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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】飲料水を多段階で精製する装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20240222BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20240222BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240222BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240222BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240222BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20240222BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20240222BHJP
【FI】
C02F1/28 A
C02F1/28 F
B01D63/02
C02F1/32
C02F1/50 510A
C02F1/50 520B
C02F1/44 A
C02F1/44 B
B01D63/06
C02F1/50 531M
C02F1/42 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021510386
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019073952
(87)【国際公開番号】W WO2020049184
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】102018121904.0
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521075206
【氏名又は名称】インストラクション・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】instrAction GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl-Friedrich-Gauss-Ring 5,69124 Heidelberg(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルンクフィール,クリスティアン
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-024364(JP,A)
【文献】独国実用新案第202018100396(DE,U1)
【文献】国際公開第2017/018525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/28
C02F 1/30- 1/38
C02F 1/42
C02F 1/44
C02F 1/50
B01D 63/02
B01D 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのモジュール内に異なる精製技術を組み合わせて複数の段階で飲料水を精製するための装置であって、
ハウジング(3)、水入口開口(1)、水出口開口(2)、活性炭が充填された外側中空シリンダ(4)、および透過性壁を有する内側中空シリンダ(5)を備え、
前記内側中空シリンダ(5)が、重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂を含み、
前記キレート化樹脂または前記殺菌樹脂、あるいはその両方が、前記内側中空シリンダ(5)の全長にわたって、前記外側中空シリンダと中央ドレンとの間に充填されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記中央ドレンは、複数の開口を有する多孔パイプからなることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記多孔パイプの前記複数の開口は、それらを取り囲むキレート化作用および/または抗菌作用を有する吸収体樹脂の粒子よりも小さいことを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記中央ドレンは、パイプよりなり、膜で包まれており、開口を備え、前記開口はそれらを取り囲むキレート化作用および/または抗菌作用を有する吸収体樹脂の粒子径よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記膜は孔を有し、前記孔はそれらを取り囲むキレート化作用および/または抗菌作用を有する吸収体樹脂の粒子径よりも小さいことを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記中央ドレンは、1つまたは複数の中空繊維膜または中空繊維膜の束からなることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、pHセンサ、導電率センサ、UVセンサ、または細菌を同定するためのセンサを備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記センサは、値が定義された制限値を超えるか、または下回る場合に警告を発することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が更なる要素を含み、
前記更なる要素は、水タンク、軟化システム、熱水製造システム、(UV)消毒システム、酸化還元フィルター、CO 添加ユニット、または塩素化ユニットから選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記ハウジング(3)、前記水入口開口(1)、前記水出口開口(2)、前記外側中空シリンダ(4)、および前記透過性壁を有する内側中空シリンダ(5)が、3D印刷によって製造される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの水精製プロセスが1つのユニットに組み合わされ、1つのプロセスが、重金属および/または細菌を除去するためのキレート化ゲルおよび/または殺菌ゲルを含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水の精製には、様々な方法と技術とをすでに組み合わせた多数の装置が市場で入手可能である。
【0003】
最大の市場シェアを持つ逆浸透の主流技術に加えて、異なる濾過技術や蒸留プロセスを使用する多くの装置がある。既知の全てのプロセスには(時に深刻な)欠点がある。
【0004】
逆浸透の最も不利な点は飲料水の収量が少ないことであり、使用される水量の10%を超えることはまれである。逆浸透はエネルギー集約的であり、また、飲料水からマグネシウムのような健康促進元素を除去する。これは、第二段階で複雑な方法で飲料水に再び添加されることがある。
【0005】
非常に多いエネルギー消費の欠点は、蒸留プロセスにも共通する。更に、逆浸透の場合と同様に健康促進要素も除去され、その結果、長期間の消費に適さない蒸留水が形成され、そしてマグネシウム塩のような重要な成分は次の段階で再度補充されなければならない。
【0006】
複数の濾過技術を別々のユニット/カートリッジで組み合わせた浄水器は、対応するバルブまたはコネクタを備えた複雑なパイピングを必要とする。これらはその性質上故障の影響を受けやすく、漏れ等の可能性がある。また接続部は、流れの条件により特に細菌等が繁殖しやすい場所である。
【0007】
上述のRO技術および蒸留プロセスと比較して、濾過(または異なる直交濾過技術の組み合わせ)に基づく多くの精製方法は、原則として、高い収率(100%)およびライン圧力で動作し、追加のエネルギー消費を要さない。しかし、このための前提条件は、装置内の圧力降下が低く、そして粗粒化した吸収樹脂を使用するセットアップであり、これは、減少の有効性および生産性を低下させる。
【0008】
市販されている既知の濾材(例えば、活性炭)は、直線的なスルーフローを有するカートリッジ中の粒子の充填ベッドとして、または、半径方向のスルーフローを有するプレスされた中空シリンダとして使用される。生産性と圧力降下の観点から、中空シリンダは理想的なセットアップを示している。
【0009】
他に知られている媒体は、飲料水から重金属を除去するためのMetCap(登録商標)樹脂(国際公開公報第2016030021号)、および飲料水から細菌を除去するためのBacCap(登録商標)樹脂(ドイツ公開公報第102017007273号)である。両方とも通常はカートリッジ内で使用され、そして時には組み合わされる。
【0010】
MetCap樹脂は直鎖ポリビニルアミンであり、多孔質粒子に適用され、次いで二官能性架橋材と反応して三次元ポリマーネットワークを形成する。このネットワークは、高密度の多数のアミノ基を有し、そして非常に安定な金属-アミン錯体の形成を介して、キレート化様式で大容量溶液から重金属を結合し、そしてそれらを除去することができる。弱アミン錯体のみを形成する重金属(例えば、ニッケル、マンガン)については、更なるキレート基(例えば、カルボキシレート、チオール等)がポリマーネットワークに導入され得る。
【0011】
BacCap樹脂も同様に、MetCap吸収材と同様の方法で製造されるアミノポリマーである。しかし、ブレンド、化学量論、架橋度等は抗菌作用のために最適化されている。抗菌作用は、ポリマーの少なくとも部分的にプロトン化された(したがって正に荷電した)アミノ基と負に分極した細菌細胞エンベロープとの間の相互作用に起因する可能性が高い。考えられる説明の1つは、ポリマーのアミノ基と細胞エンベロープの脂肪酸(その結果損傷を受ける)との直接的な相互作用であり、細胞エンベロープの脂肪酸はその結果損傷を受ける。第二の説明は、細胞壁のイオンチャネルがアミノポリマーによって遮断されることであり得る。最終的な分析では、両方の説明が細胞膜の破壊や損傷をもたらし、そして最終的には細菌が死滅する。
【0012】
ここで特に重要なのは、細菌を除去したり、重金属を結合したりするために、飲料水中に物質が放出されないということを指摘することである。この点において、提案されたプロセスは、銀、塩素またはその他の物質を飲料水中に放出して汚染する他のプロセスとは明らかに異なる。
【0013】
提案した装置の更なる利点は、容易な取扱いにある。逆浸透のような濾過プロセスとは異なり、電気を必要とするポンプによる圧力上昇は不要である。また、動作中に電力を必要とする市販の紫外線装置についても同様である。
【0014】
飲料水を精製する第三の方法は、マイクロおよびナノ濾過プロセスによる濾過である。
【0015】
特に軟化のための飲料水の処理のための更なるプロセスは、イオン交換体を介したカルシウムおよびマグネシウム含有飲料水の濾過である。このプロセスでは、カルシウムとマグネシウムとが結合し、そしてそのため2モル当量のナトリウムが飲料水中に放出される。過剰なナトリウムが心臓血管系に及ぼす悪影響のために、このプロセスは批判されている。加えてこのプロセスの欠点は、容量が小さく、そして頻繁に交換または再生する必要があることである。更に、これらの装置は微生物汚染の傾向がある。
【0016】
3つの最初に挙げられた濾材とは著しく対照的に、イオン交換体の濾過能力は、はるかに早く消費される。硬水を使用する場合は、わずか数日後に樹脂を交換または再生する必要があるが、しかし通常の使用でも少なくとも1~2週間後に必要となる。
【0017】
重金属吸収性樹脂(例えば、「MetCap(登録商標)」)、細菌除去樹脂(例えば、「BacCap(登録商標)」)、活性炭、または濾過膜、で充填されたカートリッジの寿命は約6カ月である。これらの要素が技術的に使い尽くされる前に、予防策として交換する必要があることは珍しくはない。
【0018】
上述の装置に加えて、市販されているかまたは保護されている、個々の精製技術を互いにモジュール方式で結合する多種類の装置がある。
【0019】
これらの機器は、地域毎に異なる濃度で非常に異なる汚染物質を含む可能性がある飲料水の性質と汚染に応じて、精製カートリッジが使い果たされた際、個々の顧客がそれぞれの精製カートリッジを個別に交換できるという利点がある。欠点は、個々のカートリッジの容量を監視するために、システムの一部が使い果たされた際に個々にメッセージを発するセンサの設置を要することである。あるいは、製造者は、個々のカートリッジを交換する特定の期間を指定するプロトコルを発行する。
【0020】
このプロセスは複雑で、消費者に優しいものではない。複雑なプロトコルやメンテナンス期間が遵守されず、そして飲料水の水質が改善されずに平均的に悪化する危険性がある。
【0021】
ドイツ実用新案公報第202018101926号は、航空機内の水を精製するための2つの部品からなるフィルター装置を開示している。公開された文献は、内側に膜(特に中空フィルター膜)を有する活性炭製の外側中空シリンダを記載している。濾過される水は、活性炭に横方向に導入され、活性炭を通して濾過され、そして最終的に活性炭中空シリンダの内部に到達する。活性炭の孔径は、0.5μmが好ましい。内側の膜の孔径は、好ましくは、約0.2μm付近の範囲である。これら比較的大きな孔は、システムの背圧を低く保つために選択された。著者らは、著者らがクレームする装置で細菌および重金属を保持することができると主張する。
【0022】
膜、特に水濾過用の中空繊維膜は、広範囲に使用されることが知られている。細菌の除去には、孔径が大きいほど細菌および他の微生物(特にウイルス)を保持しないので、原則として孔径0.02μm(20nm)の膜が用いられる。細菌の保持を確実にするために、明確な圧力上昇が受け入れられる。本開示(ドイツ実用新案公報第202018101926号)で提案されている200nmは、明らかに通常の20nmより大きい。したがって、細菌が著しく保持されることは、きわめて起こりにくいようである。おそらく、背圧を最小化するために、大きな孔径が選択された。
【0023】
lo7欠乏の特定の例は、ブレブンジモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)を使用して実証される。この微生物はいかなる飲料水条例にも記載されておらず、むしろ外来性微生物である。通例、大腸菌または緑膿菌が試験菌として使用される。
【0024】
活性炭そのものは、バクテリアの保持には、ほとんどが不適当である。確かに、十分に小さな孔では、細菌は最初の間は保持される。しかし、活性炭の孔径が0.5μmであるため、これはすでに疑わしい。その後、細菌は活性炭中で増殖し、次いで水中に放出され、水が汚染される。とはいえ、第2の精製段階は間違いなく意味がある。しかし、上述したのと同じ大きさの孔が選ばれた場合、効果的な濾過は非常に疑わしい。
【0025】
重金属の除去についても同様である。重金属は活性炭ではまったく除去されないか、または、非常に小さい容量でごく僅かな割合でしか除去されない。重金属は限外濾過膜によっては濾過されない。そのためには、圧力降下が大きいため意図された用途に適さない、1桁のナノメートルレンジの膜が必要となる。
【0026】
ドイツ実用新案公報第202018101926号で規定されている活性炭と膜濾過の組み合わせのみの装置とは対照的に、本願明細書では、飲料水精製のために特別に開発された吸収材ゲルとの組み合わせが提案される。具体的には、InstrActionによって開発されたキレート化吸収ゲルは、重金属と効果的に、迅速に、かつ大容量で結合する。この性能は、単純な膜濾過では達成できない。同時に、抗菌作用を有する粒子は、提案されたセットアップでの濾過によって飲料水に関連する微生物(特に細菌)を効果的に除去し、細菌の発生源と考えられる可能性が高い活性炭や、孔径が大きすぎる膜での濾過とは対照的である。
【0027】
ドイツ公開公報第10217649号では、貴金属表面が、水と接触するとすぐに金属イオンを水中に放出し、次いでその一部が細菌を死滅させるよう処理されるプロセスが提示されている。とりわけ、銀が好ましい貴金属として提案されている。作用原理は、したがって、抗菌物質の放出に基づいている。そのため、これは批判に晒されている同じ目的のためのイオン交換体の銀処理と類似する。健康に有害な可能性のある金属の放出は、このプロセス固有のものである。更に、銀耐性微生物の出現は不利益であると考えられている。重金属はこの方法を用いては除去されず、逆に最終的には、濾液中(上記発明によれば)には以前よりも多くの重金属が存在する。
【0028】
本発明は、提案された装置内での細菌と粒子表面との相互作用に基づいており、そして飲料水中への抗菌作用を伴う重金属イオンの放出に基づいていない。提案されたプロセスを通して、細菌や他の微生物が飲料水から効果的に濾過されるだけでなく、重金属もまた除去される。
【0029】
チェコスロバキア公開公報第339888号は、水精製のための内側中央ドレンを備えた活性炭充填ベッドから成るフィルターキャンドルを提案している。ここでの活性炭は、銀や銅、またはこれらの金属塩等の「オリゴダイナミックに活性な物質」と「結合または含浸」されている。これらの物質は確実に細菌を死滅させる。その結果、活性炭を介しての微生物の増殖が防止され、そして細菌が濾過水を汚染することが防止される。この危険性は、水精製における活性炭の使用に際しての批判の要点である。この装置全体は、「塩素」および他の否定的な味を生成する物質を吸着により実質的に除去するために用いられる。この装置はその間に更に開発され、そして今日では一般に圧縮活性炭として販売されている。チェコスロバキア公開公報第339888号で提案された発明は、銀および銅のような有毒な重金属が濾液中に放出されるという重大な欠点を有する。
【0030】
上述のように、本発明が使用される場合、この深刻な欠点は当てはまらない。記載されている本発明に係る装置においては、細菌は抗菌樹脂の粒子表面との相互作用によって除去される。物質、特に重金属は、プロセス中に濾液中に放出されない。それどころか、重金属はキレート化樹脂を通して水を濾過することにより除去される。
【0031】
ドイツ公開公報第3001674号は、活性炭とイオン交換体とを含むフィルターを提案している。精製される水のpHがフィルター内で約pH=3に下げられ、フィルター内の微生物の増殖が抑制されるか、または、すでに存在する微生物が死滅される。同時に、微生物を死滅させるため、またはそれ以上の増殖を防止するために、殺生物作用のある物質が溶液中に放出される。
【0032】
それ以前に出版された文献と同様に、殺生物性物質を放出することにより、微生物-汚染活性炭の主要な問題を処置することも試みられている。健康に害を及ぼす可能性があるこれらの物質による濾液の汚染は許容される。
【0033】
これらの欠点は、上述のように、本発明の装置が使用される場合には生じない。
【0034】
ドイツ実用新案公報第202018100396号には、2~5つの異なる浄水プロセスをモジュール方式で相互に組み合わせたモジュール式浄水システムが記載されている。個々の精製段階は、飲料水中に存在するような異なるグループの汚染物質にそれぞれ対処する。個々のモジュールは、互いに独立しており、そしてパイピングを介して互いに接触している。モジュールは個別に交換可能であり、そして容量が尽きたらすぐに個別に交換可能である。モジュール式のセットアップは、対応するニーズがある際に個々のコンポーネントを変更できるという点で利点を有する。不利な点は、複雑であり、そして多くの点で脆弱なパイピングにある。更に、単純濾過による細菌の除去については、ドイツ実用新案公報第202018100396号ではまだ提供されていない。
【0035】
本提案では、全ての精製段階が1つのモジュールに集約されるように、1つのカートリッジ内で最も長寿命の精製プロセスの2~3つを組み合わせる。これは、ドイツ実用新案公報第202018100396号で提案されている2つから5つのカートリッジとは対照的に、1つのカートリッジのみをモニターしそして交換する必要がある、非常に省スペースで、顧客フレンドリーなプロセスである。また、ドイツ実用新案公報第202018100396号では計画されていない低い背圧のみを実現するよう、プロセスは3次元的に組み合わされている。
【0036】
公表されている文献のいずれも、硬質活性炭中空シリンダをキレート化材および抗菌性樹脂からなる微粒子充填ベッドと組み合わせたものを規定しない。このような組み合わせは、これまで従来技術では知られていなかった。同じことが、チェコスロバキア公開公報第339888号で提供されている、モジュール全体に中央ドレンを備えたセットアップにも同様に当てはまる。しかしそこでは、微生物削減のための許容できない規定のみが提案されている。抗菌性樹脂を用いた多段ラジアルフィルターの革新的なアプローチは、公表されている文献のいずれにも提供されていないか、または計画さえもされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
この背景に対して生じる目的は、既知の濾過プロセスの利点を、モジュールセットアップの欠点が最小限に抑えられるように、または、そもそも発生させないように組み合わせることである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
係る目的は、1つのモジュール内に直交精製技術を組み合わせて複数の段階で飲料水を精製するための装置によって達成され、該装置は、ハウジング(3)、水入口開口(1)、水出口開口(2)、活性炭が充填された外側中空シリンダ(4)、および半透過性壁を有するた内側中空シリンダ(5)を備え、該内側中空シリンダ(5)が、重金属および/または細菌を除去するためのキレート化および/または殺菌ゲルを含むことを特徴とする。
【0039】
有利には、前記ハウジング(3)、前記水入口開口(1)、前記水出口開口(2)、前記外側中空シリンダ(4)、および前記内側中空シリンダ(5)は、3D印刷によって製造され得る。これにより、費用対効果の良い製造が可能となり、そして更に、装置の形状および寸法がユーザに合わせカスタマイズされ得る。
【0040】
クレームされた装置において、長寿命濾過媒体または技術である活性炭、重金属結合吸収樹脂および/または細菌除去樹脂、並びに任意で限外濾過、の少なくとも2つが互いに組み合わされる。
【0041】
これは、ハウジング(3)内の既知の外側活性炭中空シリンダ(4)に、重金属結合吸収樹脂および/または細菌除去樹脂(7)を充填することによって達成される(図1図3)。中央には、半透過性壁(5)、中空繊維膜または中空繊維膜の束(6)を有する更なる内側中空シリンダの形態のドレンが導入され、好ましくは中空シリンダの全長にわたって導入され、その結果、ドレンが中央に配置された状態で、同心円状に次々と水が流れる合計少なくとも2つの樹脂層が提供される。
【0042】
要約すると、濾過される水は、まず、外側活性炭中空シリンダを通過し、続いて、重金属除去用吸収樹脂および/または細菌除去用樹脂を充填した内側中空シリンダを通過する。最後に、水は、2つの中空のシリンダの全長にわたって延びる中央ドレンを通過する。これは、第3の精製段階として、限外濾過中空繊維膜として設計され得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、水入口(1)、水出口(2)の1つの接続部、ハウジング(3)、活性炭製の中空シリンダ(4)、透過性壁を有する中空シリンダ(5)または中空繊維膜束(6)、重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂(7)、を有する二重中空シリンダカートリッジの縦断面図である。
図2図2は、水入口(1)および出口(2)の1つの接続部、ハウジング(3)、活性炭(4)、充填材としての重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂(7)、透過性壁を有する中空シリンダ(5)または1あるいは複数の中空繊維(6)、を有する二重中空シリンダカートリッジの断面図である。
図3図3は、水入口(1)および出口(2)(直線構造)のためのそれぞれ1つの接続部、ハウジング(3)、活性炭製の中空シリンダ(4)、透過性壁を有する中空シリンダ(5)または1あるいは複数の中空繊維(6)、充填材(7)としての重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂、フリット(8)、を有する二重中空シリンダカートリッジの縦断面図である。
図4図4は、水入口(1)と出口(反対側に隠れている)の2つの接続部(直線構造)、ハウジング(3)、活性炭中空シリンダ(4)、充填材(7)としての重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂、透過性壁を有する中空シリンダ(6)または1つまたは複数の中空繊維(5)、を有する二重中空シリンダカートリッジの断面図である。
図5図5は、水入口(1)、水出口(2)、ハウジング(3)、活性炭製の中空シリンダ(4)、ベッドフォーム(7)内の重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂、フリット(8)、を有する中空繊維カートリッジに中央ドレンを設けずに吸収材ゲルを充填した場合の、カートリッジヘッドの全圧(矢印の太さで好ましい流れ方向がカートリッジ内に示されている)が低いために水の不利な濾過経路を示す。
図6図6は、水入口(1)、水出口(2)、ハウジング(3)、活性炭製の中空シリンダ(4)、充填材(7)としての重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂、フリット(8)、およびチャネル形成(バイパス)(9)(6)を有する、中央ドレンを備えない中空繊維カートリッジにおける、濾過対象水(9)の経路形成(バイパス)を示す。
図7図7は、水入口(1)、水出口(2)、ハウジング(3)、活性炭製の中空シリンダ(4)、透過性壁を有する中空シリンダまたは中空繊維膜(5,6)、充填材(7)としての重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂を有する、中央ドレンを備え、入口(1)と出口(2)とが互いに向かい合っている直線構造を備える充填された中空シリンダの、有利な濾過経路を示す。
図8図8は、水入口(1)、水出口(2)、ハウジング(3)、活性炭製の中空シリンダ(4)(6)、透過性壁を有する中空シリンダまたは中空繊維膜(5,6)、充填材(7)としての重金属および/または細菌を除去するためのキレート化樹脂および/または殺菌樹脂、フリット(8)、を有し、入口(1)と出口(2)とが同側に位置する中空シリンダの、有利な濾過経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
水入口(1)は、浄水器の交換/接続を容易にするために、水出口(2)と同側に取り付けることができ(図1図2)、また、パイプラインに直線的に取り付ける場合には反対側に取り付けることもできる(図3図4)。
【0045】
中央ドレン(5)は、フィルターの全長にわたって同時に小さくかつ均一な圧力降下を有する吸収体材料を通る最適な流れに関して必須である。
【0046】
濾材を通過する直線的な流れの場合、過度に高い背圧が発生し、これにより追加のポンプが必要となるか、または許容できない程に生産性を低下させる。
【0047】
圧力を低下させるために大きすぎる粒子が選択されると、汚染された水と吸収材内の結合部位との間において、交換が遅く、拡散経路が長くなる結果、生産性が低下する。低すぎるベッド高さが選択され、そして吸収体ベッド内の水の滞留時間がそのために減少されると、水からの不純物の減少が不十分となる。
【0048】
ここでクレームされる中央ドレンを有さず、内側のフリー活性炭中空シリンダ(5)に更なる吸収材(6)が充填されている場合、ゲルベッド(7)を通る均一な流れを妨げる圧力勾配が中空シリンダの長さ全体にわたり発生し、そして汚染物質の不十分な減少につながる。遅くとも「最短経路」で容量が使い果たされた後は、水の浄化が全く行われないか、または不十分な水の浄化のみとなる(図5参照)。
【0049】
シリンダの片側に単純なドレンを有する充填された中空シリンダの場合、壁(7)の流入部にチャネルが追加で形成され得(図6)、これもまた、吸収体粒子を通る流れを妨げ、そして水と吸収体との間の接触が不十分であるため、汚染物質を全く減少させないか、または汚染物質の減少があまりにも少なくなる。
【0050】
ここでの一つの代替案として、中央ドレン(5)を備える活性炭ブロックを有する市販の中空シリンダにおいて既に実現されているような、分離媒体(5)および(7)の半径方向の配置を提供する(図7および図8)。このセットアップにより、低い背圧、短い分離距離、そして均質で均一かつ完全なスルーフロー(8)で高流量が可能となり、同時に吸収ベッド内の水の滞留時間が十分となる。
【0051】
ドレンは、対応する小さな開口を有する多孔性のパイプ(6)から成り得、これにより、濾過された水が感知できるほどの圧力降下を伴わずに通過することができるが、樹脂は保持される。
【0052】
更に、中央パイプには、対応する小さなメッシュサイズ(6)を有する適当なフィルター布が追加的に設けられている場合、樹脂の粒径に対して大きい複数の開口が設けられ得る。
【0053】
更に、中央ドレンは、シリンダ(6)の全長にわたって延在する1つまたは複数の(束ねられた)中空繊維膜から形成され得る。
【0054】
この配置は、パイプラインに直線的に設置するために入口と出口が互いに反対側にあるよう設計され得るか(図7)、または、水精製装置に簡単に設置するために入口と出口とを1つだけ接続するように設計され得る(図8)。
【0055】
変形例として、活性炭と1つまたは複数の吸収性樹脂とを適当な方法で共に圧縮/固着
した、複合中空シリンダが使用され得る。
【0056】
活性炭、吸収樹脂の量またはボリューム、そして中央ドレンまたは膜の量および容量は飲料水の水質基準に適合され得、そして圧力降下を最小限に抑えつつ精製の最大の生産性と有効性とを達成するように組み合わせられ得る。
【0057】
このセットアップにより、ここでクレームした原則を維持しつつ、地域の違いや飲料水市場への適応を可能にする。
【0058】
クレームされた装置は少なくとも2つの長寿命の浄水プロセスを1つのカートリッジに組み合わせており、極めて広範囲の飲料水の汚染物質(塩素、有機小分子、残留医薬品、重金属、細菌、ウイルス、粒子等)をカバーする。
【0059】
ここで、精製エレメントは、最適なスルーフロー(従って、最適な水-吸着剤の接触)が、減少された圧力降下で達成されるように配置される。
【0060】
このセットアップにより、最大の精製効率を有し代替のセットアップでは得られない高い生産性(フェイスエリアが大きく、そして粒子径が小さいことが可能)が得られる。
【0061】
同時に、消費者により容易に監視され得る最小の空間要求を有するコンパクトなユニットが達成される。
【0062】
異なる(長寿命の)精製技術の組み合わせは、組み立て中および対応する機械の使用中の複雑さを減少させる(パイプまたはアダプタがほとんどないか全くなく、接続部が1~2箇所しかない等)。
【0063】
水道の蛇口への簡単な接続(必要であれば柔軟なアダプタを介して)や、または対応する水パイプラインへの設置もまた考えられる。
【0064】
外向きに線形の構造にもかかわらず、短い濾過経路を有する半径方向濾過、ゲルベッド内の水の十分な滞留時間、および非常に単純な構造を伴う。
【0065】
エンドユーザによる取扱いは、モジュール方式で構築されたシステムに比べてはるかに簡素化されており(2~3個に代えて1個のカートリッジのみの変更/監視)、同じことが生産、取引、マーケティング、流通、保管等にも当てはまる。
【0066】
好ましい実施形態では、カートリッジは、既に市場で一般的に使用されているように、水パイプライン内に直線的に、または単一の接続を介して取り付けられ得る。
【0067】
この装置は、全ての一般的な更なる精製または貯蔵モジュール、例えば、精製水を貯蔵するための後続のタンク、または、UV消毒(タンク内またはオンライン)、酸化還元フィルター等のような更なる精製技術、または、熱水製造における更なる使用、炭酸水製造のためのCO添加モジュール、後の消毒または保存のための、いかなる塩素化または過酸化水素の添加、カルシウムおよび/またはマグネシウム等の健康促進イオンの添加等、と容易に組み合わせることができる。
【0068】
本装置は、その後の取水や浄水処理の種類に影響を与え、妥協を要させるものではない。
【0069】
装置の効率は、適切なセンサを用いて適切なポイント(引き出しポイントまたは個々のモジュール間のポイントのいずれか)で監視され得る。適切なセンサは、例えば、pHセンサ、導電率センサ、細菌濃度をチェックするセンサ、イオン選択性センサ、UVセンサ等であるが、これらに限定されない。フロースルーセルは、処理される水の量を測定することができる。
【0070】
好ましい実施形態では、センサは、測定値に基づいて個々のモジュールの機能を監視し、そしてカートリッジの交換または再生を行う必要がある場合に対応するメッセージを発行するデータ処理システムに接続される。モジュールはまた、純粋に時間制御または容積制御された方法で、センサを使用して交換することもできる。実施形態に応じて、データ処理システムは、軟化モジュールの自動再生を開始するか、または更なる動作の条件としてモジュールの交換を強制するために、バルブを閉じることができる。
【0071】
データ処理システムは、例えば移動通信装置、電子メール、SMS、インスタントメッセージ等で、枯渇またはエラーの場合に、消費者にカートリッジを変更する必要性を認識させるメッセージを発行するようにプログラムされ得る。
【0072】
最小の設計では、装置は家庭での使用に適しており、典型的な消費者に適合されている。より大きな設計では、本装置は、アパートビル、集合住宅、レストラン、病院、船舶上または高品質の飲料水を必要とするその他の施設で使用され得る。
【0073】
カートリッジ自体、すなわち、外側ハウジング(3)、水入口開口(1)、水出口開口(2)、活性炭製の外側中空シリンダ(4)、および、中空繊維膜束(6)または透過性壁(6)を有する内側中空シリンダは、プラスチック製であることが好ましい。製造は、確立された射出成形プロセス、3D印刷、またはそれらの組み合わせに従って行われる。例例えば穿孔等の個々の要素の後処理も同様に行われる。中空繊維自体は、通常、ポリエーテルスルホン(PES)ポリマーで構成される。しかしながら、それらはまた他の材料から構成されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8