(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブの製造方法、カーボンナノチューブ集合線の製造方法、カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法、カーボンナノチューブ製造装置、カーボンナノチューブ集合線製造装置及びカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/162 20170101AFI20240222BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20240222BHJP
D01F 9/127 20060101ALI20240222BHJP
D01F 9/133 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C01B32/162
B01J23/745 M
D01F9/127
D01F9/133
(21)【出願番号】P 2020562466
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051332
(87)【国際公開番号】W WO2020138378
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018245685
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019160765
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤森 利彦
(72)【発明者】
【氏名】日方 威
(72)【発明者】
【氏名】大久保 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 順
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0161950(US,A1)
【文献】特表2014-503448(JP,A)
【文献】国際公開第2005/102923(WO,A1)
【文献】特開2010-099572(JP,A)
【文献】特開2005-350281(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208558(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B01J 21/00-38/74
D01F 9/127、9/133
B82Y 40/00
C30B 1/00-35/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊状態の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記触媒粒子からカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記カーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記カーボンナノチューブを伸長させる伸長工程とを含
み、
前記引張力は、前記炭素含有ガスの流速を変化させることにより前記カーボンナノチューブに加えられ、
前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、前記炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きい、カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記伸長工程において、前記カーボンナノチューブは、前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して伸長する、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、0.051cm/sec以上10.001cm/sec以下であり、
前記炭素含有ガスの上流側の平均流速は、0.050cm/sec以上10.000cm/sec以下である、請求項1または請求項2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させることにより、複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向し
た状態で近付けて集合させてカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程とを含
み、
前記引張力は、前記炭素含有ガスの流速を変化させることにより前記複数のカーボンナノチューブに加えられ、
前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、前記炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きく、
前記成長工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、第1流路を通過し、
前記集合工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、前記第1流路より下流側に配置される1以上の第2流路を通過し、
前記第2流路のそれぞれの断面積は、前記第1流路の断面積よりも小さい、カーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項5】
前記伸長工程において、前記複数のカーボンナノチューブは、前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して伸長する、請求項
4に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項6】
前記伸長工程と前記集合工程とは同時に行われる、請求項
4又は請求項
5に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項7】
前記第2流路より下流側の前記炭素含有ガスの温度は、前記第2流路より上流側の前記炭素含有ガスの温度よりも低
く、
前記第2流路より上流側の前記炭素含有ガスの温度は800℃以上であり、前記第2流路より下流側の前記炭素含有ガスの温度は600℃以下である、請求項
4から請求項6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項8】
前記第2流路内の前記炭素含有ガスの温度は、下流側が上流側よりも低く、
前記第2流路内の下流側端部における前記炭素含有ガスの温度は、600℃以下である、請求項
4から請求項
7のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項9】
前記第2流路内の下流側に、前記炭素含有ガスの温度が600℃以下である第1領域が存在し、前記第1領域の前記第2流路の長手方向に沿う長さは1cm以上である、請求項
4から請求項
8のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項10】
前記第2流路のそれぞれの断面積は0.01mm
2以上4mm
2以下である、請求項
4から請求項
9のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項11】
前記第1流路の断面積S1と、前記第2流路のそれぞれの断面積S2との比S1/S2は100以上1000000以下である、請求項
4から請求項
10のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項12】
前記集合工程において、前記複数のカーボンナノチューブの径が縮小する、請求項
6に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項13】
前記第2流路のそれぞれの長さは10mm以上200mm以下である、請求項
4から請求項
12のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項14】
前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有する、請求項
4から請求項
13のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項15】
前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さい、請求項
4から請求項
14のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項16】
前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、0.051cm/sec以上10.001cm/sec以下であり、
前記炭素含有ガスの上流側の平均流速は、0.050cm/sec以上10.000cm/sec以下である、請求項4から請求項15のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線の製造方法。
【請求項17】
浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させることにより、複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させて複数のカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程と、
前記複数のカーボンナノチューブ集合線を前記複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル工程とを含
み、
前記引張力は、前記炭素含有ガスの流速を変化させることにより前記複数のカーボンナノチューブに加えられ、
前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、前記炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きく、
前記バンドル工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をその長手方向に沿う方向に巻き取ることにより行われる、カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項18】
前記バンドル工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に揮発性液体を付着させる付着工程と、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に付着させた前記揮発性液体を
自然乾燥により蒸発させる蒸発工程とを含
み、
前記付着工程は、前記揮発性液体を霧化して蒸気とし、前記蒸気を前記カーボンナノチューブ集合線に噴霧することにより行われる、請求項
17に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項19】
前記付着工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をこれらの長手方向に沿う方向に配向して束ねる前に行われる、請求項
18に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項20】
前記付着工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をこれらの長手方向に沿う方向に配向して束ねた後に行われる、請求項
18に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項21】
前記バンドル工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に張力を加えながら行われる、請求項
17から請求項
20のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項22】
前記成長工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、第1流路を通過し、
前記集合工程及び前記バンドル工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、前記第1流路よりも下流側に配置される1以上の第2流路を通過し、
前記第2流路のそれぞれの断面積は、前記第1流路の断面積よりも小さい、請求項
17から請求項
21のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項23】
前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有する、請求項
22に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項24】
前記第2流路は複数存在し、
前記第2流路間の最近接距離は、上流側よりも下流側の方が短い、請求項
22又は請求項
23に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項25】
前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さく、
前記第2流路の前記上流側の断面積は0.1mm
2以上100mm
2以下であり、
前記第2流路の前記下流側の断面積は0.005mm
2以上10mm
2以下である、請求項
22から請求項
24のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法。
【請求項26】
管状のカーボンナノチューブ成長部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の一方の端部側から前記カーボンナノチューブ成長部内に炭素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部内に触媒粒子を供給する触媒供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の他方の端部側に配置され、前記カーボンナノチューブ成長部で得られたカーボンナノチューブを伸長するカーボンナノチューブ伸長部とを備
え、
前記カーボンナノチューブ成長部における前記炭素含有ガスの通過する中空部の断面積よりも、前記カーボンナノチューブ伸長部における前記炭素含有ガスの通過する中空部の断面積は小さく、
前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、前記炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きい、カーボンナノチューブ製造装置。
【請求項27】
前記カーボンナノチューブ伸長部の前記中空部の断面積は、前記カーボンナノチューブ成長部の前記中空部の断面積の0.0001%以上35%以下である、請求項26に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項28】
管状のカーボンナノチューブ成長部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の一方の端部から前記カーボンナノチューブ成長部に炭素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部内に触媒粒子を供給する触媒供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の他方の端部側に配置され、前記カーボンナノチューブ成長部で得られた複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させる、カーボンナノチューブ集合部と、を備
え、
前記カーボンナノチューブ成長部は、その内部に第1流路を有し、
前記カーボンナノチューブ集合部は、その内部に1以上の第2流路を有し、
前記第2流路のそれぞれの断面積は、前記第1流路の断面積よりも小さく、
前記カーボンナノチューブ集合部内での前記炭素含有ガスの平均流速は、前記カーボンナノチューブ成長部における前記炭素含有ガスの平均流速よりも大きい、カーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項29】
前記カーボンナノチューブ集合部において、前記カーボンナノチューブ成長部で得られたカーボンナノチューブを伸長する、請求項
28に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項30】
前記カーボンナノチューブ集合部はハニカム構造を有する、請求項
28または請求項29に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項31】
前記ハニカム構造は、複数の貫通孔から構成される複数の
前記第2流路を有するハニカム構造体であり、
前記第2流路のそれぞれの断面積は0.01mm
2以上4mm
2以下である、請求項
30に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項32】
前記第1流路の断面積S1と、前記第2流路のそれぞれの断面積S2との比S1/S2は100以上1000000以下である、請求項
28から請求項
31のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項33】
前記カーボンナノチューブ集合部において、前記複数のカーボンナノチューブの径が縮小する、請求項
29に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項34】
前記カーボンナノチューブ集合部の第2流路のそれぞれの長さは10mm以上200mm以下である、請求項
28から請求項
33のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項35】
前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有する、請求項
28から請求項
34のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項36】
前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さい、請求項
28から請求項
35のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置。
【請求項37】
請求項
28から請求項
36のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置と、
前記カーボンナノチューブ集合線製造装置により得られた複数のカーボンナノチューブ集合線を前記複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル部とを備える、カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置。
【請求項38】
前記バンドル部は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に揮発性液体を付着させる液体付着装置を含む、請求項
37に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置。
【請求項39】
前記バンドル部は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に張力を加えながら、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をその長手方向に沿う方向に配向して束ねて巻き取る巻取装置を含む、請求項
37又は請求項
38に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置。
【請求項40】
前記カーボンナノチューブ集合部と、前記バンドル部とは、複数の第2流路を有する同一のハニカム構造体からなり、
前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有する、請求項
37に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置。
【請求項41】
前記第2流路間の最近接距離は、上流側よりも下流側の方が短い、請求項
40に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置。
【請求項42】
前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さい、請求項
40又は請求項
41に記載のカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーボンナノチューブの製造方法、カーボンナノチューブ集合線の製造方法、カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法、カーボンナノチューブ製造装置、カーボンナノチューブ集合線製造装置及びカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置に関する。本出願は、2018年12月27日に出願した日本特許出願である特願2018-245685号に基づく優先権、および、2019年9月3日に出願した日本特許出願である特願2019-160765号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
炭素原子が六角形に結合したグラフェンシートを円筒状にした構造のカーボンナノチューブ(以下、CNTとも記す。)は、銅の1/5の軽さで鋼鉄の20倍の強度、金属的な導電性という優れた特性を持つ素材である。このため、カーボンナノチューブを用いた電線は、特に自動車用モータの軽量化、小型化及び耐食性の向上に貢献する素材として期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブは、例えば、特許文献1(特開2005-330175号公報)に示されるように、鉄などの微細触媒を加熱しつつ、炭素を含む原料ガスを供給することで触媒からカーボンナノチューブを成長させる気相成長法により得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Agnieszka Lekawa-Raus et al. “Electrical Properties of Carbon Nanotube Based Fibers and Their Future Use in Electrical Wiring”,Advanced Functional Materials,Vo.24,p.p.3661-3682 (2014).DOI:10.1002/adfm.201303716
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係るカーボンナノチューブの製造方法は、
浮遊状態の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記触媒粒子からカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記カーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記カーボンナノチューブを伸長させる伸長工程とを含む、カーボンナノチューブの製造方法である。
【0007】
本開示の他の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線の製造方法は、
浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させることにより、複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させてカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程とを含む、カーボンナノチューブ集合線の製造方法である。
【0008】
本開示の他の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法は、
浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させることにより、複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させて複数のカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程と、
前記複数のカーボンナノチューブ集合線を前記複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル工程とを含む、カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法である。
【0009】
本開示の他の一態様に係るカーボンナノチューブ製造装置は、
管状のカーボンナノチューブ成長部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の一方の端部側から前記カーボンナノチューブ成長部内に炭素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部内に触媒粒子を供給する触媒供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の他方の端部側に配置され、前記カーボンナノチューブ成長部で得られたカーボンナノチューブを伸長するカーボンナノチューブ伸長部とを備える、カーボンナノチューブ製造装置である。
【0010】
本開示の他の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線製造装置は、
管状のカーボンナノチューブ成長部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の一方の端部から前記カーボンナノチューブ成長部に炭素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部内に触媒粒子を供給する触媒供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の他方の端部側に配置され、前記カーボンナノチューブ伸長部で得られた複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させるカーボンナノチューブ集合部と、を備える、カーボンナノチューブ集合線製造装置である。
【0011】
本開示の他の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置は、
上記のカーボンナノチューブ集合線製造装置と、
前記カーボンナノチューブ集合線製造装置により得られた複数のカーボンナノチューブ集合線を前記複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル部とを備える、カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線を説明する図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線の一例の透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)画像である。
【
図3】
図3は、
図2のTEM画像を二値化処理した画像である。
【
図4】
図4は、
図3の二値化処理した画像をフーリエ変換した画像である。
【
図5】
図5は、
図4のフーリエ変換画像から得られた配向角度と配向強度との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態で用いられるカーボンナノチューブの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルを説明する図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るCNT集合線バンドルの一例の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)画像である。
【
図9】
図9は、
図8のSEM画像を二値化処理した画像である。
【
図11】
図11は、
図10のフーリエ変換画像から得られた配向角度と配向強度との関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルの一例のSEM画像である。
【
図13】
図13は、本開示の一実施形態に係るCNT集合線バンドルの配向領域を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線製造装置を説明する図である。
【
図15】
図15は、本開示の他の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線製造装置の電場発生部を説明するための図である。
【
図16】
図16は、本開示の他の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線製造装置の磁場発生部を説明するための図である。
【
図17】
図17は、試料1のカーボンナノチューブ集合線の画像である。
【
図18】
図18は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置を説明する図である。
【
図19】
図19は、実施例で作製された装置5及び装置6を説明するための図である。
【
図20】
図20は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合部の第2流路を示す図である。
【
図21】
図21は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置を説明する図である。
【
図22】
図22は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置の他の例を説明する図である。
【
図25】
図25は、ハニカム構造体の他の一例を示す図である。
【
図26】
図26は、
図25のハニカム構造体を矢印XXVIで示す方向(上流側)から見た図である。
【
図27】
図27は、
図25のハニカム構造体を矢印XXVIIで示す方向(下流側)から見た図である。
【
図29】
図29は、ハニカム構造体の他の一例を示す図である。
【
図30】
図30は、
図29のハニカム構造体を矢印XXXで示す方向(上流側)から見た図である。
【
図31】
図31は、
図29のハニカム構造体を矢印XXXIで示す方向(下流側)から見た図である。
【
図33】
図33は、ハニカム構造体の他の一例を示す図である。
【
図34】
図34は、
図33のハニカム構造体を矢印XXXIV方向(上流側)から見た図である。
【
図35】
図35は、
図33のハニカム構造体を矢印XXXVで示す方向(下流側)から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示が解決しようとする課題]
現在のカーボンナノチューブの作製技術で得られるカーボンナノチューブは、その径が約0.4nm~20nm、かつ、長さが最大55cmである。カーボンナノチューブを電線や高強度材として用いるためには、より長いカーボンナノチューブが必要であり、カーボンナノチューブを長尺化できる技術が検討されている。
【0014】
カーボンナノチューブを長尺化する方法として、複数のカーボンナノチューブを長手方向に配向させて集め、集合線とする方法が考えられる。
【0015】
そのような方法の一つとして、無配向の複数のCNTを分散剤(界面活性剤やポリマー等)と混合し、繊維状に射出成形することにより、CNT集合線を得る方法が検討されている(非特許文献1:Agnieszka Lekawa-Raus et al.“Electrical Properties of Carbon Nanotube Based Fibers and Their Future Use in Electrical Wiring”,Advanced Functional Materials,Vo.24,p.p.3661-3682 (2014).DOI:10.1002/adfm.201303716)。この方法によると、分散剤を除去する工程が含まれるため、集合線の構成単位であるCNT単線の配向制御が困難である。また、分散剤の除去後にCNT集合線中に残留している分散剤のために、CNTが有する電気伝導度や機械的強度等の特性が低下する傾向があった。
【0016】
そこで、本開示は、CNTを長尺化することのできる、CNTの製造方法及びCNT製造装置を提供することを目的とする。更に、本開示は、CNTを長手方向に配向させて集め、長尺化されたCNT集合線及びCNT集合線バンドルを得ることのできるCNT集合線、CNT集合線バンドル、CNT集合線製造装置及びCNT集合線バンドル製造装置を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
【0017】
上記態様によれば、長尺化されたCNTを提供することが可能となる。更に、上記態様によれば、CNTを長手方向に配向させて集め、長尺化されたCNT集合線及びCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
【0018】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0019】
(1)本開示の一態様に係るカーボンナノチューブの製造方法は、
浮遊状態の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記触媒粒子からカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記カーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記カーボンナノチューブを伸長させる伸長工程とを含む、カーボンナノチューブの製造方法である。
【0020】
これによると、長尺化されたCNTを提供することが可能となる。
(2)前記伸長工程において、前記カーボンナノチューブは、前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して伸長することが好ましい。これによると、カーボンナノチューブが曲がりにくく、チューブ部Tが六員環の炭素のみからなる直線状のカーボンナノチューブを得ることができる。六員環の炭素のみからなるカーボンナノチューブは、劣化が進みにくく、品質を維持することができる。
【0021】
(3)前記引張力は、前記炭素含有ガスの流速を変化させることにより前記カーボンナノチューブに加えられることが好ましい。これによると、CNTの伸長を炭素含有ガスを用いて行うことができるため、CNT伸長のために特別な機構を用いる必要がなく、製造コストの面で有利である。
【0022】
(4)前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、前記炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きいことが好ましい。これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0023】
(5)前記引張力は、磁場を用いることにより前記カーボンナノチューブに加えられることが好ましい。これによると、CNTに含まれる金属に直接磁力が作用し、磁力線に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0024】
(6)前記引張力は、電場を用いることにより前記カーボンナノチューブに加えられることが好ましい。これによると、CNT及びCNTに含まれる金属に直接静電力が作用し、電気力線に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0025】
(7)本開示の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線の製造方法は、
浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させることにより、複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させてカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程とを含む、カーボンナノチューブ集合線の製造方法である。
【0026】
これによると、CNTを長手方向に配向させて集め、長尺化されたCNT集合線を提供することが可能となる。
【0027】
(8)前記伸長工程において、前記複数のカーボンナノチューブは、前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して伸長することが好ましい。これによると、炭素含有ガスの流れに沿った形状のCNTを得ることができる。
【0028】
(9)前記伸長工程と前記集合工程とは同時に行われることが好ましい。これによると、伸長工程及び集合工程に要する時間を短縮することができる。更に、CNTの成長及びCNT伸長のために、別個の機構を用いる必要がなく、製造コストの面で有利である。
【0029】
(10)前記引張力は、前記炭素含有ガスの流速を変化させることにより前記複数のカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。これによると、CNTの伸長を炭素含有ガスを用いて行うことができるため、CNT伸長のために特別な機構を用いる必要がなく、製造コストの面で有利である。
【0030】
(11)前記炭素含有ガスの下流側の平均流速は、前記炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きいことが好ましい。これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0031】
(12)前記引張力は、磁場を用いることにより前記複数のカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。これによると、一本一本のCNTに直接磁力が作用し、磁力線に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0032】
(13)前記引張力は、電場を用いることにより前記カーボンナノチューブに加えられることが好ましい。これによると、一本一本のCNTに直接静電力が作用し、電気力線に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0033】
(14)前記集合工程において、前記複数のカーボンナノチューブ同士を配向した状態で近付けることが好ましい。これによると、得られたCNT集合線において、カーボンナノチューブは配向することができる。
【0034】
(15)前記成長工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、第1流路を通過し、
前記集合工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、前記第1流路より下流側に配置される1以上の第2流路を通過し、
前記第2流路のそれぞれの断面積は、前記第1流路の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0035】
これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0036】
(16)前記第2流路より下流側の前記炭素含有ガスの温度は、前記第2流路より上流側の前記炭素含有ガスの温度よりも低いことが好ましい。これによると、CNT同士が集合しやすい。
【0037】
(17)前記第2流路より上流側の前記炭素含有ガスの温度は800℃以上であり、前記第2流路より下流側の前記炭素含有ガスの温度は600℃以下であることが好ましい。これによると、CNT同士が集合しやすい。
【0038】
(18)前記第2流路内の前記炭素含有ガスの温度は、下流側が上流側よりも低く、
前記第2流路内の下流側端部における前記炭素含有ガスの温度は、600℃以下であることが好ましい。
【0039】
これによると、第2流路内でCNT同士が集合しやすい。
(19)前記第2流路内の下流側に、前記炭素含有ガスの温度が600℃以下である第1領域が存在し、該第1領域の前記第2流路の長手方向に沿う長さは1cm以上であることが好ましい。
【0040】
これによると、第2流路内でCNT同士が集合しやすい。
(20)前記第2流路のそれぞれの断面積は0.01mm2以上4mm2以下であることが好ましい。これによると、CNTの径が縮小しやすい。
【0041】
(21)前記第1流路の断面積S1と、前記第2流路のそれぞれの断面積S2との比S1/S2は100以上1000000以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。
【0042】
(22)前記集合工程において、前記複数のカーボンナノチューブの径が縮小することが好ましい。これによると、径の小さいCNTを含むCNT集合線を得ることができる。
【0043】
(23)前記第2流路のそれぞれの長さは10mm以上200mm以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。
【0044】
(24)前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有することが好ましい。これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成されやすい。
【0045】
(25)前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNTが集合しやすく、CNT集合線が形成されやすい。
【0046】
(26)本開示の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法は、
浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、前記複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させることにより、複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、前記複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程と、
浮遊状態の前記複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させて複数のカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程と、
前記複数のカーボンナノチューブ集合線を前記複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル工程とを含む、カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法である。
【0047】
これによると、CNTを長手方向に配向させて集め、長尺化されたCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
【0048】
(27)前記バンドル工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に揮発性液体を付着させる付着工程と、前記カーボンナノチューブ集合線に付着させた前記揮発性液体を蒸発させる蒸発工程とを含むことが好ましい。これによると、得られたCNT集合線バンドルの密度が向上する。
【0049】
(28)前記付着工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をこれらの長手方向に沿う方向に配向して束ねる前に行われることが好ましい。これによるとカーボンナノチューブフィラメント間の空隙に浸透した液体が蒸発する過程でカーボンナノチューブフィラメント間を接近させ強固に接合させることができる。
【0050】
(29)前記付着工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をこれらの長手方向に沿う方向に配向して束ねた後に行われることが好ましい。これによるとカーボンナノチューブフィラメント間の空隙に浸透した液体が蒸発する過程でカーボンナノチューブフィラメント間を接近させ強固に接合させることができる。
【0051】
(30)前記バンドル工程は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に張力を加えながら行われることが好ましい。これによると、得られたCNT集合線バンドルの強度が向上する。
【0052】
(31)前記成長工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、第1流路を通過し、
前記集合工程及び前記バンドル工程において、前記複数のカーボンナノチューブ及び前記炭素含有ガスは、前記第1流路よりも下流側に配置される1以上の第2流路を通過し、
前記第2流路のそれぞれの断面積は、前記第1流路の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0053】
これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0054】
(32)前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有することが好ましい。これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成されやすい。
【0055】
(33)前記第2流路は複数存在し、
前記第2流路間の最近接距離は、上流側よりも下流側の方が短いことが好ましい。これによると、CNT集合線同士が束ねられやすく、CNT集合線バンドルが形成されやすい。
【0056】
(34)前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNT及びCNT集合線が集合しやすく、CNT集合線及びCNT集合線バンドルが形成されやすい。
【0057】
(35)本開示の一態様に係るカーボンナノチューブ製造装置は、
管状のカーボンナノチューブ成長部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の一方の端部側から前記カーボンナノチューブ成長部内に炭素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部内に触媒粒子を供給する触媒供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の他方の端部側に配置され、前記カーボンナノチューブ成長部で得られたカーボンナノチューブを伸長するカーボンナノチューブ伸長部とを備える、カーボンナノチューブ製造装置である。
【0058】
これによると、長尺化されたCNTを提供することが可能となる。
(36)本開示の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線製造装置は、
管状のカーボンナノチューブ成長部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の一方の端部から前記カーボンナノチューブ成長部に炭素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部内に触媒粒子を供給する触媒供給部と、
前記カーボンナノチューブ成長部の他方の端部側に配置され、前記カーボンナノチューブ成長部で得られた複数のカーボンナノチューブを前記炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させるカーボンナノチューブ集合部と、を備える、カーボンナノチューブ集合線製造装置である。
【0059】
これによると、CNTを長手方向に配向させて集め、長尺化されたCNT集合線を提供することが可能となる。
【0060】
(37)前記カーボンナノチューブ集合部において、前記カーボンナノチューブ成長部で得られたカーボンナノチューブを伸長することが好ましい。これによると、CNTの成長及びCNT伸長のために、別個の機構を用いる必要がなく、製造コストの面で有利である。更に、伸長工程及び集合工程に要する時間を短縮することができる。
【0061】
(38)前記カーボンナノチューブ集合部内での前記炭素含有ガスの平均流速は、前記カーボンナノチューブ成長部における前記炭素含有ガスの平均流速よりも大きいことが好ましい。これによると、カーボンナノチューブ集合部内で、CNTに引張力を加えることができる。
【0062】
(39)前記カーボンナノチューブ成長部は、その内部に第1流路を有し、
前記カーボンナノチューブ集合部は、その内部に1以上の第2流路を有し、
前記第2流路のそれぞれの断面積は、前記第1流路の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0063】
これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0064】
(40)前記カーボンナノチューブ集合部はハニカム構造を有することが好ましい。これによると、カーボンナノチューブ集合部内で、CNTに引張力を加えると同時に、複数のカーボンナノチューブ同士を配向した状態で近付けることができる。
【0065】
(41)前記ハニカム構造は、複数の貫通孔から構成される複数の第2流路を有するハニカム構造体であり、
前記第2流路のそれぞれの断面積は0.01mm2以上4mm2以下であることが好ましい。
これによると、CNTの径が縮小しやすい。
【0066】
(42)前記第1流路の断面積S1と、前記第2流路のそれぞれの断面積S2との比S1/S2は100以上1000000以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。
【0067】
(43)前記カーボンナノチューブ集合部において、前記複数のカーボンナノチューブの径が縮小することが好ましい。これによると、径の小さいCNTを含むCNT集合線を得ることができる。
【0068】
(44)前記カーボンナノチューブ集合部の第2流路のそれぞれの長さは10mm以上200mm以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。
【0069】
(45)前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有することが好ましい。これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成される。
【0070】
(46)前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNTが集合しやすく、CNT集合線が形成されやすい。
【0071】
(47)本開示の一態様に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置は、
上記のカーボンナノチューブ集合線製造装置と、
前記カーボンナノチューブ集合線製造装置により得られた複数のカーボンナノチューブ集合線を前記複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル部とを備えることが好ましい。
【0072】
これによると、CNTを長手方向に配向させて集め、長尺化されたCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
【0073】
(48)前記バンドル部は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に揮発性液体を付着させる液体付着装置を含むことが好ましい。
これによると、高い密度を有するCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
【0074】
(49)前記バンドル部は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に張力を加えながら、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をその長手方向に沿う方向に配向して束ねて巻き取る巻取装置を含むことが好ましい。これによると、CNT集合線バンドルの作製効率が向上する。
【0075】
(50)前記カーボンナノチューブ集合部と、前記バンドル部とは、複数の第2流路を有する同一のハニカム構造体からなり、
前記第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有することが好ましい。
【0076】
これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成されやすい。
【0077】
(51)前記第2流路間の最近接距離は、上流側よりも下流側の方が短いことが好ましい。これによると、CNT集合線同士が束ねられやすく、CNT集合線バンドルが形成されやすい。
【0078】
(52)前記第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNT及びCNT集合線が集合しやすく、CNT集合線及びCNT集合線バンドルが形成されやすい。
【0079】
これによると、高い強度を有するCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
[本発明の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態にかかるカーボンナノチューブ集合線及びカーボンナノチューブ集合線バンドルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0080】
本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0081】
本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。また、範囲の上限値がCであるとは、範囲の上限がC以下であることを意味し、範囲の下限値がDであるとは、範囲の下限がD以上であることを意味する。
【0082】
[実施の形態1:カーボンナノチューブの製造方法]
実施の形態1に係るカーボンナノチューブの製造方法について説明する。カーボンナノチューブの製造方法は、浮遊状態の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、触媒粒子からカーボンナノチューブを成長させる成長工程(以下、成長工程とも記す)と、浮遊状態のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、カーボンナノチューブを伸長させる伸長工程(以下、伸長工程とも記す)とを含む。
【0083】
実施の形態1に係るカーボンナノチューブの製造方法は、例えば、
図18に示されるカーボンナノチューブ製造装置10により作製することができる。カーボンナノチューブ製造装置10は、管状のカーボンナノチューブ成長部(以下、CNT成長部とも記す)21と、CNT成長部21の一方の端部(
図18において右側の端部)側からCNT成長部21内に炭素含有ガスを供給するガス供給部22と、CNT成長部21内に触媒粒子Pを供給する触媒供給部23と、CNT成長部21の他方の端部側(
図18において左側の端部)に配置され、CNT成長部21で得られたカーボンナノチューブを伸長するカーボンナノチューブ伸長部(以下、CNT伸長部とも記す)30とを備えることができる。CNT成長部21、CNT伸長部30及び触媒供給部23は、連続した反応管31を含み、反応管31の内部でCNTが製造される。
【0084】
<成長工程>
成長工程において、浮遊状態の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、触媒粒子から、カーボンナノチューブを成長させる。本明細書において、成長工程では、CNTの長さは20μm以下である。
【0085】
成長工程は、CNT成長部21の内部で行われる。成長工程は、800℃以上1200℃以下の温度条件で行われることが好ましい。温度が800℃未満であると、CNTの成長速度が遅くなる傾向がある。一方、温度が1200℃を超えると、不純物炭素の含有量が増加する傾向がある。成長工程の温度条件は、900℃以上1150℃以下がより好ましく、950℃以上1050℃以下が更に好ましい。
【0086】
触媒粒子Pは、ガス供給部22から触媒供給部23及びCNT成長部21に供給される炭素含有ガスの風圧により、触媒供給部23の内部に配置された触媒27が崩壊して触媒粒子Pとなり、CNT成長部21内に供給されるものである。
【0087】
触媒粒子Pとしては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、パラジウム、白金を用いることができる。中でも、鉄を用いることが長尺CNTを量産する観点から好ましい。
【0088】
炭素含有ガスは、ガス供給部22から触媒供給部23を経て、CNT成長部21に供給される。炭素含有ガスとしては、炭化水素ガス等の還元性を有するガスが用いられる。このような炭素含有ガスとしては、例えばメタンとアルゴンとの混合ガス、エチレンとアルゴンとの混合ガス、エタノールとアルゴンとの混合ガス等を用いることができる。炭素含有ガスは補助触媒として二硫化炭素(CS2)を含むことが好ましい。
【0089】
ガス供給部22から供給される炭素含有ガスのCNT成長部内での平均流速の下限としては、0.05cm/secであり、0.10cm/secが好ましく、0.20cm/secがより好ましい。一方、CNT成長部21内での平均流速の上限としては、10.0cm/secが好ましく、5.0cm/secがより好ましい。炭素含有ガスのCNT成長部21内での平均流速が上記下限に満たない場合、触媒粒子Pに供給される炭素原料ガスが不足して触媒粒子P間に形成されるカーボンナノチューブの成長が停滞する傾向がある。逆に、炭素含有ガスのCNT成長部21内での平均流速が上記上限を超える場合、カーボンナノチューブを触媒粒子Pから剥離してカーボンナノチューブの成長を停止させることでカーボンナノチューブの形成が阻害される傾向がある。
【0090】
ガス供給部22から供給される炭素含有ガスのCNT成長部21内での流れのレイノルズ数の下限としては、0.01が好ましく、0.05がより好ましい。一方、上記レイノルズ数の上限としては1000であり、100が好ましく、10がより好ましい。上記レイノルズ数が上記下限未満とすると、装置の設計が過度に制約されるため、当該カーボンナノチューブ集合線製造装置20が不必要に高価となるおそれや、カーボンナノチューブの製造効率が不必要に低下する傾向がある。上記レイノルズ数が上記上限を超える場合、炭素含有ガスの流れが乱れて触媒粒子P間のカーボンナノチューブの生成を阻害する傾向がある。
【0091】
成長工程により得られたCNTの長さは、0.1μm以上20μm以下が好ましい。成長工程により得られたCNTの長さが0.1μm未満であると、近接するCNTが長手方向に配向せずに絡まってしまい、二次粒子を形成する傾向がある。一方、CNTの長さが20μmを超えると、伸長工程を行うまでの時間が長くなり、カーボンナノチューブの製造効率が不必要に低下する傾向がある。成長工程により得られたCNTの長さは0.5μm以上15μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下が更に好ましい。CNTの長さは、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0092】
<伸長工程>
次に、成長工程で得られた浮遊状態のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、カーボンナノチューブを伸長させる。
【0093】
伸長工程は、CNT伸長部30の内部で行われる。伸長工程において、カーボンナノチューブは、炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して伸長することが好ましい。これによると、カーボンナノチューブが曲がりにくく、チューブ部Tが六員環の炭素のみからなる直線状のカーボンナノチューブを得ることができる。六員環の炭素のみからなるカーボンナノチューブは、劣化が進みにくく、品質を維持することができる。
【0094】
引張力は、炭素含有ガスの流速を変化させることにより複数のカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。例えば、炭素含有ガスの下流側の平均流速を、炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きくすることにより、CNTに下流側に向かう方向の引張力を加えることができる。カーボンナノチューブの端部に引張力が作用することで、触媒粒子Pから延びるカーボンナノチューブが引っ張られ、塑性変形して縮径しつつ長手方向に伸長される。
【0095】
炭素含有ガスの下流側の平均流速を、炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きくする方法としては、例えば、炭素含有ガスの通過する中空部の断面積を、炭素含有ガスの上流側よりも、炭素含有ガスの下流側の方を小さくすることが挙げられる。より具体的には、(i)CNT成長部(上流側に該当)における炭素含有ガスの通過する中空部の断面積よりも、CNT伸長部(下流側に該当)における炭素含有ガスの通過する中空部の断面積を小さくすることや、(ii)CNT伸長部において、炭素含有ガスの通過する中空部の断面積を、炭素含有ガスの上流側よりも、炭素含有ガスの下流側の方を小さくすることが挙げられる。これによると、中空部の断面積の小さくなる領域近傍で加速度場が生じ、炭素含有ガスの流速が大きくなる。
【0096】
上記(i)の場合、CNT伸長部の中空部の断面積は、CNT成長部の断面積の0.0001%以上35%以下とすることが好ましく、0.001%以上35%以下とすることが好ましく、0.005%以上20%以下とすることがより好ましく、0.01%以上5%以下とすることが更に好ましい。CNT伸長部の中空部の断面積が、CNT成長部の中空部の断面積の35%より大きいと、加速度場が生じにくい傾向がある。一方、CNT伸長部の中空部の断面積が、CNT成長部の中空部の断面積の0.0001%未満であると、CNTの目詰まりが生じる傾向がある。
【0097】
本明細書において、特に説明のない限りは、CNT成長部の中空部の断面積は、その両端部の一部を除き、上流側から下流側まで一定である。本明細書において、CNT伸長部が複数の中空部を有する場合は、CNT伸長部の中空部の断面積とは、一の中空部の断面積を意味する。本明細書において、特に説明のない限りは、CNT伸長部の中空部の断面積は、その両端部の一部を除き、上流側から下流側まで一定である。ここで、断面積が一定とは、断面積の最大値と最小値が、平均値±5%以内であることを意味する。
【0098】
なお、CNT伸長部の中空部の断面積が、CNT成長部の断面積の1%以下であると、CNT同士が集合してCNT集合線を形成する可能性が高くなる場合がある。よって、CNT単体としての回収量を増加させたい場合は、CNT伸長部の中空部の断面積は、CNT成長部の断面積の1%超35%以下とすることが好ましい。
【0099】
上記(i)の場合、CNT成長部の断面積は、例えば70mm2以上7000mm2以下とすることができる。CNT伸長部の断面積は、例えば0.005mm2以上50mm2以下とすることができる。なお、CNT伸長部の断面積が4mm2以下であると、CNT同士が集合してCNT集合線を形成する可能性が高くなる場合がある。よって、CNT単体としての回収量を増加させたい場合は、CNT伸長部の断面積を4mm2超50mm2以下とすることが好ましい。
【0100】
上記(ii)の場合、CNT伸長部において、炭素含有ガスの下流側の中空部の断面積は、上流側の中空部の断面積の0.001%以上35%以下とすることが好ましく、0.005%以上20%以下とすることがより好ましく、0.010%以上5%以下とすることが更に好ましい。下流側の中空部の断面積が、上流側の中空部の断面積の35%より大きいと、加速度場が生じにくい傾向がある。一方、下流側の中空部の断面積が、上流側の中空部の断面積の0.001%未満であると、CNTの目詰まりが生じる傾向がある。
【0101】
上記(ii)の場合、下流側の中空部の断面積は、例えば、0.005mm2以上50mm2以下とすることができる。上流側のの断面積は、例えば、70mm2以上7000mm2以下とすることができる。
【0102】
CNT伸長部30内での炭素含有ガスの平均流速の下限としては、0.05cm/secであり、0.2cm/secが好ましく、1cm/secがより好ましい。一方、CNT伸長部30内での平均流速の上限としては、10cm/secが好ましく、5cm/secがより好ましい。炭素含有ガスのCNT伸長部30内での平均流速が0.05cm/secに満たない場合、カーボンナノチューブに十分な引張力が加わらず、CNTの伸長が停滞する傾向がある。逆に、炭素含有ガスのCNT伸長部30内での平均流速が10cm/secを超える場合、カーボンナノチューブを触媒粒子Pから剥離してカーボンナノチューブの成長を停止させることでカーボンナノチューブの形成が阻害される傾向がある。
【0103】
炭素含有ガスのCNT伸長部30内での流れのレイノルズ数の下限としては、0.01が好ましく、0.05がより好ましい。一方、上記レイノルズ数の上限としては1000であり、100が好ましく、10がより好ましい。上記レイノルズ数が0.01未満とすると、装置の設計が過度に制約されるため、当該カーボンナノチューブ製造装置10が不必要に高価となるおそれや、カーボンナノチューブの製造効率が不必要に低下する傾向がある。上記レイノルズ数が1000を超える場合、炭素含有ガスの流れが乱れて触媒粒子P間のカーボンナノチューブの伸長を阻害する傾向がある。
【0104】
引張力は、磁場を用いることによりカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。例えば、CNT伸長部において、反応管の周囲にコイル状に電線を設置し、その電線を通電することで、反応管の内部に、反応管の中心軸に沿った方向の磁力線を発生させることにより、CNTに磁場に由来する引張力を加えることができる。CNT伸長時に磁場を加えることにより、CNTに含まれる金属に直接磁力が作用し、これにより反応管内の磁力線に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0105】
引張力は、電場を用いることによりカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。例えば、CNT伸長部において、炭素含有ガスの下流側に導電性材料からなる+電極、上流側に導電性材料からなる-電極を設置し、反応管の中心軸に沿った電界を発生させることにより、CNTに電場に由来する引張力を加えることができる。CNT伸長時に電場を加えることにより、一本一本のCNTに直接静電力が作用し、電気力線に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0106】
カーボンナノチューブが引張力で伸長されている間も、触媒粒子P上では元の大きさの径を有するカーボンナノチューブが成長する。このため、伸長工程を経て作製されたカーボンナノチューブは、
図6に示されるように、管状のチューブ部Tと、チューブ部の端部から連続して拡径する円錐状のコーン部Cとを備えることができる。
【0107】
つまり、伸長工程では、気相成長法により形成されるカーボンナノチューブをその形成と同時に引張力で引き伸ばすことによって、カーボンナノチューブの一部の6角形セルを5角形セルに組み替えて円錐状のコーン部を形成し、再度6角形セルに組み替えてより径が小さいカーボンナノチューブであるチューブ部を形成する。
【0108】
伸長工程では、触媒粒子P上で成長したカーボンナノチューブを引張力を用いて引き伸ばしながら成長させるため、触媒粒子P上でのカーボンナノチューブの成長速度に比して極めて大きな速度でチューブ部を形成することができる。よって、比較的短時間で長いカーボンナノチューブを形成することができる。このため、触媒粒子P上で継続的にカーボンナノチューブを成長させられる条件を維持できる時間が短くても、十分に長いカーボンナノチューブを形成することができる。
【0109】
伸長工程では、触媒粒子P上のカーボンナノチューブに引張力を作用させることで、カーボンナノチューブの成長点における炭素原子の取り込みを促進すると考えられる。これによって、カーボンナノチューブの成長速度、ひいては得られるカーボンナノチューブの長さの増大速度をより大きくすることができると考えられる。
【0110】
伸長工程では、触媒粒子P上のカーボンナノチューブに引張力を作用させることで、カーボンナノチューブが曲がりにくく、チューブ部Tが六員環の炭素のみからなるシートで構成された筒状体からなる直線状のカーボンナノチューブを得ることができると考えられる。六員環の炭素のみからなるカーボンナノチューブは、劣化が進みにくく、品質を維持することができる。
【0111】
伸長工程により得られたCNTの長さは、10μm以上が好ましく、100μm以上が更に好ましい。特に、カーボンナノチューブの長さが100μm以上であると、CNT集合線の作製の観点から好適である。カーボンナノチューブの長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、600mm以下が好ましい。CNTの長さは、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0112】
[実施の形態2:カーボンナノチューブ]
実施の形態1に係るカーボンナノチューブの製造方法で作製されるカーボンナノチューブについて
図6を用いて説明する。
【0113】
(カーボンナノチューブの形状)
カーボンナノチューブとしては、公知の構造のCNTを用いることができる。例えば、炭素の層(グラフェン)が1層だけ筒状になっている単層カーボンナノチューブや、炭素の層が複数層積層した状態で筒状になっている二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0114】
カーボンナノチューブの形状はとくに限定されず、先端が閉じているものまたは先端が開孔しているもののいずれも用いることができる。また、
図6に示されるように、カーボンナノチューブ2のチューブ部Tの一方又は両方の端部に、カーボンナノチューブの作製時に用いた触媒Pが付着していてもよい。又、カーボンナノチューブ2のチューブ部Tの一方又は両方の端部には円錐状のグラフェンからなるコーン部Cが形成されていてもよい。
【0115】
カーボンナノチューブの長さは、用途によって適宜選択することができる。カーボンナノチューブの長さは、例えば、10μm以上が好ましく、100μm以上が更に好ましい。特に、カーボンナノチューブの長さが100μm以上であると、CNT集合線の作製の観点から好適である。カーボンナノチューブの長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、600mm以下が好ましい。CNTの長さは、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0116】
カーボンナノチューブの径は、0.6nm以上20nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下が更に好ましい。特に、カーボンナノチューブの径が1nm以上10nm以下であると、酸化条件における耐熱性の観点から好適である。
【0117】
カーボンナノチューブの径の測定方法は、上記のCNT間の距離とCNTの平均径との比較において説明した方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。CNTが一方又は両方の端部にコーン部を含む場合は、コーン部を除く場所において径を測定する。
【0118】
(D/G比)
カーボンナノチューブは、波長532nmのラマン分光分析におけるGバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度との比であるD/G比が0.1以下であることが好ましい。
【0119】
Gバンドとは、ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1590cm-1付近に見られるCNTに由来するピークである。Dバンドとは、ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1350cm-1付近に見られるアモルファスカーボンや、グラファイト、CNTの欠陥に由来するピークである。従って、D/G比の値が小さいほど、カーボンナノチューブの結晶性が高く、カーボンナノチューブに含まれるアモルファスカーボンや欠陥を有するグラファイトの量が少ないことを示す。
【0120】
CNTのD/G比が0.1以下であると、アモルファスカーボンやグラファイトの欠陥が少なく、結晶性が高い。よって該CNTは、高い引張強度と、高い電気導電率を有することができる。CNTのD/G比が0.1を超えると、CNTが十分な引張強度と高い電気導電率を有することができない場合がある。D/G比は0.1以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。D/G比の下限値は特に制限されないが、例えば、0以上とすることができる。
【0121】
本明細書中、カーボンナノチューブのD/G比は、下記の方法により測定された値である。
【0122】
カーボンナノチューブについて、下記の条件でラマン分光分析を行い、ラマンスペクトル(以下、CNT集合線のラマンスペクトルとも記す。)を得る。該CNTのラマンスペクトルにおいて、Gバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度とからD/G比を算出する。
ラマン分光分析の測定条件
波長:532nm
レーザーパワー:17mW
露光時間:1秒
平均回数:3回
対物レンズ倍率:50倍
[実施の形態3:カーボンナノチューブ製造装置]
実施の形態1に係るカーボンナノチューブの製造方法に用いられるカーボンナノチューブ製造装置について
図18を用いて説明する。
図18に示されるカーボンナノチューブ製造装置10は、管状のカーボンナノチューブ成長部(以下、CNT成長部とも記す)21と、CNT成長部21の一方の端部(
図18において右側の端部)側からCNT成長部21内に炭素含有ガスを供給するガス供給部22と、CNT成長部21内に触媒粒子Pを供給する触媒供給部23と、CNT成長部21の他方の端部側(
図18において左側の端部)に配置され、CNT成長部21で得られたカーボンナノチューブを伸長するカーボンナノチューブ伸長部(以下、CNT伸長部とも記す)30とを備えることができる。CNT成長部21、CNT伸長部30及び触媒供給部23は、連続した反応管31を含み、反応管31の内部でCNTが製造される。
【0123】
<カーボンナノチューブ成長部>
カーボンナノチューブ成長部21は、例えば石英管からなる管状の形状を有する。CNT成長部21において、炭素含有ガスを用いて、触媒粒子P上にカーボンナノチューブ2が形成される。
【0124】
カーボンナノチューブ成長部21は、電気炉28内に配置され、ヒータ(図示せず)によって加熱される。
【0125】
CNT成長部21の内部温度としては、800℃以上1200℃以下が好ましい。このような温度を維持するために、ガス供給部22からCNT成長部21に加熱した炭素含有ガスを供給してもよく、CNT成長部21において炭素含有ガスを加熱してもよい。
【0126】
<ガス供給部>
ガス供給部22は、カーボンナノチューブ成長部22の一方の端部(
図18において右側の端部)からCNT成長部21に炭素含有ガスを供給する。ガス供給部22は、ガスボンベ(図示せず)と流量調節弁(図示せず)とを有する構成とすることができる。
【0127】
ガス供給部22から供給される炭素含有ガスの種類、CNT成長部内での平均流速、CNT成長部内での流れのレイノルズ数は、上記の実施の形態1に記載したものと同一とすることができるため、その説明は繰り返さない。
【0128】
ガス供給部22は、CNT成長部21に供給される炭素含有ガスの量を繰り返し変化できることが好ましい。これによって、CNT成長部21における炭素含有ガスの流速が増減し、一体化している複数の触媒粒子の離間を促進することにより、得られるカーボンナノチューブの数を増大することができる。
【0129】
<触媒供給部>
触媒供給部23は、ガス供給部22とCNT成長部21との間に配置されることができる。触媒供給部23の内部には触媒27を保持する触媒保持具26が配置されている。触媒供給部23には、ヒーター25が付設されている。つまり、触媒供給部23は、ヒーターによって加熱される。
【0130】
触媒供給部23は、炭素含有ガスの風圧により崩壊して複数の触媒粒子Pに分割される触媒27を炭素含有ガスの流れの中に供給する。このように、触媒27を用いることで、炭素含有ガスの流れの中で高温且つ接触状態の複数の触媒粒子Pを形成することができる。このため、複数の触媒間にカーボンナノチューブを確実に成長させることができる。
【0131】
触媒27としては、例えばフェロセン(Fe(C5H5)2)、ニッケロセン(Ni(C5H5)2)、コバルトセン(Co(C5H5)2等)等を挙げることができる。中でも崩壊性及び触媒作用に優れるフェロセンが特に好ましい。フェロセンは、触媒供給部23内で高温に熱せられ、炭素含有ガスに晒されることによって、浸炭により表面に鉄カーバイド(Fe3C)を形成し、表面から崩壊し易くなることで、順次触媒微粒子Pを放出することができると考えられる。この場合、形成される触媒粒子Pの主成分としては、鉄カーバイド又は鉄となる。
【0132】
触媒粒子Pの平均径の下限としては、30nmが好ましく、40nmがより好ましく、50nmが更に好ましい。一方、触媒粒子Pの平均径の上限としては、1000μmが好ましく、100μmがより好ましく、10μmが更に好ましい。触媒粒子Pの平均径が上記下限に満たない場合、触媒粒子により形成されるカーボンナノチューブの径が小さく、延伸率が小さくなることで、カーボンナノチューブを十分に長くすることができない傾向がある。逆に、触媒粒子の平均径が上記上限を超える場合、触媒粒子により形成されるカーボンナノチューブを延伸することが困難となる傾向がある。
【0133】
<カーボンナノチューブ伸長部>
カーボンナノチューブ伸長部30は、CNT成長部21のガス供給部23側と反対側の端部に配置される。すなわち、CNT伸長部30は、CNT成長部21の炭素含有ガスの下流側に配置される。CNT伸長部30において、カーボンナノチューブが伸長される。
【0134】
CNT伸長部は、浮遊状態のカーボンナノチューブに引張力を加えて伸長させることのできるものであれば、いずれの構造も用いることができる。例えば、CNT伸長部は、例えば、
図18に示されるように、CNT成長部よりも径の小さい筒状構造体からなることができる。また、CNT伸長部は、ハニカム構造体、直管型細管構造等からなることができる。
【0135】
CNT伸長部が筒状構造体からなる場合、CNT伸長部の中空部の断面積は、CNT成長部の断面積の0.01%以上とすることが好ましく、0.005%以上20%以下とすることが好ましく、0.01%以上5%以下とすることが更に好ましい。また、この場合のCNT伸長部の断面積は、例えば、0.005mm2以上50mm2以下とすることができる。
【0136】
CNT伸長部が筒状構造体からなる場合は、筒状構造体の貫通孔に沿う方向(長手方向)の長さは、1mm以上1m以下が好ましく、10mm以上50cm以下がより好ましく、15mm以上10cm以下が更に好ましい。筒状構造体の貫通孔に沿う方向の長さが1mm未満であると、気相中に浮遊しているCNTが十分に加速されず成長促進作用が抑制される傾向がある。一方、筒状構造体の貫通孔に沿う方向の長さが1mを超えると、貫通孔の内壁におけるCNTの堆積量が増加するためCNTの回収が困難となる傾向がある。
【0137】
なお、CNT伸長部の長さが20mmを超えると、CNT同士が集合してCNT集合線を形成する可能性が高くなる場合がある。よって、CNT単体としての回収量を増加させたい場合は、CNT伸長部の長さを1mm以上20mm未満とすることが好ましい。
【0138】
CNT伸長部がハニカム構造体からなる場合、貫通孔の長手方向が、炭素含有ガスの流れに沿う方向となるように、カーボンナノチューブ集合線製造装置にハニカム構造体を配置する。
【0139】
本明細書において、ハニカム構造体とは、多数の細い筒状の貫通孔を有する多孔体を意味する。
【0140】
CNT伸長部がハニカム構造体からなる場合、一の貫通孔の断面積は、0.005mm2以上が好ましく、0.01mm2以上が好ましく、0.05mm2以上が好ましく、0.1mm2以上がより好ましく、0.5mm2以上が更に好ましい。一の貫通孔の断面積が0.005mm2未満であると、貫通孔内部でCNTの目詰まりが生じる傾向がある。一方、一の貫通孔の断面積の上限値は、例えば100mm2が好ましく、50mm2がより好ましく、10mm2が更に好ましい。本明細書において、一の貫通孔の断面積は、上流側から下流側まで一定である。ここで、断面積が一定とは、断面積の最大値と最小値が、平均値±5%以内であることを意味する。
【0141】
なお、CNT伸長部の断面積が4mm2以下であると、CNT同士が集合してCNT集合線を形成する可能性が高くなる場合がある。よって、CNT単体としての回収量を増加させたい場合は、CNT伸長部の断面積を4mm2超100mm2以下とすることが好ましい。
【0142】
CNT伸長部がハニカム構造体からなる場合、ハニカム構造体の貫通孔に沿う方向(長手方向)の長さは、1mm以上1m以下が好ましく、10mm以上50cm以下がより好ましく、15mm以上10cm以下が更に好ましい。ハニカム構造体の貫通孔に沿う方向の長さが1mm未満であると、気相中に浮遊しているCNTが十分に加速されず成長促進作用が抑制される傾向がある。一方、ハニカム構造体の貫通孔に沿う方向の長さが1mを超えると、貫通孔の内壁におけるCNTの堆積量が増加するためCNTの回収が困難となる傾向がある。
【0143】
なお、CNT伸長部の長さが20mmを超えると、CNT同士が集合してCNT集合線を形成する可能性が高くなる場合がある。よって、CNT単体としての回収量を増加させたい場合は、CNT伸長部の長さを1mm以上20mm未満とすることが好ましい。
【0144】
ハニカム構造体は、セラミックス(アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、フォルステライト、ステアタイト、コージライト、ムライト、フェライト等)、石英硝子、硝子、金属類、黒鉛からなることができる。中でも、CNT製造時において要求される耐熱性や耐久性の観点から、セラミックスからなることが好ましい。
【0145】
<その他の構成>
CNT製造装置は、上記の構成に加えて、磁場を発生させる磁場発生部を含むことができる。具体的には、CNT伸長部において、反応管の周囲にコイル状に電線を設置することができる。該電線を通電することで、反応管の内部に、反応管の中心軸に沿った方向の磁力線を発生させることにより、CNTに磁場に由来する引張力を加えることができる。
【0146】
CNT製造装置は、上記の構成に加えて、電場を発生させる磁場発生部を含むことができる。具体的には、CNT伸長部において、炭素含有ガスの下流側に導電性材料からなる+電極、上流側に導電性材料からなる-電極を設置することができる。これにより、反応管の中心軸に沿った電界を発生させて、CNTに電場に由来する引張力を加えることができる。
【0147】
[実施の形態4:カーボンナノチューブ集合線の製造方法]
実施の形態4に係るカーボンナノチューブ集合線の製造方法について説明する。カーボンナノチューブ集合線の製造方法は、浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程(以下、成長工程とも記す)と、浮遊状態の複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程(以下、伸長工程とも記す)と、浮遊状態の複数のカーボンナノチューブを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させてカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程(以下、集合工程とも記す)とを含むことができる。
【0148】
カーボンナノチューブ集合線は、例えば
図14に示されるカーボンナノチューブ集合線製造装置により作製することができる。カーボンナノチューブ集合線製造装置20は、管状のカーボンナノチューブ成長部(以下、CNT成長部とも記す)21と、CNT成長部21の中にCNT成長部21の一方の端部(
図14において右側の端部)から炭素含有ガスを供給するガス供給部22と、CNT成長部21内に触媒粒子Pを供給する触媒供給部23と、CNT成長部21の他方の端部側(
図14において左側の端部)に配置され、CNT成長部21で得られた複数のカーボンナノチューブを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させるカーボンナノチューブ集合部24(以下、CNT集合部とも記す)とを備えることができる。
【0149】
<成長工程>
成長工程において、浮遊状態の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、触媒粒子から、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させる。成長工程の内容は、実施の形態1に記載された成長工程と同一であるため、その説明は繰り返さない。
【0150】
成長工程により得られたCNTの長さは、0.1μm以上20μm以下が好ましい。成長工程により得られたCNTの長さが0.1μm未満であると、近接するCNTが長手方向に配向せずに絡まってしまい、二次粒子を形成する傾向がある。一方、CNTの長さが20μmを超えると、伸長工程を行うまでの時間が長くなり、カーボンナノチューブの製造効率が不必要に低下する傾向がある。成長工程により得られたCNTの長さは0.5μm以上15μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下が更に好ましい。CNTの長さは、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0151】
<伸長工程>
次に、成長工程で得られた浮遊状態の複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、複数のカーボンナノチューブを伸長させる。
【0152】
伸長工程は、CNT成長部21及びCNT集合部24の内部、又は、CNT集合部24の内部で行われる。伸長工程がCNT成長部21の内部で行われる場合は、伸長工程は、CNT成長部21の炭素含有ガスの下流側、すなわち、CNT集合部側で行われることが好ましい。
【0153】
引張力は、炭素含有ガスの流速を変化させることにより複数のカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。例えば、炭素含有ガスの下流側の平均流速を、炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きくすることにより、CNTに下流側に向かう方向の引張力を加えることができる。カーボンナノチューブの端部に引張力が作用することで、触媒粒子Pから延びるカーボンナノチューブが引っ張られ、塑性変形して縮径しつつ長手方向に伸長される。
【0154】
伸長工程において、複数のカーボンナノチューブは、炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して伸長することが好ましい。これによると、カーボンナノチューブが曲がりにくく、チューブ部Tが六員環の炭素のみからなる直線状のカーボンナノチューブを得ることができると考えられる。六員環の炭素のみからなるカーボンナノチューブは、劣化が進みにくく、品質を維持することができる。
【0155】
上記の炭素含有ガスの下流側の平均流速は、0.051cm/sec以上10.001cm/sec以下が好ましく、0.201cm/sec以上5.001cm/sec以下が更に好ましい。炭素含有ガスの下流側の平均流速が0.051cm/sec未満であると、カーボンナノチューブの伸長速度が成長速度に比べて十分に速くならない傾向がある。一方、炭素含有ガスの下流側の平均流速が10.001cm/secを超えると、カーボンナノチューブを触媒粒子Pから剥離してカーボンナノチューブの成長を停止させることでカーボンナノチューブの形成が阻害される傾向がある。
【0156】
上記の炭素含有ガスの上流側の平均流速は、0.050cm/sec以上10.000cm/sec以下が好ましく、0.200cm/sec以上5.000cm/sec以下が更に好ましい。炭素含有ガスの上流側の平均流速が0.050cm/sec未満であると、風圧が不足して触媒粒子P間に形成されるカーボンナノチューブの成長が停滞する傾向がある。一方、炭素含有ガスの上流側の平均流速が10.000cm/secを超えると、カーボンナノチューブを触媒粒子Pから剥離してカーボンナノチューブの成長を停止させることでカーボンナノチューブの形成が阻害される傾向がある。
【0157】
炭素含有ガスの下流側の平均流速を、炭素含有ガスの上流側の平均流速よりも大きくする方法としては、例えば、炭素含有ガスの通過する中空部の断面積を、炭素含有ガスの上流側よりも、炭素含有ガスの下流側の方を小さくすることが挙げられる。より具体的には、(i)CNT成長部において、炭素含有ガスの通過する中空部の断面積を、炭素含有ガスの上流側よりも、炭素含有ガスの下流側の方を小さくすることや、(ii)CNT成長部(上流側に該当)における炭素含有ガスの通過する中空部の断面積よりも、CNT集合部(下流側に該当)における炭素含有ガスの通過する中空部の断面積を小さくすることが挙げられる。これによると、中空部の断面積の小さくなる領域近傍で加速度場が生じ、炭素含有ガスの流速が大きくなる。
【0158】
上記(i)の場合、CNT成長部21において、炭素含有ガスの下流側の中空部の断面積は、上流側の中空部の断面積の0.001%以上35%以下とすることが好ましく、0.005%以上20%以下とすることがより好ましく、0.01%以上5%以下とすることが更に好ましい。下流側の中空部の断面積が、上流側の中空部の断面積の35%より大きいと、加速度場が生じにくい傾向がある。一方、下流側の中空部の断面積が、上流側の中空部の断面積の0.001%未満であるとCNTの目詰まりが生じる傾向がある。
【0159】
引張力は、磁場を用いることにより複数のカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。引張力として磁場を用いる場合の具体例について、
図15を用いて説明する。
図15は、CNT集合線製造装置20aの磁場発生部24a周辺を示す図である。
図15に示されるように、CNT集合線製造装置20a炭素含有ガスの下流側に位置するCNT集合部24aにおいて、反応管31の周囲にコイル状に電線301を設置し、その電線を通電することで、反応管31の内部に、反応管31の中心軸に沿った方向の磁力
線32を発生させることにより、CNTに磁場に由来する引張力を加えることができる。CNT伸長時に磁場を加えることにより、CNTに含まれる金属に直接磁力が作用し、これにより反応管内の磁力線32に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0160】
なお、
図15では、磁場によりCNTが伸長するとともに集合する場合が示されているが、CNTの伸長とCNTの集合とは同時に行われなくてもよい。すなわち、磁場によりCNTが伸長のみして、集合しなくてもよい。この場合は、電線301をCNT成長部21の炭素含有ガスの下流側に設置し、CNT成長部21に磁場を発生させる。
【0161】
引張力は、電場を用いることにより複数のカーボンナノチューブに加えられることが好ましい。引張力として電場を用いる場合の具体例について、
図16を用いて説明する。
図16は、CNT集合線製造装置20bの電場発生部24b周辺を示す図である。
図16に示されるように、CNT集合部24bにおいて、炭素含有ガスの下流側に導電性材料からなる+電極33、上流側に導電性材料からなる-電極34を設置し、反応管31の中心軸に沿った電界を発生させることにより、CNTに電場に由来する引張力を加えることができる。CNT伸長時に電場を加えることにより、CNT及びCNTに含まれる金属に直接静電力が作用し、電気力線に沿った方向にCNTが配向して伸長することができる。
【0162】
なお、
図16では、電場によりCNTが伸長するとともに集合する場合が示されているが、CNTの伸長とCNTの集合とは同時に行われなくてもよい。すなわち、電場によりCNTが伸長のみして、集合しなくてもよい。この場合は、+電極33及び-電極34をCNT成長部21の炭素含有ガスの下流側に設置し、CNT成長部21に電場を発生させる。
【0163】
カーボンナノチューブが引張力で伸長されている間も、触媒粒子P上では元の大きさの径を有するカーボンナノチューブが成長する。このため、伸長工程を経て作製されたカーボンナノチューブは、
図6に示されるように、管状のチューブ部Tと、チューブ部の端部から連続して拡径する円錐状のコーン部Cとを備えることができる。
【0164】
つまり、伸長工程では、気相成長法により形成されるカーボンナノチューブをその形成と同時に引張力で引き伸ばすことによって、カーボンナノチューブの一部の6角形セルを5角形セルに組み替えて円錐状のコーン部を形成し、再度6角形セルに組み替えてより径が小さいカーボンナノチューブであるチューブ部を形成する。
【0165】
伸長工程では、触媒粒子P上で成長したカーボンナノチューブを引張力を用いて引き伸ばしながら成長させるため、触媒粒子P上でのカーボンナノチューブの成長速度に比して極めて大きな速度でチューブ部を形成することができる。よって、比較的短時間で長いカーボンナノチューブを形成することができる。このため、触媒粒子P上で継続的にカーボンナノチューブを成長させられる条件を維持できる時間が短くても、十分に長いカーボンナノチューブを形成することができる。
【0166】
伸長工程では、触媒粒子P上のカーボンナノチューブに引張力を作用させることで、カーボンナノチューブの成長点における炭素原子の取り込みを促進すると考えられる。これによって、カーボンナノチューブの成長速度、ひいては得られるカーボンナノチューブの長さの増大速度をより大きくすることができると考えられる。
【0167】
伸長工程では、触媒粒子P上のカーボンナノチューブに引張力を作用させることで、カーボンナノチューブが曲がりにくく、チューブ部Tが六員環の炭素のみからなるシートで構成された筒状体からなる直線状のカーボンナノチューブを得ることができると考えられる。六員環の炭素のみからなるカーボンナノチューブは、劣化が進みにくく、品質を維持することができる。
【0168】
伸長工程により得られたCNTの長さは、10μm以上が好ましく、100μm以上が更に好ましい。特に、カーボンナノチューブの長さが100μm以上であると、CNT集合線の作製の観点から好適である。カーボンナノチューブの長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、600mm以下が好ましい。CNTの長さは、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0169】
<集合工程>
次に、浮遊状態の複数のカーボンナノチューブを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させてカーボンナノチューブ集合線を得る。集合工程は、CNT集合部24の内部で行われる。
【0170】
浮遊状態の複数のCNTを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させる方法としては、複数のカーボンナノチューブ同士を配向した状態で近付けることが挙げられる。例えば、CNT集合部の炭素含有ガスの通過する中空部の断面積を、CNT成長部やCNT伸長部の炭素含有ガスの通過する中空部の断面積よりも小さくことが挙げられる。より具体的には、CNT集合部をハニカム構造体とし、ハニカム構造体の貫通孔の長手方向が炭素含有ガスの流れに沿う方向となるように配置することが挙げられる。
【0171】
本実施形態で用いられるハニカム構造体は、
図14のハニカム構造体29に示されるように、多数の細い筒状の貫通孔を有する多孔体を意味する。
【0172】
CNT集合部がハニカム構造体からなる場合、一の貫通孔の断面積は、0.005mm2以上100mm2以下が好ましく、0.01mm2以上100mm2以下が好ましく、0.05mm2以上100mm2以下が好ましく、0.1mm2以上50mm2以下がより好ましく、0.5mm2以上10mm2以下が更に好ましい。一の貫通孔の断面積が0.005mm2未満であると、貫通孔内部でCNTの目詰まりが生じる傾向がある。一方、一の貫通孔の断面積が100mm2を超えると、CNT同士が十分に近づかず、集合することができない傾向がある。
【0173】
なお、CNT集合部の断面積が4mm2超であると、CNT同士の集合が十分に行われず、CNT集合線とともに、CNT単体が存在する可能性がある。よって、CNT集合線としての回収量を増加させたい場合は、CNT集合部の断面積を0.005mm2以上4mm2以下とすることが好ましく、0.01mm2以上4mm2以下とすることがより好ましい。
【0174】
CNT集合部がハニカム構造体からなる場合、ハニカム構造体の貫通孔に沿う方向(長手方向)の長さは、1mm以上1m以下が好ましく、10mm以上50cm以下がより好ましく、15mm以上10cm以下が更に好ましい。ハニカム構造体の貫通孔に沿う方向の長さが1mm未満であると、気相中に浮遊しているCNTが十分に加速されず成長促進作用が抑制される傾向がある。一方、ハニカム構造体の貫通孔に沿う方向の長さが1mを超えると、貫通孔の内壁におけるCNTの堆積量が増加するためCNTの回収が困難となる傾向がある。
【0175】
なお、CNT伸長部の長さが20mm未満であると、CNT同士の集合が十分に行われず、CNT集合線とともに、CNT単体が存在する可能性がある。よって、CNT集合線としての回収量を増加させたい場合は、CNT伸長部の長さを20mm以上1m以下とすることが好ましい。
【0176】
CNT集合部における炭素含有ガスの平均流速は、0.05cm/sec以上10cm/sec以下が好ましく、0.2cm/sec以上5cm/sec以下が更に好ましい。炭素含有ガスの平均流速が0.05cm/sec未満であると、薄膜状の無配向CNTが得られる傾向がある。一方、炭素含有ガスの平均流速が10cm/secを超えると、未反応でCNT集合部に到達した炭素含有ガスが不完全な分解反応を生じ、タールが付着する傾向がある。
【0177】
上記では、伸長工程の後に集合工程が行われる場合を説明したが、伸長工程と集合工程とは、同時に行うこともできる。又、伸長工程を行った後に、更に伸長工程及び集合工程とを同時に行うこともできる。例えば、CNT集合部としてハニカム構造体を用いた場合は、CNTの伸長と集合がハニカム構造体の貫通孔内で同時に行われる。
【0178】
上記のCNT集合線の製造方法によれば、炭素含有ガスを触媒供給部、CNT成長部及びCNT集合部に連続して供給することにより、CNT集合線を長さの制限なく連続して製造することが可能となる。CNT集合線の長さは、炭素含有ガスの流量、供給時間等を調整することにより、適宜調整することができる。
【0179】
集合工程により得られたCNT集合線の長さは、100μm以上が好ましく、1000μm以上がより好ましく、10000μm以上が更に好ましい。CNT集合線の長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、1m以下が好ましい。CNT集合線の長さは、光学顕微鏡又は目視で観察することにより測定することができる。
【0180】
<より好ましい実施の形態>
カーボンナノチューブ集合線の製造方法のより好ましい実施の形態について、
図14及び
図20を用いて説明する。
図14は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線製造装置を説明する図である。
図20は、カーボンナノチューブ集合部の第2流路の拡大図である。
図20では、右側が上流側であり、左側が下流側である。
【0181】
成長工程において、複数のカーボンナノチューブ及び炭素含有ガスは、第1流路を通過し、集合工程において、複数のカーボンナノチューブ及び炭素含有ガスは、第1流路より下流側に配置される1以上の第2流路を通過し、第2流路のそれぞれの断面積は、第1流路の断面積よりも小さいことが好ましい。
図14において、第1流路はCNT成長部21の中空部に該当し、第2流路はCNT集合部24の中空部(すなわち、ハニカム構造体29の貫通孔)に該当する。
【0182】
これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0183】
第2流路より下流側の炭素含有ガスの温度は、第2流路より上流側の炭素含有ガスの温度よりも低いことが好ましい。これによると、CNT同士が集合しやすい。
【0184】
第2流路より上流側の炭素含有ガスの温度は800℃以上であり、第2流路より下流側の炭素含有ガスの温度は600℃以下であることが好ましい。これによると、CNT同士が集合しやすい。
【0185】
第2流路より上流側の炭素含有ガスの温度は800℃以上1200℃以下が好ましく、900℃以上1150℃以下が好ましく、950℃以上1050℃以下がより好ましい。
【0186】
第2流路より下流側の炭素含有ガスの温度は600℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましく、300℃以下が更に好ましい。第2流路より下流側の炭素含有ガスの温度の下限は特に限定されないが、例えば、80℃とすることができる。なお、第2流路から出たCNT集合線に対して液体のエタノールミスト等でCNTフィラメント間の空隙に液体を含浸した後、約78℃で蒸発させる事により、CNTフィラメント間を狭めて接着させ高密度化するプロセスを追加する事が出来る。
【0187】
第2流路内の炭素含有ガスの温度は、下流側が上流側よりも低く、第2流路内の下流側端部における炭素含有ガスの温度は、600℃以下であることが好ましい。これによると、第2流路内でCNT同士が集合しやすい。ここで、第2流路内の下流側端部とは、
図20において、第2流路240(ハニカム構造体の貫通孔)の下流側の出口291に該当する。
【0188】
第2流路内の下流側端部における炭素含有ガスの温度は、500℃以下がより好ましく、300℃以下が更に好ましい。第2流路内の下流側端部における炭素含有ガスの温度の下限は特に限定されないが、例えば80℃とすることができる。
【0189】
第2流路内の下流側に、炭素含有ガスの温度が600℃以下である第1領域が存在し、該第1領域の第2流路の長手方向に沿う長さは1cm以上であることが好ましい。これによると、第2流路内でCNT同士が集合しやすい。
【0190】
第1領域の第2流路の長手方向に沿う長さは1cm以上が好ましく、5cm以上がより好ましい。第1領域の第2流路の長手方向に沿う長さの上限は特に限定されないが、例えば20cmが好ましい。
【0191】
第2流路のそれぞれの断面積は0.01mm2以上4mm2以下であることが好ましい。これによると、CNTの径が縮小しやすい。第2流路のそれぞれの断面積は0.1mm2以上2mm2以下がより好ましく、0.2mm2以上1mm2以下が更に好ましい。
【0192】
第1流路の断面積S1と、第2流路のそれぞれの断面積S2との比S1/S2は100以上1000000以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。S1/S2は1000以上100000以下がより好ましく、4000以上40000以下が更に好ましい。
【0193】
本明細書において、特に説明のない限りは、第1流路の断面積は、その両端部の一部を除き、上流側から下流側まで一定である。本明細書において、特に説明のない限りは、第2流路のそれぞれの断面積は、その両端部の一部を除き、上流側から下流側まで一定である。ここで、断面積が一定とは、断面積の最大値と最小値が、平均値±5%以内であることを意味する。
【0194】
集合工程において、複数のカーボンナノチューブの径が縮小することが好ましい。これによると、径の小さいCNTを含むCNT集合線を得ることができる。
【0195】
第2流路のそれぞれの長さは10mm以上200mm以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。第2流路のそれぞれの長さは、20mm以上100mm以下がより好ましく、30mm以上80mm以下が更に好ましい。
【0196】
第2流路の好ましい形態の一例について、
図23及び
図24を用いて説明する。
図23は、複数の第2流路240aを含むハニカム構造体29dを示す。
図24は、
図23のハニカム構造体のXXIV-XXIV線断面図である。
図24に示されるように、第2流路240aのそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝M1を備えた形状を有することが好ましい。これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成されやすい。CNT集合線が均一な撚り角を有すると、該CNT集合線を束ねて形成されるCNT集合線バンドルも、均一な撚り角を有することができる。よって該CNT集合線バンドルは優れた機械的強度を有することができる。
【0197】
第2流路の好ましい形態の他の一例について、
図33~
図36を用いて説明する。
図33は、複数の第2流路240dを含むハニカム構造体29gを示す。
図34は、
図33のハニカム構造体を矢印XXXIV方向(上流側)から見た図である。
図35は、
図33のハニカム構造体を矢印XXXVで示す方向(下流側)から見た図である。
図36は、
図33のハニカム構造体のXXXVI-XXXVI線断面図である。
【0198】
図36に示されるように、第2流路240dのそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNTが集合しやすく、CNT集合線が形成されやすい。ここで、第2流路の断面積とは、第2流路の長手方向を法線とする断面における面積を意味する。
【0199】
第2流路の上流側の断面積は0.1mm2以上100mm2以下であることが好ましく、0.5mm2以上50mm2以下であることがより好ましい。下流側の断面積は0.005mm2以上10mm2以下であることが好ましく、0.01mm2以上1mm2以下であることがより好ましい。
【0200】
第2流路の上流側の断面積S2Aに対する下流側の断面積S2Bの割合であるS2B/S2Aは、0.00005以上0.5以下が好ましく、0.0001以上0.25以下がより好ましい。
【0201】
[実施の形態5:カーボンナノチューブ集合線]
実施の形態4のカーボンナノチューブ集合線の製造方法で作製されるカーボンナノチューブ集合線について説明する。
図1は本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線(以下、CNT集合線とも記す)を説明する図である。
図1に示されるように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線1は、複数のカーボンナノチューブ2を備える。該CNT集合線において、複数のカーボンナノチューブ2が0.9以上1.0以下の配向度で配向していることが好ましい。
【0202】
(カーボンナノチューブ)
本実施形態において、カーボンナノチューブ2としては、基本的に実施の形態2に記載のカーボンナノチューブを用いることができる。
【0203】
カーボンナノチューブの長さは、用途によって適宜選択することができる。カーボンナノチューブの長さは、例えば、10μm以上が好ましく、100μm以上が更に好ましい。特に、カーボンナノチューブの長さが100μm以上であると、CNT集合線の作製の観点から好適である。カーボンナノチューブの長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、600mm以下が好ましい。CNTの長さは、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0204】
カーボンナノチューブの径は、0.6nm以上20nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましく、1nm以上2nm以下が更に好ましい。カーボンナノチューブの径が1nm以上10nm以下であると、酸化条件における耐熱性の観点から好適である。カーボンナノチューブの径が0.6nm以上2nm以下であると、破断強度向上の観点から好適である。
【0205】
本明細書においてカーボンナノチューブの径とは、一のCNTの平均外径を意味する。CNTの平均外径は、CNTの任意の2カ所における断面を透過型電子顕微鏡により直接観察し、該断面において、CNTの外周上の最も離れた2点間の距離である外径を測定し、得られた外径の平均値を算出することにより得られる。CNTが一方又は両方の端部にコーン部を含む場合は、コーン部を除く場所において径を測定する。
【0206】
カーボンナノチューブは、波長532nmのラマン分光分析におけるGバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度との比であるD/G比が0.1以下であることが好ましい。
【0207】
本明細書中、カーボンナノチューブ集合線中のカーボンナノチューブのD/G比は、下記の方法により測定された値である。
【0208】
カーボンナノチューブ集合線について、下記の条件でラマン分光分析を行い、ラマンスペクトル(以下、CNT集合線のラマンスペクトルとも記す。)を得る。該CNT集合線のラマンスペクトルにおいて、Gバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度とからD/G比を算出する。該CNT集合線のD/G比を、カーボンナノチューブ集合線中のカーボンナノチューブのD/G比と見做す。
ラマン分光分析の測定条件
波長:532nm
レーザーパワー:17mW
露光時間:1秒
平均回数:3回
対物レンズ倍率:50倍
本実施形態に係るCNT集合線中のCNTのD/G比を、CNT集合線のD/G比と同一と見做す理由は下記の通りである。
【0209】
本発明者らは、集合線化される前の複数のカーボンナノチューブについてラマン分光分析を上記と同一の条件で行い、ラマンスペクトル(以下、CNTラマンスペクトルとも記す。)を得た。得られた複数のCNTラマンスペクトルのそれぞれにおいて、Gバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度とからD/G比を算出した。
【0210】
次に、該カーボンナノチューブを集合線化させて、CNT集合線を準備した。該CNT集合線について、上記の条件でラマン分光分析を行い、ラマンスペクトル(以下、CNT集合線ラマンスペクトルとも記す。)を得た。該CNT集合線ラマンスペクトルにおいて、Gバンドのピーク強度とDバンドのピーク強度とからD/G比を算出した。
【0211】
上記で算出された集合線化される前の複数のカーボンナノチューブのD/G比のデータを平均化した値と、CNT集合線のD/G比の値とはほぼ同一であることが確認された。これは、集合線化される前のカーボンナノチューブのD/G比が、CNT集合線中のCNTにおいて維持されていることを示す。従って、本明細書中、CNT集合線中のカーボンナノチューブのD/G比は、集合線化される前のCNTのD/G比と同一と見做すことができる。
【0212】
(配向度)
本明細書におけるCNTの配向度の算出方法について、
図2~
図5を用いて説明する。本明細書において、CNTの配向度とは下記(a1)~(a6)の手順により算出される値である。
なお、出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいて、後述する配向度の測定結果を測定視野(サイズ:10nm×10nm)の選択個所を変更して複数回算出しても、測定結果のばらつきはほとんどないことが確認された。
【0213】
(a1)CNT集合線の撮像
下記の機器を用いて、下記の条件で、CNT集合線を撮像する。
【0214】
透過型電子顕微鏡(TEM):JEOL社製「JEM2100」(製品名)
撮像条件:倍率5万倍~120万倍、加速電圧60kV~200kV。
【0215】
本実施形態に係るCNT集合線のTEM画像の一例を
図2に示す。
【0216】
(a2)撮像された画像の二値化処理
上記(a1)で撮像された画像に対して、下記の画像処理プログラムを用いて、下記の手順に従い二値化処理を施す。
【0217】
画像処理プログラム:非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラム「FiberOri8single03」(http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm)
処理手順:
1.ヒストグラム平均輝度補正
2.バックグラウンド除去
3.単一閾値による二値化
4.輝度反転。
【0218】
図2のTEM画像を二値化処理した画像を
図3に示す。
(a3)二値化処理された画像のフーリエ変換
上記(a2)で得られた画像に対して、上記と同一の画像処理プログラム(非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラム「FiberOri8single03」(http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm))を用いてフーリエ変換を行う。
【0219】
図3の二値化処理画像をフーリエ変換した画像を
図4に示す。
(a4)配向角度と配向強度の計算
フーリエ変換画像で、X軸正方向を0°として、反時計回りの角度(θ°)に対する平均振幅を計算する。
【0220】
図4のフーリエ変換画像から得られた配向角度と配向強度との関係を示すグラフを
図5に示す。
【0221】
(a5)半値幅の測定
図5のグラフに基づき、半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を測定する。
【0222】
(a6)配向度の算出
上記の半値全幅に基づき、下記式(1)により、配向度を算出する。
【0223】
配向度=(180°-半値全幅)/180° (1)
配向度が0の場合は、完全無配向を意味する。配向度が1の場合は完全配向を意味する。
【0224】
本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線において、複数のカーボンナノチューブが0.9以上1.0以下の配向度で配向していることが好ましい。これは、本実施形態のCNT集合線において、複数のCNTの配向性が高いことを意味する。これにより、本実施形態に係るCNT集合線はCNTが有する電気伝導度や機械的強度の特性を維持したまま、長尺化することができる。
【0225】
CNT集合線におけるCNTの配向度が0.9未満であると、電気伝導度や機械的強度が低下する傾向がある。配向度の下限値は、0.93が好ましく、0.94がより好ましく、0.95が更に好ましい。配向度の上限値は、0.99が好ましく、1がより好ましい。
【0226】
(形状)
カーボンナノチューブ集合線の形状は、複数のカーボンナノチューブがそれらの長手方向に配向して集合した糸形状である。
【0227】
カーボンナノチューブ集合線の長さは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線の長さは、例えば、100μm以上が好ましく、1000μm以上がより好ましく、10cm以上が更に好ましい。CNT集合線の長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、1m以下が好ましい。CNT集合線の長さは、走査型電子顕微鏡、光学顕微鏡又は目視で観察することにより測定することができる。
【0228】
カーボンナノチューブ集合線の径の大きさは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線の径は、例えば、0.1μm以上が好ましく、1μm以上が更に好ましい。CNT集合線の径の上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、100μm以下が好ましい。本実施形態において、CNT集合線の径の大きさは、CNT集合線の長さよりも小さい。すなわち、CNT集合線の長さ方向が長手方向に該当する。
【0229】
本明細書においてカーボンナノチューブ集合線の径とは、一のCNT集合線の平均外径を意味する。一のCNT集合線の平均外径は、一のCNT集合線の任意の2箇所における断面を透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察し、該断面においてCNT集合線の外周上の最も離れた2点間の距離である外径を測定し、得られた外径の平均値を算出することにより得られる。
【0230】
(触媒由来元素)
カーボンナノチューブ集合線は、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、イットリウム、クロム、パラジウム、白金及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、該金属元素は、前記カーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることが好ましい。ここで、金属元素がCNT集合線の長手方向に分散しているとは、金属元素がCNT集合線の長手方向において偏在していないことを意味する。
【0231】
これらの金属元素は、CNT集合線の製造時に使用した触媒(フェロセン(Fe(C5H5)2)、ニッケロセン(Ni(C5H5)2)、コバルトセン(Co(C5H5)2等)に由来するものである。本実施形態に係るCNT集合線においては、これらの金属元素がCNT集合線の長手方向に分散して存在しているため、金属元素がCNTの有する電気伝導度の特性に影響を与えることなく、CNT集合線は本来有する電気伝導度を維持したまま、長尺化することができる。
【0232】
CNT集合線に含まれる金属元素の種類、及び、その含有量は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry、EDX)により確認及び測定することができる。CNT集合線における金属元素の合計含有量は原子数基準で0.1%以上50%以下が好ましく、1%以上40%以下がより好ましく、5%以上20%以下が更に好ましい。
【0233】
CNT集合線に含まれる金属元素がカーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることは、SEMやTEM等の電子顕微鏡と同時計測可能なEDXや、電子エネルギー損失分光分析(Electron energy loss spectrometry、EELS)により確認することができる。
【0234】
カーボンナノチューブ集合線は、硫黄元素を含み、該硫黄元素は、前記カーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることが好ましい。ここで、硫黄元素がCNT集合線の長手方向に分散しているとは、硫黄元素がCNT集合線の長手方向において偏在していないことを意味する。
【0235】
硫黄元素は、CNT集合線の製造時に使用した補助触媒(CS2)に由来するものである。本実施形態に係るCNT集合線においては、硫黄元素がCNT集合線の長手方向に分散して存在しているため、硫黄元素がCNTの有する電気伝導度や機械的強度等の特性に影響を与えることなく、CNT集合線はこれらの特性を維持したまま、長尺化することができる。
【0236】
CNT集合線が硫黄元素を含むこと、及び、CNT集合線中の硫黄元素の含有量は、EDX、熱重量分析、X線光電子分光法により確認及び測定することができる。CNT集合線における硫黄元素の含有量は、原子数基準で0.1%以上20%以下が好ましく、1%以上15%以下がより好ましく、2%以上10%以下が更に好ましい。
【0237】
CNT集合線に含まれる硫黄元素がカーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることは、SEMやTEM等の電子顕微鏡と同時計測可能なEDXや、EELSにより確認することができる。
【0238】
[実施の形態6:カーボンナノチューブ集合線製造装置]
実施の形態6に係るカーボンナノチューブ集合線の製造に用いられるカーボンナノチューブ集合線製造装置について
図14を用いて説明する。
【0239】
図14に示されるカーボンナノチューブ集合線製造装置20は、管状のカーボンナノチューブ成長部(以下、CNT成長部とも記す)21と、CNT成長部21の一方の端部(
図14において右側の端部)からCNT成長部21に炭素含有ガスを供給するガス供給部22と、CNT成長部21内に触媒粒子Pを供給する触媒供給部23と、CNT成長部21の他方の端部側(
図14において左側の端部)に配置され、CNT成長部21で得られた複数のカーボンナノチューブを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させるカーボンナノチューブ集合部(以下、CNT集合部とも記す)とを備えることができる。
【0240】
<カーボンナノチューブ成長部>
カーボンナノチューブ成長部21は、例えば石英管からなる管状の形状を有する。CNT成長部21において、炭素含有ガスを用いて、触媒粒子P上にカーボンナノチューブ2が形成される。
【0241】
カーボンナノチューブ成長部21は、電気炉28内に配置され、ヒータ(図示せず)によって加熱される。
【0242】
CNT成長部21の内部温度としては、800℃以上1200℃以下が好ましい。このような温度を維持するために、ガス供給部22からCNT成長部21に加熱した炭素含有ガスを供給してもよく、CNT成長部21において炭素含有ガスを加熱してもよい。
【0243】
CNT成長部21は、炭素含有ガスの通過する中空部の断面積が、炭素含有ガスの上流側よりも、炭素含有ガスの下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、炭素含有ガスの平均流速が、上流側より下流側の方が大きくなり、カーボンナノチューブ2に引張力を加えることができる。
【0244】
CNT成長部21における、炭素含有ガスの下流側の中空部の断面積と上流側の中空部の断面積との大きさの関係は、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載した関係と同一とすることができるため、その説明は繰り返さない。
【0245】
<ガス供給部>
ガス供給部22は、実施の形態3のカーボンナノチューブ製造装置に記載したガス供給部と同一とすることができるため、その説明は繰り返さない。
【0246】
<触媒供給部>
触媒供給部23は、実施の形態3のカーボンナノチューブ製造装置に記載した触媒供給部と同一とすることができるため、その説明は繰り返さない。
【0247】
<カーボンナノチューブ集合部>
カーボンナノチューブ集合部24は、CNT成長部21のガス供給部23側と反対側の端部に配置される。すなわち、CNT集合部24は、CNT成長部21の炭素含有ガスの下流側に配置される。CNT集合部24において、カーボンナノチューブ集合線が形成される。
【0248】
CNT集合部は、浮遊状態の複数のカーボンナノチューブを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させることのできるものであれば、いずれの構造も用いることができる。例えば、CNT集合部は、ハニカム構造体、直管型細管構造等からなることができる。
【0249】
CNT集合部がハニカム構造体からなる場合、貫通孔の長手方向が、炭素含有ガスの流れに沿う方向となるように、カーボンナノチューブ集合線製造装置にハニカム構造体を配置する。
【0250】
CNT集合部がハニカム構造体からなる場合、その構成は、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載したものと同一とすることができるため、その説明は繰り返さない。
【0251】
<その他の構成>
図15に示されるように、CNT集合線製造装置20aは、上記の構成に加えて、磁場を発生させる磁場発生部24aを含むことができる。磁場発生部24aは、CNT成長部21又はCNT集合部24において、反応管31の周囲にコイル状に電線301を設置することにより構成される。電線301を通電することで、反応管31の内部に、反応管31の中心軸に沿った方向の磁力
線32を発生させることにより、磁場を発生させることができる。これにより、CNTに磁場に由来する引張力を加えることができる。
【0252】
図16に示されるように、CNT集合線製造装置20bは、上記の構成に加えて、電場を発生させる電場発生部24bを含むことができる。電場発生部24bは、CNT成長部21又はCNT集合部24において、炭素含有ガスの下流側に導電性材料からなる+電極33、上流側に導電性材料からなる-電極34を設置することにより構成される。これにより反応管31の中心軸に沿った電界を発生させることにより、電場を発生させることができる。これにより、CNTに電場に由来する引張力を加えることができる。
【0253】
<より好ましい実施の形態>
カーボンナノチューブ集合線製造装置のより好ましい実施の形態について、下記に説明する。
【0254】
カーボンナノチューブ成長部は、その内部に第1流路を有し、カーボンナノチューブ集合部は、その内部に1以上の第2流路を有し、第2流路のそれぞれの断面積は、第1流路の断面積よりも小さいことが好ましい。
図14において、第1流路はCNT成長部21の中空部に該当し、第2流路はCNT集合部24の中空部(すなわち、ハニカム構造体29の貫通孔)に該当する。
【0255】
これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0256】
カーボンナノチューブ集合部はハニカム構造を有し、該ハニカム構造は、複数の貫通孔から構成される複数の第2流路を有するハニカム構造体であり、第2流路のそれぞれの断面積は0.01mm2以上4mm2以下であることが好ましい。これによると、CNTの径が縮小しやすい。第2流路のそれぞれの断面積は0.02mm2以上2mm2以下がより好ましく、0.1mm2以上1mm2以下が更に好ましい。
【0257】
第1流路の断面積S1と、第2流路のそれぞれの断面積S2との比S1/S2は100以上1000000以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。S1/S2は1000以上100000以下がより好ましく、2000以上20000以下が更に好ましい。
【0258】
カーボンナノチューブ集合部において、複数のカーボンナノチューブの径が縮小することが好ましい。これによると、径の小さいCNTを含むCNT集合線を得ることができる。
【0259】
カーボンナノチューブ集合部の第2流路のそれぞれの長さは10mm以上200mm以下であることが好ましい。これによると、CNTが伸長しやすく、かつ、CNTの径が縮小しやすい。第2流路のそれぞれの長さは、20mm以上100mm以下がより好ましく、30mm以上50mm以下が更に好ましい。
【0260】
第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有することが好ましい。これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成される。第2流路のそれぞれが、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有する場合の詳細については、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載しているため、その説明は繰り返さない。
【0261】
第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNTが集合しやすく、CNT集合線が形成されやすい。第2流路のそれぞれの断面積が、上流側よりも下流側の方が小さい場合の詳細については、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載しているため、その説明は繰り返さない。
【0262】
[実施の形態7:カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法]
実施の形態7に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法は、浮遊状態の複数の触媒粒子に炭素含有ガスを供給することにより、複数の触媒粒子のそれぞれから、1又は複数のカーボンナノチューブを成長させる成長工程(以下、成長工程とも記す)と、浮遊状態の複数のカーボンナノチューブに引張力を加えることにより、複数のカーボンナノチューブを伸長させる伸長工程(以下、伸長工程とも記す)と、浮遊状態の複数のカーボンナノチューブを炭素含有ガスの流れに沿う方向に配向して集合させて複数のカーボンナノチューブ集合線を得る集合工程(以下、集合工程とも記す)と、複数のカーボンナノチューブ集合線を複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル工程(以下、バンドル工程とも記す)とを含むことができる。
【0263】
カーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法における成長工程、伸長工程及び集合工程は、それぞれ実施の形態4に係るカーボンナノチューブ集合線の製造方法における成長工程、伸長工程及び集合工程と同一の工程であるため、その説明は繰り返さない。
【0264】
<バンドル工程>
バンドル工程において、複数のカーボンナノチューブ集合線を複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得る。
【0265】
バンドル工程は、集合工程と同時に行うことができる。すなわち、集合工程において、CNT集合線の作製と並行して、得られたCNT集合線を長手方向に沿う方向に配向して束ねてCNT集合線バンドルを得ることができる。この場合、バンドル工程は、CNT集合部24の内部で行われる。
【0266】
バンドル工程は、集合工程の後に独立して行うこともできる。すなわち、集合工程においてCNT集合線を作製した後に、バンドル工程を行うことができる。この場合、CNTバンドル部は、CNT集合部24の炭素含有ガスの下流側に接続して配置されることが好ましい。
【0267】
CNTバンドル部としては、例えば、ハニカム構造体、直管型細管構造等を用いることができる。
【0268】
バンドル工程は、複数のカーボンナノチューブ集合線に揮発性液体を付着させる付着工程と、カーボンナノチューブ集合線に付着させた揮発性液体を蒸発させる蒸発工程とを含むことが好ましい。これによると、得られたCNT集合線バンドルの密度が向上する。
【0269】
揮発性液体としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、アニソール、トルエン、クレゾール、ピロリドン、カルビトール、カルビトールアセテート、水、エポキシモノマー、アクリルモノマーを用いることができる。揮発性液体にはモノマーあるいは樹脂が含まれる。
【0270】
付着工程は、複数のカーボンナノチューブ集合線をこれらの長手方向に沿う方向に配向して束ねる前に行われることが好ましい。これによるとカーボンナノチューブ間に浸透した液体が揮発して抜ける過程で均一かつ高密度にカーボンナノチューブ同士を密着させる事が出来る。
【0271】
付着工程は、複数のカーボンナノチューブ集合線をこれらの長手方向に沿う方向に配向して束ねた後に行われることが好ましい。これによるとカーボンナノチューブ間に浸透した液体が揮発して抜ける過程で均一かつ高密度にカーボンナノチューブ同士を密着させる事が出来る。
【0272】
蒸発工程は、自然乾燥により行うことができる。
バンドル工程は、複数のカーボンナノチューブ集合線に張力を加えながら行われることが好ましい。これによると、得られたCNT集合線バンドルの強度が向上する。
【0273】
<他の好ましい形態>
上記成長工程において、複数のカーボンナノチューブ及び炭素含有ガスは、第1流路を通過し、集合工程及びバンドル工程において、複数のカーボンナノチューブ及び炭素含有ガスは、第1流路よりも下流側に配置される1以上の第2流路を通過し、第2流路のそれぞれの断面積は、第1流路の断面積よりも小さいことが好ましい。これによると、カーボンナノチューブに対して、下流側に向かう引張力を加えることができる。
【0274】
第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有することが好ましい。これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成されやすい。第2流路のそれぞれが、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有する場合の詳細については、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載しているため、その説明は繰り返さない。
【0275】
第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNT及びCNT集合線が集合しやすく、CNT集合線及びCNT集合線バンドルが形成されやすい。第2流路のそれぞれの断面積が上流側よりも下流側の方が小さい場合の詳細については、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載しているため、その説明は繰り返さない。
【0276】
第2流路の他の好ましい形態について
図25~
図28を用いて説明する。
図25は、複数の第2流路240bを含むハニカム構造体29eの一例を示す図である。
図26は、
図25のハニカム構造体29eを矢印XXVIで示す方向(上流側)から見た図である。
図27は、
図25のハニカム構造体29eを矢印XXVIIで示す方向(下流側)から見た図である。
図28は、
図25のハニカム構造体のXXVIII-XXVIII線断面図である。
【0277】
図26及び
図28において、上流側の第2流路間の最近接距離は、2つの第2流路の外縁間の最短距離dAで示される。
図27及び
図28において、下流側の第2流路間の最近接距離は、2つの第2流路の外縁間の最短距離dBで示される。
図26~
図28に示されるように、第2流路240bは複数存在し、第2流路間の最近接距離は、上流側(最短距離dA)よりも下流側(最短距離dB)の方が短いことが好ましい。これによると、CNT集合線同士が束ねられやすく、CNT集合線バンドルが形成されやすい。
【0278】
第2流路の他の好ましい形態について
図29~
図32を用いて説明する。
図29は、複数の第2流路240cを含むハニカム構造体29fの他の一例を示す図である。
図30は、
図29のハニカム構造体29fを矢印XXXで示す方向(上流側)から見た図である。
図31は、
図29のハニカム構造体29fを矢印XXXIで示す方向(下流側)から見た図である。
図32は、
図29のハニカム構造体のXXXII-XXXII線断面図である。
【0279】
図30及び
図32において、上流側の第2流路間の最近接距離は、2つの第2流路の外縁間の最短距離dCで示される。
図32に示されるように、複数の第2流路240cは、下流側(
図32において左側)において連結しており、下流側の第2流路間の最短距離は0である。すなわち、
図29~
図32の形態は、第2流路間の最近接距離が、上流側(最短距離dC)よりも下流側(最短距離0)の方が短い場合に該当する。これによると、CNT集合線同士が束ねられやすく、CNT集合線バンドルが形成されやすい。
【0280】
第2流路は、上記で説明した下記(I)~(III)の形態うち、2つ以上を備えていても良い。
(I)第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有する。
(II)第2流路間の最近接距離は、上流側よりも下流側の方が短い。
(III)第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さい。
【0281】
[実施の形態8:カーボンナノチューブ集合線バンドル]
実施の形態7に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法で作製されるカーボンナノチューブ集合線バンドルについて説明する。
図7は、本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルを説明する図である。
図7に示されるように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドル(以下、CNT集合線バンドルとも記す)3は、カーボンナノチューブ集合線1が0.8以上1以下の配向度で配向している配向領域を含むことが好ましい。
【0282】
(カーボンナノチューブ集合線バンドルの構成)
カーボンナノチューブ集合線バンドル3を構成するカーボンナノチューブ集合線1としては、実施の形態5のCNT集合線を用いることができる。また、該CNT集合線1を構成するカーボンナノチューブ2としては、実施の形態2に記載したカーボンナノチューブと同一のものを用いることができる。
【0283】
(配向度)
カーボンナノチューブ集合線1において、カーボンナノチューブ2が0.9以上1以下の配向度で配向し、該カーボンナノチューブ集合線バンドル3において、カーボンナノチューブ集合線1が0.8以上1以下の配向度で配向している配向領域を含むことが好ましい。
【0284】
カーボンナノチューブ集合線におけるCNTの配向度は、実施の形態5に記載したカーボンナノチューブ集合線におけるカーボンナノチューブの配向度の算出方法と同様の方法で算出される値であるため、その説明は繰り返さない。
【0285】
カーボンナノチューブ集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度は、基本的には実施の形態5の配向度の算出方法に記載された(a1)~(a6)の手順と同様の手順で算出される値である。異なる点は、(a1)の手順において、下記の機器を用いて、下記の条件で、CNT集合線バンドルを撮像する点である。
【0286】
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy):テクネックス工房社製「Cry-10」(製品名)
撮像条件:倍率40倍~10万倍、加速電圧1kV~17k。
測定視野:30μm×30μm
【0287】
上記の条件で撮影された本実施形態に係るCNT集合線バンドルの一例のSEM画像を
図8に示す。
【0288】
上記(a2)の手順において、
図8のSEM画像を二値化処理した画像を
図9に示す。
上記(a3)の手順において、
図9の二値化処理画像をフーリエ変換した画像を
図10に示す。
【0289】
上記(a4)の手順において、
図10のフーリエ変換画像から得られた配向角度と配向強度との関係を示すグラフを
図11に示す。
【0290】
上記(a5)の手順において、
図11のグラフに基づき、半値全幅を測定する。
上記(a6)の手順において、上記の半値全幅に基づき、下記式(1)により、配向度を算出する。
【0291】
配向度=(180°-半値全幅)/180° (1)
配向度が0の場合は、完全無配向を意味する。配向度が1の場合は完全配向を意味する。
【0292】
上記の測定を任意に選択した10箇所以上の測定視野で行う。全ての測定視野のうち、1箇所以上の測定視野において、カーボンナノチューブ集合線バンドルにおけるカーボンナノチューブ集合線の配向度が0.8以上1以下の場合、該カーボンナノチューブ集合線バンドルは、カーボンナノチューブ集合線が0.8以上1以下の配向度で配向している配向領域を含むと判断される。
【0293】
本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルにおいては、カーボンナノチューブ集合線において、カーボンナノチューブが0.9以上1以下の配向度で配向し、該カーボンナノチューブ集合線バンドルは、カーボンナノチューブ集合線が0.8以上1以下の配向度で配向している配向領域を含むことが好ましい。これは、本実施形態のCNT集合線バンドルにおいて、CNT及びCNT集合線の配向性が高いことを意味する。これにより、本実施形態に係るCNT集合線バンドルはCNTが有する電気伝導度や機械的強度の特性を維持したまま、長尺化することができる。
【0294】
CNT集合線におけるCNTの配向度が0.9未満であると、電気伝導度や機械的強度が低下する傾向がある。配向度の下限値は0.9であり、0.93が好ましく、0.94がより好ましく、0.95が更に好ましい。配向度の上限値は、0.99が好ましく、1がより好ましい。
【0295】
CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度が0.8未満であると、電気伝導度や機械的強度が低下する傾向がある。配向度の下限値は0.8であり、0.83が好ましく、0.85がより好ましい。配向度の上限値は0.95が好ましく、1がより好ましい。
【0296】
(形状)
カーボンナノチューブ集合線バンドルの形状は、複数のカーボンナノチューブ集合線がそれらの長手方向に配向して集合した紐形状である。CNT集合線バンドルが、複数のカーボンナノチューブ集合線がそれらの長手方向に配向して集合した紐形状であることは、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0297】
カーボンナノチューブ集合線バンドルの長さは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線バンドルの長さは、例えば、100μm以上が好ましく、1000μm以上がより好ましく、10cm以上が更に好ましい。CNT集合線バンドルの長さの上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、1m以下が好ましい。CNT集合線バンドルの長さは、光学顕微鏡又は目視で観察することにより測定することができる。
【0298】
カーボンナノチューブ集合線バンドルの径の大きさは特に限定されず、用途によって適宜調節することができる。CNT集合線バンドルの径は、例えば、1μm以上が好ましく、10μm以上が更に好ましい。CNT集合線バンドルの径の上限値は特に制限されないが、製造上の観点からは、1000μm以下が好ましい。本実施形態において、CNT集合線バンドルの径の大きさは、CNT集合線バンドルの長さよりも小さい。
【0299】
本明細書においてカーボンナノチューブ集合線バンドルの径とは、一のCNT集合線バンドルの平均外径を意味する。一のCNT集合線バンドルの平均外径は、一のCNT集合線バンドルの任意の2箇所における断面を光学顕微鏡で観察し、該断面においてCNT集合線バンドルの外周上の最も離れた2点間の距離である外径を測定し、得られた外径の平均値を算出することにより得られる。
【0300】
(配向領域及び不定形領域)
図12は本開示の一実施形態に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルのSEM画像である。
図12に示されるように、カーボンナノチューブ集合線バンドルは、配向領域35と、カーボンナノチューブ集合線の配向度が0以上0.8未満である不定形領域36とを含むことができる。本明細書中、配向領域とは、CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度が0.8以上1.0以下の領域を意味する。一方、不定形領域とは、CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度が0以上0.8未満の領域を意味する。CNT集合線バンドルが配向領域と不定形領域とを含むことにより、近接するCNT集合線同士が接着することなく、曲げやひねりに対する緩衝作用を任意に付加することができる。
【0301】
カーボンナノチューブ集合線バンドルにおける配向領域の割合は、50体積%以上100体積%未満が好ましい。これによると、カーボンナノチューブ集合線バンドルにおいて、CNT集合線は十分な配向度を有することができる。CNT集合線バンドルにおける配向領域の割合は、60体積%以上99体積%以下がより好ましく、70体積%以上99体積%以下が更に好ましい。
【0302】
カーボンナノチューブ集合線バンドルにおける不定形領域の割合は、0体積%より大きく50体積%以下が好ましい。これによると、カーボンナノチューブ集合線バンドルにおいて、CNT集合線は十分な配向度を有することができる。CNT集合線バンドルにおける不定形領域の割合は、1体積%以上40体積%以下がより好ましく、1体積%以上30体積%以下が更に好ましい。
【0303】
カーボンナノチューブ集合線バンドルにおける配向領域及び不定形領域の割合は、下記(b1)~(b3)の手順により算出される値である。
【0304】
(b1)測定視野の設定
カーボンナノチューブ集合線バンドルの表面において、1mm×1mmの矩形の測定視野を10箇所以上無作為に選択する。
【0305】
(b2)配向度の測定
上記(b1)で設定した10箇所以上の測定視野のそれぞれについて、上記のCNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度の測定と同様の手順で、CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度を算出する。
【0306】
(b3)割合の算出
全測定視野のうち、配向度が0.8以上1.0以下(配向領域)の測定視野の数の割合を算出することにより、CNT集合線バンドルにおける配向領域の割合を得ることができる。また、全測定視野のうち、配向度が0以上0.8未満(不定形領域)の数の割合を算出することにより、CNT集合線バンドルにおける不定形領域の割合を得ることができる。
【0307】
(カーボンナノチューブ集合線間の距離)
本実施形態のCNT集合線バンドルの配向領域の少なくとも一部において、近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値は、複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径の10倍以上であることが好ましい。これによると、近接するカーボンナノチューブ集合線同士が接着することなく、曲げやひねりに対する緩衝作用を任意に付加することができる。
【0308】
本明細書におけるCNT集合線バンドルの配向領域における近接するCNT集合線間の距離の測定方法について、
図13を用いて説明する。
図13は、本開示の一実施形態に係るCNT集合線バンドルの配向領域の一例を模式的に示す図である。本明細書において、CNT集合線間の距離は、下記(c1)及び(c2)の手順により確認することができる。
【0309】
(c1)測定視野の設定
上記(b1)~(b3)で観察された配向領域のうち、一の配向領域を任意に選択し、該配向領域内で0.1mm×0.1mmの正方形の測定視野を設定する。測定視野を設定する際は、測定視野の外枠である正方形の少なくとも一辺が、カーボンナノチューブ集合線の少なくとも1本と略平行となるように設定する。例えば、
図13では、カーボンナノチューブ集合線1aと正方形の一辺Wとが平行である。ここで略平行とは、特定のカーボンナノチューブ集合線と、矩形の一辺とのなす各が5°以下であることを意味する。
【0310】
(c2)近接するカーボンナノチューブ集合線間の距離の測定
上記(c1)で設定した測定視野において、走査型電子顕微鏡で観察することにより、近接するカーボンナノチューブ集合線間の距離を測定する。ここで、近接するカーボンナノチューブ集合線間とは、特定の一のカーボンナノチューブ集合線と、該カーボンナノチューブ集合線の最も近くに存在するカーボンナノチューブ集合線との間を意味する。
【0311】
例えば、
図13に示されるカーボンナノチューブ集合線1aに近接するCNT集合線は、カーボンナノチューブ集合線1bであり、CNT集合線1aとCNT集合線1bとの距離の最小値はd1である。カーボンナノチューブ集合線1cに近接するCNT集合線は、カーボンナノチューブ集合線1bであり、CNT集合線1cとCNT集合線1bとの距離の最小値はd2である。カーボンナノチューブ集合線1dに近接するCNT集合線は、カーボンナノチューブ集合線1cでああり、CNT集合線1dとCNT集合線1cとの距離の最小値はd3である。
【0312】
(CNT集合線間の距離とCNT集合線の平均径との比較)
上記d1、d2、d3のそれぞれの長さを測定し、これらのうちの最小値を決定する。該最小値と、複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径とを比較することにより、CNT集合線バンドルの配向領域の少なくとも一部において、近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値は、複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径の10倍以上であるかどうかを確認することができる。ここで、複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径とは、上記(c1)で設定された測定視野に存在する複数のカーノンナノチューブ集合線の平均径を意味する。
【0313】
本明細書においてカーボンナノチューブ集合線の径とは、一のCNT集合線の平均外径を意味する。CNT集合線1a、1b、1c、1dのそれぞれのCNT集合線の平均外径は、それぞれのCNT集合線の任意の2カ所における断面を透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により直接観察し、該断面において、CNT集合線の外周上の最も離れた2点間の距離である外径を測定し、得られた外径の平均値を算出することにより得られる。CNT集合線1a、1b、1c、1dのそれぞれのCNT集合線の平均外径から、測定視野における複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径を算出する。
【0314】
上記の近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値は、複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径の10倍以上50倍以下が好ましく、15倍以上40倍以下がより好ましく、20倍以上30倍以下が更に好ましい。近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値が、複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径の50倍を超えると、空隙が多くなるため異物が混入しやすくなり、外力を付加した際に異物近傍において応力集中が生じて緩衝作用が低下し、破断するおそれがある。
【0315】
(カーボンナノチューブ集合線間の角度)
本実施形態のCNT集合線バンドルの配向領域の少なくとも一部において、近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度の最大値は10°以下であることが好ましい。これによると、近接するカーボンナノチューブ集合線同士が接着することなく、曲げやひねりに対する緩衝作用を任意に付加することができる。
【0316】
本明細書において、CNT集合線バンドルの配向領域の少なくとも一部における、近接するカーボンナノチューブ間の角度は、下記(d1)及び(d2)の手順により確認することができる。
【0317】
(d1)測定視野の決定
上記(c1)と同様の方法で0.1mm×0.1mmの正方形の測定視野を決定する。
【0318】
(d2)近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度の測定
上記(d1)で設定した視野において、近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度を測定する。ここで、近接するカーボンナノチューブ集合線間とは、特定の一のカーボンナノチューブ集合線と、該カーボンナノチューブ集合線の最も近くに存在するカーボンナノチューブ集合線との間を意味する。
【0319】
例えば、
図13に示されるカーボンナノチューブ集合線1aに近接するCNT集合線は、カーボンナノチューブ集合線1bであり、CNT集合線1aとCNT集合線1bとの角度(CNT集合線1aの平行線1a’とCNT集合線1bとの角度と同一)はα1°である。カーボンナノチューブ集合線1cに近接するCNT集合線は、カーボンナノチューブ集合線1bであり、CNT集合線1cとCNT集合線1bとの角度(CNT集合線1cの平行線1c’とCNT集合線1bとの角度と同一)はα2°である。カーボンナノチューブ集合線1cに近接するCNT集合線は、カーボンナノチューブ集合線1dであり、CNT集合線1cとCNT集合線1dとは平行であり、角度は0°とする。
【0320】
上記の角度α1°、α2°の最大値が10°以下である場合は、CNT集合線バンドルの配向領域の少なくとも一部において、近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度は10°以下であると判断される。
【0321】
上記の近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度は10°以下が好ましく、9°以下がより好ましく、5°以下が更に好ましく、0°がもっとも好ましい。
【0322】
(触媒由来元素)
カーボンナノチューブ集合線バンドルは、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、イットリウム、クロム、パラジウム、白金及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、該金属元素は、前記カーボンナノチューブ集合線バンドルの長手方向に分散していることが好ましい。ここで、金属元素がCNT集合線バンドルの長手方向に分散しているとは、金属元素がCNT集合線の長手方向において偏在していないことを意味する。
【0323】
これらの金属元素は、CNT集合線バンドルの製造時に使用した触媒(フェロセン(Fe(C5H5)2)、ニッケロセン(Ni(C5H5)2)、コバルトセン(Co(C5H5)2等)に由来するものである。本実施形態に係るCNT集合線バンドルにおいては、これらの金属元素がCNT集合線バンドルの長手方向に分散して存在しているため、金属元素がCNTの有する電気伝導度の特性に影響を与えることなく、CNT集合線バンドルは本来有する電気伝導度を維持したまま、長尺化することができる。
【0324】
CNT集合線バンドルに含まれる金属元素の種類、及び、その含有量は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry、EDX)により確認及び測定することができる。CNT集合線バンドルにおける金属元素の合計含有量は原子数基準で0.1%以上50%以下が好ましく、1%以上40%以下がより好ましく、5%以上20%以下が更に好ましい。
【0325】
CNT集合線バンドルに含まれる金属元素がカーボンナノチューブ集合線バンドルの長手方向に分散していることは、SEMやTEM等の電子顕微鏡と同時計測可能なEDXや、電子エネルギー損失分光分析(Electron energy loss spectrometry、EELS)により確認することができる。
【0326】
カーボンナノチューブ集合線バンドルは、硫黄元素を含み、該硫黄元素は、前記カーボンナノチューブ集合線バンドルの長手方向に分散していることが好ましい。ここで、硫黄元素がCNT集合線バンドルの長手方向に分散しているとは、硫黄元素がCNT集合線バンドルの長手方向において偏在していないことを意味する。
【0327】
硫黄元素は、CNT集合線バンドルの製造時に使用した補助触媒(CS2)に由来するものである。本実施形態に係るCNT集合線バンドルにおいては、硫黄元素がCNT集合線バンドルの長手方向に分散して存在しているため、硫黄元素がCNTの有する電気伝導度や機械的強度等の特性に影響を与えることなく、CNT集合線バンドルはこれらの特性を維持したまま、長尺化することができる。
【0328】
CNT集合線バンドルが硫黄元素を含むこと、及び、CNT集合線バンドル中の硫黄元素の含有量は、EDX、熱重量分析、X線光電子分光法により確認及び測定することができる。CNT集合線バンドルにおける硫黄元素の含有量は、原子数基準で0.1%以上20%以下が好ましく、1%以上15%以下がより好ましく、2%以上10%以下が更に好ましい。
【0329】
CNT集合線バンドルに含まれる硫黄元素がカーボンナノチューブ集合線の長手方向に分散していることは、SEMやTEM等の電子顕微鏡と同時計測可能なEDXや、EELSにより確認することができる。
【0330】
[実施の形態9:カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置]
実施の形態7に係るカーボンナノチューブ集合線バンドルの製造方法に用いられるカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置について、
図21及び
図22を用いて説明する。
図21及び
図22は、カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置を示す図である。
【0331】
カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置500,501は、実施の形態6に記載のカーボンナノチューブ集合線製造装置20と、カーボンナノチューブ集合線製造装置により得られた複数のカーボンナノチューブ集合線を複数のカーボンナノチューブ集合線の長手方向に沿う方向に配向して束ねてカーボンナノチューブ集合線バンドルを得るバンドル部50とを備えることができる。
【0332】
カーボンナノチューブ集合線製造装置20は、実施の形態6のカーボンナノチューブ集合線製造装置と同一の構造とすることができるため、その説明は繰り返さない。
【0333】
<バンドル部>
バンドル部50において、浮遊状態の複数のCNT集合線が長手方向に沿う方向に配向して束ねられてカーボンナノチューブ集合線バンドルが形成される。
【0334】
バンドル部は、カーボンナノチューブ集合線製造装置により得られた複数のカーボンナノチューブ集合線をその長手方向に沿う方向に配向して集合させることのできるものであれば、いずれの構造も用いることができる。
【0335】
例えば、バンドル部は、ハニカム構造体、直管型細管構造等からなることができる。
バンドル部がハニカム構造体からなる場合、貫通孔の長手方向が、炭素含有ガスの流れに沿う方向となるように、カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置にハニカム構造体を配置する。
【0336】
バンドル部がハニカム構造体からなる場合、その構成は、上記のCNT集合線製造装置に記載されたハニカム構造体と同一とすることができる。
【0337】
バンドル部は、カーボンナノチューブ集合部と兼用の構造とすることができる。すなわち、CNT集合部がバンドル部としての機能も有することができる。
【0338】
また、バンドル部は、カーボンナノチューブ集合部と別個の構造とすることができる。この場合、バンドル部は、CNT集合部24の炭素含有ガスの下流側に配置されることが好ましい。例えば、CNT集合線の下流側に配置されたバンドル部に絞り55を設け、複数のカーボンナノチューブ集合線1を絞り55に通過させることにより、それらを長手方向に配向して集合させることが好ましい。
【0339】
バンドル部50は、複数のカーボンナノチューブ集合線1に揮発性液体53を付着させる液体付着装置51を含むことが好ましい。これによると、高い密度を有するCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
【0340】
カーボンナノチューブ集合線に揮発性液体を付着させる方法としては、例えば、揮発性液体を霧化して蒸気55とし、該蒸気55をカーボンナノチューブ集合線に噴霧することが挙げられる。
【0341】
液体付着装置51は、カーボンナノチューブ集合線1に揮発性液体を付着させることのできる位置に配置される。例えば、
図21に示されるように、絞り55よりも下流側に液体付着装置51を配置することができる。また、
図22に示されるように、絞り55よりも上流側に液体付着装置51を配置することができる。
【0342】
バンドル部は、前記複数のカーボンナノチューブ集合線に張力を加えながら、前記複数のカーボンナノチューブ集合線をその長手方向に沿う方向に配向して束ねて巻き取る巻取装置52を含むことが好ましい。
【0343】
これによると、高い強度を有するCNT集合線バンドルを提供することが可能となる。
<その他の構成>
CNT集合線バンドル製造装置は、上記の構成に加えて、磁場を発生させる磁場発生部を含むことができる。その構成は、上記のCNT集合線製造装置に記載された磁場発生部と同一とすることができる。
【0344】
CNT集合線バンドル製造装置は、上記の構成に加えて、電場を発生させる電場発生部を含むことができる。その構成は、上記のCNT集合線製造装置に記載された電場発生部と同一とすることができる。
【0345】
<他の好ましい形態>
カーボンナノチューブ集合部と、バンドル部とは、複数の第2流路を有する同一のハニカム構造体からなり、第2流路のそれぞれは、貫通孔の外周にらせん状の溝を備えた形状を有することが好ましい。これによると、第2流路内のガスがらせん状に流れ、CNT集合線に均一な撚り角が形成されやすい。第2流路のそれぞれがらせん状に延在する場合の詳細については、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載しているため、その説明は繰り返さない。
【0346】
第2流路間の最近接距離は、上流側よりも下流側の方が短いことが好ましい。これによると、CNT集合線同士が束ねられやすく、CNT集合線バンドルが形成されやすい。第2流路間の最近接距離が上流側よりも下流側の方が短い場合の詳細について、実施の形態7のCNT集合線バンドルの製造方法に記載しているため、その説明は繰り返さない。
【0347】
第2流路のそれぞれの断面積は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。これによると、第2流路内でCNT及びCNT集合線が集合しやすく、CNT集合線及びCNT集合線バンドルが形成されやすい。第2流路のそれぞれの断面積が、上流側よりも下流側の方が小さい場合の詳細については、実施の形態4のCNT集合線の製造方法に記載しているため、その説明は繰り返さない。
【実施例】
【0348】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0349】
《検討1》
[カーボンナノチューブ製造装置の準備]
<装置1>
装置1として、その概要を
図18に示したカーボンナノチューブ製造装置と同様の構成を有するカーボンナノチューブ製造装置を準備した。具体的には、電気炉28内にカーボンナノチューブ成長部21及びカーボンナノチューブ伸長部30を配置する。CNT成長部は、内径20mm、長さ800mmの石英管からなる。カーボンナノチューブ伸長部30は、カーボンナノチューブ成長部と連続する石英管であり、内径の平均値が8mm、長さ300mmである。
【0350】
CNT成長部21のCNT伸長部30と連続する側と反対側に触媒供給部23を配置する。触媒供給部23は内径20mm、長さ200mmの石英管からなり、CNT成長部と連続して配置されている。触媒供給部23内の触媒保持具26上に、触媒としてフェロセンが配置されている。触媒供給部23はヒータ25により加熱される。
【0351】
触媒供給部23のCNT成長部21と接続している側と反対側に、ガス供給部22が配置されている。
上記の装置1は実施例に該当する。
【0352】
<装置2>
装置2として、基本的に装置1と同様の構成を有する装置を準備した。装置1と異なる点は、カーボンナノチューブ伸長部30を配置しないことである。すなわち、該装置においては、CNT成長部21の触媒供給部23と連続する側と反対側の端部に、CNT伸長部が配置されていない。なお、装置2のカーボンナノチューブ成長部の長さは、装置1のカーボンナノチューブ成長部及びカーボンナノチューブ伸長部の合計の長さと同一とした。
【0353】
上記の装置2は比較例に該当する。
[カーボンナノチューブの作製]
装置1及び装置2の製造装置を用いて、それぞれ試料1及び試料2のカーボンナノチューブを作製した。まず、装置1及び装置2のそれぞれにおいて、ガス供給部からCNT成長部内にアルゴンガス濃度が100体積%のアルゴンガスを1000cc/minの流量(流速3.4cm/sec)で50分間供給しつつ、電気炉内の温度を1000℃まで昇温した。次に、アルゴンガスに加えて、メタンガスを50cc/minの流量(流速0.17cm/sec)、及び、二硫化炭素(CS2)ガスを1cccc/minの流量(流速0.003cm/sec)で120分間供給した。アルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素を含む混合ガス(炭素含有ガス)全体の流速は、3.6cm/secである。
【0354】
上記のアルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素ガスの供給により、触媒が崩壊して触媒粒子がCNT成長部内に放出された。その後、CNT成長部内でCNTが成長した。
装置1では、その後、CNT伸長部内でCNTが伸長した。
【0355】
[カーボンナノチューブの測定]
(形状)
試料1及び試料2のカーボンナノチューブについて、平均長さ及び平均径を測定した。平均長さ及び平均径の測定方法は、実施の形態2に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0356】
試料1のCNTは、カーボンナノチューブがその長手方向に伸長した直線糸形状であり、平均長さは10μmであり、平均径は1.2nmであった。
【0357】
試料2のCNTは、平均長さは2μmであり、平均径は1.2nmであった。
上記より、装置1で得られるCNT(試料1)は、装置2で得られるCNT(試料2)よりも長いことが確認された。
【0358】
《検討2》
[カーボンナノチューブ集合線製造装置の準備]
<装置3>
装置3として、その概要を
図14に示したカーボンナノチューブ集合線製造装置と同様の構成を有するカーボンナノチューブ集合線製造装置を準備した。具体的には、電気炉28内にカーボンナノチューブ成長部21及びカーボンナノチューブ集合部24を配置する。CNT成長部は、内径20mm、長さ800mmの石英管からなる。カーボンナノチューブ集合部24としては、セラミックスからなるハニカム構造体がCNT成長部と連続する石英管内に配置されている。ハニカム構造体は、約200個/inchの貫通孔を有し、一の貫通孔の断面積は0.8mm
2である。
【0359】
CNT成長部21のCNT集合部24と連続する側と反対側に触媒供給部23を配置する。触媒供給部23は内径20mm、長さ200mmの石英管からなり、CNT成長部と連続して配置されている。触媒供給部23内の触媒保持具26上に、触媒としてフェロセンが配置されている。触媒供給部23はヒータ25により加熱される。
【0360】
触媒供給部23のCNT成長部21と接続している側と反対側に、ガス供給部22が配置されている。装置3は実施例に該当する。
【0361】
<装置4>
装置4として、基本的に装置3と同様の構成を有する装置を準備した。装置3と異なる点は、カーボンナノチューブ集合部24を配置しないことである。すなわち、該装置においては、CNT成長部21の触媒供給部23と連続する側と反対側の端部に、CNT集合部が配置されていない。装置4は比較例に該当する。
【0362】
<装置5>
装置5として、基本的に装置3と同様の構成を有する装置を準備した。装置3と異なる点は、ハニカム構造体の位置を、
図19のハニカム構造体29aのように、カーボンナノチューブ成長部の下流側に配置するのではなく、ハニカム構造体29bに示されるように、カーボンナノチューブ成長部21内の炭素原料ガスの上流側に配置したことである。装置5は比較例に該当する。
【0363】
<装置6>
装置6として、基本的に装置3と同様の構成を有する装置を準備した。装置3と異なる点は、ハニカム構造体の位置を、
図19のハニカム構造体29aのように、カーボンナノチューブ成長部の下流側に配置するのではなく、ハニカム構造体29cに示されるように、触媒供給部23内に配置したことである。装置6は比較例に該当する。
【0364】
[カーボンナノチューブ集合線の作製]
装置3~装置6の製造装置を用いて、それぞれ試料3~試料6のカーボンナノチューブ集合線を作製した。まず、装置3~装置6のそれぞれにおいて、ガス供給部からCNT成長部内にアルゴンガス濃度が100体積%のアルゴンガスを1000cc/minの流量(流速3.4cm/sec)で50分間供給しつつ、電気炉内の温度を1000℃まで昇温した。次に、アルゴンガスに加えて、メタンガスを50cc/minの流量(流速0.17cm/sec)、及び、二硫化炭素(CS2)ガスを1cc/minの流量(流速0.003cm/sec)で120分間供給した。アルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素を含む混合ガス(炭素含有ガス)全体の流速は、3.6cm/secである。
【0365】
上記のアルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素ガスの供給により、触媒が崩壊して触媒粒子がCNT成長部内に放出された。その後、CNT成長部内でCNTが成長した。
【0366】
装置3では、その後、CNT集合部内でCNTが伸長するとともに集合し、CNT集合線が得られた。装置
3のCNT集合部を構成するハニカム構造の下流側を目視で観察観察したところ、
図17に示されるように、複数のCNTが集合して形成されたカーボンナノチューブ集合線1(試料3)がハニカム構造体29の貫通孔から放出していることが確認された。
【0367】
装置4では、CNT成長部の下流側をSEMで観察したところ、複数のCNTが集合したCNT集合線(試料4)が確認された。
【0368】
装置5及び装置6では、CNT成長部内にCNT集合線を確認することができなかった。
【0369】
[カーボンナノチューブ集合線の測定]
(配向度)
試料3及び試料4のカーボンナノチューブ集合線について、配向度を測定した。配向度の算出方法は、実施の形態5に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0370】
試料3のCNT集合線のTEM画像を
図2に示し、フーリエ変換画像を
図4に示す。試料1の配向の角度と強度との関係を
図5に示す。
【0371】
試料3の半値全幅は12°であり、配向度は0.93であった。
試料4の半値全幅は54°であり、配向度は0.70であった。
【0372】
上記より、装置3で得られたCNT集合線(試料3)は、装置4で得られたCNT集合線(試料4)よりも、CNT集合線におけるCNTの配向度が高いことが確認された。
【0373】
(形状)
試料3のカーボンナノチューブ集合線について、平均長さ及び平均径を測定した。平均長さ及び平均径の測定方法は、実施の形態5に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0374】
試料3のCNT集合線は、複数のカーボンナノチューブがそれらの長手方向に配向して集合した直線糸形状であり、平均長さは10cmであり、平均径は50μmであった。
【0375】
(触媒由来元素)
試料3のカーボンナノチューブ集合線について、EDX分析を行うことにより、CNT集合線に含まれる触媒由来元素を特定した。
【0376】
試料3には、鉄及び硫黄が含まれていることが確認された。また、SEM観察及びEDX分析により、鉄及び硫黄は、CNT集合線の長手方向に分散していることが確認された。
【0377】
《検討3》
[カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置の準備]
(装置7)
装置7として、基本的に上記の装置3と同様の構成を有するカーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置を準備した。装置3と異なる点は、CNT集合線を一点に収束するためハニカムの出口側にオリフィス板を設置することである。
【0378】
(装置8)
装置8として、基本的に装置7と同様の構成を有する装置を準備した。装置7と異なる点は、CNT集合線を収束させる機構を備え付けないことである。
【0379】
<カーボンナノチューブ集合線バンドルの作製>
装置7及び装置8の製造装置を用いて、それぞれ試料7及び試料8のカーボンナノチューブ集合線バンドルを作製した。まず、装置7及び装置8のそれぞれにおいて、ガス供給部からCNT成長部内にアルゴンガス濃度が100体積%のアルゴンガスを1000cc/minの流量(流速3.4cm/sec)で50分間供給しつつ、電気炉内の温度を1000℃まで昇温した。次に、アルゴンガスに加えて、メタンガスを50cc/minの流量(流速0.17cm/sec)、及び、二硫化炭素(CS2)ガスを1cc/minの流量(流速0.003cm/sec)で120分間供給した。アルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素を含む混合ガス(炭素含有ガス)全体の流速は、3.6cm/secである。
【0380】
上記のアルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素ガスの供給により、触媒が崩壊して触媒粒子がCNT成長部内に放出された。その後、CNT成長部内でCNTが成長した。
【0381】
装置7では、その後、CNT集合部内でCNTが伸長するとともに集合し、CNT集合線が得られ、該CNT集合線がバンドル化され、CNT集合線バンドルが得られた。装置7のCNT集合部を構成するハニカム構造の下流側を目視で観察観察したところ、複数のCNT集合線が集合して形成されたカーボンナノチューブ集合線バンドル(試料7)がハニカム構造体29の貫通孔から放出していることが確認された。
【0382】
装置8では、CNT成長部の下流側をSEMで観察したところ、複数のCNTが集合したCNT集合線(試料8)が確認された。
【0383】
<カーボンナノチューブ集合線バンドルの測定>
(配向度)
試料7及び試料8のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、配向度を測定した。CNT集合線におけるCNTの配向度の算出方法は、実施の形態5に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度の算出方法は、実施の形態8に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0384】
試料7のCNT集合線バンドルでは、CNT集合線におけるCNTの配向度は0.94であり、CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度は0.93であった。
【0385】
試料8のCNT集合線バンドルでは、CNT集合線におけるCNTの配向度は0.93であり、CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度は0.76であった。
【0386】
上記より、装置7で得られたCNT集合線バンドル(試料7)は、装置8で得られたCNT集合線バンドル(試料8)よりも、CNT集合線におけるCNTの配向度、及び、CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度のいずれも高いことが確認された。
【0387】
(形状)
試料7のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、平均長さ及び平均径を測定した。平均長さ及び平均径の測定方法は、実施の形態8に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0388】
試料7のCNT集合線バンドルは、複数のカーボンナノチューブ集合線がそれらの長手方向に配向して集合した直線糸形状であり、平均長さは10cmであり、平均径は200μmであった。
【0389】
(触媒由来元素)
試料7のカーボンナノチューブ集合線バンドルに含まれるCNT集合線について、EDX分析を行うことにより、CNT集合線に含まれる触媒由来元素を特定した。
【0390】
試料7には、鉄及び硫黄が含まれていることが確認された。また、SEM観察及びEDX分析により、鉄及び硫黄は、CNT集合線の長手方向に分散していることが確認された。
【0391】
(配向領域及び不定形領域の割合)
試料7のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、配向領域と不定形領域との体積割合を測定した。配向領域と不定形領域との体積割合の測定方法は、実施の形態8に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0392】
試料7のCNT集合線バンドルは、配向領域が80体積%であり、不定形領域が20体積%であった。
【0393】
(カーボンナノチューブ間の距離)
試料7のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、配向領域における近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値を測定した。また、CNT集合線バンドルを構成するCNT集合線の平均径も測定した。配向領域における近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値、及び、CNT集合線の平均径の測定方法は、実施の形態8に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0394】
試料7では、配向領域における近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値は300nmであり、CNT集合線の平均径は25nmであった。すなわち、近接する複数のカーボンナノチューブ集合線間の距離の最小値は、複数のカーボンナノチューブ集合線の平均径の10倍以上であることが確認された。
【0395】
(カーボンナノチューブ集合線間の角度)
試料7のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、配向領域における近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度の最大値を測定した。配向領域における近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度の測定方法は、実施の形態8に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。
【0396】
試料7では、配向領域における近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度の最大値は9°であった。すなわち、近接するカーボンナノチューブ集合線間の角度の最大値は10°以下であることが確認された。
【0397】
《検討4》
検討4では、CNT集合線製造装置において、CNT集合部の第2流路の断面積と、得られたCNT集合線に含まれるCNTの径及び長さとの関係について検討した。
【0398】
[カーボンナノチューブ集合線製造装置の準備]
(装置9~装置14)
装置9~装置14は、
図14に示したカーボンナノチューブ集合線製造装置と同様の構成を有する。具体的には、電気炉28内にカーボンナノチューブ成長部21及びカーボンナノチューブ集合部24を配置する。CNT成長部は、内径20mm、長さ800mmの石英管からなる。カーボンナノチューブ集合部24としては、セラミックスからなるハニカム構造体がCNT成長部と連続する石英管内に配置されている。装置9~装置14におけるハニカム構造体の各貫通孔(第2流路)の断面積及び長さを表1に示す。例えば、装置9におけるハニカム構造体は、各貫通孔(第2流路)の断面積が1mm
2、長さが50mmである。
【0399】
CNT成長部21のCNT集合部24と連続する側と反対側に触媒供給部23を配置する。触媒供給部23は内径20mm、長さ200mmの石英管からなり、CNT成長部と連続して配置されている。触媒供給部23内の触媒保持具26上に、触媒としてフェロセンが配置されている。触媒供給部23はヒータ25により加熱される。
【0400】
触媒供給部23のCNT成長部21と接続している側と反対側に、ガス供給部22が配置されている。装置9~装置14は実施例に該当する。
【0401】
[カーボンナノチューブ集合線の作製]
装置9~装置14の製造装置を用いて、それぞれ試料9~試料14のカーボンナノチューブ集合線を作製した。まず、装置9~装置14のそれぞれにおいて、ガス供給部からCNT成長部内にアルゴンガス濃度が100体積%のアルゴンガスを1000cc/minの流量(流速3.4cm/sec)で50分間供給しつつ、電気炉内の温度を1000℃まで昇温した。次に、アルゴンガスに加えて、メタンガスを50cc/minの流量(流速0.17cm/sec)、及び、二硫化炭素(CS2)ガスを1cc/minの流量(流速0.003cm/sec)で120分間供給した。アルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素を含む混合ガス(炭素含有ガス)全体の流速は、3.6cm/secである。
【0402】
装置9~装置14のそれぞれにおいて、CNT集合部の上流側の炭素含有ガスの温度は1000℃であり、CNT集合部の下流側の炭素含有ガスの温度は600℃である。
【0403】
装置9~装置14のそれぞれにおいて、上記のアルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素ガスの供給により、触媒が崩壊して触媒粒子がCNT成長部内に放出された。その後、CNT成長部内でCNTが成長し、更に、CNT集合部内でCNTが伸長するとともに集合し、試料9~試料14のCNT集合線が得られた。
【0404】
[CNT集合線の測定]
試料9~試料14のCNT集合線において、配向度及びCNTの径を測定した。配向度の算出方法及びCNTの径の測定方法は実施形態の5に記載した方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。結果を表1の「CNT」の「配向度」及び「径」の欄に示す。
【0405】
【0406】
[評価]
試料9~試料14から、貫通孔(第2流路)の断面積が小さいほど、CNTの径が小さくなる傾向が確認された。また、試料11及び試料12から、貫通孔の長さが長いほど、CNTの径が小さくなる傾向が確認された。
【0407】
《検討5》
検討5では、CNT集合線製造工程において、CTN集合部の上流側の炭素含有ガスの温度及びCNT集合部の下流側の炭素含有ガスの温度と、CNTの集合割合との関係について検討した。
【0408】
[カーボンナノチューブ集合線製造装置の準備]
CNT集合線製造装置としては、検討4の装置9と同一の構成を有する装置を準備した。
【0409】
[カーボンナノチューブ集合線の作製]
(製造工程9-1)
まず、装置9において、ガス供給部からCNT成長部内にアルゴンガス濃度が100体積%のアルゴンガスを1000cc/minの流量(流速3.4cm/sec)で50分間供給しつつ、電気炉内の温度を1200℃まで昇温した。次に、アルゴンガスに加えて、メタンガスを50cc/minの流量(流速0.17cm/sec)、及び、二硫化炭素(CS2)ガスを1cc/minの流量(流速0.003cm/sec)で120分間供給した。アルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素を含む混合ガス(炭素含有ガス)全体の流速は、3.6cm/secである。
【0410】
製造工程9-1では、CNT集合部の上流側の炭素含有ガスの温度は1200℃であり、CNT集合部の下流側の炭素含有ガスの温度は600℃であり、CNT集合部の貫通孔(第2流路)内の下流側端部における炭素含有ガスの温度は600℃である。
【0411】
上記のアルゴンガス、メタンガス、二硫化炭素ガスの供給により、触媒が崩壊して触媒粒子がCNT成長部内に放出された。その後、CNT成長部内でCNTが成長し、更に、CNT集合部内でCNTが伸長するとともに集合し、CNT集合線が得られた。
【0412】
(製造工程9-2)
製造工程9-2では、CNT集合部の下流側の炭素含有ガスの温度、及び、CNT集合部の貫通孔(第2流路)内の下流側端部における炭素含有ガスの温度を500℃とした以外は、製造工程9-1と同様の方法でCNT集合線を作製した。
【0413】
(製造工程9-3)
製造工程9-3では、CNT集合部の下流側の炭素含有ガスの温度、及び、CNT集合部の貫通孔(第2流路)内の下流側端部における炭素含有ガスの温度を300℃とした以外は、製造工程9-1と同様の方法でCNT集合線を作製した。
【0414】
[評価]
製造工程9-1において、CNT集合部の下流側をTEMで観察したところ、CNT集合線とともに、CNT単体も存在していることが確認された。
【0415】
製造工程9-2において、CNT集合部の下流側をTEMで観察したところ、CNT集合線とともに、CNT単体も存在していることが確認された。CNT単体の割合は、製造工程9-1よりも低かった。
【0416】
製造工程9-3において、CNT集合部の下流側を電子顕微鏡で観察したところ、CNT集合線が確認された。CNT単体は確認されなかった。
【0417】
[考察]
上記より、CNT集合部の下流側の温度が低いほど、CNT集合線の形成割合が高く、CNT単体の存在割合が低いことが確認された。これは、CNT集合部の下流側の温度が低いほど、CNT同士が集合しやすいためと推察される。
【0418】
《検討6》
検討6では、CNT集合線バンドル製造工程において、揮発性液体の付着工程及び蒸発工程の有無と、CNT集合線バンドルの密度との関係について検討した。
【0419】
[カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置の準備]
(装置10-1)
装置10-1として、検討4の装置9と同一の構成を有するCNT集合線製造装置と、その下流側に絞り並びに巻取装置を含むバンドル部とを備える装置を準備した。
【0420】
(装置10-2)
装置10-2として、
図21に示される構成を有するCNT集合線バンドル製造装置を準備した。具体的には、装置10-2は、装置10-1と同様の構成を有し、更に、絞りの下流側に液体付着装置及び巻取装置をこの順で備える。液体付着装置内には、エタノールが封入されている。
【0421】
(装置10-3)
装置10-3として、
図22に示される構成を有するCNT集合線バンドル製造装置を準備した。具体的には、装置10-3は、装置10-1と同様の構成を有し、更に、CNT集合線製造装置と絞りとの間に配置される液体付着装置と、絞りの下流側に配置される巻取装置とを備える。液体付着装置内には、揮発性液体としてエタノールが封入されている。
【0422】
(装置10-4)
装置10-4として、検討3の装置7と同様の構成を有する装置を準備した。
【0423】
[カーボンナノチューブ集合線バンドルの作製]
(製造工程10-1)
製造工程10-1では、製造工程9-1と同様の条件でCNT集合線を製造した後、該CNT集合線を絞りを通過させて束ねて、試料10-1のCNT集合線バンドルを得た。バンドル工程は、巻取装置でCNT集合線バンドルを巻き取ることにより、CNT集合線に張力を加えながら行われた。
【0424】
(製造工程10-2)
製造工程10-2では、製造工程9-1と同様の条件でCNT集合線を製造し、該CNT集合線を絞りを通過させて束ねた後、該CNT集合線に揮発性液体の蒸気を付着させた後、揮発液体を自然乾燥により蒸発させて、試料10-2のCNT集合線バンドルを得た。バンドル工程は、巻取装置でCNT集合線バンドルを巻き取ることにより、CNT集合線に張力を加えながら行われた。
【0425】
(製造工程10-3)
製造工程10-3では、製造工程9-1と同様の条件でCNT集合線を製造し、該CNT集合線に揮発性液体の蒸気を付着させた後、該CNT集合線を絞りを通過させて束ね、揮発液体を自然乾燥により蒸発させて、試料10-3のCNT集合線バンドルを得た。バンドル工程は、巻取装置でCNT集合線バンドルを巻き取ることにより、CNT集合線に張力を加えながら行われた。
【0426】
(製造工程10-4)
製造工程10-4では、検討3の試料7と同様の条件でCNT集合線バンドルを製造した。
【0427】
[評価]
<カーボンナノチューブ集合線バンドルの測定>
(配向度)
試料10-1~試料10-4のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、配向度を測定した。CNT集合線におけるCNTの配向度(以下、「CNT配向度」とも記す。)の算出方法は、実施の形態5に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。CNT集合線バンドルにおけるCNT集合線の配向度(以下、「CNT集合線配向度」とも記す。)の算出方法は、実施の形態8に記載した方法と同一の方法であるため、その説明は繰り返さない。結果を表2の「CNT配向度」及び「CNT集合線配向度」欄に示す。
【0428】
(密度)
試料10-1~試料10-4のCNT集合線バンドルの密度を測定した。密度は、CNT集合線バンドルの体積と重量に基づき算出し、CNT100%の場合との比較として%で表した。結果を表2の「密度」欄に示す。
【0429】
(破断強度)
試料10-1~試料10-4のカーボンナノチューブ集合線バンドルについて、破断強度を測定した。強度の測定方法は下記の通りである。
【0430】
長さ約3cmのCNT集合線を準備し、その両端を引っ張り治具板に接着剤で固定した。接着剤で固定されていない部分の長さ1cmのCNT集合線が破断するまでの引っ張り応力をロードセル(測定機器:(株)イマダ製「ZTS-5N」)を用いて計測した。結果を表2の「破断強度」欄に示す。
【0431】
【0432】
[考察]
試料10-1と試料10-4とを比較すると、バンドル工程においてCNT集合線に張力を加えることにより、CNT集合線バンドルの密度が高くなり、強度が向上することが確認された。
【0433】
試料10-1~試料10-3を比較すると、バンドル工程において、揮発性液体の付着工程及び蒸発工程とを行うことにより、CNT集合線バンドルの密度が高くなり、強度が向上することが確認された。
【0434】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
【0435】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0436】
1,1a,1b,1c,1d カーボンナノチューブ集合線、2 カーボンナノチューブ、3 カーボンナノチューブ集合線バンドル、20,20a,20b CNT集合線製造装置、21 CNT成長部、22 ガス供給部、23 触媒供給部、24,24a カーボンナノチューブ集合部、25 ヒータ、26 触媒保持具、27 触媒、28 電気炉、29,29a,29b,29c,29d,29e,29f,29g ハニカム構造体、30 CNT伸長部、291 出口,240,240a,240b,240c,240d 第2流路、301 電線、31 反応管、32 磁力線、33 +電極、34 -電極、35 配向領域、36 不定形領域、50 バンドル部、51 液体付着装置、52 巻取装置、53 揮発性液体、54 蒸気、55 絞り、500,501 カーボンナノチューブ集合線バンドル製造装置、T チューブ部、C コーン部、P 触媒粒子、M1 らせん状の溝