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特許7441806カールおよびロールオーバーが低減されたニット構造及びその製造方法
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  • 特許-カールおよびロールオーバーが低減されたニット構造及びその製造方法 図1
  • 特許-カールおよびロールオーバーが低減されたニット構造及びその製造方法 図2
  • 特許-カールおよびロールオーバーが低減されたニット構造及びその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】カールおよびロールオーバーが低減されたニット構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/26 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
D04B1/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020573018
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019040390
(87)【国際公開番号】W WO2020010135
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】62/693,056
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519355758
【氏名又は名称】ザ ライクラ カンパニー ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】セリア,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,ダヴィデ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-221766(JP,A)
【文献】特開昭61-097403(JP,A)
【文献】特開2008-038262(JP,A)
【文献】特開2008-214775(JP,A)
【文献】米国特許第02731819(US,A)
【文献】米国特許第03600909(US,A)
【文献】英国特許出願公告第00513615(GB,A)
【文献】米国特許第03908407(US,A)
【文献】米国特許第02044966(US,A)
【文献】特開2003-013341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側へのカールおよび/またはその生地端でのロールオーバーが低減されたニット構造を製造するための方法であって、
シリンダー針を使用してヤーンを運び、1つ以上のコースを延ばすニット構造の開始パートを編むことと、
前記シリンダー針の針を、ニット針セクションおよびミス針セクションを含む少なくとも2つのセクションに分割し、前記開始パートに隣接している偽バンドパートを生成させることであって、前記偽バンドが、ニットステッチおよびミスステッチの多数のコースを含む、生成させることと、
前記ミス針セクションの針を開始させて、前記偽バンドに隣接しているクローズパートを編みかつ形成させることであって、前記開始パートのコースが、前記クローズパートのコースと相互接続され、その結果、交差伸縮延びを損なうことなく、前記ロールオーバー現象に対抗する、より高い張力および内側への力を有するニット構造が得られる、編みかつ形成させることと、を含み、
前記クローズパートの生地の重量が前記偽バンドパートに対して増加するように追加のヤーンが含まれる、方法。
【請求項2】
前記ニット針セクションおよび前記ミス針セクションが、交互に続き、このシーケンスが、前記シリンダーのすべての針について繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1針ニットとそれに続く1針ミスのパターンで各々1針を延ばすニット針セクションおよびミス針セクションのみが、偽バンドパートを生成させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
400針機が、使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記偽バンドが、合計で4~20のコースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニット構造が、8~80dtexを有するポリアミドヤーンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ニット構造の内側に向かって力を提供し、かつ外側へのカールおよびその後のロールオーバーを低減する、ステッチの組み合わせを含むニット構造であって、
1つ以上のコースを延ばす開始パートと、
ニットステッチおよびミスステッチの多数のコースを含む開始パートに隣接している偽バンドパートと、
前記偽バンドに隣接している1つ以上のコースを延ばすクローズパートと、を含み、
前記開始パートのコースが、前記クローズパートのコースと相互接続され、その結果、交差伸縮延びを損なうことなく、ロールオーバー現象に対抗する、より高い張力および内側への力を有するニット構造が得られ
前記クローズパートの生地の重量が前記偽バンドパートに対して増加するように追加のヤーンが含まれる、ニット構造。
【請求項8】
製品であって、その少なくとも一部分が、請求項7に記載のニット構造を含む、製品。
【請求項9】
衣料品である請求項8に記載の製品。
【請求項10】
前記衣料品が、パンティーストッキング、ストッキング、ステイアップ、およびソックスから選択される、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記追加のヤーンは8~80dtexを有するポリアミドヤーンである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記追加のヤーンは8~80dtexを有するポリアミドヤーンである、請求項7に記載のニット構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニット構造と、ニット構造の内側に向かって力を提供し、かつ外側へのカールおよびその後のロールオーバーを低減するステッチの組み合わせを有するニット構造を製造するための方法とに関する。本開示のニット構造は、限定されないが、パンティーストッキング、ストッキング、ステイアップ(stay up)、およびソックスなどの衣料品における二重層バンドの代替物として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
典型的なシングルジャージニット構造は、生地の2つの面が不均衡な力を有することに起因して、その端でロールオーバーし、この現象は、弾性ヤーンが構成において使用される際に増加する。したがって、シングルジャージニット構造の端は、多くの場合、縫製によって、または製造中に生地の二重層を作り出すことによって、折り畳まれる。
【0003】
典型的には、メリヤス類およびソックスは、メリヤス類に関しては直径が約4インチのシングルシリンダーおよびソックスに関しては33/4インチのシングルシリンダーで製造される。構成において使用されるヤーンのうちの少なくとも1つは、通常は、伸縮性がある。例としては、カバードスパンデックス(covered spandex)またはベアスパンデックス(bare spandex)が挙げられる。チューブの最初の部分は、通常は、上部バンド、ウェルト、またはウエストバンドを表す。この部分が、加工、摩耗、使用中に、カールしたり、ロールオーバーしたりするのを防ぐために、通常は2層の生地で形成される。この二重層の高さは、選択された設計に応じて、ミリメートルまたは数センチメートル範囲であり、一般に、ダイヤルジャックを使用して機械で形成される。
【0004】
典型的には、編まれた管(knitted tube)の上端がさらに縫製されないシングルシリンダー編み機によって製造された、タイハイ(thigh high)、ホールドアップ(hold up)、またはストッキングとしても知られている、ソックス、パンティーストッキング、およびステイアップ(stay up)では、上記の2層技術が使用されない場合、編まれた管は、ロールオーバーする可能性がある。二重層なしでロールオーバーを軽減する方式は、構造のデニールを有意に増やすためにより重いカウントヤーン(count yarn)の組み合わせを使用するか、またはダブルシリンダー機もしくは同等のニット構造を使用することである。
【0005】
具体的には、着用時に衣服をその位置に維持するのを助けるために、編まれた管にシリコンまたは高摩擦材料を適用することを必要とするステイアップは、一般に、ダイヤルジャックによって生成されたバンドで製造される。ダイヤルジャックを使用せずにダブルバンドを形成する場合、結果として得られるシングルジャージの編まれた構造は、着用時にロールオーバーする可能性がある。
【0006】
編まれた管の内側に向かって力を提供し、外向きのカールおよびその後のロールオーバーを低減するニット構造を製造するための代替のニット構造および方法に関するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、ニット構造の上部を製造するためのステッチの組み合わせを発見し、それにより、生地端のロールオーバーが大幅に低減し、したがって、ダイヤルジャックを使用せずに、かつ一般的に二重層を作り出さずに、または、編まれた管に縫製される必要があるシリコンを有するより伝統的なバンドを有していなくても、は、編まれた管に縫製される必要があるシリコンを有するより伝統的なバンドを有していなくても、限定されないがパンティーストッキング、ストッキング、ステイアップ、およびソックスなどの衣料品の製造が可能になる。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、その布端において外向きのカールおよび/またはローリングが低減されたニット構造を製造するための方法に関する。この方法は、ダイヤルジャックの代わりにシリンダー針を使用する編み手順を含み、カールを減らすために必要な内向きの力を提供する。針は、ヤーン(複数可)を運び、ニット構造を起こし、それは、本明細書では、開始パート(START part)と称し、多数のコースを延ばすことができる。次いで、針は、少なくとも2つのセクションに割り当てられる。これは、通常は、編みプログラムによって起こる。割り当ては一般的な概念にすぎず、一部の針は、特定のタイプのステッチまたはステッチシーケンスを作製し、他の針は、別のタイプのステッチまたはステッチシーケンスを作製することができる。割り当てられたセクションは、開始パートに隣接し、本明細書では偽バンド(FALSE BAND)と称される第2のセクションを生成するために、ニット針セクションおよびミス針セクションを含む。偽バンドパートの各コースにおいて、ニット針セクションの少なくとも1つの針が、ニットステッチを行い、ミス針セクションの少なくとも1つの針がミスステッチを行う。偽バンドパートが所望の長さに達すると、ミス針セクションの針が編み始め、本明細書でクローズパート(CLOSE part)と称されるものを形成する。各コースにおける各針は、用いられる編みプログラムに応じて、さまざまなステッチタイプを実行し得る。偽バンドパートのミス針セクションにより、開始パートの最後のコースは、クローズパートの最初のコースと相互接続され、その結果、交差伸縮延び(cross-stretch extension)を損なうことなく、ロールオーバー現象に対抗する、より高い張力および内側への力を有するニット構造が得られる。
【0009】
1つの非限定的な実施形態では、追加のヤーンを含ませて、その端でカールおよびロールオーバーする傾向をさらに低減する。典型的には、メリヤス類には8~80dtexを有するポリアミドヤーンが使用される。このヤーンが役立つ理由は、偽バンドパートに対してクローズパートの生地の重量が増加し、ロールオーバーを減らすのに役立つためである。しかしながら、ヤーン組成は、ポリアミドヤーンに限定されず、所望の実施形態に応じて他のタイプのヤーンを利用することができる。
【0010】
本発明の別の態様は、ニット構造の内側に向かって力を提供し、かつ外向きのカールおよびその後のロールオーバーを低減する、ステッチの組み合わせを含むニット構造に関する。一実施形態では、ニット構造は、編み機のダイヤルジャックの代わりにシリンダー針で製造される。ニット構造は、1つ以上のコースを延ばす出発パートと、ニットステッチおよびミスステッチの多数のコースを含む開始パートに隣接する偽バンドパートと、偽バンドに隣接する1つ以上のコースを延ばすニットステッチのクローズパートと、を含む。偽バンドパートのミスステッチにより、開始パートの最後の1つ以上のコースは、クローズパートの最初の1つ以上のコースと相互接続され、その結果、交差伸縮延びを損なうことなく、ロールオーバー現象に対抗する、より高い張力および内側への力を有するニット構造が得られる。
【0011】
本発明の別の態様は、その少なくとも一部分が本発明のニット構造を含む製品に関する。1つの非限定的な実施形態では、製品は衣料品である。1つの非限定的な実施形態では、衣料品は、パンティーストッキング、ストッキング、レギンス、ステイアップ、およびソックスから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】直径4インチで4本の送りを有する400針シングルシリンダーメリヤス類編み機を使用して構成されたステッチ表記を備える本開示のニット構造の非限定的な例である。行はコースを表し、列は針を表す。この非限定的な実施形態では、「O」は、ステッチを編む針であり、「X」は、ステッチをミスする針であり、「.」は、ステッチが上記と同じであることを示しており、開始パートは、2コースであり、偽バンドパートは、8コースであり、ミスセクションは、すべて等しく、1針の長さであり、ニットセクションは、すべて等しく、1針の長さである。開始および偽バンドパートは、17dtexのポリアミド(PA)で被覆された22dtexのスパンデックスシングルを使用して、形成される。クローズパートでは、33 ×2 dtexのPAが、カバードヤーンでメッキされる。ホースパートの残りの部分は、クローズパートと同じ構造を有する。
図2図1において構成されたニット構造のスケッチを提供する。
図3】本開示のニット構造の別の非限定的な例を提供しており、「O」は、ステッチを編む針を表し、「X」は、ステッチをミスする針を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ニット構造と、ステッチの組み合わせを有するニット構造を製造するための方法とに関し、そのステッチの組み合わせを有するニット構造は、編まれた構造の内側に向かって力を提供し、それにより、その端において、外側へのカールおよびその後のロールオーバーを低減する。本開示のニット構造は、限定されないが、パンティーストッキング、ストッキング、ステイアップ、およびソックスなどの衣料品における二重層バンドの代替物として使用することができる。
【0014】
本発明によるニット構造の生地端のロールオーバーを低減するための方法は、編み機のダイヤルジャックの代わりにシリンダー針を使用する編み手順を含む。針は、ヤーン(複数可)を運び、ニット構造を起こし、それは、本明細書では、開始パート(START part)と称し、多数のコースを延ばすことができる。1つの非限定的な実施形態では、開始パートは、1~8コースしか延ばさないが、いくつかの実施形態では、開始パートは、8コース超であり得る。針は、理想的には、開始パートに隣接し、かつ本明細書では、偽バンドパートまたはセクションと称される第2のセクションを生成させるために、ニット針セクションおよびミス針セクションの少なくとも2つのセクションに分割される。偽バンドパートの各コースにおいて、ニット針セクションの少なくとも1つの針が、ニットステッチを行い、ミス針セクションの少なくとも1つの針がミスステッチを行う。一実施形態では、偽バンドパートの各コースにおいて、ニット針セクションの少なくとも1つの針は、ニットステッチを行い、ミス針セクションのすべては、ミスステッチを行う。1つの非限定的な実施形態では、各ニット針セクションおよびミス針セクションは、構造の他のニット針セクションおよびミス針セクションとは異なる。例えば、一実施形態では、ニット針セクションは、編むただ1つの針であり得るか、または、1つが編み針で、1つがミス針である2つの針であり得る。以下のコースでは1つがミス針であり、1つがニット針を有する。
【0015】
ミスセクションは、ただ1つのミス針、あるいは2つのミス針を有する、または極端な例として、3つよりもさらに多いミス針を有し得る、1つのセクションから構成され得る。1つの非限定的な実施形態では、ニット針セクションおよびミス針セクションは、交互に続き、このシーケンスは、シリンダーのすべての針について繰り返される。1つの非限定的な実施形態では、例えば、400針機において、400針すべてについて1針ニットとそれに続く1針ミスのパターンで各々1針を延ばすニットおよびミス針セクションのみが、存在する。偽バンドパートが、所望の長さ、例えば、合計で8コース、または2~20に達すると、ミス針セクションの針が、編み始め、本明細書でクローズパートと称されるものを形成する。クローズパートを構成する長さに制限はなく、例えば、いくつかの実施形態では、衣服の残りの部分は、クローズパートを構成すると見なすことができる。重要なことは、最初のコース(たとえば、コース1~4またはいくつかの他の初期コース)では、ミス針セクションの針がニットを作製する。偽バンドパートのミス針セクションのため、開始パートの最後のコース(または、構造に応じて、複数のコース)は、次いで、クローズパートの最初のコース(または、構造に応じて、複数のコース)と相互接続される。その結果、交差伸縮延びを損なわずに、ローリングオーバー現象に対抗する、チューブの内側に向かってより高い張力と力を備える布地構造が得られる。
【0016】
1つの非限定的な実施形態では、追加のヤーンを含ませて、カールおよびロールオーバーする傾向をさらに低減する。
【0017】
ニットおよびミス針セクションは、針の長さと数が異なる場合がある。1つの非限定的な実施形態では、そのセクションは、各々1つの針を含む。ニットおよびミス針セクションは、好ましくは続いているが、異なる性質、例えば、タックステッチまたは異なるステッチの組み合わせを有する他のセクションが続くかまたは先行することができる。
【0018】
本発明によるニット構造は、ニット構造の内側に向かって力を提供し、かつ外側へのカールおよびその後のロールオーバーを低減するステッチの組み合わせを含む。一実施形態では、ニット構造は、ダイヤルジャックの代わりにシリンダー針で製造される。図1図3に示すように、ニット構造は、1つ以上のコースを延ばす開始パートを含む。ニット構造の開始パートに隣接しているのは、偽バンドパートまたはセクションである。偽バンドセクションは、ニットステッチおよびミスステッチの多数のコースを含む。1つの非限定的な実施形態では、偽バンドセクションは8つのコースを含む。ニット構造は、偽バンドに隣接する1つ以上のコースを延ばすクローズパートをさらに含む。偽バンドパートのミスステッチにより、開始パートの最後のコースは、クローズパートの最初のコースと相互接続され、その結果、交差伸縮延びを損なうことなく、ロールオーバー現象に対抗する、より高い張力および内側への力を備えたニット構造が得られる。
【0019】
本発明による製品は、本明細書に記載のニット構造の少なくとも一部分からなる。これらの物品の非限定的な例としては、衣類、例えば、パンティーストッキング、ストッキング、ステイアップ、およびソックスが挙げられるが、それらに限定されない。すべての標準的な衣類処理ステップが、本発明の生地に適用可能であると理解される。(例えば、洗い流し(scour)、染色、ヒートセットまたはボーディング、軟化剤の適用)。
図1
図2
図3