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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】吸液性部材及びそれを備えた容器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
A01M1/20 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021064636
(22)【出願日】2021-04-06
(62)【分割の表示】P 2020005958の分割
【原出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021106594
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019148591
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小堀 富広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
(72)【発明者】
【氏名】前田 和輝
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/062613(WO,A1)
【文献】特開2010-046090(JP,A)
【文献】特表平09-512435(JP,A)
【文献】特表平10-512146(JP,A)
【文献】特開2010-158186(JP,A)
【文献】特開2009-000102(JP,A)
【文献】特開平07-236399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状食餌剤が含浸される吸液性部材であって、
吸液性部材本体の上方側に複数の凹部が形成され、
前記凹部は、開口形状を有している、
吸液性部材。
【請求項2】
前記凹部は、前記吸液性部材本体の上方側から下方側に向かう方向に延びて形成されている、
請求項1記載の吸液性部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記吸液性部材と、
前記吸液性部材を収容する容器本体と、を備える、
容器であって、
前記吸液性部材の
複数の前記凹部の少なくとも1つは、前記吸液性部材の上面と下面とを連通する孔であり、
前記容器本体の底面には、前記孔に挿通され、前記吸液性部材を固定するための突起が設けられている、
容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸液性部材及びそれを備えたハチ防除用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、殺虫剤等を含む液状の餌を害虫に喫食させるための食餌剤用具としては、種々のものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、殺虫液を入れた容器(1)の開口部に支持蓋(3)を嵌合し、この支持蓋(3)の上面に布(4)を被覆して布被覆面(5)を形成した、害虫(ハエ等)の殺虫具が記載されている。当該布(4)の下部が殺虫液の内部に浸されており、毛細管現象により殺虫液が布被覆面(5)まで浸透するので、布被覆面(5)は殺虫液で湿っている状態になる。特許文献1によれば、このように殺虫液が浸透された布を含む殺虫具を室内等に置いておくだけで、害虫を簡単に駆除することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭50-87069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の殺虫具では、使用当初は布被覆面(5)が殺虫液で湿った状態になっているものの、殺虫具を置いて一定時間が経過した後は、布被覆面(5)に含浸された殺虫液が揮発し、布被覆面(5)(以下、布の表面とも称する)に害虫が喫食するのに十分な量の殺虫液が保持されていないことがある。このように、布の表面に含浸された殺虫液が揮発してしまうと、従来の構成では、食餌剤用具として有効に機能する期間が短くなるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、食餌剤用具としての有効期間を延ばすことができる吸液性部材及びそれを備えたハチ防除用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る吸液性部材は、ハチに喫食させるための液状食餌剤が含浸される吸液性部材であって、吸液性部材本体の上方側に凹部が形成され、凹部は、その内部に前記ハチが侵入するための開口形状を有している。
【0008】
上記態様によれば、吸液性部材本体の上方側(表面側)に、ハチが侵入するための開口形状を有する凹部が形成されているので、当該凹部の内部が上方側(表面側)と比較して外部からの風等が当たりにくくなり、当該凹部の内部を乾燥しにくくすることができる。そのため、一定時間経過後に吸液性部材本体の上方側が乾燥したとしても、凹部の内部に含まれる液状食餌剤の乾燥が抑えられるので、継続して当該液状食餌剤をハチが喫食することができる。このような吸液性部材を用いることにより、当該吸液性部材を所定の場所に置いて一定時間が経過した後でもハチが液状食餌剤を喫食することができるので、食餌剤用具としての有効期間を延ばすことができる。
【0009】
上記態様において、凹部は、吸液性部材本体の上方側から下方側に向かう方向に延びて形成されていてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係るハチ防除用容器は、吸液性部材と、吸液性部材を収容する容器本体と、を備える。
【0011】
本発明の一態様に係るハチ防除用容器の容器本体は、上方に開口部を備え、内部にハチに喫食させるための食餌剤を収容するための下容器と、下容器の開口部に係合し、下容器の内部に連通するハチ出入口が形成された中蓋と、ハチ出入口の上方を覆う傘体とを備え、中蓋には、ハチ出入口に向かうに従い高さが大きくなる傾斜面が形成される。なお、下容器に収納される食餌剤は、本実施形態に示される吸液性部材に限られるものではなく、例えば、液状、ゲル状、吸水ポリマー状等の食餌剤でもよい。
【0012】
ここで、容器本体を上方から見た平面視において、傾斜面の一部は、傘体の外側に突出するように延設されていることが好ましい。傾斜面の傾斜角は、1度以上80度以下であることが好ましい。傾斜面の長さ、即ち、傾斜面の外縁からハチ出入口までの距離は、10mm以上70mm以下であることが好ましい。
【0013】
傘体は、中蓋と係合し、又は、中蓋と一体化して形成される。傘体は、ハチが容器本体内部に侵入するための、例えば、アーチ型開口部を備えることができる。ただし、ハチ出入口と外部とを連通する開口を有していれば、その形状や大きさ等を様々なものに変形することが可能である。アーチ型開口部は、中蓋に接続する両端部と、両端部を結ぶアーチ部を備える。アーチ部は、半円弧状又は曲線状に形成される部分を備える。また、アーチ部は、両端部の中間付近で最も中蓋との間隔が大きくなるように設けられることが好ましい。中蓋とその上方に設けられるアーチ部の間隔は、10mm以上35mm以下であることが好ましい。また、傾斜面とその上方に設けられる傘体との間隔は、10mm以上となるように傾斜面及び傘体を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、食餌剤用具としての有効期間を延ばすことができる吸液性部材及びそれを備えたハチ防除用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のハチ防除用容器の斜視図
図2図1に示すハチ防除用容器のうち吸液性部材を除いた構成の分解斜視図
図3図1に示すハチ防除用容器の中蓋及び傘を取り外した状態を示す斜視図
図4】(A)吸液性部材を示す平面図(B)吸液性部材を示す側面図
図5図1に示すハチ防除用容器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図面の寸法、形状及び角度等は、実際の寸法、形状及び角度等と異なる場合がある。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法、形状及び角度等に限定されるものではない。なお、説明の便宜上、上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。本実施形態に係る吸液性部材及びそれを備えたハチ防除用容器が対象とする害虫としては、例えば、スズメバチやアシナガバチ等のハチ類に用いることが特に好ましい。
【0017】
図1~4を参照しながら、本実施形態に係るハチ防除用容器1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るハチ防除用容器1を示す斜視図である。図2は、ハチ防除用容器1のうち吸液性部材40を除いた構成の分解斜視図である。図3は、図1に示すハチ防除用容器1の中蓋20及び傘30を取り外した状態を示す斜視図である。図4は、吸液性部材40を示す図である。
【0018】
図1~4に示すように、本実施形態に係るハチ防除用容器1は、下容器10(容器本体)と、中蓋20と、傘30と、吸液性部材40とを備える。ハチ防除用容器1は、下容器10内に収納した吸液性部材40に含浸された液状食餌剤を、内部に侵入したハチが巣に持ち帰り、当該液状食餌剤に殺虫成分が含まれている場合には巣において毒餌の効果を得ることができるものである。
【0019】
下容器10は、図2及び図3に示すように、上方に開口部105を備え、内部に吸液性部材40を収容するための収容部を有する。収容部は、下容器10の内壁により囲まれた部分を示す。下容器10の内壁とは、下容器10の内部且つ開口部105と連通する空間に接している壁面(図2に示す底面101及び側面102)を示す。下容器10には、底面101の中央部において底面101に対して垂直な方向に延びた突起103が設けられている。突起103は、図3に示すように、吸液性部材40を下容器10に収容するときに、吸液性部材40の略中央に形成された孔42に挿通され、下容器10における吸液性部材40の配置が固定される。
【0020】
なお、本実施形態において、下容器10は、上方に向かうほど径大となる円錐台状に形成されているがこの形状に限定されない。下容器10は、内部に吸液性部材40を収容可能な機能を有していれば、他の様々な形状や大きさに変更することが可能である。
【0021】
中蓋20は、下容器10の上方に開口した開口部105に係合し、下容器10と固定可能に構成されている。中蓋20は、平面視において略環状に形成されている。中蓋20の中央には、下容器10に連通するハチ出入口21(開口)が形成されている。また、中蓋20には、ハチが停留するためのハチ停留ポート22が形成されている。ハチ停留ポート22は、その外縁よりも内側が高くなるように傾斜(ハチ停留ポート22の外縁から中央側に向かうに従い高さが大きくなるように傾斜)している。また、ハチ停留ポート22は、下容器10の外周面よりも径方向外側に張り出すように形成されている。このようにハチ停留ポート22を張り出すように設けることで、ハチが停留し易くなり、中蓋20の中央に形成されたハチ出入口21を通して、ハチは下容器10内部に侵入することができる。なお、中蓋20の周辺部には、傘30の下端(側壁部32の下端)を係合するための係合穴部23が複数形成されている。
【0022】
なお、本実施形態では、中蓋20は、平板形状を有し、その外縁が略円形状を呈しているがこの態様に限定されない。また、中蓋20には、前述したハチ出入口21が1個及びハチ停留ポート22が4個設けられているが、その個数や形状等は図示の態様に限定されない。すなわち、中蓋20は、下容器10に連通する開口を有し、またハチが停留するためのポートが設けられていれば、その個数や形状等は様々なものに変形することが可能である。
【0023】
傘30は、ハチ出入口21の上方を覆うように、中蓋20に係合される。傘30が中蓋20に係合されることで、ハチ出入口21を通して外部に露出する吸液性部材40が傘3
0によって上方側から覆われ、外部から吸液性部材40に水等(例えば雨)が直接あたることを抑制することができる。傘30には、ハチ出入口21とハチ防除用容器1外部とを連通するアーチ型開口部31が設けられている。アーチ型開口部31は、ハチ停留ポート22が設けられた部分において略半円弧状に開口した形状を呈している。ハチ停留ポート22に停留したハチは、アーチ型開口部31からハチ防除用容器1の内部(傘30の内部)に入り、更にハチ出入口21から下容器10の内部に入ることができる。なお、アーチ型開口部31の両側に位置する側壁部32が中蓋20に係合して傘30と中蓋20とが固定される。詳細には、傘30の側壁部32の内壁には、当該内壁から底面101に向かう方向に延在するガイド壁(図示略)が設けられており、当該ガイド壁の下端に設けられた係合部を、中蓋20に貫通して形成された係合穴部23に係合することにより傘30と中蓋20とが固定される。なお、傘30の上面には、ハチ防除用容器1を外部の部材に引っ掛けて配置するための掛止部35が設けられている。
【0024】
なお、本実施形態では、傘30にはアーチ型開口部31が4個設けられ、また、係合穴部23がそれぞれ4個設けられているがこの態様に限定されない。すなわち、傘30は、前述したように、外部から水等(例えば雨)が吸液性部材40にあたることを抑制し、また、ハチ出入口21と外部とを連通する開口を有していれば、その形状や大きさ等を様々なものに変形することが可能である。
【0025】
吸液性部材40は、ハチに喫食させるための液状食餌剤が含浸された含浸体である。含浸体は、毛細管現象により液状食餌剤を吸収する多孔質素材(例えば多孔質素材の下部が液状食餌剤に浸されていると、毛細管現象により液状食餌剤が多孔質素材の上部まで浸透する)から成り、例えば不織布、スポンジ等が用いられる。
【0026】
吸液性部材40には、平面視略円形の板状を呈する本体部(吸液性部材本体)の上面40a側から下面40b側に向かう方向(図4(B)では下方向)に延在した孔42(凹部)が形成されている。孔42は、平面視(図4(A))において、吸液性部材40の周縁部40cを除く領域に設けられていてもよい。孔42は吸液性部材40に少なくとも1個設けられていればよいが、例えば図4(A)に示すように、孔42は、吸液性部材40の中心部と、その中心部の周囲において周方向に所定間隔をあけて複数設けられていてもよい。孔42は、図4に示すように吸液性部材40のみに形成される態様に限定されず、例えば、吸液性部材40と下容器10との間に形成されてもよく、また、下容器10のみに形成されてもよい。なお、孔42が下容器10のみに形成される場合には、吸液性部材40の周縁に沿うように形成されていると、孔42の内部に侵入したハチが吸液性部材40に含浸された液状食餌剤を喫食できるので好適である。
【0027】
孔42は、その内部にハチが侵入するための開口形状、言い換えれば、内部にハチの頭が入る程度の開口を有している。具体的には、孔42の直径D(図4(A))は、5~30mmの範囲であることが好適である。孔42の直径Dが30mmより大きいと孔42の内部が乾燥しやすくなり、孔42の直径Dが5mmより小さいと孔42の内部にハチの頭が入りにくくなることから、このような範囲に設定されることにより、孔42の内部にハチの頭が入ることができ、且つ、孔42の内部に風等が当たりにくくなるので乾燥を抑制することができる。ハチは巣穴に首を突っ込む習性がある(例えばスズメバチやアシナガバチは巣穴にいる幼虫から栄養液を口移しで貰うために巣穴に頭を突っ込む(孔42の下方側に濃い液体が溜まっている場合、スズメバチやアシナガバチは頭を突っ込んで孔42の下方側の液体を舐める)習性がある)ため、この習性を利用して、孔42の内部に含まれる液状食餌剤をハチが喫食する。そのため、吸液性部材40の上面40a側が乾燥したとしても、このようなハチの習性を利用して、吸液性部材40に形成された孔42の内部に保持されている液状食餌剤をハチが喫食するので、食餌剤用具としての有効期間を延ばすことができる。
【0028】
孔42は、吸液性部材40の上面40a側から下面40b側に向かう方向に延びて形成されている。本実施形態では、上面40aと下面40bとを連通するように形成された孔42が、吸液性部材40に形成されている。なお、孔42が延在している延在方向は、図4(B)に示すように、上面40a側から下面40b側に向かう方向(垂直方向)だけでなく任意の方向を含む。例えば、孔42は、その延在方向が孔42毎に異なる方向であってもよい。
【0029】
なお、吸液性部材40は、図示の例では、平面視略円形の板状(略円柱状)に形成された本体部に孔42が設けられた態様であるが、この態様に限定されない。すなわち、吸液性部材40は液体を保持する機能を有していれば他の様々な態様に変形することができ、例えば球体や平面視矩形状のものであってもよい。
【0030】
また、本実施形態において、吸液性部材40の上方側又は上面側とは、吸液性部材40を下容器10に設置した場合に、下容器10の開口部105(図3等参照)側に露出している部分又は当該露出している面周辺(図4(B)においては上面40a周辺)を意味する。
【0031】
なお、本実施形態では、吸液性部材40に形成される孔42は、吸液性部材40の上面40a側から下面40b側まで貫通した形状を有しているがこれに限定されない。すなわち、孔42は、ハチの頭が入る程度の開口を有していれば、吸液性部材40を貫通していなくてもよく、図示の形状や大きさに限定されずに様々な形状や大きさに変更することができる。例えば、孔42は、吸液性部材40の上面40a側から窪んだ形状の凹部であってもよい。このような凹部の上面40aからの深さは任意であるが、吸液性部材40の厚さt(図4(B))の半分以上であると、比較的乾燥しやすい上面40a側と比較して乾燥しにくい下面40b側に含まれる液状食餌剤をハチが喫食することができるので好適である。
【0032】
以上説明した吸液性部材40に含浸する液状食餌剤の材料は特に限定されないが、例えば、害虫を誘引するための誘引物質を配合してもよい。誘引物質としては、従来用いられているものを広く採用することができるが、例えば、糖質(グラニュー糖、果糖、マルトース、トレハロース等)、タンパク質、炭水化物、脂質等の食餌成分:天然物由来及び調合された芳香成分、フェロモン、アミノ酸、核酸、油脂等を有効成分として用いることができる。これらの誘引物質は、一種単独で、又は二種類以上を混合して用いることができる。
【0033】
上記液状食餌剤の含浸量は、特に限定されないが、例えば、吸液性部材に0.5~4g/cm3含浸させることができる。ハチ誘引効果の観点から、吸液性部材の飽和量含浸させることが好ましい。
【0034】
上記液状食餌剤は、殺虫成分を含むことにより、液状毒餌剤として用いることができる。上記殺虫成分としては、例えば、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、フェノトリン、フラメトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、トラロメスリン、エンペントリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェンなどのピレスロイド系殺虫剤、フェニチオン、フェニトロチオン、テメホス、ホキシム、アセフェート、ピリダフェンチオン、ダイアジノン、マラチオン、プロチオホス、プロペタンホス、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、DDVPなどの有機リン系殺虫剤、NAC、ペンチオカルブ、プロポクスルなどのカーバメイト系殺虫剤、その他イミダクロブリド、メトキサジアゾン、フィプロニル及びその類縁化合物、ホウ酸、ヒドラメチルノン、リチウムスルホネート、リチウムパーフルオロオクタスルホネート、スルフルアミド、1-メチル-2-ニトロ-3,3-テトラハイドロフリルメチルグアニジンなどが挙げられる。これらは単独で、または混合して用いることができる。
【0035】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるわけではない。
【0036】
[実施例]
(1)検体
【0037】
検体(吸液性部材)として、縦5cm×横5cm×厚み1cmの不織布に、直径1.3cmの貫通孔(検体の上面と下面とを連通して形成した孔)を4個形成したものを用いた。この検体に、液状食餌剤として80%はちみつ水を40g含浸させた。
(2)供試虫
【0038】
供試虫として、キイロスズメバチを用いた。
(3)試験方法
【0039】
上記(1)の検体をキイロスズメバチがいる公園の木に設置し、上記(2)の供試虫が喫食するかを確認した。その後、上記(1)の検体を雨の当たらないコンクリートの上に1週間置いた。その後、キイロスズメバチがいる公園の木に検体を設置し、上記(2)の供試虫が喫食するかを確認した。
(4)結果
【0040】
試験結果を表1に示す。表1に示す〇は、供試虫が喫食したことを示し、表1に示す×は、供試虫が喫食しなかったことを示す。なお、供試虫が喫食している様子を観察した結果、上記(1)の検体に貫通孔を形成した場合は、当該貫通孔に頭を入れて検体の内部(検体の下部分)を供試虫が喫食していた。表1に示す結果より、初期では検体の貫通孔の有無にかかわらず供試虫の喫食を確認できたが、1週間後では検体に貫通孔を形成した場合のみ供試虫の喫食を確認できたことから、貫通孔を形成することによって有効期間を延ばせることが検証できた。また、供試虫は、検体の上に乗り貫通孔に頭部を入れて検体の一部を喫食する。このため、供試虫が喫食する際、供試虫の脚や頭部表面等に液状食餌剤が付着する。このような供試虫が帰巣すると、他のハチに、供試虫の表面に付着した液状食餌剤を喫食させることが可能になる。従って、液状食餌剤に殺虫成分が含まれている場合、巣に持ち込まれる殺虫成分の量を増加させ、巣における毒餌の効果を高めることが可能になる。
【0041】
【表1】
【0042】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。以上説明した実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0043】
次いで、ハチ防除用容器1について図1乃至図5を用いて詳述する。図5は、ハチ防除用容器1を、対角に形成されている2つのアーチ型開口部31の中心及び掛止部35を通過する平面で切断した断面図である。
【0044】
本願の発明者らは、ハチが侵入し易いと同時に人の指が液状食餌剤に触れにくくなるようにハチ防除用容器1を構成した。具体的には、ハチ防除用容器1は、中蓋20と、中蓋20の上方に設けられた傘30(「傘体」の一例)を備える。このため、傘30と中蓋20の隙間から指を差し込まない限り、人の指が下容器10内に収容される吸液性部材40に触れることが無い。
【0045】
また、中蓋20には、ハチ出入口21に向かうに従い高さが大きくなる傾斜面22Aが形成される。図2に示されるとおり、中蓋20には、例えば、複数の傾斜面22Aが形成される。一方でハチは、負の走地性、即ち、生物が重力と反対の方向に進行する性質を有すると説明される場合がある。傾斜面22Aを設けることにより、ハチのハチ防除用容器1内への歩行を促進させることが可能になる。
【0046】
更に傾斜面22Aを設けることにより、傘30と中蓋20の隙間から差し込まれた指は傾斜面22Aに接触して斜め上方に誘導される。そのため、下容器10内の下方に収納される吸液性部材40と離れる方向に指を誘導することが可能になる。また、指の関節を曲げようとしても指が傘30に当たって曲がりづらくなり、吸液性部材40に触れにくくすることが可能になる。
【0047】
更に、傘30及び傾斜面22Aを設けることによって、水等(例えば雨)が下容器10内に入り込んで、吸液性部材40に含浸された液状食餌剤の濃度が低下することを抑制することが可能になる。仮に傾斜面22A上に水等が付着しても、傾斜面22Aの傾斜により、水等は、ハチ出入口21から下容器10内に入りにくい。
【0048】
更に、傾斜面22Aを設けることによって、ハチ防除用容器1を通過する風は、傾斜面22Aに沿って上方に誘導される。このため、風が吸液性部材40に直接当たることを抑制することが可能になる。このため、吸液性部材40に含浸された液状食餌剤の揮散量の変動を抑え、ひいては、吸液性部材40の使用可能期間の変動を抑えることが可能になる。
【0049】
なお、ハチ防除用容器1は、吸液性部材40とは異なる食餌剤を収納するように構成されてもよい。例えば、液状、ゲル状、吸水ポリマー状等の毒餌剤を収納するように構成されてもよい。そのような場合であっても、ハチが侵入し易いと同時に人の指が液状食餌剤に触れにくくなるハチ防除用容器の容器本体を提供することが可能になる。
【0050】
傾斜面22Aの傾斜角α(図5)、即ち、水平面と傾斜面22Aとのなす傾斜角αは、例えば、1度以上80度以下であることが好ましい。より好ましいのは5度以上60度以下である。傾斜角が1度以下であると、水等(例えば雨)が下容器10内に入り込んでしまう。また、傾斜角が80度を超えると、ハチが傾斜面22Aに着地すること及び傾斜面22Aを登ることが困難になる。例えば、本実施形態では、傾斜角αは、20度である。
【0051】
また、図1及び図5に示されるように、傾斜面22Aの一部は、傘30(「傘体」の一例)の外側まで延設されてもよい。このように構成することによって、ハチ防除用容器1の周辺を飛んでいるハチに傾斜面22Aを認識させることが可能になる。このため、ハチが傾斜面22Aに着地することを促進させることが可能になる。図5に示されるように、傾斜面22Aのうち、傘30の外側まで延設されている部分(平面視において傘30よりも外方に突出する部分)の距離D6は、2mm以上であることが好ましい。より好ましいのは7mm以上である。距離D6が2mmよりも短いと、ハチが脚を掛けにくくなるため、ハチが傾斜面22Aに着地しにくくなる。なお、傾斜面22Aの少なくとも一部は、ハチ停留ポート22の表面に設けられてもよい。例えば、本実施形態では、距離D6は、10mmである。
【0052】
傾斜面22Aは、例えば、ハチ停留ポート22の外縁からハチ出入口21まで設けられてよい。傾斜面22Aの長さ、即ち、径方向における傾斜面22Aの外縁からハチ出入口21までの距離D4(図2図5)は、10mm以上70mm以下であることが好ましく、より好ましくは20mm以上60mm以下である。傾斜面22Aの距離D4が10mmより小さいと、傾斜面22A上にハチが着地することが困難になる。また、傾斜面22Aの距離D4が10mmより小さいと、人の指が食餌剤に触れやすくなってしまう。従って、傾斜面22Aの長さは、10mm以上であることが好ましい。傾斜面22Aの距離D4が70mmより大きいと、ハチ防除用容器1が大型になってしまうため、ハチ防除用容器1の設置場所が限られる。また、人の第二指長の平均は、70mm程度であるため、距離D4を70mmより大きくしなくても、指先が吸液性部材40に触れる可能性が小さい。また距離D4を大きくすると、傾斜面22A上に着地したハチの歩行距離が大きくなるため、ハチがハチ出入口21まで到達する可能性が小さくなる。例えば、本実施形態では、距離D4は、25mmである。
【0053】
傘30は、ハチが侵入するための、例えば、アーチ型開口部31を備えることができる。ただし、ハチ出入口21と外部とを連通する開口を有していれば、その形状や大きさ等を様々なものに変形することが可能である。アーチ型開口部31は、中蓋20に接続する両端部と、両端部を結ぶアーチ部を備える。アーチ部は、半円弧状又は曲線状に形成される部分を備える。また、アーチ部は、両端部の中間付近で中蓋20との間隔が最も大きくなるように設けられる。
【0054】
図1等に示されるように、傘30は、ハチ防除用容器1の中心を鉛直に貫通する中心軸を基準として90度回転対称に設けられた4つのアーチ型開口部31を備える。このため、あらゆる方向からハチをハチ防除用容器1に侵入させることが可能になる。更に少なくとも対角方向に2つのアーチ型開口部31を設けたことにより、風通しを良くすることが可能になる。このため、吸液性部材40にハチを誘引する誘引剤を含浸させた場合、ハチ防除用容器1を通過する風によって、揮散した誘引剤がハチ防除用容器1の周囲に広がることを促進することが可能になる。ここで、中蓋20の傾斜面22Aを基準とするアーチ型開口部31の高さ(傾斜面22Aと、アーチ型開口部31の中間部との鉛直方向の距離)は、10mm以上35mm以下であることが好ましく、10mm以上30mm以下であることが更に好ましい。中蓋20からのアーチ型開口部31の高さが10mm以上の場合、スズメバチのような大型のハチであっても、ハチ防除用容器1内に侵入することが可能になる。一方で、中蓋20とアーチ型開口部の高さが35mmより大きいと、人の指が食餌剤に触れやすくなってしまう。また、ハチ以外の大型昆虫が侵入してしまう。本実施形態では、図5に示される鉛直断面において、アーチ型開口部31の天井面30Aは水平に設けられ、一方で傾斜面22Aは傾斜している。このため、中蓋20の傾斜面22Aを基準とするアーチ型開口部31の高さは、ハチ出入口21に近付くほど小さくなる。図5に示されるように、傾斜面22Aを基準とするアーチ型開口部31の高さが最小となる、アーチ型開口部31のハチ出入口21側端部における、天井面30Aとその鉛直方向における傾斜面22Aとの高さD1を、10mm以上35mm以下とし、より好ましくは10mm以上30mm以下とすることにより、ハチをハチ防除用容器1内に容易に侵入させることが可能になる。一方で、アーチ型開口部31の両端部間の距離は、10mm以上100mm以下であることが好ましく、15mm以上80mm以下であることが更に好ましい。
【0055】
また、傾斜面22Aとその上方に設けられる傘30との間隔は、10mm以上を維持することが好ましい。このような構成とすることにより、ハチが傾斜面22A上を歩行してハチ防除用容器1内に侵入することが容易になる。従って、傾斜面22Aの内径側の端部と傘30の下面(下方を向いた内表面)との間隔D2(鉛直方向における最大の高低差)は、10mm以上であることが好ましい。例えば、本実施形態では、最大間隔D2は、20mmである。なお、上述のとおり、ハチの侵入口であるアーチ型開口部31は、鉛直断面(図5)において、水平となる天井面30A(図5)を備えていてもよい。このような天井面30Aを設けると、一方で傾斜面22Aがハチ出入口21に向かうに従い高さが大きくなるように形成されるため、傾斜面22Aと傘30との間隔は、ハチ出入口21に近付くほど小さくなる領域が設けられる。このような構成とすることによって、傘30と中蓋20の隙間から差し込まれた指の可動範囲を制限し、指が傾斜面22Aに沿って上方に誘導されやすくすることが可能となる。なお、アーチ型開口部31以外の構造であっても、傘30のうちハチの侵入口となる部分に、鉛直断面において水平となる天井面を設けてもよい。
【0056】
また、ハチ出入口21の径D3は、10mm以上140mm以下であることが好ましく、より好ましくは、10mm以上100mm以下である。径D3が10mmより小さいとハチの侵入が困難となる。従って、ハチ出入口21の径D3は、少なくとも10mm以上であることが好ましい。一方で、径D3が140mmより大きくなると、ハチ防除用容器1が大型になってしまうため、ハチ防除用容器1の設置場所が限られる。従って、ハチ出入口21の径D3は、140mm以下であることが好ましい。例えば、本実施形態では、径D3は、60mmである。
【0057】
図5に示される線分L1は、吸液性部材40上端の位置を示している。吸液性部材40の上端と、傾斜面22Aの内径側端部との間隔D5(鉛直方向における高低差)は、1mm以上45mm以下であることが好ましく、より好ましくは10mm以上40mm以下である。間隔D5を1mmより小さくすると、吸液性部材40が、ハチ防除用容器1内を通過する風に触れやすくなるため、吸液性部材40の乾燥が促進されてしまう。また、指の関節を曲げたときに、指先が吸液性部材40に触れやすい。間隔D5を1mm以上とすることにより、吸液性部材40の乾燥を抑制し、人の指先が吸液性部材40に触れにくくする構造を実現することが可能になる。一方で間隔D5が45mmより大きくなると、ハチが脱出しづらくなってしまう。例えば、本実施形態では、間隔D5は、15mmである。
【0058】
また、傾斜面22Aの長さ、即ち、径方向における傾斜面22Aの外縁からハチ出入口21までの距離D4と、傾斜面22Aの終点、即ち、傾斜面22Aの内径側端部と吸液性部材40との間隔D5の和は、20mm以上であることが好ましく、より好ましくは30mm以上である。距離D4と間隔D5の和を20mmより小さくすると、指先が吸液性部材40に触れやすい。例えば、本実施形態では、距離D4と間隔D5の和は、40mmである。
【0059】
また、図2に示されるように、隣接する傾斜面22A間には、径方向に延在する溝Gを設けてもよい。このように構成することにより、ハチが脚を引っ掛けることが可能になるため、ハチが傾斜面22Aを登ることを補助することが可能になる。なお、傾斜面22Aには、凸部又は凹凸を設けてもよい。
【0060】
また、傘30の先端(アーチ型開口部31の外径方向端部)と傾斜面22Aの内径側端部とを結ぶ直線と、水平面との角度β(図5)は1度以上80度以下であることが好ましく、より好ましくは30度以上60度以下である。角度βが1度より小さい場合、ハチがハチ防除用容器1の内部に入っていることを確認することが困難である。このため、誤って指を入れた場合、ハチに刺される恐れがあることが分かった。また、一方で、角度βが80度より大きい場合、雨が侵入しやすい。例えば、本実施形態では、角度βは、45度である。
【符号の説明】
【0061】
1…ハチ防除用容器、10…下容器(容器本体)、20…中蓋、30…傘、40…吸液性部材、42…孔(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5