(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両のためのトランスミッション装置及びハイブリッド車両を駆動するための方法
(51)【国際特許分類】
B60K 6/543 20071001AFI20240222BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240222BHJP
B60K 6/365 20071001ALI20240222BHJP
F16H 3/72 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B60K6/543
B60K6/442 ZHV
B60K6/365
F16H3/72 A
(21)【出願番号】P 2020554176
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 AT2019060114
(87)【国際公開番号】W WO2019191797
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-28
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS-LIST-PLATZ 1,A-8020 GRAZ,AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーナー,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シェルクフーバー,クリストフ
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105495(JP,A)
【文献】特開2011-079500(JP,A)
【文献】特開2017-047813(JP,A)
【文献】特開2014-211213(JP,A)
【文献】特開2009-120043(JP,A)
【文献】米国特許第09840140(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/543
B60K 6/442
B60K 6/365
F16H 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両のためのトランスミッション装置(10)であって、
ハウジング(11)を有し、
トランスミッション入力軸(12)及び少なくとも一つのトランスミッション出力軸(
13)を有し、
第一太陽歯車(zs1)、第一リングギア(zr1)、及び、当該第一太陽歯車(zs
1)と当該第一リングギア(zr1)とに歯車噛合する第一遊星歯車列(zp1)のため
の第一遊星キャリア(c1)を含む第一遊星歯車機構(PG1)を有し、
第二太陽歯車(zs2)、第二リングギア(zr2)、及び、当該第二太陽歯車(zs
2)と当該第二リングギア(zr2)とに歯車噛合する第二遊星歯車列(zp2)のため
の第二遊星キャリア(c2)を含む第二遊星歯車機構(PG2)を有し、
前記トランスミッション入力軸(12)は、前記第一遊星キャリア(c1)に回転不可
能に接続されており、前記第一リングギア(zr1)及び前記第二リングギア(zr2)
は、恒久的に共に及び前記トランスミッション出力軸(13)に回転不可能に接続されて
おり、
第一電動機(E1)及び第二電動機(E2)を有し、
当該第一電動機(E1)は恒久的に前記第一太陽歯車(zs1)に駆動接続されており
、
当該第二電動機(E2)は、少なくとも一つの作動モードにおいて前記第二太陽歯車(
zs2)に駆動接続されており、
前記第一太陽歯車(zs1)は、第一切替要素(S1)を介して前記ハウジング(11
)に接続可能であるトランスミッション装置において、
前記第二遊星キャリア(c2)は前記ハウジング(11)に固定的に接続されており、
前記第二電動機(E2)は―好ましくは少なくとも一つの変速段(G1、G2)を介し
て―前記第二太陽歯車(zs2)に駆動接続されている又は駆動接続可能であり、
緊急モード(LH)において、前記トランスミッション入力軸(12)は、緊急切替要
素(SE)を介して前記第一太陽歯車(zs1)又は
前記第二太陽歯車(zs2)に駆動接続可能であること、または、
前記トランスミッション装置(10)の緊急モード(LH)において、前記トランスミ
ッション入力軸(12)は、緊急切替要素(SEM)を介して、前記第一遊星キャリア(
c1)に対する接続に加えて、選択的に第一順方向変速段(GV)を介して前記第二太陽
歯車(zs2)に駆動接続可能である、又は、―回転方向を逆にする―逆方向変速段(G
R)を介して前記第二太陽歯車(zs2)に駆動接続可能であることを特徴とするトラン
スミッション装置(10)。
【請求項2】
前記第二電動機(E2)は、第二切替要素(S2)を介して―好ましくは選択的に第一
変速段(G1)又は第二変速段(G2)を介して―前記第二太陽歯車(zs2)に駆動接
続可能であることを特徴とする、請求項1に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項3】
前記トランスミッション入力軸(12)は―好ましくは第一切替要素(S1)を介して
―前記ハウジング(11)に接続可能であることを特徴とする、請求項1
または2に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項4】
前記トランスミッション出力軸(13)は、前記トランスミッション入力軸(12)に
対して同軸
上に配置されていることを特徴とする、請求項1から
3のうちいずれか一項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項5】
前記第一電動機(E1)及び前記第二電動機(E2)は、互いに対して軸方向に変位し
て、好ましくは前記トランスミッション入力軸(12)及び/又は前記トランスミッショ
ン出力軸(13)に対しても軸方向に変位して配置されていることを特徴とする、請求項
1から
4のうちいずれか一項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項6】
前記トランスミッション入力軸(12)は―好ましくは前記変速段(G1、G2)を介
して―パワーテイクオフ軸(20)に駆動接続されている又は駆動接続可能であることを
特徴とする、請求項1から
5のうちいずれか一項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項7】
パワーテイクオフ軸(20)は、切替要素(S3)を介して―好ましくは変速段G3を介して―前記トランスミッション入力軸(12)に駆動接続されている又は駆動接続
可能であり、又は、―好ましくは変速段(G4)を介して―前記第二電動機(E2)に駆
動接続されている又は駆動接続可能であることを特徴とする、請求項1から
6のうちいずれか一項に記載のトランスミッション装置(10)。
【請求項8】
前記第一遊星歯車
機構(PG1)のみならず前記第二遊星歯車
機構(PG2)もが
マイナストランスミッションとして形成されていることを特徴とする、請求項1から
7のうちいずれか一項に記載のトランスミッション装置。
【請求項9】
請求項1から
8のうちいずれか一項に記載のトランスミッション装置(10)を有するハイブリッド車両を駆動する方法であって、
前記ハイブリッド車両のオーバードライブモード(OD)において前記第一電動機(E
1)は不動化され、
その際、前記第一太陽歯車(zs1)は第一切替要素(S1)を介して前記ハウジング
(11)に接続され
、
少なくとも緊急モード(LH)において、前記トランスミッション入力軸(12)は前
記第一太陽歯車(zs1)又は前記第二太陽歯車(zs2)に駆動接続されること、または、
前記トランスミッション装置(10)の緊急モード(LH)において、前記トランスミ
ッション入力軸(12)は、緊急切替要素(SEM)を介して、前記第一遊星キャリア(c1)に対する接続に加えて、選択的に第一順方向変速段(GV)を介して前記第二太陽歯車(zs2)又は-回転方向を逆にする-逆方向変速段(GR)を介して前記第二太陽歯車(zs2)に駆動接続されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記オーバードライブモード(OD)において、前記第二電動機(E2)は
第二切替要素(S2)を介して駆動
系(19)から分離されることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両のためのトランスミッション装置であって、ハウジングを有し、トランスミッション入力軸及び少なくとも一つのトランスミッション出力軸を有し、第一太陽歯車、第一リングギア、及び、当該第一太陽歯車と当該第一リングギアとに歯車噛合する第一遊星歯車列のための第一遊星キャリアを含む第一遊星歯車機構を有し、第二太陽歯車、第二リングギア、及び、当該第二太陽歯車と当該第二リングギアとに歯車噛合する第二遊星歯車列のための第二遊星キャリアを含む第二遊星歯車機構を有し、前記トランスミッション入力軸は、前記第一遊星キャリアに回転不可能に接続されており、前記第一リングギア及び前記第二リングギアは、恒久的に共に及び前記トランスミッション出力軸に回転不可能に接続されており、第一電動機及び第二電動機を有し、当該第一電動機は恒久的に前記第一太陽歯車に駆動接続されており、当該第二電動機は、少なくとも一つの作動モードにおいて前記第二太陽歯車に駆動接続されており、前記第一太陽歯車は、第一切替要素を介して前記ハウジングに接続可能であるトランスミッション装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、前述の類のランスミッション装置を有するハイブリッド車両を駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
独国特許出願公開第102013113344号明細書より、第一及び第二遊星歯車機構を有するハイブリッド電動車両のための電力伝達システムが公知であり、当該遊星ランスミッション列のうち一方がマイナストランスミッションとして他方がプラストランスミッションとして形成されている。ここで第一電動機と第二電動機がトランスミッション入力軸に対して同軸状に配置されており、当該第一電動機は当該第一遊星歯車機構の太陽歯車に対して固定的に接続されており、当該第二電動機は当該第二遊星歯車機構の太陽歯車に対して固定的に接続されている。両遊星歯車機構の各遊星キャリアは、摩擦クラッチを介して互いに対して回転接続可能である。当該第一遊星歯車機構の当該太陽歯車は第一摩擦ブレーキを介して、また当該第二遊星歯車機構の当該遊星キャリアは第二摩擦ブレーキを介して保持され得る。
【0004】
独国特許出願公開第102013226472号明細書において、第一遊星歯車列と第二遊星歯車列とを有するハイブリッド車両のための電力伝達システムが説明されている。当該第一遊星歯車列の遊星キャリアは、内燃機関の駆動軸と接続されている。両遊星歯車列の各リングギアは、互いに接続されており、駆動ユニットに対して作用する。当該第二遊星歯車列の遊星キャリアは、ブレーキによって保持可能である。当該第一遊星歯車列の当該遊星キャリアは、クラッチを介して当該各リングギアと接続可能である。さらに当該1の遊星歯車列の太陽歯車が第一電動機と、また当該2の遊星歯車列の太陽歯車が第二電動機と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102013113344号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013226472号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冒頭で述べた類のトランスミッション装置に端を発して、本発明の目的は、可能な限りシンプルな方法で、少ない設置スペースを占有しながら、多くの作動モードを含む高い機能性を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、これは、前記第二遊星キャリアは前記ハウジングに固定的に接続されており、前記第二電動機は―好ましくは少なくとも一つの変速段を介して―前記第二太陽歯車に駆動接続されている又は駆動接続可能であることによって達成される。
【0008】
前記第二電動機は、第二切替要素を介して―好ましくは選択的に第一又は第二変速段を介して―前記第二太陽歯車に駆動接続可能であることが好ましい。
【0009】
本発明の、構造的にシンプルでコンパクトである実施形態において、前記第一遊星歯車列のみならず前記第二遊星歯車列もがシンプルなマイナストランスミッションとして形成されている。
【0010】
例えば、各電動機の制御に故障が発生した場合に、いわゆる「リンプホーム」機能を有効にするために、少なくとも前記トランスミッション装置の緊急モードにおいて、前記トランスミッション入力軸は、緊急切替要素を介して前記第一太陽歯車又は前記第一太陽歯車に駆動接続可能であることが特に好ましい。故障の場合に、機能を低下させた状態での継続運転を可能にするために、緊急モードにおいて当該トランスミッション入力軸が当該第一太陽歯車又は第二太陽歯車に駆動接続される。
【0011】
本発明の別実施形態において、前記トランスミッション装置の緊急モードにおいて、前記トランスミッション入力軸は、緊急切替要素を介して、前記遊星キャリアに対する接続に加えて、選択的に第一順方向変速段を介して前記第二太陽歯車又は―回転方向を逆にする―逆方向変速段を介して前記第二太陽歯車に駆動接続可能である。
【0012】
前記トランスミッション出力軸は、前記トランスミッション入力軸に対して同軸状に配置されていると極めて省スペースである構造が可能となる。
【0013】
本発明の別実施形態において、前記第一電動機及び前記第二電動機は、互いに対して軸方向に変位し、かつ、平行に、好ましくは前記トランスミッション入力軸及び/又は前記トランスミッション出力軸に対しても軸方向に変位して配置されている。これにより利用可能な設置スペースの最適に使用することができる。高い回転数を有するコンパクトな電動機を使用することで組み付け空間を小さくし、費用を節約することが可能である。当該電動機は、例えば当該トランスミッション装置の端面の領域に設けることができ、これによりスペースを最適に使用してコンパクトな装置を実現することが可能である。別の利点は、その組み付けが容易なことである。
【0014】
別実施形態において、前記トランスミッション入力軸は―好ましくは前記変速段を介して―パワーテイクオフ軸に駆動接続されている又は駆動接続可能である。これにより、必要に応じて、パワーテイクオフや外部装置を駆動することが可能となる。
【0015】
その他の各別実施形態において、前記パワーテイクオフ軸は、切替要素を介して―好ましくは変速段を介して―前記トランスミッション入力軸に駆動接続されている又は駆動接続可能であり、又は、―好ましくは変速段を介して―前記第二電動機に駆動接続されている又は駆動接続可能である。これにより、必要に応じて、パワーテイクオフや外部装置を機械的又は電気的に駆動することが可能となる。
【0016】
本発明の範囲において、前記ハイブリッド車両のオーバードライブモードにおいて前記第一電動機は不動化され、その際、前記第一太陽歯車は第一切替要素を介して前記ハウジングに接続されている。オーバードライブモードとは、所定の速度に必要なモータ回転数の低下をもたらす当該トランスミッション装置のオーバードライブと理解される。オーバードライブモードを可能にすることで、特にハイブリッド車両が陸上を走行する場合に、燃料消費、排気、騒音レベルならびにエンジンに対する負担が著しく低減される。損失の最小化のために、前記オーバードライブモードにおいて、前記第二電動機は前記第二切替要素を介して駆動列から分離されることが好ましい。
【0017】
以下に図面において示されて制限するものではない実施形態に基づいて本発明について詳述する。図面において以下のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。
【
図2】本発明の第二実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。
【
図3】本発明の第三実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。
【
図4】本発明の第四実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。
【
図5】本発明の第五実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。
【
図6】本発明の第六実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。
【
図7】本発明の第七実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。及び
【
図8】本発明の第八実施形態における本発明によるトランスミッション装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
同一機能を有する部品には、各実施形態において同一符号が付与されている。
【0020】
図1から
図8にはそれぞれ、ハイブリッド車両のためのトランスミッション装置10が示されている。
【0021】
各トランスミッション装置10は、ハウジング11、トランスミッション入力軸12及び少なくとも一つのトランスミッション出力軸13を有する。当該トランスミッション入力軸12は、クラッチ14を介して内燃機関ICEと接続され得る。当該トランスミッション出力軸13は、当該ハイブリッド車両の各駆動輪15を駆動するのに使用され、ここで符号16は差動装置を示す。ハウジング11内には、第一遊星歯車機構PG1と第二遊星歯車機構PG2とが配置されており、ここで各遊星歯車機構PG1、PG2はシンプルなマイナストランスミッションとして形成されている。
【0022】
第一遊星歯車機構PG1は、第一太陽歯車zs1、第一リングギアzr1、及び、当該第一太陽歯車zs1と当該第一リングギアzr1とに歯車噛合する第一遊星歯車列zp1のための第一遊星キャリアc1を備える。第二遊星歯車機構PG2は、第二太陽歯車zs2、第二リングギアzr2、及び、当該第二太陽歯車zs2と当該第二リングギアzr2とに歯車噛合する第二遊星歯車列zp2のための第二遊星キャリアc2を備える。両リングギアzr1、zr2は、複数部分からなり互いに固定的に接続されている、又は、一体的に構成されている。トランスミッション入力軸12は、第一遊星キャリアc1に回転不可能に接続されている。第一リングギアzr1及び第二リングギアzr2は、恒久的に共に及びトランスミッション出力軸13に回転不可能に接続されている。ハウジング11内に、第一電動機E1及び第二電動機E2が配置されており、当該第一電動機E1は恒久的に第一太陽歯車zs1に駆動接続されており、当該第二電動機E2は、当該トランスミッション装置10の少なくとも一つの作動モードにおいて、第二太陽歯車zs2に駆動接続されている。第二遊星キャリアc2はハウジング11に接続されている。
【0023】
第一太陽歯車zs1は、第一切替要素S1を介してハウジング11に接続可能である。
【0024】
第二電動機E2は、第二太陽歯車zs2に駆動接続され、いくつかの別実施形態において、第二切替要素S2を介して、当該第二太陽歯車zs2に駆動接続可能である。
【0025】
さらに、
図1、
図2及び
図7に示される各トランスミッション装置10は、緊急切替要素SEを有する緊急装置17を備え、当該緊急切替要素を介して、トランスミッション入力軸12は、「リンプホーム」機能の実現のために、中間軸18を介して第一遊星キャリアc1及び第一太陽歯車zs1に駆動接続可能である。
【0026】
さらに、
図3から
図6において示される各トランスミッション装置10は、緊急切替要素SEを有する緊急装置17を備え、当該緊急切替要素を介して、トランスミッション入力軸12は、「リンプホーム」機能の実現のために、中間軸18を介して第二太陽歯車zs2にのみ駆動接続可能である。
【0027】
さらに、
図8において示されるトランスミッション装置10は、緊急切替要素SEMを有する緊急装置17を備え、当該緊急切替要素を介して、トランスミッション入力軸12は、「リンプホーム」機能の実現のために、中間軸18を介して第一遊星キャリアc1と同時に、選択的に―順方向のリンプホームのために―順方向変速段GVを介して第二太陽歯車zs2に駆動接続可能である、又は、―逆方向のリンプホームのために回転方向を逆にする―逆方向変速段GRを介して第二太陽歯車zs2に駆動接続可能である。
【0028】
図1、
図2、
図3、
図5、
図7及び
図8において示される各実施形態において、第一切替要素S1は、三つのスイッチングポジション、すなわちL、M及びRを有し、そのうち左のスイッチングポジションにおいてトランスミッション入力軸12は不動化され、右のスイッチングポジションにおいて第一太陽歯車zs1が固く保持されている。中間ポジションMにおいてはトランスミッション入力軸12も第一太陽歯車zs1も制動されることなく自由に回転可能である。
【0029】
さらに、
図1、
図2、
図3、
図4、
図7及び
図8において各第二切替要素S2が設けられており、当該各第二切替要素も同様に三つのスイッチングポジション、すなわち1、2及びNを有し、前記第二電動機は第一スイッチングポジション1においては第一変速段G1を介して、第二スイッチングポジション2においては第二変速段G2を介して、第二太陽歯車zs2に駆動接続されている。
【0030】
さらに、
図1、
図2及び
図7における各別実施形態において、緊急切替要素SEを有する緊急装置17が設けられており、当該緊急切替要素によって、入力軸12は、遊星キャリアc1に対する接続に加えて、中間軸18を介して第一太陽歯車zs1に駆動接続可能である。緊急切替要素SEは二つのスイッチングポジション、すなわち「OFF」と「ON」とを有し、スイッチングポジション「OFF」においては当該「リンプホーム」機能は非活性化されており、トランスミッション入力軸12と第一太陽歯車zs1との間の直接接続が遮断されている。当該緊急切替要素SEを移動させることにより、第一遊星キャリアc1と同時にトランスミッション入力軸12と第一太陽歯車zs1との間の駆動接続が得られ、したがって当該「リンプホーム」機能が活性化される。当該「リンプホーム」機能の活性化は、例えば各電動機E1、E2の制御に故障が発生した場合に生じ、これにより機能を低下させた状態での継続運転を可能となる。
【0031】
図3から
図6は、本発明による各トランスミッション装置10を示しており、当該各トランスミッション装置は、緊急切替要素SEによって、トランスミッション入力軸12が、中間軸18を介して第一太陽歯車zs1ではなく第二太陽歯車zs2と接続可能である点において、
図1、
図2及び
図7に示される各実施形態と異なる。
図3及び
図4においては、当該「リンプホーム」機能を有効にするために、第二切替要素S2もスイッチングポジション「1」又はスイッチングポジション「2」に切り替えられなければならない。
図5及び
図6における、構造的によりシンプルな実施形態においては、中間軸18及び第二電動機E2は、第二太陽歯車zs2に直接的に駆動接続されており、変速段G1、G2間の選択をするための第二切替要素S2は設けられていない。
【0032】
図8において、本発明による別のトランスミッション装置10が示されており、当該トランスミッション装置は、緊急切替要素SEMによって、トランスミッション入力軸12が、第一遊星キャリアc1と同時に、かつ、中間軸18を介して、選択的に―順方向に対するリンプホームのため(緊急切替要素SEMのポジションLHV)―順方向変速段GVを介して第二太陽歯車zs2に駆動接続可能であり、又は、選択的に―リンプホームの回転方向を逆方向に転換する(緊急切替要素SEMのポジションLHR)―逆方向変速段GRを介して第二太陽歯車zs2に駆動接続可能である点において、
図1から
図7に示される各実施形態と異なる。
【0033】
図3、
図4及び
図8においては、当該「リンプホーム」機能を有効にするために、第二切替要素S2もスイッチングポジション「1」又はスイッチングポジション「2」へと切り替えられなければならない。
図5及び
図6における、構造的によりシンプルな実施形態においては、中間軸18及び第二電動機E2は、第二太陽歯車zs2に直接的に駆動接続されており、変速段G1、G2間の選択をするための第二切替要素S2は設けられていない。
【0034】
図4及び
図6は、さらなる、構造的にシンプルな各別実施形態が示されており、当該各別実施形態において、第一切替要素S1は、二つのスイッチングポジションのみ、すなわち第一太陽歯車zs1及び第一電動機E1が不動化されているスイッチングポジション「R」、及び、第一太陽歯車zs1及び第一電動機E1が自由に回転可能であるスイッチングポジション「M」のみを有する。
【0035】
さらに各別実施形態に関わらず、パワーテイクオフPTOを実現するための多様なバリエーションが構成され得る。好ましくは
図1において示されるトランスミッション装置10のように、電気駆動可能なパワーテイクオフPTOが任意で搭載され得る。好ましくは
図2において示される第二実施形態のように、トランスミッション入力軸12を介して機械的に駆動されるパワーテイクオフPTOが設けられ得る。
【0036】
好ましくは、
図7及び
図8において示される各別実施形態のように、パワーテイクオフPTOを実現するために、パワーテイクオフ軸20を別の切替要素S3を介して―好ましくは選択的に変速段G3を介して―トランスミッション入力軸12に駆動接続され得る又は駆動接続可能であり得る、又は、好ましくは選択的に変速段G4を介して、第二電動機E2に駆動接続され得る又は駆動接続可能であり得る。
【0037】
図1から
図8において示される各トランスミッション装置10は以下の作動モードを可能にするものである。
【表1】
【0038】
上記表において「+」は活性化された電動機、「-」は非活性化された電動機、及び、「BL」は不動化された電動機を指す。「X」は存在しない切替要素を指す。緊急切替要素SEのスイッチングポジション「OFF」,「ON」、緊急切替要素SEMの「LHF」,「N」「LHR」、第一切替要素S1の「L」,「M」,「R」、及び、第二切替要素S2の「1」,「N」,「2」は、それぞれ
図1から
図8に示された各切替要素SE、SEM、S1、S2のスイッチングポジションに対応する。第一切替要素S1のスイッチングポジションLにおいては内燃機関ICEが、第一切替要素S1のスイッチングポジションRにおいては第一電動機S1が不動化される。中間ポジションMにおいては内燃機関ICEのみならず第一電動機E1もが駆動トルクを提供することができる。ポジション「N」においては第二電動機E2が切り離されている。各スイッチングポジション1及び2において、トルクが異なる変速段G1、G2を介して第二電動機E2によってトランスミッション装置10の駆動列19へと導入することができる。ポジション「N」において、第二電動機E2が他のトランスミッションから切り離されている。
【0039】
表の1行目において作動モードOD(オーバードライブ)が示されており、当該作動モードは燃料消費、排気及び騒音レベルを軽減するために特に高い速度領域において導入可能である。ここで内燃機関ICEのみが作動していることが好ましく、当該内燃機関を最適な回転数において駆動することが可能である。第二電動機E2は機械的に切り離すことができ(第二切替要素S2のポジション「N」)、第一電動機E1は不動化され得る(第一切替要素S1のポジション「R」)。これにより各電動機E1及びE2による損失を回避することが可能である。必要に応じてさらに駆動トルクを生成するために、第二電動機E2をパラレルハイブリッド駆動手段として当該各電動機に加えることも可能である(第二切替要素S2のポジション「1」又は「2」)。
【0040】
表の2行目において作動モードeCVT1が示されており、当該作動モードにおいては当該内燃機関のみならず第一電動機E1及び第二電動機E2もが作動中であり、第二電動機E2は第一変速段G1を介して接続されている。両電動機E1、E2を標的を定めた制御によって内燃機関ICEと、各駆動輪15との間における電気支援された無段変速(eCVT)を達成することが可能である。この作動モードeCVT1は、第一変速段G1の高い伝達比で高い駆動トルクを可能にする。
【0041】
3行目において作動モードeCVT1に類似した作動モードeCVT2が示されており、当該作動モードにおいては当該内燃機関のみならず第一電動機E1及び第二電動機E2もが作動中であり、第二電動機E2は第二変速段G2を介して接続されている。この作動モードeCVT2は、第二変速段G2の低い伝達比で高い駆動回転数を可能にする。
【0042】
4行目において純粋に機械的な作動モードEV1が示されており、当該作動モードにおいては内燃機関ICEがスイッチOFFされるものの不動化はされていない(当該第一切替要素はスイッチングポジション「M」にある)。第一電動機E1及び第二電動機E2の両方が活性化されている。第二電動機E2は、駆動のための駆動トルクを発生させ、第一電動機E1又は選択的に切り離された内燃機関ICEは、自身に強制された回転数において併走し得る。当該作動モードは、平面又は傾斜が小さい場合の駆動にのみ使用されることが好ましい。
【0043】
5行目において純粋に機械的な作動モードEV2が示されており、当該作動モードにおいては当該内燃機関ICEが不動化されている(当該第一切替要素S1はスイッチングポジション「L」にある)。第一電動機E1及び第二電動機E2の両方が活性化されている。両電動機E1及びE2が駆動に用いられる。
【0044】
6行目において作動モードLH1V(「リンプホーム」)が示されており、当該作動モードにおいては車両の駆動が内燃機関ICEを介してのみ実施される。緊急切替要素SEはポジション「ON」にあり、これによりトランスミッション入力軸12は遊星キャリアc1との接続に加えて第一太陽歯車zs1に駆動接続されている。第一切替要素S1は中間ポジション「M」にあり、第二切替要素S2は中立ポジション「N」にある。第一電動機E1及び第二電動機E2は非活性であり得る。
【0045】
7行目において作動モードLH2V(「リンプホーム」)が示されており、当該作動モードにおいては車両の駆動が内燃機関ICEを介してのみ実施される。緊急切替要素SEはポジション「ON」にあり、これによりトランスミッション入力軸12が第二太陽歯車zs2に駆動接続されている。第一切替要素S1は中間ポジション「M」にあり、第二切替要素S2はポジション「1」又は「2」にある。第一電動機E1は非活性であり得、第二電動機E2は自身に強制された回転数において共に回転し得る。
【0046】
8行目において作動モードLH3V(「順方向リンプホーム」)が示されており、当該作動モードにおいては車両の駆動が内燃機関ICEを介してのみ実施される。緊急切替要素SEMはポジション「LHF」にあり、これによりトランスミッション入力軸12が遊星キャリアc1との接続に加えて第二太陽歯車zs2に駆動接続されている。第一切替要素S1は中間ポジション「M」にあり、第二切替要素S2は当該ポジション「2」にある。第一電動機E1及び第二電動機E2は非活性であり得る。
【0047】
9行目において作動モードLH3R(「逆方向リンプホーム」)が示されており、当該作動モードにおいては車両の駆動が内燃機関ICEを介してのみ実施される。緊急切替要素SEMはポジション「LHR」にあり、これによりトランスミッション入力軸12が遊星キャリアc1との接続に加えて第二太陽歯車zs2に駆動接続されている。第一切替要素S1は中間ポジション「M」、第二切替要素S2は当該ポジション「1」にある。第一電動機E1及び第二電動機E2は非活性であり得る。
【0048】
10行目及び11行目において各作動モードCHM及びCHSが示されており、当該各作動モードは車両の運転中(作動モードCHM)又は停止状態に(作動モードCHS)において、車両用電池を充電するためのものである。ここで内燃機関ICEと、第一電動機E1が活性化されている。作動モードCHMにおいては第二電動機E2も活性されており、第一変速段G1又は第二変速段G2のいずれかを介して第二太陽歯車zs2と接続されている。作動モードCHSにおいては第二電動機E2が非活性化されており、第一変速段G1又は第二変速段G2のいずれかを介してトランスミッション装置10の駆動列19に接続されている(第二切替要素S2のスイッチングポジション「1」又は「2」)又は当該駆動列から切り離されている(第二切替要素S2のスイッチングポジション「N」)。