(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】積層造形のための金属前駆体を含む微粒子組成物及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240222BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240222BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240222BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240222BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240222BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20240222BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20240222BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240222BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20240222BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240222BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240222BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20240222BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240222BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/36
C08K3/04
C08K3/22
C08J3/12 Z CFG
B22F3/105
B22F3/16
B29C64/153
B29C64/165
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y70/10
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2020147978
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-08-28
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・エム.・ファルジア
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・レセッコ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・エス.・ホーキンス
(72)【発明者】
【氏名】シヴァンシ・エスワリ・スリスカンダハ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・クラリッジ
(72)【発明者】
【氏名】カロリン・パトリシア・ムーラッグ
(72)【発明者】
【氏名】ナンシン・フ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0240898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子組成物であって、
それぞれが外側表面と内部とを有する複数の熱可塑性微粒子であって、前記熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体を、前記熱可塑性微粒子の前記内部に含み、かつ、前記熱可塑性微粒子の前記外側表面上に配置された複数のナノ粒子を含み、前記複数のナノ粒子が、前記外側表面で前記熱可塑性
ポリマーと接触し、かつ、複数のシリカナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの組み合わせを含み、前記金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、複数の熱可塑性微粒子を含
み、前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、微粒子組成物。
【請求項2】
前記金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項3】
前記金属前駆体が、
1020nm~
1070nmの範囲の波長で活性化可能である、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーと混合された赤外線吸収剤を更に含み、前記赤外線吸収剤が、アンチモン、ビスマス、ホウ素、インジウム、チタン、スズ、セシウム、ジルコニウム、モリブデン、バナジウム、鉄、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む非化学量論的金属酸化物を含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項5】
方法であって、
それぞれが外側表面と内部とを有する複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積させることであって、前記熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体を、前記熱可塑性微粒子の前記内部に含み、ここで、前記複数の熱可塑性微粒子が、前記熱可塑性微粒子の前記外側表面上に配置された複数のナノ粒子をさらに含み、前記複数のナノ粒子が、前記外側表面で前記熱可塑性
ポリマーと接触し、かつ、複数のシリカ
ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含み、前記金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、堆積させることと、
前記粉末床の前記複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させて、前記金属前駆体が金属に依然として実質的に変換されていない印刷物を形成することと、を含
み、ここで前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、方法。
【請求項6】
前記金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーで活性化可能である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
パルスレーザーを使用して前記印刷物内の前記金属前駆体の一部を活性化して、前記印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成することを更に含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
無電解めっきを実行して、前記複数の不連続な金属アイランドを相互接続する1つ以上の導電性トレースを形成することを更に含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属前駆体が、熱可塑性ポリマー中に金属前駆体粒子として分散しており、前記金属前駆体粒子が、10nm~1000nmの範囲の粒径を有する、請求項1に記載の微粒子組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、積層造形に関し、より具体的には、粉末床融合(PBF)を使用する積層造形プロセス、複雑な物体を製造するための選択的レーザー焼結を使用するその様なプロセスであり、及び当該プロセスにおいて有用な微粒子組成物に関し、パルスレーザーから送達されるレーザー照射などのレーザー照射によって活性化可能な金属前駆体が、印刷プロセス中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
三次元(three-dimensional、3-D)印刷としても知られる積層造形は、急速に成長している技術分野である。積層造形は、伝統的にラピッドプロトタイピング作業に使用されてきたが、この技術は、任意の数の複雑な形状の商業部品及び工業部品(印刷物)を製造するためにますます採用されている。積層造形プロセスは、1)溶融印刷材料又は印刷材料への液体前駆体の流れ、又は2)印刷材料の粉末微粒子のいずれかの層ごとの堆積によって行われる。層ごとの堆積は、通常、デジタル三次元「ブループリント」(コンピュータ支援設計モデル)に基づいて正確な位置で印刷材料を堆積及び固結させるために、コンピュータの制御下で行われる。特定の実施例では、粉末微粒子の固結は、層ごとに堆積された粉末床において、レーザー又は電子ビームを使用して粉末床の正確な位置を加熱し、それによって、特定の粉末微粒子を固結させて、所望の形状を有する部品を形成する三次元印刷システムを使用して行われてもよい。粉末床における粉末微粒子の融合は、局所加熱による粉末微粒子の固結を促進するためにレーザーを用いる選択的レーザー焼結(selective laser sintering、SLS)によって行われ得る。
【0003】
三次元印刷で使用可能な粉末微粒子の中には、熱可塑性ポリマーを含むものがある。幅広い熱可塑性ポリマーが知られているが、特に選択的レーザー焼結によって微粒子固結を行うときに、現在の三次元印刷技術での使用に適合する特性を有することは比較的少ない。選択的レーザー焼結による固結に好適な熱可塑性ポリマーとしては、融解開始と結晶化の開始との間に著しい差を有するものが挙げられ、この差が良好な構造的及び機械的一体性を促進し得る。
【0004】
場合によっては、積層造形部品の表面上に導電性トレースを形成することが望ましい場合がある。現在、このような導電性トレースは、部品の表面上にグラファイト又は金属などの導電性材料で注入されたインクを堆積させ、続いて硬化させるか又は焼結して導電経路の形成を促進するための、別個のインクジェット印刷、エアロゾルジェット、又は直接書き込みプロセスにより形成される。このような導電性インクの堆積は、積層造形プロセスで生じるものとは完全に異なる条件下で生じるため、製造ライン間で印刷された部品の移動を必要とする。多くの場合、このプロセスは、特に、導電性トレースの配置に極限精度が必要とされる場合、煩雑かつ時間がかかる場合がある。印刷物の曲面(非平坦)表面上に導電性トレースを正確に配置することは、このように導電性トレースを形成する際に特に問題となり得る。インクジェット及びエアロゾルジェット印刷プロセスと併せて使用される特定の熱可塑性ポリマーと導電性インクとの間の接着が不十分であることに起因する、更なる困難が生じる場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、積層造形に好適な微粒子組成物を提供する。微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含み、金属前駆体は、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である。所望により、熱可塑性微粒子は、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を含んでもよい。
【0006】
本開示はまた、微粒子組成物を使用して形成された印刷物も提供する。印刷物は、微粒子固結によって形成され、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと混合された金属前駆体と、を含み、金属前駆体は、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である。所望により、複数のナノ粒子が、印刷物内のポリマーマトリックスと混合され得る。
【0007】
本開示はまた、例えば選択的レーザー焼結による粉末床融合によって印刷物を形成するための方法も提供する。方法は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積させることであって、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、堆積させることと、粉末床の複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させて、金属前駆体が金属に依然として実質的に変換されていない印刷物を形成することと、を含む。所望により、複数の熱可塑性微粒子は、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含む。
【0008】
本開示はまた、積層造形に好適な微粒子組成物を形成するための方法を提供する。方法は、熱可塑性ポリマーと金属前駆体とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で分散媒中で混ぜ合わせることであって、熱可塑性ポリマー及び分散媒が、加熱温度で実質的に不混和性であり、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、混ぜ合わせることと、加熱温度で金属前駆体の存在下で、熱可塑性ポリマーを液化液滴として分散させるのに十分な剪断力を加えることと、液化液滴が形成された後、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで分散媒を冷却することであって、熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体の少なくとも一部とを含む、冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含む。所望により、ナノ粒子は、ナノ粒子の少なくとも一部が、熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置されるように、分散媒中の熱可塑性ポリマー及び金属前駆体と混ぜ合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示される主題は、当業者に想到されるように、本開示の利益を有する、形態及び機能における相当な修正、変更、組み合わせ、及び等価物が可能である。
【0010】
【
図1】本開示による熱可塑性微粒子を製造するための非限定的な例示的方法のフローチャートである。
【0011】
【
図2】選択的レーザー焼結によって熱可塑性微粒子を固結させて印刷物を形成することと、それに続くパルスレーザーを使用した金属アイランドを形成することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、概して、積層造形に関し、より具体的には、選択的レーザー焼結及び他の粉末床融合プロセスなど、印刷物を製造するための微粒子固結を用いる積層造形方法であって、パルスレーザーによって提供されるようなレーザー照射によって活性化可能な金属前駆体が、印刷プロセス中に存在するが、微粒子固結中に実質的に活性化されないままである、積層造形方法に関する。
【0013】
上述のように、微粒子固結を促進するために選択的レーザー焼結及び他の粉末床融合プロセスを用いるものなどの積層造形プロセスは、広範囲の複雑な形状で部品を製造することができる。現在のところ、印刷部品の表面上に、積層造形プロセスの一体部分として導電性トレースを導入することは不可能である。その代わりに、別個のエアゾール、インクジェット、又は直接印刷技術を用いて、印刷物(部品)の表面上に導電性インクを堆積させ、その後の硬化又は焼結を行って導電性を促進する。導電性インクを堆積させるための別個の印刷技術は、処理スループットを制限し、導電性トレースの不正確な配置をもたらし得る。場合によっては、印刷物を含む熱可塑性ポリマーと導電性トレースを堆積させるために使用される導電性インクとの間には不十分な接着が存在し得る。
【0014】
有利には、本開示は、部品製造後に部品を別個の印刷製造ラインに移送する必要なく、選択的レーザー焼結及び他の粉末床融合プロセスを用いるものなど、金属アイランドが積層造形プロセス中に導入され得る経路を提供する。特に、本開示は、積層造形によって形成される物体の表面上に不連続な金属アイランドの形成を促進するために、レーザー照射、特にパルスレーザーで活性化可能な金属前駆体を含む微粒子組成物を用いる。好適な金属前駆体は、活性化前に非導電性であり、配位状態及び/又は塩形態の金属を含む。活性化後、金属前駆体を金属導体に変換し得る。いくつかの実施形態では、選択的レーザー焼結を促進するために使用されるレーザーはまた、微粒子固結を行うために使用されるものとは異なる加工条件下で金属アイランドの形成を促進し得る。あるいは、別個のレーザーを使用して、微粒子固結を促進し、金属前駆体を活性化して金属アイランドを形成してもよい。すなわち、本明細書に開示されるプロセスは、金属前駆体の固結を促進するのに有効ではあるが金属前駆体を活性化しない、連続レーザーなどの第1のレーザーと、微粒子固結が完了すると金属(金属アイランド)の形成を促進するのに有効な、パルスレーザーなどの第2のレーザーと、の2つのレーザーを使用し得る。選択的レーザー焼結及び他の粉末床融合プロセスを実行するための機器内に第2のレーザーを組み込むことは容易に達成され得、それによって、その製造後に印刷物を移動させることなく金属アイランドを形成することができる。あるいは、金属アイランドの形成を促進するために使用される第2のレーザーは、選択的レーザー焼結を行うために使用される第1のレーザーとは異なる場所にあってもよい。印刷物の位置は製造後に固定されたままであり、選択的レーザー焼結及び他の粉末床融合プロセス中に高精度で既知であるため、金属アイランドはまた、本明細書の開示を使用することによって、その上に正確に配置され得る。しかしながら、金属アイランドの形成は、粉末床融合を実行するために使用されるものとは異なる別個のシステム内の第2のレーザーを使用して、交互に行われ得ることを理解されたい。
【0015】
広範囲の金属前駆体が本明細書の開示において使用されてもよく、以下で更に詳細に説明される。有利には、このような金属前駆体は、選択的レーザー焼結プロセス及び他の粉末床融合プロセスと共に使用される粉末微粒子内に容易に組み込まれ得る。このような粉末微粒子は、従来の機械的挽砕又は沈殿プロセスなどの金属前駆体を含有する熱可塑性ポリマーから形成され得る。しかしながら、より望ましくは、金属前駆体は、本明細書で更に詳細に記載されるように、熱可塑性微粒子を粉末組成物として形成するために使用される溶融エマルションの押出プロセスを用いるものを含む溶融乳化プロセス中に熱可塑性ポリマーと混合され得る。特に好適な溶融乳化プロセスは、エマルション安定剤としての微粒子形成プロセスにおいて、カーボンブラック、及び/又はシリカナノ粒子若しくは他の酸化物ナノ粒子などのナノ粒子を組み込んでもよく、ここで、ナノ粒子は、液化熱可塑性ポリマー液滴の固化から生じる熱可塑性微粒子の外側表面上に配置される。外側表面上のナノ粒子のコーティング又は部分コーティングは、熱可塑性微粒子の狭い粒径の粒子分布及び高球形度をもたらし、これにより、積層造形中に良好な流動特性及び準備可能な微粒子固結をもたらし得る。金属前駆体は、微粒子形成プロセスを妨害しないし、ナノ粒子も、微粒子固結後の金属アイランドの形成を妨害しない。
【0016】
本明細書の説明及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下の段落によって修正される場合を除き、平易で通常の意味を有する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「不混和性」は、混ぜ合わされたときに、周囲気圧で、室温、又は室温で固体である場合は構成成分の融点において、互いに5重量%未満の可溶性を有する2つ以上の相を形成する構成成分の混合物を指す。例えば、10,000g/モルの分子量を有するポリエチレンオキシドは、室温で固体であり、65℃の融点を有する。したがって、室温で液体である材料及び上記ポリエチレンオキシドが65℃において互いに5重量%未満の可溶性を有する場合、上記ポリエチレンオキシドは、上記材料と不混和性である。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「熱可塑性ポリマー」は、加熱及び冷却により、可逆的に軟化及び硬化するポリマー材料を指す。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性エラストマーを包含する。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの範囲の粒径を有する粒子状物質を指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「酸化物」は、金属酸化物及び非金属酸化物の両方を指す。本開示の目的のために、ケイ素は金属であるとみなされる。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「酸化物ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの範囲の粒径を有し、かつ金属酸化物又は非金属酸化物を含む、粒子状物質を指す。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「会合した」は、表面、特にナノ粒子を含むエマルション安定剤への化学結合又は物理的接着を指す。理論に制限されるものではないが、ポリマーとエマルション安定剤との間の本明細書に記載される会合は、主に、水素結合及び/又は他の機構による物理的接着であると考えられる。しかしながら、化学結合がある程度発生している可能性がある。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「混合される」は、第2の物質中の第1の物質の溶解、又は第2の物質中の固体としての第1の物質の分散を指し、分散は均一であっても不均一であっ得る。様々な実施形態では、金属前駆体は、本明細書に開示される熱可塑性微粒子の内部全体に実質的に均一に分散され得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「D10」は、サンプルの10%(特に指定がない限り体積基準で)が、直径値未満の直径を有する粒子から構成される直径を指す。本明細書で使用するとき、用語「D50」は、サンプルの50%(特に指定がない限り、体積基準で)が、直径値未満の直径を有する粒子で構成される直径を指す。D50はまた、「平均粒径」とも称され得る。本明細書で使用するとき、用語「D90」は、サンプルの90%(特に指定がない限り、体積基準で)が、直径値未満の直径を有する粒子で構成される直径を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「剪断力」は、流体中で機械的撹拌を誘導する撹拌又は類似のプロセスを指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、ナノ粒子に対して及びポリマー粒子の表面に対して「埋め込んだ」という用語は、ナノ粒子がポリマー粒子の表面上に単純に置かれている場合に生じる場合より大きい程度までポリマーがナノ粒子と接触するように、ナノ粒子が少なくとも部分的に表面に延びて、それにより表面に接線方向に接触していることを指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、分散媒の粘度は、特に指定がない限り、25℃での運動粘度を指し、特に指定のない限り、ASTM D445-19毎に測定される。
【0028】
熱可塑性ポリマーの融点は、特に指定がない限り、10℃/分の昇温速度及び冷却速度で、ASTM E794-06(2018)によって決定される。
【0029】
熱可塑性ポリマーの軟化温度又は軟化点は、特に指定がない限り、ASTM D6090-17によって決定される。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50グラムのサンプルを使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することによって測定され得る。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「近赤外」領域は、約700nm~約1400nmの波長範囲を指し、これは、IR-A領域(国際照明委員会によって指定されている)を指すこともある。
【0031】
本開示の微粒子組成物は、熱可塑性微粒子を含み、積層造形プロセス、特に、微粒子固結を促進するための選択的レーザー焼結と金属前駆体からの金属の形成を促進するためのパルスレーザーとを用いる、積層造形プロセスにおける使用に好適であり得る。積層造形に好適な微粒子組成物は、印刷ヘッド又は同様のデバイスを使用して粉末床内の分配のための良好な流動特性を呈し得る。熱可塑性微粒子上の流動助剤及び改質は、分配プロセスを促進することができる。好適な熱可塑性微粒子はまた、所与の積層造形プロセスにおいて特定の固結技術と適合する融解温度及び結晶化温度を呈し得る。積層造形に好適な本開示の微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の微粒子を含んでもよく、この粒子内では、金属前駆体は、特にパルスレーザーを用いたレーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である。積層造形に好適な本開示のより具体的な微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体と、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子と、を含む複数の微粒子を含んでもよく、金属前駆体は、特にパルスレーザーを用いたレーザー照射に曝露されると金属を形成するように活性化可能である。所望により、少なくともいくつかのナノ粒子は、ナノ粒子の第1の部分が熱可塑性微粒子内に位置し、ナノ粒子の第2の部分が熱可塑性微粒子の表面上に配置されるように、熱可塑性ポリマーと混合され得る。熱可塑性微粒子の外側表面上に配置されたナノ粒子は、外側表面に少なくとも部分的に埋め込まれ、それと会合され得る。存在する場合、熱可塑性微粒子の外側表面上に配置されたナノ粒子は、積層造形中の微粒子組成物の準備可能な分配を促進し得る。
【0032】
存在する場合、複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子を含んでもよい。本開示での使用に好適な酸化物ナノ粒子としては、例えば、シリカナノ粒子、チタニアナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、酸化スズナノ粒子、酸化ホウ素ナノ粒子、酸化セリウムナノ粒子、酸化タリウムナノ粒子、酸化タングステンナノ粒子、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。例えば、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及びアルミノホウケイ酸塩などの混合酸化物もまた、用語「酸化物」によって包含される。酸化物ナノ粒子は、本質的に親水性であっても疎水性であってもよく、ナノ粒子原産であってもよく、又はナノ粒子の表面処理による結果であり得る。例えば、ジメチルシリル、トリメチルシリル等の疎水性表面処理を有するシリカナノ粒子は、親水性表面ヒドロキシル基を適切な官能化剤と反応させることによって形成され得る。疎水性官能化酸化物ナノ粒子は、本開示の方法及び微粒子組成物において特に望ましいものとしてよいが、非官能化酸化物ナノ粒子又は親水変性酸化物ナノ粒子もまた同様に使用に好適であり得る。
【0033】
シリカナノ粒子、特にその上に疎水性官能化を有するヒュームドシリカナノ粒子は、疎水性官能化の種類及び粒径が様々である、様々な官能化シリカが利用可能なので、本明細書の開示における使用に特に適し得る。シラザン及びシラン疎水性官能化は、本開示で使用され得る容易な疎水性官能化である。したがって、本明細書の開示で使用される複数の酸化物ナノ粒子は、シリカナノ粒子、特に疎水性官能化されたシリカナノ粒子を含んでもよく、又はこれらから本質的になり得る。シリカナノ粒子は、別の種類の酸化物ナノ粒子又は非酸化物ナノ粒子と組み合わせて使用されてもよく、他の種類の酸化物若しくは非酸化物ナノ粒子は、シリカナノ粒子を単独で使用したときに得られない、熱可塑性微粒子又はそこから形成された物体に特性を伝達し得る。
【0034】
カーボンブラックは、本明細書の開示において熱可塑性微粒子上に存在し得る別の種類のナノ粒子である。様々な等級のカーボンブラックは、当業者によく知られており、これらのいずれも本明細書の開示で使用され得る。赤外線を吸収することができる他のナノ粒子は、熱可塑性微粒子の形成を容易にするために同様に使用され得る。場合によっては、カーボンブラック、シリカ、及び他の種類の酸化物ナノ粒子が互いに組み合わせて存在し得る。
【0035】
ポリマーナノ粒子は、本明細書の開示において使用するのに好適な熱可塑性微粒子上に存在し得る別の種類のナノ粒子である。好適なポリマーナノ粒子は、熱硬化している及び/又は架橋された1つ以上のポリマーを含んでもよく、これにより、本明細書の開示による溶融乳化又は類似の微粒子形成技術によって処理されたときに溶融しない。高融点又は分解点を有する高分子量熱可塑性ポリマーを含むナノ粒子は、熱可塑性微粒子形成を促進するための本明細書の開示における好適なポリマーを同様に表し得る。
【0036】
熱可塑性微粒子上のシリカナノ粒子又は類似の酸化物ナノ粒子の充填及び粒径は、本明細書の開示において広範囲にわたって変化し得る。シリカナノ粒子又は類似の酸化物ナノ粒子の充填は、以下に更に記載されるように、熱可塑性微粒子の形成を促進するために使用される分散媒中のナノ粒子濃度によって決定され得る。非限定的な例では、分散媒中のナノ粒子の濃度は、熱可塑性ポリマーの重量に対して、約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約2重量%、又は約0.25重量%~約1.5重量%、又は約0.2重量%~約1.0重量%、又は約0.25重量%~約1重量%、又は約0.25重量%~約0.5重量%の範囲としてもよい。ナノ粒子の粒径は、約1nm~約100nmの範囲としてもよいが、約500nmまでの粒径を許容可能としてもよい。非限定的な例では、ナノ粒子の粒径は、約5nm~約75nm、又は約5nm~約50nm、又は約5nm~約10nm、又は約10nm~約20nm、又は約20nm~約30nm、又は約30nm~約40nm、又は約40nm~約50nm、又は約50nm~約60nmの範囲としてもよい。ナノ粒子、特にシリカナノ粒子及び同様の酸化物ナノ粒子は、約10m2/g~約500m2/g、又は約10m2/g~約150m2/g、又は約25m2/g~約100m2/g、又は約100m2/g~約250m2/g、又は約250m2/g~約500m2/gのBET表面積を有し得る。
【0037】
本明細書の開示において使用するのに適した特定のシリカナノ粒子は、疎水性官能化され得る。このような疎水性官能化は、シリカナノ粒子の水との相溶性を非官能化シリカナノ粒子よりも低くし得る。加えて、疎水性官能化は、分散媒中のシリカナノ粒子の分散を改善し得、これは高度に疎水性であり得る。疎水性官能化は、シリカナノ粒子の表面に非共有結合又は共有結合され得る。共有結合は、例えば、シリカナノ粒子の表面上の表面ヒドロキシル基の官能化によって、行われ得る。非限定的な実施例では、シリカナノ粒子は、ヘキサメチルジシラザンで処理されて、疎水性修飾の共有官能化を提供し得る。市販の疎水性官能化シリカナノ粒子としては、例えば、Aerosil RX50(Evonik、平均粒径=40nm)及びAerosil R812S(Evonik、平均粒径=7nm)が挙げられる。
【0038】
本明細書の開示において使用するのに好適な酸化物又は非酸化物ナノ粒子は、赤外線を吸収することができるものを含んでもよい。金属前駆体からの金属の形成を促進するために赤外線を吸収することができる例示的な材料について、以下で更に論じる。
【0039】
金属前駆体は、溶融乳化中又は熱可塑性ポリマーが軟化又は液化されて熱可塑性ポリマー液滴を形成する別の好適なブレンド技術中に、熱可塑性微粒子に組み込まれ得る。したがって、好適な金属前駆体は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度の温度以上の温度まで熱的に安定し得る。好適な金属前駆体の他の特性としては、例えば、電気的非導電性(金属への変換前)、良好な耐候性、熱可塑性ポリマーとの金属前駆体粒子の準備可能な混合、及び/又は熱可塑性ポリマー中の金属前駆体の溶解度、及び低毒性を挙げられ得る。粒子として混合されるとき、金属前駆体粒子は、約10nm~約1000nmの粒径の範囲としてもよい。
【0040】
特に好適な金属前駆体は、電磁スペクトルの赤外領域(近赤外領域を含む)、可視領域、又は紫外領域内で動作するレーザーによって活性化可能であり得る。したがって、好適なレーザー照射波長は、約200nm~約14,000nmの範囲内に存在するもの、特に約1020nm~約1070nmの範囲の照射波長から選択することができる。好適なレーザー、特にそのパルスレーザー変異型としては、電磁スペクトルの紫外領域で動作するエキシマレーザー、固体レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー(レーザーダイオード)、及びCO2レーザー(10,600nmでの放出波長)を挙げられ得る。金属前駆体活性化を促進するために使用される場合、CO2レーザーは、粉末微粒子の固結を促進するために使用される場合とは異なる条件下で動作し得る。具体的には、CO2レーザーは、粉末微粒子の固結を促進するために使用されるものよりも高い金属活性化を促進する際に、レーザー強度(単位面積当たりのレーザー出力)で動作し得る。レーザー強度が高い結果、金属前駆体を活性化する際にレーザーのパルス波動作が望ましい場合がある。
【0041】
周波数2逓倍の又は周波数3逓倍のNd:YAGレーザー又は同様の固体レーザーにより、可視放射線(532nm)又は紫外線(355nm)を提供してもよく、その一方で、非逓倍の変異型により、1064nmでの近赤外放射を提供し得る。他の周波数逓倍レーザーもまた、本明細書の開示において使用され得る。
【0042】
近赤外領域は、電磁スペクトルのこの領域に電磁放射線を提供する固体レーザー又はファイバーレーザーの準備可能な利用可能性のために、特に好適であるとし得る。例えば、電磁スペクトルの近赤外領域内で動作する好適なレーザーとしては、例えば、約1064nmの放出波長を有するNd(ネオジム)ドープ固体レーザー、例えばNd:YAG(イットリウムアルミニウムガーネット)、Nd:YVO4(イットリウムオルトバナジン酸イットリウム)及びNd:YLF(イットリウムフッ化リチウム)レーザー、約1020nm~約1050nmの動作波長を有する他の金属でドープされた固体レーザー、並びに約1030nm~約1070nmの放出を有する、Yb-ドープファイバーレーザーなどのファイバーレーザーが挙げられる。金属前駆体を活性化するための本明細書の開示での使用に好適なレーザーは、パルス波モードで動作可能として、金属前駆体を金属アイランドに効果的に変換するための高パルスレーザー強度を提供し、並びに、強い金属接着を促進するために、ポリマー表面のアブレーション及び粗化をもたらし得る。好適な金属前駆体の具体例としては、電磁スペクトルの近赤外領域内に存在する、約1020nm~約1070nmの範囲の放出波長を有するパルスレーザービームによって活性化可能なものを挙げられ得る。このようなレーザーは、約1W~約10Wのパワー、約10kHz~約120kHzのパルス周波数、及び約0.1m/s~約10m/sの走査速度で動作させ得る。使用される特定の金属前駆体は、以下の特定の実施例について説明するように、金属アイランドを形成するために使用されるパルスレーザーの種類及びその放出波長を決定し得る。
【0043】
好適な金属前駆体の具体例としては、以下の材料のうちの1つ以上を挙げられ得る:
-酸化銅、又は銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムから選択される金属との混合酸化物。銅の混合酸化物の具体例としては、例えば、銅クロム酸化物スピネル(クロム酸銅)、銅アルミニウム酸化物、銅鉄酸化物等が挙げられる。クロム酸銅は、例えば、Nd:YAGレーザーを用いるなどして、1060nmのパルスレーザー放出波長で好適に活性化され得る。
-水酸化銅、水酸化銅、リン酸銅、硫酸銅、銅チオシアネート、又はこれらの任意の組み合わせ。別途記載のない限り、これらの銅塩は、+2酸化状態(銅塩)中に銅を含有する。銅チオシアネートは、+1又は+2酸化状態のいずれかで存在し得る。
-銅、銀、パラジウム、又はこれらの任意の組み合わせから選択される金属を含む金属-有機錯体(金属-配位子錯体)。好適な金属-有機錯体としては、例えば、金属モノカルボン酸錯体、金属ジカルボキシレート錯体、金属アセチルアセトネート錯体、金属サリチルアルジミナト錯体等を挙げられ得る。好適な金属-有機錯体の具体例としては、シュウ酸銅及びオレイン酸銅などのカルボン酸銅及びジカルボキシレート;アセチルアセトナート;銅サレン(サレン=N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン);銀ネオデカン酸塩などの銀カルボン酸塩、並びに酢酸パラジウム及びネオデカン酸パラジウムなどのカルボン酸パラジウム、が挙げられ得るが、これらに限定されない。パラジウム含有金属-有機錯体は、エキシマレーザーなどの電磁スペクトルの紫外領域内で放出されるパルスレーザーを用いて金属に変換され得る。対照的に、いくつかの銀含有金属有機錯体は、電磁スペクトルの可視領域内で放射されるパルスレーザーを使用して、金属に好適に変換され得る。
【0044】
本明細書の開示において使用に好適な金属前駆体の具体例としては、例えば、PK3095黒色顔料(Ferro Corporation)及びブラック1G顔料黒色28(Shepherd Color Company)が挙げられ、これらは両方とも銅クロメート系スピネルを含む。
【0045】
特に電磁スペクトルの近赤外領域における赤外線放射の吸収強度は、パルスレーザーによる照射が対応する金属への金属前駆体の十分な変換をもたらすかどうかを決定し得る。十分に強い吸収の場合、金属前駆体は、適切な単独のものであり得る。赤外線吸収の強度がより弱い場合、赤外線吸収剤を熱可塑性ポリマーと混合して、金属前駆体の金属へのより効率的な変換を促進し得る。好適な赤外線吸収剤としては、例えば、アンチモン、ビスマス、ホウ素、銅、インジウム、チタン、スズ、セシウム、ジルコニウム、モリブデン、バナジウム、鉄、又はこれらの任意の組み合わせなどの金属を含有する非化学量論的金属酸化物を挙げられ得るが、これらに限定されない。好適な赤外線吸収剤の具体例としては、例えば、アンチモンドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化インジウムスズ、還元型酸化インジウムスズ、酸素欠損酸化ビスマス、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。存在する場合、熱可塑性微粒子形成を促進するために使用されるナノ粒子、特に酸化物ナノ粒子又はカーボンブラックは、赤外線吸収剤を構成し得る。すなわち、赤外線吸収剤は、熱可塑性微粒子の形成を促進するために使用される複数のナノ粒子中に存在してもよく、又は別個の材料を構成し得る。存在する場合、赤外線吸収剤は、熱可塑性ポリマーに対して約0.01重量%~約10重量%、又は約0.5重量%~約5重量%の充填量で熱可塑性微粒子内に含まれ得る。
【0046】
赤外線吸収強度に応じて及び赤外線吸収剤が存在するかどうかに応じて、金属前駆体は、熱可塑性ポリマーに対して測定されるとき、約1重量%~約25重量%の複数の熱可塑性微粒子、又は約2重量%~約30重量%複数の熱可塑性微粒子、又は熱可塑性ポリマーに対して測定されるとき、約5重量%~約15重量%の複数の熱可塑性微粒子を含んでもよい。
【0047】
本明細書の開示において使用に好適な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアミド(例えば、ナイロン-6、ナイロン-12等)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロック(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)を含むコポリマー、グラフト化又は非グラフト化熱可塑性ポリオレフィン、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマーポリマー、官能化又は非官能化エチレン/アルキル(メタ)アクリレート、官能化又は非官能化(メタ)アクリル酸ポリマー、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマー/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン/ビニルモノマー/カルボニルターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/カルボニルターポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノール樹脂、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、ポリアクリロニトリル、シリコーン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。前述の1つ以上を含むコポリマーもまた、本開示において使用され得る。
【0048】
本明細書の開示において使用するための熱可塑性ポリマーの特に好適な例としては、ナイロン6又はナイロン12などのポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(アリーレンスルホン)、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0049】
好適なポリアミドのより具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6、ポリアミド6、又はPA6)、ポリ(ヘキサメチレンサクシアミド)(ナイロン46、ポリアミド46、又はPA46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66、ポリアミド66、又はPA66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56、ポリアミド56、又はPA56)、ポリヘキサメチレンセバカアミド(ナイロン610、ポリアミド610、又はPA610)、ポリウンデカアミド(ナイロン11、ポリアミド11、又はPA11)、ポリドデカアミド(ナイロン12、ポリアミド12、又はPA12)、及びポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T、ポリアミド6T、又はPA6T)、ナイロン10.10(ポリアミド10.10又はPA10.10)、ナイロン10.12(ポリアミド10.12又はPA10.12)、ナイロン10.14(ポリアミド10.14又はPA10.14)、ナイロン10.18(ポリアミド10.18又はPA10.18)、ナイロン6.10(ポリアミド6.10又はPA6.10)、ナイロン6.18(ポリアミド6.18又はPA6.18)、ナイロン6.12(ポリアミド6.12又はPA6.12)、ナイロン6.14(ポリアミド6.14又はPA6.14)、半芳香族ポリアミド等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コポリアミドも使用され得る。好適なコポリアミドの例としては、PA11/10.10、PA6/11、PA6.6/6、PA11/12、PA10.10/10.12、PA10.10/10.14、PA11/10.36、PA11/6.36、PA10.10/10.36等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エラストマー系となり得る、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリカーボネート-エステルアミド、及びポリエーテル-ブロック-アミドも使用され得る。
【0050】
好適なポリウレタンの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、混合ポリエーテル及びポリエステルポリウレタン等、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリウレタンの例としては、ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン]、ELASTOLLAN(登録商標)1190A(BASFから入手可能なポリエーテルポリウレタンエラストマー)、ELASTOLLAN(登録商標)1190A10(BASFから入手可能なポリエーテルポリウレタンエラストマー)等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好適な熱可塑性ポリマーは、エラストマー系又は非エラストマー系であり得る。前述の熱可塑性ポリマーの例のいくつかは、ポリマーの特定の組成に応じてエラストマー系又は非エラストマー系であり得る。例えば、エチレンとプロピレンとのコポリマーであるポリエチレンは、エラストマー系であってもよく、又はポリマー中に存在するプロピレンの量に依存しなくてもよい。
【0052】
エラストマー系熱可塑性ポリマーは、一般に、以下の6つのクラス(これらのいずれも本明細書の開示で使用され得る)のうちの1つに該当する:スチレン系ブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性加硫物(エラストマー合金とも呼ばれる)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、及び熱可塑性ポリアミド(典型的にはポリアミドを含むブロックコポリマー)。エラストマー系熱可塑性ポリマーの例は、Handbook of Thermoplastic Elastomers,2nd ed.,B.M.Walker and C.P.Rader,eds.,Van Nostrand Reinhold,New York,1988に見出すことができる。エラストマー系熱可塑性ポリマーの例としては、エラストマー系ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロック(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)を含むコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、及びポリアクリロニトリル)、シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。弾性スチレン系ブロックコポリマーとしては、イソプレン、イソブチレン、ブチレン、エチレン/ブチレン、エチレン-プロピレン、及びエチレン-エチレン/プロピレンからなる群から選択される少なくとも1つのブロックが挙げられ得る。より具体的な弾性スチレン系ブロックコポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン-プロピレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン)など、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0053】
非限定的な例では、本明細書の開示の熱可塑性微粒子は、溶融乳化によって形成され得る。熱可塑性微粒子を製造するためのこのような方法は、熱可塑性ポリマーと金属前駆体とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で分散媒中で混ぜ合わせることであって、熱可塑性ポリマー及び分散媒が、加熱温度で実質的に不混和性であり、金属前駆体が、パルスレーザーなどのレーザー照射に曝露されると金属を形成するように活性化可能である、混ぜ合わせることと、加熱温度で金属前駆体の存在下で、熱可塑性ポリマーを液化液滴として分散させるのに十分な剪断力を加えることと、液化液滴が形成された後、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで分散媒を冷却することであって、熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体の少なくとも一部とを含む、冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含んでもよい。このような方法のより具体的な例は、熱可塑性ポリマーと、ナノ粒子と、金属前駆体とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で分散媒中で混ぜ合わせることであって、熱可塑性ポリマー及び分散媒が、加熱温度で実質的に不混和性であり、金属前駆体が、パルスレーザーなどのレーザー照射に曝露されると金属を形成するように活性化可能である、混ぜ合わせることと、加熱温度でナノ粒子及び金属前駆体の存在下で、熱可塑性ポリマーを液化液滴として分散させるのに十分な剪断力を加えることと、液化液滴が形成された後、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで分散媒を冷却することであって、熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体の少なくとも一部と、熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面と会合するナノ粒子の少なくとも一部とを含む、冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含んでもよい。所望により、赤外線吸収剤は、赤外線吸収剤が熱可塑性微粒子の形成後に熱可塑性微粒子と混合されるように、分散媒中で熱可塑性ポリマー、ナノ粒子、及び金属前駆体と混ぜ合わせてもよい。熱可塑性ポリマー、ナノ粒子、金属前駆体、及び赤外線吸収剤の好適な例は、それらのいずれも本明細書の開示による熱可塑性微粒子を形成するために使用され得るものとして、以上に提供されている。
【0054】
図1は、微粒子形成がナノ粒子の存在下で起こる、本開示による熱可塑性微粒子を製造するための非限定的な例示的方法100のフローチャートである。示されるように、熱可塑性ポリマー102と、分散媒104と、ナノ粒子106と、金属前駆体107とが混ぜ合わされて108、混合物110を生成する。1つ以上のスルホネート界面活性剤などの1つ以上の界面活性剤もまた、混合物110中に存在し得る。熱可塑性ポリマー102と、分散媒104と、ナノ粒子106と、金属前駆体107とは、混合及び/又は加熱を行いながら、任意の順序で混ぜ合わされ得る108。具体例では、分散媒104は、他の構成成分と混ぜ合わされる前に、熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度を超えて加熱され得る。
【0055】
熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度を超える加熱は、溶融エマルション中の構成成分のいずれかの分解温度又は沸点未満の任意の温度であり得る。非限定的な例では、熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度より約1℃~約50℃、又は約1℃~約25℃、又は約5℃~約30℃、又は約20℃~約50℃超えた温度で加熱し得る。本明細書の開示において、融点は、10℃/分のランプ及び冷却速度を有するASTM E794-06(2018)によって決定され得る。別途記載のない限り、ポリマーの軟化温度又は軟化点は、ASTM D6090-17によって決定される。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50グラムのサンプルを使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することによって測定することができる。本開示における融点又は軟化温度は、約50℃~約400℃の範囲であり得る。
【0056】
次いで、混合物110は、熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度よりも高い温度で熱可塑性ポリマー102の液化液滴を生成するのに十分な剪断力を加えることによって、処理112され、溶融エマルション114を形成する。理論に制限されるものではないが、全ての他の要因が同じであれば、剪断力を増加させることは、分散媒104中の液化された液滴のサイズを減少させ得ると考えられる。ある点では、剪断力の増加及び液滴の大きさの減少、及び/又はより高い剪断速度で液滴の内容物への分裂という側面での利益の減少が有り得ることを理解されたい。溶融エマルション114を製造するのに好適な混合装置の例としては、押出機(例えば、連続押出機、バッチ押出機など)、撹拌反応器、ブレンダー、インラインホモジナイザー系を有する反応器等、及びそれから誘導される装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
非限定的な例では、液化液滴は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約1μm~約200μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約10μm~約150μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90mのサイズを有し得る。固化後に形成された熱可塑性微粒子は、同様のサイズ範囲内に存在し得る。すなわち、本開示の微粒子組成物及び方法における熱可塑性微粒子は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約1μm~約200μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約1μm~約200μm、又は約10m~約100m、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90mmの粒径を有し得る。粒径測定は、光学画像の分析によって、又は粒径測定のための光散乱技術を使用するMalvern Mastersizer 3000 Aero S機器の内蔵ソフトウェアを使用することによって行われ得る。
【0058】
光散乱技術については、Malvern Analytical Ltd.から入手した商標名Quality Audit Standards QAS4002(商標)で15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズ対照サンプルを使用し得る。サンプルは、Mastersizer 3000 Aero Sの乾燥粉末分散モジュールを使用して空気中に分散された乾燥粉末として分析され得る。粒径は、サイズの関数としての体積密度のプロットから機器ソフトウェアを使用して導出され得る。
【0059】
次いで、溶融エマルション114を冷却116して、液化液滴を固化状態の熱可塑性微粒子に固化させる。冷却速度は、約100℃/秒~約10℃/時又は約10℃/秒~約10℃/時の範囲であってもよく、これらの間に任意の冷却速度を含む。剪断力は、冷却中に中断され得るか、又は冷却中に同じ速度又は異なる速度で維持され得る。次いで、冷却された混合物118を処理120して、熱可塑性微粒子122を他の構成成分124(例えば、分散媒104、余剰のナノ粒子106、余剰の金属前駆体107等)から分離することができる。この段階で、洗浄、濾過、及び/又は同様なことが、熱可塑性微粒子122を更に精製するために実施されてもよく、熱可塑性微粒子122は、熱可塑性ポリマー102、熱可塑性微粒子122の外側表面をコーティングするナノ粒子106の少なくとも一部、及び熱可塑性微粒子122内で混合又は会合されている金属前駆体107の少なくとも一部を含む。温度(冷却速度を含む)、熱可塑性ポリマー102の種類、並びにナノ粒子106の種類及び粒径などの非限定的な要因に応じて、ナノ粒子106は、その上に配置される過程で、熱可塑性微粒子122の外側表面内に少なくとも部分的に埋め込まれ得る。埋め込みを行わない場合であっても、ナノ粒子106は、熱可塑性微粒子122と強固に会合したままで、その更なる使用を容易にし得る。金属前駆体107は、ポリマーマトリックス中の固体として混合される熱可塑性微粒子122の表面上に配置されてもよく、又はポリマーマトリックス内に溶解され得る。
【0060】
上記では、熱可塑性ポリマー102及び分散媒104は、これらの構成成分が、様々な処理温度(例えば、室温から、液化液滴が形成され、2つ以上の相として維持される温度まで)、これらの構成成分が不混和性又は実質的に不混和性(<5重量%の溶解度)、特に<1重量%の溶解度であるように選択される。
【0061】
熱可塑性微粒子122を他の構成成分124から分離した後、熱可塑性微粒子122の更なる処理126が行われ得る。非限定的な例では、更なる処理126は、例えば、熱可塑性微粒子122をふるい分けすること、及び/又は熱可塑性微粒子122を他の物質とブレンドして、処理された熱可塑性微粒子128を形成することを含んでもよい。処理された熱可塑性微粒子128は、非限定的な例での積層造形などの所望の用途で使用するために配合され得る。
【0062】
熱可塑性微粒子は、約0.3g/cm3~約0.8g/cm3、又は約0.3g/cm3~約0.6g/cm3、又は約0.4g/cm3~約0.7g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.6g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.8g/cm3のバルク密度を有し得る。
【0063】
液化された液滴を形成するのに十分な剪断力が、本開示の特定の実施例において分散媒をかき混ぜることによって適用され得る。非限定的な実施例では、かき混ぜ速度は、約50回転毎分(RPM)~約1500RPM、又は約250RPM~約1000RPM、又は約225RPM~約500RPMの範囲であり得る。熱可塑性ポリマーを融解している間の撹拌速度は、液化液滴が形成されると使用される撹拌速度と同じであっても異なり得る。液化液滴は、約30秒~約18時間以上、又は約1分~約180分、又は約1分~約60分、又は約5分~約6分、又は約5分~約30分、又は約10分~約30分、又は約30分~約60分の撹拌時間にわたって攪拌され得る。
【0064】
分散媒中の熱可塑性ポリマーの充填量(濃度)は、広範囲にわたって変化し得る。非限定的な例では、分散媒中の熱可塑性ポリマーの充填量は、分散媒の重量に対して約1重量%~約99重量%の範囲としてもよい。より具体的な例では、熱可塑性ポリマーの充填量は、約5重量%~約75重量%、又は約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約30重量%~約40重量%、又は約40重量%~約50重量%、又は約50重量%~約60重量%の範囲としてもよい。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーと分散媒とを合わせた量に対して、約5重量%~約60重量%、又は約5重量%~約25重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約20重量%~約45重量%、又は約25重量%~約50重量%、又は約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在し得る。
【0065】
本明細書の開示によるナノ粒子の存在下で熱可塑性微粒子を形成する際、シリカナノ粒子又は他の酸化物ナノ粒子などのナノ粒子の少なくとも一部は、熱可塑性微粒子の外側表面上にコーティング又は部分コーティングとして配置され得る。コーティングは、外側表面上に実質的に均一に配置され得る。コーティングに関して本明細書で使用するとき、用語「実質的に均一」は、ナノ粒子によって被覆された表面位置、特に外側表面の全体においての均一なコーティング厚さを指す。熱可塑性微粒子上のコーティング被覆率は、粒子の表面積の約5%~約100%、又は約5%~約25%、又は約20%~約50%、又は約40%~約70%、又は約50%~約80%、又は約60%~約90%、又は約70%~約100%の範囲としてもよい。被覆率は、SEM顕微鏡写真の画像解析によって判定され得る。
【0066】
本明細書の開示において使用に好適な分散媒としては、熱可塑性ポリマーが分散媒と実質的に不混和性であるものを含み、分散媒は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度を超える沸点を有し、分散媒は、熱可塑性ポリマーがその中で溶融されると、実質的に球形の液化液滴を形成するのに十分な粘度を有する。好適な分散媒としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、ペルフッ素化シリコーンオイル、ポリエチレングリコール、アルキル末端ポリエチレングリコール(例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TDG)のようなC1~C4末端アルキル基)、パラフィン、流動ワセリン、ミンクオイル、タートルオイル、大豆油、ペルヒドロスクアレン、スイートアーモンドオイル、カロフィルムオイル、パームオイル、パールリームオイル、グレープシードオイル、ゴマ油、トウモロコシ油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油、アンズ油、ヒマシ油、アボカド油、ホホバ油、オリーブ油、穀物胚芽油、ラノリン酸のエステル、オレイン酸のエステル、ラウリン酸のエステル、ステアリン酸のエステル、脂肪族エステル、高級脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸で修飾されたポリシロキサン、脂肪族アルコールで修飾されたポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾されたポリシロキサンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0067】
好適な分散媒は、約0.6g/cm3~約1.5g/cm3の密度を有してもよく、熱可塑性ポリマーは、約0.7g/cm3~約1.7g/cm3の密度を有してもよく、熱可塑性ポリマーは、分散媒の密度と同様、低い密度、又はそれよりも高い密度を有する。
【0068】
特に好適なシリコーンオイルは、ポリシロキサンである。本明細書の開示での使用に適した例示的なシリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性メチルフェニルポリシロキサンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0069】
非限定的な例では、分散媒及び熱可塑性ポリマーは、約200℃以上の温度で加熱され得る。好適な加熱温度は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度、及び分散媒の沸点に基づいて選択され得る。液化されたポリマー液滴の形成後の冷却速度は、所望により様々であり得る。場合によっては、冷却は、加熱が中断された後、自然な(制御されていない)速度で起こる周囲環境への熱放散と共に起こり得る。他の場合では、制御された速度で冷却して(例えば、加熱温度を徐々に低下させること、及び/又はジャケット付き温度制御を使用することによって、冷却速度を増加又は減少させることが採用され得る。
【0070】
PDMSを含むポリシロキサンなどの好適な分散媒は、25℃で約1,000cSt~約150,000cSt、又は約1,000cSt~約60,000cSt、又は約40,000cSt~約100,000cSt、又は約75,000cSt~約150,000cStの粘度を有し得る。分散媒の粘度は、商業的供給元から入手され得るか、又は、所望により、当業者に既知の技術によって測定され得る。
【0071】
分散媒から熱可塑性微粒子を分離することは、様々な既知の分離技術のいずれかによって行われ得る。重力沈殿及び濾過、デカンテーション、遠心分離などのいずれかを使用して、分散媒から熱可塑性微粒子を分離し得る。次いで、熱可塑性微粒子は、分散媒が可溶性であり、熱可塑性微粒子が分離プロセスの過程で不溶性である溶媒で洗浄され得る。加えて、分散媒が可溶性であり、熱可塑性微粒子が不溶性である溶媒は、エラストマー粒子を分散媒から最初に分離する前に、分散媒及び熱可塑性微粒子と混合され得る。
【0072】
熱可塑性微粒子を洗浄するか、又は分散媒と混合するのに好適な溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及び/又はキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、n-ヘキサン、及び/又はn-オクタン)、環状炭化水素(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、及び/又はシクロオクタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、及び/又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム及び/又は四塩化炭素)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はn-プロパノール)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン及び/又はアセトン);エステル(例えば、酢酸エチル等)、水等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。熱可塑性微粒子を洗浄した後、加熱、真空乾燥、空気乾燥、又はこれらの任意の組み合わせが行われ得る。
【0073】
本開示にしたがって得られる熱可塑性微粒子の少なくとも大部分は、実質的に球形の形状であってもよい。より典型的には、本開示による溶融乳化によって生成される熱可塑性微粒子の約90%以上、又は約95%以上、又は約99%以上は、実質的に球形の形状であってもよい。他の非限定的な例では、本開示の熱可塑性微粒子は、約0.90~約1.0、又は約0.93~約0.99、又は約0.95~約0.99、又は約0.97~約0.99、又は約0.98~1.0を含む、約0.9以上の球形度(円形度)を有し得る。真球度(真円度)は、Sysmex FPIA-2100 Flow Particle Image Analyzerを使用して測定され得る。真円度を判定するには、微粒子の光学顕微鏡画像を撮影する。顕微鏡画像の平面内での微粒子の周囲の長さ(P)及び面積(A)を計算する(例えば、Malvern Instrumentsから入手可能な、SYSMEX FPIA 3000粒子形状及び粒径分析器を使用する)。微粒子の真円度はCEA/Pであり、CEAは、実際の微粒子の面積(A)と等価な面積を有する円の円周である。
【0074】
本開示の熱可塑性微粒子は、約25°~約45°、又は約25°~約35°、又は約30°~約40°、又は約35°~約45°の安息角を有し得る。安息角は、ASTM D6393-14「Standard Test Method for Bulk Solids」Characterized by Carr Indices」を使用して、Hosokawa Micron Powder Characteristics Tester PT-Rを使用して決定し得る。
【0075】
上記の開示による分散媒から分離された熱可塑性微粒子は、意図される用途に好適な熱可塑性微粒子を作製するために更に処理されてもよい。一実施例では、熱可塑性微粒子は、熱可塑性微粒子の平均粒径よりも大きい有効なスクリーニングサイズを有するふるい又は類似の構造を通過し得る。例えば、三次元印刷で使用するのに好適な熱可塑性微粒子を処理するための例示的なスクリーニングサイズは、約150μmの実効スクリーニングサイズを有し得る。ふるい分けを参照すると、孔/スクリーンサイズは、U.S.A.Standard Sieve(ASTM E11-17)に記載されている。より大きい又はより小さい他のスクリーニングサイズは、他の用途で使用するための熱可塑性微粒子に、より好適であり得る。ふるい分けは、溶融乳化プロセス中に形成され得るより大きな微粒子を除去し得る、及び/又は不十分な流動特性を有し得る塊状の微粒子を除去し得る。一般に、約10μμm~約250μmの範囲の実効スクリーニングサイズを有するふるいが使用され得る。
【0076】
加えて、ふるい分けされた熱可塑性微粒子を含む熱可塑性微粒子は、流動助剤、充填剤、又は意図される用途のための熱可塑性微粒子の特性を調整することを目的とする他の物質などの1つ以上の追加の構成成分と混合され得る。追加の構成成分と熱可塑性微粒子との混合は、乾式ブレンド技術によって実施し得る。流動助剤(例えば、カーボンブラック、グラファイト、シリカなど)及び同様の物質の好適な例は、当業者によく知られている。
【0077】
特定の用途では、本明細書に開示される微粒子組成物は、積層造形プロセス、特に、微粒子固結を促進するために選択的レーザー焼結又は他の粉末床融合プロセスを使用するものであってもよい。選択的レーザー焼結から最初に得られたこのような印刷物は、金属に実質的に変換されない金属前駆体を特徴とすることができる。選択的レーザー焼結中に活性化される任意の金属前駆体は、1つ以上の導電性トレースを形成するためのコヒーレントな金属アイランドの生成につながると考えられない。続いて、印刷物内の金属前駆体は、パルスレーザーによって提供され、より詳細に上述したようなレーザー照射を使用して、所望のパターンの金属(例えば、複数の不連続な金属アイランド)に変換され得る。金属アイランドは、その後、無電解めっきによって相互接続されて、印刷物の表面上に1つ以上の導電性トレースを形成し得る。
【0078】
したがって、本開示の積層造形プロセスは、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積させることであって、金属前駆体が、パルスレーザーを用いるなどしてレーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、堆積させることと、選択的レーザー焼結を実行することなどによって、粉末床の複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させて、金属前駆体が金属に依然として実質的に変換されていない印刷物を形成することと、を含んでもよい。より具体的な例では、ナノ粒子は、熱可塑性微粒子上に存在してもよく、それにより、積層造形プロセスは、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体と、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子とを含む複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積させることであって、金属前駆体が、パルスレーザーを用いるなどしてレーザー照射に曝露されると金属を形成するように活性化可能である、堆積させることと、選択的レーザー焼結を実行することなどによって、粉末床の複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させて、金属前駆体が金属に依然として実質的に変換されていない印刷物を形成することと、を含む。より具体的には、前述の方法で製造された印刷物は、金属前駆体を金属に実質的に変換しないか、又は変換が非常に制限されるレーザーに曝露することによって、粉末床の熱可塑性微粒子を固結させることによって形成され得る。このような印刷物は、微粒子固結によって形成され、熱可塑性ポリマーと、金属前駆体と、所望によりポリマーマトリックスと混合されたナノ粒子と、を含んでもよく、金属前駆体は、パルスレーザーを用いるなどしてレーザー照射に曝露されると金属を形成するように活性化可能である。
【0079】
印刷物を形成するための選択的レーザー焼結又は他の粉末床微粒子固結プロセスを実行するのに好適な条件は、微粒子固結が金属前駆体の金属への変換も促進しないという条件で、特に限定されるとは考えられない。このように選択的レーザー焼結を実行するのに好適なレーザーは、連続波レーザー及びパルス波レーザーの両方を含んでもよく、そのいずれかは、粉末微粒子の固結を促進するために必要なエネルギーを提供し得る。CO2レーザーは、ポリマーのCO2レーザー放出波長への高い吸光係数のために、ポリマー粉末微粒子の固結を促進するために一般的に使用される。CO2レーザーの動作条件は、粒子固結が金属前駆体の活性化に好ましいように選択され得る。ポリマー微粒子の固結を促進するための標準的なレーザー設定(例えば、パワー、走査速度、床温度等)は、存在する特定の熱可塑性ポリマーに基づいて選択されてもよく、好適なレーザー設定は、当業者によって選択され得る。選択的レーザー焼結又は類似の粉末固結技術を行うための特定の条件の選択は、例えば、使用される熱可塑性ポリマーの種類、熱可塑性微粒子の粒径及び組成、製造される印刷物の種類、並びに印刷物の意図される使用条件などの非限定的な要因によって影響され得る。
【0080】
本明細書に開示される微粒子組成物を使用して形成可能な印刷物の例は、特に限定されるものではなく、例えば、容器(例えば、食品用、飲料用、化粧品用、パーソナルケア組成物用、医療用等)、靴底、玩具、家具部品、装飾家庭用品、プラスチックギア、ねじ、ナット、ボルト、ケーブルタイ、医療用物品、人工装具、整形外科用インプラント、教育における学習を支援するアーチファクトの生成、手術を支援するための3D解剖学的モデル、ロボット工学、生体医学デバイス(装具)、家庭電化製品、歯科、自動車及び航空機/航空宇宙部品、電子機器、スポーツ用品等を含み得る。これらの印刷物の多くは、以下に説明するように、その上に1つ以上の導電性トレースを導入することから恩恵を受けることができる。
【0081】
本明細書の開示による金属前駆体を含有する印刷物の形成後、金属前駆体の一部を金属アイランドに変換し得、その後、1つ以上の金属トレースに変換し得る。より具体的には、本開示の方法は、レーザー照射、特にパルスレーザーを使用して印刷物内の金属前駆体の一部を活性化し、印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成することを含み得る。好適なパルスレーザーとしては、Nd:YAGレーザー、バナジンレーザー、及びファイバーレーザーを挙げられ得るが、これらに限定されない。金属形成を促進するための他の好適なレーザー及び条件が上記に指定されている。
【0082】
不連続な金属アイランドを形成した後、金属アイランドは、無電解めっきを実行して1つ以上の導電性トレースを形成することによって相互接続され得る。1つ以上の導電性トレースは導電性であり、銅、銀、金、又はニッケルなどの様々な好適な金属から形成され得る。非限定的な例では、複数の導電性トレースは、約150μm以下だけ互いに分離され得る。好適な無電解めっき条件は、当業者によく知られており、本明細書の開示で使用され得る。銅は、例えば、銅エチレンジアミン四酢酸錯体(copper ethylenediaminetetraacetic acid、Cu-EDTA)/ホルムアルデヒドを使用して無電解条件下でめっきされ得る。別の具体例では、銅-ニッケル合金は、ニッケルイオンの存在下で、介在物質として銅ハイポリン酸銅を用いて無電解条件下でめっきされ得る。ニッケルは、例えば、硫酸ニッケルなどのニッケル塩、及び低リン酸塩又は水素化ホウ素などの還元剤を使用して、無電解条件下でめっきされ得る。
【0083】
図2は、選択的レーザー焼結によって印刷物の形成と、印刷物の上部から見たときのそれに続く金属前駆体の活性化とを示す例示的なプロセス概略図を示す。示されるように、プロセス200は、非固結熱可塑性微粒子204と固結熱可塑性マトリックス206とを含む粉末床202の形成を含み、後者は、CO
2連続レーザーなどのレーザー210からのレーザー照射212によって形成される。レーザー214は、パルスレーザーであり、レーザー214が固結熱可塑性マトリックス206を形成するための微粒子固結で役割を果たさないようにレーザー210とは異なる。一般に、レーザー214は、微粒子固結中に活性化されない。
図2では、レーザー210及び214が微粒子固結及び金属アイランドの形成を促進するために別々に動作しているように示されているが、上記の観点から、単一のレーザーを異なる動作条件下で利用して、粉末微粒子の固結、及び金属アイランド形成の促進を別々に行ってもよいことも理解されたい。
【0084】
金属変換220において、固結熱可塑性マトリックス206は、レーザー214からのパルスレーザービーム216で選択的に照射されて、固結熱可塑性マトリックス206の表面上に所望のパターンの金属アイランド222を画定する。その後、固結熱可塑性マトリックス206を、非固結熱可塑性微粒子204から分離して、上部に画定された金属アイランド222を有する印刷物230を得てもよい。あるいは、印刷物230は、その上に金属アイランド222を画定する前に粉末床202から解放してもよく、その場合、レーザー214は別個の製造ライン内に配置され得る。レーザー214は、特定のプロセス構成において近赤外パルスレーザーであってもよい。次いで、無電解めっき240を実行して、印刷物230の表面上に所望のパターンの導電性トレース242を画定し得る。
【0085】
本明細書に開示される実施形態は以下を含む。
【0086】
A.粉末微粒子を含む微粒子組成物.微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含み、金属前駆体は、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である。
【0087】
B.印刷物.印刷物は、微粒子固結によって形成され、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと混合された金属前駆体と、を含み、金属前駆体は、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である。
【0088】
C.微粒子固結によって印刷物を形成するための方法.方法は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積させることであって、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、堆積させることと、粉末床の複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させて、金属前駆体が金属に依然として実質的に変換されていない印刷物を形成することと、を含む。
【0089】
D.粉末微粒子を形成する方法.方法は、熱可塑性ポリマーと金属前駆体とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で分散媒中で混ぜ合わせることであって、熱可塑性ポリマー及び分散媒が、加熱温度で実質的に不混和性であり、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、混ぜ合わせることと、加熱温度で金属前駆体の存在下で、熱可塑性ポリマーを液化液滴として分散させるのに十分な剪断力を加えることと、液化液滴が形成された後、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで分散媒を冷却することであって、熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体の少なくとも一部とを含む、冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含んでもよい。
【0090】
実施形態A、B、C、及びDのそれぞれは、以下の追加要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有してもよい。
【0091】
要素1:微粒子組成物が、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0092】
要素1A:印刷物が、ポリマーマトリックスと混合された複数のナノ粒子を更に含み、複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0093】
要素1B:複数の熱可塑性微粒子が、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0094】
要素1C:方法が、ナノ粒子を分散媒中の熱可塑性ポリマーと金属前駆体と混ぜ合わせることであって、複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、混ぜ合わせること、を更に含み、ナノ粒子の少なくとも一部が、熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置される。
【0095】
要素2:複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む。
【0096】
要素3:金属前駆体が、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度の温度以上の温度まで熱的に安定である。
【0097】
要素4:金属前駆体が、赤外線又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である。
【0098】
元素5:金属前駆体が、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である。
【0099】
要素6:金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0100】
要素7:微粒子組成物が、熱可塑性ポリマーと混合された赤外線吸収剤を更に含む。
【0101】
要素7A:印刷物が、ポリマーマトリックスと混合された赤外線吸収剤を更に含む。
【0102】
要素7B:複数の熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと混合された赤外線吸収剤を更に含む。
【0103】
要素7C:方法が、赤外線吸収剤を分散媒に混ぜ合わせることであって、赤外線吸収剤が、熱可塑性微粒子中の熱可塑性ポリマーと混合される、混ぜ合わせること、を更に含む。
【0104】
要素8:赤外線吸収剤が、非化学量論的金属酸化物を含む。
【0105】
要素9:金属前駆体が、熱可塑性ポリマーに可溶性であるか、又は熱可塑性ポリマー中に微粒子として分散しており、微粒子が、約10nm~約1000nmの範囲の粒径を有する。
【0106】
要素10:複数の熱可塑性微粒子が、約1重量%~約25重量%の金属前駆体を含む。
【0107】
要素10A:ポリマーマトリックスが、約1重量%~約25重量%の金属前駆体を含む。
【0108】
要素10B:複数の熱可塑性微粒子が、約1重量%~約25重量%の金属前駆体を含む。
【0109】
要素11:方法が、パルスレーザーを使用して印刷物内の金属前駆体の一部を活性化して、印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成すること、を更に含む。
【0110】
要素12:方法が、無電解めっきを実行して、複数の不連続な金属アイランドを相互接続する1つ以上の導電性トレースを形成すること、を更に含む。
【0111】
要素13:複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させることが、選択的レーザー焼結によって行われる。
【0112】
要素14:分散媒が、シリコーンオイルを含む。
【0113】
要素15:熱可塑性微粒子が、約1μm~約1000μmの範囲の平均粒径、又は約10μm~約150μmの範囲の平均粒径を有する。
【0114】
非限定的な例として、A、B、C及びDに適用可能な例示的な組み合わせとしては、1、1A、1B、又は1C、及び2;1、1A、1B、又は1C、及び4又は5;1、1A、1B、又は1C、及び6;1、1A、1B、又は1C、及び7、7A、7B、又は7C;1、1A、1B、又は1C、及び10、10A、又は10B;1、1A、1B、又は1C、及び11;1、1A、1B、又は1C、並びに11及び12;1、1A、1B、又は1C、及び13;1、1A、1B、又は1C、並びに11及び13;1、1A、1B、又は1C、及び11-13;4又は5、及び6;4又は5、及び7、7A、7B、又は7C;4又は5、及び10、10A、又は10B;4又は5、及び11;4又は5、及び11及び12;4又は5、及び13;4又は5、及び11及び13;4又は5、及び11-13;6及び7、7A、7B、又は7C;6及び10、10A、又は10B;6及び11;6、11、及び12;6及び13;6、11、及び13;6、及び11-13;7、7A、7B、又は7C、及び8;7、7A、7B、又は7C、及び10、10A、又は10B;7、7A、7B、又は7C、及び11;7、7A、7B、又は7C、及び11及び12;7、7A、7B、又は7C、及び13;7、7A、7B、又は7C、及び11及び13;7、7A、7B、又は7C、及び11-13;10、10A、又は10B、及び11;10、10A、又は10B、及び11及び12;10、10A、又は10B、及び13;10、10A、又は10B、及び11及び13;10、10A、又は10B、及び11-13;11及び12;11及び13;12及び13;並びに11-13。要素1~14のいずれかは、要素15と組み合わせてもよく、又は要素15は、前述の要素1~14の組み合わせのいずれかと更に組み合わせてもよい。
開示項
【0115】
第1節.熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物であって、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、微粒子組成物。
【0116】
第2節..
複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子であって、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、複数のナノ粒子を更に含む、第1節に記載の微粒子組成物。
【0117】
第3節.複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、第2節に記載の微粒子組成物。
【0118】
第4節.金属前駆体が、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度の温度以上の温度まで熱的に安定である、第1節に記載の微粒子組成物。
【0119】
第5節.金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、第1節に記載の微粒子組成物。
【0120】
第6節.金属前駆体が、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である、第1節に記載の微粒子組成物。
【0121】
第7節.金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、第1節に記載の微粒子組成物。
【0122】
第8節..
熱可塑性ポリマーと混合された赤外線吸収剤を更に含む、第1節に記載の微粒子組成物。
【0123】
第9節.赤外線吸収剤が、非化学量論的金属酸化物を含む、第8節に記載の微粒子組成物。
【0124】
第10節.金属前駆体が、熱可塑性ポリマーに可溶性であるか、又は熱可塑性ポリマー中に微粒子として分散され、微粒子が、約10nm~約1000nmの範囲の粒径を有する、第1節に記載の微粒子組成物。
【0125】
第11節.複数の熱可塑性微粒子が、約1重量%~約25重量%の金属前駆体を含む、第1節に記載の微粒子組成物。
【0126】
第12節.熱可塑性微粒子が、約1μm~約1000μmの範囲の平均粒径(D50)を有する、第1節に記載の微粒子組成物。
【0127】
第13節.印刷物であって、
微粒子固結によって形成され、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、
ポリマーマトリックスと混合された金属前駆体であって、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含む、印刷物。
【0128】
第14節..
ポリマーマトリックスと混合された複数のナノ粒子であって、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、複数のナノ粒子を更に含む、第13節に記載の印刷物。
【0129】
第15節.複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、第14節に記載の印刷物。
【0130】
第16節.金属前駆体が、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度の温度以上の温度まで熱的に安定である、第13節に記載の印刷物。
【0131】
第17節.金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、第13節に記載の印刷物。
【0132】
第18節.金属前駆体が、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である、第13節に記載の印刷物。
【0133】
第19節.金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、第13節に記載の印刷物。
【0134】
第20節..
ポリマーマトリックスと混合された赤外線吸収剤を更に含む、第13節に記載の印刷物。
【0135】
第21節.赤外線吸収剤が、非化学量論的金属酸化物を含む、第20節に記載の印刷物。
【0136】
第22節.金属前駆体が、ポリマーマトリックスに可溶性であるか、又はポリマーマトリックス中に微粒子として分散され、微粒子が、約10nm~約1000nmの範囲の粒径を有する、第13節に記載の印刷物。
【0137】
第23節.ポリマーマトリックスが、約1重量%~約25重量%の金属前駆体を含む、第13節に記載の印刷物。
【0138】
第24節.方法であって、
熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積させることであって、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、堆積させることと、
粉末床の複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させて、金属前駆体が金属に依然として実質的に変換されていない印刷物を形成することと、を含む、方法。
【0139】
第25節.複数の熱可塑性微粒子が、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、第24節に記載の方法。
【0140】
第26節.複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、第25節に記載の方法。
【0141】
第27節.金属前駆体が、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の温度に熱的に安定である、第24節に記載の方法。
【0142】
第28節.金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、第24節に記載の方法。
【0143】
第29節.複数の熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと混合された赤外線吸収剤を更に含む、第24節に記載の方法。
【0144】
第30節.赤外線吸収剤が、非化学量論的金属酸化物を含む、第29節に記載の方法。
【0145】
第31節.金属前駆体が、熱可塑性ポリマーに可溶性であるか、又は熱可塑性ポリマー中に微粒子として分散され、微粒子が、約10nm~約1000nmの範囲の粒径を有する、第24節に記載の方法。
【0146】
第32節.複数の熱可塑性微粒子が、約1重量%~約25重量%の金属前駆体を含む、第24節に記載の方法。
【0147】
第33節.金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーで活性化可能である、第24節に記載の方法。
【0148】
第34節.金属前駆体が、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である、第24節に記載の方法。
【0149】
第35節.パルスレーザーを使用して印刷物内の金属前駆体の一部を活性化して、印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成することを更に含む、第24節に記載の方法。
【0150】
第36節.
無電解めっきを実行して、複数の不連続な金属アイランドを相互接続する1つ以上の導電性トレースを形成することを更に含む、第35節に記載の方法。
【0151】
第37節.複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させることが、選択的レーザー焼結によって行われる、第24節に記載の方法。
【0152】
第38節.熱可塑性微粒子が、約1μm~約1000μmの範囲の平均粒径(D50)を有する、第24節に記載の方法。
【0153】
第39節.方法であって、
熱可塑性ポリマーと金属前駆体とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で分散媒中で混ぜ合わせることであって、
熱可塑性ポリマー及び分散媒が、加熱温度で実質的に不混和性であり、金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、混ぜ合わせることと、
加熱温度で金属前駆体の存在下で、熱可塑性ポリマーを液化液滴として分散させるのに十分な剪断力を加えることと、
液化液滴が形成された後、少なくとも固化状態の熱可塑性微粒子が形成される温度まで分散媒を冷却することであって、熱可塑性微粒子が、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体の少なくとも一部とを含む、冷却することと、
分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含む、方法。
【0154】
第40節.
ナノ粒子を分散媒中の熱可塑性ポリマーと金属前駆体と混ぜ合わせることであって、複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、混ぜ合わせること、を更に含み、
ナノ粒子の少なくとも一部が、熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置される、第39節に記載の方法。
【0155】
第41節.複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、第40節に記載の方法。
【0156】
第42節.金属前駆体が、融点又は軟化温度の温度以上の温度まで熱的に安定である、第39節に記載の方法。
【0157】
第43節.金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、第39節に記載の方法。
【0158】
第44節..
赤外線吸収剤を分散媒に混ぜ合わせることであって、赤外線吸収剤が、熱可塑性微粒子中の熱可塑性ポリマーと混合される、混ぜ合わせること、を更に含む、第39節に記載の方法。
【0159】
第45節.赤外線吸収剤が、非化学量論的金属酸化物を含む、第44節に記載の方法。
【0160】
第46節.金属前駆体が、熱可塑性ポリマーに可溶性であるか、又は熱可塑性ポリマー中に微粒子として分散され、微粒子が、約10nm~約1000nmの範囲の粒径を有する、第39節に記載の方法。
【0161】
第47節.熱可塑性微粒子が、約1重量%~約25重量%の金属前駆体を含む、第39節に記載の方法。
【0162】
第48節.金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、第39節に記載の方法。
【0163】
第49節.金属前駆体が、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である、第39節に記載の方法。
【0164】
第50節.分散媒が、シリコーンオイルを含む、第39節に記載の方法。
【0165】
第51節.熱可塑性微粒子が、約1μm~約1000μmの範囲の平均粒径(D50)を有する、第39節に記載の方法。
【0166】
本開示のより良好な理解を促進するために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限するか、又は定義するために読まれるべきではない。
【実施例】
【0167】
1Lのガラス製ケトル反応器に、400gの10kポリジメチルシロキサン(PDMS)オイル、5重量%のクロム酸銅スピネルを含有する120gのポリアミド12、及び疎水変性表面(平均粒径=7nm及びBET表面=260±30m2/g、Evonik)を有する0.4gのR812Sシリカを充填した。得られた混合物を260RPMで撹拌しながら230℃で30分間加熱した後、1250rpmで更に40分間撹拌した。その後、加熱及び撹拌を中断し、スラリーを室温まで冷却した。得られた微粒子をシリコーンオイルから分離し、ヘプタンで3回洗浄して、残留シリコーンオイルを除去した。次いで、粒子をドラフト内で空気乾燥させて、約50マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲の粒径を有する粒子を得た。
【0168】
本明細書に記載される全ての文書は、そのような実施が許可される全ての法域の目的のために、参照により本明細書に組み込まれ、このテキストと矛盾しない範囲で、任意の優先文書及び/又は試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。したがって、本開示はそれにより限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載される組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていない任意の構成成分、又は組成物を含まなくてもよい。任意の方法は、本明細書に列挙又は開示されていない任意の工程を欠いてもよい。同様に、用語「備える、含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義であると考えられる。方法、組成物、要素又は要素の群が移行句「備える、含む(comprising)」で先行する場合はいつでも、本発明者らがまた、組成物、要素、又は複数の要素の列挙に先行する移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」で同じ組成物又は要素の群を企図すること、及びその逆もまた同様であることは理解される。
【0169】
別途記載のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分、分子量などの特性、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、請求項の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0170】
下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。とりわけ、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値の全ての範囲は、広範な値の範囲内に包含される全ての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。加えて、請求項で使用するとき、不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ又は1つ以上を意味するように定義される。
【0171】
1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装の全ての特徴は、本出願に記載又は表示されていない。本開示の物理的な実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約によるコンプライアンスなど、実装によって及び随時に変化する開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことは理解される。開発者の努力に多くの時間が費やされる可能性があるが、それでも、そのような努力は、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。
【0172】
したがって、本開示は、言及された目標及び利点、並びにそれに固有の目標及び利点を達成するように十分に適合されている。上述の具体的な実施形態は例示的なものに過ぎず、本明細書に教示の利益を有する当業者にとって明らかである異なるが同等の方法で本開示が修正及び実施され得る。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細に限定することを意図するものではない。したがって、上記に開示された具体的な例示的実施形態が、変更され、組み合わされ、又は修正され得、全てのそのような変形が、本開示の範囲及び趣旨内で考慮されることは明らかである。好適に本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、及び/又は本明細書に開示される任意の任意選択の要素の不在下で実施されてもよい。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕微粒子組成物であって、
熱可塑性ポリマーと、前記熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子であって、前記金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、複数の熱可塑性微粒子を含む、微粒子組成物。
〔2〕前記複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子であって、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、複数のナノ粒子を更に含む、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔3〕前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、前記〔2〕に記載の微粒子組成物。
〔4〕前記金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔5〕前記金属前駆体が、約1020nm~約1070nmの範囲の波長で活性化可能である、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔6〕前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔7〕前記熱可塑性ポリマーと混合された赤外線吸収剤を更に含む、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔8〕前記赤外線吸収剤が、非化学量論的金属酸化物を含む、前記〔8〕に記載の微粒子組成物。
〔9〕印刷物であって、
微粒子固結によって形成され、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、
前記ポリマーマトリックスと混合された金属前駆体であって、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、金属前駆体と、を含む、印刷物。
〔10〕前記ポリマーマトリックスと混合された複数のナノ粒子であって、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、複数のナノ粒子を更に含む、前記〔9〕に記載の印刷物。
〔11〕前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、前記〔10〕に記載の印刷物。
〔12〕前記金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーによって活性化可能である、前記〔9〕に記載の印刷物。
〔13〕前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、前記〔9〕に記載の印刷物。
〔14〕方法であって、
熱可塑性ポリマーと、前記熱可塑性ポリマーと混合された金属前駆体とを含む複数の熱可塑性微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積させることであって、前記金属前駆体が、レーザー照射に曝露されると金属アイランドを形成するように活性化可能である、堆積させることと、
前記粉末床の前記複数の熱可塑性微粒子の一部を固結させて、前記金属前駆体が金属に依然として実質的に変換されていない印刷物を形成することと、を含む、方法。
〔15〕前記複数の熱可塑性微粒子が、前記複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、前記複数のナノ粒子が、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記金属前駆体が、酸化銅;銅と、アンチモン、アルミニウム、セシウム、コバルト、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、銀、鉄、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択される金属との混合酸化物;銅クロム酸化物スピネル;銅アルミニウム酸化物;水酸化銅;水酸化銅リン酸塩;リン酸銅;硫酸銅;チオシアン酸銅;銅、銀、パラジウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属有機錯体;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、前記〔14〕に記載の方法。
〔18〕前記金属前駆体が、赤外パルスレーザー又は近赤外パルスレーザーで活性化可能である、前記〔14〕に記載の方法。
〔19〕パルスレーザーを使用して前記印刷物内の前記金属前駆体の一部を活性化して、前記印刷物の表面上に所定のパターンの複数の不連続な金属アイランドを形成することを更に含む、前記〔14〕に記載の方法。
〔20〕無電解めっきを実行して、前記複数の不連続な金属アイランドを相互接続する1つ以上の導電性トレースを形成することを更に含む、前記〔19〕に記載の方法。