の小径部、又は、第一カプラシース継手及び第二カプラシース継手の双方の小径部に、第一PC鋼材の端部、第二PC鋼材の端部、第一PC鋼材及び第二PC鋼材のそれぞれの端部を挿通する。ここで、これらのPC鋼材に設けられたブレーキングナットの外径より小径部の内径が大きいので、ブレーキングナットが小径部に対してスムーズに案内されることになり、PC鋼棒体の組立作業を容易に行うことができる。
【0010】
本発明のPC鋼棒体において、前記小径部の内側断面は前記小径部の軸方向に沿って直線状に形成されている構成としてもよい。
この構成では、シースが第一PC鋼材や第二PC鋼材の表面形状に沿って雄ねじ状に形成されているとしても、小径部がストレート状の断面であるため、当該小径部を有する第一カプラシース継手や第二カプラシース継手が第一PC鋼材や第二PC鋼材に動きを規制されることが少ない。そのため、第一PC鋼材や第二PC鋼材が固定されているとしても、第一カプラシース継手や第二カプラシース継手をその軸方向や周方向に動かすことが可能となり、PC鋼棒体の組立作業をより容易に行うことができる。
【0011】
本発明のPC鋼棒体において、前記封止部材はスポンジゴムである構成としてもよい。
この構成では、封止部材をスポンジゴムという簡易な構造で形成することができるので、グラウト材のシース管からの漏出を低コストで防止することができる。しかも、PC鋼棒の緊張時の移動に追従して封止部材が容易に変形するので、封止部材による封止性能を維持できる。
【0012】
本発明のPC鋼棒体において、前記第一PC鋼材及び前記第二PC鋼材は、それぞれ雄ねじ部を有し、前記カプラは、前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有し、前記第一PC鋼材は、コンクリートに埋設され、かつ、その端部側がアンカープレートを貫通し、前記第一PC鋼材の前記アンカープレートから突出した部分がナットに螺合され、前記第一PC鋼材の前記ナットから突出した部分は、前記第一カプラシース継手に覆われ、前記第一カプラシース継手は、前記ナットに当接し前記第一PC鋼材が貫通する底面部と、前記底面部に設けられ前記第一PC鋼材を覆う筒本体部とを有し、前記筒本体部は前記第二カプラシース継手に連結され、前記底面部は前記ナットに対して位置決め部材で位置決めされ、前記第二カプラシース継手と前記シースとの間には、前記封止部材が設けられている構成としてもよい。
この構成では、まず、コンクリートに第一PC鋼材を埋設するとともに、第一PC鋼材の端部をコンクリートに設けられたアンカープレートに貫通しておく。
そして、第一PC鋼材のアンカープレートに貫通した部分にナットを螺合し、さらに、第一PC鋼材に第一カプラシース継手を設置し、位置決め部材で第一カプラシース継手をナットに対して位置決めする。さらに、第二カプラシース継手と封止部材とを第二PC鋼材に設ける。第一PC鋼材と第二PC鋼材とをカプラで連結するとともに、第一カプラシース継手と第二カプラシース継手とを接続してシース管を形成し、このシース管にグラウト材を充填する。
グラウト材がシース管に充填されたら、別のコンクリートを打設し、その後、PC鋼棒を緊張する。PC鋼棒の緊張作業に伴って、PC鋼棒が軸方向に移動してシース管に充填されたグラウト材がシース管から漏出しようとするが、前述と同様に、グラウト材の漏出が封止部材によって阻止される。
本発明では、第一PC鋼材がコンクリートに定着した後、PC鋼棒を緊締する場合においても、シース管からのグラウト材の漏出を防止することができる。
【0013】
本発明のPC鋼棒体において、前記位置決め部材と前記ナットとの間には硬質ゴムが設けられている構成としてもよい。
この構成では、位置決め部材とナットとの間に硬質ゴムが設けられているので、第二PC鋼材に第二カプラシース継手を位置決め部材で取り付ける際に、第二カプラシース継手の姿勢を保持することができ、これにより、第二カプラシース継手のナットへの装着作業が容易となる。
【0014】
本発明のPC鋼棒体において、前記第一PC鋼材及び前記第二PC鋼材は、それぞれ雄ねじ部を有し、前記カプラは、前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有し、前記第一カプラシース継手と前記シースとの間、及び前記第二カプラシース継手と前記シースとの間には、それぞれ前記封止部材が設けられている構成としてもよい。
この構成では、封止部材と第一カプラシース継手が設けられた第一PC鋼材と、封止部材と第二カプラシース継手が設けられた第二PC鋼材とをカプラで連結するとともに、第一カプラシース継手と第二カプラシース継手とを接続してシース管を形成する。
その後、シース管にグラウト材を充填する。そして、コンクリートを打設し、PC鋼棒を緊張する。PC鋼棒を緊張するには、予め、第一PC鋼材と第二PC鋼材の一方を固定しておき、他方を一方に対して離すように引っ張る。
PC鋼棒の緊張作業に伴って、PC鋼棒が軸方向に移動してシース管に充填されたグラウト材がシース管から漏出しようとするが、前述と同様に、封止部材により阻止される。
本発明では、第一PC鋼材と第二PC鋼材とをカプラで単純連結する場合においても、シース管からのグラウト材の漏出を防止することができる。
【0015】
本発明のPC鋼棒体において、前記シースの端部は、前記ブレーキングナットの周面を覆って前記防錆材を封止する構成としてもよい。
この構成では、PC鋼棒の緊張作業に伴って、シースの内部に充填される防錆材に圧力がかかっても、シースの端部はブレーキングナットの周面を覆っているので、防錆材がシースの端部から漏れることがない。そのため、シース管の内部に充填されているグラウト材に防錆材が混入することがないので、防錆材がグラウト材に混入することに伴う不都合を回避できる。
【0016】
具体的には、本発明のPC鋼棒体は、第一PC鋼材と第二PC鋼材とがカプラで連結された連結部を有するPC鋼棒と、前記連結部に対向する前記第一PC鋼材及び前記第二PC鋼材のそれぞれの対向側を被覆し、かつ、前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材とのそれぞれの隙間に充填された防錆材を封止するシースと、前記第一PC鋼材と前記第二PC鋼材にそれぞれ設けられ前記防錆材の漏れを防止するブレーキングナットと、前記PC鋼棒のうち前記連結部及び前記ブレーキングナットが内部に配置され、かつ、グラウト材が充填されるシース管とを備え、前記シースの端部は、前記ブレーキングナットの周面を覆って前記防錆材を封止し、前記シース管は、前記第一PC鋼材に設けられたブレーキングナットを少なくとも覆う第一カプラシース継手と、前記第二PC鋼材に設けられたブレーキングナットを少なくとも覆う第二カプラシース継手と、を有し、前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方と、前記シース及びブレーキングナットとの間に、前記グラウト材を封止する封止部材が設けられ、当該封止部材が前記ブレーキングナットを覆うように接触して延設されていることを特徴とする。
このようなPC鋼棒体では、上述したように、前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方と、前記シース及びブレーキングナットとの間に、前記グラウト材を封止する封止部材が設けられ、当該封止部材が前記ブレーキングナットを覆うように接触して延設されているため、PC鋼棒がシース管に対して軸方向に移動等しにくくなる。また、仮に移動した場合でも、PC鋼棒とシース管との間の隙間からグラウト材が漏出することを防止できる。
【0017】
本発明のPC鋼棒体において、前記封止部材が設けられた前記第一カプラシース継手と前記第二カプラシース継手との少なくとも一方は、前記シースを挿通する小径部、前記小径部より大きな径の大径部及び前記小径部と前記大径部との間に設けられたテーパ部を有し、前記小径部の内径は前記ブレーキングナットの外径より大きく、前記シースは少なくとも前記小径部内に、前記ブレーキングナットは前記テーパ部内にそれぞれ配置され、前記封止部材は、前記小径部から前記テーパ部まで延設されていることが好ましい。
前記テーパ部とブレーキングナットとの間には狭い空間が発生し、この空間はグラウト材を充填した場合でも気泡が入りやすい。そこで、当該封止部材で当該空間を充填させることで、当該気泡の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかるPC鋼棒体の断面図。
【
図2】本発明の第2実施形態にかかるPC鋼棒体の断面図。
【
図3】本発明の第3実施形態にかかるPC鋼棒体の断面図。
【
図4】本発明の第4実施形態にかかるPC鋼棒体の断面図。
【
図5】本発明の第5実施形態にかかるPC鋼棒体の断面図。
【
図6】本発明の第6実施形態にかかるPC鋼棒体の断面図。
【
図7】本発明の第7実施形態にかかるPC鋼棒体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態の説明において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
[第1実施形態]
図1には本発明の第1実施形態が示されている。
第1実施形態は、2つのPC鋼材のうち予めコンクリートに定着されている一方のPC鋼材に対して、他方のPC鋼材を連結する例である。
(構成)
図1において、PC鋼棒体1は、それぞれ同芯上であって図中右側に配置された第一PC鋼材11と、同じく左側に配置された第二PC鋼材12と、これらの端部同士を連結するカプラ13とを有するPC鋼棒10を備えている。
【0020】
第一PC鋼材11は、外周に雄ねじ部10Aを有する。
第一PC鋼材11の端部を除いた周囲を黒色のポリエチレンのシース10Bが覆っており、シース10Bの内部には防錆材Bが充填されている。雄ねじ部10Aには防錆材Bの漏れを防止するブレーキングナット10Cが螺合されている。シース10Bの外周には雄ねじが形成されている。シース10Bの端部は、防錆材Bを封止するために、ブレーキングナット10Cの周面を覆っている。
第二PC鋼材12は第一PC鋼材11と同様の構造である。
カプラ13は、第一PC鋼材11の端部と第二PC鋼材12の端部とを連結するものであり、雄ねじ部10Aに螺合する雌ねじ部(図示せず)を有する。
【0021】
第一PC鋼材11は、ブレーキングナット10Cの部分までが第一のコンクリート31に埋設されており、ブレーキングナット10Cは第一のコンクリート31に設けられたアンカープレート30に当接している。
第一PC鋼材11は、アンカープレート30を貫通しており、この貫通した部分の根元は、ナット41に螺合されている。
カプラ13を含み第一PC鋼材11のナット41から露出した部分と第二PC鋼材12の端部とがシース管20で覆われている。
【0022】
シース管20は、第一PC鋼材11を主に覆う第一カプラシース継手21と、第二PC鋼材12を主に覆う第二カプラシース継手22と、カプラ13を主に覆い第一カプラシース継手21と第二カプラシース継手22とを連結する連結シース継手23とを有するものであり、内部空間にグラウト材Gが充填される。
第一カプラシース継手21、第二カプラシース継手22及び連結シース継手23は、それぞれ高密度ポリエチレンから形成され、かつ、乳白色半透明とされている。
【0023】
第一カプラシース継手21は、一端が連結シース継手23に接続される筒状本体部211と、筒状本体部211の他端開口部に嵌合される底面部212と、筒状本体部211の外周部に設けられた筒状部213とを有する。筒状部213は、その軸芯が斜め上方、つまり、鉛直と水平との間にある角度となるように、筒状本体部211に接合されている。即ち、筒状部213の内側開口は、筒状本体部211の最上部より下方に位置している。
底面部212は、その中心部に第一PC鋼材11が貫通する貫通孔が形成された円板部212Aと、円板部212Aの外周に折り曲げられて形成された縁部212Bとを有する。縁部212Bは、筒状本体部211の外周部に接合されている。
【0024】
第一PC鋼材11のカプラ13から離れた位置には、ナット状の位置決め部材42が螺合されている。位置決め部材42は、ナット41との間で底面部212を挟持して、第一カプラシース継手21を所定姿勢に保持する。
筒状部213は、図示しないホースと接続され、グラウト材Gをシース管20に充填する際の流路とされる。
ナット41及びシース管20の周囲は、図示しない第二のコンクリートが設けられている。
【0025】
第二カプラシース継手22は、シース10Bを挿通する小径部221と、小径部221より径の大きい大径部222と、小径部221と大径部222との間に設けられたテーパ部223と、テーパ部223に設けられた筒状部224とを有する。大径部222の端部には、ねじが形成されている。
小径部221の内径は、ブレーキングナット10Cの外径より大きい。
筒状部224の内側開口は、テーパ部223の最上部であって筒状部213の内側開口の位置より上方に位置している。
【0026】
小径部221とシース10Bとの間には、グラウト材Gをシース管20から外部へ漏出することを防止する弾性の封止部材4が設けられている。
封止部材4は、小径部221からテーパ部223にわたる領域でシース10Bに沿って設けられ、ブレーキングナット10Cを覆うように延設されている。封止部材4は、シース10BによるPC鋼材の被覆領域(本実施形態ではシース10Bによる第二PC鋼材12の被覆領域)を覆う第1被覆部4Aと、第1被覆部4Aよりも径が大きくされ、シース10Bによるブレーキングナット10Cの周面の被覆領域を覆う第2被覆部4Bとを備えている。
本実施形態では、封止部材4は、気泡が混入されたウレタンゴムやエチレンプロピレンゴム(EPDM)等から形成されるスポンジゴムである。気泡は独立気泡でも貫通気泡でもよい。
封止部材4は、シース10Bの外周面全体に渡って配置されるものが好ましい。封止部材4をシース10Bに装着するために、予め筒状に形成された封止部材4の一部にスリットを軸方向に形成してもよい。なお、封止部材4をシース10Bの一部分に装着するものでもよい。この場合、封止部材4の弾性力によって、小径部221の封止部材4が設けられていない部分(
図1中上部)がシース10Bに押しつけられるので、封止効果を得ることができる。
【0027】
筒状部224は図示しないホースと接続され、グラウト材Gがシース管20に充填される際に、空気が放出される流路とされる。
連結シース継手23の端部には、第一カプラシース継手21と第二カプラシース継手22の大径部222に螺合するねじ部が形成されている。
連結シース継手23は、第一カプラシース継手21及び第二カプラシース継手22と同じ材質から形成された筒状部材である。
連結シース継手23の端部には第一カプラシース継手21と第二カプラシース継手22の大径部222に螺合するねじ部が形成されている。
小径部221の開口端側とシース10Bの小径部221から露出している部分との間には、テーピング24が周方向に設けられている。
【0028】
(施工方法)
第1実施形態のPC鋼棒体1の施工方法について説明する。
まず、第一のコンクリート31に埋設された第一PC鋼材11の端部を、アンカープレート30に貫通させておく。この状態は、第二PC鋼材12が第一のコンクリート31に定着された状態である。
そして、第一PC鋼材11のアンカープレート30に貫通した部分にナット41を螺合する。ここで、第一PC鋼材11の端部は、ナット41から突出している。
さらに、第一PC鋼材11に第一カプラシース継手21を設置し、位置決め部材42を第一PC鋼材11に対して螺合して第一カプラシース継手21をナット41に対して位置決めする。
【0029】
そして、第二PC鋼材12のシース10Bの外周に封止部材4を這わせた状態で、あるいは、第二カプラシース継手22の小径部221の内周に封止部材4を這わせた状態で、第二PC鋼材12を小径部221に挿通する。この際、シース10Bによるブレーキングナット10Cの周面の被覆領域を封止部材4の第2被覆部4Bで覆う。なお、第2被覆部4Bは、予め形成されていてもよいし、シース10Bの外周に封止部材4を這わせる際、第1被覆部4Aの一部の径をブレーキングナット10Cの位置で広げて形成してもよい。その後、テーピング24を、小径部221とシース10Bの露出部分とに設ける。
さらに、連結シース継手23を第二カプラシース継手22の一方向にねじ込んでおき、カプラ13を第二PC鋼材12に先端が露出するまで一方向にねじ込んでおく。
この状態で、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12との端部同士を突き合わせ、カプラ13を逆方向に回して第一PC鋼材11と第二PC鋼材12とを連結する。さらに、第一カプラシース継手21と連結シース継手23とを逆方向に回してシース管20を形成する。
シース管20の筒状部213,224に図示しないホースを接続し、ホースを通じてグラウト材Gを筒状部213からシース管20の内部に充填する。
【0030】
筒状部213から充填されるグラウト材Gは、シース管20の底部から溜まり始め、徐々に上昇する。グラウト材Gの充填に伴って、シース管20の上部に溜まっている空気は、筒状部224を通じて外部に排出される。グラウト材Gが筒状部213の内側開口に達しても、シース管20の最上部は筒状部224と連通しているので、空気の外部への排出が円滑に行われる。
ここで、シース管20に充填されたグラウト材Gは、シース管20の小径部221と第一PC鋼材11のシース10Bとの間に設けられた封止部材4によって、外部に漏出しない。仮に、グラウト材Gが封止部材4を通じて外部に漏出しようとしても、テーピング24により、グラウト材Gの外部への漏出が確実に阻止される。
グラウト材Gがシース管20に充填されたら、ホースを外し、必要に応じて、グラウト材Gがシース管20から漏れないようにするため筒状部213,224を封止する。
【0031】
その後、PC鋼棒10及びシース管20の周囲に第二のコンクリートを打設する。
そして、PC鋼棒10の緊張作業をする。つまり、第一のコンクリート31で端部以外が固定された第二PC鋼材12に対して第一PC鋼材11を引っ張ることで、PC鋼棒10を緊張する。
このPC鋼棒10の緊張作業に伴って、PC鋼棒10が軸方向に移動してシース管20に充填されたグラウト材Gがシース管20の小径部221と第一PC鋼材11のシース10Bとの間から漏出しようとするが、これらの間に設けられた封止部材4が第一PC鋼材11の移動に伴って弾性変形するので、シース管20の外へのグラウト材Gの漏出が阻止される。
【0032】
(実施形態の効果)
第1実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)直列に配置された第一PC鋼材11と第二PC鋼材12とをカプラ13で連結してPC鋼棒10を構成し、第一PC鋼材11の端部を覆う第一カプラシース継手21と、第二PC鋼材12の端部及びカプラ13を覆う第二カプラシース継手22とを備えてシース管20を構成し、第二カプラシース継手22と第二PC鋼材12のシース10Bとの間に、弾性を有する封止部材4を設け、当該封止部材4をブレーキングナット10Cを覆うように延設した。そのため、シース管20の内部にグラウト材Gを充填し、コンクリートを打設した後、PC鋼棒10に緊張力を付与した場合、第二PC鋼材12がシース管20に対して相対的に軸方向に移動しようしても、ブレーキングナット10Cの位置で径方向外側に張り出した封止部材4により、シース管20に対する第二PC鋼材12の移動が抑制される上、封止部材4が第二カプラシース継手22に密着してグラウト材Gの封止性が向上する。また、第二PC鋼材12の軸方向の移動により、シース管20に充填されたグラウト材Gが漏出しようとしても、封止部材4が弾性変形してシース管20とPC鋼棒10との間の隙間が封止されたままとなる。従って、グラウト材Gがシース管20から漏出することを防止できる。
【0033】
(2)第二カプラシース継手22は、シース10Bを挿通する小径部221と大径部222とを有し、小径部221の内径はブレーキングナット10Cの外径より大きいので、ブレーキングナット10Cが小径部221に対してスムーズに案内されることになり、PC鋼棒体1の組立作業を容易に行うことができる。
【0034】
(3)小径部221の内側断面は直線状に形成されているから、第一PC鋼材11及び第二PC鋼材12が固定されている状態で、第二カプラシース継手22をその軸方向や周方向に動かすことが可能となり、PC鋼棒体1の組立作業をより容易に行うことができる。
【0035】
(4)封止部材4をスポンジゴムという簡易な構造で形成したから、グラウト材Gのシース管20からの漏出防止を低コストで実現することができる。
(5)封止部材4をブレーキングナット10Cを覆うように延設したことにより、第二PC鋼材12のシース10Bと第二カプラシース継手22のテーパ部223との間の隅部の隙間を極力埋めることができ、当該隅部に気泡が残存することを抑制できる。
(6)シース10Bの端部は、ブレーキングナット10Cの周面を覆って防錆材Bを封止するので、防錆材Bがシース管20の内部に充填されているグラウト材Gに混入することがないので、防錆材Bがグラウト材Gに混入することに伴う不都合を回避できる。
【0036】
(7)第一PC鋼材11は、第一のコンクリート31に埋設され、かつ、その端部側がアンカープレート30を貫通するとともにナット41に螺合される。第一PC鋼材11のナット41から突出した部分が第一カプラシース継手21に覆われている。第一カプラシース継手21は、ナット41に当接し、第一PC鋼材11が貫通する底面部212と、底面部212に設けられ第一PC鋼材11を覆い第二カプラシース継手22に連結シース継手23を介して連結される筒状本体部211とを有し、底面部212はナット41に対して位置決め部材42で位置決めされている。以上の構成から、第二PC鋼材12が第一のコンクリート31に定着した後にPC鋼棒10の緊締作業を行う場合においても、シース管20からのグラウト材Gの漏出を防止することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図2に基づいて説明する。
(構成)
第2実施形態は、封止部材4の構成が第1実施形態と相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
図2において、封止部材4は、第1実施形態よりもブレーキングナット10Cの軸方向の端面側に延設され、ブレーキングナット10Cの当該端面を覆っている。
封止部材4は、第1被覆部4Aと、第2被覆部4Bと、第2被覆部4Bから内側に折り返され、ブレーキングナット10Cの軸方向の端面を覆う第3被覆部4Cとを備えている。
【0038】
(施工方法)
第2実施形態のPC鋼棒体1の施工方法は第1実施形態とほぼ同じであるが、封止部材4の設置方法が第1実施形態と一部異なる。
つまり、第二PC鋼材12のシース10Bの外周に封止部材4を這わせた状態で、第二PC鋼材12を小径部221に挿通し、封止部材4を設置する。
【0039】
(実施形態の効果)
第2実施形態では、第1実施形態の(1)~(7)の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(8)封止部材4がブレーキングナット10Cの軸方向の端面を覆っているため、防錆材Bがシース管20の内部に充填されているグラウト材Gに混入することを確実に防止できる。
【0040】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を
図3に基づいて説明する。
(構成)
第3実施形態は、第一カプラシース継手の構成と、第一カプラシース継手を第一PC鋼材11に取り付ける構成とが第1実施形態と相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
図3において、PC鋼棒体2は、PC鋼棒10と、PC鋼棒10に設けられたシース管50と、第二PC鋼材12に設けられた封止部材4と、第一PC鋼材11にそれぞれ螺合されたナット41及び位置決め部材42と、位置決め部材42とナット41との間に設けられた硬質ゴム43とを備えている。
【0041】
シース管50は、第一カプラシース継手51と、第二カプラシース継手22とを備えている。
第一カプラシース継手51は、筒状本体部211と、筒状本体部211より小径の小径筒部512と、小径筒部512と筒状本体部211とを接続するテーパ部513とを有する。
小径筒部512はナット41に当接している。
【0042】
硬質ゴム43の材料としては、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロピレン(CR)ゴム、MBゴム等を例示できる。
硬質ゴム43は、小径筒部512の内部に収納される筒状部431と、筒状部431に一体形成されたテーパ部432とを有するものであり、第二PC鋼材12を挿通する孔部が軸芯に沿って形成されている。
テーパ部432は、その外周面がテーパ部513の内周面と当接しており、その平面が位置決め部材42と当接している。
図3では、連結シース継手23が省略されており、第一カプラシース継手51と第二カプラシース継手22とが直接螺合されている状態が図示されているが、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、第一カプラシース継手51と第二カプラシース継手22との間に連結シース継手23を設ける構成としてもよい。
【0043】
(施工方法)
第3実施形態のPC鋼棒体2の施工方法は第1実施形態とほぼ同じであるが、第一カプラシース継手51の設置方法が第1実施形態と異なる。
つまり、第一PC鋼材11の端部がナット41から突出している状態で、第一PC鋼材11に第一カプラシース継手51を設置する。そのため、第一カプラシース継手51の小径筒部512に硬質ゴム43を収納し、位置決め部材42を第一PC鋼材11に螺合して第一カプラシース継手51をナット41に対して位置決めする。位置決め部材42を螺合することで、硬質ゴム43のテーパ部432が第一カプラシース継手51のテーパ部513の内周面に当接する。
【0044】
(実施形態の効果)
第3実施形態では、第1実施形態の(1)~(7)の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(9)位置決め部材42とナット41との間に硬質ゴム43が設けられているから、第一PC鋼材11に第一カプラシース継手51を位置決め部材42で取り付ける際に、第一カプラシース継手51の姿勢を保持することができる。そのため、第一カプラシース継手51のナット41への装着作業が容易となる。
【0045】
(10)硬質ゴム43は、第一カプラシース継手51の小径筒部512の内部に収納される筒状部431と、筒状部431に一体形成され外周面がテーパ部513の内周面と当接するテーパ部432とを有する。そのため、硬質ゴム43の第一カプラシース継手51からの抜け止めを図ることができる。
【0046】
[第4実施形態]
(構成)
第4実施形態は、
図4に示すように、封止部材4を第2実施形態と同様に構成したことが第3実施形態と相違し、他の構成は第3実施形態と同じである。
【0047】
(施工方法)
第4実施形態のPC鋼棒体2の施工方法は、封止部材4の設置方法を除き第3実施形態と同じであり、封止部材4の設置方法は、第2実施形態と同じである。
【0048】
(実施形態の効果)
第4実施形態では、第1実施形態の(1)~(7)の効果、第2実施形態の(8)の効果、および第3実施形態の(9)、(10)の効果を奏することができる。
【0049】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を
図5に基づいて説明する。
(構成)
第5実施形態は、シース管の構成と、第一カプラシース継手を第一PC鋼材11に取り付ける構成とが第1実施形態と相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
図5において、PC鋼棒体3は、PC鋼棒10と、PC鋼棒10に設けられたシース管60と、PC鋼棒10に設けられた2つの封止部材4とを備えている。PC鋼棒体3は図示しないコンクリートに設けられている。
シース管60は、第一PC鋼材11の端部を覆う第一カプラシース継手61と、第二PC鋼材12の端部を覆う第二カプラシース継手22と、第一カプラシース継手61と第二カプラシース継手22とを連結する連結シース継手23とを有する。
第一カプラシース継手61は、第二カプラシース継手22と同じ構造である。
つまり、シース管60は、連結シース継手23を中心として左右が対象となる構成である。なお、
図5では、第一カプラシース継手61の筒状部224は、第二カプラシース継手22の筒状部224とは反対側に向いた状態が示されているが、想像線に示される通り、第1実施形態の筒状部213と同様の方向を向いているものでもよい。
第一カプラシース継手61及び第二カプラシース継手22の小径部221と、シース10Bとの間には封止部材4が設けられている。
【0050】
(施工方法)
まず、封止部材4と第一カプラシース継手61とを第一PC鋼材11に設け、封止部材4と第二カプラシース継手22とを第二PC鋼材12に設けておく。さらに、連結シース継手23を第二カプラシース継手22に一方向にねじ込み、カプラ13を第二PC鋼材12に一方向にねじ込んでおく。
そして、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12との端部同士を突き当てるとともに、カプラ13を逆方向にねじ込んで第一PC鋼材11と第二PC鋼材12とを連結する。さらに、連結シース継手23を逆方向にねじ込んで第一カプラシース継手61に接続してシース管60を形成する。
そして、シース管60にグラウト材Gを充填する。グラウト材Gのシース管60への充填方法等は第1実施形態と同じである。なお、シース管60に充填されたグラウト材Gは、第一カプラシース継手61の小径部221と第一PC鋼材11のシース10Bとの間に設けられた封止部材4と、第二カプラシース継手22の小径部221と第二PC鋼材12のシース10Bとの間に設けられた封止部材4とによって、外部に漏出することが阻止される。
【0051】
そして、コンクリートを打設し、その後、PC鋼棒10を緊張させる。PC鋼棒10を緊張させるにあたり、予め、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12の一方、例えば、第二PC鋼材12の一部を固定しておき、他方、例えば、第一PC鋼材11を第二PC鋼材12から離すように引っ張る。
PC鋼棒10の緊張作業に伴って、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12が軸方向に移動し、コンクリートでシース管60の動きが拘束されるので、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12の移動に伴ってシース管60に充填されたグラウト材Gがシース管60から漏出しようとするが、封止部材4により阻止される。
【0052】
(実施形態の効果)
第5実施形態では、第1実施形態の(1)~(6)の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(11)第一カプラシース継手61と第二カプラシース継手22とは、それぞれ封止部材4が設けられているから、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12とをカプラ13で単純連結する場合においても、シース管60からのグラウト材Gの漏出を防止することができる。
【0053】
[第6実施形態]
(構成)
第6実施形態は、
図6に示すように、封止部材4を第2実施形態と同様に構成したことが第5実施形態と相違し、他の構成は第5実施形態と同じである。
【0054】
(施工方法)
第6実施形態のPC鋼棒体3の施工方法は、封止部材4の設置方法を除き第5実施形態と同じであり、封止部材4の設置方法は、第2実施形態と同じである。
【0055】
(実施形態の効果)
第6実施形態では、第1実施形態の(1)~(6)の効果、第2実施形態の(8)の効果、および第5実施形態の(11)の効果を奏することができる。
【0056】
[第7実施形態]
(構成)
第7実施形態は、
図7に示すように、封止部材4を第一カプラシース継手61の小径部221からシース10Bに接触させながら露出させて、当該露出した封止部材4を覆うように、テーピング24を配置する構成が第6実施形態と相違し、他の構成は第6実施形態と同じである。
【0057】
(施工方法)
第7実施形態のPC鋼棒体3の施工方法は、封止部材4の設置方法を除き第6実施形態と同じであり、封止部材4の設置方法は、第2実施形態と同じである。
【0058】
(実施形態の効果)
第7実施形態では、第1実施形態の(1)~(6)の効果、第2実施形態の(8)の効果、および第5実施形態の(11)の効果を奏することができ、他の実施形態より、より高いグラウト材Gの封止効果を得ることができる。
【0059】
より詳しくは、本発明(PC鋼棒体)の実施形態は、
図1から
図7を見てもわかるように、具体的には、第一PC鋼材11と第二PC鋼材12とがカプラ13で連結された連結部を有するPC鋼棒10と、前記連結部に対向する前記第一PC鋼材11及び前記第二PC鋼材12のそれぞれの対向側を被覆し、かつ、前記第一PC鋼材11と前記第二PC鋼材12とのそれぞれの隙間に充填された防錆材Bを封止するシース10Bと、前記第一PC鋼材11と前記第二PC鋼材12にそれぞれ設けられ前記防錆材Bの漏れを防止するブレーキングナット10Cと、前記PC鋼棒10のうち前記連結部(カプラ13)及び前記ブレーキングナット10Cが内部に配置され、かつ、グラウト材Gが充填されるシース管20、50、60とを備え、前記シース10Bの端部は、前記ブレーキングナット10Cの周面を覆って前記防錆材Bを封止し、前記シース管20、50、60は、前記第一PC鋼材11に設けられたブレーキングナット10Cを少なくとも覆う第一カプラシース継手21、51、61と、前記第二PC鋼材12に設けられたブレーキングナット10Cを少なくとも覆う第二カプラシース継手22と、を有し、前記第一カプラシース継手21、51、61と前記第二カプラシース継手22との少なくとも一方と、前記シース10B及びブレーキングナット10Cとの間に、前記グラウト材Gを封止する封止部材4が設けられ、当該封止部材4が前記ブレーキングナット10Cを覆うように接触して延設されていることを特徴とする。
【0060】
このようなPC鋼棒体では、上述したように、前記第一カプラシース継手21、51、61と前記第二カプラシース継手22との少なくとも一方と、前記シース10B及びブレーキングナット10Cとの間に、前記グラウト材Gを封止する封止部材4が設けられ、当該封止部材4が前記ブレーキングナット10Cを覆うように接触して延設されているため、PC鋼棒10がシース管20、50、60に対して軸方向に移動等しにくくなる。また、仮に移動した場合でも、封止部材4が前記ブレーキングナット10Cを覆うように接触して延設されているため、当該移動した場合でも封止部材4が存在することになる。したがって、前記PC鋼棒10とシース管20、50、60との間の隙間からグラウト材Gが漏出することを防止できる。
【0061】
本発明のPC鋼棒体において、前記封止部材4が設けられた前記第一カプラシース継手21、51、61と前記第二カプラシース継手22との少なくとも一方は、前記シース10Bを挿通する小径部221、前記小径部221より大きな径の大径部222及び前記小径部221と前記大径部222との間に設けられたテーパ部223とを有し、前記小径部221の内径は前記ブレーキングナット10Cの外径より大きく、前記シース10Bは少なくとも前記小径部221内に、前記ブレーキングナット10Cは前記テーパ部223内にそれぞれ配置され、前記封止部材4は、前記小径部221から前記テーパ部223まで延設されていることが好ましい。
前記テーパ部223とブレーキングナット10Cと間には狭い空間が発生し、この空間はグラウト材Gを充填した場合でも気泡が入りやすい。そこで、当該封止部材4で当該空間を充填させることで、当該気泡の発生を抑制することができる。
【0062】
より具体的には、前記シース10Bの一部は前記小径部221内に、前記シース10Bの他の一部及び前記ブレーキングナット10Cは前記テーパ部223内にそれぞれ配置され、前記封止部材4は、前記小径部221から前記テーパ部223まで延設されている。
このような場合、前記シース10Bの他の一部と前記テーパ部223との間に、更に、狭い空間が発生するため、グラフト材を充填してもより気泡が入りやすい。そこで、当該封止部材4で当該空間を充填させることで、より当該気泡の発生を抑制することができる。
【0063】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、封止部材4をスポンジゴムから構成するものとしたが、本発明では、これに限定されるものではなく、例えば、布や紙等から構成するものでもよい。
また、第7実施形態(
図7)に示したような、封止部材4を第一カプラシース継手61の小径部221からシース10Bに接触させながら露出させて、当該露出した封止部材4を覆うように、テーピング24を配置する構成を、第1から第6実施形態に適用することもできる。
【0064】
さらに、前記各実施形態では、第一カプラシース継手21の小径部221には、シース10Bの雄ねじに螺合する雌ねじを形成するものとしてもよい。
また、第2実施形態において、硬質ゴム43は、テーパ部432が省略された筒状部材としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,2,3…PC鋼棒体、10…PC鋼棒、10A…雄ねじ部、10B…シース、10C…ブレーキングナット、11…第一PC鋼材、12…第二PC鋼材、13…カプラ、20、50,60…シース管、21,51,61…第一カプラシース継手、22…第二カプラシース継手、221…小径部、222…大径部、223…テーパ部、224…筒状部、211…筒状本体部、212…底面部、30…アンカープレート、4…封止部材、41…ナット、42…位置決め部材、43…硬質ゴム、B…防錆材、G…グラウト材