(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】熱交換器の解体方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20240222BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20240222BHJP
G21F 7/015 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G21F9/30 535B
G21F9/28 531A
G21F9/28 531B
G21F9/30 531H
G21F9/30 531K
G21F9/30 531E
G21F9/28 A
G21F7/015
(21)【出願番号】P 2020171811
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020056435
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】520106781
【氏名又は名称】スタズビック ウエスト マネジメント テクノロジー アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】中山 準平
(72)【発明者】
【氏名】パー リーダー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス バーナーソン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0130605(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1450205(KR,B1)
【文献】特開昭55-056501(JP,A)
【文献】特開2011-033349(JP,A)
【文献】特開2019-143948(JP,A)
【文献】特開2006-038502(JP,A)
【文献】特開2006-112844(JP,A)
【文献】特開昭53-000080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 9/28
G21F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管と、上記伝熱管を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、
上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延びる直管部とを有し、
上記胴部の中心軸が水平方向となるように上記熱交換器を架台に載置する工程と、
上記載置工程後に、閉じ込め機構及び放射線遮蔽機能を有する解体室へ上記円弧部側から上記熱交換器の一部を上記架台の移動により挿入する工程と、
上記伝熱管の円弧部を上記胴部から露出させる工程と、
上記挿入工程及び上記露出工程後に、上記解体室内で回転鋸により上記円弧部を分断する工程と、
上記分断工程後に、上記解体室内で回転鋸により上記円弧部を分断した位置から順に短管に切り取る工程と
を備え、
上記閉じ込め機構が、
上記胴部を挿入可能な開口と、
上記開口の周囲に配置され、上記胴部が挿入された状態で上記胴部と上記開口の周縁との間を密封することで放射性物質の上記解体室の外部への漏洩及び上記熱交換器の上記解体室の外部に位置する部位への放射性物質の付着を防止可能とする絞り機構と
を有し、
上記挿入工程で、上記絞り機構を開いた状態で上記架台を移動させ、上記架台の移動後に上記絞り機構を閉じることで、上記円弧部を含み、かつ上記胴部のうち上記直管部を覆う部分を実質的に含まない上記胴部の一部を上記解体室内に閉じ込め、
上記回転鋸が、
回転面が鉛直方向となる回転刃と、
上記解体室へ挿入された上記胴部の中心軸と直交する面内で上記回転刃を移動可能とする移動機構と、
上記回転面を水平方向に旋回可能とする旋回機構と
を有し、
上記分断工程及び上記切取工程で、上記円弧部に上記回転鋸が当接する位置の調整に上記移動機構及び上記旋回機構を用い
る熱交換器の解体方法。
【請求項2】
上記移動機構及び上記旋回機構が解体室の外部から操作可能である
請求項1に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項3】
上記架台が、上記胴部の中心軸周りに回転可能とするターニング装置を有し、
上記分断工程及び上記切取工程で、上記円弧部に上記回転鋸が当接する位置の調整に上記ターニング装置を用いる請求項1
又は請求項2に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項4】
上記解体室が、
その床面の少なくとも一部を構成する傾斜面と、
上記傾斜面の下端に配置される取出口と
を有し、
上記切取工程で、切り取られた短管がその重力又は押出装置により上記傾斜面を下方へ移動し、上記取出口から順に排出される請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項5】
少なくとも上記分断工程で、上記解体室内を負圧に保つ請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項6】
上記分断工程の前に、上記伝熱管の内部を除染する工程を備える請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項7】
上記除染工程が、上記挿入工程後に行われ、
上記除染工程で、ショットブラストを用い、
上記除染工程が、
上記伝熱管の一方の端部からショット材を吹き込む工程と、
上記吹込工程で吹き込まれたショット材及び上記ショット材により除去された放射性物質を上記伝熱管の他方の端部から回収する工程と
を有する
請求項6に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項8】
上記ショット材が、ドライアイス粒である
請求項7に記載の熱交換器の解体方法。
【請求項9】
上記除染工程で、上記吹込工程を上記伝熱管の両端から交互に行う
請求項7又は請求項8に記載の熱交換器の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設の設備更新や廃止措置では、老朽化したタンクや熱交換器のような機器が撤去される。これらの機器には放射性物質が付着している。この放射性物質が付着している部分を取り除き、放射性物質が付着していない部分あるいは放射性物質の付着量がわずかであり除染可能な部分を金属原料等として再利用すれば、放射性廃棄物の低減を図ることができる。
【0003】
熱交換器の場合、管板に固定されている伝熱管及び水室の内部に主に放射性物質が付着している。このため、熱交換器では伝熱管を切断し、除去する必要がある。この際、放射性物質が漏洩したり、再利用可能な部分に付着したりすることを抑止しつつ作業する必要がある。
【0004】
伝熱管を除去する方法として、伝熱管の円弧部を除去した後に、直管部と管板との接続を切断し、直線部を引き抜く熱交換器の解体方法が公知である(特開2014-59149号公報参照)。
【0005】
上記公報に記載の熱交換器の解体方法では、最初に伝熱管の円弧部を除去することで、振動抑制のために円弧部に取り付けられている部材を同時に除去可能なため、その部材により伝熱管の引き抜きが阻害される事態を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報に記載の熱交換器の解体方法では、熱交換器は処理設備の床上に支持架台によって横置きとされ、最初に伝熱管の円弧部が、振動抑制のために円弧部に取り付けられている部材と同時に除去される。一般に伝熱管は複数搭載されており、熱交換器を横置きとした状態で振動抑制部材ごと一度に除去することは容易ではなく、その作業性には改善の余地がある。
【0008】
また、上記公報に記載の熱交換器は解体に際しその全体をグリーンハウスによって覆われる。このように熱交換器全体を覆うことで外部への放射性物質の漏洩を防ぐことができるが、再利用可能な部分に放射性物質が付着することを十分に抑止することはできない。また、熱交換器は全長が20m程度ある比較的大きなものもあるため、熱交換器全体を覆う設備は巨大なものとなる。
【0009】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、放射性物質の漏洩及び被ばく量をさらに低減できるとともに、伝熱管の円弧部を省スペースで効率的に除去することができる熱交換器の解体方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る熱交換器の解体方法は、伝熱管と、上記伝熱管を格納する円筒状の胴部とを備え、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、上記伝熱管が、円弧部と、この円弧部の両端からそれぞれ上記胴部の中心軸に対して平行に延びる直管部とを有し、上記胴部の中心軸が水平方向となるように上記熱交換器を架台に載置する工程と、上記載置工程後に、閉じ込め機構及び放射線遮蔽機能を有する解体室へ上記円弧部側から上記熱交換器の一部を上記架台の移動により挿入する工程と、上記伝熱管の円弧部を上記胴部から露出させる工程と、上記挿入工程及び上記露出工程後に、上記解体室内で回転鋸により上記円弧部を分断する工程と、上記分断工程後に、上記解体室内で回転鋸により上記円弧部を分断した位置から順に短管に切り取る工程とを備える。
【0011】
当該熱交換器の解体方法では、円弧部の分断に回転鋸を用いる。回転鋸は接触位置に切断力が集中し易いため、振動が生じ易い伝熱管に対しても容易かつ正確に切断することができる。当該熱交換器の解体方法では、回転鋸を用いることで伝熱管を容易に切り取れるので、分断工程で分断した位置から順に円弧部を短管に切り取り、容易に回収できる。このため、当該熱交換器の解体方法は作業効率が高い。また、当該熱交換器の解体方法では、解体室が熱交換器の切断箇所を含む一部を閉じ込め、放射線を遮蔽する構成であるので、熱交換器を覆う設備を省スペース化することができるとともに、熱交換器のうち解体室外部に位置する部分に放射性物質が付着することを抑止できる。
【0012】
上記回転鋸が、回転面が鉛直方向となる回転刃と、上記解体室へ挿入された上記胴部の中心軸と直交する面内で上記回転刃を移動可能とする移動機構と、上記回転面を水平方向に旋回可能とする旋回機構とを有し、上記分断工程及び上記切取工程で、上記円弧部に上記回転鋸が当接する位置の調整に上記移動機構及び上記旋回機構を用いるとよい。このように分断工程及び切取工程で、円弧部に回転鋸が当接する位置の調整に上記移動機構及び上記旋回機構を用いることで、円弧部の所望の位置を容易に切断することができるので、作業効率をさらに高められる。
【0013】
上記移動機構及び上記旋回機構が解体室の外部から操作可能であるとよい。このように上記移動機構及び上記旋回機構を解体室の外部から操作可能とすることで、作業員の被爆をより確実に防止することができる。
【0014】
上記架台が、上記胴部をその中心軸周りに回転可能とするターニング装置を有し、上記分断工程及び上記切取工程で、上記円弧部に上記回転鋸が当接する位置の調整に上記ターニング装置を用いるとよい。このように分断工程及び切取工程で、円弧部に回転鋸が当接する位置の調整に上記ターニング装置を用いることで、円弧部の所望の位置をさらに容易に切断することができるようになる。また、切り取った短管を上記ターニング装置の回転により上記胴部から容易に排出できるので、短管をより確実に回収することができる。
【0015】
上記解体室が、その床面の少なくとも一部を構成する傾斜面と、上記傾斜面の下端に配置される取出口とを有し、上記切取工程で、切り取られた短管がその重力又は押出装置により上記傾斜面を下方へ移動し、上記取出口から順に排出されるとよい。このように解体室の床面を構成することで、切り取られた短管をより確実に回収することができる。つまり、短管が解体室内に残留して、解体室内の放射能量が徐々に増加することを防止でき、また例えば作業員が解体室内へ回収に入る機会を低減し、作業員の被ばく量をさらに低減できる。
【0016】
上記閉じ込め機構が、上記胴部を挿入可能な開口と、上記開口の周囲に配置され、上記胴部が挿入された状態で上記胴部と上記開口の周縁との間を密封可能とする絞り機構とを有し、上記挿入工程で、上記絞り機構を開いた状態で上記架台を移動させ、上記架台の移動後に上記絞り機構を閉じることで、上記胴部の一部を上記解体室内に閉じ込めるとよい。このように閉じ込め機構を構成することで、放射線遮蔽機能を維持しつつ、熱交換器の一部を架台の移動により容易に解体室に挿入することができる。
【0017】
少なくとも上記分断工程で、上記解体室内を負圧に保つとよい。このように解体室内を負圧に保つことで、解体室の隙間等から放射性物質が外部へ漏洩することをより確実に抑止できる。
【0018】
上記分断工程の前に、上記伝熱管の内部を除染する工程を備えるとよい。このように上記分断工程の前に上記伝熱管の内部を除染する工程を設けることで、伝熱管の再利用効率を高めることができる。
【0019】
上記除染工程で、ショットブラストを用い、上記除染工程が、上記伝熱管の一方の端部からショット材を吹き込む工程と、上記吹込工程で吹き込まれたショット材及び上記ショット材により除去された放射性物質を上記伝熱管の他方の端部から回収する工程とを有するとよい。このように上記除染工程でショットブラストを用いることで、上記伝熱管内の放射性物質を容易に除去することができる。
【0020】
上記ショット材が、ドライアイス粒であるであるとよい。このように上記ショット材をドライアイス粒とすることで、伝熱管内部が冷却されるので放射性物質を剥がれ易くすることができる。また、ドライアイス粒は回収後に揮発するため、二次廃棄物の量を削減することができる。
【0021】
上記除染工程で、上記吹込工程を上記伝熱管の両端から交互に行うとよい。伝熱管は円弧部を有するため、吹込工程で吹き込まれたショット材、水又は気体はこの円弧部で減速され、円弧部の下流側の直管部で除染力が低下する。これに対し、上記吹込工程を上記伝熱管の両端から交互に行うことで、いずれの直管部に対しても円弧部の上流側から吹き込む機会が担保され、除染力を確保することができる。
【0022】
以上説明したように、本発明の熱交換器の解体方法は、放射性物質の漏洩及び被ばく量をさらに低減できるとともに、伝熱管の円弧部を省スペースで効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱交換器の解体方法を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、
図1の熱交換器の解体方法で解体する熱交換器を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の熱交換器の解体方法で使用する解体設備を示す模式的斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の解体室の閉じ込め機構を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図4の解体室の床面構造を示す模式的断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の回転鋸の構成を示す模式的斜視図である。
【
図7】
図7は、載置工程を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、露出工程を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、
図1とは異なる実施形態に係る熱交換器の解体方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0025】
[第1実施形態]
図1に示す熱交換器の解体方法は、原子力施設で使用される熱交換器の解体方法であって、載置工程S1と、挿入工程S2と、露出工程S3と、分断工程S4と、切取工程S5とを備える。
【0026】
<熱交換器>
図2に、当該熱交換器の解体方法で解体する熱交換器1の構成を示す。熱交換器1は、複数の伝熱管10と、この伝熱管10を固定する管板20と、伝熱管10及び管板20を格納する円筒状の胴部30とを備える。
【0027】
(伝熱管)
伝熱管10は、円弧部11と、この円弧部11の両端からそれぞれ胴部30の中心軸に対して平行に延びる直管部12とを有する。複数の伝熱管10は、
図2に示すように、楔止め金具13や管支持板14により胴部30内の位置を制御されている。ただし、伝熱管10は楔止め金具13や管支持板14に固定されているわけではなく、伝熱管10が移動可能に保持されている。
【0028】
(管板)
管板20は、直管部12の円弧部11とは反対側の端部を固定するための板である。管板20は、胴部30の下端部にその表面が胴部30の中心軸と直交するように配置されており、胴部30を上下に区画している。
【0029】
(胴部)
胴部30は、管板20で上下に区画されており、その下部には冷却材が供給及び排出される水室31が設けられている。また、胴部30は、管板20で区画された上部に伝熱管10を浸漬するように被冷却材(例えば水)を供給できるように構成されている。
【0030】
(動作)
熱交換器1には、原子炉で加熱された高温の1次冷却材が水室31に供給される。この1次冷却材は伝熱管10の内部を流れて水室31に戻され、水室31から排出される。
【0031】
このとき、伝熱管10の周囲は被冷却材で満たされており、この被冷却材でと熱交換を行うこととなる。従って、排出される1次冷却材は、温度が下がっている。この低温になった1次冷却材は再び原子炉で加熱され、水室31へ供給されることとなる。
【0032】
一方、熱交換により加熱された被冷却材は、熱交換器1から取り出され、その熱エネルギーを利用される。
【0033】
原子力施設において熱交換器1はこのように使用されるので、伝熱管10や水室31の内部を放射性物質が通過する可能性がある。従って、放射性物質は伝熱管10や水室31の内部に主に含まれ、他の部分には含まれないか、含まれていても微量である可能性が高い。
【0034】
当該熱交換器の解体方法は、
図3に示すように、一部又は全部の工程を解体室4で行う。また、当該熱交換器の解体方法では、熱交換器1は、架台5に載置されて解体室4に挿入され、伝熱管10は解体室4内に設けられる回転鋸6により切断される。以下、これらの解体設備について説明する。
【0035】
<解体室>
解体室4は、6方を壁に囲まれており、
図4に示す閉じ込め機構41及び放射線遮蔽機能を有する。
【0036】
(閉じ込め機構)
閉じ込め機構41は、
図4に示すように、熱交換器1の胴部30を挿入可能な開口41aと、開口41aの周囲に配置され、胴部30が挿入された状態で胴部30と開口41aの周縁との間を密封可能とする絞り機構41bとを有する。
【0037】
絞り機構41bは、公知の絞り機構を用いることができる。閉じ込め機構41では、胴部30が挿入された状態で、絞り機構41bを絞ると、胴部30と開口41aの周縁との間を密封され、放射性物質が外部へ漏洩することを防止する。一方、絞り機構41bを開くと胴部30と開口41aの周縁との間に隙間が生じ、後述する架台5の移動により熱交換器1の胴部30を移動させる際に絞り機構41bが抵抗となることを抑止する。なお、放射線遮蔽機能の維持の観点から、絞り機構41bを開いた際に生じる隙間は胴部30の移動を阻害しない最小の隙間とすることが好ましい。
【0038】
このように閉じ込め機構41を構成することで、放射線遮蔽機能を維持しつつ、熱交換器1の一部を架台5の移動により容易に解体室4に挿入することができる。
【0039】
(放射線遮蔽機能)
放射線遮蔽機能は、6方の壁(4つの側壁、天井及び床面)と閉じ込め機構41とにより実現される。つまり、6方の壁及び閉じ込め機構41が、解体室内4を密閉し、放射性物質の外部への漏洩を防止する。解体室4を構成する壁は、通常であれば透過してしまう放射線を減衰する遮蔽体を有するとよい。具体的な解体室4の壁の構成方法としては、上記遮蔽体そのもので構成する方法や、既設の壁全面に遮蔽体を設置する方法等を挙げることができる。このように構成することで、解体室4から放射線自体が漏洩することを防止できる。
【0040】
解体室4は、その内部を減圧可能に構成され、内部を負圧に保つことができる。このように解体室4内を負圧に保つことで、解体室4の隙間等から放射性物質が外部へ漏洩することをより確実に抑止できる。
【0041】
(床面構造)
解体室4は、
図5に示すように、その床面42の少なくとも一部を構成する傾斜面42aと、傾斜面42aの下端に配置される取出口43とを有する。
【0042】
傾斜面42aは、後述する切取工程S5で円弧部11から切り取られた短管11aが落下する位置に設けられる。あるいは、解体室4の床面42全体を傾斜面42aとすることもできる。
【0043】
傾斜面42aは、取出口43が底となるように取出口43に向かって傾斜している。傾斜面42aは同一方向に傾斜して構成される必要はなく、例えば取出口43に向かってすり鉢状に構成されてもよい。
【0044】
傾斜面42aの傾斜角は短管11aがその重力により転がり落ちる角度とすることが好ましい。このような角度とすることで、短管11aは、その重力によって傾斜面42aを下方へ移動し、取出口43から排出される。このように重力を用いて短管11aが取出口43から排出されるように構成すると、排出のためのエネルギー消費を不要とでき経済的である。また、短管11aが切り取られた順に1つずつ取出口43から排出されることとなるので、ほぼ同時に複数の短管11aが取出口43に到達することを防止できる。その結果、短管11aが取出口43付近で詰まってしまうことを抑止し易い。
【0045】
あるいは、押出装置を設けて傾斜面42aに落下した短管11aを取出口43へ押し出す構成を採用することもできる。この構成にあっては、傾斜面42aの角度が比較的浅い場合でも確実に短管11aを取出口43から回収できるので、解体室4の床面42を構成し易い。
【0046】
解体室4の床面42をこのように構成することで、切り取られた短管11aをより確実に回収することができる。つまり、短管11aが解体室4内に残留して、解体室4内の放射能量が徐々に増加することを防止でき、また例えば作業員が解体室4内へ回収に入る機会を低減し、作業員の被ばく量をさらに低減できる。
【0047】
取出口43は、床面42に位置し、短管11aを解体室4から排出するための口である。取出口43は、短管11aが排出可能である範囲で極力小さいものであることが好ましい。このように取出口43を小さくすることで、短管11aが狭い範囲から排出されるので、その後の搬送を行い易い。また、取出口43から短管11a以外の放射性物質が漏洩することを抑止できる。
【0048】
取出口43から取り出された短管11aは、例えばコンベア等の搬送装置44により搬送され、放射能の漏洩及び放射性物質の漏洩を防止された保管容器45に収容される。なお、保管容器45を密封するまでは放射能の漏洩及び放射性物質の漏洩のおそれがあるため、搬送装置44及び収容状態にある保管容器45は、放射性物質の閉じ込め機能を有する室内に配置される。
【0049】
<架台>
架台5は、
図3に示すように、胴部30の中心軸が水平方向となるように熱交換器1を載置可能に構成されている。また、架台5は、胴部30を移動させて熱交換器1を解体室4へ挿入させることができる。
【0050】
架台5の構成は、上述の機能を有する限り特に限定されるものではないが、例えば
図3に示すように、熱交換器1の胴部30を下方から支持し、レールR上を移動可能な車輪を有する構成を採用することができる。
【0051】
図3に示すように、架台5は、熱交換器1の胴部30をその中心軸周りに回転可能とするターニング装置51を有する。後述する分断工程S4及び切取工程S5で円弧部11に回転鋸6が当接する位置の調整にターニング装置51を用いることで、円弧部11の所望の位置をさらに容易に切断することができるようになる。また、切り取った短管11aをターニング装置51の回転により胴部30から容易に排出できるので、短管11aをより確実に回収することができる。
【0052】
ターニング装置51としては、例えば熱交換器1の胴部30に当接するように設けられるターニングローラもしくは、ディスクを用いることができる。ターニングローラを回転させると、その回転と連動して胴部30を回転させることができる。ターニングローラの配設数は1でもよいが、2以上とすることが好ましい。複数のターニングローラを用いることで、安定して胴部30を回転させることができる。
【0053】
<回転鋸>
回転鋸6は、
図6に示すように、回転面が鉛直方向となる回転刃61と、解体室4へ挿入された熱交換器1の胴部30の中心軸と直交する面内で回転刃61を移動可能とする移動機構62と、上記回転面を水平方向に旋回可能とする旋回機構63と、回転刃61、移動機構62及び旋回機構63を支持するフレーム64とを有する。
【0054】
(フレーム)
フレーム64は、離間して鉛直方向に立設する棒状又は板状の一対の鉛直フレーム64aと、一対の鉛直フレーム64aの上端に架け渡される水平フレーム64bとを有する。回転刃61、移動機構62及び旋回機構63は、このフレーム64に直接または間接に支持されている。
【0055】
一対の鉛直フレーム64aの離間距離は、その間を熱交換器1の胴部30が通過可能な距離とされる。また、水平フレーム64bの高さは、その下方を熱交換器1の胴部30が通過可能な高さとされる。
【0056】
フレーム64自体が、解体室4へ挿入された熱交換器1の胴部30の中心軸方向(
図6のZ方向)へ移動可能に構成されているとよい。フレーム64を上記中心軸方向へ移動可能に構成することで、分断工程S4及び切取工程S5で円弧部11に回転鋸6が当接する位置の調整の自由度をさらに高められる。フレーム64を移動可能とするためには、例えば一対の鉛直フレーム64aの下端に、上記中心軸方向へ移動する移動装置を取り付けるとよい。
【0057】
(回転刃)
回転刃61は、円弧部11に当接する部分であり、その回転力により伝熱管10を切断可能である。
【0058】
(移動機構)
移動機構62は、一対の鉛直フレーム64a間に架け渡される棒状又は板状のレール本体62aと、レール本体62aの両端を一対の鉛直フレーム64aにそれぞれ固定する一対の固定部62bと、レール本体62aに取り付けられ、回転刃61及び旋回機構63を支持する支持部62cとを有する。
【0059】
一対の固定部62bは、連動して鉛直フレーム64aの軸方向(
図6のY方向)に移動可能に構成される。このような構成としては、例えば固定部62bが当接する鉛直フレーム64aの表面にY方向に沿って歯部を設け、固定部62bが、この歯部と嵌合する歯車を有する構成を採用することができる。固定部62bの歯車を回転させることで、固定部62bを上下運動させることができる。このように固定部62bを構成することで、レール本体62aが上下し、ひいては回転刃61をY方向に移動させることができる。
【0060】
支持部62cは、レール本体62aの長さ方向(
図6のX方向)に移動可能に構成される。このような構成としては、例えばレール本体62aの長さ方向にわたって支持部62cが嵌合する溝を設け、この溝内に支持部62cを左右方向にそれぞれ引張する一対のワイヤを設けて、この一対のワイヤの長さを巻取や操出により制御することで、支持部62cをレール本体62aの長さ方向に移動させる構成を採用することができる。このように支持部62cを構成することで、回転刃61をX方向に移動させることができる。
【0061】
上述の構成により回転刃61はX方向及びY方向に移動可能である。つまり、移動機構62は、解体室4へ挿入された熱交換器1の胴部30の中心軸と直交する面内で回転刃61を移動させることができる。
【0062】
(旋回機構)
旋回機構63は、回転刃61を支持し、かつ回転軸Mの周りに水平回転可能に構成される。このような構成は、公知のモータ等を用いて実現できる。このように旋回機構63を構成することで、回転刃61を水平回転(
図6のL方向の回転)させることができる。このとき回転刃61の回転面は鉛直方向を維持するので、回転面とZ方向とのなす角が調整され、円弧部11に回転鋸6が当接する際の回転刃61の当接角を調整できる。
【0063】
これら移動機構62及び旋回機構63は、解体室4の外部から操作可能であるとよい。このように移動機構62及び旋回機構63を解体室4の外部から操作可能とすることで、作業員の被爆をより確実に防止することができる。
【0064】
なお、移動機構62及び旋回機構63は必須の構成要件ではなく、いずれか一方又は両方が省略されていてもよい。
【0065】
以下、これらを踏まえて、当該熱交換器の解体方法の各工程について説明する。
【0066】
<載置工程>
載置工程S1では、
図7に示すように、胴部30の中心軸が水平方向となるように熱交換器1を架台5に載置する。
【0067】
このとき、
図7に示すように、熱交換器1の頭部をカッター等により予め切断していてもよい。この際、
図7に示すように、伝熱管10は、切断することなく残す。伝熱管10に切れ目が生じない限り、放射性物質が外部に漏洩する可能性はないため、特段の遮蔽は不要である。このため、上記頭部の切断を解体室4へ挿入する前に行うことで、作業効率が高められる。
【0068】
<挿入工程>
挿入工程S2では、載置工程S1後に、解体室4へ円弧部11側から熱交換器1の一部を架台5の移動により挿入する。
【0069】
挿入工程S2では、絞り機構41bを開いた状態で架台5を移動させ、開口41aから熱交換器1の胴部30を解体室4内に挿入する。架台5の移動後に絞り機構41bを閉じることで、胴部30の一部を解体室4内に閉じ込めることができる。
【0070】
挿入される胴部30の長さは、少なくとも円弧部11の切断する部分が解体室4内に閉じ込められる長さとされる。また、開口41aの密閉性の観点から、絞り機構41bが胴部30の外壁に当接可能な長さとされる。より好ましくは、伝熱管10の円弧部11を含み、かつ胴部30のうち直管部12を覆う部分が解体室内4に実質的に入らない、つまり直管部12を覆う部分が実質的に入らないか、入ってもわずかとなる長さである。このような長さとすることで、円弧部11の切断により生じる粉塵を解体室4内に閉じ込められるとともに、胴部30に放射性物質が付着することを防止できる。
【0071】
<露出工程>
露出工程S3では、伝熱管10の円弧部11を胴部30から露出させる。
【0072】
具体的には、胴部30をカッター等の切断機により切断する。伝熱管10が切断されていない状態においては、挿入工程S2より先に行うことも可能である。
【0073】
胴部30を切断した状態を
図8に示す。挿入工程S2及び露出工程S3を完了した状態では、少なくとも円弧部11の切断する部分が解体室4内に閉じ込められ、絞り機構41bが胴部30の外壁に当接している。
【0074】
<分断工程>
分断工程S4では、挿入工程S2及び露出工程S3後に、解体室4内で回転鋸6により円弧部11を分断する。
【0075】
具体的には、円弧部11を2つの部分に分割する。分割位置は特に限定されないが、円弧部11の頂部に近いほど回転鋸6を当接し易いので、例えば円弧部11のアーチの中央(
図8の切断位置C)で切断するとよい。
【0076】
切断位置Cで切断するには、回転鋸6をこの切断位置Cに当接させればよい。分断工程S4で、円弧部11に回転鋸6が当接する位置の調整には、回転鋸6が有する移動機構62及び旋回機構63並びに架台5のターニング装置51を用いることができる。このように分断工程S4で、円弧部11に回転鋸6が当接する位置の調整に移動機構62、旋回機構63及びターニング装置51を用いることで、円弧部11の所望の位置を容易に切断することができるので、作業効率をさらに高められる。
【0077】
少なくとも分断工程S4では、解体室4内を負圧に保つとよい。解体室4内を負圧に保つことで、解体室4の隙間等から放射性物質が外部へ漏洩することをより確実に抑止できる。なお、挿入工程S2以降の工程を常に負圧で行ってもよいし、放射性物質である円弧部11の切断による粉塵が発生し易い分断工程S4及び切取工程S5を負圧で行ってもよい。
【0078】
通常、熱交換器1は複数の伝熱管10を有するため、複数の円弧部11を分断する必要がある。この複数の円弧部11の分断は、一度の分断工程S4で行った後、切取工程S5を行ってもよいし、1本ずつ分断工程S4及び切取工程S5を行っていってもよい。
【0079】
<切取工程>
切取工程S5では、分断工程S4後に、解体室4内で回転鋸6により円弧部11を分断した位置から順に短管11aに切り取る。
【0080】
まず、分断位置の両側に円弧部11が存在するが、まず一方側の円弧部11について分断位置から所望の長さの短管11aが切り取られるように回転鋸6を一方側の円弧部11に当接させる。切取工程S5での円弧部11に回転鋸6が当接する位置の調整も、分断工程S4での調整と同様にして行える。この後、順次切断位置から所望の長さの短管11aを切り取っていく。この短管11aの切り取りは、分断位置の両側の円弧部11について行う。なお、短管11aの切り取り順は特に限定されず、一方側の円弧部11について分断した後に他方側の円弧部11を分断してもよいし、交互に分断していってもよい。
【0081】
切り取られる短管11aの長さ(中心軸の長さ)の下限としては、200mmが好ましく、300mmがより好ましい。一方、短管11aの長さの上限としては、700mmが好ましく、600mmがより好ましい。短管11aの長さが上記下限未満であると、切取回数が増加するため、作業効率が低下するおそれがある。逆に、短管11aの長さが上記上限を超えると、楔止め金具13等に引っかかり易くなり、短管11aの回収が困難となるおそれがある。
【0082】
切取工程S5で切り取られた短管11aは、その重力又は押出装置により傾斜面42aを下方へ移動し、取出口43から順に排出される。特に重力により移動させる場合にあっては、短管11aは切り取りに要する時間間隔をおいて1つずつ落下し、取出口43から排出されることとなるので、同時に2つの短管11aが下方へ移動する可能性が低い。従って、短管11aが取出口43付近で詰まってしまうことが特に発生し難い。
【0083】
取出口43から取り出された短管11aは、搬送装置44により搬送され、放射能の漏洩及び放射性物質の漏洩を防止された保管容器45に収容される。保管容器45に回収された短管11aは、廃棄される。一方、さらに直管部12を取り除かれた熱交換器1の他の部分は再利用に供される。
【0084】
<利点>
当該熱交換器の解体方法では、円弧部11の分断に回転鋸6を用いる。回転鋸6は接触位置に切断力が集中し易いため、振動が生じ易い伝熱管10に対しても容易かつ正確に切断することができる。当該熱交換器の解体方法では、回転鋸6を用いることで伝熱管10を容易に切り取れるので、分断工程S4で分断した位置から円弧部11を順に短管11aに切り取り、容易に回収できる。このため、当該熱交換器の解体方法は作業効率が高い。また、当該熱交換器の解体方法では、解体室4が熱交換器1の切断箇所を含む一部を閉じ込め、放射線を遮蔽する構成であるので、熱交換器1を覆う設備を省スペース化することができるとともに、熱交換器1のうち解体室4外部に位置する部分に放射性物質が付着することを抑止できる。
【0085】
[第2実施形態]
図9に示す熱交換器の解体方法は、
図2に示す伝熱管10と、伝熱管10を格納する円筒状の胴部30とを備え、原子力施設で使用される熱交換器1の解体方法である。伝熱管10は、円弧部11と、この円弧部11の両端からそれぞれ胴部30の中心軸に対して平行に延びる直管部12とを有している。また、当該熱交換器の解体方法は、
図3に示すように、一部又は全部の工程を解体室4で行う。熱交換器1及び解体室4は、第1実施形態の熱交換器1及び解体室4と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
当該熱交換器の解体方法は、胴部30の中心軸が水平方向となるように熱交換器1を架台5に載置する工程(載置工程S1)と、載置工程S1後に、閉じ込め機構41及び放射線遮蔽機能を有する解体室4へ円弧部11側から熱交換器1の一部を架台5の移動により挿入する工程(挿入工程S2)と、伝熱管10の円弧部11を胴部30から露出させる工程(露出工程S3)と、挿入工程S2及び露出工程S3後に、解体室4内で回転鋸6により円弧部11を分断する工程(分断工程S4)と、分断工程S4後に、解体室4内で回転鋸6により円弧部11を分断した位置から順に短管11aに切り取る工程(切取工程S5)と、露出工程S3と分断工程S4との間、すなわち分断工程S4の前に、伝熱管10の内部を除染する工程(除染工程S6)とを備える。
【0087】
当該熱交換器の解体方法の載置工程S1、挿入工程S2、露出工程S3、分断工程S4及び切取工程S5は、第1実施形態の載置工程S1、挿入工程S2、露出工程S3、分断工程S4及び切取工程S5と同様であるので、詳細説明を省略する。以下、除染工程S6について詳説する。
【0088】
<除染工程>
除染工程S6は、
図10に示すように、吹込工程S61と、回収工程S62とを有する。
【0089】
当該熱交換器の解体方法の除染工程S6では、ショットブラストを用いる。具体的には、除染工程S6は、例えば
図11に示す除染装置7を用いて行うことができる。
【0090】
<除染装置>
除染装置7は、ショット材射出機構71と、回収機構72とを有する。ショット材射出機構71は、伝熱管10の一方の端部に配置され、回収機構72は、伝熱管10の他方の端部に配置される。つまり、ショット材射出機構71と、回収機構72とは、円弧部11を挟んで、互いに異なる直管部12の端部に配置される。
【0091】
(ショット材射出機構)
ショット材射出機構71は、ショット材と呼ばれる粒体を対象物に衝突させ、対象物の加工等を行う機構である。
【0092】
ショット材射出機構71は、
図12に示すように、圧縮空気Gとともにショット材Xを射出するノズル71aと、圧縮空気Gをノズル71aへ導くホース71bと、ショット材Xが貯留され、ホース71bを通過する圧縮空気Gにショット材Xを混合する加圧タンク71cとを備える。なお、加圧タンク71cは、密閉に構成されており、空気を内部に送り込める送風口71dを有している。ショット材Xの混合量は、送風口71dから送り込む空気により、密閉された加圧タンク71cの圧力を調整することで行われる。
【0093】
本発明においては、上記対象物は、伝熱管10であり、その内部の除染を行うためにショット材射出機構71を用いる。つまり、伝熱管10の内部にショット材Xを射出し、ショット材Xを伝熱管10の内面に衝突させる。これによりショット材Xに加えて、ショット材Xにより研磨された伝熱管10の金属粉、伝熱管10の内部に付着しておりショット材Xにより剥離された放射性物質が伝熱管10の他方の端部から回収される。
【0094】
ショット材Xとしては、スチール、アルミニウム等の金属粒やドライアイス粒などを用いることができる。中でもドライアイス粒が好ましい。このようにショット材Xをドライアイス粒とすることで、伝熱管10内部が冷却されるので放射性物質を剥がれ易くすることができる。また、ドライアイス粒は回収後に揮発するため、二次廃棄物の量を削減することができる。
【0095】
(回収機構)
回収機構72は、回収ボックス72aを有する。伝熱管10の他方の端部から回収されるショット材X、金属粉及び放射性物質は、その重力により回収ボックス72aに落下し回収される。
【0096】
以下、除染工程S6の各工程について説明する。
【0097】
<吹込工程>
吹込工程S61では、伝熱管10の一方の端部からショット材Xを吹き込む。吹込工程S61は、除染装置7のショット材射出機構71を用いて行うことができる。
【0098】
このとき、熱交換器1は、伝熱管10の両端が開放された状態とされる。具体的には、例えば
図11に示すように、管板20を除去し、伝熱管10の両端が露出した状態とされる。
【0099】
また、熱交換器1は複数の伝熱管10を備えており、その数は数千本に及ぶ場合もある。これらの伝熱管10のうち、熱交換器1の使用中に不都合が生じたものがあれば、その時点で施栓され、以後使用されないような処置がなされることがある。このように施栓された伝熱管10がある場合、吹込工程S61の前に、伝熱管10の施栓を除去する工程を有するとよい。このように施栓除去工程を有することで、熱交換器1の使用時に施栓された伝熱管10の除染も行うことが可能となる。なお、複数の伝熱管10が施栓されている場合は、その全ての伝熱管10に対して施栓除去工程を行うことが好ましい。
【0100】
上述したように、伝熱管10の内部に射出されたショット材Xは、伝熱管10の内部に付着している放射性物質を剥離させる。また、ショット材Xは、伝熱管10の内部を研磨し、金属粉を生じさせる。
【0101】
<回収工程>
回収工程S62では、吹込工程S61で吹き込まれたショット材X、除去した放射性物質、及び研磨した金属粉を伝熱管10の他方の端部から回収する。
【0102】
回収工程S62では、ショット材Xを吹き込んだ圧縮空気Gの流れに乗って、ショット材X、放射性物質及び金属粉は、伝熱管10の他方の端部から排出されてくるので、これらを回収機構72へと導く。
【0103】
回収機構72で回収されたショット材X、金属粉及び放射性物質は、例えば除染等の適切な処理を施された後、廃棄される。
【0104】
吹込工程S61と、これに付随する回収工程S62は、各伝熱管10に対して少なくとも1回行われるが、複数回行われることが好ましい。
【0105】
複数回の吹込工程S61が行われる場合、吹込工程S61は、伝熱管10の両端から交互に行うとよい。つまり、伝熱管10の一方の端部から吹込工程S61を行った各伝熱管10に対して、次に他方の端部から吹込工程S61を行うとよい。なお、回収工程S62は、各吹込工程S61に付随して行われる。一方の端部から吹込工程S61が行われる場合、回収工程S62は、他方の端部側で行われ、他方の端部から吹込工程S61が行われる場合、回収工程S62は、一方の端部側で行われることとなる。
【0106】
ショットブラストを行う場合、円弧部11でショット材Xは円弧に沿って進路を曲げられ、減速してしまう。このため円弧部11の下流側に位置する直管部12の除染力が低下してしまう。これに対し、吹込工程S61を伝熱管10の両端から交互に行うことで、いずれの直管部12に対しても円弧部11の上流側から吹き込む機会が担保され、除染力を確保することができる。
【0107】
また、除染工程S6は、解体室4内で行うことが好ましい。解体室4は、閉じ込め機構41及び放射線遮蔽機能を有しており、除染工程S6を解体室4で行うことで、例えばショット材Xが円弧部11に強く衝突し、伝熱管10に破損が生じたような場合であっても、放射性物質が漏洩することを防止できる。さらに、解体室4内を負圧に保つことが好ましい。このように解体室4内を負圧に保つことで、解体室4の隙間等から放射性物質が外部へ漏洩することをより確実に抑止できる。
【0108】
<利点>
当該熱交換器の解体方法は、露出工程S3と分断工程S4との間で、伝熱管10の内部を除染する除染工程S6を備える。この除染工程S6を設けることで、伝熱管10の再利用効率を高めることができる。また、除染工程S6でショットブラストを用いることで、伝熱管10内の放射性物質を容易に除去することができる。
【0109】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0110】
上記実施形態では、閉じ込め機構が絞り機構を有する場合を説明したが、閉じ込め機構の構成はこれに限定されるものではない。閉じ込め機構として、開口の周囲に配置され、胴部が挿入された状態で胴部と開口の周縁との間を密封するゴムライナーを用いることもできる。閉じ込め機構としてゴムライナーを用いることで、水力学や気力学を必要とするような複雑な構成を用いることなく、容易に密封することができる。
【0111】
上記実施形態では、分断工程等で解体室内を負圧とする場合を説明したが、負圧とすることは必須の構成要件ではなく、例えば解体室内を常圧として分断工程等を行う熱交換器の解体方法も本発明の意図するところである。この場合、解体室内を減圧する設備を不要とできるので、解体室の設備コストを低減できる。
【0112】
上記実施形態では、解体室の床面が傾斜面を有し、切り取られた短管が傾斜面を下方へ移動し、取出口から順に排出される構成を説明したが、この傾斜面及び取出口は必須の構成ではなく、いずれか一方又は両方を省略してもよい。例えば解体室が傾斜面のみを有する場合、傾斜面の下方へ集まった短管をロボットアーム等により回収する構成を採用することもできる。
【0113】
上記実施形態では、架台がターニング装置を有する場合を説明したが、ターニング装置は必須の構成要件ではなく省略可能である。熱交換器の解体方法は、ターニング装置を有さない架台を用いる場合であっても同様の効果を奏する。
【0114】
上記第2実施形態では、除染工程が露出工程と分断工程との間で行われる場合を説明したが、上記除染工程は上記分断工程の前である限り、上記露出工程の後に限定されるものではない。例えば上記除染工程は、挿入工程と露出工程との間で行われてもよい。なお、上記除染工程は、解体室内で行われることが好ましいことから、上記挿入工程より後であることが好ましい。
【0115】
上記第2実施形態では、除染工程でショットブラストを用いる場合について説明したが、他の除染手法を用いてもよい。
【0116】
例えば上記除染工程で、水洗浄を用いることができる。この場合、上記伝熱管の一方の端部から水を噴射し、放射性物質を除去することができる。噴射した水及び除去した放射性物質は、上記伝熱管の他方の端部から回収することができる。この構成にあっては、上記第2実施形態の除染装置において、ショット材射出機構に代えて、高圧の水を噴射する水噴射機構を用いるとよい。
【0117】
あるいは、上記除染工程で、エアレーションを用いることもできる。この構成にあっては、上記第2実施形態の除染装置において、ショット材射出機構に代えて高圧のエアを噴射するエア噴射機構を用いる。上記エアとしては、空気のほか、不活性ガス等を用いることができる。また、回収機構では除去した放射性物質が回収される。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の熱交換器の解体方法は、放射性物質の漏洩及び被ばく量をさらに低減できるとともに、伝熱管の円弧部を省スペースで効率的に除去することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 熱交換器
10 伝熱管
11 円弧部
11a 短管
12 直管部
13 楔止め金具
14 管支持板
20 管板
30 胴部
31 水室
4 解体室
41 閉じ込め機構
41a 開口
41b 絞り機構
42 床面
42a 傾斜面
43 取出口
44 搬送装置
45 保管容器
5 架台
51 ターニング装置
6 回転鋸
61 回転刃
62 移動機構
62a レール本体
62b 固定部
62c 支持部
63 旋回機構
64 フレーム
64a 鉛直フレーム
64b 水平フレーム
7 除染装置
71 ショット材射出機構
71a ノズル
71b ホース
71c 加圧タンク
71d 送風口
72 回収機構
72a 回収ボックス
R レール
M 回転軸
C 切断位置
G 圧縮空気
X ショット材