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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】積層型冷却器のプレートの識別構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240222BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240222BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20240222BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
F28F3/00 301Z
F28F3/08 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020553321
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019041001
(87)【国際公開番号】W WO2020080502
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018197990
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】文後 卓也
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-333064(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131240(WO,A1)
【文献】特開2010-190515(JP,A)
【文献】特開2008-171840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
F28F 3/00
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面が平面からなる複数のプレートを有し、各プレートには、その板厚方向に多数の小孔(1)が穿設されると共に、その小孔(1)の配置が少なくとも一枚置きに異なる第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の交互の積層体からなる積層型冷却器であって、
第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の各外周縁が露出する積層面の幅方向の中心線(C)に対して一方側に片寄った箇所で、第1プレート(2a)に同一の識別凹部(3)または同一の識別凸部(4)が設けられ、または、第2プレート(2b)に同一の識別凹部(3)または同一の識別凸部(4)が設けられ、
それら同一の識別凹部(3)または同一の識別凸部(4)は、第1プレート(2a)毎にまたは第2プレート(2b)毎に積層面の幅方向において同一位置に露出し、
第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の双方に識別凹部(3)または識別凸部(4)が設けられた場合、第1プレート(2a)に設けられた識別凹部(3)または識別凸部(4)と第2プレートに設けられた識別凹部(3)または識別凸部(4)とは、形状と、積層面の幅方向における位置と、のうちの少なくとも一方が異なり、
第1プレート(2a)と第2プレート(2b)とが前記表面と前記裏面を合わせて交互に積層された状態で、積層方向と直交する方向から積層面を見た場合に、それら識別凹部(3)または識別凸部(4)により積層方向に定形の模様(5)が積層面の幅方向の中心線(C)に対して一方側に片寄った箇所に形成される、
ことを特徴とする積層型冷却器のプレート識別構造。
【請求項2】
表面および裏面が平面からなる複数のプレートを有し、各プレートには、その板厚方向に多数の小孔(1)が穿設されると共に、その小孔(1)の配置が少なくとも一枚置きに異なる第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の交互の積層体からなる積層型冷却器であって、
第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の各外周縁が露出する積層面の幅方向の中心線(C)に対して一方側に片寄った箇所で、第1プレート(2a)に同一の識別凹部(3)または同一の識別凸部(4)が設けられ、または、第2プレート(2b)に同一の識別凹部(3)または同一の識別凸部(4)が設けられ、
それら同一の識別凹部(3)または同一の識別凸部(4)は、第1プレート(2a)毎にまたは第2プレート(2b)毎に積層面の幅方向において同一位置に露出し、
第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の双方に識別凹部(3)または識別凸部(4)が設けられた場合、第1プレート(2a)に設けられた識別凹部(3)または識別凸部(4)と第2プレートに設けられた識別凹部(3)または識別凸部(4)とは、形状が異なり、
第1プレート(2a)と第2プレート(2b)とが前記表面と前記裏面を合わせて交互に積層された状態で、積層方向と直交する方向から積層面を見た場合に、それら識別凹部(3)または識別凸部(4)により積層方向に定形の模様(5)が積層面の幅方向の中心線(C)に対して一方側に片寄った箇所に形成される、
ことを特徴とする積層型冷却器のプレート識別構造。
【請求項3】
積層型冷却器の隣合う第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の前記識別凹部(
3)または識別凸部(4)の位置が、プレートの周方向に一枚置きに互いに異なり、それ
によって前記模様(5)が千鳥模様または矩形波状の模様(5a)を形成する請求項1または2に記載の積層型冷却器のプレート識別構造。
【請求項4】
積層型冷却器の隣合う第1プレート(2a)と第2プレート(2b)の一方のみに前記
識別凹部(3)または識別凸部(4)が形成され、他方にはそれが存在しない請求項1または2に記載の積層型冷却器のプレート識別構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の小孔が形成された複数のプレートの積層体からなる冷却器であって、各プレートの表面・裏面の取り違いを防止可能な識別構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の液冷ヒートシンクは、平坦なプレートに多数の孔が平面的に形成され、その孔の位置が一枚毎に異なったものを選択して蛇行状の流路を形成する積層体を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-30713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプレートの積層体を有する冷却器では、平面形状の異なる複数のプレートを積層するとき、異なったプレートを順次、積層し、または同一のプレートの向きを変えて交互に積層することにより蛇行流路を形成している。
ところが、プレートの形状及び向き、さらには裏表を目視して積層することは煩雑であると共に、各プレートの積層の組違いが起こる欠点があった。
そこで本発明は、プレートを積層した状態で、プレート積層体の外周から積層の良し悪しが容易に判定できる識別構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、表面および裏面が平面からなる複数のプレートを有し、各プレートには、その板厚方向に多数の小孔1が穿設されると共に、その小孔1の配置が少なくとも一枚置きに異なる第1プレート2aと第2プレート2bの交互の積層体からなる積層型冷却器であって、
第1プレート2aと第2プレート2bの各外周縁が露出する積層面で、積層方向の少なくとも一枚置きの第1プレート2aまたは第2プレート2bに、同一の識別凹部3または同一の識別凸部4が、積層方向の同一位置に露出し、それらが積層方向に定形の模様5を形成し且つ、その模様5の位置が積層面の幅方向の中心線Cに対して、一方側に片寄って形成されたことを特徴とする積層型冷却器のプレート識別構造である。
請求項2に記載の本発明は、積層型冷却器の隣合う第1プレート2aと第2プレート2bの前記識別凹部3または識別凸部4の位置が、プレートの周方向に一枚置きに互いに異なり、それによって前記模様5が千鳥模様または矩形波状の模様5aを形成する請求項1に記載の積層型冷却器のプレート識別構造である。
請求項3に記載の本発明は、積層型冷却器の隣合う第1プレート2aと第2プレート2bの一方のみに前記識別凹部3または識別凸部4が形成され、他方にはそれが存在しない請求項1に記載の積層型冷却器のプレート識別構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1プレート2aと第2プレート2bの積層面で、積層方向の少なくとも一枚置きに、同一の識別凹部3または同一の識別凸部4が、積層方向に露出して、それらが定形の模様5を形成し且つ、その模様5の位置が積層面の幅方向の中心線Cに対して、一方側に片寄って形成されたものである。
そのため、積層面の模様から、交互に第1プレート2aと第2プレート2bが配置されていることを確認でき、両者の積層位置の間違いを予防できる。
それと共に、模様が中心線Cに対して、一方側に片寄って形成されるので、プレートの表面側と裏面側との取り違いを容易に発見できる。つまり、各プレートで、同一の識別凹部3または同一の識別凸部4が、中心線Cに対して、一方側に偏って形成されていることになるので、積層されたプレートのうちの1枚が取り違えていると、識別凹部3または識別凸部4が中心線Cの他方側に現れるため、冷却器の組違いを容易に発見できる。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、第1プレート2aと第2プレート2bの前記識別凹部3または識別凸部4の位置が、各プレートで互いに異なり、それにより模様5が積層方向に千鳥模様または矩形波状の模様5aに形成されたものである。
そのため、各プレートの表面側と裏面側との取り違えを、千鳥模様または矩形波状の模様5aの形状から容易に発見できる。
請求項3に記載の発明は、上記構成において、隣合う第1プレート2aと第2プレート2bの一方のみに識別凹部3または識別凸部4を形成したものである。
そのため、少なくとも、識別凹部3または識別凸部4を形成したプレートの表面側と裏面側との取り違えを容易に発見できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の積層型冷却器のプレート識別構造の要部斜視図。
図2は同識別構造を有する熱交換器の分解斜視図。
図3図1におけるIII-III線で横断した積層型冷却器の内部構造を示す説明図。
図4は本発明の第2実施例における識別構造の要部斜視図。
図5は本発明の第3実施例における識別構造の分解斜視図。
図6は本発明の第4実施例における識別構造の要部斜視図。
図7は本発明の第5実施例における識別構造の要部斜視図。
図8は本発明の第6実施例における識別構造の要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の各実施の形態につき説明する。
【実施例1】
【0009】
図1図3は本発明の積層型冷却器のプレートの識別構造の第1実施例を示し、図1はその要部斜視図、図2は同分解斜視図、図3図1のIII-III線における冷却器の要部横断面図である。
この積層型冷却器の要部は、図1に示す如く、偏平な複数のプレートの積層体からなり、各プレートは板厚方向に多数の小孔1が穿設されると共に、その小孔1の配置が少なくとも一枚置きに異なる第1プレート2aと第2プレート2bとの交互の積層体からなる。
積層体の横断面は、図3に示す如く、第1プレート2aと第2プレート2bの小孔1が平面上で異なり、積層体の内部を流通する冷媒15が積層体の積層方向に蛇行するように配置される。
なお、各プレートの平面は、平坦な面、または半抜きダボを有する略平坦な面とすることができる。
この例では、一枚置きに第1プレート2aと第2プレート2bが積層され、それら全体が皿状に形成されたカッププレート7に収納されると共に、その上面に上蓋8が止着される。被冷却体6は、この上蓋8上に取付けることができる。
そして、カッププレート7に突設された一対のパイプ14の一方側から冷媒15がカッププレート7内に流入し、各第1プレート2a,第2プレート2bを流通して、他方のパイプ14よりそれが排出される。そして、被冷却体6からの熱を冷媒15で吸収する。
(本発明の特徴)
ここにおいて第1実施例の特徴は、第1プレート2a,第2プレート2bの積層体からなるコア16の長手方向端部に、各プレートの種類を区別する識別構造が形成されている点である。この例では、識別構造として、識別凹部3を各プレートの端部に設ける。
各第1プレート2aの端部には、その幅方向の中心線Cに対して、一方寄りに第1識別凹部3aが欠切されている。また、各第2プレート2bの端部にも、その幅方向の中心線Cに対して、一方寄りに第2識別凹部3bが欠切されている。それらのプレートが正常に積層されると、その積層体の側面(積層面)に定形の模様5が形成される。そして、図1に示す如く、その模様5は積層面の幅方向の中心線Cに対して、一方側に片寄って配置される。
この例では、図1及び図2に示す如く、第1識別凹部3aは略正方形に、第2識別凹部3bは長方形に形成されている。そして、第1プレート2aと第2プレート2bとが交互に正確に積層された場合には、第1識別凹部3aと第2識別凹部3bの積層面には、側面視で正確な矩形波状の模様5aに配列される。
第1プレート2aと第2プレート2bの積層の間違え、又は表面側と裏面側の間違えが生じると、その模様5は正確な矩形波状の模様5aにならない。それによって、各プレートの組み間違いを発見できる。
この例の冷却器は、カッププレート7にコア16を挿入後、上蓋8が止着される。
なお、各プレートは互いに接触する少なくとも一方の表面にろう材が被覆又は塗布されており、全体が高温の炉内で一体にろう付される。その後に、被冷却体6を上蓋8上に取付ける。被冷却体6はカッププレート7の下面側に取付けても良い。
また、この例においては、図1に示すように、幅方向に離間して一対の位置決め凹部12を欠切しておき、そこに位置決め爪11を嵌着できるようにしておくことができる。また、図2に示すように、上蓋8の外周にも爪部が折り曲げられ、それがカッププレート7の欠切部に嵌入できるようにすることができる。
【実施例2】
【0010】
次に、図4は本発明の第2実施例の積層型冷却器のプレートの識別構造の要部斜視図である。
この例が図1の実施例と異なる点は、第1実施例では識別構造として識別凹部3を採用したが、第2実施例では識別構造として識別凸部4を採用する。具体的には、図4に示すように、各第1プレート2aに第1識別凸部4aが設けられ、各第2プレート2bに第2識別凸部4bが設けられ、それらが交互に積層される構造をとる。この積層体が正確に積層されると、図4に示す如く、その積層面に側面視で矩形波状の模様5aに配列される。
この第2実施例においても、コア16が図2におけるカッププレート7に収納され、その上面側に上蓋8が被着される。
【実施例3】
【0011】
次に、図5は本発明の第3実施例の積層型冷却器のプレートの識別構造の要部分解斜視図である。
この実施例は、上下一対の底板プレート9,天板プレート10との間に、第1プレート2a、第2プレート2bが交互に配置されたものである。各プレートは、その外周に枠部2dが形成され、その枠部2d内に溝部2cが形成されると共に、その溝部2cの内側にコア16を形成する多数の孔が穿設されたものである。つまり、各プレートは2a、2bは、枠部2dとコア16とが一体的に形成されている。また、第1プレート2aと第2プレート2bでは、第1実施例と同様に、小孔1の位置が幅方向に異なっている。
さらに、図5において、各第1プレート2aの長手方向の一端部に、第1識別凹部3aが形成され、各第2プレート2bの長手方向の一端部に、第2識別凹部3bが形成され、それらが積層されて積層体が形成され、その枠部2dからなる積層面に矩形波状の模様5aが形成される。そして、図5に示す如く、その模様5は積層面の幅方向の中心線Cに対して、一方側に片寄って配置される。
上述のように、この例では、全体をろう付した後に、その冷却器の側面から第1プレート2a,第2プレート2bの組み間違えを見つけるができる。
なお、枠部2dからなる積層面に現れる模様5の位置は、長手方向の一端部に限らず、幅方向の一端部に現れても良い。
【実施例4】
【0012】
次に、図6は本発明の第4実施例の識別構造の要部斜視図であり、この例は、各第1プレート2aの第1識別凹部3aと各第2プレート2bの第2識別凹部3bとが、それらのプレートの幅方向の中心線Cに対して異なった位置に配置されている。それらのプレートの積層体の積層面には側面視で千鳥模様5aが形成される。
このような千鳥模様5aであっても、第1プレート2aと第2プレート2bとの取り違えを発見できる。さらに、この実施例の場合、第1プレート2a,第2プレート2bの中心線Cに対する位置の違いを発見することができる。
【実施例5】
【0013】
次に、図7は本発明の第5実施例の識別構造の要部斜視図であり、この例は、第1プレート2aには第1識別凹部3aが形成されると共に、第2プレート2bには第2識別凹部3bと共に第3識別凹部3bbが形成されている。
このようにすることにより、第1プレート2aと第2プレート2bとの取り違えをさらに容易に発見できる。
【実施例6】
【0014】
次に、図8は本発明の第6実施例の識別構造の要部斜視図であり、この例では、第2プレート2bのみに第2識別凹部3bが形成され、第1プレート2aにはその端部に凹部が存在しない。
このようにすることにより、少なくとも第2プレート2bの中心線Cに対する積層方向の取り違えを防止できる。
【符号の説明】
【0015】
1 小孔
2a 第1プレート
2b 第2プレート
2c 溝部
2d 枠部
3 識別凹部
3a 第1識別凹部
3b 第2識別凹部
3bb 第3識別凹部
4 識別凸部
4a 第1識別凸部
4b 第2識別凸部
5 模様
5a 千鳥模様または矩形波状の模様
6 被冷却体
7 カッププレート
8 上蓋
9 底板プレート
10 天板プレート
11 位置決め爪
12 位置決め凹部
13 フランジ部
14 パイプ
15 冷媒
16 コア
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8