(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】キャップ付きキャリア部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 13/12 20060101AFI20240222BHJP
H01H 11/00 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01H13/12
H01H11/00 B
(21)【出願番号】P 2020215065
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】太田 定雅
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-215867(JP,A)
【文献】特開平08-315668(JP,A)
【文献】特開2007-179952(JP,A)
【文献】特開昭62-256325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 11/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の押釦スイッチ用部材をそれぞれ被覆可能な複数個のキャップと、
厚さ方向に貫通する貫通孔を有する成形板と、
を備え、
前記キャップは、前記押釦スイッチ用部材のキートップ側から前記押釦スイッチ用部材の押圧方向先端側へ向かって装着可能に構成され、
前記キャップは、前記押釦スイッチ用部材の前記押圧方向先端側を被覆し、前記押釦スイッチ用部材を装着するための第1開口部を有する鍔部と、前記鍔部より径を小さくして前記キートップ側を被覆する頭部と、前記鍔部と前記頭部とを連結する胴部と、を備え、
前記鍔部の厚さ方向の一部若しくは全部は、前記貫通孔の内壁との摩擦抵抗若しくは当該内壁からの押力により前記貫通孔に埋没され、
前記頭部は、前記貫通孔から突出していることを特徴とするキャップ付きキャリア部材。
【請求項2】
前記頭部は、前記押釦スイッチ用部材に装着されたときに、前記押釦スイッチ用部材の少なくとも前記キートップ側端部を突出させるための第2開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のキャップ付きキャリア部材。
【請求項3】
前記キャップおよび前記成形板は、ともにゴム状弾性体であることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ付きキャリア部材。
【請求項4】
前記キャップおよび前記成形板は、互いに異なる弾性率を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のキャップ付きキャリア部材。
【請求項5】
複数個のキャップと厚さ方向に貫通する貫通孔を有する成形板とを前記貫通孔の外周縁にて連接している成形体から、打ち抜き治具を用いて、請求項1から4のいずれか1項に記載のキャップ付きキャリア部材を製造する方法であって、
前記打ち抜き治具は、
前記キャップを前記厚さ方向にて挟む第1挟持部材および第2挟持部材と、
前記キャップを前記厚さ方向にて挟む第3挟持部材および第4挟持部材と、
を備え、
前記第3挟持部材と前記第4挟持部材により前記成形板を挟持する成形板挟持工程と、
前記第1挟持部材と前記第2挟持部材により前記キャップを挟持するキャップ挟持工程と、
前記第3挟持部材と前記第4挟持部材とを、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材に対して相対移動させて、前記キャップを前記成形板から分離する分離工程と、
前記分離工程の際の相対移動の延長若しくは当該相対移動と逆方向への移動により、分離後の前記キャップを、前記貫通孔に埋没させる埋没工程と、
を含むキャップ付きキャリア部材の製造方法。
【請求項6】
前記成形体を製造するための硬化性組成物を金型内に供給する第1供給工程と、
前記金型内にて前記硬化性組成物を硬化する第1硬化工程と、
を経て前記成形体を製造した後、
前記打ち抜き治具を用いて、前記成形板挟持工程と、前記キャップ挟持工程と、前記分離工程と、前記埋没工程と、を行うことを特徴とする請求項5に記載のキャップ付きキャリア部材の製造方法。
【請求項7】
前記貫通孔を有する前記成形板を金型内に配置する配置工程と、
前記キャップを製造するための硬化性組成物を前記金型内に供給する第2供給工程と、
前記金型内にて前記硬化性組成物を硬化する第2硬化工程と、
を経て二色成形により前記成形体を製造した後、
前記打ち抜き治具を用いて、前記成形板挟持工程と、前記キャップ挟持工程と、前記分離工程と、前記埋没工程と、を行うことを特徴とする請求項5に記載のキャップ付きキャリア部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ付きキャリア部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数個の成形製品を製造する場合、まず、金型成形等を用いてシート上に複数個の成形製品を連接した1つの成形体を作製し、次に、打ち抜き治具等を用いて成形製品を打ち抜き、最後に、成形製品を一つずつ回収するというのが一般的な方法である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、成形製品を打ち抜いた後に一つずつ回収する作業は、製造工程において負担の大きい作業であるため、これを省力化したいという製造側の要望がある。一方、成形製品を回収後に、個数を確認してから販売先に納品することも重要である。この際、成形製品の個数の確認作業の省力化も求められている。さらに、販売先では、成形製品を一つずつ機械にセットして接着、組み立て作業を行っているが、この作業の省力化も強く求められている。特に、成形製品の一例として、防水、防塵および/または防食等の目的として押釦スイッチ用部材の少なくとも一部を覆うキャップでは、上述の作業の省力化がより強く求められている。しかしながら、従来の成形製品では、上記要望に応えられていなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造現場または販売先での作業において作業の省力化を可能とするキャップ付きキャリア部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材は、複数個の押釦スイッチ用部材をそれぞれ被覆可能な複数個のキャップと、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する成形板と、を備え、前記キャップは、前記押釦スイッチ用部材のキートップ側から前記押釦スイッチ用部材の押圧方向先端側へ向かって装着可能に構成され、前記キャップは、前記押釦スイッチ用部材の前記押圧方向先端側を被覆し、前記押釦スイッチ用部材を装着するための第1開口部を有する鍔部と、前記鍔部より径を小さくして前記キートップ側を被覆する頭部と、前記鍔部と前記頭部とを連結する胴部と、を備え、前記鍔部の厚さ方向の一部若しくは全部は、前記貫通孔の内壁との摩擦抵抗若しくは当該内壁からの押力により前記貫通孔に埋没され、前記頭部は、前記貫通孔から突出している。
(2)別の実施形態に係るキャップ付きキャリア部材では、好ましくは、前記頭部は、前記押釦スイッチ用部材に装着されたときに、前記押釦スイッチ用部材の少なくとも前記キートップ側端部を突出させるための第2開口部を有しても良い。
(3)別の実施形態に係るキャップ付きキャリア部材では、好ましくは、前記キャップおよび前記成形板は、ともにゴム状弾性体であっても良い。
(4)別の実施形態に係るキャップ付きキャリア部材では、好ましくは、前記キャップおよび前記成形板は、互いに異なる弾性率を有しても良い。
(5)一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法は、複数個のキャップと厚さ方向に貫通する貫通孔を有する成形板とを前記貫通孔の外周縁にて連接している成形体から、打ち抜き治具を用いて、上述のいずれかに記載のキャップ付きキャリア部材を製造する方法であって、前記打ち抜き治具は、前記キャップを前記厚さ方向にて挟む第1挟持部材および第2挟持部材と、前記キャップを前記厚さ方向にて挟む第3挟持部材および第4挟持部材と、を備え、前記第3挟持部材と前記第4挟持部材により前記成形板を挟持する成形板挟持工程と、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材により前記キャップを挟持するキャップ挟持工程と、前記第3挟持部材と前記第4挟持部材とを、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材に対して相対移動させて、前記キャップを前記成形板から分離する分離工程と、前記分離工程の際の相対移動の延長若しくは当該相対移動と逆方向への移動により、分離後の前記キャップを、前記貫通孔に埋没させる埋没工程と、を含む。
(6)別の実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法では、好ましくは、前記成形体を製造するための硬化性組成物を金型内に供給する第1供給工程と、前記金型内にて前記硬化性組成物を硬化する第1硬化工程と、を経て前記成形体を製造した後、前記打ち抜き治具を用いて、前記成形板挟持工程と、前記キャップ挟持工程と、前記分離工程と、前記埋没工程と、を行っても良い。
(7)別の実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法では、好ましくは、前記貫通孔を有する前記成形板を金型内に配置する配置工程と、前記キャップを製造するための硬化性組成物を前記金型内に供給する第2供給工程と、前記金型内にて前記硬化性組成物を硬化する第2硬化工程と、を経て二色成形により前記成形体を製造した後、前記打ち抜き治具を用いて、前記成形板挟持工程と、前記キャップ挟持工程と、前記分離工程と、前記埋没工程と、を行っても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造現場または販売先での作業において作業の省力化を可能とするキャップ付きキャリア部材およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の斜視図および当該斜視図のA-A線断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のキャップ付きキャリア部材から製造されるキャップを押釦スイッチ用部材に装着した状態の一例の断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図1のキャップ付きキャリア部材を製造する前の状態である成形体の斜視図、当該斜視図のB-B線断面図および当該断面図中の領域Cの拡大図を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法の主な工程を示す。
【
図5】
図5は、この実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法の一部工程を図示する。
【
図6】
図6は、
図4のフローに先立ち、成形体を製造する主な工程のフローを示す。
【
図7】
図7は、
図3の成形体と異なる成形体の
図3のB-B線断面図と同視の断面図を示す。
【
図8】
図8は、
図7の成形体の製造工程のフローおよびその後のキャップ付きキャリア部材の製造フローを示す。
【
図10】
図10は、
図3の成形体の変形例1における
図3と同様のB-B線断面図および当該断面図中の領域Dの拡大図を示す。
【
図11】
図11は、
図3の成形体の変形例2における
図3と同様のB-B線断面図および当該断面図中の領域Eの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
1.キャップ付きキャリア部材
最初に、一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の斜視図および当該斜視図のA-A線断面図を示す。
図2は、
図1のキャップ付きキャリア部材から製造されるキャップを押釦スイッチ用部材に装着した状態の一例の断面図を示す。
【0012】
キャップ付きキャリア部材1は、複数個の押釦スイッチ用部材6をそれぞれ被覆可能な複数個のキャップ3と、厚さ方向(
図1に示す上下方向)に貫通する貫通孔20を有する成形板2と、を備える。キャップ3は、押釦スイッチ用部材6のキートップ61側から押釦スイッチ用部材6の押圧方向(
図2の下方向)先端側へ向かって装着可能に構成されている。キャップ3は、押釦スイッチ用部材6の押圧方向先端側を被覆し、押釦スイッチ用部材6を装着するための第1開口部40を有する鍔部31と、鍔部31より径を小さくしてキートップ61側を被覆する頭部33と、鍔部31と頭部33とを連結する胴部32と、を備える。鍔部31の厚さ方向の一部若しくは全部は、貫通孔20の内壁との摩擦抵抗若しくは当該内壁からの押力により貫通孔20に埋没されている。頭部33は、貫通孔20から突出している。また、頭部33は、好ましくは、キャップ3が押釦スイッチ用部材6に装着されたときに、押釦スイッチ用部材6の少なくともキートップ61側端部を突出させるための第2開口部42を有する。なお、キャップ付きキャリア部材1において、1個のキャップ3が1個の貫通孔20に埋没していても良い。
【0013】
キャップ付きキャリア部材1は、その構成材料に制約はないが、好ましくは、ゴム状弾性体、樹脂あるいは金属にて主に構成され、より好ましくはゴム状弾性体にて主に構成されている。キャップ付きキャリア部材1は、1種類の材料あるいは2種以上の材料から構成されていても良い。例えば、キャップ付きキャリア部材1は、ゴム状弾性体中に、導電性の付与あるいは補強を目的としたフィラーを分散させた部材でも良い。この実施形態において、キャップ3と成形板2とは、好ましくは、同じ材料で形成されている。しかし、キャップ3と成形板2とは、異なる材料で構成されていても良い。キャップ3と成形板2とは、同じ弾性率を有していても良い。一方、キャップ3と成形板2とは、同種の材料であるか異なる材料であるかを問わず、互いに異なる弾性率を有していても良い。例えば、キャップ3は、成形板2よりも高弾性率を有していても良い。その逆に、成形板2は、キャップ3よりも高弾性率を有していても良い。
【0014】
キャップ付きキャリア部材1をゴム状弾性体にて形成する場合には、ゴム状弾性体として、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムの1種若しくは任意の2種以上を例示できる。上記ゴム状弾性体の中では、特に、シリコーンゴムまたはウレタンゴムが好ましい。
【0015】
キャップ付きキャリア部材1を樹脂にて形成する場合には、樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの如何なる樹脂でも選択できるが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることができる。上記樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメタクリルスチレン樹脂、ブタジエン樹脂の1種若しくは任意の2種以上を例示できる。上記樹脂の中では、特に、ポリカーボネート樹脂あるいはポリエステル樹脂が好ましい。
【0016】
キャップ付きキャリア部材1を金属にて形成する場合には、金属として、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄、ステンレススチール、銅、銀、金の1種若しくは任意の2種以上を例示できる。上記金属の中では、特に、アルミニウムまたはステンレススチールが好ましい。
【0017】
キャップ付きキャリア部材1は、成形板2をキャップ3のキャリア(運ぶ手段)として利用する部材である。この実施形態では、成形板2は、9個の貫通孔20を備え、9個のキャップ3を保持している。すなわち、貫通孔20の数は、キャップ3の数と同一である。しかし、貫通孔20の数は、キャップ3の数より多くても良い。また、キャップ3および貫通孔20の各個数は、9個に限定されず、2個以上、例えば、3~8個、あるいは10個以上でも良い。
【0018】
キャップ3は、好ましくは、防水、防塵および/または防食等の目的として、押釦スイッチ用部材6の少なくとも一部を覆うキャップである。押釦スイッチ用部材6は、好ましくは、電子機器等の筐体80の孔82から少なくともキートップ61の天面部分が露出するように筐体80に組み込まれている。この実施形態では、押釦スイッチ用部材6は、キートップ61側の所定領域が孔82から突出するように筐体80に組み込まれている(
図2を参照)。
【0019】
この実施形態において、押釦スイッチ用部材6は、略半球形状のキートップ61と、キートップ61から押圧方向(
図2の下方向)側へ突出するプッシャー部63と、を備える。押釦スイッチ用部材6は、好ましくは、プッシャー部63の押圧方向側(
図2の下側)の面に固定される導電性の可動接点65をさらに備える。可動接点65は、好ましくは、筐体80において可動接点65よりも押圧方向に配置される固定接点68に電気的に接続可能としている。押釦スイッチ用部材6は、好ましくは、側面の周方向に沿って刻設された一筋の溝部62が形成されている。この実施形態において、溝部62は、押釦スイッチ用部材6のキートップ61近傍の側面を周回している。なお、可動接点65は、押釦スイッチ用部材6にとって必須の部材ではない。例えば、プッシャー部63がメタルドームを押下し、メタルドームの直下に配置された固定接点68を導通させるようにしても良い。また、押釦スイッチ用部材6は、可動接点65に代えて、プッシャー部63と可動接点65とを連結する連結部材を、プッシャー部63の押圧方向側の面に備えていても良い。この場合、押釦スイッチ用部材6は、プッシャー部63の押圧方向の移動に伴い、連結部材を介して可動接点65を固定接点65に接触または非接触とすることができる。押釦スイッチ用部材6において、キートップ61およびプッシャー部63の形状および構成材料は特に制約されない。また、固定接点68の個数は特に制約されず、複数備えられていても良い。
【0020】
キャップ3は、好ましくは、押釦スイッチ用部材6のうち孔82から突出する所定領域の少なくとも一部を被覆可能な空間を内部に備える部材である(
図2を参照)。鍔部31は、好ましくは、孔82から突出した当該所定領域のうち押圧方向先端側(
図2の下側)を被覆する。胴部32は、好ましくは、鍔部31と頭部33とを連結するように当該所定領域の側面を被覆する。この実施形態において、胴部32は、外径が鍔部31の外径より小さく、かつ内径が鍔部31の内径と同一となるよう構成される(
図2を参照)。頭部33は、好ましくは、その径(外径および内径)が鍔部31および胴部32の径より小さくなるよう構成され、当該所定領域のうちキートップ61側を被覆する。キャップ3は、頭部33に設けられた第2開口部42からキートップ61の少なくとも一部が突出するように、鍔部31に設けられた第1開口部40から押釦スイッチ用部材6に装着される。より具体的には、キャップ3は、好ましくは、第2開口部42に溝部62が係合し、かつ鍔部31が孔82の縁に係合するように、筐体80および押釦スイッチ用部材6に組み込まれる(
図2を参照)。このように構成されることにより、キャップ3は、筐体80に対して、押釦スイッチ用部材6を押圧方向(
図2の下方向)およびその逆方向(
図2の上方向)に往復可動に保持することができる。なお、キャップ3およびその内部空間の形状は、特に制約されず、装着する押釦スイッチ用部材6の形状等に応じて適宜設計されることが好ましい。例えば、キャップ3は、頭部33から胴部32にかけて湾曲した逆椀形状であっても良い。また、第1開口部40は、少なくとも押釦スイッチ用部材6に装着可能なサイズおよび形状であれば特に制約されないが、平面視にて直径2~5mmの略円形状であることが好ましい。
【0021】
この実施形態では、キートップ61が押圧されていない状態において、可動接点65と固定接点68とは非接触状態を維持している(
図2を参照)。操作者がキートップ61を押圧していくと、キャップ3が弾性変形して可動接点65が固定接点68に接触することにより、スイッチがオン(若しくはオフ)となる。操作者がキートップ61への押圧を解除すると、キャップ3は自身の弾性力によって元の形状に戻るため、押釦スイッチ用部材6は、押圧方向と逆方向へ移動し、初期状態に戻る。この結果、可動接点65は、固定接点68と非接触状態となるため、スイッチがオフ(若しくはオン)となる。なお、キャップ3の弾性変形ではなく、キートップ61が上下方向に往復可動の構造によってスイッチをオン・オフするようにしても良い。
【0022】
この実施形態において、成形板2の貫通孔20は、平面視で略円形の孔である。鍔部31の外側面は、貫通孔20の内壁と面接触している。鍔部31は、平面視にて三角形、四角以上の多角形状の部材でも良い。その場合、貫通孔20は、鍔部31の外側面と面接触可能となるように、鍔部31と同一に、平面視にて多角形状の孔である方が好ましい。しかし、貫通孔20を平面視にて略円形の孔として、平面視にて多角形状の鍔部31を、貫通孔20の内壁に線接触させても良い。
【0023】
キャップ3は、貫通孔20の内壁との摩擦抵抗若しくは当該内壁からの押力により貫通孔20に埋没されている。好ましくは、キャップ3の鍔部31の厚さ方向の一部若しくは全部は、貫通孔20の内壁に接している。この実施形態では、鍔部31の厚さt1は、貫通孔20の深さ(高さでも良い)t2よりも小さい。しかし、厚さt1=深さt2でも良い。また、厚さt1が深さt2より大きくても良いが、厚さt1は、深さt2の2倍以下である方が好ましい。貫通孔20に鍔部31を確実に保持することができるからである。鍔部31は、貫通孔20に完全に入っていても良く、あるいは貫通孔20の少なくとも一方の開口面から突出していても良い。
【0024】
貫通孔20は、好ましくは、その内側に収縮する圧縮力にて鍔部31の外側面を押圧するようにキャップ3を保持する。これを実現する一例としては、成形板2およびキャップ3の少なくとも一方は、ゴム状弾性体である方が好ましい。
【0025】
図3は、
図1のキャップ付きキャリア部材を製造する前の状態である成形体の斜視図、当該斜視図のB-B線断面図および当該断面図中の領域Cの拡大図を示す。
【0026】
キャップ付きキャリア部材1は、
図3の成形体1aから製造される。成形体1aは、9個のキャップ3と、9個の貫通孔20を有する成形板2と、を各貫通孔20の外周縁21にて連接している。ここで、外周縁は、貫通孔20と成形板2の面との境界となる角部をいう。この実施形態では、キャップ3の鍔部31の下端外周面が成形板2の貫通孔20の外周面上に連接している。成形体1aにおいて、キャップ3は、厚さ方向に幅t3の連接部34により成形板2と接続している。
【0027】
キャップ付きキャリア部材1は、キャップ3を成形板2から分離して、分離した鍔部31を強制的に貫通孔20に挿入すると、鍔部31と貫通孔20の内壁との摩擦力により、キャップ3を確実に保持できる。成形体1aをゴム状弾性体にて構成していると、より確実に保持可能である。したがって、キャップ3が貫通孔20から不用意に抜け落ちるリスクを低減できる。
【0028】
2.キャップ付きキャリア部材の製造方法
2.1 製造例1
次に、一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法について説明する。
【0029】
図4は、一実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法の主な工程を示す。
図5は、この実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法の一部工程を図示する。
【0030】
この実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法は、成形体セット工程(ST100)、成形板挟持工程(ST110)、キャップ挟持工程(ST120)、分離工程(ST130)、埋没工程(ST140)および取出工程(ST150)を含む。成形板挟持工程(ST110)とキャップ挟持工程(ST120)とを
図4のフローとは逆順にしても良い。
【0031】
以下、比較的簡易な構造の打ち抜き治具35を用いた製造方法について例示する。以後の説明では、
図5の図面上の上方向を、「上方向」あるいは「上」と称し、
図5の図面上の下方向を、「下」と称する。これは、
図7以降の図においても同様である。
【0032】
図5のキャップ付きキャリア部材1は、成形板2と、キャップ3とを備える成形体1aから、打ち抜き治具35を用いてキャップ3を打ち抜き、キャップ3を成形板2の貫通孔20に埋没させて製造される。打ち抜き治具35は、キャップ3をその厚さ方向にて挟む第1挟持部材36および第2挟持部材39と、成形板2をその厚さ方向にて挟む第3挟持部材37および第4挟持部材38と、を備える。
【0033】
打ち抜き治具35は、キャップ3を1個ずつ打ち抜き後に貫通孔20に埋没させる治具であっても良く、あるいは全てのキャップ3を同時に打ち抜き後に、同時に貫通孔20に埋没する治具でも良い。以下、1個のキャップ3に限定して、キャップ付きキャリア部材の製造方法を説明する。
【0034】
まず、打ち抜き治具35の各構成部材について説明する。第1挟持部材36は、キャップ3を、その下面から上方に向かって押圧可能であって、キャップ3の上面側にある第2挟持部材39との間でキャップ3を上下方向に挟持可能な部材である。第2挟持部材39は、キャップ3を、その上面から下方に向かって押圧可能であって、キャップ3の下面側にある第1挟持部材36との間でキャップ3を上下方向に挟持可能な部材である。第1挟持部材36および第2挟持部材39は、共に、貫通孔20内を挿通可能な円柱部分を備えても良く、あるいは円柱部材そのものであっても良い。
【0035】
第3挟持部材37は、成形体1aの下面側にある略円板状の部材であって、その略中心に、第3挟持部材37の厚さ方向に貫通する穴37aを備える。成形体1aは、成形体1aの貫通孔20を穴37aの位置に合わせるように、第3挟持部材37の上面に載置可能である。貫通孔20および穴37aの形状は、平面視にて、ほぼ同じ径を有する円形である。また、穴37aおよび貫通孔20は、第1挟持部材36の少なくとも先端若しくは全部が挿入可能である。
【0036】
第4挟持部材38は、成形体1aの上面側にある略円板状の部材であって、その略中心に、第4挟持部材38の厚さ方向に貫通する穴38aを備える。穴38aは、キャップ3を挿入可能な大きさである。第4挟持部材38は、穴38aによりキャップ3を囲った状態で、成形板2を第3挟持部材37との間で挟持可能である。穴38aは、穴37aとほぼ同じ径を有する。
【0037】
次に、
図4および
図5に基づいて、この実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造工程の一例について説明する。
【0038】
<成形体セット工程(ST100)>
まず、成形体1aを第3挟持部材37の上面にセットする。この際、成形板2の貫通孔20の位置が第1挟持部材36の突出部の位置に合うように、成形体1aを載置する。
【0039】
<成形板挟持工程(ST110)>
次に、第4挟持部材38を矢印Dの方向に下降させ、第3挟持部材37と第4挟持部材38により成形板2を挟持する。
【0040】
<キャップ挟持工程(ST120)>
次に、第1挟持部材36を矢印Uの方向に上昇させ、かつ第2挟持部材39を矢印Dの方向に下降させ、第1挟持部材36と第2挟持部材39によりキャップ3を挟持する。なお、第1挟持部材36および第2挟持部材39の移動有無および移動方向は、上述の移動に限定されない。
【0041】
<分離工程(ST130)>
次に、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを、第1挟持部材36と第2挟持部材39に対して相対移動させて、キャップ3を成形板2から分離する。ここで、相対移動は、一例として、第1挟持部材36と第2挟持部材39とを共に停止させた状態で、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを、矢印Dの方向に下降させる移動をいう。このような相対移動以外の相対移動の方法として、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを共に停止させた状態で、第1挟持部材36と第2挟持部材39とを矢印Dと反対方向(すなわち、上方向)に移動させても良い。また、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを下降させ、かつ第1挟持部材36と第2挟持部材39とを上昇させても良い。
【0042】
<埋没工程(ST140)>
次に、分離工程の際の相対移動と逆方向への移動により、分離後のキャップ3を、成形板2の貫通孔20に埋没させる。ここで、分離工程の際の相対移動と逆方向への移動とは、一例として、第1挟持部材36と第2挟持部材39とを共に停止させた状態で、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを、矢印Uの方向に上昇させる移動をいう。なお、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを共に停止させた状態で、第1挟持部材36と第2挟持部材39とを下降させても良い。また、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを上昇させ、かつ第1挟持部材36と第2挟持部材39とを下降させても良い。
【0043】
<取出工程(ST150)>
最後に、打ち抜き治具35から、キャップ付きキャリア部材1を取り出す。
【0044】
なお、分離工程(ST130)および埋没工程(ST140)は、以下のように変更実施可能である。分離工程(ST130)では、第1挟持部材36と第2挟持部材39とを停止させた状態で、第3挟持部材37と第4挟持部材38とを共に矢印Dと反対方向(すなわち、上方向)に移動させても良い。この結果、キャップ3は、成形板2の貫通孔20の中に押し込まれ、完全に押し込まれる前に、キャップ3を成形板2から分離することも可能である。その後、第3挟持部材37と第4挟持部材38とをさらに上昇させて、キャップ3を貫通孔20に埋没させる。このように、埋没工程(ST140)では、分離工程(ST130)の際の相対移動の延長により、分離後のキャップ3を貫通孔20に埋没させることも可能である。
【0045】
図6は、
図4のフローに先立ち、成形体を製造する主な工程のフローを示す。
【0046】
成形体1aは、打ち抜き治具35を用いて上述の成形体セット工程(ST100)、成形板挟持工程(ST110)、キャップ挟持工程(ST120)、分離工程(ST130)、埋没工程(ST140)および取出工程(ST150)を行うに先立ち、
図6のST10、ST20およびST30の各工程を経て製造可能である。
【0047】
<第1供給工程(ST10)>
まず、成形体1aを製造可能なキャビティ(空洞若しくは空間という。)を備えた金型内に、硬化後に成形体1aの形態を実現するための硬化性組成物を供給する。例えば、硬化性組成物は、加熱により硬化可能な組成物の他、冷却若しくは室温での放置によって硬化可能な組成物、または光照射若しくは電子線照射によって硬化可能な組成物でも良い。
【0048】
<第1硬化工程(ST20)>
次に、金型内にて硬化性組成物を硬化する。硬化条件は、硬化性組成物の性質によって如何なる条件でも良い。加熱、加熱と加圧、冷却、室温放置、紫外線の照射、電子線の照射などの種々の方法を採り得る。
【0049】
<取出工程(ST30)>
最後に、金型内から、硬化後の成形体1aを取り出す。
【0050】
その後、打ち抜き治具35を用いて、成形体1aからキャップ付きキャリア部材1を製造する。
【0051】
2.2 製造例2
次に、別の実施形態に係るキャップ付きキャリア部材の製造方法について説明する。
【0052】
図7は、
図3の成形体と異なる成形体の
図3のB-B線断面図と同視の断面図を示す。
【0053】
図7の成形体1bは、成形体1aと異なり、成形板2bとキャップ3とをそれぞれ別体として連結された成形体である。成形板2bは、成形体1bの製造に先立ち成形されている。成形体1bの製造の際、金型内に成形板2bをセットして、キャップ3の製造用の硬化性組成物を金型内に供給して、二色成形法によって成形体1bを製造する。
【0054】
成形板2bは、キャップ付きキャリア部材1を購入した購入者が製造者側に返却されたものでも良い。製造者は、返却された成形板2bを利用して、上述の二色成形法により成形体1bを製造した後、打ち抜き治具35を用いてキャップ付きキャリア部材1を製造することも可能である。この結果、成形板2bは、製造者と購入者との間を循環する。したがって、かかる方法は、成形板2bを破棄することなく、エコロジーの観点にも沿う。
【0055】
図8は、
図7の成形体の製造工程のフローおよびその後のキャップ付きキャリア部材の製造フローを示す。
図9は、
図8の成形体の製造工程を断面視にて示す。
【0056】
成形体1bの製造工程について説明する。
【0057】
<配置工程(ST50)>
まず、貫通孔20を有する成形板2bを金型50内に配置する。金型50は、下金型51と上金型52とを型締め可能である。下金型51と上金型52とから形成されるキャビティ53は、成形板2bを配置可能な領域と、キャップ3を成形可能な領域と、を有する。キャビティ53は、好ましくは、金型50の外部に、キャップ3を製造するための硬化性組成物3’を供給可能な供給口54と、エアー抜きの排気口55と、を備える。
【0058】
<第2供給工程(ST60)>
次に、キャップ3を製造するための硬化性組成物3’を金型50内に供給する。
【0059】
<第2硬化工程(ST70)>
次に、金型50内にて硬化性組成物3’を硬化する。この工程では、キャップ3と成形板2bとが連結され、いわゆる二色成形により成形体1bが形成される。
【0060】
<取出工程(ST80)>
最後に、金型50内から、硬化後の成形体1bを取り出す。
【0061】
その後、打ち抜き治具35を用いて、成形体1bからキャップ付きキャリア部材1を製造する。打ち抜き治具35を用いたこのような工程の流れは、前述の成形板挟持工程(ST110)、キャップ挟持工程(ST120)、分離工程(ST130)、埋没工程(ST140)の順の流れと同様である。
【0062】
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0063】
図10は、
図3の成形体の変形例1における
図3と同様のB-B線断面図および当該断面図中の領域D拡大図を示す。
【0064】
変形例1に係る成形体1cは、
図3の成形体1aと異なり、鍔部31が貫通孔20の外周縁(角部)と線接触若しくは薄く極短い皮(連接部34a)で連接している。このような場合であっても、鍔部31と貫通孔20の内壁との摩擦力により、キャップ3を貫通孔20から落下させずに保持可能である。
【0065】
図11は、
図3の成形体の変形例2における
図3と同様のB-B線断面図および当該断面図中の領域Eの拡大図を示す。
【0066】
変形例2に係る成形体1dは、
図3の成形体1aと異なり、鍔部31が成形板2の上面に載っている。より具体的には、鍔部31は、貫通孔20の内壁より外方向に幅t4だけ飛び出している。言い換えると、鍔部31の外径は貫通孔20の内径よりも2×t4だけ大きい。よって、成形体1dにおいて、キャップ3は、径方向に幅t4の連接部34bにより成形板2と連接している。この場合、鍔部31と成形板2とが分離した際には、鍔部31の外径は貫通孔20の内径より大きくなる。キャップ3を成形板2から分離して、分離した鍔部31を強制的に貫通孔20に挿入すると、貫通孔20が元の大きさに戻る方向に、鍔部31を押圧する。このため、成形板1dから製造されるキャップ付きキャリア部材1は、キャップ3をより確実に保持でき、キャップ3が貫通孔20から不用意に抜け落ちるリスクをさらに低減できる。
【0067】
第1挟持部材36、第2挟持部材39、第3挟持部材37および第4挟持部材38は、全て、外部の動力によって駆動可能でも良く、これらの内の一部のみが外部の動力によって駆動可能でも良い。外部の動力は、油圧、モータ、手動などの如何なる動力をも含む。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば、キャップを製造現場あるいは市場にて持ち運ぶ際に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1・・・キャップ付きキャリア部材、1a,1b,1c,1d・・・成形体、2,2b・・・成形板、3・・・キャップ、3’・・・硬化性組成物、6・・・押釦スイッチ用部材、20・・・貫通孔、21・・・外周縁、31・・・鍔部、32・・・胴部、33・・・頭部、34,34a,34b・・・連接部、35・・・打ち抜き治具、36・・・第1挟持部材、37・・・第3挟持部材、37a,38a・・・穴、38・・・第4挟持部材、39・・・第2挟持部材、40・・・第1開口部、42・・・第2開口部、50・・・金型、61・・・キートップ。