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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240222BHJP
   G01N 33/86 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20240222BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N33/86
G01N33/50 D
G01N33/92 A
G01N33/92 Z
G01N37/00 101
G01N21/64 F
G01N21/78 C
G01N21/05
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021514601
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 GB2019052573
(87)【国際公開番号】W WO2020058676
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】1815278.5
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1911397.6
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518459846
【氏名又は名称】ルミラディーエックス ユーケイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ロウ フィル
(72)【発明者】
【氏名】キーチ スティーヴン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マクギガン ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ベロ ロイス
(72)【発明者】
【氏名】スレビン クリス
(72)【発明者】
【氏名】ラン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ディリーン ジョン
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/049506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 33/86
G01N 33/50
G01N 33/92
G01N 21/64
G01N 21/78
G01N 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析物の検出に使用するための動態分析方法であって、前記方法は:
a)マイクロ流体チャネルの検出領域にサンプルを提供するステップであって、前記検出領域は、光学的に透過な部分、及び前記マイクロ流体チャネルの前記光学的に透過な部分の内腔表面に局在する1つ又は複数の試薬を含む多孔質マトリックスを含み、前記試薬は前記分析物又はその反応生成物と反応して試薬反応生成物を形成することができ、前記試薬反応生成物は前記マイクロ流体チャネルの前記光学的に透過な部分の外側にある光学検出器を使用して、前記試薬反応生成物の生成時に生じる光信号の変化によって検出することができる、ステップ;
b)前記光学的に透過な部分を介して前記試薬反応生成物の少なくとも1つの光学的測定を実施するステップ;及び
前記試薬反応生成物の前記少なくとも1つの光学測定に基づいて、任意の分析物を検出するステップを含む、動態分析方法。
【請求項2】
前記チャネルの前記光学的に透過な部分が、前記チャネルの上部部分である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記マイクロ流体チャネルが、少なくとも1つの追加のマトリックス及び/又は前記マトリックスの外側に堆積された1つ又は複数の分析試薬を含む、請求項1又は請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの追加のマトリックス及び/又は1つ又は複数の分析試薬が、前記検出領域ではない前記マイクロ流体チャネルのセクションに局在化されている、請求項3に記載の分析方法。
【請求項5】
前記マトリックスが、少なくとも1つの担体分子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項6】
前記担体分子が、一般的にサンプル液に不溶性である、請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの担体分子が、少なくとも1つのポリマーを含む、請求項5又は請求項6に記載の分析方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリマーが、少なくとも1つの二糖類及び/又は多糖類を含む、請求項7に記載の分析方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの二糖類が、ショ糖、乳糖、マルトース、トレハロース、セロビオース、及びキトビオースからなる群から選択され、前記少なくとも1つの多糖類が、アミロース、アミロペクチン、セルロース、セルロース誘導体、キチン、カロース、ラミナリン、クリソラミナリン、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、フコイダン、及びガラクトマンナンからなる群から選択される、請求項8に記載の分析方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの担体分子が、トレハロース、並びに、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロースエチルスルホン酸(CES)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、微結晶セルロース(MCC)、メチルセルロース、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つのセルロース誘導体を含む、請求項5~9のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項11】
前記サンプルが、活性充填機構によって前記検出領域に供給される、請求項1~10のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項12】
前記サンプルが、血液又は他の体液のサンプルである、請求項1~11のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項13】
前記分析物が、酵素、脂質、リポタンパク質、サイトカイン、ホルモン、又はエンドトキシンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項14】
前記分析物が酵素である、請求項13に記載の分析方法。
【請求項15】
前記酵素がトロンビン又はプロテアーゼである、請求項14に記載の分析方法。
【請求項16】
前記酵素がトロンビンであり、前記方法が、プロトロンビン時間(PT)又は国際正規化比(INR)の値を決定するために使用される、請求項14又は請求項15に記載の分析方法。
【請求項17】
前記試薬がトロンビン切断可能な基質試薬を含み、前記基質試薬はトロンビンによって切断されて光信号を発生する試薬反応生成物を形成することができる、請求項14又は請求項15に記載の分析方法。
【請求項18】
前記トロンビン切断可能な基質試薬が、トロンビンによって認識及び切断可能なペプチド配列及び関連蛍光分子を含み、前記試薬反応生成物を形成する前記関連蛍光分子は、前記ペプチド配列の切断後に検出することができる、請求項17に記載の分析方法。
【請求項19】
前記分析物が脂質又はリポタンパク質を含む、請求項13に記載の分析方法。
【請求項20】
前記分析物がコレステロール又はコレステロールエステルを含む、請求項19に記載の分析方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法で使用するためのマイクロ流体チャネルであって、前記マイクロ流体チャネルは:
前記マイクロ流体チャネルに提供されたサンプルの少なくとも一部を受け取るための検出領域を含み、前記検出領域は、光学的に透過な部分、及び前記マイクロ流体チャネルの前記光学的に透過な部分の内腔表面に局在する1つ又は複数の試薬を含む多孔質マトリックスを含み、前記試薬は、前記分析物又はその分析物反応生成物と反応して試薬反応生成物を形成することができ、前記試薬反応生成物は、前記試薬反応生成物の生成時に生じる光信号の変化によって光学的に検出されることができ;
前記光学的に透過な部分が前記チャネルの上部であってもよい、マイクロ流体チャネル。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法の実施に使用するためのマイクロ流体カートリッジであって、前記マイクロ流体カートリッジは:
少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを含み、各前記マイクロ流体チャネルは検出領域を含み、前記検出領域は、光学的に透過な部分及び前記光学的に透過な部分の内腔表面に局在する1つ又は複数の試薬を含む多孔質マトリックスを含み、前記試薬は前記分析物又はその分析物反応生成物と反応して試薬反応生成物を形成することができ、前記試薬反応生成物は前記試薬反応生成物の生成時に生じる光信号の変化によって光学的に検出することができ;
前記光学的に透過な部分は前記チャネルの上部であってもよい、マイクロ流体カートリッジ。
【請求項23】
サンプルで使用する分析方法であって、前記方法は;
マイクロ流体チャネルを含むカートリッジをリーダ装置に挿入するステップであって、前記マイクロ流体チャネルは、前記マイクロ流体チャネルに提供されたサンプルの少なくとも一部を受け取るための検出領域を含み、前記検出領域は、光学的に透過な部分、及び光学的に透過な部分の内腔表面に局在する1つ又は複数の試薬を含む多孔質マトリックスを含み、前記試薬は、前記分析物又はその分析物反応生成物と反応して試薬反応生成物を形成することができ、前記試薬反応生成物は、前記試薬反応生成物の生成時に生じる光信号の変化によって光学的に検出されることができる、ステップ;
前記リーダ装置内の力の印加手段を使用して前記マイクロ流体チャネルから任意で空気を排出するステップ;
前記マイクロ流体チャネルの第1の端部に前記サンプルを導入するステップ;
前記リーダ装置内の手段を使用して、前記マイクロ流体チャネルに沿って前記サンプルを前記検出領域に引き込むステップ;
前記サンプル中の前記分析物又は前記分析反応生成物が前記試薬と反応して前記試薬反応生成物を形成することを許容するステップ;
前記リーダ内の光学検出装置を使用して前記試薬反応生成物の少なくとも1つの光学測定を実行するステップであって、前記光学検出装置は前記光学的に透過な部分の外側にあるステップ;及び
前記試薬反応生成物の前記少なくとも1つの光学測定に基づいて、任意の分析物又は分析反応生成物を検出するステップを含む、分析方法。
【請求項24】
前記光学的に透過な部分が、前記チャネルの上部部分である、請求項23に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中に存在する分析物の検出方法に関する。また、本発明は、それらの方法で使用するマイクロ流体カートリッジ、及びそれらの方法又はカートリッジで特定使用されるマトリックスを提供する。
【背景技術】
【0002】
血液などの液体サンプルの試験が、様々な理由で実施されている。また、血漿サンプルというよりも、全血サンプルを検査できることが望ましい。しかし、赤血球などの血液中の成分が邪魔をしたり、検出効率を低下させたりすることがある。例えば、血液サンプル中に存在する酵素活性又は分析物の光検出を実施することに基づく検査は、血液自体が光検出を妨害する可能性があるため困難である。血液サンプルのバルクから酵素/分析物を除去することによって解決できるが、必ずしも常に可能ではなく、特に血液サンプルが存在することに依存する方法の場合には不可能である。例えば、特に血液サンプル中に存在する酵素の効果を一定期間にわたって決定しなければならない場合である。
そのような例として、プロトロンビン(PT)又は国際正規化比(INR)試験が挙げられる。PT又はINR試験は、個人の凝固状態を点検するためによく使用される。特に、ワルファリン又はクマリンなどの経口抗凝固療法を受けている人は、個人の凝固状態を適切にコントロールすることが非常に重要である。
PT/INR値を決定するための電気化学的方法、機械的方法、及び光学的方法を含む様々な方法が存在する。そのような検査の一つに、試薬カートリッジ内の血流を検出する光学由来のシステムを採用したコアグチェック(登録商標)Sシステム(ロシュ社)がある。モニターは、サンプル塗布から血流停止(凝固)までの時間を検出し、PTに変換する。より最新の試験は、試薬カートリッジ内の血流を検出する電気化学由来のシステムを採用したコアグチェック(登録商標)XSシステム(ロシュ社)である。しかし、精度を確保するためには有意で定期的な管理が必要であり、検出できるINR値の範囲には限界がある。
【0003】
アボット社のi-STATシステムを含む他のシステムは、血液による光学的干渉を避けるために、検査カートリッジ自体に電気化学的又は光学的センサが使用されている。
米国特許第5059525号明細書には、担体上で乾燥させた適当な試薬を含む試験ストリップを用いたPT試験で使用するためのシステムが記載されている。しかし、適切な色の変化を検出するためには、血漿を血液から分離する必要がある。そうしなければ赤血球が色の変化を妨害してしまう、又は色の変化を不明瞭なものとしてしまう。
別の光学的方法は、透過性の膜に設置されたローダミン-110由来の蛍光トロンビン基板を使用して、塗布面及びインジケータ面を横方向に対向させている。蛍光キネティクスは、INRに変換可能なプロトロンビン時間を提供するために分析される。(Zweig SE,et al,Biomed Instrum Technol. 1996 May-Jun;30(3):245-56.)
【発明の概要】
【0004】
本教示は、サンプル、例えば全血を搬送することができ、マイクロ流体チャネルに隣接して配置された別個の光学検出器を用いて光学変化を検出することができる1つ又は複数のマイクロ流体チャネルを含むマイクロ流体システムにおいて実施できる光学検出に基づく方法を開発するための本発明者らの研究に基づく。更に、より一般的には、本発明者らは、サンプル中の1つ又は複数の成分が光学的検出を妨害したり、不明瞭にしたりする可能性を緩和又は克服することを求めた。
広い意味において、本教示は、別個のリーダ装置内に存在する光学検出用の手段及び検出のための適切な分析物又はその反応生成物が近接していることを保証することによって、マイクロ流体チャネル内の適切な分析物又はその反応生成物の光学検出が達成されるマイクロ流体ベースのシステム/方法の開発に基づいている。これにより、サンプル中に存在する可能性のある成分(例えば、細胞又は粒子状物質)が、光学的検出を妨害し、及び/又はそれ以外の方法では不明瞭にする可能性がある影響を最小限に抑えることが保証される。
本明細書に記載された特徴(添付の特許請求の範囲及び図面を含む)のいずれも、別段の記載がない限り、以下の態様のいずれかと任意に組み合わせて活用できると理解される。
【0005】
第1の態様において、サンプル中の分析物の検出に使用するための動態分析方法(kinetic assay method)が提供され、前記方法には以下が含まれる:
1)マイクロ流体チャネルの検出領域にサンプルを提供するステップ、ここで、検出領域は、光学的に透過な部分と、マイクロ流体チャネルの光学的に透過な部分の内腔表面に局在する1つ又は複数の試薬を含む多孔質マトリックスを含み、試薬は分析物又はその反応生成物と反応して試薬反応生成物を形成することができ、試薬反応生成物はマイクロ流体チャネルの光学的に透過な部分の外側にある光学検出器を使用して、検出することができる;
2)光学的に透過な部分を介して試薬反応生成物の少なくとも1つの光学的測定を実施するステップ、及び
試薬反応生成物の少なくとも1つの光学測定に基づいて、任意の分析物を検出するステップ。
「反応生成物」とは、必要に応じて、分析対象物又は試薬を含む反応の生成物を意味すると理解される。従って、反応は化学的な意味で熟練した人に理解される。反応は、分析物又は試薬を変換又は変更して、反応生成物をもたらすように、分析物又は試薬から得られる反応生成物が、分析物又は試薬とは異なる、若しくは変換されるようにする。従って、反応生成物は、反応の結果として分析物又は試薬から変化した実体であると理解される。いくつかの実施形態では、反応生成物は分析物又は試薬の変化した形態である。
1つ又は複数の試薬は、内腔表面に付着、結合、又は他の方法で局在化された多孔質マトリックスと関連することにより、内腔表面に付着、結合、又は他の方法で局在化されていてもよい。
【0006】
本明細書で使用される「マトリックス」は、1つ又は複数の成分、例えば試薬又はその試薬反応生成物を保持、結合、又はその他の方法で含有させる支持体又はその上にある支持体を意味するものと理解される。これは、試薬及びその試薬反応生成物を光学検出器の近くに有利に配置することができる。分析に必要な更なる1つ又は複数の試薬は、マトリックスの中及び/又は上に含まれていてもよい。
試薬反応生成物の光学的測定は、マトリックスの内、周辺及び/又は外部で実行されてもよい。一つの実施形態では、光学的に検出可能な信号は、マトリックスの内及び/又は周辺で生成される。
好都合なことに、試薬反応生成物は光学的に検出される。例えば、試薬反応生成物の生成時に光信号の変化が生じてもよい。従って、試薬反応生成物は、生成される光信号の変化によって光学的に検出されてもよい。光信号の変化は、例えば、蛍光強度の変化又は寿命の変化であってもよい。光信号は、試薬から試薬反応生成物が形成されたときにのみ発することが可能であってもよい。これにより、明確な信号の変化が得られる。
マトリックスは多孔質マトリックスである。通常、1つ又は複数の試薬は多孔質マトリックスを形成する材料と混合され、1つ又は複数の試薬が多孔質マトリックス全体に分散する。本明細書において、検出領域の多孔質マトリックスを、光信号を発生させるための多孔質マトリックスと表現してもよい。
当業者は、用語「多孔質」が、多孔質ネットワークを有する、又は透過性であることを意味することを理解するものとする。本発明者らは、多孔質マトリックスの多孔性により、サンプルから必要な分析物、例えば酵素又はその反応生成物を、多孔質マトリックス内及び/又はその上に侵入させることができると考えている。これにより、分析対象物又は反応生成物は、マトリックス内及び/又はマトリックス上に存在する1つ又は複数の試薬と接触して反応することができ、反応後の試薬反応生成物は光学検出器に近接している。理論に拘束されることを望まず、本発明者らは、サンプル内に存在し得る赤血球又は他の粒子状物質の大きなサイズの成分に対して一般的に不透過性な多孔質マトリックスを提供することができ、光学的検出を妨害及び/又は不明瞭にし得るものである。従って、多孔質マトリックスは、フィルタとして機能してもよく、光学的検出を妨害及び/又は不明瞭にする可能性のある成分の侵入を許可しないかもしれない。
【0007】
検出は、光学的に透過可能な部分を介して光信号を検出するために、光学的に透過な部分の部位、又はそれに隣接して実行され得ることが理解され、光学検出器が光学的に透過可能な部分に隣接して配置されてもよい。あるいは、光学検出器は、光学的に透過可能な部分に隣接していなくてもよいが、任意の光信号が、光学的に透過可能な部分に隣接していない光学検出器に検出及び送信されてもよい。例えば、光ファイバ又は複数のファイバは、信号を検出するために光学的に透過可能な部分に隣接して配置されてもよく、光ファイバ又はファイバは、光学的に透過可能な部分を介して検出された光信号を光学検出器に送信することが可能である。いくつかの実施形態では、光信号は、カメラ及び光信号の変化を検出する、又は検出を可能にするように設計された適切な光学系を使用して検出されてもよい。
本発明の文脈において、マイクロ流体は、マイクロ流体体積、すなわちマイクロリットルの体積、例えば10マイクロリットル以下の体積を含むチャネルを意味すると理解される。しかしながら、いくつかの実施形態では、マイクロ流体という用語は、1マイクロリットル未満の体積、すなわち10ナノリットル~100ナノリットル又はそれ以上のナノ流体体積を搬送可能なチャネルを含むと理解される。
試薬反応生成物は、多孔質マトリックスの内及び/又は外周で光学的に直接的又は間接的に検出できる。多孔質マトリックスの局在化された性質は、試薬又はその試薬反応生成物の直接的又は間接的な光信号を有利に局在化する。信号の局在性により、サンプル中に低レベルの分析物しか存在しない場合でも、光信号を確実に検出できる。
「多孔質マトリックス内」によって、多孔質マトリックス内及び/又は多孔質マトリックスの表面上を指すと理解される。マトリックスは、液体サンプル及び/又は溶解した試薬/分析物などのサンプル中に存在する試薬/分析物に対して一般的に多孔質であってもよいが、マトリックスは、細胞などのサンプル中に存在する可能性がある懸濁物質に対して多孔質でなくてもよい。従って、例えば、サンプルが全血のサンプルである場合、そこに小さな分子及び/又はタンパク質が溶解又は懸濁している血液の液体成分は多孔質マトリックスに入ることができるが、細胞、及び細胞片並びに血小板などの細胞材料などのより大きな血液成分は、その大きさのために多孔質マトリックスに入ることができない場合がある。
【0008】
所望の光信号を生成するために、1つ又は複数の酵素及び/又は反応ステップが必要とされてもよい。例えば、検出する分析物に応じて、2ステップ、3ステップ、又はそれ以上のステップが必要な場合がある。
2つ以上のステップが想定される場合、必要な試薬は、単一の多孔質マトリックス(光学的変化/信号を生成するための多孔質マトリックス)内に存在してもよいし、必要な試薬は、2つ以上の多孔質マトリックス内に存在してもよいし、必要な試薬の少なくとも一部は、光学的変化/信号を生成するための多孔質マトリックスの外側に存在してもよい。従って、複数の反応ステップは、単一の多孔質マトリックス内で実行されてもよく、又は複数の多孔質マトリックスは、マイクロ流体チャネルとの異なる反応が異なる位置で実行さてもよいように、異なる試薬、又は光学的変化/信号を生成するために多孔質マトリックスの外側に提供される少なくともいくつかの試薬が提供されてもよい。例えば、一つの実施形態では、2つの多孔質マトリックスが提供されてもよく、第1の多孔質マトリックスは、分析物反応生成物を生成するために必要な試薬を含んでもよく、第2の多孔質マトリックスは、分析物反応生成物(すなわち、光学的変化/信号を生成するための多孔質マトリックス)と接触して試薬反応生成物が形成されることによって検出可能な光学的変化/信号を生成できる必要な1つ又は複数の試薬を含んでもよい。従って、本発明によれば、検出すべき光信号を生成するために必要な反応を分離又は脱離可能である。これは、単一の多孔質マトリックス内の試薬、成分、又は賦形剤が、例えば、互いに干渉する又はそうでなければ互いに干渉する可能性がある場合に有利になり得る。
2つ以上の多孔質マトリックスが提供される場合、又は一部の試薬が光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックスから分離されている場合、少なくとも光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックスは、検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在することが想定されている。また、追加の多孔質マトリックス又は分離された試薬は、検出領域の光学的に透過可能な部分の内腔表面に局在していてもよい。代替的に、追加の1つ又は複数の多孔質マトリックス又は分離された試薬は、検出領域ではないマイクロ流体チャネルのセクションに局在化されてもよい。これは、いくつかの反応を検出領域から便利に分離するため、光学検出の干渉を低減又は防止するのに役立つかもしれない。
【0009】
上述したように、使用時には、光学的に透過可能な部分は、効率的な検出を確実にするために、及び/又は全血のサンプル中の赤血球のようなサンプル中の成分によって生じる可能性のある干渉を低減するために、光学検出器又はその光学検出コンポーネントと近接するように配置されることが意図されている。いくつかの実施形態では、チャネルの光学的に透過性を有する部分は、チャネルの上部(又は「上側」)の部分となるように設計されている。用語「上部」又は「上側」は、使用時に光学的に透過な部分を指すため、熟練した読者は、その意味を容易に把握及び理解できる。光学的に透過性を有する部分は、光学検出器又は光学検出コンポーネントと隣接するか、又は同じ側に配置するべきである。好都合なことに、光学検出器又は光学検出コンポーネントが上側部分に向けられている場合、検出器又はコンポーネントは下側に向けられる。有利なことに、検出器又はそのコンポーネント上の塵埃の蓄積を制限することができる。従って、光学的な検出が不明瞭になることはない。この利点は、特に、多孔質マトリックスが上腔表面に局在している実施形態に適用される。従って、いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスは、光学的に透過可能な部分の上部内腔表面に局在している。従って、多孔質マトリックスは重力に抗して保持されている。理論に拘束されることを望まず、本発明者らは、多孔質マトリックスを光学的に透過性部分の上部内腔表面に局在化させることにより、他の方法では検出が妨げられる可能性のあるサンプルの成分、例えば赤血球が多孔質マトリックスの外側に保たれることを確実にすると考えている。その結果、光検出との干渉が低減又は除去される。しかし、他の実施形態では、多孔質マトリックスは、光学的に透過性の部分のより低い(又は「底」の)内腔表面に局在化されてもよく、その場合、光学検出器又はその光学検出コンポーネントは、光学的に透過性の部分の下に配置されることになる。本質的には、本発明は、サンプルが多孔質マトリックスと光学検出器又はその光検出コンポーネントとの間に来ることを意図していないため、多孔質マトリックス内で発生する光信号を妨害したり、そうでなければその検出を妨害したりすることがない。
追加の1つ又は複数の多孔質マトリックスを含む実施形態では、追加の多孔質マトリックスは、検出領域ではないマイクロ流体チャネルのセクションの内腔表面に局在してもよい。内腔面は、上腔面又は下腔面であるものとする。
【0010】
本発明は、終点分析と呼ばれることもある動態分析に関する。動態分析は、反応の過程で消費された基質又は生成物の量によって材料又は分析物の量を測定する酵素由来の分析である。しかし、形式的な終点に到達する必要はなく、多くの場合、決定されるのは反応速度である。
本発明は、例えば、サンプルに対して実施できる任意の終点分析又は動態分析に適している。当業者であれば分かるように、終点分析は、一定期間後に1回の測定を実施することを含む。従って、ステップ2)は一定期間後に実行されてもよい。
期間は、少なくとも10秒、少なくとも30秒、少なくとも1分、少なくとも1.5分、少なくとも2分、少なくとも3分、又は少なくとも5分若しくは10分である。期間は、10分以内若しくは5分以内、3分以内、2分以内、1.5分以内、又は1分以内である。いくつかの実施形態では、期間は約2分である。
【0011】
本発明の実施形態に基づいて、ステップ2)は、一定期間にわたって試薬反応生成物の複数の光学的測定を実施し、その後、複数の光学的測定に基づいて分析物を検出するステップを含んでいてもよい。このようにして、一連の光学測定は、基質から生成物へと進行する反応を追跡できる。典型的に、検出され得る吸光度、蛍光強度などの光信号のシフトがあってもよい。分光光度計又は蛍光光度計は、例えば、時間経過に伴う信号の増加又は減少があってもよい光信号の任意の変化を監視するために使用されてもよい。
典型的には、それらの分析は、サンプル中の1つ又は複数の分析物の量を検出又は決定するために使用できる。サンプルが血液又は他の体液のサンプルである場合、分析物は、例えば、酵素、脂質、リポタンパク質、サイトカイン、ホルモン、又はエンドトキシンなどのサンプル中に存在する他のバイオマーカーを含んでいてもよい。典型的には、分析物は、酵素、例えば血液凝固因子及び/又は脂質、例えばコレステロール又はリポタンパク質(a)のような他のリポタンパク質を含んでいてもよい。
本発明者らは、一般的に、酵素又は脂質/リポタンパク質の分析を想定している。酵素分析では、分析物は1つ又は複数の酵素を含む。脂質/リポタンパク質分析では、分析物は1つ又は複数の脂質/リポタンパク質を含む。
【0012】
試薬反応生成物は、分析対象物又はその分析対象物の反応生成物と試薬との反応から生じる生成物と理解される。
試薬反応生成物は、分析物と試薬の直接反応の結果であってもよい。例えば、酵素分析を含む実施形態では、試薬反応生成物は、試薬と直接反応して試薬反応生成物を形成した分析物に由来するものであってもよい。反応は試薬反応生成物を形成するための酵素による被験物質の切断などの接触を含んでもよく、又は、被験物質は試薬を切断して試薬反応生成物を形成する酵素を含む。あるいは、反応は、試薬による分析物の酸化又は還元(若しくはその逆)によって酸化又は還元された試薬反応生成物を形成することを含んでも、又はそれから構成されていてもよい。
いくつかの実施形態では、試薬反応生成物は、分析対象物と反応生成物の前駆体の間の間接反応の結果である。例えば、分析物は、経路の成分と直接反応して、分析物反応生成物を形成してもよい。次いで、分析物反応生成物は、経路の下流成分(本発明の文脈では、更なる分析物反応生成物として理解される)と反応してもよい。分析物反応生成物、更なる分析物反応生成物、又は経路の更なる下流成分は、次いで、試薬と直接反応して試薬反応生成物を形成し、それによって試薬反応生成物を生成してもよい。
【0013】
本発明に基づく分析が使用され得る一つの分野は、創傷のケア/治癒である。例えば、マトリックスメタロプロテアーゼなどのプロテアーゼをモニターしてもよい (Lazaro,J.L. et al, J of Wound Care, Vol 25, No. 5, May 2016を参照)。
検出のための酵素には、接触活性化(内在性)経路及び組織活性化(外在性)経路の酵素、並びに血液中に存在してもよいプロテアーゼ又はヌクレアーゼなどの他の酵素が含まれる。一実施形態では、本発明は、外因性経路又は内因性経路の1つ又は複数の酵素、若しくはその共通経路成分の検出に向けられている。これらの経路に向けられた残りの説明は、トロンビン活性の検出、並びにPT及び/又はINR値の決定に関連して記載される。しかし、限定的と解釈されるべきではなく、外因性又は内因性経路の他のメンバー、若しくは他の経路からの酵素の効果を検出及び/又は決定することが可能な方法の想定が容易である。
外因性又は内因性経路の他のメンバーには、第X因子、第Xa因子、第II因子、フィブリンモノマー、及びタンパク質Cが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態では、検出用の分析物はトロンビンを含む。従って、方法には、試薬反応生成物の少なくとも1つの光学測定に基づく、任意のトロンビンを検出が含まれる。
検出されたトロンビンは、サンプルのプロトロンビン時間(PT)又は国際正規化比(INR)値を決定するために使用できる。例えば、多孔質マトリックスは、トロンビンによる切断時に検出可能な光信号、例えば蛍光信号を発生させることができる試薬としてトロンビン切断性基質を含んでいてもよい。トロンビン切断可能な基質は、トロンビンによって認識及び切断可能なペプチド配列と、ペプチドの切断後に検出可能な関連する蛍光分子を含んでいてもよい。これについては、以下で詳述する。典型的には、トロンビン切断生成物は、多孔質マトリックス内及び/又は隣接する、若しくは周辺に保持される。
検出のための脂質及び/又はリポタンパク質には、リポタンパク質(a)、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、リン脂質、コレステロール、及びトリグリセリドが含まれるが、これらに限定されるものではない。当業者であれば理解するが、コレステロールは、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール及び高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールを含んでいてもよい。コレステロールは、遊離コレステロール及び/又はコレステリルエステルを含んでいてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、検出用の分析物はコレステロールを含む。
当業者であれば分かるように、コレステロールが酵素コレステロールオキシダーゼの存在下であると、次のような化学反応が起こる:
【化1】
従って、サンプルは、内因性コレステロールオキシダーゼを含んでいてもよく、及び/又は外因性コレステロールオキシダーゼはサンプルに添加されていてもよく、又は多孔質マトリックス中に存在していてもよい。いくつかの実施形態では、コレステロール反応生成物は検出用の分析物である。
コレステロール反応生成物は、過酸化水素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、過酸化水素は試薬を酸化して試薬反応生成物を形成する。
サンプルは、生体サンプルであってもよい。好都合なことに、生体サンプルは、被験体から得られる任意の適切な流体又は組織サンプルであってもよい。例えば、生体サンプルは、尿、唾液、全血、血漿、喀痰、精液、糞便、鼻腔スワブ、創傷スワブ、涙、膣スワブ、直腸スワブ、子宮頸部塗抹、組織生検、及び尿道スワブのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。適切には、生物学的サンプルは、例えば、尿、唾液、全血、及び喀痰などのように、被験者が自分自身から採取することができるものであり、補助又は任意の侵襲的な外科的技術を必要とせずに、被験者から容易に採取することができる。いくつかの実施形態では、サンプルは全血又は創傷スワブである。一つの実施形態では、サンプルは全血である。
【0016】
本方法は、サンプルをマイクロ流体チャネルに導入し、その後、サンプルの少なくとも一部を検出ゾーンに搬送することを含む予備ステップを更に含んでいてもよい。サンプルは、マイクロ流体チャネルに接続されている開口ポートを介して導入されてもよい。入力ポートにサンプルを接触させて直接導入してもよい。代替的に、サンプルは、最初にサンプル収集手段を用いて収集されてもよく、それらのサンプル収集手段、例えば、ディップスティック、マイクロピペット、キャピラリーチューブ、又は類似品は、サンプルがマイクロ流体チャネル内に導入されてもよいように、サンプル入力ポートに接触又は挿入される。
いくつかの実施形態では、核酸分析を実行する場合のように、閉系で実行することが望ましい場合がある。従って、マイクロ流体チャネル内にサンプルを導入するように設計されたサンプル収集手段は、サンプル収集手段がサンプル入力ポート内に挿入、接触、又はサンプル入力ポートと一旦接触すると、サンプルを導入してサンプル入力ポートを封止するという二重の目的を果たすことができる。
【0017】
更なる態様では、本明細書に記載の方法で使用するためのマイクロ流体チャネルが提供され、該マイクロ流体チャネルは:
マイクロ流体チャネルに提供されたサンプルの少なくとも一部を受け取るための検出領域を含み、ここで、検出領域は、光学的に透過な部分、及びマイクロ流体チャネルの光学的に透過な部分の内腔表面に局在する試薬を含む多孔質マトリックスを含み、試薬は、光学的な検出が可能な試薬反応生成物を生成するために、検出されるサンプル中の分析物又はその分析物反応生成物と反応することが可能である。
マイクロ流体チャネルは、マイクロ流体チャネルを定義するために一緒に挟まれている上層と底層の間に配置された中間層を有する上層と底層の3つの層から形成されていてもよい。従って、マイクロ流体チャネルの側壁は、中間層によって規定されてもよい。いくつかの実施形態では、上層はチャネルの光学的に透過な部分を含む。多孔質マトリックスは、上層の管腔面に堆積してもよい。検出領域を重ね合わせることを意図した上層の部分のみが、光学的に透過可能であってもよい。いくつかの実施形態では、上層は光学的に透過な部分からなる。いくつかの実施形態では、上層は光学的に透過な部分からなり、光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックスが上層の管腔面に堆積されている。いくつかの実施形態では、光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックスが底層の管腔面に堆積されている。
いくつかの実施形態では、中間層は上層と底層を接着する接着剤層の形態であり、それによってサンドイッチが形成される。最適なマイクロ流体チャネル及び最適なマイクロ流体カートリッジにおける存在の更なる詳細は、当業者が指示され、その内容全体が本明細書に組み込まれる国際特許2018/002668号明細書に記載される。
【0018】
試薬を含む多孔質マトリックスをチャネルの光学的に透過な部分の内腔表面に局在させることにより、試薬反応生成物を、関連するリーダ内に存在する光学検出器又は光学検出コンポーネントと近接させることができ、試薬反応生成物の検出を容易にし、及び/又は検出感度を向上させることができる。サンプル内の他の成分は、多孔質マトリックスに入らず、及び/又は多孔質マトリックス内に保持されず、若しくはそうでなければ多孔質マトリックス内に留まる/内腔表面に局在していてもよい。従って、他の成分による干渉が低減又は除去される。従って、試薬反応生成物が光学検出器又はその光検出成分に近接していることで、構成成分が干渉しにくく、光検出に影響を与えにくい環境での検出が可能となる。このようにして、試薬反応生成物の光検出は、一般的に、成分、例えば赤血球が、光検出装置と試薬反応生成物の間の光路内に存在することなく実行することができる。従来、試薬反応生成物がマイクロ流体チャネル全体に分散していると、光検出手段と試薬反応生成物の間の光路に成分(例えば、全血中の赤血球などの細胞質)が混入しやすく、干渉及び/又は感度の低下を招くという問題があった。
【0019】
典型的に、限定されるわけではないが、マイクロ流体チャネルはカートリッジ内に含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、複数のマイクロ流体チャネルが提供されている。カートリッジ内には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のマイクロ流体チャネルが提供されていてもよい。
任意で、存在する場合は、開口ポートも、カートリッジ内に含まれる。カートリッジは、関連するリーダ装置に挿入されるように設計されていてもよい。簡潔に、以下では、マイクロ流体チャネルがカートリッジ内に存在することに言及するが、これは限定的と解釈されるものではない。
【0020】
更なる態様では、サンプル上で第1の態様の分析を実行するために使用するマイクロ流体カートリッジが提供され、マイクロ流体カートリッジは:
少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを含み、ここで、各マイクロ流体チャネルは検出領域を含み、検出領域は、光学的に透過な部分及び光学的に透過性の部分の内腔表面に局在する試薬を含む多孔質マトリックスを含み、試薬は、光学的に検出されることが可能な試薬反応生成物を生成するために、検出されるサンプル中の分析物又は反応生成物と反応することができる。
システムは、各上記マイクロ流体チャネルを定義するために一緒に挟まれた3つの層から形成されるものとする。
任意で、各上記マイクロ流体チャネルは、各上記検出領域の下流にある外部的に圧縮可能なガス充填チャンバに更に流体的に接続されており、チャンバの外部にある圧縮手段を使用してチャンバを圧縮又は減圧することにより、ガスがチャンバから排出されるか、又はチャンバ内に引き込まれることにより、上記各マイクロ流体チャネル内でのサンプルの移動が引き起こされる。ガス充填チャンバを含む適切なマイクロ流体カートリッジの更なる詳細、及びどのように機能するかは、当業者が指示され、その内容全体が本明細書に組み込まれる国際特許2018/002668号明細書に記載される。
【0021】
マイクロ流体カートリッジは、典型的には、各上記マイクロ流体チャネルと流体的に通信するように、サンプル入口/入力ポートを更に含む。いくつかの実施形態では、サンプルの入口ポートはサンプルを入れるウェルの形をしている。特定の実施形態では、ウェルは、一般的に円形の形状であってもよく、血液の滴をウェル内で容易に受け取ることができる大きさである。ウェルの体積は、1マイクロリットル以上30マイクロリットル以下であってもよい。ウェルの体積は、4マイクロリットル以上10マイクロリットル以下であってもよい。典型的には、カートリッジ内に取り込まれ、検出領域まで充填され、検出領域に含まれる血液などのサンプルの総量は、3~6マイクロリットルで、例えば3.5~5マイクロリットルの間であってもよい。検出領域の総体積は、0.75マイクロリットル~1.25マイクロリットルの範囲であってもよい。従って、本発明の分析/方法は、極めて少量のサンプルを分析することができ、これは有利である。
サンプルの入口又は入力ポートは、一般的にカートリッジの上面に配置されるため、サンプルがカートリッジ内に容易に適用及び導入され、マイクロ流体チャネル内で搬送される。従って、実施形態では、入力ポートは、多孔質マトリックスが付着される同じ基板上に配置されていることが理解される。入力ポートは、カートリッジの外側上面からマイクロ流体チャネルの内腔へのサンプルの進入を許可し、多孔質マトリックスはマイクロ流体チャネルの内腔内の内面に付着している。
一実施形態では、光学的に透過可能な部分はマイクロ流体カートリッジの上面又は面に設置されている。
【0022】
疑いを避けるために、本発明のマイクロ流体チャネル又はカートリッジは、カートリッジ内に存在する又はカートリッジと共に提供される液体充填パウチの使用、チャンバ内の可動部、例えばチャンバ内のピストン、及び/又は関連するリーダからカートリッジに流体(液体又は気体)を移送する能力を必要としない。この点で、本発明のカートリッジは、自己完結型であると考えてよい。サンプル塗布前の本発明のカートリッジは、実質的又は完全に液体を含まないものであり、乾燥したものとみなすことができる。サンプル塗布前の唯一の流体は、カートリッジ内に存在する可能性がある、又はカートリッジ内に存在する気体で、典型的には空気である。有利なことに、本発明の分析に必要な液体は、サンプルそのもののみである。
カートリッジの実質的又は完全に液体を含まない性質は、カートリッジ自体の製造を単純化するだけでなく、保存寿命を向上させ、本発明のカートリッジの多くは、使用前にカートリッジ内の化学的又は生物学的成分の劣化をほとんど伴わずに、室温で保存することを可能にする。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法には、更にカートリッジをリーダ装置に挿入するステップが含まれる。カートリッジをリーダに挿入するステップは、一般的に、カートリッジ/マイクロ流体チャネルにサンプルを適用する前に実行されてもよい。リーダ装置は、光学検出器又はその光検出コンポーネントを含む。最適なリーダ装置の更なる詳細は、当業者が指示され、その内容全体が本明細書に組み込まれる国際特許2018/002668号明細書に記載される。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、以下の少なくとも2つの予備ステップを含む:
a)カートリッジをリーダ装置に挿入する;及び
b)サンプルを各上記マイクロ流体チャネルに導入する。
サンプルの各上記マイクロ流体チャネルへの導入は、受動的な手段(例えば、毛管作用)、能動的な手段(例えば、ポンプを使用するなどの原動力の適用によって)、又はこれらの組み合わせによって実行してもよい。例えば、一つの実施形態では、サンプルは、最初に毛細管作用によってマイクロ流体チャネルに導入され、その後の更なるサンプルの動きは、ポンプの使用などの能動的な力によって制御される。ポンプは、典型的には、カートリッジの外部、例えば、関連するリーダ装置内に配置される。
サンプルは、アクティブフィル機構によって検出領域に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、検出領域経由及び/又は多孔質マトリックスによるサンプルの移動は、能動的手段によるものである。
典型的には、カートリッジは、サンプルの適用に先立って、リーダ装置に提供又は挿入されてもよい。
【0025】
光学的に透過可能であることにより、定義された波長の光がその部分を介して送受信される、すなわち、その部分を介して送受信される光の波長を実質的に消光又は吸収しないことが理解される。このようにして、光学検出器からの光は、分析物又は分析物反応生成物を満たすために部分的に送信でき順番に反射される、又は吸収され、再放出され、光学検出器によって検出することができる。いくつかの実施形態では、部分が透明である。いくつかの実施形態では、部分が半透明である。定義された波長によって、10ナノメート以上1500ナノメートル以下の波長が含まれると理解されるが、必ずしもこれに限定されるものではない。典型的には、光学的に透過可能な部分を介して送受信される光検出装置からの光の波長は、300ナノメートル以上800ナノメートル以下であってもよい。
【0026】
多孔質マトリックス及び分離された試薬/成分は、内腔内表面に結合することにより、内腔内表面、例えば上部内表面に局在していてもよい。例えば、結合は、物理的吸着、共有結合、足場、非共有結合(例えば、ビオチン-アビジン)、又は上記のいずれかの組み合わせによる直接的又は間接的なものであってもよい。一つの実施形態では、多孔質マトリックスは、共有結合又はイオン結合を介してではなく、物理的に吸収される。分析物反応生成物の前駆体(すなわち、分析物との反応の成分)は、内腔表面に局在してもよく、及び/又は多孔質マトリックスの一部として提供されてもよく、及び/又は多孔質マトリックス内又は上に提供されてもよい。前駆体は、分析物反応生成物を生成するために、分析物と相互作用するものとする。例えば、前駆体は、分析物と結合及び/又は反応することが可能であってもよい。従って、多孔質マトリックスは、前駆体の足場として機能してもよい。
便利なことに、光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックスは粘性があるので、流体/血液の流れに耐えることができる。また、追加のマトリックスは粘性であってもよいが、いくつかの実施形態では、追加のマトリックスは、光学的変化/信号を生成するための多孔質マトリックスよりも粘性が低い。従って、多孔質マトリックスと、それが存在する場合には、関連する前駆体及び/又は試薬は、サンプルとの接触後に最適な検出を確実にするために、光学検出器と整列又は近接したままになる。
光学的変化/信号を発生させる多孔質マトリックスは、光学的に透過性である、又は部分的に光学的に透過性であると理解される。また、1つ又は複数の追加のマトリックスを含む実施形態では、1つまたは複数の追加のマトリックスは少なくとも部分的に光学的に透過性であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスが透明である。いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスが半透明である。これは、多孔質マトリックスの内及び/又は上からの光学的信号の検出を容易にできる。
【0027】
多孔質マトリックスには、ポリマーなどの少なくとも1つの担体分子が含まれるものとする。一つの実施形態では、担体分子は一般的に水性由来の溶液には不溶である。少なくとも1つの担体分子は、少なくとも実施される分析に必要な期間、サンプル溶液に一般的に不溶であってもよい。水性由来の溶液では、担体分子はコロイドを形成してもよい。「コロイド」とは、不溶性であるが、溶媒中に懸濁/分散することが可能な担体分子を指すと理解される。溶媒は水であってもよい。一つの実施形態では、担体分子は一般的に血液に溶けない。いくつかの実施形態では、担体分子はコスモトロープを含む。「コスモトロープ」によって、担体分子が水分子を有利に相互作用させること、すなわちポリマーが水-水相互作用の安定性及び構造に寄与することが理解される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つの炭水化物を含む。少なくとも1つの炭水化物は、少なくとも1つの単糖類、二糖類、又は多糖類を含んでもよい。当業者が理解できるように、多糖類はポリマーである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つの糖を含む。本発明の文脈において、糖は単糖類及び二糖類を指すと理解される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類又は多糖類を含む。
単糖類の例には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキストース、及びヘプトースが含まれるが、これらに限定されない。
二糖類の例には、ショ糖、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、及びキトビオースが含まれるが、これらに限定されない。
多糖類の例には、アミロース、アミロペクチン、セルロース、キチン、カロース、ラミナリン、クリソラミナリン、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、フコイダン、及びガラクトマンナンが含まれるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類を含む。
好ましくは、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つはトレハロースである。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つの多糖類を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリマーはセルロース又はキチンである。他の実施形態では、少なくとも1つのポリマーは、少なくとも1つのセルロース誘導体を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、セルロース又は少なくとも1つのセルロース誘導体を含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、トレハロース及び少なくとも1つのセルロース誘導体を含む。
セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロースエチルスルホン酸(CES)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、微結晶セルロース(MCC)、メチルセルロース及びそれらの塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム塩からなる群から選択されてもよい。
好ましい塩は、ナトリウムであってもよい。
セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、微結晶セルロース(MCC)及びその塩からなる群から選択されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選択される。
セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース及び微結晶セルロースを含むものであってもよく、例えば、セルロース誘導体であるアビセルRC-591が挙げられる。
セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)であってもよい。
セルロース誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも2、又は少なくとも3の置換度を含む。例えば、カルボキシメチルセルロースの文脈において、置換度とは、セルロース鎖上のメトキシ(カルボキシメチル)置換度の平均値(すなわち、アンヒドログルコース単位あたりのメトキシに置換された水酸基の平均数)である。従って、カルボキシメチルセルロースの文脈では、置換度0.7の値は、アンヒドログルコース単位10個あたり平均7個のカルボキシメチル基を指すと理解され、一方、置換度3の値は、アンヒドログルコース単位の3つのヒドロキシルが全てカルボキシメチル基で置換されることを意味すると理解される。
いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、0.5以上2以下の置換度を含む。いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、0.5以上1.2以下の置換度を含む。いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、0.7以上1.2以下の置換度を含む。
特定の実施形態では、セルロース誘導体はCMCを含み、0.7以上1.2以下の置換度を含む。
セルロースは結晶性であってもよい。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの担体分子はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0031】
多孔質マトリックスは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個の担体分子を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスは、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下の担体分子を含む。
特定の実施形態では、多孔質マトリックスは少なくとも2つの担体分子を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの担体分子は、少なくとも2つの炭水化物を含む。少なくとも2つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類及びセルロース又はセルロース誘導体を含んでいてもよい。二糖類は、トレハロースを含んでいてもよい。少なくとも2つの担体分子は、少なくとも1つの炭水化物及びポリエチレングリコールを含んでいてもよい。
特定の実施形態では、少なくとも2つの担体分子は、トレハロース及び少なくとも1つのセルロース誘導体を含む。セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)であってもよい。
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの担体分子は、少なくともセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
特定の実施形態では、少なくとも2つの担体分子は、トレハロース及びカルボキシメチルセルロースを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの担体分子は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びトレハロースを含む。
他の実施形態では、少なくとも2つの担体分子は、セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0032】
他の実施形態では、多孔質マトリックスは少なくとも3つの担体分子を含む。少なくとも3つの担体分子は、少なくとも3つの炭水化物を含んでいてもよい。少なくとも3つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類及びセルロースを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも3つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類及び少なくとも1つのセルロース誘導体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも3つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類、セルロース、及び少なくとも1つのセルロース誘導体を含む。他の実施形態では、少なくとも3つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類、セルロース又はセルロース誘導体、及びPEGを含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、少なくとも3つの担体分子は、少なくともセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びトレハロースを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも3つの担体分子は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、トレハロース、及びPEGを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも3つの担体分子は、セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びトレハロースを含む。
他の実施形態では、少なくとも3つの担体分子は、セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びHECを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスは少なくとも4つの担体分子を含む。少なくとも4つの担体分子は、少なくとも4つの炭水化物を含んでいてもよい。少なくとも4つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類、セルロース又はセルロース誘導体、及びPEGを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの担体分子は、少なくとも1つの二糖類、セルロース、少なくとも1つのセルロース誘導体、及びPEGを含む。
他の実施形態では、少なくとも1つの担体分子はヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含む。
【0034】
多孔質マトリックスは、最初は、蒸発又は他の手段によって乾燥できる液体の形態で提供されてもよい。従って、本明細書で使用されるマトリックス中の濃度への言及は、多孔質マトリックス中の分子/成分の液体形態における濃度(すなわち、マトリックスが蒸発又は他の手段によって乾燥する前、及びサンプルが添加される前)を指す。
多孔質マトリックスの液体形態は、50ナノリットル以上200ナノリットル以下、好ましくは少なくとも100ナノリットル以上160ナノリットル以下の量を含んでいてもよい。このようにして、乾燥前であっても堆積した多孔質マトリックスが、検出領域の全体積のうち比較的小さな体積を占めることが理解できる。例えば、乾燥前の多孔質マトリックスは、検出領域の全体積の40%未満、30%未満、又は25%未満の体積を含んでいてもよい。
少なくとも1つの担体分子は、多孔質マトリックス中に0.05質量/体積%以上40質量/体積%以下の濃度で提供されてもよい。一般的に、少なくとも1つの担体分子は、10質量/体積%以上15質量/体積%以下の濃度で提供されてもよい。
担体分子の濃度によって、湿潤時の多孔質マトリックス中の担体分子の最終濃度であることが理解される(すなわち、マトリックスは、サンプル添加前に蒸発又は他の手段によって乾燥させることが許される液体形態として適用される)。従って、担体分子が1つ又は複数の担体分子を含む場合、最終濃度は担体分子の全ての最終濃度であると理解される。
【0035】
特定の実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つのトレハロースを含む。トレハロースは、5質量/体積%以上、6質量/体積%以上、8質量/体積%以上、10質量/体積%以上、及び30質量/体積%以下、又は40質量/体積%以下の濃度で提供されてもよい。
トレハロースの濃度によって、液体の形態で適用された場合の多孔質マトリックス中のトレハロースの最終濃度を指し、担体分子がトレハロースに加えて担体分子を含む場合の担体分子の最終濃度を指すものではないことが理解される。
いくつかの実施形態では、トレハロースは約10質量/体積%の濃度で提供される。
特定の実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくとも1つのカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。CMCは、0.05質量/体積%以上0.6質量/体積%以下の濃度で多孔質マトリックス中に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、CMCは、少なくとも0.08質量/体積%以上0.4質量/体積%以下の濃度で提供されてもよい。
特定の実施形態では、少なくとも1つの担体分子は、少なくともHECを含む。HECは、0.1質量/体積%以上2質量/体積%以下の濃度で多孔質マトリックス中に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、HECは、0.25質量/体積%以上1質量/体積%以下の濃度で提供されてもよい。
【0036】
多孔質マトリックスは、50,000グラム/モル以上1,300,000グラム/モル以下の分子量のHECを含む。一般的には、多孔質マトリックスは、分子量720,000グラム/モルのHECを含む。
多孔質マトリックスは、少なくとも2つの異なる分子量を有するHECを含んでいてもよい。
更に、多孔質マトリックスは、1つ又は複数の成分を含んでいてもよい。サンプルが血液のサンプルである場合、1つ又は複数の成分は、1つ又は複数の組織因子、1つ又は複数の凝固因子、1つ又は複数の蛍光体、抗フィブリノーゲン、抗アンチトロンビンIII、コレステロールオキシダーゼ、1つ又は複数の洗浄剤、及び1つ又は複数の抗凝固阻害剤を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。1つ又は複数の成分は、1つ又は複数の試薬を更に含んでいてもよい。
プロトロンビン時間(PT)又は国際正規化比(INR)値を決定する分析において、1つ又は複数の成分は、1つ又は複数の組織因子、1つ又は複数の凝固因子、1つ又は複数の蛍光体、抗フィブリノーゲン、抗アンチトロンビンIII、1つ又は複数の洗浄剤、及び/又は1つ又は複数の抗凝固阻害剤を含むが、これらに限定されるものではない。
PT/INR決定のための一実施形態では、担体分子はCMC及びPEGを含む。CMCは、0.025~0.125質量%、例えば0.05~0.1質量%の間の量で存在してもよい。PEGは、0.5~4質量%、例えば0.75~3.5質量%の間の量で存在してもよい。
【0037】
トレハロース(2~8質量%)、レディプラスチン(25~40質量%)、発色性基質(例えば、酵素切断性ローダミン(0.05~0.75質量%)、界面活性剤(例えば、トゥイーン、0.01~0.05質量%)及び/又はポリブレン0.1~0.2ミリグラム/ミリリットルなどの他の成分が存在してもよい。
コレステロール値を決定する分析において、1つ又は複数の成分は、1つ又は複数の蛍光体、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、及び1つ又は複数の洗浄剤を含んでもよいが、これらに限定されない。
コレステロールオキシダーゼを含む実施形態では、(サンプルに添加されている場合、又は多孔質マトリックスの成分として添加されている場合)HRPは、レドックスメディエータとしてサンプルに含まれていても、多孔質マトリックスの成分として含まれていてもよい。
【0038】
1つ又は複数の蛍光体は、RPE(R-フィコエリスリン)及び/又はPERCP(ペリジニンクロロフィル)を含んでいてもよい。有利なことに、多孔質マトリックス中に1つ又は複数の蛍光体を含有させると、サンプル塗布前に多孔質マトリックスの検出を助ける。
【0039】
抗アンチトロンビンIIIは、ATIII(抗トロンビンIII)を阻害する作用がある。当業者であれば理解するであろうが、ATIIIはトロンビン活性を阻害するトロンビンに対する自己抗体である。従って、多孔質マトリックスへの抗アンチトロンビンIIIの添加は、ATIIIによるトロンビンの阻害を有利に防止する。これにより、トロンビンベースの分析で得られるシグナルが増加する。
組織因子(第3因子としても知られる)は、リポ蛋白質の外因性凝固経路の開始因子である。当業者であれば理解するであろうが、組織因子は、レコンビプラスチン2グラム(ヴェルフェン)、又はレディプラスチンとして市販されている。レディプラスチンは、カルシウムを除去したレコンビプラスチン2グラムを濃縮液状にしたものである。他の市販の組織因子は、当業者には公知である。
1つ又は複数の凝固因子は、カルシウム、第V因子/Va因子、第X因子/Xa因子、プロトロンビン、第VIIa因子、第IXa因子、及び第XIa因子のうちの1つ又は複数を含んでいてもよい。第V/Va因子は、第Xa因子及びカルシウムとプロトロンビナーゼ複合体を形成する補因子である。この複合体はプロトロンビンを切断し、活性型のトロンビンに変換する。第V/Va因子はトロンビンによって調節され、正のフィードバックループ上でトロンビンによって直接活性化され、トロンボモジュリン-タンパク質C複合体(補因子タンパク質Sとの)経路を介してトロンビンによって間接的に活性化される。他の凝固因子は、当業者には公知であろう。
1つ又は複数の凝固因子は、カルシウム、第V因子/Va因子、第X因子/Xa因子、プロトロンビン、第VIIa因子、第IXa因子、及び第XIa因子からなる群から選択されてもよい。
【0040】
多孔質マトリックスは、0.1ミリモル以上25ミリモル以下の濃度でカルシウムを含んでいてもよい。モル又はミリモル濃度は、液体の形態で提供され、その後、蒸発又は他の手段で乾燥させる場合の濃度に関連することが理解される。
多孔質マトリックスは、0.1単位/ミリリットル以上120単位/ミリリットル以下、例えば10単位/ミリリットル以上100単位/ミリリットル以下の濃度で第V/Va因子を含んでいてもよい。
多孔質マトリックスは、0.1マイクログラム/ミリリットル以上20マイクログラム/ミリリットル以下の濃度で第X/Xa因子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスは、1マイクログラム/ミリリットル以上15マイクログラム/ミリリットル以下の濃度で第X/Xa因子を含んでいてもよい。
多孔質マトリックスは、0.05マイクログラム/ミリリットル以上0.25マイクログラム/ミリリットル以下の濃度でプロトロンビンを含んでいてもよい。
多孔質マトリックスは、0.1マイクログラム/ミリリットル以上50マイクログラム/ミリリットル以下の濃度で第VIIa因子を含んでいてもよい。
多孔質マトリックスは、0.1マイクログラム/ミリリットル以上50マイクログラム/ミリリットル以下の濃度で第IXa因子を含んでいてもよい。
多孔質マトリックスは、0.1マイクログラム/ミリリットル以上50マイクログラム/ミリリットル以下の濃度で第XIa因子を含んでいてもよい。
【0041】
抗凝固阻害剤の一例としては、ポリブレン(臭化ヘキサジスリン-HMB)が挙げられる。抗凝固阻害剤は、多孔質マトリックス中に、0.05ミリグラム/ミリリットル以上0.5ミリグラム/ミリリットル以下の濃度で提供されてもよい。特定の実施形態では、抗凝固阻害剤は、約0.25ミリグラム/ミリリットルの濃度で多孔質マトリックス中に提供される。
上記のように、単位/ミリリットル、マイクログラム/ミリリットル、又はミリグラム/ミリリットルにおける濃度は、液体の形態で提供され、その後、蒸発又は他の手段によって乾燥する場合の濃度に関連することが理解される。多孔質マトリックスの液体の形態は、乾燥前に、例えばスポットとして塗布してもよい。塗布後のスポットは、より薄く、より均一な多孔質マトリックスが提供される結果となるように、機械的又は他の手段によって広げられてもよい。より薄く、より分散したスポットは、光信号の生成及び/又は検出を強化してもよい。望ましくは、乾燥スポットの厚さは制御されており、実質的に均一な厚さであってもよい。乾燥スポットの最大厚さは、1~5マイクロメートル、例えば1~3マイクロメートルであってもよい。正方形又は長方形の形態のような疎水性の印刷特徴部が、検出領域に提供されてもよく、多孔質マトリックスが提供されて、疎水性の印刷特徴部によって境界された領域内に広がっていてもよい。このようにして、多孔質マトリックスは、検出領域の画定された領域内に配置されるように設計されている。これは、多孔質マトリックスを再現性ある均一な方法で、堆積させるのに役立つ。
1つ又は複数の洗浄剤は、ツイン20を含んでいてもよい。
【0042】
試薬反応生成物は、多孔質マトリックスの内又は上部で光学的に直接的又は間接的に検出できる。「直接的」は、試薬反応生成物が光信号、例えば蛍光又は比色信号を発することができると理解することができる。「間接的」は、試薬反応生成物が更に試薬と反応でき、試薬はその試薬反応生成物と反応して光信号を発することを意味する。典型的には、試薬反応生成物は光学的に直接検出できる。
分析物は、分析物反応生成物を生成するために、分析物に特異的な試薬と反応することができ、分析物反応生成物は、更なる試薬と反応することができ、更なる試薬は、分析物反応生成物との相互作用により、試薬反応生成物として光信号を発することができる。試薬及び更なる試薬は、例えば、単一の多孔質マトリックス中に存在してもよいし、別個の多孔質マトリックス中に存在してもよい。
多孔質マトリックスは、試薬及び/又は任意の更なる試薬を含んでいてもよい。本発明の方法を実施する前に、試薬及び任意の更なる試薬を含む多孔質マトリックス、又は多孔質マトリックスは、本発明の方法を実施する前に、光学的に透過な部分の内腔表面に乾燥状態又は湿潤状態で局在化されてもよい。望ましくは、試薬/更なる試薬は、多孔質マトリックスを含んでおり、多孔質マトリックスは乾燥状態であり、サンプルと接触したときに湿潤している。乾燥は、実質的に液状ではないと考えてよい。試薬/多孔質マトリックスは、最初は、蒸発又は他の手段によって乾燥できる液体/スラリーの形態で提供されてもよい。本発明の観点から、試薬及び/又は多孔質マトリックスが最初に液体中に提示され、その後、乾燥される場合、用語「乾燥」は、最初の液体の10%未満、5%未満、又は1%未満が乾燥後に残っていることを意味するものとして理解される。多孔質マトリックス、及び任意で試薬は、任意のpHで提供されてもよい。生物学的サンプルに向けられた実施形態では、多孔質マトリックス、及び任意で試薬は、7以上8.5以下のpHで提供されてもよい。いくつかの実施形態では、多孔質マトリックス、及び任意で試薬は、pH7±0.25で提供される。
光信号によって、測光信号であってもよいことが理解される。光信号は、蛍光信号であってもよいし、色信号であってもよい。好ましい実施形態では、光信号は蛍光信号を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、試薬又は更なる試薬は切断可能な基質を含む。従って、試薬/更なる試薬と分析物/分析物反応生成物が反応すると、分析物/分析物反応生成物は、光信号の放出を引き起こして基板を切断することがある。試薬が前駆体(すなわち、上流経路の成分)を含む実施形態では、分析物は、分析物反応生成物を放出するために前駆体から基質を切断してもよい。その後、分析物又は分析反応生成物が試薬と反応して試薬反応生成物を形成することができる。分析物反応生成物は、光信号を発することができるものであってもよい。基質は、1つ又は複数の酵素切断可能なペプチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、切断可能な基板は、トロンビンによる切断時に検出可能な光信号を発生させることが可能なトロンビン切断可能な基板を含むことを特徴とする。トロンビン切断可能な基質は、トロンビンによって認識及び切断可能なペプチド配列と、ペプチドの切断後に検出可能な関連する蛍光分子を含んでいてもよい。
実施形態では、試薬/更なる試薬は酸化される可能性がある。従って、いくつかの実施形態では、試薬/更なる試薬は、光信号を発する試薬反応生成物を形成するために、分析物又は分析物反応生成物によって酸化されることが可能である。試薬/更なる試薬が前駆体を含む実施形態では、試薬/更なる試薬は、酸化された分析物の反応生成物を形成するために分析物によって酸化されることが可能である。分析物又は分析物反応生成物は、過酸化水素を含んでいてもよい。例えば、コレステロールオキシダーゼは、分析物であるコレステロールに作用して、分析物反応生成物である過酸化水素を形成することができる。過酸化水素は、試薬が光信号を発するように、試薬を酸化して試薬反応生成物を形成することができる。試薬は、ホースラディッシュペルオキシダーゼを含んでいてもよい。
【0044】
光信号の検出は、光信号、例えば蛍光信号の発光を検出することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、検出は、試薬から放出される光の波長の変化、信号の強度、信号の寿命などの光信号の変化を検出することを含む。
当業者であれば理解できるように、蛍光体は、適切な波長の光励起時に光を再放出することができる蛍光化合物である。従って、光信号を発することができる場合、分析物、分析物反応生成物、試薬及び/又は試薬反応生成物は、蛍光体を含んでいてもよい。蛍光体は、不活性状態(すなわち、非蛍光状態)で提供されてもよい。
蛍光体からの基質の放出は、蛍光体を活性化して蛍光を発し、光信号を発生させてもよい。あるいは、試薬への分析物の結合は、蛍光体を活性化して蛍光を発するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、サンプル中の分析物又は分析物反応生成物によって蛍光体が酸化されている。サンプル中の分析物又は分析物反応生成物によって蛍光体が酸化されている。不活性な蛍光体の酸化は、蛍光体を活性化して蛍光を発することがある。
試薬が蛍光体を含む実施形態では、蛍光体はローダミン、例えばローダミン110を含んでいてもよい。有利なことに、ローダミン110/ペプチドコンジュゲートを生成するために、1つ又は複数のペプチドをローダミン110のアミノ基に結合させることができる。様々なローダミン110/ペプチドコンジュゲートは、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィックから市販されている。ペプチドが切断されると、ローダミンは検出可能な蛍光信号を発する。切断されたローダミン110は、490ナノメートル以上510ナノメートル以下の波長で励起されてもよい。いくつかの実施形態では、切断されたローダミン110は、505ナノメートルの波長で励起される。切断されたローダミン110は、521ナノメートル以上530ナノメートル以下の波長で発光してもよい。いくつかの実施形態では、切断されたローダミン110は、525ナノメートルの波長で発光する。他の最適な蛍光体は、当業者に知られている。例えば、他の好適な蛍光体は、FAM(フルオレセイン)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の文脈において、「ペプチド」という用語は、鎖状に連結された2つ以上のアミノ酸を含む化合物を指すことが理解される。
いくつかの実施形態では、ローダミン110は、トロンビン切断可能な基質を形成するために、フィブリノーゲンの1つ又は複数のペプチドに結合される。ローダミン110/フィブリノーゲンペプチドコンジュゲートは、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社からローダミン110、ビス-(p-トシル-L-グリシル-L-プロリル-L-アルギニンアミド)、カタログ番号R22124として市販されている。トロンビンとの接触により、ローダミン110のフィブリノゲンペプチドアーム、ビス-(p-トシル-L-グリシル-L-プロリル-L-アルギニンアミド)は、トロンビンによりローダミンから切断される。有利になるように、非蛍光性ビスアミドローダミンを蛍光的に検出可能な形態に変換する。フィブリノゲンペプチドアームは、最初は蛍光モノアミドを残して切断され、次に蛍光ローダミン110を残す。
試薬が蛍光体を含む実施形態では、蛍光体はジヒドロローダミン123を含んでもよい。例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィックなど、他の商業的な供給業者から市販されている。ジヒドロローダミン123は、不活性な蛍光体である。酸化されると、ジヒドロローダミン123は蛍光形態のカチオン性ローダミン123を形成する。カチオン性ローダミン123は、490ナノメートル以上510ナノメートル以下の波長で励起されてもよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ローダミン123は、488ナノメートルの波長で励起される。カチオン性ローダミン123は、521ナノメートル以上540ナノメートル以下の波長で発光してもよい。いくつかの実施形態では、カチオン性ローダミン123は、530ナノメートルの波長で発光する。
いくつかの実施形態では、試薬は2つの蛍光体、例えばCFP(シアン蛍光タンパク質)とYFP(黄色蛍光タンパク質)をペプチドで連結したものを含む。ペプチドは、酵素切断可能なペプチドを含んでいてもよい。ペプチドが切断されると、第1の蛍光体は第2の蛍光体から分離される。その後、第1の蛍光体は、第2の蛍光体にエネルギーを伝達することができる。従って、ペプチドリンカーが無傷であれば、第1の蛍光体の励起波長での励起は、第1の蛍光体から第2の蛍光体へのエネルギーの移動をもたらし、その結果として、FRET(フォースター共鳴エネルギー移動)の過程で第2の蛍光体から蛍光信号が放出される。ペプチドリンカーが1つ又は複数の成分によって切断された場合、FRETは廃止され、発光は第1の蛍光体からのみである。
【0046】
多孔質マトリックスは、上述した切断性試薬を0.05ミリモル以上1ミリモル以下の濃度で、典型的には0.1ミリモル以上0.3ミリモル以下の濃度で含有してもよい。
上記のように、ミリモルの単位における濃度は、液体の形態で提供され、蒸発又は他の手段によって乾燥する場合の濃度に関連することが理解される。
いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスは、0.05ミリモル以上1ミリモル以下の濃度の分析物反応生成物の前駆体を含む。
【0047】
分析物、任意の所望の分析物であってもよい。いくつかの実施形態では、分析物は全血の任意の所望の分析物である。例えば、分析物は、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸、微生物(例えば、細菌、真菌、ウイルスなど)、毒素、医薬品、酵素、代謝物、脂質、過酸化物、細胞部位、抗原などの1つ又は複数を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、分析物は少なくとも1つの酵素を含む。特定の実施形態では、分析物は少なくともトロンビンを含む。
いくつかの実施形態では、分析物は少なくとも1つの脂質を含む。特定の実施形態では、分析物は少なくともコレステロールを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、試薬/更なる試薬は、結合、切断及び/又は相互作用部分を含む粒子の形態であり、部分は、粒子の表面への非共有結合(例えばビオチン-アビジン)のような非共有化学結合によって、直接的又は間接的に結合されてもよい。粒子は、ラテックス粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、結合、切断及び/又は相互作用部分は、ローダミン110/ペプチドコンジュゲートを含み、粒子はラテックス粒子を含む。他の実施形態では、結合、切断及び/又は相互作用部分は、ジヒドロローダミン123を含み、粒子はラテックス粒子を含む。
追加の実施形態では、粒子の表面への物理吸着、共有結合、非共有化学結合(例えば、ビオチン-アビジン)、又はこれらの任意の組み合わせを含むこともできる。あるいは、試薬/更なる試薬は、遊離形態であってもよく、すなわち、粒子に直接的又は間接的に結合していない遊離したローダミン110/ペプチドコンジュゲート又は遊離したジヒドロローダミン123のようなものである。
いくつかの実施形態では、試薬/更なる試薬は遊離したローダミン110/ペプチドコンジュゲートを含む。
いくつかの実施形態では、試薬/更なる試薬はジヒドロローダミン123を含む。
【0049】
マイクロ流体チャネルに沿ってサンプルを輸送することは、毛細管作用によってサンプルをマイクロ流体チャネル内に引き込むことを含んでいてもよい。サンプルが最初に毛細管現象によって導入されるためには、マイクロ流体チャネルに存在するガスがサンプルによって変位することが必要である。これは、マイクロ流体チャネルからカートリッジの外側に出るバルブなどの方法で達成されてもよい。
代替的又は追加的に、サンプルは国際特許2018/002668号明細書に記載されているような能動的充填機構によって、マイクロ流体チャネル内に能動的に引き込まれてもよい。そのような実施形態では、マイクロ流体チャネルは、ガスチャンバに接続されていてもよい。従って、いくつかの実施形態では、カートリッジは、マイクロ流体チャネルに接続されたガス充填チャンバを含む。従って、ガスチャンバ及びマイクロ流体チャネルは、互いに流体的に通信していると理解される。
サンプルは、アクティブフィル機構によって検出領域内及び/又は検出領域外に能動的に引き込まれてもよい。いくつかの実施形態では、サンプルは、アクティブフィル機構によって、多孔質マトリックスを含むマイクロ流体チャネルのセクションに能動的に引き込まれてもよい、及び/又は外に出てもよい。
文脈が指示しない限り、「流体通信」という用語は、気体又は液体を含む流体が、関連する部分の間で輸送可能であることを意味すると理解される。
従って、本分析は、前記/各マイクロ流体チャネルに沿ったサンプルの動きを制御するために、国際特許2018/002668号明細書に記載されているように、ガス充填チャンバの圧縮及び/又は減圧を更に含んでいてもよい。
【0050】
分析は、更に「ストップフロー」機構を含んでいてもよい。これは、サンプルが検出領域及び/又は検出領域の下流にある疎水性印刷特徴部のような停止特徴部に達すると、サンプルの更なる流れが阻止される機構を画定するものと理解される。有利なことに、過剰なサンプルでチャネルが溢れ出すリスクを低減し、存在する分析物が検出領域及び/又は多孔質マトリックスから流出するのではなく、検出領域及び多孔質マトリックスに局在化することを確実にする。特に最適な機構は、国際特許2018/002668号明細書に記載されており、これは当業者に向けられており、その内容の全体が参照として本明細書に組み込まれる。要約すると、圧電ベンダが提供されてもよく、このベンダは、各/前記ガス充填チャンバを圧縮/減圧し、それによってマイクロ流体チャネル及び検出領域へのサンプル充填を正確に制御するように設計されている。
サンプルは、カートリッジがリーダ装置に挿入される前に導入されてもよい、又はカートリッジがリーダ装置に挿入された後に導入されてもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジは、サンプルが適用される前にリーダ装置に挿入され、前記/各チャンバからガスを排出するために、ガスが充填されたチャンバに印加される。効果的にカートリッジを事前に挿入すると、サンプルアプリケーションの準備ができる。
【0051】
国際特許2018/002668号明細書に記載されているように、ガス充填チャンバの圧縮及び/又は減圧は、単一又は複数のステップとして実施されてもよいことが理解される。ガス充填チャンバの圧縮は、印加特徴部によって提供されてもよい。印加特徴部は、リーダ装置内に含まれていてもよい。最適な印加特徴部及び最適なリーダ装置における印加特徴部の存在の例は、当業者が指示され、その内容全体が本明細書に組み込まれる国際特許2018/002668号明細書に記載される。また、他の最適な印加の機能及び/又はリーダ装置も想定され得る。
各チャンバ内のガスは、他のガス又はガスの混合物が導入されてもよいが、典型的には空気である。例えば、各マイクロ流体チャネル内に堆積している試薬のいずれかが酸化しやすい、又は空気中に存在するときの寿命が短い場合、カートリッジ及び関連するチャネル並びにチャンバは、窒素などの不活性ガスで充填されていてもよい。一般的には、ガスは空気であるとされるが、これに制限するものと解釈されるべきではない。
有利になるように、前記/各ガス室へのガスの出入りを慎重に制御することにより、各チャネルに沿ったサンプルの移動速度を正確に制御することができる。更に、各チャネル内のサンプルの位置は、任意で、リーダと接触しているマイクロ流体チャネルに沿って配置された電極のような手段によって、リーダによって検出することができ、それによって、リーダが、ガス/空気で満たされたチャンバに力/圧力を適用することによって、サンプルの移動の位置及び/又は速度を非常に慎重に決定することを可能にする各/前記マイクロ流体チャネル内の任意のサンプルの位置をフィードバックすることができる。
一つの実施形態では、サンプルは、最初に毛管作用によって第1の停止特徴部に向かってマイクロ流体チャネル内に導入され、その後、チャネル内の更なる動きは、上記で議論されているように、能動的な力の機構によって制御される。
【0052】
従って、更なる態様において、サンプルで使用する動態分析方法が提供され、方法には以下が含まれる;
a)マイクロ流体チャネルを含むカートリッジをリーダ装置に挿入するステップであって、前記マイクロ流体チャネルは、前記マイクロ流体チャネルに提供されたサンプルの少なくとも一部を受け取るための検出領域を含み、前記検出領域は、光学的に透過な部分、及び光学的に透過な部分の内腔表面に局在する前記試薬を含む多孔質マトリックスを含み、前記試薬は、前記サンプル中の前記分析物又は前記分析物反応生成物と反応して試薬反応生成物を形成することができ、前記試薬反応生成物は光学的に検出されることができる、ステップ;
b)前記リーダ装置内の力の印加手段を使用して前記マイクロ流体チャネルから任意で空気を排出するステップ;
c)前記マイクロ流体チャネルの第1の端部に前記サンプルを導入するステップ;
d)キャピラリー及び/又は能動的な力の作用によって、マイクロ流体チャネルに沿ってサンプルを検出領域に引き込むステップ;
e)前記サンプル中の前記分析物又は前記分析反応生成物が前記試薬と反応することを許容するステップ;
f)前記リーダ内の光学検出装置を使用して、その生成された前記試薬反応生成物の少なくとも1つの光学測定を実行するステップであって、前記光学検出装置は前記マイクロ流体チャネルの光学的に透過な部分の外側にあるステップ;及び
g)前記試薬反応生成物の前記少なくとも1つの光学測定に基づいて、任意の分析物又は分析反応生成物を検出するステップ。
【0053】
試薬を含む多孔質マトリックスを光学的に透過可能な部分の内腔表面に局在化させることにより、多孔質マトリックス及び関連する成分、試薬及び/又は前駆体の位置又は濃度に影響を与えることなく、流体的な動きが正確に制御される。
検出領域は、部分的に印刷された、例えば疎水性特徴部、例えば疎水性インク、カーボン、又は銀によって境界されていてもよい。このようにして、多孔質マトリックスは、特徴部の境界によって、堆積領域の外側に広がることを防止される。いくつかの実施形態では、検出領域は、検出領域を越えたサンプルの更なる移動を制限する機能を持つ、底部層に印刷特徴部によって囲まれていてもよい。
また、検出領域に隣接する印刷特徴部は、電極を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、サンプルがステップ1)で印刷特徴部に達すると、印刷特徴部は、光学検出装置による光学測定の取得をトリガするため、ステップ2)で分析が開始される。有利なことに、これは操作者のエラーに依存しない分析の開始時間を提供する。また、サンプルが検出領域を正常に満たしたことを確認する。
【0054】
サンプルは、生体サンプルであってもよい。生体サンプル、例えば全血は、分析に先立って被検者から得てもよい。被検者は、分析を用いた検査を実行するために予め定められていてもよいし、被検者は、医師、看護師、又は他の医療従事者を訪問し、医療サービス提供者は、分析の実施を必要とする被検者を特定してもよい。
特定の実施形態では、被検者は抗凝固療法を服用している、又は服用を検討している。被検者は、症状を示している、又は凝固に関連した状態、例えば脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症、又は心筋梗塞を有している可能性がある。
特定の実施形態では、被検者はスタチンを服用している、又は服用を検討している。いくつかの実施形態では、被検者は、高コレステロールの家族歴があり、喫煙者であり、太りすぎであり、糖尿病であり、及び/又は高血圧である。被検者は、初期の心血管疾患の家族歴を持っている可能性がある。
【0055】
患者又は医療サービス提供者は、分析を実行するように構成されたカートリッジを選択することができ、任意で、この選択されたカートリッジをリーダに挿入することができる。あるいは、本発明の分析を実施するために、生体サンプルを医療サービス提供者又は患者から外部の提供者に送ってもよい。
リーダ装置は、分析を実行し、得られた光学測定値に基づいて、被験者からのサンプル中に存在する特定の分析物のレベルを検出及び/又は決定することができるように、それ自体を適切に構成してもよい。分析は、リーダ及びカートリッジが一緒に動作し、分析が完了すると、リーダは、サンプル中に存在する分析物のレベルを検出及び/又は決定する。その後、リーダは、分析の結果を被検者及び/又は医療サービス提供者に提供してもよい。結果は、例えば画面上の視覚的な結果によって提供されてもよいし、携帯電話/コンピュータ等の他の装置に送信されてもよい。また、結果をプリントアウトして表示することもできる。
いくつかの実施形態では、得られた結果は、より有益な情報を得るために、標準化された値に変換されることがある。そのような場合には、カートリッジ、試薬及び/又はリーダを較正する必要がある可能性がある。従って、いくつかの実施形態では、分析方法には、較正ステップが含まれてもよいし、分析実施前に較正ステップが実施されていてもよい。リーダには、特定の分析の結果を標準化された値に変換できるように、適切な較正情報が予めプログラムされている場合がある。較正ステップは、当技術分野で知られている。pT/INR分析に適した較正ステップの例は、例えば、Poller et al., Clinical Chemistry, 56:10, 1608-1617 (2010)に記載されており、熟練した読者に指示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
一般的に、PT/INR分析の較正ステップは、ISI(国際感度指数)値を導出するために、サンプル、例えば認証されたINRを持つ血漿サンプルを検査することを含む。ISI値は、分析におけるトロンボプラスチンの感度を示し、標準化されたINR値を計算するために使用される。ISIを導出するための適切なサンプルは市販されており、例えば、INR補正キット(ハートバイオロジカル、ハートルプール、英国)で提供される凍結乾燥ヒト血漿が挙げられる。
【0056】
従って、いくつかの実施形態では、分析は、更にステップを含み、ステップは、サンプル中に存在する分析物のレベルを決定することを含む。レベルは、得られた光学測定値に基づいて決定される。
分析物がトロンビンを含む場合、いくつかの実施形態では、更なるステップは、サンプル中に存在するトロンビンのレベルを決定することを含む。レベルは、得られた光学測定値に基づいて決定される。トロンビンのレベルは、検出されてもよいし、PT又はINR値に変換されてもよい。
分析の結果は、被検者の将来の診断及び/又は治療を指示するために使用されることがある。従って、分析は、分析から決定された分析物のレベルに基づいて、特定の治療法の選択又は変更に向けられた、追加のステップを含むことが理解される。望ましくは、特定の治療は、抗凝固剤又はスタチン治療を含んでいてもよい。適切な抗凝固剤及びスタチン療法は、当技術分野で知られている。
医療サービス提供者及び/又は患者と同様に、使用者は、例えば、被検者が不適切な薬物使用のために検査されている個人である場合には、法執行官又はスポーツ薬物検査官であってもよい。
【0057】
上述したように、分析が動態分析である実施形態では、複数の光学的測定値は、分析物又はその反応生成物の期間にわたって取られる。複数の光学測定値は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも500回、又は少なくとも1000回の光学測定値を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、複数の光学測定値は、一定期間にわたって連続的に取られる。
あるいは、光学測定は、0.05秒毎、0.1秒毎、0.2秒毎、0.3秒毎、0.4秒毎、0.5秒毎、0.6秒毎、0.7秒毎、0.8秒毎、0.9秒毎、又は1秒毎の期間にわたって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、光学測定は、0.1秒毎の期間にわたって実施されてもよい。
期間は、少なくとも10秒、少なくとも30秒、少なくとも1分、少なくとも1.5分、少なくとも2分、少なくとも3分、又は少なくとも5分である。期間は、5分以内、3分以内、2分以内、1.5分以内、又は1分以内である。いくつかの実施形態では、期間は2分である。
複数の光学測定は時間をかけて実行するため、動態分析は終点(すなわち、一定の培養期間後に実行される単一の測定)を必要としない。有利にも、当技術分野で従来知られているものよりも迅速及び正確な分析を提供する。
複数の光学的測定は、閾値に達するまで実行されてもよく、その後、それ以上の光学的測定は実行されない。
【0058】
光学検出器は、リーダ装置内に含まれていてもよいし、リーダ装置に接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、光学検出器は、分光計又は蛍光光度計を含む。いくつかの実施形態では、光学検出器は、LED(発光ダイオード)を含む。他の最適な検出器は、当業者には公知である。蛍光検出の場合、リーダ内の分光計又は蛍光計は、検出領域内の分析物又はその反応生成物から放出される直接的又は間接的な蛍光を検出する。従って、有利には、リーダ装置において、分光計又は蛍光光度計に対向するように設計されたカートリッジの光学的に透過な部分、若しくは分光計又は蛍光光度計に接続された光ファイバ又はファイバのような光学的検出部材のみが光学的に透過でなければならない。蛍光検出の場合、カートリッジの光学的に透過な部分は、励起波長及び発光(検出)波長を包含する範囲で光学的に透過であることが必要である。例えば、カートリッジの光学的に透過な部分は、200~1200ナノメートルの範囲で光学的に透過である必要がある。
分光計又は蛍光光度計の代替として、光学検出は、当技術分野で知られているCCD又はCMOSカメラのような適切なカメラを用いて実行されてもよい。
マイクロ流体チャネルは、200マイクロメートル以下、150マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、又は70マイクロメートル以下の深さを有していてもよい。これらの深さの提供は、有利には、サンプル及び多孔質マトリックスが近接していることを保証する。また、この深さにすることで、光の励起波長が多孔質マトリックスに到達し、発光波長が光検出素子に到達することを保証する。
光学測定は、蛍光測定を含んでいてもよい。他の最適な光学測定は、当業者には公知である。
【0059】
いくつかの実施形態では、分析は加熱及び/又は冷却ステップを含んでもよい。これは、分析の現在のステップとは別個のものであってもよいし、これらのステップに加えたものであってもよい。例えば、分析のステップ1)の前に、マイクロ流体チャネルを加熱してもよい。この加熱は、1つ又は複数の後続のステップを経て維持されてもよいし、ステップ1)が開始された時点で停止してもよい。逆に、マイクロ流体チャネルは、本発明の分析のいずれかのステップの間に加熱又は冷却されてもよい。加熱又は冷却は、関連するリーダ装置によって提供されてもよい。分析の温度は、検出される成分/反応が発生する成分に依存することが理解される。従って、熟練者は、各分析/分析ステップの最適温度を認識していることになる。
分析は、20℃以上95℃以下の温度でチャネルを加熱して維持する加熱ステップを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、分析は、20℃以上65℃以下の温度でチャネルを加熱して維持する加熱ステップを含んでいてもよい。加熱ステップは、30℃以上40℃以下の温度でチャネルを加熱して維持する加熱ステップを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、加熱ステップは、35℃以上37℃以下の温度でチャネルを加熱して維持する加熱ステップを含んでいてもよい。
プロトロンビン時間(PT)又は国際正規化比(INR)値を決定するための分析において、分析は、約30℃~40℃の温度、例えば36℃の温度でチャネルを加熱して維持する加熱ステップを含んでもよい。
【0060】
次に、本発明を、以下に示す実施例及び図を参照して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1A】本発明による動態分析による測定のための凝固経路(又は凝固カスケード)及びこの経路の潜在的な分析物ターゲットの概略図である。
図1B】本発明による動態分析による測定のための凝固経路(又は凝固カスケード)及びこの経路の潜在的な分析物ターゲットの概略図である。
図2】本発明の一実施形態において使用され得るローダミン110を含むトロンビン切断薬剤を示す。
図3】本発明の一実施形態による分析の概略図である。
図4】本発明の一実施形態による別の分析の概略図である。
図5A】本発明の一実施形態によるマイクロ流体カートリッジの斜視図である。
図5B】分析中の光学的に透過な部分における信号の現像を示す写真である。
図5C】多孔質マトリックスが光学検出器に対して配置されている場所に応じて得られる異なる信号強度を示す。
図5D】管腔表面に堆積したときに広がった多孔質マトリックスを使用した場合の異なる時点における信号の発達を示す。
図5E】厚い多孔質マトリックスと薄い多孔質マトリックスを使用した場合の信号の発達を示す。
図6図5Aに示されたカートリッジの部分に血液が入り、充填される様子を示す。
図7】本発明の一実施形態によるカートリッジ内のマイクロ流体アーキテクチャの図である。
図8】本発明の一実施形態によるカートリッジ内のマイクロ流体アーキテクチャの図である。
図9】(A及びB)は、多孔質マトリックスの成分としてHEC(ヒドロキシエチルセルロース)を用いた場合の光学測定への影響を示す。(C及びD)は、多孔質マトリックス中のHECの分子量が血栓時間に及ぼす影響を示す。
図10A】多孔質マトリックスの他の成分を用いた場合の光学測定への影響を示す図である。血栓時間対全血のサンプルのACL INR、10%のPEG(ポリエチレングリコール)の濃度を有する多孔質マトリックスを示す。
図10B】多孔質マトリックスの他の成分を用いた場合の光学測定への影響を示す図である。分析率に対するアビセルの効果を示す。
図11A】多孔質マトリックスのCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を用いた場合の分析への影響を示す図である。多孔質マトリックス中のCMCの濃度が血栓時間に及ぼす影響を示す。
図11B】多孔質マトリックスのCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を用いた場合の分析への影響を示す図である。多孔質マトリックス中のCMCの濃度が血栓時間に及ぼす影響を示す。
図11C】多孔質マトリックスのCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を用いた場合の分析への影響を示す図である。CMCの新しい形態(DS(置換度)CMC)が分析に及ぼす影響を示す。
図12】マトリックス中のCMC及びPEGの異なる濃度を使用して、光学検出のための多孔質マトリックス中の信号の展開の画像を示す。
図13A】本発明の一実施形態に基づくINRの指標としてのトロンビン変換のモデル化された模式図である。
図13B】本発明の一実施形態に基づくINRの指標としてのトロンビン変換のモデル化された模式図である。
図14A】異なるサンプルを用いた分析結果を示す。
図14B】異なるサンプルを用いた分析結果を示す。
図14C】異なるサンプルを用いた分析結果を示す。
図15】本発明の分析範囲の拡張を示す。
図16A】本発明の一実施形態において、血栓時間(従ってINR)の計算方法を示すグラフである。PTは血栓発症時に測定され、バックグラウンドより6×SD(標準偏差)であると計算される。
図16B】本発明の一実施形態において、血栓時間(従ってINR)の計算方法を示すグラフである。PTは血栓発症時に測定され、バックグラウンドより6×SD(標準偏差)であると計算される。
図17A】45℃で13週間保存した後の多孔質マトリックスの安定性プロファイルを示す。
図17B】5℃から70℃の温度で120日保存した後の多孔質マトリックスの安定性プロファイルを示す。
図18】本発明に基づいてコレステロールを検出するために使用するコレステロール経路及び潜在的な試薬の概略図である。
図19】ジヒドロローダミン123の図である。
図20A】本発明の実施形態に基づくコレステロール分析の結果を示す。
図20B】本発明の実施形態に基づくコレステロール分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
実施例1
図1は、ブロットクロットを生成する一連の酵素補助生化学反応である凝固経路に関与する分析物を示している。多くの個人、例えばワルファリン又はクマリンなどの抗凝固療法を受けている患者の場合、定期的に凝固状態をモニターする必要がある。これにより、出血量の増加などの重篤な副作用を回避しつつ、治療量を治療範囲内に収まるように定期的に調整することが可能となる。
図1Aに示すように、カスケードは、内在性又は接触活性化経路と、外在性又は組織因子経路の2つの経路を有する。カスケードは一度開始されると自己増殖するが、血液系には凝固促進作用を阻害する阻害剤が多数存在し、形成された血栓を分解するため、自己調節性を示す。外因性及び内因性経路は共通の経路に合流し、その中心にトロンビンがある。本分子はタンパク質分解活性を持ち、可溶性フィブリノーゲンを切断し、血栓を架橋する不溶性フィブリンを放出する。
公知の分析における凝固状態をモニターするために、凝固を開始する成分、例えば組織因子を患者サンプルに添加する。組織因子は、組織材料にのみ存在するリポタンパク質であるため、通常は循環器系には存在しない。血管が破裂し、組織物質に対する有効なバリアを提供しなくなると、組織因子が血流に入り、外因性カスケードが開始される。その後、1つ又は複数の下流の分析物を測定できる。以下の実施形態において、トロンビンは、本発明の分析によって検出される分析物である。しかし、カスケードの自己増殖性の性質から、この経路の多くの分析物が凝固状態のバイオマーカーと考えられている。図1Bが示すように、他の因子、例えば、ラッセルクサリヘビ蛇毒、エカリン、テクタリン、タイパン毒、レプティラーゼ、又はプロタックを患者サンプルに添加して、経路の異なるポイントで凝固を開始させることができる。従って、カスケードの他の成分、例えば、第X因子、第Xa因子、第II因子、フィブリンモノマー、又はタンパク質Cをモニターする可能性がある。従って、外因性又は内因性経路の他のメンバー、若しくは他の無関係な分析物の効果を検出及び/又は決定できる方法の想定が容易に可能である。
【0063】
測光学的変化を発生させることができる試薬
本発明者らは、急冷した試薬がトロンビンによって切断され、蛍光を発することを見出した。図2に示すトロンビン切断薬剤は、ローダミン110のビスアミド誘導体(ローダミン110、ビス-(p-トシル-L-グリシル-L-プロリル-L-アルギニンアミド、カタログ番号R22124、モルキュラープローブ、サーモフィッシャーサイエンティフィック)である。本試薬は、ローダミン110の各アミノ基に共有結合したフィブリノーゲンペプチドユニット(ペプチドアーム)を含んでいる。
図に示すように、カスケードにおいて、トロンビンはフィブリノーゲンペプチドユニットA及びBを切断し、フィブリノーゲンを不溶性フィブリンモノマーに変換する。ローダミン110に取り付けられたペプチドアームは、トロンビンによって自然に認識されるフィブリノーゲン単位のペプチドを複製する。従って、トロンビンは、ローダミン110のビスアミド誘導体のペプチドアームを切断できる。
本発明の実施形態では、ローダミン110のトロンビン切断性ビスアミド誘導体は、多孔質マトリックス内に存在する。多孔質マトリックスは、マイクロ流体チャネルの光学的に透過な部分の内腔表面に局在している。しかし、他の実施形態では、多孔質マトリックスは必要ないことが理解される。分析の間、ローダミン110のトロンビン切断性ビスアミド誘導体は、サンプルの一部、例えば血液と接触する。血液サンプル中にトロンビンが存在する場合、トロンビンは、ローダミン110のビスアミド誘導体のペプチドアームを切断する。ペプチドアームの切断により、ローダミン110のビスアミド誘導体を活性化し、光信号を発する。
【0064】
光信号をより詳細に説明すると、ペプチドアーム(Arg-Pro-Gly配列)の切断の結果、非蛍光性ビスアミド誘導体であるローダミン110は、最初に蛍光性モノアミドに変換され、次いでローダミン110に変換される。ローダミン110は、光検出装置の波長で測定可能な蛍光信号(498~505ナノメートルで励起、521~525ナノメートルで発光)を発する。凝固カスケードが下流へ進行すると、プロトロンビンからトロンビンへの変換が増加し、より多くのローダミン110が放出されるため、蛍光信号の大きさが増加する。プロトロンビンからトロンビンへの変換は、所定の時間内に発生する蛍光信号に比例する。トロンビン合成を決定する値は、プロトロンビン時間(PT)、又はその派生指標である国際正規化比(INR)として知られている。
従って、蛍光信号の形成率が高い場合は、プロトロンビンからトロンビンへの変換速度が速い(低INR)ことが示され、一方、蛍光信号の形成率が低い場合は、プロトロンビンからトロンビンへの変換速度が遅い(高INR)ことが示される。
抗凝固療法を行っていない患者のサンプル(非治療用サンプル)では、プロトロンビンからトロンビンへの変換が非常に速いため、蛍光信号が速やかに生成される。治療用サンプル(抗凝固剤治療を受けている患者のサンプル)では、例えばワーファリンの場合、ビタミンK因子の阻害により、反応のカスケードが遅くなる。従って、抗凝固療法を受けている患者の場合、PTが延長される。
【0065】
これらの分析の一例を、図3に模式的に示す。この図では、光学的変化/信号21を発生させるための多孔質マトリックスが、マイクロ流体チャネル4の検出領域26の上部内腔表面5に固定化されていることが示されている。血液サンプル7は、多孔質マトリックス21が固定化された検出領域26に入り、血液サンプル7が多孔質マトリックス21内の試薬を含む成分と接触することを許容する。血液サンプル7内のプロトロンビンは、最初に多孔質マトリックス21内のトロンボプラスチン(TP)と反応するため、図示されているように、凝固カスケードが開始され、凝固酵素が活性化される。この結果、トロンビンの最終的な生成が起こり、このトロンビンは、次に、上述したようにローダミン110(R110)のビスアミド誘導体と反応でき、ペプチドアームを切断し、多孔質マトリックス21内に光学的に検出可能な信号を生成する。光信号は、検出領域26の光学的に透過な部分9を介して、関連するリーダ装置内に存在する光学検出器を用いて検出される。本実施形態では、上部内腔表面5と光学的に透過な部分9は、同じ光学的に透過な材料で形成されるが、他の実施形態では、光学的に透過な部分9は、上部内腔表面5の残りの部分とは異なる材料で形成されてもよいことが理解される。
上記の例では、必要な全ての成分が単一の多孔質マトリックス内に存在している。図4は、反応成分の一部が2つの多孔質マトリックス(121、221)に分離される代替的な実施形態を示す。本例では、第1の多孔質マトリックス221は、凝固カスケードを開始するために使用するトロンボプラスチン(TP)を含む。血液サンプル7は、血液サンプル7内のプロトロンビンが第1の多孔質マトリックス221内のトロンボプラスチンと接触し、凝固カスケードが開始されることを可能にするため、最初に第1の多孔質マトリックス221と接触する。その後、血液サンプル7は、試薬ビスアミド誘導体R110を含む第2の多孔質マトリックス121(光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックス)に下流側に搬送される。血液サンプル7内のトロンビンは、R110のビスアミド誘導体を切断し、それによって試薬反応生成物及び光学的に検出可能な信号を生成し、この実施形態では、マイクロ流体チャネル4の検出領域26の光学的に透過な部分9を介して検出できる。
【0066】
図4の実施形態では、検出領域26内に第2の多孔質マトリックス121のみが示されているが、他の実施形態では、第1の多孔質マトリックス221も検出領域26内に存在し得ることが理解される。
図4に模式的に例示されている成分/試薬の分離又は非連結は、様々な成分/試薬が互いに干渉する可能性がある場合、若しくは各多孔質マトリックスの物理的及び/又は化学的性質を変化させることが望まれる場合に使用できる。例えば、各マトリックスの気孔率、濡れ性、pHなどを変化させることが可能であり、その結果、各多孔質マトリックス内の特定の反応性成分に合わせて調整できる。前述で明らかなように、いくつかの試薬は、単に光学検出のために多孔質マトリックスの外側にあることが容易に可能である。従って、例えば、試薬は、マイクロ流体チャネルの表面に直接乾燥させる、又は担体と結合させることができるが、更に多孔質マトリックス内に存在する必要はない。試験では、この非連結の実施形態が非常に再現性の高い結果をもたらすことが示されている。
光学的に透過な部分9/マトリックス21と光学検出器が近接していることにより、サンプル中に存在している可能性のある成分が光学検出を妨害し、及び/又は不明瞭にする影響を最小限に抑えることができる。理論に縛られることを望まず、また、本発明者らは、多孔質マトリックスは、赤血球のような特定の大きさの物質を排除することができると考えている。これにより、光検出時のこれらの材料からの干渉を低減できる。
【0067】
ローダミン110(R110)の遊離トロンビン切断性ビスアミド誘導体(すなわち、「遊離」によって、ローダミン110のビスアミド誘導体が他の粒子に付着していないことが理解される)の分析性能を、光学的に透過な部分の内腔表面に局在化した場合、ローダミン110のトロンビン切断性ビスアミド誘導体で機能化された磁性粒子又はラテックス粒子と比較した。性能(INR値として測定)は、R110の遊離トロンビン切断性ビスアミド誘導体とR110のトロンビン切断性ビスアミド誘導体で機能化されたラテックス粒子の間で同等であった。R110のトロンビン切断性ビスアミド誘導体で機能化した磁性粒子の性能は、他の2つのグループと比較して低下した。
固相の要件を除去し、多孔質マトリックスの複雑さとコストを低減するため、更なる実験では、R110の遊離トロンビン切断性ビスアミド誘導体を使用することが決定された。
簡潔さのために、本明細書で使用されるR22124(カタログ番号)は、ローダミン110の遊離トロンビン切断性ビスアミド誘導体を指す。
また、分析の性能に対する多孔質マトリックス内のR22124の濃度の影響も評価した。0.1ミリモル、0.25ミリモル、0.5ミリモル、0.75ミリモル、及び1ミリモルのR22124の濃度(すなわち、液体形態で提供され、その後、マトリックス中で蒸発又は他の手段で乾燥させる)を、対照的な血漿サンプル上で試験し、結果を比較した。0.25~0.75ミリモルで同様の性能(血栓時間で測定)が得られた。0.1及び1ミリモルの濃度において最も高い血栓時間が得られた。結果を表1に示す。
【表1】
表1:多孔質マトリックス内のR22124([Rhod]として示されている)の濃度が分析の性能に及ぼす影響。
【0068】
マイクロ流体チャネル/カートリッジ
本発明で使用するサンプルマイクロ流体カートリッジを、図5Aに示す。図5Aにおいて、カートリッジ1は、マイクロ流体チャネル4に接続されたサンプル入力ポート3を含み、チャネル4は、カートリッジ1内に延び、複数のマイクロ流体チャネル11を形成するために分岐し、各チャネル11は、独立したガス充填チャンバ10に流体的に接続されている。他の実施形態において、カートリッジは、1つ、2つ、又は3つのチャネル4を含んでいてもよい。
カートリッジは、第1の層、第2の層、及び第3の層の3つの別個の平面層から形成され、この実施形態において、上層及び底層の間に配置された中間層を有する上層及び底層から形成され、これらの層は、マイクロ流体チャネル4及びガス充填チャンバ10を画定するために一緒に挟まれている。中間層は、上層と底層を接着する接着剤層の形態である。本実施形態において、カートリッジのチャネルは、中間層内に配置されている。従って、チャネルの壁は中間層によって形成され、チャネルの底部は底層によって形成される。
図5Aの実施形態のカートリッジは、自己完結型とみなされるべきであり、サンプル塗布前に、実質的に液体を含まず、乾燥しているとみなされる。このカートリッジ内に存在する液体サンプルの塗布前の唯一の流体は、気体であり、本実施形態においては空気である。
使用時には、サンプル液(本実施形態では、血液サンプル)がチャネル4を満たし、リーダ内の対応する電気接点と電気的に接触している電極によって検出され得る。カートリッジ1にサンプルが装填されたという適切な信号をリーダが検出すると、リーダは分析を開始できる。
【0069】
各チャネル11をより詳細に説明すると、製造工程中に各チャネル11内に配置される任意の試薬/多孔質マトリックスの移動を制限するように設計された印刷特徴部(20、22、24)がある。また、印刷特徴部(20、22、24)は、印刷特徴部の領域に達すると、サンプルの更なる移動を制限するように機能する。本実施形態において、印刷特徴部は、カーボンベースの疎水性インクで形成され、電極として機能する。他の実施形態において、印刷特徴部は銀で形成され、電極としても機能する。他の実施形態においては、印刷特徴部の数が異なっていてもよいことが理解される。例えば、印刷特徴部は、検出領域(すなわち、印刷特徴部20)に面する印刷特徴を含んでいてもよい。好都合なことに、多孔質マトリックスは、印刷特徴部によって定義される領域内に最初に堆積され、機械的にその中に広がる。これにより、多孔質マトリックスが配置される領域が制限され、画定される。印刷特徴部は、図5Aに示された形状とは異なる形状を有していてもよい。印刷特徴部20は、図5Aに示された特徴部とは異なる形状であってもよい。例えば、印刷特徴部20は、U字形、すなわち、一端が開いた形状であってもよい。印刷特徴部20は、2×1.5ミリメートルの領域で画定される。
使用時には、増加する力がカートリッジ1のチャンバ10に加えられ、チャンバ10からガスが排出される。後述するように血液サンプルがカートリッジに塗布されると、サンプルは、チャンバに加えられた圧力が解放された後、ガスチャンバ10に戻る空気によってカートリッジ内に引き込まれる。サンプルが検出領域の下流側の印刷特徴部24に到達すると、サンプルの更なる下流側への移動を防止するために、ガスチャンバに加えられる圧力が増加する。
他の実施形態においては、最初のサンプルは、第1の停止特徴部に向かって、毛細管現象のみによってマイクロ流体チャネルに沿ってマイクロ流体チャネル内に流れ込む。その後、停止特徴部を通過するために、更なるサンプルの流れが、上述及び後述のように、能動的な力によって達成される。
印刷特徴部20の境界内に配置された各分析チャネル11の検出領域26に、分析されるサンプル中に存在してもよい特定の分析物又はその反応生成物と反応するように設計された試薬を含む多孔質マトリックス(図示せず)が堆積されている。多孔質マトリックスは、光学的に透過であり、最上層の光学的に透過性な部分の内腔表面に局在している。複数の分析を1つのマイクロ流体カートリッジで実行することができ、分析の数は別々のチャネル及び検出領域の数に依存する。本図では、4つの異なるチャネル11及び検出領域26が示されている。
【0070】
検出領域26及び印刷特徴部(20、22、24)の更に下流に位置するガス充填チャンバ10は、本発明のリーダ装置内に存在する印加特徴部(後述するように)に局在化するように設計されており、印加特徴部は、チャンバ10内のガスがチャンバ10から分析チャネル11内に排出されるように、ガス充填チャンバ10に印加できる。チャンバ10にかかる力の減少により、分析チャネル11からチャンバ10内に空気が引き戻される。
血液サンプルが検出領域26の下流側に位置する印刷特徴部24に到達すると、血液サンプルの更なる移動が制限される。更に、印刷特徴部24は、光学検出装置による少なくとも1つの光学的測定をトリガし、それにより分析を開始する。
様々な試薬は、検出領域26の多孔質マトリックス内に局在化するのに適していてもよい。例えば、検出領域26の多孔質マトリックス中に局在化されているのは、検出されるべき分析物の異なるエピトープを特異的に結合するように設計された更なる抗体で機能化された、遊離のフルオロゲン粒子又は蛍光標識されたラテックス粒子であってもよい。本実施形態では、図2に示すように、R22124は、検出領域26の試薬である。
【0071】
図5Bは、本発明の分析が開始され、信号の検出が進行中になった後の検出領域26を示す。この図に示すように、血液サンプルの一部は、検出領域26の下流側に位置する印刷特徴部24に到達しているため、血液サンプルの更なる移動が制限される。このようにして、該血液サンプルの一部は、主に検出領域26に局在しているため、最適な検出を確実に実行できる。光学的測定は、検出領域26の上方に配置されたLED(図示せず)を用いて実行される。マトリックス21は、検出領域26に血液サンプルが充填された後も、光学的に透過な部分の内腔表面に局在したままである。分析の間、図5Bの主に透明なマトリックス21によって示されるように、赤血球がマトリックスに入ることはない、又は非常に少ない。従って、信号の光検出との干渉は最小限に抑えられている。
上記の実施形態において、多孔質マトリックスがマイクロ流体チャネルの上側の管腔内表面に固定化され、光学的検出が上から実行されるように示されているが、多孔質マトリックスがマイクロ流体チャネルの下側の管腔内表面に固定化され、検出が下から実行されるようにすることも可能である。本発明によると、検出は、多孔質マトリックスが固定化されているのと同じ表面を介して実行されるべきである。従って、多孔質マトリックスがマイクロ流体チャネルの上部内腔表面に固定化されている場合、光学検出システムは、マイクロ流体チャネルの下部内腔表面を介して光学的変化を検出するように配置されるべきではなく、また、その逆もまた然りである。すなわち、バルク血液サンプルは、該多孔質固体マトリックスと光学検出システムの間に配置されるべきではない。
【0072】
図5Cは、多孔質マトリックスが配置されている場所に応じて得られる異なる信号強度を示す。2つの上の画像は、本発明の実施形態に基づく多孔質マトリックスが、リーダに存在する光学検出器にすぐに隣接するマイクロ流体チャネルの内腔表面(この場合は上面)上に保持されている場合、検出領域における蛍光強度の2つの繰り返しを示す。2つの下側の画像は、光学検出器が上面にすぐに隣接している場合、同じ多孔質マトリックスがチャネルの下面に配置されたときに表示される強度の有意な減少の2つの繰り返しを示している。従って、チャネル内の血液のサンプルは、多孔質マトリックスと光学検出器の間に存在する。全ての画像は、血液サンプルが検出領域に入ってから30秒後の蛍光強度を示している。各図の各多孔質マトリックスには、同じ製剤を使用した。見られるように、効率的な信号検出を確実にするために、多孔質マトリックスと光学検出器の間に血液が配置されていないという明確な利点がある。
【0073】
多孔質マトリックスは、図5Aに示すように、最初に斑点化され、印刷特徴部20の境界内に含まれる。単純に斑点化された場合、結果として得られる乾燥したスポットは、自然界では一般的に丸みを帯びており、乾燥した場合には断面に不均一な厚さを持つことになる。つまり、スポットの中心部に比べて、スポットの端の方が薄くなる。本発明者らは、液体スポットが乾燥する前に、液体スポットを広げることにより、より均一な厚さが得られ、非常に再現性の高い信号発生が達成されることを観察した。図5Dは、本発明に基づく多孔質マトリックスの異なる製剤の例を示しており、各液体スポットは、表面上に乾燥する前に拡散され、薄められている。見られるように、良好な信号発生(試薬反応生成物から)が、3つの時間点(血液サンプルが検出領域に入ってから5、15、及び30秒後)において、スポット全体にわたって、各製剤について観察される。本図では、2つの多孔質マトリックス、つまり検出領域の外側にある第1の多孔質マトリックス、及び検出領域内の光学的変化/信号を発生させるための第2の多孔質マトリックスが利用されている。上から2列目において、光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックス(第2の多孔質マトリックス)が、レディプラスチン、CMC、トレハロース、及びローダミンなどを含有する製剤を含んでいる(製剤1)。図の下の2列には、光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックス(第2の多孔質マトリックス)が、レディプラスチンを含有しない製剤を含んでいる(製剤2)。いずれの実施形態も、トレハロース及びレディプラスチンを含む検出領域の外側に多孔質マトリックス(第1の多孔質マトリックス)を更に含んでいた。これらの製剤は例示的なものであり、他の製剤が使用され得ることが理解される。
厚い多孔質マトリックスと比較した場合の薄い多孔質マトリックスからの信号展開を図5Eに示す。この図から明らかなように、薄い層(a)を使用すると、反応が遅く、よりパッチ状であった厚い層(b)と比較すると、高速で均一な反応(蛍光を参照)が得られた。
【0074】
図6は、分析で使用される本発明の実施形態に基づくカートリッジを示す。血液サンプルは、図6のステップIに示すように、入力ポート3を介してカートリッジ1に接触して導入される。血液サンプルは、圧電ベンダ(図示せず)によって加えられた圧力によってチャンバ10からガスが排出された後、チャンバ10に加えられた圧力が解放された後、空気がガスチャンバに戻ることによって、血液サンプルがカートリッジ1及びチャネル11内に引き込まれる(図6のステップII及びIII)。チャンバ10に適用される力の減少を慎重に制御することは、血液サンプルが印刷特徴部20によって境界付けられた検出領域26内にどの程度まで引き込まれるかを制御し、充填速度に対するサンプルのばらつきの影響を最小化する。また、電極で感知したフィードバックを介して制御することも可能である。
検出領域26の更に下流には、印刷特徴部24が電極として設けられている。血液サンプルは、印刷特徴部20の上に充填され、印刷特徴部24に適合するように更に下流へと続く(図6のステップIV)。血液サンプルが印刷された機能24に適合すると、本印刷された機能24は、LEDを点灯させるための信号を送信する。その後、少なくとも1回の光学測定は、リーダ装置のLED(検出器)によって実行される。血液サンプルの更なる移動は、印刷特徴部24及びストップフロー機構によって制限される。光学的測定の開始前に血液サンプルが印刷特徴部24に適合するまで待つことにより、オペレータエラーに依存しない分析の開始時間0を提供する。また、血液サンプルが検出領域26を正常に満たしたことを確認する。
【0075】
図7及び8は、最初の毛細管充填を採用し、その後に活性充填を実施する2つの実施形態のマイクロ流体アーキテクチャの一部を模式的に示している。各実施形態では、マイクロ流体チャネル304の第1の部分に接続された入力ポート303が示されている。第1の部分の各端部には、血液サンプルのヘマトクリット値が得られる拡大領域314が設けられている。ヘマトクリット値を得るための適切な方法は、例えば、米国特許第006064474A号明細書及びVan Kempen EJ並びにZijlstra W.G et al. 1983(ヘモグロビン及びヘモグロビン誘導体の分光光度法。臨床化学の進歩、第23巻、199-257)から既知である。拡大領域314から下流に延びているのは、マイクロ流体チャネル316の第2の部分であり、この部分は、小さなベントアーム318を含む。この種類のベントアームは、当業者に指示される国際特許第2018/002668号明細書に更に詳細に記載されている。
使用時に、血液サンプルが入力ポート303に導入されると、血液サンプルは、ベントアーム318に遭遇するまで、毛細管作用によって第1の部分304、拡大部分314、及び第2の部分316を満たし、その時点で血液の毛細管流れは停止する。更なる血流が発生するために、上述したように、アクティブフィル機構が利用される。簡単に言えば、アクティブフィルは、空気/ガス充填チャンバ310の窪みを含む。これにより、血液サンプルは、ベントアーム318を通過して、1つ又は複数の多孔質マトリックス(図示せず)を含む検出領域326へと、本明細書で先に記載されたように流れる。必要な反応は検出領域326で実行され、あらゆる光学的変化は、前述のように光学検出器を用いて検出される。
図8に描かれた実施形態は、検出領域326の前に長い第2部分316を有するように示されている。これは、本明細書に記載される分割又は脱結合方法を容易に収容することができる。例えば、第1の多孔質マトリックス、又は1つ又は複数の試薬を第2の部分316に堆積させてもよく、光学的変化/信号を発生させるために必要な試薬を含む更なる試薬、又は第2の多孔質マトリックスを検出領域326に堆積させてもよい。例えば、第1の多孔質マトリックス、又は1つ又は複数の試薬が、ベントアーム318と検出領域326の間の第2の部分316のセクションに堆積されてもよい。先に議論されたように、それらの分割マトリックスの実施形態では、各マトリックスの組成物は、異なるものであってもよく、必要とされる特定の分析及び試薬の要件に合わせて調整してもよい。例えば、本明細書で議論されるPT/INR分析のために、第1のスポットに存在するトロンボプラスチンは、血液サンプルの接触時に、多孔質マトリックスから自由に移動することができるように、スポット内で強固に結合する必要はないかもしれない。しかし、試薬反応生成物を形成するために反応する試薬(例えば、ローダミン110のビスアミド誘導体)は、多孔質マトリックス内に含まれていることが好ましく、試薬及びその結果として生じる試薬反応生成物が多孔質マトリックスから洗い流されることを実質的に防止する、又は最小限に抑えることができる。本発明者らは、CMCの使用がこの点で特に有効であることを観察した。
【0076】
上記は、本発明の1つの特定の実施形態の説明を提供するが、本発明は、容易に適合させることができるプラットフォーム分析の形態であるように設計されている。例えば、カートリッジ内に通気孔が付加されていることにより、毛細管作用のみからサンプルをカートリッジ内で移動させてもよい。
更に、複数の試験フォーマットを分析してもよく、例えば、2、4、又は10チャネルフォーマットのカートリッジを使用してもよい。
第1の測定技術は蛍光だが、分析には電気化学測定又は他のコンポーネントも簡単に組み込むことができる。
サンプルの正確な光学的測定を提供するため、光学的に透過性な部分への局在化のために、本発明者らによって様々なマトリックス製剤が開発されてきた。これらについては、以下で詳しく説明する。
【0077】
マトリックスの他の成分
マトリックスの初期評価は、単純なトロンビン-R110法を考慮した。評価では、R22124をエタノール溶液に溶解した(すなわち、湿式分析)。凍結乾燥されたトロンビンを緩衝液で可溶化し、連続希釈した。カートリッジ中のエタノール中のR22124とトロンビンの体積を反応させ、インキュベーション期間後、国際特許第2018/002668号明細書に記載されているリーダのようなリーダを用いて光学的測定を実行した。こうしてトロンビンの用量反応曲線が得られた。これにより、トロンビン活性(従って凝固状態)が湿式分析で測定できることが確認された。
その後、光学的に透過な部分に局在化した乾燥マトリックスを調査した。遊離R110をDMSO又はエタノールに可溶化し、結合のための担体分子としてトレハロースを使用して、粘性及び安定性を提供するために、マイクロ流体チャネルの光学的に透過な部分の内腔表面に堆積させた。トレハロースは、2つのグルコースユニットがα-1,1-グリコシド結合で連結された非還元性のホモ二糖類である。トレハロースは、コスモロープ又は水構造マーカーに分類される。この乾燥マトリックスは、シグナルは低いが、凍結乾燥したトロンビン又は血漿サンプルに対して試験した場合、蛍光信号を返すことがわかった。
分析性能に及ぼすマトリックス中のトレハロース濃度の影響を評価した。20、30、40、又は50%(質量/体積)のトレハロース濃度を有するマトリックスを用いて、既知のINR値3.5のサンプルから得られた信号を観察した。トレハロース濃度の増加が、シグナルを増強することが判明した。その後の研究で、10及び20%(質量/体積)のトレハロース濃度は同等であることが分かった。
その後、乾燥マトリックスの追加成分を調査した。分析性能に対する組織因子の影響を評価した。前述したように、組織因子は、凝固を開始するために患者サンプルに添加されるため、凝固状態の決定を可能にする。従って、組織因子を1倍から8倍の濃度で製剤に添加した(次いで、乾燥させた)。
【0078】
1倍から8倍の命名法を説明するために、組織因子としてレコンビプラスチン2グラム(ヴェルフェン)を用いた。製品の説明書では、凍結乾燥したレコンビプラスチン2グラムを20ミリリットルの希釈液に溶解することを推奨している。ヴェルフェンは、本製品における組織因子の実際の濃度を開示していないため、製剤に使用された初期濃度は不明であった。
従って、組織因子濃度の影響を調査するために、凍結乾燥された材料は、推奨量よりも少ない量で溶解された。以下に従う:
1倍=20ミリリットルの希釈液をメーカー推奨の方法で添加する;
2倍=10ミリリットルの希釈液;
4倍=5ミリリットルの希釈液;
8倍=2.5ミリリットルの希釈液;
16倍=1.25ミリリットルの希釈液
その結果、16倍濃度の組織因子の濃度は2189ピコメートルと計算された。
既知のINRが7のサンプルを評価すると、マトリックス中の組織因子の増加が、分析の蛍光発生率を増加させることが観察された。
後の研究では、本発明者らは、リコンビプラスチン2Gからレディプラスチンに切り替えた。レディプラスチンの臨床成績は、リコンビプラスチン2Gと同等であった。レディプラスチンは、カルシウムを除去したレコンビプラスチン2Gを濃縮液状にしたものである。
その後、終点蛍光を測定することにより、分析性能に対する凝固因子の効果を評価した。第V/Va因子は、第Xa因子及びカルシウムとプロトロンビナーゼ複合体を形成する補因子である。この複合体はプロトロンビンを切断し、活性型のトロンビンに変換する。因子Vはトロンビンによって調節され、正のフィードバックループ上でトロンビンによって直接活性化され、トロンボモジュリン-タンパク質C複合体(補因子タンパク質Sとの)経路を介してトロンビンによって間接的に非活性化される。
第Va因子を0~100単位/ミリリットルの濃度で添加し、異なる既知のINR値(5.0、2.8、及び3.8)を有する臨床血漿サンプルから得られるシグナルに及ぼす効果を観察した。第Va因子の添加は、主に観察されたシグナルを増加させた。しかし、高濃度(50単位/ミリリットル又は100単位/ミリリットル)において、一部のサンプルで得られた信号(終点で測定した蛍光)がわずかに減少した。
第X/Xa因子は、第VIIa因子/組織因子複合体によって活性化される別の凝固因子である。第Xa因子は、第Va因子及びカルシウムと結合してプロトロンビナーゼ複合体を形成し、プロトロンビンをトロンビンに変換する。第Xa因子を0~15マイクログラム/ミリリットルの濃度で添加し、異なる既知のINR値(7.8、2.5、及び3.8)を有する臨床血漿サンプルから得られるシグナルに及ぼす効果を観察した。第Xa因子を添加すると、15マイクログラム/ミリリットルのみでわずかにシグナルが減少したが、観察されたシグナルは増加した。
【0079】
プロトロンビンは、トロンビンの不活性ザイモゲンである。トロンビンへの変換率は、血栓時間をモニターするために測定するものである。プロトロンビンを0~0.2ミリグラム/ミリリットルの濃度で添加し、異なる既知のINR値(2.1、3.9、及び6.5)を有する臨床血漿サンプルから得られるシグナルに及ぼす効果を観察した。プロトロンビンの濃度が高くなると、観察された信号が増加する。
もう一つの凝固因子であるカルシウムについても調査した。0~25ミリモルの濃度でCa2+を添加し、プレーンな全血サンプルから得られるシグナルへの影響を観察した。他の多くの凝血因子と同様に、カルシウムはシグナルに対して最初に増強効果を示し、その後、濃度が高すぎると抑制効果を示した(12ミリモル超)。
調査された他の凝固因子は、第VIIa因子、第IXa因子、及び第XIa因子であった。
これらの凝固因子のうちの1つ又は複数は、任意に、分析のカートリッジ内の品質管理チャネルで使用できる。
【0080】
マトリックス中の異なる担体分子が、分析速度に及ぼす影響を評価する研究が実行された。理論に縛られることを望まず、本発明者らは、担体分子がR22124を保持するための足場として機能すると考えている。また、本発明者らは、担体分子が選択的フィルタとして作用し、トロンビン(又は他の分析物)が製剤中に入ることを可能にしながらも、赤血球又は他の粒子状物質/成分がマトリックス中に入るのを防ぐことができると考えている。従って、R22124、トロンビン、及び任意に組織因子の相互作用が好ましい。
高分子担体分子であるヒドロキシエチルセルロース(HEC)を、マトリックスに組み込む効果を調べた。HECは、エチレンオキサイドとアルカリセルロースを反応させて生成される非イオン性の水溶性高分子である。HEC溶液は、疑似塑性又は剪断薄化である。HECは、冷水又は温水に容易に溶解し、様々な粘度の透明な溶液を得ることができる。更に、低~中分子量タイプは、グリセロールに完全に可溶であり、60%までのエタノールを含むハイドロアルコール系に良好な溶解性を有する。HECは、一般的に有機溶媒に不溶である。HECは、異なる長さ及び分子量のポリマーとして見つけることができる。本実施例では、HECは720,000グラム/モルの平均分子量を有していたが、当業者が理解するように、他の市販の分子量、例えば90,000、250,00、又は1,300,000グラム/モルが存在する。
【0081】
図9は、マトリックスの担体分子としてHECを添加した場合の効果を示している。図9Aは、35%トレハロース、若しくは1%、0.5%、又は0.25%の濃度のHECのいずれかがマトリックスに含まれていたときに血液サンプルから生成された終点信号を示す。図9Aが示すように、トレハロースをHECに置き換えると、生成されたシグナル(すなわち、終点蛍光信号)が増加する。図9Bは、マトリックス中のトレハロースをHECが置換した場合の改善された信号を示す。Bについては、Aと同じ濃度で使用した。国際特許第2018/002668号明細書に記載されるリーダを用いて、図9A及び9Bについて終点信号を得た。
その後、マトリックス中で使用した場合の血栓時間に対するHECの分子量の影響を調査した。図9Cは、INR値が4.2のサンプルでは、マトリックス中のHECの分子量を減少させると、血栓時間が減少することを示している。図9Dに示すように、血栓時間に対するHECの分子量の効果を更に調査した。この図では、0から8の間の既知のINR(対照系を用いて測定したもので、この図ではコアグチェック(登録商標) XSシステム、ロシュ、x軸を参照)を有するサンプルを、本発明の実施形態に基づく分析において使用し、マトリックスの製剤は、分子量750kDaの1%HEC、又は分子量90kDaの1%HECのいずれかを含んでいた。図9Cに基づいて、分子量を減少させると、血栓時間は減少した。
本発明者らは、トレハロースの非存在下では、HECは非常に粘性が高いことを観察した。光学的に透過な部分のカバレッジを助けるために、マトリックスにHEC及びトレハロースを添加して安定性を提供し、遊離R110の堆積を助けることを決定した。HECと組み合わせた場合、トレハロースは、従来研究されていたものよりも低い濃度、例えば10%の濃度で含まれていた。
【0082】
他の担体分子も評価した。分析は、0.3%HEC、5%トレハロース、及び20%PEG(ポリエチレングリコール)(同様にトリトンX100、遊離R110、及び組織因子)を含むマトリックスを使用して全血サンプルで試験した。この図から分かるように、上述したマトリックスを用いて、本発明に基づく方法によって決定される血栓時間及びINRは線形に関連している。
リファレンスシステム(ACL elite-血漿ベースのラボアナライザー、ヴェルフェン、英国)によって測定されたINRが10~12秒で本発明に基づくリーダで検出されたのに対し、INRが10であるのは、70~90秒の間で検出されたからである。参照INR値は、ハートバイオロジカルINR補正キット(ハートルプール、英国)に従って、参照血漿サンプル及び適切に希釈された対照血漿サンプルによって提供された。これは、本発明に基づく方法を用いて、高いINRを100秒未満で測定できることを示している。
また、アビセルも、マトリックスの潜在的な担体分子として研究された。アビセルRC-591は、水分散性有機ハイドロコロイドとして作用する微結晶セルロース(MCC)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を噴霧乾燥したものである。水及び穏やかなせん断の存在下で、アビセルRC-591粉末粒子は膨潤し、その後、解膠され、セルロース微結晶の分散体を形成する。これらの微結晶が安定した格子構造を作り出している。
微結晶の大きさが小さいため(分散している結晶の約60%は<0.2マイクロメートル)、各粉体粒子には多数の微結晶が詰め込まれている。微結晶の小粒子が多いことで、沈降速度が遅く均一になり、懸濁安定性が向上し、固充填(hard packing)がなくなる。また、分散性及び安定性も兼ね備えている。
【0083】
HEC及び/又はトレハロースをアビセルで置換した場合の分析率への影響を調査した。既知のINR値を有する対照血液サンプルを、光学的に透過な部分の内腔表面に局在するマトリックス中の担体分子が、HECとトレハロース、HECのみ、アビセルとトレハロース、又はアビセル単独からなる分析で試験した。図10Bに観察されるように、マトリックス中のアビセルの使用は、分析時間を短縮する。従って、8のINRは、HECを含むマトリックスと比較して、アビセル及びトレハロースマトリックスで約140秒速く検出される。
その後、CMCがアビセルRC-591の成分であることから、光学的に透過な部分の内腔表面に局在化した場合のマトリックスの担体分子としての高分子カルボキシメチルセルロース(CMC)の効果を検討した。図11Aは、同一の既知のINR値(以前にコアグチェック(登録商標) XS参照システムを使用して決定されたINR値、x軸を参照)を持つサンプルで試験した場合の分析の凝固時間(y軸を参照)に対するマトリックス中の異なる濃度のCMC(0.1%、0.2%、又は0.5%)の影響を示している。
試験したサンプルは、ハートバイオロジカルINR補正キット(ハートルプール、英国)に従って、INRが既知の対照血漿サンプル及び適切に希釈された対照血漿サンプルによって提供された。この図では、アビセルRC-591の代わりにCMCを使用した。分析時間は、アビセルRC-591を使用して達成されたものと同等であることが判明した。分析時間は、INR値1~5でも10~60秒以内だった。
【0084】
マトリックス中のCMC濃度の影響について、更に調査を実行した。0.4%CMC又は0.2%CMCをマトリックスに組み込み、同一の既知のINR値(ACL INR参照システムを用いて以前に測定されたもの)を有するサンプルについて分析を実施した。0.4%のCMC濃度では、0.2%のCMC濃度で観察されたものよりも長い血栓時間(y軸に対して秒でプロットされている)が得られた(図11B)。両方のCMC濃度に対して、分析は広い範囲のINRを測定できた(1~10.3までの範囲のINRは、図11Bに示されている)。
図11A及び図11Bで使用したCMCは、質量及び純度が不明なポリマーの混合であった。更なる探索の結果、いくつかの純粋な形のCMCは、異なる程度の置換度で同定された。ポリマーの置換度(DS)とは、塩基単位(縮合ポリマーの場合)あたり、又は単量体単位(付加ポリマーの場合)あたりの置換基の平均付着数のことである。使用されている市販のCMCのいくつかは、DSが0.7(すなわち、10個のアンヒドログルコース単位あたり7個のカルボキシメチル基の平均)である。分析は、製剤中の異なるDS’(0.7DS、0.9DS、又は1.2DS)でCMCを使用して、同一のINR値を有するサンプルに対して実施した。図11Cは、既知のINR値(ACL参照システムを使用して以前に決定されたように)に対してプロットされたように、これらの分析(y軸を参照)からの血栓時間を示している。3つのCMC形態から全て同様の分析率を提供されたが、置換度を上げると血栓時間が延長することが観察された。
【0085】
光学検出のための多孔質マトリックスのための担体分子の組み合わせが、更に検討された。CMC及びPEGの濃度の違い、並びに多孔質マトリックス中のCMC及びPEGの比率が光検出に及ぼす影響を評価した。特に、マトリックスの溶解度、つまり検出のための試薬の分布を考慮した。
試験した製剤は、0.83%~3.33%の濃度のPEG及び0.08%~0.12%の濃度のCMCを含んでいた。製剤は、光検出のために多孔質マトリックス中で使用された。多孔質マトリックスは、他の成分に加えて、蛍光試薬R22124を構成していた。2.7の対照的なINRを有する血液のサンプルを、マトリックス中のCMC及びPEGの異なる比率を試験するために使用した。
PEG及びCMCの比率が高い場合、すなわち、多孔質マトリックスが低濃度のCMC及び高濃度のPEGを含むいる場合、蛍光の増加及び蛍光の分布が観察された。これらの結果(0.08% CMC及び0.83% PEG、又は0.08%CMC及び1.67PEG)は、図12の画像の下2段に示されている。
図12の画像は、血液サンプルが検出領域に入ってから20秒後、30秒後、及び40秒後(左から右に連続して)に検出領域内の多孔質マトリックスに検出された蛍光を示している。本実施形態では、検出領域の光検出用の多孔質マトリックスである多孔質マトリックスを1つだけ使用した。
画像の上段は、多孔質マトリックスが0.08%のCMC及び0.83%のPEGを含む場合に観察される蛍光を示している。画像の中段は、多孔質マトリックスが0.08%のCMC及び1.67%のPEGを含む場合に観察される蛍光を示している。画像の下段は、多孔質マトリックスが0.08%のCMC及び3.33%のPEGを含む場合に観察される蛍光を示している。
理論に縛られることを望むことなく、本発明者らは、PEGが多孔質マトリックスの濡れ性を助け、一方、CMCがマトリックスの結合性を助ける、つまりマトリックスをマイクロ流体チャネルの表面に局在化させることを助けると考えている。2つの成分の比率を最適化することで、表面への局在性に優れたマトリックスを実現でき、濡れ性が改善され、分析対象物及び結果として得られる反応生成物の均一な分布が可能になる。これは、蛍光信号の改善に役立つ可能性がある。
【0086】
本発明者らが研究したもう一つの分子が、ヘパリンである。ヘパリンは、血栓の形成を防ぐ抗凝固剤である。現在、ヘパリンには、未分割ヘパリン(UFH)及び低分子ヘパリン(LMWH)の2種類がある。ヘパリンは酵素阻害剤であるアンチトロンビンIII(AT)に結合し、構造変化を起こし、反応性部位ループの柔軟性を高めることで活性化する。その後、活性化されたATは、トロンビン、第Xa因子、及び他のプロテアーゼを不活性化する。ATによるこれらのプロテアーゼの不活性化率は、ヘパリンの結合により、最大で1000倍に増加する。
ヘパリンの阻害剤として既知なのは、臭化ヘキサジメトリン(HMB又はポリブレン)である。INR値が既知のサンプルの血栓時間に対するヘパリンエノキサパリンの効果を評価した。3Uの濃度のヘパリンエノキサパリンをマトリックスに添加した場合(湿った状態で、その後乾燥させた場合)、エノキサパリンを添加しない分析(既知のINR値を持つサンプルを試験した)と比較して、血栓時間を増加させた。例えば、INR値が約4.4の場合、マトリックスにエノキサパリンを含む場合の血栓時間は、マトリックスにエノキサパリンを含まない場合の血栓時間よりも約70秒長かった。0.25ミリグラム/ミリリットルのポリブレンの添加が本効果を阻害し、エノキサパリン及びポリブレンをマトリックスに含む分析から得られた血栓時間は、対照マトリックスから得られた血栓時間と同等であった。
【0087】
マトリックスの乾式製剤は、多くの重要な差別化の利点をもたらす。
第一に、乾燥した製剤は粘性があり、血流に耐えることができ、その結果、マトリックスは最適な検出のために光学検出装置と整列したままになる。理論に縛られることなく、本発明者らは、マトリックスの粘性が、マトリックスの活性成分を保持するためのポリマー足場として作用すると考えている。
乾燥したマトリックスは、多孔質である。マトリックスの多孔性は、赤血球などのサンプル中のより大きな成分の侵入を防ぎながら、必要な分析物又は分析物反応生成物(この実施形態ではトロンビン)の侵入を可能にする。これにより、迅速かつ感度の高い分析が可能になる。
乾燥したマトリックスを使用することにより、マトリックスは、マイクロ流体チャネルの光学的に透過な部分の内腔表面に局在化させることができる。これにより、光干渉を防ぐことができる。マトリックスが光検出装置に近接しているため、本分析は、既知の分析に対して改善された感度を有する。理論に縛られることを望むことなく、本発明者らは、従来技術で既知のものよりもはるかに速い分析が可能になると考えており、分析はトロンビン活性を運動学的に検出できるので、サンプル中の他の成分による干渉は克服される。
更に、マトリックスは非常に粘性が高い。従って、多孔質だが、マトリックスは、サンプル、例えば液体と接触しても位置は維持される。これにより、試薬/試薬反応生成物がサンプルの近くに局在し、迅速かつ感度の高い分析が更に容易になる。
【0088】
リアルタイム運動量測定
マトリックス、サンプル、及び光学検出器が近接していることは、蛍光信号によって検出されるプロトロンビンからトロンビンへの変換を運動学的に検出することができることを意味する。
本分析では、プロトロンビンからトロンビンへの変換速度は、INR値が低い(例えば、1INRの値:すなわち、より高い凝固レベル)サンプルの方が、INR値が高い(例えば、10INRの値:すなわち、より低い凝固レベル)サンプルよりも速い。従って、本分析は終点を必要とせず(すなわち、一定の培養期間の後に単一の測定が実施され、これは本発明の範囲内で想定されているが)、その代わりに、閾値又は一定の速度に達した後に分析を停止できる。この結果により、迅速かつ効率的な分析が可能になる。
サンプルが検出領域を正常に満たした後、0の開始時間を提供し、リーダによる複数の光学測定値の取得がトリガされる。複数の光学的測定値の取得中に、時間が凝固時間としてカウントされる。プロトロンビンからトロンビンへの変換の継続による蛍光の増加は、閾値に達するまで継続できる。閾値信号に達すると、光学測定は停止する。
図13Aは、本発明の分析に基づく概略モデルを示す。この図は、トロンビン変換(すなわち、プロトロンビンからトロンビンへの変換)の高レベルが低いINR値に等しい一方で、トロンビン変換の低レベルが高いINR値に関連していることを示している。図13Bは、血栓時間(PT)及びINR値との間の直線的な関係を示すための模式図であり、血栓時間が低い場合はトロンビン変換のレベルが高くINR値が低いことを示し、血栓時間が高い場合はトロンビン変換のレベルが低くINR値が高いことを示す。試験したサンプルは、対照血漿サンプル(及びハートバイオロジカルのINR補正キット(ハートルプール、英国)によって提供されるINR値が既知の適切に希釈された対照血漿サンプル)であった。
【0089】
光学検出に及ぼすサンプルの影響
多くの既知の分析では、検出実行前に全血サンプルから血漿を分離する必要がある。これには、費用及び時間がかかる。図14は、本発明の分析が、シト化血漿、血漿キャリブレーター(例えば、本明細書に記載されているようなINR補正キットによって提供される)、及び臨床全血を含む様々な異なるサンプルを試験するために使用され得ることを示している。また、本発明に基づく分析を用いて得られた値を、他の既知の分析と比較する図である。
図14A及び図14Bは、クエン酸血漿、血漿校正器、及び臨床全血を含む様々な異なるサンプルを試験した場合の結果を示す。また、同様のサンプルを、上述したようなACL装置で試験した。図14Aは、y軸ラベル「ルミラPT(秒)」は、本発明に基づく方法を用いて得られた秒単位の未較正PTを示す。図14Bは、y軸は、本発明に基づく方法を用いて決定され較正されたINR値を示す。x軸ラベル「ACL INR」は、ACLエリートリファレンスシステムを用いて計算されたINR値を表している。
図14Cは、本発明に基づく方法による臨床全血及び対照血液サンプルから得られた秒単位の非較正PTを、コアグチェック(登録商標)XSシステムを使用して同じサンプルから得られたINR値と比較して示している(y軸)。
この図から明らかなように、この分析は血液又は血漿サンプルを検査する場合にも同様に有効であり、例証は結果に影響を与えない。有利なことに、この分析は幅広いINR値の範囲で直線性を維持している。
【0090】
分析範囲の拡大
分析の高速化により、非常に低いトロンビン活性の非常に高いINRサンプルの測定が可能になった。従って、本発明の実施形態に基づく分析は、図15に示すように、有利には、臨床サンプルから非常に広い範囲のINR値を測定できる。この図に示すように、高いINR値でも直線性が維持されている。
【0091】
INRの計算
図16Aは、本発明の分析の実施形態における、血栓時間(トロンビンレベルとの関係で)の計算方法を示す。時間0は、サンプルが検出領域を満たした時点を示す。サンプルが検出領域を満たすと、乾燥した多孔質マトリックスが湿潤し、凝固カスケードがトリガされる。プロトロンビンからトロンビンへの変換、及びそれに続くマトリックス中のR22124の切断による蛍光信号の生成を誘発し、この例では525ナノメートルで発光している。プロトロンビン時間(又はINR)値は、血栓発症時に測定(赤点)され、平均化されたベースラインよりも標準偏差が6×6であると定義されていた。図16Bは、血栓の発症を示す断面16Aの拡大形態を示す。
代替的なINR方法は、分析較正スキームを介してINR結果を導出するためのPT値の決定に基づいている。PTは、カートリッジに含まれるトロンボプラスチンによって開始される外因性凝固カスケードの活性化にサンプルが反応するまでの時間を秒単位で表している。
一連の計算は、カスケード反応の進行に伴って装置によって捕捉された蛍光信号データに適用され、このシーケンスはPTアルゴリズムと呼ばれる。
PTアルゴリズムは、以下のパラメータ及びステップに基づいてもよい。
【0092】
コードパラメータ
start_wl = 515 #含まれる最小波長
end_wl = 530 #含まれる最大波長
threshold1 = -300 #血液充填判定基準値
threshold2 = 1000 #血栓時間の初期推定値
threshold3 = 200 #血栓時間の最終推定値
loCut = 0.35 #低水準回帰データカット(例:0.35は35%)
hiCut = 0.65 #高水準回帰データカット(例:0.65は65%)
PT時間 = Tclot - T0
Tsの決定: Tsはサンプルの到着を示す信号の最初の降下であり、サンプルが測定チャンバ内に移動し始めることによって引き起こされる。
T0の決定: T0は、検出領域がほぼサンプルでいっぱいになった時間を示す。チャンバ内の試薬とサンプルの混合開始を表し、PT時間を計算するための反応時間の開始として使用される。
T100の決定: T100は、収集したデータポイントセットの中に血栓形成のポイントが確実に含まれていることを示す十分な信号が上昇していることを示している。
T17000の決定:計器は、T0値を17,000カウント超えるデータポイントが発見された場合には,以下の血栓時間抽出に進まなければならない。
T100+30sの決定: 計器は、T100が検出されてから30秒以上経過した場合には、以下の血栓時間抽出に進まなければならない。
【0093】
血栓時間抽出
本装置は、T35(loCut)及びT65(hiCut)の間のデータポイントに対して線形回帰を実行し、ベースライン補正のための傾き及び切片を決定するものとする。
注記:T35は、T0とT100の間の35%に位置している。T65は、T0とT100の間の時間の65%に位置しており、リーダは、オフセット及びスロープをすべてのデータポイントに適用して、ベースライン補正されたデータポイントのセットを形成しなければならない。
リーダは、ベースライン補正データの中で、カウント値が200単位を超えて上昇するT50以降の最初の点を見つけるものとする。
リーダは、今回をTclotとして記録するものとする。
リーダは、Tclotに記録された時間値からT0に記録された時間値を減算してPT時間を算出する。
ロット較正ファイルのINR較正表で与えられた較正を、測定したPT時間に適用してINR値を求める。
【0094】
概要
上記のSD法に代わるものとして、ベースラインが常にフラットになるように補正された固定閾値である。
また、全ての期待されたステップが期待通りに発生し、ストリップ/分析/メーターのワークフローに関連していることを保証するエラートラップメカニズムと同様に、検出可能な過渡現象(ドロップ、スロープ)の特徴もある(例えば、所定の時間内にサンプルが到着する、サンプルの破損がない、スロープが所定の時間内に特定の信号に到達する、タイムアウトなど)。
【0095】
製剤の安定性
図17Aは、本発明の実施形態に基づく乾燥多孔質マトリックス(組織因子、ローダミン11、及びトレハロース、特に他の成分を含む)の、45℃で最大39週間保存した後の安定性プロファイルを示す。この温度で39週間までの乾燥マトリックスの保存は、それらのマトリックス及び既知のINR値を有するサンプルを使用した場合に、分析によって計算された血栓時間に影響を与えなかった。
図17Bは、5~70℃の温度で12日間保存した後の本乾燥マトリックスの安定性プロファイルを示している。60℃までの温度で120日間保存した後も、血栓時間は一定していた。
複数の多孔質マトリックスを含む実施形態では、各多孔質マトリックスの配合は同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、光学的変化/信号を発生させる多孔質マトリックスは、より粘性のある製剤を有してもよく、及び/又は他の多孔質マトリックスよりも溶解性が低くてもよい。例示的な多孔質マトリックスの配置は、低溶解度の製剤を有する光学的変化/信号を生成するための多孔質マトリックス(すなわち、第2の多孔質マトリックス)と、低溶解度の製剤を有する検出領域の外側に配置された第1の多孔質マトリックスとを含んでもよい。
光学的変化/信号を生成する多孔質マトリックスのための例示的な製剤は、0.20%CMC、5%トレハロース、33.1%トロンボプラスチン(トロンビンの検出用の実施形態の場合)、及び0.125ミリモルのR22124を含んでいてもよい。第2の多孔質マトリックスは、5%のトレハロースを含んでていてもよい。
複数の多孔質マトリックスが想定される場合、いくつかの実施形態では、多孔質マトリックスはPEGを含まない場合がある。
他の配合も想定できる。
【0096】
実施例2
本発明は、他の分析、例えば全血などのサンプル中のコレステロールレベルの決定などの動態分析に使用できると想定される。
図18及び19は、コレステロールの検出に利用され得る経路及び成分の例示的な例を示す。検出用のコレステロールは、遊離コレステロール及び/又はコレステリルエステルを含んでいてもよい。
検出対象の分析物がコレステロールエステルである場合、このエステルを酵素であるコレステロールエステラーゼと反応させて遊離コレステロールを生成できる。
コレステロールが酵素コレステロールオキシダーゼの存在下であると、次のような化学反応が起こる:
【化2】
上記反応から発生したH22は、酵素ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)によってH2Oに変換でき、その副産物は、酸化された試薬反応生成物をもたらす試薬を酸化し、光信号を放出するために使用できる。試薬を酸化させることで、光信号を発生させることができる。本実施例では、試薬は酸化時に蛍光を発する蛍光試薬である。一実施形態では、この蛍光試薬は、図19に示すように、ジヒドロホルダミン123である。ジヒドロローダミン123は、緑色の蛍光を示すカチオン性ローダミン123に酸化することができる、帯電していない非蛍光活性酸素種(ROS)指示薬である。ジヒドロローダミン123は、サーモフィッシャーサイエンティフィック、シグマアルドリッチ、及びアブカムを含む様々な供給者から市販されているが、これらに限定されない。
従って、本発明の多孔質マトリックス/マトリックスは、コレステロール及び/又はコレステロールエステルのレベルを検出するために、上記の成分を含むことができる。例えば、コレステロールの検出のために、多孔質マトリックスは、コレステロールオキシダーゼ、HRP、及びジヒドロホルダミン123を含み得る。コレステリルエステルの検出のために、多孔質マトリックスは、更に酵素コレステロールエステラーゼを含むことができる。
【0097】
実施例1に記載されているように、成分は、1つの多孔質マトリックス内にあってもよく、干渉を低減するように分離又は分離解除されてもよく、又は各多孔質マトリックスの物理的及び/又は化学的性質を変化させることが望まれる場合がある。コレステロール分析で使用するための適切なカートリッジアーキテクチャは、図7及び8に示されているが、他のカートリッジアーキテクチャが想定され得ることが理解される。
【0098】
コレステロール分析の一実施形態を、以下の図7に関連して説明する。
サンプル、例えば血液は、入力ポート303を介してカートリッジと接触し、カートリッジ内に導入される(しかし、他の形状も想定できることは評価される)。
血液サンプルが入力ポート303に導入されると、血液サンプルは、ベントアーム318に遭遇するまで、毛細管作用によって第1の部分304、拡大部分314、及び第2の部分316を満たし、その時点で毛細血管血流は停止する。血液サンプルの更なる下流への移動は、空気/ガス充填チャンバ310の窪みにより、血液サンプルがベントアーム318を過ぎて、光学的変化/信号(図示せず)を発生させるための多孔質マトリックスを含む検出領域326に流れるように、アクティブフィル機構により制御される。本実施形態では、光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックスは、検出領域326の上側管腔面に固定化されている。他の実施形態では、多孔質マトリックスは、下腔表面に固定化されていてもよいことが理解される。
【0099】
検出領域は、印刷特徴部によって囲まれていてもよく、この実施形態では、上述したように、分析への開始時間を決定するために、サンプルの流れを検出するために使用される。また、この実施形態では、印刷特徴部は、流量を変更するために、及び/又は下流のサンプルの流れを停止又は開始するために、アクティブフィル機構を停止、開始、減少、又は増加させるために、アクティブフィル機構を制御するために使用される。
血液サンプルが検出領域326に入ると、サンプル中に存在するコレステリルエステルは、多孔質マトリックス中の酵素コレステロールエステラーゼと相互作用して遊離コレステロールを生成する。その後、遊離コレステロールは、多孔質マトリックス中の酵素コレステロールオキシダーゼと相互作用して、コレステロール-4-エン-3-オン+H2O2を生成する。H22は、多孔質マトリックス中の酵素ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)によってH2Oに変換され、その副産物は、ジヒドロローダミン123を酸化するために使用され、ジヒドロローダミン123は多孔質マトリックス中に存在する。酸化ジヒドロローダミン123は、光学的に検出可能な信号であり、この例では蛍光信号を発する。その後、任意の光信号は、前述のように光学検出器を用いて検出される。光学検出器による検出は、印刷特徴部によって開始され、一旦検出領域326内のサンプルを検出すると、分析が開始される。
【0100】
他の実施形態では、2つ以上の多孔質マトリックスが利用されてもよい。例えば、チャネルは、第1の部分(領域A)と、第1の部分の下流に位置する第2の部分(領域B)と、第2の部分の下流に位置する第3の部分(領域C)とを有していてもよい。多孔質マトリックスは、各領域に配置されていてもよい。印刷特徴部は、各領域を分離してもよい。領域Cは、光学的変化/信号を生成するための多孔質マトリックスが配置されている検出領域326を含んでいてもよい。領域Aでは、多孔質マトリックスは試薬のコレステロールエステラーゼを含む。領域Bの多孔質マトリックスは試薬のコレステロールオキシダーゼを含み、領域Cの多孔質マトリックスは試薬のジヒドロホルダミン123及びHRPを含む。そのような実施形態では、サンプルは、チャネル304の第1の部分を充填し、下流側を領域Aまで充填する。領域Aでは、サンプル中に存在する任意のコレステリルエステルは、多孔質マトリックス中の酵素コレステロールエステラーゼと相互作用して遊離コレステロールを生成する。遊離コレステロールは、遊離コレステロールがcholest-4-エン-3-オン + H22を生成するために酵素コレステロールオキシダーゼと相互作用する領域Bを埋めるために下流のサンプルと一緒に流れる。
これらの反応生成物はサンプルと混合し、下流の領域Cを充填する。領域Cの多孔質マトリックスでは、H22は、酵素ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)によってH2Oに変換され、その副産物はジヒドロローダミン123を酸化するために使用され、その結果、光学的に検出可能な信号が発生する。その後、任意の光信号は、前述のように光学検出器を用いて検出できる。
あるいは、領域A、領域B、及び領域Cを有するよりも、カートリッジは、領域A及びBのみを有するため、2つの多孔質マトリックスのみを有してもよい。それらの実施形態では、領域Aの多孔質マトリックスは、コレステロールエステラーゼ及び/又はコレステロールオキシダーゼを含んでいてもよい。1つ又は複数の多孔質マトリックスを含む実施形態では、多孔質マトリックスのうちの1つのみが検出領域に堆積してもよい。しかし、他の実施形態では、1つ又は複数の多孔質マトリックスが検出領域に堆積されてもよい。
【0101】
図20は、本発明の実施形態に基づいて実施されたコレステロール分析の結果を示す。この実施形態では、多孔質マトリックスが利用され、検出領域の内腔表面に固定化されていた。この特定の実施形態では、多孔質マトリックスは、検出領域の下部内腔表面に固定化されていたが、代わりに検出領域の上部内腔表面への動員が想定され得ることが理解される。多孔質マトリックスは、成分であるコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、HRP、及びジヒドロホルダミン123を含んでいた。多孔質マトリックスには、担体分子としてトレハロースが含まれていた。
既知の濃度のコレステロールを含む10マイクロリットルのサンプルを入力ポートに添加し、サンプルが検出領域までチャネルを充填した。サンプルが検出領域に入ってから90秒後に光学測定を実施した。ピーク検出された光信号、本実施形態では蛍光信号(y軸)の総コレステロール濃度(x軸)に対するプロットを、図20Aに示す。図20Bは、図20Bのコレステロール濃度低下値を縮小してプロットしたものである。
【0102】
例示的なテストの記述
テストシーケンス1の概要:
1.カートリッジのリーダへの挿入。
2.リーダによるカートリッジガスチャンバの圧縮。
3.カートリッジへのサンプルの塗布、検出領域の下流に位置する印刷特徴部への能動充填(部分的なチャンバ減圧による)による充填。
4.検出領域の下流側に位置する印刷体の検出電極の湿潤により、試験開始のタイミングが決定されるとともに、更に下流側へのサンプルの流れを防止するためのストップフロー機構が開始される。
5.サンプルは、カートリッジの検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在する多孔質マトリックスを濡らし、マトリックスはサンプルの分析物又は分析物の反応生成物と反応可能な試薬を含む。
6.試薬は、サンプル中の分析物/分析物反応生成物と反応して、光信号を発生する試薬反応生成物を形成する。
7.複数の光学測定値は、閾値信号に達するまで、光学的に透過な部分に管腔外に配置された光学検出器によって取得される。
8.カートリッジガスチャンバに加えられた力による除去により、ガスチャンバは更に完全に減圧される。この力の除去によって、その後の安全な廃棄のために、全てのサンプルをカートリッジに完全に強制的に入れる。
【0103】
テストシーケンス2の概要
1.カートリッジのリーダへの挿入。
2.リーダによるカートリッジガスチャンバの圧縮。
3.カートリッジへのサンプルの塗布、検出領域の下流に位置する印刷特徴部への能動充填(部分的なチャンバ減圧による)による充填。
4.検出領域の下流側に位置する印刷体の検出電極の湿潤により、試験開始のタイミングが決定されるとともに、更に下流側へのサンプルの流れを防止するためのストップフロー機構が開始される。
5.サンプルは、カートリッジの検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在する多孔質マトリックスを濡らし、マトリックスはサンプルの分析物又は分析物の反応生成物と反応する試薬を含む。
6.試薬は、サンプル中の分析物/その分析物反応生成物と反応して、光信号を発生する試薬反応生成物を形成する。
7.光学的測定は、一定時間後に光学的に透過な部分に対して管腔外に配置された光学検出器によって実施される。各ストリップバッチ及び分析物チャネルは別々に較正されているため、信号は成分濃度に変換される。
【0104】
テストシーケンス3の概要
1.カートリッジのリーダへの挿入。
2.カートリッジへのサンプルの塗布、受動的な毛細管充填によるマイクロ流体チャネルの初期充填、及び検出ゾーンへの能動的な充填。
3.マイクロ流体チャネルの充填中に、サンプルはマイクロ流体チャネルの内腔表面に局在する第1の多孔質マトリックスを濡らし、サンプル中の分析物は第1の多孔質マトリックス中の試薬と反応する。
4.試薬と分析物の反応生成物は、第1の多孔質マトリックスの下流側を検出領域に充填するサンプルと混合する。
5.サンプルは、検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在する光学的変化/信号を生成するために第2の多孔質マトリックスを濡らし、マトリックスは分析物の反応生成物と反応できる試薬を更に含む。
6.更に、試薬は、サンプル中の分析物反応生成物と反応して、光信号を発生する試薬反応生成物を形成する。
7.複数の光学測定値は、閾値信号に達するまで、光学的に透過な部分に管腔外に配置された光学検出器によって取得される。
【0105】
テストシーケンス4の概要
1.カートリッジのリーダへの挿入。
2.カートリッジへのサンプルの塗布、受動的な毛細管充填によるマイクロ流体チャネルの初期充填、及び検出ゾーンへの能動的な充填。
3.サンプルは、検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在する光学的変化/信号を生成するために多孔質マトリックスを濡らし、マトリックスはサンプルの反応生成物と反応できる試薬を含む。
4.試薬は、サンプル中の分析物と反応して、光信号を発生する試薬反応生成物を形成する。
5.複数の光学測定値は、閾値信号に達するまで、光学的に透過な部分に管腔外に配置された光学検出器によって取得される。
【0106】
トロンビンテストシーケンスの概要
1.カートリッジのリーダへの挿入。
2.リーダの印加特徴部によるカートリッジのガスチャンバの圧縮は、カートリッジからガスを排出する。
3.カートリッジに血液サンプルを塗布する。印加特徴部によりガスチャンバに付与される力が低減される。その結果、ガスチャンバが部分的に減圧され、空気が再びガスチャンバに侵入する。アクティブフィル機構によって血液サンプルの一部をチャネルに沿って引っ張る。
4.血液サンプルの部分は、検出領域の下流側に位置する印刷特徴部に到達するまで下流側に移動し続ける。これは、サンプルの更なる下流側への流れを防止する境界として作用すると共に、サンプルの更なる下流側への流れを防止するストップフロー機構を開始する。
5.検出部の下流側に位置する印刷体の検出電極の濡れ具合によって、試験開始のタイミングが決定される。
6.血液サンプルは、検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在する光学的変化/信号を生成するために多孔質マトリックスを濡らし、マトリックスはR110を含む。R110のフィブリノゲンペプチドアームは、サンプル中に存在するトロンビンによって切断され、蛍光モノアミドを生成し、この蛍光モノアミドは、光学検出器によって放出された光によって励起され、蛍光モノアミドは、525ナノメートルで蛍光信号を放出する。
7.複数の光学測定値は、閾値信号に達するまで、光学的に透過な部分に管腔外に配置された光学検出器によって取得される。信号は成分濃度に変換される。
【0107】
トロンビンテストシーケンス2の概要
1.カートリッジのリーダへの挿入。
2.カートリッジに血液サンプルを塗布する。血液サンプルは、受動的な毛管と能動的な充填機構の組み合わせにより、マイクロ流体チャネルと検出領域に下流側に充填される。
3.血液サンプルは、検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在する光学的変化/信号を生成するために多孔質マトリックスを濡らし、マトリックスはR110を含む。R110のフィブリノゲンペプチドアームは、サンプル中に存在するトロンビンによって切断され、蛍光モノアミドを生成し、この蛍光モノアミドは、光学検出器によって放出された光によって励起され、蛍光モノアミドは、525ナノメートルで蛍光信号を放出する。
4.複数の光学測定値は、閾値信号に達するまで、光学的に透過な部分に管腔外に配置された光学検出器によって取得される。
5.カートリッジガスチャンバに加えられた力での除去により、ガスチャンバは更に完全に減圧される。この力の除去により、その後の安全な廃棄のために、全ての血液サンプルをカートリッジに完全に強制的に入れる。
【0108】
コレステロールテストシーケンス1の概要
1.カートリッジのリーダへの挿入
2.リーダの印加特徴部によるカートリッジのガスチャンバの圧縮は、カートリッジからガスを排出する。
3.カートリッジに血液サンプルを塗布する。印加特徴部によりガスチャンバに付与される力が低減される。その結果、ガスチャンバが部分的に減圧され、空気が再びガスチャンバに侵入する。アクティブフィル機構によって血液サンプルの一部をチャネルに沿って引く。
4.血液サンプルの部分は、検出領域の下流側に位置する印刷特徴部に到達するまで下流側に移動し続ける。これは、サンプルの更なる下流側への流れを防止する境界として作用すると共に、サンプルの更なる下流側への流れを防止するストップフロー機構を開始する。
5.検出部の下流側に位置する印刷体の検出電極の濡れ具合によって、試験開始のタイミングが決定される。
6.血液サンプルは、ジヒドロホルダミン-123を含む製剤であるカートリッジの検出領域の光学的に透過可能な部分の内腔表面に局在する光学的変化/信号を発生させるための多孔質マトリックスを濡らす。ジヒドロホルダミン-123は、サンプル中に存在する過酸化水素によって酸化され、酵素コレステロールオキシダーゼによって触媒されたときにコレステロールの酸化生成物として形成された過酸化水素は、サンプル中に存在する過酸化水素によって酸化される。
7.酸化されたジヒドロローダミン-123は、試薬反応生成物である蛍光形態のカチオン性ローダミン-123を形成し、このカチオン性ローダミン-123は、光学検出装置によって放出された光によって励起され、ローダミン-123は、530ナノメートルで蛍光信号を放出する。
8.複数の光学測定値は、閾値信号に達するまで、光学的に透過な部分に管腔外に配置された光学検出器によって取得される。信号は、分析物、この実施形態ではコレステロールの濃度に変換される。
【0109】
コレステロールテストシーケンス2の概要
1.カートリッジのリーダへの挿入。
2.カートリッジへのサンプルの塗布、受動的な毛細管充填によるマイクロ流体チャネルの初期充填、及び検出ゾーンへの能動的な充填。
3.マイクロ流体チャネルの充填中に、サンプルはマイクロ流体チャネルの内腔表面に局在する第1の多孔質マトリックスを濡らし、サンプル中のコレステロールは第2の多孔質マトリックス中のコレステロールオキシダーゼと反応する。
4.コレステロールとコレステロールオキシダーゼの反応生成物は、第1の多孔質マトリックスの下流側を検出領域に充填するサンプルと混合する。
5.サンプルは、検出領域の光学的に透過な部分の内腔表面に局在する光学的変化/信号を生成するために第2の多孔質マトリックスを濡らし、マトリックスは分析物の反応生成物と反応できるジヒドロローダミン123を含む。また、第2の多孔質マトリックスは、この相互作用を促進するためにHRPを含む。
6.ジヒドロローダミン123は、サンプル中の分析物反応生成物と反応して、光信号を発生する試薬反応生成物を形成する。
7.複数の光学測定値は、閾値信号に達するまで、光学的に透過な部分に管腔外に配置された光学検出器によって取得される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B