(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05D 7/00 20060101AFI20240222BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240222BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20240222BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B05D7/00 N
B05D1/36 B
B05D7/02
B05D7/24 301D
B05D7/24 302P
B05D7/24 302T
(21)【出願番号】P 2020168728
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】神野 修輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼以良 慶樹
(72)【発明者】
【氏名】小櫻 直人
(72)【発明者】
【氏名】久保 豊
(72)【発明者】
【氏名】堀井 慎一
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-154625(JP,A)
【文献】特開2004-314060(JP,A)
【文献】特開2015-066543(JP,A)
【文献】特開2010-082598(JP,A)
【文献】特開2003-313493(JP,A)
【文献】特開2010-260014(JP,A)
【文献】特開平01-110571(JP,A)
【文献】特開平09-094522(JP,A)
【文献】特開2017-082197(JP,A)
【文献】特開平08-239542(JP,A)
【文献】特開平02-047175(JP,A)
【文献】特開2007-075791(JP,A)
【文献】特表2012-524161(JP,A)
【文献】特開2003-053254(JP,A)
【文献】特開2022-060947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-201/10
C08G 18/08
18/62
18/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック素材からなる自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法であって、
前記自動車部品用成型品上に、着色ベース塗料を塗装し、未硬化の第1塗膜を形成する工程、
前記未硬化の第1塗膜上に、二液型クリヤー塗料を塗装し、未硬化の第2塗膜を形成する工程、及び
前記未硬化の第1塗膜、前記未硬化の第2塗膜を焼き付け硬化させ、複層塗膜を形成する工程
を含み、
前記着色ベース塗料は、
顔料(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート化合物(C)と、
前記水酸基含有アクリル樹脂(B)の有機溶剤の溶液中に不溶性で安定に分散している重合体架橋微粒子(D)と、
水酸基含有アクリル樹脂(B)とは異なる重量平均分子量を有するアクリル樹脂(E)と、を含む着色ベース塗料であって、
固形分が、35質量%以上60質量%以下であり、
コーンプレート型粘度計を用い、23℃において、0.1/secのシェアで粘度V1を測定した後、0.1/secから25000/secに変更して30秒剪断し、
次いでシェアを0.1/secに戻して1秒剪断した後の粘度V2を測定した際、V1に対するV2の比率である粘度回復率V2/V1が、90%以上であり、
前記水酸基含有アクリル樹脂(B)は、
水酸基含有モノマー(b)を含む1種以上のモノマーの重合体であり、前記水酸基含有モノマー(b)が、(メタ)アクリル酸と炭素数2以上8以下の2価アルコールとのモノエステル化合物のラクトン変性体であり、
重量平均分子量が、10000以上20000以下であり、
ガラス転移温度が、10℃以上40℃以下であり、
水酸基価が、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であり、
前記アクリル樹脂(E)は、重量平均分子量が、3000以上7500以下であり、
前記二液型クリヤー塗料は、
水酸基含有ポリマー(F)とイソシアネート化合物(G)を含む、自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法。
【請求項2】
前記自動車部品用成形品の上に、予め中塗り塗膜又はプライマー塗膜が形成されている、
請求項1に記載の自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック素材からなる自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を構成する基材上には、意匠及び耐性等の付与を目的としてベース塗膜およびその上にクリヤー塗膜の複層塗膜が通常設けられている。最近、軽量化等の観点からプラスチック素材からなる自動車部品成型品が多く用いられていて、そのような自動車部品成型品の表面にも複層塗膜が形成され、意匠性と外観の統一が図られている。複層塗膜の形成方法は、環境への配慮と塗装作業の容易化、更にプラスチック製品へ掛ける熱量の制限を満足しなければならない。複層塗膜の形成方法は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-138179号公報
【文献】特開2010-82529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境への配慮の観点から、特許文献1では、溶剤型ではなく、水性型の着色ベース塗料が検討されている。しかし、水性型の塗料を着色ベース塗料は、乾燥や硬化に水を蒸発させるためエネルギーがどうしても必要で、エネルギー面での環境への配慮が不足するのと、プラスチック成型品への熱量が多くなる。
【0005】
特許文献2には、水性型の着色ベース塗料ではなく、溶剤型の着色ベース塗料を用いるのであるが、3層(中塗り、ベースおよびクリヤー)を塗装後一度に硬化する3コート1ベーク方式を採用して、プラスチック製品に掛かる熱量を制限しつつ、環境への配慮を満足している。しかし、引用文献2の方法による3コート1ベーク塗装方法で、熱量では環境へ配慮ができたが、有機溶剤の揮散(いわゆるVOCの制限)をより一層制限することが望まれていて、従来技術の塗装方法は必ずしも十分なものではない。
【0006】
最近、自動車部品メーカーでは、塗装工程の時間を短縮する検討が始まっていて、短時間で十分な膜厚の塗膜を形成する塗料が望まれている。塗装時間を短縮する方法の一つとして、塗装速度(ガン速度)を上げる方法があるが、ガン速度が上がれば吐出量を上げないと十分な膜厚が確保できない。吐出量は、塗料の固形分に依存し、吐出量だけを多くするのは、塗装機の能力を超えて、塗着効率の低下や、ムラ、平滑性などの塗装外観の低下が確認される。このため高固形分で高意匠な塗装外観を発現できる塗料が望まれている。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明では高固形分(「ハイソリッド」とも言う。)の溶剤型塗料を用いて、乾燥時間の短縮などの環境への配慮を満足しつつ、意匠性(光輝性顔料のムラなどを)、密着性及び耐水性に優れた複層塗膜を形成するプラスチック素材からなる自動車部品用成形品への複層塗膜の塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記態様を提供する。
[1]プラスチック素材からなる自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法であって、
前記自動車部品用成型品上に、着色ベース塗料を塗装し、未硬化の第1塗膜を形成する工程、
前記未硬化の第1塗膜上に、二液型クリヤー塗料を塗装し、未硬化の第2塗膜を形成する工程、及び
前記未硬化の第1塗膜、前記未硬化の第2塗膜を焼き付け硬化させ、複層塗膜を形成する工程
を含み、
前記着色ベース塗料は、
顔料(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート化合物(C)と、
前記水酸基含有アクリル樹脂(B)溶液中に不溶性で安定に分散している重合体架橋微粒子(D)と、
水酸基含有アクリル樹脂(B)とは異なる重量平均分子量を有するアクリル樹脂(E)と、を含む着色ベース塗料であって、
固形分が、35質量%以上であり、
コーンプレート型粘度計を用い、23℃において、0.1/secのシェアで粘度V1を測定した後、0.1/secから25000/secに変更して30秒剪断し、
次いでシェアを0.1/secに戻して1秒剪断した後の粘度V2を測定した際、V1に対するV2の比率である粘度回復率V2/V1が、90%以上であり、
前記二液型クリヤー塗料組成物は、
水酸基含有ポリマー(F)とイソシアネート化合物(G)を含む、自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法。
[2]前記水酸基含有アクリル樹脂(B)は、
水酸基含有モノマー(b)を含む1種以上のモノマーの重合体であり、前記水酸基含有モノマー(b)が、(メタ)アクリル酸と炭素数2以上8以下の2価アルコールとのモノエステル化合物のラクトン変性体であり、
重量平均分子量が、10000以上20000以下であり、
ガラス転移温度が、10℃以上40℃以下であり、
水酸基価が、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、[1]記載の自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法。
[3]前期アクリル樹脂(E)は、重量平均分子量が、3000以上7500以下である、[1]または[2]記載の自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法
[4]前記自動車部品用成形品の上に、予め中塗り塗膜又はプライマー塗膜が形成されている、[1]~[3]のいずれかに記載の自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法で製造された塗装物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、従来の溶剤系の着色ベース塗料に比べ、高固形分であるので、排出される有機溶剤の少なくなり、しかも厚膜に塗装することができ、塗装時間も乾燥時間も短くなる。また、水性の塗料を用いる塗装方法と比べると、プレヒート工程が不要となり、エネルギー消費量が大幅に改善できると共に、塗装設備もコンパクトになり、優れた塗装方法ということができる。
【0010】
本発明の塗装方法で得られたプラスチック素材からなる自動車部品成型品上に形成された複層塗膜は、自動車部品成型品との密着性も優れていると同時に、塗膜剥離などの欠陥の少ない優れた意匠性の複層塗膜を提供することができる。
【0011】
本発明の塗装方法を用いる着色ベース塗料は、高固形分であっても配合した顔料(特に、光輝性顔料)の配向が優れ、かつベース塗膜の上下の塗膜との密着性にも優れているので、配合した光輝性顔料の配向を乱すことなく、優れた外観の複層塗膜を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、プラスチック素材からなる自動車部品用成型品上への複層塗膜の塗装方法であって、
前記自動車部品用成型品上に、着色ベース塗料を塗装し、未硬化の第1塗膜を形成する工程、
前記未硬化の第1塗膜上に、二液型クリヤー塗料を塗装し、未硬化の第2塗膜を形成する工程、及び
前記未硬化の第1塗膜、前記未硬化の第2塗膜を焼き付け硬化させ、複層塗膜を形成する工程を含んでいて、かつ
その着色ベース塗料は、
顔料(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート化合物(C)と、前記期水酸基含有アクリル樹脂(B)溶液中に不溶性で安定に分散している重合体架橋微粒子(D)と、水酸基含有アクリル樹脂(B)とは異なる重量平均分子量を有するアクリル樹脂(E)と、を含むものであって、更に
固形分が、35質量%以上であり、
コーンプレート型粘度計を用い、23℃において、0.1/secのシェアで粘度V1を測定した後、0.1/secから25000/secに変更して30秒剪断し、
次いでシェアを0.1/secに戻して1秒剪断した後の粘度V2を測定した際、V1に対するV2の比率である粘度回復率V2/V1が、90%以上であり、
前記二液型クリヤー塗料組成物は、
水酸基含有ポリマー(F)とイソシアネート化合物(G)を含む、ものである。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る塗装方法と、着色ベース塗料の詳細を説明する。
【0014】
[塗装方法]
本発明の塗装方法は、プラスチック素材からなる自動車部品用成型品上に複層塗膜を形成する。自動車部品用の成型品としては特に制限されないが、プラスチック素材からなるものである必要がある。プラスチック素材として、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。プラスチック素材からなる自動車部品用成型品としては、具体的にはスポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等が挙げられる。これらのプラスチック基材は、石油ベンジン、イソプロパノール等の溶剤で脱脂又は純水及び/又は中性洗剤で洗浄されたものであることが好ましい。プラスチック素材からなる自動車部品成型品は、発泡体であってもよい。
【0015】
本発明では、自動車部品用成型品は最初の工程で、着色ベース塗料が塗装されるが、その前に必要に応じてプライマー塗装または中塗り塗装を施されていてもよい。中塗り塗膜及びプライマー塗膜は特に限定されず、それぞれ、例えば、塗膜形成樹脂及び必要に応じて硬化剤等を含む中塗り塗料又はプライマー塗料を用いて形成してよい。中塗り塗料またはプライマー塗料は、硬化されてから、次の塗装工程、即ち着色ベース塗料を塗装してもよいが、未硬化のまま着色ベース塗料を塗装する本発明の工程に進んでもよい。未硬化のプライマー塗膜あるいは中塗り塗膜は、最後の焼き付け硬化による複層塗膜の形成工程で硬化される。
【0016】
上述の中塗り塗料組成物又はプライマー塗料組成物を自動車部品用成形品に塗装して、未硬化の中塗り塗膜又は未硬化のプライマー塗膜を形成する場合、必要に応じて、例えば、40℃以上80℃以下の温度で1分以上10分以下のプレヒート工程を行ってよい。未硬化の中塗り塗膜を形成する場合、その膜厚は、乾燥膜厚として、例えば、5μm以上30μm以下であってよく、7μm以上25μm以下であってよい。未硬化のプライマー塗膜を形成する場合、その膜厚は、乾燥膜厚として、例えば、3μm以上15μm以下であってよく、5μm以上10μm以下であってよい。
【0017】
本発明の塗装方法では、続いて、着色ベース塗料を塗装して未硬化の第1塗膜を形成し、その未硬化の第1塗膜上に二液型クリヤー塗料を塗装して第2塗膜を形成し、その後第1塗膜と第2塗膜を焼き付け硬化して、本発明の複層塗膜が形成される。塗膜形成方法は、一般に使用されている方法で良く、噴霧塗装器を用いて塗装され、いわゆるウェット・オン・ウェットと呼ばれる未硬化塗膜を形成した後、2~3層(プライマー塗膜または中塗り塗膜を含めた複層塗膜)を同時に硬化してもよい。
【0018】
本発明では、上述のように、着色ベース塗料を塗装して、未硬化の第1塗膜を形成する。その際、必要に応じて、例えば、室温で1分以上10分以下のセッティング工程を行ってよい。未硬化の第1塗膜の膜厚は、乾燥膜厚として、例えば、7μm以上30μm以下であってよく、12μm以上25μm以下であってよい。
【0019】
本発明では、未硬化の第1塗膜の上に、二液型クリヤー塗料を塗装して、未硬化の第2塗膜を形成する。その際、必要に応じて、例えば、室温で1分以上10分以下のセッティング工程を行ってよい。未硬化の第2塗膜の膜厚は、乾燥膜厚として、例えば、15μm以上40μm以下であってよく、20μm以上30μm以下であってよい。
【0020】
本発明では、未硬化の第1塗膜と第2塗膜、すなわち、必要に応じて、未硬化の中塗り塗膜又は未硬化のプライマー塗膜と、本発明の未硬化の第1塗膜と、未硬化の第2塗膜とを加熱硬化させて複層塗膜を形成する。加熱硬化温度は、例えば、70℃以上140℃以下であってよく、加熱硬化時間は、例えば、目標の温度に達した後、10分以上40分以下の範囲で適宜調整してよい。
【0021】
中塗り塗料、プライマー塗料、着色ベース塗料、及び二液型クリヤー塗料の塗装方法は特に限定されない。自動車部品用成形体(以下、「被塗物」と呼ぶこともある。)の種類に応じて、例えば、エアースプレー塗装、ベル塗装、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装又は1ステージ塗装、あるいは、エアー静電スプレー塗装と、メタリックベルと言われる回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法等、塗装分野において一般的に用いられる塗装方法を用いてよい。
【0022】
未硬化の塗膜を加熱硬化させるのに用いる加熱装置として、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線等の加熱源を利用した乾燥炉等が挙げられる。また、これらの加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
【0023】
本発明の実施形態に係る塗装物品の製造方法によれば、未硬化の塗膜に順次上層の塗膜を形成し、複数の未乾燥の塗膜を一括して加熱硬化するため、工程を短縮することができ、経済性及び環境面からも好ましい。本発明の実施形態では、中塗り塗膜及びプライマー塗膜を形成する工程を省略し、中塗り塗膜及びプライマー塗膜を含まない態様で複層塗膜を形成することができる。
【0024】
[着色ベース塗料]
本発明の実施形態に係る着色ベース塗料は、顔料(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート化合物(C)と、前記水酸基含有アクリル樹脂(B)溶液中に不溶性で安定に分散している重合体架橋微粒子(D)と、水酸基含有アクリル樹脂(B)とは異なる重量平均分子量を有するアクリル樹脂(E)と、を含むものである。それぞれの成分について説明する。
【0025】
(1)顔料(A)
顔料(A)は、着色顔料及び鱗片状顔料からなる群から選択される1種以上を含む。
【0026】
着色顔料として、例えば、有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられる。
【0027】
鱗片状顔料として、例えば、金属片、金属酸化物片、パール顔料、マイカ等が挙げられる。金属片として、例えば、アルミニウム、クロム、金、銀、銅、真鍮、チタン、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等が挙げられる。また、金属酸化物片として、金属片の酸化物、例えば、アルミナ、酸化クロム等が挙げられる。
着色ベース塗料が鱗片状顔料を含有する態様では、ベース塗膜に金属調の光沢を付与することができ、後述のように、ベース塗膜を観察する角度によって色調がより顕著に変化する、すなわち、フリップフロップ性(以下、「FF性」と呼ぶことがある)が高いベース塗膜を形成することができる。
【0028】
金属片、金属酸化物片及びパール顔料等と水とが反応してガスが発生することを容易に防止するため、金属片、金属酸化物片及びパール顔料に、金属被膜、例えば、モリブデン酸、クロム酸、イットリウム及び希土類金属等の金属化合物の被膜、又は有機高分子被膜、例えば、重合性モノマー等を用いて得られる有機高分子の被膜を形成してよい。例えば、金属片、金属酸化物片及びパール顔料は、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、重合化合成樹脂、酸化バナジウム、酸化モリブデン及び/若しくは過酸化モリブデン、ホスフェート、ホスファイト、ボレート、クロメート、又はそれらの混合物若しくは組合せを含む被膜を有してよい。なお、例えば、酸化クロム等を用いる場合、化学的に不活性化させたものを用いることにより、毒性を除去できる。
【0029】
鱗片状顔料は、蒸着金属顔料を含んでよい。このような鱗片状顔料は、一般にベースフィルム上に金属薄膜(金属酸化物薄膜)を蒸着させ、ベースフィルムを剥離した後、蒸着金属膜を粉砕して金属片(金属酸化物片)とすることにより得られる。蒸着する金属材料として、例えば、金属片及び金属酸化物片について上述した材料を用いることができる。この態様において、鱗片状顔料は、蒸着アルミニウム顔料、蒸着クロム顔料、蒸着アルミナ顔料、又は蒸着酸化クロム顔料であることが好ましい。蒸着金属顔料についても、必要に応じて、上述した被膜をその表面に形成してよい。
【0030】
市販の鱗片状顔料として、例えば、エカルト社製のMETALURE(登録商標)シリーズ、SILVERSHINE(登録商標)シリーズ、HYDROSHINE(登録商標)シリーズ、Liquid Black(登録商標)、PLISMATIC(登録商標)シリーズ、旭化成ケミカルズ社製のFDシリーズ、GXシリーズ及びBSシリーズ、東洋アルミニウム社製の46シリーズ、63シリーズ等が挙げられる。顔料(A)は、2種以上を併用してよい。
【0031】
顔料(A)の含有量は特に限定されず、例えば、顔料(A)の顔料濃度、すなわち、着色ベース塗料の樹脂固形分に対する顔料(A)の質量割合は、1質量%以上20質量%以下であってよい。着色ベース塗料の樹脂固形分は、樹脂成分と、ブロックイソシアネート化合物(C)と、含まれ得るその他の硬化剤を意味する。
【0032】
着色ベース塗料は、体質顔料を含んでよい。体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等が挙げられる。
【0033】
体質顔料を用いる場合、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。着色ベース塗料が体質顔料を含む場合、体質顔料の含有量は、例えば、着色ベース塗料の樹脂固形分に対する体質顔料の質量割合は、0.1質量%以上20質量%以下であってよい。
【0034】
(2)水酸基含有アクリル樹脂(B)
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、通常塗料に用いられる水酸基を有するアクリル樹脂であれば、いかなるものを用いてもよい。水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有モノマー(b)を含む1種以上のモノマーの重合体であり、水酸基含有モノマー(b)は、(メタ)アクリル酸と炭素数2以上8以下の2価アルコールとのモノエステル化合物のラクトン変性体であるのが好ましい。また、水酸基含有アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、10000以上20000以下であり、ガラス転移温度が、10℃以上40℃以下であり、水酸基価が、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。
【0035】
水酸基含有アクリル樹脂(B)を含むことにより、着色ベース塗料の固形分が35質量%以上と高くても、塗装粘度が高くなり過ぎないため、塗膜のムラを低減することができる。更に、着色ベース塗料が鱗片状顔料を含有する場合には、鱗片状顔料の配向が乱れ難くなるため、優れたFF性(フリップフロップ性:塗膜面の明暗が見る角度に依って変化する性質)を得ることができる。着色ベース塗料の固形分の上限は特に限定されないが、例えば、60質量%以下であってよい。
【0036】
更に、水酸基含有アクリル樹脂(B)は、(メタ)アクリル酸と炭素数2以上8以下の2価アルコールとのモノエステル化合物のラクトン変性体である水酸基含有モノマー(b)を用いて重合されているため、水酸基を有する長鎖構造を側鎖に有している。これにより、硬化剤であるイソシアネート化合物(C)との反応性を高めることができ、被塗物とベース塗膜の密着性、あるいは被塗物上に設けられた中塗り塗膜又はプライマー塗膜とベース塗膜との密着性を高めることができる。例えば、被塗物がプラスチック素材からなる自動車部品である場合、本発明の実施形態に係る着色ベース塗料は、被塗物上にプライマー塗膜を設けなくても、被塗物と良好な密着性を有するベース塗膜を形成することができる。
【0037】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有モノマー(b)を含む1種以上のモノマーを常法に従って重合することによって得られる。
【0038】
水酸基含有モノマー(b)として、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2以上8以下の2価アルコールとのモノエステル化物をラクトン、例えばε-カプロラクトン等と変性して得られるラクトン変性体が挙げられる。
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を意味する。
【0039】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有モノマー(b)と水酸基含有モノマー(b)以外の他のモノマーとの重合体であってよく、この態様において、水酸基含有アクリル樹脂(B)は、水酸基含有モノマー(b)と上記他のモノマーとのモノマー混合物を重合することにより得られ、水酸基含有モノマー(b)と他のモノマーとの合計中、水酸基含有モノマー(b)が5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0040】
水酸基含有モノマー(b)以外の他のモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α-ハイドロ-ω-((1-オキソ-2-プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1-オキソ-1,6-ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3-ビニルサリチル酸、3-ビニルアセチルサリチル酸、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の酸基含有モノマーが挙げられる。
【0041】
また、水酸基含有モノマー(b)以外の他のモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルケトン、t-ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)等が挙げられる。耐水性を高める観点から、スチレンを用いることが好ましい。
【0042】
更に、水酸基含有モノマー(b)以外の他のモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタクリルアルコール等が挙げられる。
【0043】
水酸基含有モノマー(b)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。また、水酸基含有モノマー(b)以外の他のモノマーは、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
水酸基含有アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、例えば、10,000以上であってよく、20,000以下であってよい。
重量平均分子量は、例えば、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により決定してよい。
【0045】
水酸基含有アクリル樹脂(B)のガラス転移温度は、例えば、10℃以上であってよく、40℃以下であってよい。
ガラス転移温度は、既知の方法により、実測又は計算したものであってよい。例えば、ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定してよい。
【0046】
水酸基含有アクリル樹脂(B)の水酸基価は、例えば、10mgKOH/g以上であってよく、50mgKOH/g以下であってよい。また、水酸基含有アクリル樹脂(B)の酸価は、例えば、0.2mgKOH/g以上であってよく、20mgKOH/g以下であってよい。
水酸基価及び酸価は、既知の方法により、実測又は計算したものであってよい。例えば、水酸基価及び酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定してよい。
【0047】
水酸基含有アクリル樹脂(B)は、2種以上を併用してよい。水酸基含有アクリル樹脂(B)の着色ベース塗料中の含有量は特に限定されず、例えば、着色ベース塗料の樹脂固形分中、30質量%以上70質量%以下であってよく、40質量%以上であってよく、60質量%以下であってよい。
【0048】
(3)ブロックイソシアネート化合物(C)
ブロックイソシアネート化合物(C)を水酸基含有アクリル樹脂(B)と共に用いることにより、被塗物とベース塗膜の密着性、あるいは被塗物上に設けられた中塗り塗膜又はプライマー塗膜とベース塗膜との密着性を高めることができる。また、ベース塗膜が架橋することにより塗膜物性が向上し、耐水性能が向上する。
【0049】
ブロックイソシアネート化合物(C)は、ポリイソシアネートを、ブロック剤でブロック化することによって調製することができる。
【0050】
ポリイソシアネートとして、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物等);が挙げられる。
【0051】
ブロック剤として、例えば、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(又は芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノール等のポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類とから得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;及びε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。ブロック剤としては、活性水素化合物であるメチルジケトン、メチルケトエステルおよびメチルジエステル化合物、例えばアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル等のアルキルエステルを用いてもよい。また、ピラゾール化合物、イミダゾール化合物をブロック剤としたブロックイソシアナートを用いてもよい
【0052】
ブロックイソシアネート化合物(C)のブロック化率は100%であるのが好ましい。これにより、着色ベース塗料の貯蔵安定性がより良好になるという利点がある。
【0053】
ブロックイソシアネート化合物(C)は、2種以上を併用してよい。
ブロックイソシアネート化合物(C)の含有量は特に限定されないが、より適切に硬化反応を促進させる観点から、水酸基含有アクリル樹脂(B)の水酸基のモル数に対するブロックイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基のモル数との比(NCO/OH)は、0.2/1.0~0.6/1.0であってよく、好ましく0.3/1.0~0.5/1.0である。
【0054】
着色ベース塗料は、ブロックイソシアネート化合物(C)以外の硬化剤として、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂等の他の硬化剤を含み得る。ブロックイソシアネート化合物(C)以外の他の硬化剤を含む場合、当該他の硬化剤の含有量は、着色ベース塗料の樹脂固形分100質量部に対して、例えば、10質量部以上30質量部以下である。
【0055】
(4)重合体架橋微粒子(D)
重合体架橋微粒子(D)は粘性調整剤として添加するものであり、粘度の調整に寄与する。通常、塗料は、塗装する際に加わる剪断力により減粘するため、塗着直後の粘度は、塗装する前の粘度より低くなる。そのため、塗着後の粘度が低いと、塗料が下方に垂れ、塗膜のムラの原因となる。本発明の実施形態に係る着色ベース塗料は、重合体架橋微粒子(D)を含むことにより、塗装する際に減粘した粘度を早期に回復して高めることができ、被塗物に塗着した着色ベース塗料が垂れることを抑制することができ、塗膜のムラを低減することができる。
【0056】
重合体架橋微粒子(D)は、モノマー混合物を重合することによって、調製することができる。重合方法は、どのような重合方法でも架橋微粒子が得られれば良く、多段階重合であってもよい。より具体的には、エマルション重合が好適に用いられる。
【0057】
エマルション重合による重合体架橋微粒子(D)
本発明で用いる重合体架橋微粒子(D)は、エチレン性不飽和単量体と、架橋性共重合単量体とを公知の方法で、水性媒体中で乳化重合して架橋重合体微粒子を含むエマルジョンをつくり、水を溶剤置換、共沸、遠心分離、ロ過、乾燥等によって除去することによって得られる。エマルジョン重合は公知の乳化剤および/または分散剤を用いて実施してもよいが、両性イオン基を有する乳化剤を使用するのが好ましい。重合体架橋微粒子(D)は塗料組成物へ加えた時その粒径によって構造粘性が異なるので均一な粒径を得ることが重要であるが、両性イオン基を有する乳化剤の使用により均一な粒径の重合体架橋微粒子が得られ易いからである。
【0058】
重合体架橋微粒子(D)の調製に用いられるエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルや、これと共重合し得るエチレン性不飽和結合を有する他の単量体、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどがある。これら単量体は二種類以上用いてもよい。
【0059】
架橋性共重合単量体は、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する単量体および/または相互に反応し得る基をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和基含有単量体を含む。
【0060】
分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体としては、多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル、多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル、および2コ以上のビニル基で置換された芳香族化合物などがあり、それらの例としては以下のような化合物がある。
【0061】
エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールアリロキシジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパンジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリデート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレートおよびジビニルベンゼン。
【0062】
更に架橋目的の単量体として分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体の代わりに、あるいは所望によりそれらと共に、相互に反応し得る基をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和基を有する単量体を使用することもできる。例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のグリシジル基含有エチレン性不飽和単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体;2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコールなどのヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体と、ビニルイソシアナート、イソプロベニルイソシアナートなどのイソシアナート基を有するエチレン性不飽和単量体などがあげられる。しかしながらこれら以外にも相互に反応し得る基を夫々担持する任意の組合せの2種のエチレン性不飽和単量体を用いることができる。
【0063】
重合体架橋微粒子(D)を構成する単量体は、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体を含んでいてもよく、その例として、例えばカルボキシル基含有単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などがあり、ヒドロキシル基含有単量体、例えば2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタクリルアルコールや含窒素系としてアクリル酸アミドやメタクリル酸アミドなどがある。
【0064】
非水分散重合による重合性架橋粒子(D)
重合体架橋微粒子(D)の調製に用いられるモノマー混合物は、ラジカル重合性モノマーを含む。上記モノマー混合物は、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含んでもよい。モノマー混合物が、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含むことによって、重合体架橋微粒子を好適に調製することができる利点がある。
【0065】
上記高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーとして、例えば、高級不飽和脂肪酸とエチレン性不飽和グリシジルエステルとの反応によって得られるものが挙げられる。上記高級不飽和脂肪酸としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸等を用いることができる。また、亜麻仁油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、米糠油脂肪酸、胡麻油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トール油脂肪酸等のような非共役二重結合をもつ乾性油、半乾性油脂肪酸等を用いることができる。上記乾性油、半乾性油脂肪酸等は、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸若しくはリシノール酸等の不飽和脂肪酸類を含む。高級不飽和脂肪族基の平均炭素数は13以上23以下であるのが好ましい。なお、全飽和脂肪酸に対して30質量%以下となる量で、桐油脂肪酸等の共役二重結合をもつ脂肪酸を併用してもよい。また、上記エチレン性不飽和グリシジルエステルとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル等を用いることができる。これらの中でも、特に、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸より選ばれた少なくとも一種と、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタアクリレートとの反応によって得られるものが好ましい。また、上記ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、ヨウ素価が60以上180以下、特に70以上150以下のものが好ましい。
【0066】
上記モノマー混合物に含まれる、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマー以外の、他のラジカル重合性不飽和モノマーとして、例えば、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、i-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、i-ノニルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、i-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、i-ノニルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、i-ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノマー;
スチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等の芳香族ビニルモノマー;
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド等のアミド基若しくは置換アミド基含有モノマー;
2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール等の水酸基含有モノマー;
アミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタアクリレート等のアミノ基若しくは置換アミノ基含有モノマー;
グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルメタリルエーテル、グリシジルビニルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;
ビニルメルカプタン、アリルメルカプタン等のメルカプト基含有モノマー;
(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有するモノマー;
等が挙げられる。
【0067】
上記他のラジカル重合性不飽和モノマーのうち、例えば、
アクリル酸エステルモノマー(好ましくはエチルアクリレート、n-ブチルアクリレート等)、
メタクリル酸エステルモノマー(好ましくはメチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート等)、
カルボキシル基含有モノマー(好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート等)、
置換アミノ基含有モノマー(好ましくは、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタアクリレート等のN,N-ジ低級アルキルアミノ-低級アルキル(メタ)アクリレート等)、
からなる群から選択される1種又はそれ以上を含むのが好ましい。
【0068】
上記モノマー混合物中に含まれる、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーの量は、モノマー混合物の総量100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下の範囲内であるのが好ましく、5質量部以上15質量部以下の範囲内であるのがより好ましい。また、上記モノマー混合物中に含まれる、アクリル酸エステルモノマーとメタクリル酸エステルモノマーとの合計量は、モノマー混合物の総量100質量部に対して、50質量部以上90質量部以下の範囲内であるのが好ましい。また、上記モノマー混合物中に含まれる、カルボキシル基含有モノマーの量は、10質量部以下の範囲内であるのが好ましい。さらに、上記モノマー混合物中に含まれる、置換アミノ基含有モノマーの量は、10質量部以下の範囲内であるのが好ましい。なお、本発明の重合体架橋微粒子(D)の調製が多段階重合でなされる場合、上記モノマー混合物中に含まれるモノマーの量は、それぞれの重合で用いたモノマーの総量である。
【0069】
重合体架橋微粒子(D)を調製する重合条件は、使用するモノマーの種類及び量に応じて、当業者が通常用いられる重合条件を適宜選択して行うことができる。例えば、適宜の重合開始剤及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を用い、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、攪拌しながら数時間加熱反応させることによって、後述する重量平均分子量の範囲内になるよう上記モノマー混合物を重合させるのが好ましい。重合温度は、一般に30℃以上180℃以下であり、好ましくは60℃以上150℃以下である。
【0070】
重合において用いる有機溶媒として、例えば、
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン「ロウス」、「ミネラルスピリットEC」、「シェルゾール71」、「VM&Pナフサ」、「シェルTS28ソルベント」〔以上、シェル社製〕、「アイソパーC」、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーM」、「ナフサ3号」、「ナフサ5号」、「ナフサ6号」、「ソルベント7号」(以上、エクソンケミカル社製)、「IPソルベント1016」、「IPソルベント1620」、「IPソルベント2028」、「IPソルベント2835」〔以上、出光興産(株)製〕、「ホワイトゾール」〔ジャパンエナジー(株)製〕、「三菱ミネラルターペン」、「ダイヤモンドソルベント」、「ペガゾールAN-45」、「ペガゾール3040」〔以上、JXTGエネルギー(株)製〕等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、「ソルベッソ100」(エクソンケミカル社製)、「ソルベッソ150」(エクソンケミカル社製)等の芳香族炭化水素系有機溶媒;
アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸アルミ等のエステル系有機溶媒;
メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-プロピルセロソルブ、i-プロピルセロソルブ、n-ブチルセロソルブ、i-ブチルセロソルブ、i-アミルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ベンジルセロソルブ等のセロソルブ系有機溶媒;
メチルカルビトール、エチルカルビトール、n-プロピルカルビトール、i-プロピルカルビトール、n-ブチルカルビトール、i-ブチルカルビトール、i-アミルカルビトール、フェニルカルビトール、ベンジルカルビトール等のカルビトール系有機溶媒;
等を挙げることができる。
【0071】
上記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス-i-ブチルニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等;を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種又はそれ以上を組み合わせて用いてもよい。上記重合開始剤の使用量は、モノマー総量100質量部に対して、一般に0.5質量部以上15質量部以下であるのが好ましく、2質量部以上8質量部以下であるのがより好ましい。
なお、本発明の重合体架橋微粒子(D)の調製が多段階重合でなされる場合、上記重合開始剤の好ましい使用量の範囲は、それぞれの重合に適用することができる。
【0072】
重合体架橋微粒子(D)の調製において、モノマー混合物を2段階重合する場合は、最初の重合段階において、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を共重合して溶解部を形成し、次いで、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含まないモノマー混合物又は高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を共重合して粒子部を形成してもよい。
【0073】
重合体架橋微粒子(D)が例えば溶解部及び粒子部を有する場合において、溶解部の重量平均分子量は15000以上100000以下であってよく、粒子部は重合不飽和基を2つ以上有するモノマーで架橋されていることが好ましい。
重量平均分子量は、例えば、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により決定してよい。
【0074】
重合体架橋微粒子(D)が溶解部及び粒子部を有する場合における溶解部及び粒子部の質量比率は、溶解部:粒子部=20:80~80:20の範囲内であるのが好ましく、30:70~70:30の範囲内であるのがより好ましい。
【0075】
重合体架橋微粒子(D)の調製の他の1例として、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を有するラジカル重合性不飽和モノマーを含まないモノマー混合物を重合し、得られた共重合体に、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を導入する例が挙げられる。具体的には、例えば、アルキレン基含有モノマーを含むモノマー混合物を重合し、次いで、高級不飽和脂肪酸のカルボキシル基と、得られた共重合体が有するアルキレン基とを反応させることによって、高級不飽和脂肪族基を含むペンダント側鎖を導入することができる。
【0076】
重合体架橋微粒子(D)のベース塗料組成物中への配合量は、水酸基含有アクリル樹脂(B)、ブロックイソシアネート化合物(C)およびアクリル樹脂(E)の固形分合計中100質量部に対して5~40質量部、好ましくは10~30質量部が一般的である。重合体架橋微粒子(D)の配合量が少なすぎると、ベース塗料組成物のタレ易さおよびウェット・オン・ウェット塗装の場合には下層塗料組成物への浸透が大となり初期の目的が達成されない。他方配合量が多過ぎると塗膜性能の低下や皮膜の平滑性を害し、高仕上がり外観が得られない。
【0077】
重合体架橋微粒子(D)の市販品として、例えば、Setalux1801、1850、SA-50、53(Allnex社製)が挙げられる。
【0078】
(5)アクリル樹脂(E)
着色ベース塗料は、上記水酸基含有アクリル樹脂(B)とは異なる重量平均分子量を有するアクリル樹脂(E)を含む。これにより、着色ベース塗料の粘性をより容易に調整することができる。
【0079】
アクリル樹脂(E)は、α,β-エチレン性不飽和モノマーを重合させることにより得ることができ、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(B)について上述したα,β-エチレン性不飽和モノマー等を用いてよい。
【0080】
アクリル樹脂(E)の重量平均分子量は、好ましくは3000以上、より好ましくは3500以上、更に好ましくは4000以上であり、好ましくは7500以下、より好ましくは6500以下、更に好ましくは5500以下である。
重量平均分子量は、例えば、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により決定してよい。
【0081】
アクリル樹脂(E)の水酸基価は、例えば、40mgKOH/g以上であってよい。また、水酸基含有アクリル樹脂(E)の酸価は、例えば、0.1mgKOH/g以上であってよく、20mgKOH/g以下であってよい。
水酸基価及び酸価は、既知の方法により、実測又は計算したものであってよい。例えば、水酸基価及び酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定してよい。
【0082】
アクリル樹脂(E)は、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂(E)を含有する場合、アクリル樹脂(E)の含有量は特に限定されず、例えば、着色ベース塗料の樹脂固形分中、10質量%以上50質量%以下であってよい。アクリル樹脂(E)の配合量が少なすぎると塗料の粘度が高くなり、塗装時に弊害が生じる。アクリル樹脂(E)の量が多すぎると粘度は下がるが、塗膜物性が低下し、密着性や耐水性能が低下する。
【0083】
(6)その他の成分
着色ベース塗料は、有機溶剤を含んでよい。
そのような有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0084】
本発明の着色ベース塗料は、硬化触媒、重合体架橋微粒子(D)以外の粘性調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン)、酸化防止剤、表面調整剤、造膜助剤、防錆剤等を含んでよい。
【0085】
(7)着色ベース塗料の調製
着色ベース塗料の製造方法は特に限定されず、ディスパー、ホモジナイザー、ロール、サンドグラインドミル又はニーダー等を用いて上述の成分を攪拌、混練又は分散する等、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
【0086】
本発明の着色ベース塗料は、コーンプレート型粘度計を用い、23℃において、0.1/secのシェアで粘度V1を測定した後、0.1/secから25000/secに変更して30秒剪断し、次いで0.1/secに戻して1秒剪断した後の粘度V2を測定した際、V1に対するV2の比率である粘度回復率V2/V1が、90%以上であることを特徴とする。粘度回復率V2/V1は高い程好ましい。粘度回復率は、弱いシェア時点の粘度と強いシェア時点の粘度の比率を表していて、粘度の回復が高いことは、塗装直後でも粘度がすぐに回復することを表している。本発明の着色ベース塗料は、塗装した直後でも急激に粘度が回復する。
これにより、着色ベース塗料のタレや扁平光輝材の移動がなく意匠性が保たれ目的とするFF性に優れた塗膜となる。
【0087】
[二液型クリヤー塗料]
着色ベース塗膜上に二液型クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜が設けられてよい。クリヤー塗膜は特に限定されず、塗膜形成樹脂及び必要に応じて硬化剤等を含む二液型クリヤー塗料を用いて形成される。また、二液型クリヤー塗膜は、必要に応じて、着色成分を含有してよい。
【0088】
二液型クリヤー塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(F)と架橋剤であるポリイソシアネート化合物(G)を含む塗料であって、通常水酸基含有ポリマー(F)を一つのパッケージにし、ポリイソシアネート化合物(G)からなる架橋剤を別のパッケージにすることにより二液型クリヤー塗料になる。
【0089】
水酸基含有アクリル樹脂(F)
水酸基含有アクリル樹脂(F)は、水酸基価が80mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が4,000以上15,000以下であり、およびガラス転移温度が10℃以上60℃以下である。
【0090】
水酸基価がこのような範囲内であることにより、クリヤー塗膜に良好な架橋密度を付与でき、クリヤー塗膜および複層塗膜に優れた耐候性等を付与できる。さらに、塗膜の親水化を抑制でき、クリヤー塗膜および複層塗膜に優れた耐水性、耐湿性を有することができる。
【0091】
重量平均分子量がこのような範囲内であることにより、例えば、クリヤー塗膜形成組成物をベース塗膜上又は未硬化のベース塗膜上に塗装したときに、クリヤー塗膜形成組成物とベース塗膜との混相の発生を抑制でき、良好なクリヤー塗膜の外観(仕上がり外観)を得ることができる。また、クリヤー塗膜形成組成物の速乾性を向上させることが出来る。
【0092】
その上、クリヤー塗料組成物は適度な粘度を有することができ、クリヤー塗膜形成組成物の塗装時の粘度を低下させる溶剤の使用を低減でき、揮発性有機化合物(VOC)の増加を抑制できる。さらに、得られた塗膜は、優れた耐ガソホール性、耐候性および外観を有することができる。
【0093】
本明細書における重量平均分子量は、東ソー株式会社製 HLC-8200を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した値である。測定条件は以下の通りである。
カラム TSgel Super Multipore HZ-M 3本
展開溶媒 テトラヒドロフラン
カラム注入口オーブン 40℃
流量 0.35ml
検出器 RI
標準ポリスチレン 東ソー株式会社製PSオリゴマーキット
【0094】
ガラス転移温度がこのような範囲内であることにより、クリヤー塗膜は、優れた耐汚染性、耐擦り傷性、及び硬度を有することができ、加えて、クリヤー塗膜形成組成物の速乾性が向上する。その上、優れた外観を有することができる。
本明細書におけるガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)(熱分析装置SSC5200(セイコー電子製))にて以下の工程により測定した値を用いた。具体的には、昇温速度10℃/minにて20℃から150℃に昇温する工程(工程1)、降温速度10℃/minにて150℃から-50℃に降温する工程(工程2)、昇温速度10℃/minにて-50℃から150℃に昇温する工程(工程3)において、工程3の昇温時のチャートから得られる値をガラス転移温度とした。
【0095】
水酸基含有アクリル樹脂(F)の固形分酸価(AV)は、2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であり、このような範囲内にあることにより、優れた外観を有するクリヤー塗膜を形成できる。
また、例えば、クリヤー塗膜に隣接してベース塗膜を形成する態様において、本開示に係るクリヤー塗料組成物とベース塗料組成物(ベース塗膜)との混層を防止でき、優れた意匠性を有するクリヤー塗膜を形成できる。
【0096】
本発明に係る水酸基含有アクリル樹脂(F)を構成でき、上記条件を満たす好適なモノマー組成物としては、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の、水酸基を含有するアクリル酸ヒドロキシエステル;メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等の、水酸基を含有するメタクリル酸ヒドロキシエステル;のうちの少なくとも1つを含み、さらに、必要に応じて、アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボロニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソボロニル等のメタクリル酸エステル;スチレン等の芳香環を有するエチレン性不飽和モノマー;等のうちの少なくとも1つを含む組成物が挙げられる。モノマー組成物の組成は、水酸基含有アクリル樹脂に求められる各種物性に応じて適宜調節すればよい。
【0097】
モノマー組成物は、例えば酢酸ブチル等の溶剤を用いて重合できる。また、溶剤の種類、重合時のモノマー組成物の濃度、或いは重合開始剤の種類、量、重合温度、重合時間等の重合条件は、水酸基含有アクリル樹脂(F)に求められる各種物性に応じて適宜調節できる。したがって、水酸基含有アクリル樹脂(F)の製造方法は特に限定されるものではなく、市販の水酸基含有アクリル樹脂(F)を用いてもよい。
【0098】
ポリイソシアネート化合物(G)
本発明に係るクリヤー塗膜は、塗膜形成樹脂として、ポリイソシアネート化合物(G)を含む。ポリイソシアネート化合物(G)を用いることにより、クリヤー塗料組成物の硬化反応速度を向上させることができる。特に、二液型クリヤー塗料のポリイソシアネート化合物(G)が着色ベース塗膜層に浸み込み硬化することで耐水性の優れた複層塗膜を形成することができる。
【0099】
ポリイソシアネート化合物(G)としては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族のもの;イソホロンジイソシアネート等の脂環族のもの;その単量体及びそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプ等の多量体等を挙げることができる。例えば、イソシアヌレートおよびウレトジオン構造を有していることがさらに好ましい。
【0100】
本発明で用いる二液型クリヤー塗料組成物は、粘性制御剤を含んでもよい。粘性制御剤として、例えば、架橋あるいは非架橋の樹脂粒子、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩等のポリアマイド系のもの、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系等のもの、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの等を挙げることができる。
【0101】
本発明では、上記の2種類の塗料(即ち、着色ベース塗料と二液型クリヤー塗料)を塗装して未硬化の塗膜(即ち、着色ベース塗膜およびその上に形成した二液型クリヤー塗膜)を形成し、この2層を焼き付け硬化して、複層塗膜(意匠性に優れた硬化塗膜)を形成する。塗装方法については、既に述べているが、形成された硬化した複層塗膜は、基材である自動車部品成型品との密着性が優れていて、塗膜剥離などの欠陥の少ない優れた意匠性の複層塗膜を提供することができる。また、着色ベース塗膜および二液型クリヤー塗膜だけでなく、前述のように、中塗り塗膜やプライマー塗膜の上に、本発明の複層塗膜を形成した場合には、3層または4層の塗膜がプラスチック素材からなる自動車部品用成形品上に形成されることになる。中塗り塗膜やプライマー塗膜がある場合には、それらが未硬化の場合と硬化されている場合があるが、未硬化の場合は最後の硬化工程では3層または4層の未硬化の塗膜を硬化する必要あるので、多少硬化時間や硬化温度に変化が生じることがあるが、基本的に前述の硬化工程の硬化時間や硬化温度の範囲内にある。
【0102】
本発明の複層塗膜と形成された塗装物品は、プラスチック素材からなる自動車部品用成型品であり、プラスチック素材からなる自動車部品成型品に高い意匠性の外観を提供することができる。本発明の着色ベース塗料は、従来の着色ベース塗料に比べ、高固形分であるので、排出される有機溶剤の少なくなり、しかも厚膜に塗装することができ、塗装時間も乾燥時間も短くなる。また、水性の塗料を用いる塗装方法と比べると、水性塗料を乾燥するためのプレヒート工程が不要となり、エネルギー消費量が大幅に改善できると共に、塗装設備もコンパクトになり、優れた塗装方法ということができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら制限されるものではない。実施例中、「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
【0104】
(製造例1)水酸基含有アクリル樹脂(B-1)の製造
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口及び冷却管を備えた反応装置に酢酸ブチルを57部仕込み、窒素ガスを導入しつつ攪拌下120℃まで昇温した。次にメタクリル酸0.5部、2-エチルヘキシルメタクリレート53.1部、メチルメタクリレート18.1部、スチレン15.0部、ラクトン変性2-ヒドロキシエチルメタクリレート13.3部からなる混合物とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート2.0部を酢酸ブチル5部に溶解した溶液とを反応装置中に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させてさらにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.2部を酢酸ブチル5部に溶解した溶液を1時間かけて反応装置中に滴下して120℃に保ったまま2時間熟成し反応を完了した。得られた水酸基含有樹脂の不揮発分は60%で、重量平均分子量は14500であった。また、ガラス転移温度は20℃であり、水酸基価は30mgKOH/gであった。表1には、配合モノマー成分、特性値、重合開始剤(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート)の一段目および二段目の量、水酸基の種類(ラクトン変性か、ラクトン変性で無いか)について記載した。
【0105】
(製造例2~4)水酸基含有アクリル樹脂(B-2~B-4)の製造
製造例B-1と同様の反応装置で表1に記載の配合にて、同様の操作で製造例B-2からB-10の水酸基含有アクリル樹脂を得た。表1には、得られた水酸基含有アクリル樹脂(B-2~B-4)の特性値等をあわせて表1に記載した。
【0106】
【0107】
(製造例5~6)アクリル樹脂(E-1~E-2)の製造
上記製造例B-1と同様の反応装置で表2に記載の配合にて、同様の操作でアクリル樹脂(E-1~E-2)を得、その特性値(重量平均分子量、一段目および二段目の重合開始剤量)をあわせて表2に記載した。
【0108】
【0109】
参考例1
両イオン性基を有するポリエステル樹脂の製造方法
攪拌器、窒素導入管、温度制御装置、コンデンサー、デカンタ-を備えた2Qコルベンに、ビスヒドロキシエチルタウリン134部、ネオペンチルグリコール130部、アゼライン酸236部、無水フタル酸186部およびキシレン27部を仕込み、昇温する。反応により生成する水をキシレンと共沸させ除去する。還流開始より約2時間をかけて温度を190℃にし、カルボン酸相当の酸化が145になるまで攪拌と脱水を継続し、次に140℃まで冷却する。
【0110】
次いで140℃の温度を保持し、「カージュラE10」(シェル社製のパーサティック酸グリシジルエステル)314部を30分で滴下し、その後2時間攪拌を継続し、反応を終了する。得られがポリエステル樹脂は酸価59、ヒドロキシル価90、Mn1054であった。
【0111】
(製造例7)重合体架橋微粒子D-1の製造例
攪拌器、冷却器、温度制御装置を備えた1Lの反応容器に脱イオン水281部、上記参考例1で得た両イオン性基を有するポリエステル樹脂30部およびジメチルエタノールアミン3部を仕込み、攪拌上温度を80℃に保持しながら溶解し、これにアゾビスシアノ吉草酸1.0部を脱イオン水45部とジメチルエタノールアミン0.9部に溶解した液を添加する。次いで、n-ブチルアクリレート30部、スチレン70部、およびエチレングリコールジメタクリレート60部からなる混合溶液を60分間を要して滴下する。滴下後さらにアゾビスシアノ吉草酸0.5部を脱イオン水15部とジメチルエタノールアミン0.4部にとかしたものを添加して80℃でさらに2時間攪拌を続け、不揮発分40%、粒径0.12μのエマルジョンを得た。このエマルジョンを噴霧乾燥して重合体架橋微粒子を得た。
【0112】
この重合体架橋微粒子をメチルアミルケトンとキシレンを重量比で1:1になるように混合した溶媒に超音波分散機を用いて加熱残分が40%となるよう調整し、安定な重合体架橋粒子の分散溶液を得た。
【0113】
(製造例8)重合体架橋微粒子D-2の製造例
上記製造例7と同様の装置で、参考例1で得たポリエステル樹脂の代わりにNa,ジ(2-エチルヘキシル)スルフォサクシネート5部を用いる以外は同じ操作方法で粒径0.20μのエマルションを得た。同様にこのエマルションを噴霧乾燥し、混合溶媒に超音波分散し、加熱残分50%に調整した。
【0114】
(製造例9)アクリルポリオール樹脂AC-1(クリヤー用)の製造例
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口及び冷却管を備えた反応装置に酢酸ブチルを57.33部仕込み、窒素ガスを導入しつつ攪拌下125℃まで昇温した。次にスチレン10部、メタクリル酸0.46部メチルメタクリレート29.23部、2-エチルヘキシルアクリレート30.31部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル30.00部からなる混合物とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート3.8部を酢酸ブチル10部に溶解した溶液とを反応装置中に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させてさらにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート0.2部を酢酸ブチル10部に溶解した溶液を1時間かけて反応装置中に滴下して125℃に保ったまま2時間熟成し、反応を完了した。得られた水酸基含有樹脂の不揮発分は60%で、質量平均分子量は11000であった。
【0115】
(製造例10~15)着色ベース塗料製造例BA-1~BA-6
下記表3に記載の組成で原料を配合して攪拌することにより、着色ベース塗料BA-1~BA-6を得た。なお、表3中の組成の単位は質量部であり、また、有機溶剤を除いた固形分換算量である。重合体架橋微粒子(D)の量は水酸基含有アクリル樹脂(B)、ブロックイソシアネート化合物(C)およびアクリル樹脂(E)の合計100質量部に対する量を表す。
【0116】
【0117】
表3中の原料(着色ベース塗料製造例BA-1~BA-6)について説明する。
・ブロックイソシアネート化合物(C):旭化成ケミカル社製、商品名:デュラネートMF-K60B
・顔料(A):アルミ(鱗片状顔料)、東洋アルミニウム社製、商品名:アルペースト07-0674
・有機溶剤:メチルアミルケトン、ソルベッソ100(エクソンモービル社製)
【0118】
(着色ベース塗料の準備)
着色ベース塗料製造例BA-1~BA-6はメチルアミルケトン/ソルベッソ100=1/1(重量比)を希釈シンナーとして用い塗料温度が20℃の状態でフォードカップNo.4の粘度が12秒から14秒になるように調整する。そのとき、不揮発分が35%未満となる塗料は×、35%以上の時は○と評価し、表4に塗装時の固形分の欄を設けて、〇および×を記載した。×の場合はその時の不揮発分を記載した。
【0119】
(製造例16)二液型クリヤー塗料CL-1の製造
製造例9で得たアクリルポリオール樹脂AC-1を固形分で100部に対し表面調整剤としてBYK310(ALTANA社製)を0.15部、光安定化剤としてチヌビン290(BASF社製)を2部、チヌビン384-2(BASF社製)を1部、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体化合物をOH基とNCO基の比が1となるように調整した。二液クリヤーは酢酸ブチルとソルベッソ100を重量比7:3で製造した溶媒で不揮発分が50%となるように調整して塗装に使用した。
【0120】
実施例1~3および比較例1~5
(塗装物品の作製)
イソプロピルアルコールでワイピングしたABS樹脂製基材(150mm×150mm×3mm)の表面に、25℃/70%RHの環境下で、製造例BA-1の着色ベース塗料をロボベル951を使用し2ステージで乾燥膜厚が15μmなるよう吐出量を調整し、以下の条件で塗装した。(ガン距離:150mm、ピッチ幅:65mm、ガン速度:標準塗装条件が700mm/s、回転数:25000rpm、シェーピングエア圧:0.2MPa)その後、室温で5分間セッティングした。
【0121】
その上に、同じくロボベル951を使用して二液型クリヤー塗料CL-1を1ステージで乾燥膜厚が25μmなるよう以下の条件で塗装した(ガン距離:200mm、ガン速度:700mm/s、回転数:25000rpm、シェーピングエアー圧:0.07MPa)。その後、10分間セッティングした後、80℃で30分間乾燥し、実施例1の塗装物品を作製した。
【0122】
また、塗装時間の短縮化が可能かを確認する方法として着色ベース塗装時のガン速を1100mm/sとした以外は同様の塗装方法にてムラ(塗膜のムラ)およびフリップフロップ性(FF性)を評価するための塗装物品を作成した。
【0123】
同様の塗装方法で着色ベース塗料および/またはクリヤーを下記表4に記載の塗料を使用し塗装物品である実施例2~3および比較例1~5を得た。但し、比較例5は100℃で30分間乾燥した。尚、比較例4では、着色ベース塗料として、日本ペイント・オートモーティブコーテイングス(株)から市販のシルバー色の塗料「R160-1シルバー」を用いた。また、比較例5では、クリヤー塗料として日本ペイント・オートモーティブコーティングス(株)から市販のメラミン硬化型一液クリヤー塗料「R3510FHI」を用いた。
【0124】
まず、塗装物品製造時の塗装作業性について塗装時間短縮性および溶剤揮発量の見積もりを以下の要領で評価し、表4に示す。
【0125】
(塗装時間短縮性)
着色ベース塗料のガン速を700mm/sと高速条件1100mm/sで塗装し、吐出量の調整以外は同じ条件で製造した塗装物品を、以下で示す方法によりムラ(塗膜のムラ)およびフリップフロップ性(FF性)を評価し、ガン速に関係なくすべてが合格(○)した場合を合格(○)とした。ムラおよびFF性に、一つでも不合格があった場合は不合格(×)とした。
【0126】
(溶剤揮発量)
実施例1でABS樹脂製基材(150mm×150mm×3mm)に乾燥膜厚が15μmとなるよう塗装した時、使用した製造例BA-1の着色ベース塗料の指数を100とし、実施例、比較例の着色ベース使用量を指数比較し、溶剤揮発量として評価した。塗料吐出量以外は条件を統一し、ガン速度は標準塗装条件とした。
【0127】
また、得られた着色ベース塗料及び塗装物品を用いて、以下の要領で、ムラ(塗膜のムラ)、密着性、耐水性、塗膜硬さ、粘度回復率およびフリップフロップ性(FF性)を評価した。結果を表4に示す。
【0128】
(塗膜のムラ)
上記の条件で得られたテストパネルを目視で正面25度と斜め75度の角度から観察し顔料の配向を観察した。
評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:いずれの角度においても均一な配向に見える。
×:両方、またはいずれか一方の角度で配向が不均一に見える。
【0129】
(密着性)
塗装物品から得られた試験片の塗膜について、JIS K5600-5-6:1999に準拠して、碁盤目セロテープ(登録商標)剥離試験を行った。2mm角の100個の碁盤目を用意し、セロハンテープ剥離試験を行い、剥がれなかった碁盤目数を数えた。
評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:0/100(剥離なし)
×:1/100~100/100(剥離あり)
【0130】
(耐水性)
塗装物品から得られた試験片を40℃の耐水槽に240時間浸漬させた。浸漬終了後、耐水槽から取り出した試験片の塗膜について、取り出してから1時間以内にJIS K5600-5-6:1999に準拠して、碁盤目セロテープ(登録商標)剥離試験と外観観察を行った。2mm角の100個の碁盤目を用意し、セロハンテープ剥離試験を行い、剥がれなかった碁盤目数を数えた。また、外観はブリスター等の異常がないか確認した。
評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:0/100(剥離なし)、外観異常なし
△:0/100(剥離なし)、外観異常あり
×:1/100~100/100(剥離あり)外観異常に関係なし
【0131】
(塗膜硬さ)
上記で得られた塗板を室温で5日放置した後、鉛筆引かき硬度を測定した。鉛筆は三菱UNI鉛筆引っかき値試験用を使用した。測定操作は、塗板を水平な台の上に置き固定し、塗板と円柱上に芯を出した鉛筆の角度が45度の角度になるように鉛筆をもち、約1cm/秒の速度で芯が折れない程度にできるかぎり強く塗板に押し付けながら前方に押し出して塗面を引っかいた。この操作を同一の濃度の鉛筆で5回行い、濃度記号が互いに隣り合う二つの鉛筆について、傷または破れが2回以上と2回未満となる組をみつけ、2回未満となる鉛筆の濃度記号を塗膜の鉛筆硬度とした。
判断基準は、以下の通り。
HB以上 ○(良好)
B以下 ×不良)
【0132】
(粘度回復率)
TA Instruments社製のコープレート型粘度計「DHR-3」を用い、23℃において、0.1/secシェアで粘度V1を測定した後、0.1/secシェアから25000/secシェアに変更して30秒剪断し、次いで0.1/secシェアに戻して1秒剪断した後の粘度V2を測定した。得られたV1及びV2から、粘度回復率V2/V1[%]を算出した。
評価基準は以下の通りであり、〇を合格、×を不合格とした。
〇:粘度回復率が90%以上
×:粘度回復率が90%未満
【0133】
(フリップフロップ性(FF性))
「CM-512m3」(コニカミノルタ社製変角色彩色差計)により、25度及び75度の測定角度でL値を測定した後、FF値(25度のL値/75度のL値)を算出した。
評価基準は以下の通りであり、○を合格、×を不合格とした。
○: FF値が 2.2以上
×: FF値が 2.2未満
【0134】
【0135】
実施例では、固形分35%以上で、粘度回復率が90%以上である例であり、高固形分であり、密着性やFF性も優れている複層塗膜が得られている。比較例1および2では、固形分が20%および25%と低く、塗装時間短縮性が不十分である。また、ガン速度が速くなるとムラが生じ、FF性も悪くなった。比較例3では、塗装時の固形分が32%と若干低く、塗装時間短縮性が悪くなる。この比較例3の場合、重合体架橋微粒子を含まないものであり、粘度回復率が悪く、使用しにくいものであった。比較例4は、着色ベース塗料が市販のものであり、これでは塗装時の固形分が25%と不足し、塗装時間短縮性が足らなくなった。比較例5では、クリヤー塗料が市販品の高固形分のものを使用したが、密着性と耐水性が大きく不足した。これは、クリヤー塗膜からのイソシアネート化合物の着色ベース塗膜への浸み込みがなくベース層で剥離したものと思われる。