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特許7441810二重操作手段を有する医用装置及びその使用方法
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  • 特許-二重操作手段を有する医用装置及びその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】二重操作手段を有する医用装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240222BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61B1/00 655
A61B1/005 522
A61B1/005 523
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021025168
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2021137566
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-06-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】62/980,072
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】ハルバーソン エリック ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド マシュー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ニンニ ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン チャールズ ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】コルソン ヨランダ ロリッグ
(72)【発明者】
【氏名】塚田 久嗣
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-279688(JP,A)
【文献】特開2009-18116(JP,A)
【文献】特開平3-37035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能体と、
前記湾曲可能体に取り付けられ、モータを含み、前記モータによって前記湾曲可能体を曲げるように動作させる作動ユニットと、
前記作動ユニット及び前記湾曲可能体を対象内の標的に向かってロボット制御で前進させる挿入体と、
を備えるデバイスであって、
前記作動ユニットは、前記挿入体に着脱可能に取付け可能であり、
前記作動ユニット及び前記湾曲可能体が前記挿入体から取り外されている状態では、前記作動ユニットが前記湾曲可能体に取り付けられた状態で、前記湾曲可能体は、前記対象内において手動で前進させることが可能であり、
前記作動ユニット及び前記湾曲可能体が前記挿入体に取り付けられた状態では、前記作動ユニットが前記湾曲可能体に取り付けられた状態で、前記湾曲可能体は、前記対象内をロボット制御で前進する、
デバイス。
【請求項2】
前記作動ユニットを制御するように構成されたコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記作動ユニットが前記挿入体に取り付けられた後に、前記湾曲可能体を曲げるように、所定の制御モードに従って前記作動ユニットの制御を開始する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記湾曲可能体は、少なくとも、第1の湾曲可能セクションと、前記第1の湾曲可能セクションに比べて前記作動ユニットの近位にある第2の湾曲可能セクションとを含み、
前記所定の制御モードは、少なくとも前記第1の湾曲可能セクションの曲げ角度に基づいて前記第2の湾曲可能セクションを自動で曲げるフォローザリーダーモードである、
請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントローラは、前記作動ユニットが前記挿入体に取り付けられる前に、前記所定の制御モードとは異なる制御モードで前記作動ユニットを制御する、
請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記コントローラは、前記作動ユニットが前記挿入体に取り付けられる前に、前記所定の制御モードとは異なる制御モードで前記作動ユニットを制御する、
請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記湾曲可能体を通る少なくとも1つのワイヤに加えられた力を感知するように構成された力センサ、
を更に備え、
前記コントローラは、前記力センサによる感知の結果に基づいて、前記異なる制御モードで前記作動ユニットを制御する、
請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記湾曲可能体内にスライド可能に配置され、前記湾曲可能体の遠位端に取り付けられる少なくとも1つの駆動ワイヤ、
を更に備え、
前記作動ユニットは、前記少なくとも1つの駆動ワイヤに接続されるように構成され、かつ、前記湾曲可能体の少なくとも1つの湾曲可能セクションを曲げるように前記駆動ワイヤを作動させるように構成される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記挿入体は、前記作動ユニットをスライドさせるスライダを含む、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記湾曲可能体はカテーテルである、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、2020年2月21日に米国特許商標庁に提出された米国仮特許出願第62/980072号から優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、医療用途の装置及び方法に関する。より詳細には、本開示は、患者内での手動及び自動の操作が可能な多関節医用デバイスを対象とし、本デバイスは、内視鏡、カメラ及びカテーテルを含む医療処置のために、医用ツールを空洞を通して誘導できるようにする空洞を有する。
【背景技術】
【0003】
医療分野では、内視鏡手術器具やカテーテル等の湾曲可能な医用器具がよく知られており、引き続き受け入れられている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる可撓性の本体を有する。可撓性の本体に沿って1つ以上のチャネルが延びて(典型的には内部に)、本体の遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にしている。
【0004】
器具は、医師が器具の近位端を操縦することによって医用器具の遠位端に位置するツールを制御することができるように、ねじり剛性と長手方向の剛性を維持しながら、対象となる標的につながる少なくとも1つ以上のカーブを伴う、患者内での柔軟なアクセスを提供することを目的としている。
【0005】
最近、器具の遠位端の操縦性を高めるために、遠位部分を制御するロボット化器具が登場した。そのようなロボット化器具では、ロボット光学によって遠位部分で局所的にカーブを作り出すために、様々な技術が開示されてきた。
【0006】
例として、米国特許公開第2016/0067450号は、駆動腱が医用器具の遠位部を曲げている間に近位部の形状を保持するために、複数の導管を提供している。複数の導管は、導管の近位端を拘束又は拘束解除することによる2元法で、選択的に制御されることになる。拘束された導管を選択することにより、湾曲可能医用デバイスは、導管が展開するエリアに基づいて湾曲可能医用デバイスの剛性を変更することにより、湾曲する遠位セグメントの長さを変更することができる。
【0007】
しかしながら、患者内へデバイスを前進させることに関連する時間と柔軟性は、冗長で長いものになるおそれがあり、デバイスを手動で挿入するには医師による絶え間ない注意が必要になる場合があるという点において、業界には、湾曲可能医用デバイスの使用方法を更に洗練し進歩させる必要性が残っている。
【発明の概要】
【0008】
よって、業界におけるそのような典型的なニーズに対処するために、本開示は、医用装置を操作するための方法を提供し、本方法は、少なくとも1つの湾曲可能セクションを有する湾曲可能体と、湾曲可能体にスライド可能に位置し、湾曲可能体の遠位端に取り付けられる少なくとも1つの制御ワイヤと、少なくとも1つの制御ワイヤに接続され、少なくとも1つの湾曲可能セクションを操作するように制御ワイヤを作動させるように構成されるアクチュエータと、を備える医用装置を提供するステップ;アクチュエータを用いて、医用装置を手動で操作するステップ;医用装置と結合するように構成された挿入ユニットを提供するステップ;医用装置のロボット操作のために、医用装置を挿入ユニットに接続するステップ;及び、医用装置をロボット制御で操作するステップを含み、医用デバイスの手動操作は、医用デバイスのロボット操作よりも速く医用デバイスを前進させるように構成される。
【0009】
様々な他の実施形態では、本方法は、コントローラを医用デバイスと通信させるステップを更に含んでよく、コントローラは、少なくとも1つの制御ワイヤをロボット操作するように構成される。
【0010】
他の実施形態では、アクチュエータは、医用装置が挿入ユニットから切り離されているときに、少なくとも1つの湾曲可能セクションを操作するように構成されてよい。
【0011】
また、作動ユニットは、湾曲可能体アセンブリが挿入ユニットから取り外されたとき、エンドユーザによって保持されるように構成されてよいと考えられる。
【0012】
更に追加の実施形態では、挿入ユニットは、湾曲可能体に加えられた力を測定するための力センサを更に有する。
【0013】
別の実施形態では、医用装置は第2の湾曲可能セクションを更に備え、コントローラは、エンドユーザ入力に直接関連付けられた1つの湾曲セクションを制御し、コントローラのアルゴリズムに関連付けられた第2の湾曲セクションを制御するように構成される。
【0014】
更に、コントローラは、エンドユーザ入力に直接関連付けられた最も遠位の湾曲可能セクションを制御し、制御モードでのアルゴリズムにより、他の湾曲可能セクションを制御するように構成されると考えられる。
【0015】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された段落と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0017】
図1図1は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医用デバイスを示す図である。
図2A図2Aは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、挿入ユニットに取り付けられた状態の例示の湾曲可能医用デバイスの部分描写を提供する図である。
図2B図2Bは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、挿入ユニットから分離された状態の例示の湾曲可能医用デバイスの部分描写を提供する図である。
図3図3は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの斜視図である。
図4図4は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスの内部図である。
図5図5A図5Cは、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な湾曲可能な向きでの例示の湾曲可能医用デバイスの側面斜視図である。
図6図6は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、曲がりくねった進路を進んでいる例示の湾曲可能医用デバイスの断面図である。
図7図7は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医用デバイスを採用する方法を詳述するフローチャートである。
【0018】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。加えて、指定「´」を含む参照符号(例えば12´や24´)は、同じ性質及び/又は種類の2次要素及び/又は参照を表す。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の段落によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、主題の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医用デバイス11を示す図である。湾曲可能医用デバイス11は、コントローラ2だけでなく、コンピュータ1上のナビゲーションソフトウェアと通信しており、これらは、互いの間でデータを送受信するためにバスを介して通信可能に結合されている。更に、ナビゲーションソフトウェア及びコンピュータ1は、湾曲可能医用デバイス11の外部にあるCTスキャナ、X線透視装置及び画像サーバ(図示なし)に接続され、これらと通信する。画像サーバとしては、限定ではないが、CTスキャナ及び/又はMRIスキャナ並びにX線透視装置等の医用イメージングデバイス11等に接続されたDISCOM(商標)サーバが挙げられる。ナビゲーションソフトウェア1は、画像ディスプレイに画像を表示するために、コントローラ2によって提供されたデータと、画像サーバ上に格納された画像並びに/又はCTスキャナ及びX線透視装置からの画像によって提供されたデータとを処理する。
【0020】
CTスキャナからの画像は、術前にナビゲーションソフトウェア1に提供される。ナビゲーションソフトウェア1を用いて、エンドユーザは、画像から解剖学的コンピュータモデルを作成することができる。この特定の実施形態では、検査される生体構造は肺である。CTスキャナの胸部画像から、臨床ユーザは、生検等の様々な臨床処置用に肺気道をセグメント化することができる。肺気道マップを生成した後、ユーザは、生検用の病変にアクセスするための計画を作成することもできる。計画は、気道を通って病変に到達するための、湾曲可能医用デバイス11の湾曲可能体3の挿入用の経路を含む。コントローラ2は制御回路を含み、制御回路は、作動ユニット7、挿入ユニット9、電界発生器6、及びこれらのユニットを操作するためのヒト-機械インタフェース21(図示なし)と通信可能に結合される。
【0021】
湾曲可能体3は、作動ユニット7に取り付けられ、湾曲可能医用デバイス11を形成する。作動ユニット7は、コントローラ2により、湾曲可能体3の様々な湾曲セクションを曲げるように構成される。湾曲可能医用デバイス11は挿入ユニット9に着脱可能に取り付けられ、これにより、湾曲可能医用デバイス11を静止させることができる。コントローラ2は、作動ユニット7の挙動を挿入ユニット9の挙動と同期させるように構成されてよく、湾曲可能医用デバイス11が挿入ユニット9に取り付けられているか(以下「着(ON)状態」)、又は挿入ユニット9から取り外されているか(以下「脱(OFF)状態」)に基づいて、それらの挙動を変化させるように構成されてよい。
【0022】
湾曲可能体3は、患者8の肺に挿入されるように構成される。例示の実施形態では、医師10が、ヒト-機械インタフェース21(例えばジョイスティック)を介してコントローラ2に入力値を設定し、コントローラ2が、医師10の意図した湾曲可能体3の動きを反映するように作動ユニット7及び/又は挿入ユニット9を動かすことになる。湾曲可能体3は標的の病変へと進み、そこで湾曲可能体3の器具チャネルを用いて、医用ツール(例えば生検ツール)を誘導することができる。
【0023】
図2A及び図2Bは、湾曲可能医用デバイス11の2つの構成、すなわち着状態と脱状態を示す。図2Aに示される着状態構成では、湾曲可能医用デバイス11は、着脱可能なロック20により、挿入ユニット9に取り付けられロックされる。ロック20は、機械的ロック解除構造により、又は、コントローラ2を包含する電気的ロック解除構造により、手動でロック解除することができる。湾曲可能体アセンブリ11が着状態か又は脱状態かを検出するために、挿入ユニット9及び/又は湾曲可能体3上に取付けセンサ17が構成されてよい。コントローラ2からのコマンドに基づいて湾曲可能体3を誘導するために、挿入スライダ15(線Aに沿って動く)を用いることができる。湾曲可能体3には遠位端と近位端があり、図2AではそれぞれEとGで表されている。
【0024】
着状態構成では、医師10が、ヒト-機械インタフェース21により、挿入スライダ15及び/又は湾曲可能体3を制御することになる。
【0025】
図2Bに提供される脱状態構成では、湾曲可能医用デバイス11は、挿入スライダ15と挿入ユニット9からまとめて取り外される。この構成では、医師10は、作動ユニット7を手で保持し、コントローラ2を介してヒト-機械インタフェース21によって湾曲可能体3を操作することができ、又は、湾曲可能体3を手動で操作することができる。
【0026】
このように着状態構成から脱状態構成に(その逆も同様)切り替えることができるので、必要な状況に応じた湾曲可能医用デバイス11の柔軟な適応が可能となる。例えば、最初に患者の生体構造の大きい/広い部分を通して湾曲可能医用デバイス11を前進させる間、脱状態構成を実施して、湾曲可能医用デバイス11の迅速な前進を促すことができ、結果として時間を節約することができる。湾曲可能医用デバイス11が患者の生体構造のより曲がりくねった部分に到達したら、湾曲可能医用デバイス11は着状態構成に切り替えることができ、これにより、湾曲可能医用デバイス11を更に限定して前進させることができ、これは、患者に対する擦過と不快感を最低限にするように、より低速のゆっくりとした速度でなされる。
【0027】
上で詳述したように、医用デバイス11の当該使用方法により、挿入ユニット9の有無に関わらず湾曲可能体アセンブリを使用することが可能になる。挿入ユニット9を用いたロボット挿入制御は、挿入及び曲げの運動を、挿入ユニットを備えた湾曲可能体アセンブリの制御と同期させることにより、湾曲可能体の挿入及び曲げの運動の精確かつ一貫した制御をユーザに提供することができる。そのうえ、挿入ユニットを伴わない湾曲可能体アセンブリの制御により、ユーザは、依然としてロボット曲げ制御を活用しながら、機敏で柔軟な挿入操作を行うことができ、これにより、医用デバイスの前進及び後退における安全性と柔軟性が大幅に向上する。
【0028】
ユーザは、湾曲可能体の挿入に関して触覚フィードバックを得ることができるので、ユーザは、従来の手動挿入の慣行で予想されるように、挿入の速度と力を直感的に素早く調整することができる。ただし、従来の手動挿入法と同レベルの安全性を維持しながら、処置の継続時間を短縮することができる。本革新は、手動挿入を可能にすることにより、ロボット挿入制御での挿入長さを短くすることができるので、ストロークを短くして挿入ユニットを小型化することができ、これは更に製造コストの削減につながる。
【0029】
更なる利点として、シースが挿入ユニットから取り外されているときの動作モードにおいて力情報を用いることが挙げられ、コントローラは、ユーザが手動で挿入を実行している間、シースが生体構造に加え得る力を制御して、シースを曲げるのを補助することができる。具体的には、これは、ユーザが、制御すべき多くの運動の自由度のうちシースの運動の自由度の一部を制御するときに、有利である。
【0030】
コントローラを用いて最も遠位の湾曲セクションを直接制御することにより、ユーザは、従来の内視鏡の処置と同じ操作を維持することができる。また、コントローラが残りの自由度を補助することができるので、ユーザは、追加の自由度を活用して、単純かつ最小限の制御パラメータを用いて器用さを向上させることができる。
【0031】
図3は、湾曲可能医用デバイス3の湾曲可能セグメントを説明するための概略図である。湾曲可能医用デバイス3は、近位部19と3つの湾曲可能セグメント(それぞれ第1、第2、第3の湾曲可能セグメント12、13、14である)を有する。湾曲可能セグメント12、13、14は、独立して湾曲することができ、3つの独立した曲率をもつ形状を形成することができる。
【0032】
図4は、1つ以上の駆動ワイヤ4を包含する湾曲可能医用デバイス11の曲げ原理を説明している。作動ユニット7は、モータ26、直線運動構造27及び力センサ25を有する。モータ26は、前後両方で線Bに沿った直線運動を作り出すように、直線運動構造27を動かすように構成される。また、力センサ25は、作動ユニット7に取り付けられ、直線運動構造27とともに動かされることになるので、直線運動構造27が抵抗に遭遇したときに正確な力の読取りが可能となる。駆動ワイヤ4は、直線運動構造27で終端し、線Bに沿って押し引きされる。駆動ワイヤ4の別の端部は、湾曲セクションのうちの1つの遠位端で終端し、ワイヤガイド23を通してスライド可能に配置される。直線運動構造27がモータ26によって押し引きされるとき、駆動ワイヤ4のこの端部が終端する湾曲セクションは、曲げモーメントを受け、直線運動構造27に従って曲がることができる。力センサ25は、駆動ワイヤ4に加えられた力だけでなく、必要に応じて、力の更なる計算及び修正のために抵抗を感知することができる。
【0033】
図5A図5Cは、フォローザリーダー(FTL)運動を取り入れた、3つの湾曲セクション12、13及び14と挿入ユニット9による湾曲可能医用デバイスの独特な運動の例示の実施形態を詳述する。提供された描写では、まず、医師が遠位湾曲セクション12を曲げるコマンドを発することができる(図5A)。その後、医師は、線Aに沿って挿入ユニット9を用いて湾曲可能体3を前進させることができる。中間セクション13の遠位部が、図5Aに示される前時点での遠位湾曲セクション12の位置(位置H-I)に到達すると、コントローラ2は、その名の由来であるフォローザリーダーのように、その位置での遠位湾曲セクション12の曲げ角度と同じ角度まで、中間セクション12を自動的に曲げる。その後、医師は、線Aに沿って挿入ユニット9を用いて湾曲可能体3を更に前進させることができる(図5c)。前進後、近位湾曲セクション14の遠位部が位置H-Iに到達すると、コントローラは、その位置(H-I)での湾曲セクション12及び13の曲げ角度を模倣するように、近位湾曲セクション14も再度曲げる。
【0034】
図6は、空洞、具体的には患者の肺の気管支周囲エリア(気道を囲む側方エリアである)に挿入された例示の湾曲可能医用デバイス11の断面図を提供する。このエリアは、従来のカテーテルの遠位での器用さが制限されるので、文献及び先行技術で特定されているように、ターゲットとなる既知の課題である。ナビゲーション段階では、気道22を通って病変に到達するために、第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13は、それぞれ分岐点32を通して湾曲可能医用デバイス11をナビゲートする。分岐点32では、湾曲可能医用デバイス11が分岐点32を通って前進するにつれて、第1の湾曲可能セグメント12は娘枝に対して形状/向きを調整することができ、一方、第2の湾曲可能セグメント13は親枝に対して形状/向きを調整することができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13が分岐点32を通過すると、それらのセグメントは、湾曲可能医用デバイス11の残りを導くガイドの役割を果たすことができるので、遠位セクションの深刻な逸脱を生じることなく、湾曲可能医用デバイス1の近位端からの挿入力を、湾曲可能医用デバイス11の遠位部への挿入力に効果的に変換することができる。湾曲可能医用デバイス11の遠位端34が病変23の近くに到達すると、湾曲可能医用デバイス3は、第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13をそれぞれ曲げることにより、遠位端24を病変36(気道の周りの側方エリアを位置付ける)へ向けることになる。気道は病変36に直接つながっていないので、これは、従来のカテーテルにとってより難しい構成のひとつである。
【0035】
第1、第2及び第3の湾曲可能セグメント12、13、14のそれぞれにより、湾曲可能医用デバイス11は、全ての分岐を通ってこの病変36に至る近位部19を動かすことなく、遠位端34を方向付けることができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13の3次元に曲がる能力を用いることにより、湾曲可能医用デバイス11は、独特な操作を実行して、気管支周囲の標的化の能力を高めることができる。したがって、湾曲可能医用デバイス11は、曲がりくねった進路を通した、対象とする病変36への改善されたアクセスを提供することができる。また、湾曲可能医用デバイス11は、接合点のサイズ又は数を増大させることなく、軸方向に沿って異なる柔軟性をもつことができる。
【0036】
図7は、脱状態構成でのロボット操縦28を包含する湾曲可能医用デバイス11の手動挿入から、着状態構成でのロボット操縦29を包含湾曲可能医用デバイス11のロボット挿入への、例示の移行を示すワークフロー図である。
【0037】
このとき、湾曲可能医用デバイス11は患者の体内へと進んでおり、また、内視鏡ビューを用いるために、器具チャネル内に内視鏡ユニットがある。次に、医師10が、気管支内チューブ(ETチューブ)を患者内に配置する。ETチューブの配置に続いて、医師10は、手で作動ユニット7を操作することにより、湾曲可能医用デバイス11をETチューブ内に手動で挿入する。同時に、医師10は、内視鏡ビューを利用することにより、作動ユニット7を用いて遠位湾曲セクション12を操縦することができる。医師10が湾曲可能医用デバイス11をETチューブの遠位端の近くまで挿入すると、医師10は手動挿入を停止する。
【0038】
この接合点で、医師10は、湾曲可能医用デバイス11を挿入ユニット9に取り付ける。取付けとロック20の適切なロックの後、取付けセンサ17はコントローラ2と係合し、湾曲可能医用デバイス11は脱状態構成から着状態構成へ移行し、これによってFTL運動モードが有効になる。医師10は、作動ユニット7を用いて挿入ユニット9及び遠位湾曲セクション12を制御し、FTL運動で湾曲可能体3を挿入する。
【0039】
医師10が内視鏡ビューを確認することによってETチューブの遠位端に到達すると、医師10は、ETチューブの遠位端の位置として挿入スライダの位置を教えて、医師10がこの処置のために必要とする最大挿入深さをコントローラ2に伝えることができる。その後、医師10は、引き続きFTL運動を用いて、気道ナビゲーション30のために湾曲可能デバイス11を挿入することができる。
【0040】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、本明細書に提供されるサンプルの例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7