(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】並列同調増幅器
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20240222BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240222BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H03F3/217 160
(21)【出願番号】P 2021517008
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 US2019053266
(87)【国際公開番号】W WO2020069198
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518085357
【氏名又は名称】ヤンク テクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコビッツ,ジョシュア・アーロン
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0226299(US,A1)
【文献】特開2017-093180(JP,A)
【文献】特開2017-046417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 50/40
H03F 3/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期信号を増幅する増幅器であって、
ゲートノードと、接地ノードに結合されたソースノードと、ドレインノードとを備えるスイッチングトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタの前記ドレインノードにバイアスを印加するように構成された直流バイアス回路と、
前記スイッチングトランジスタの前記ソースノード
と前記ドレインノード
との間に結合されたシャントキャパシタと、
前記スイッチングトランジスタの前記ドレインノード
と直列キャパシタ
の一方端との間に結合される直列インダクタと、
前記直列キャパシタ
の他方端に結合され、アンテナに並列に結合された並列キャパシタとを備え、
前記ゲートノードは、前記周期信号を受信するように構成され、
前記直流バイアス回路は、チョークインダクタを介して前記ドレインノードに結合され、
前記アンテナは、等価抵抗と直列の等価インダクタンスを含
み、
前記チョークインダクタと前記スイッチングトランジスタの寄生容量、前記シャントキャパシタと前記直列インダクタと前記直列キャパシタ、および、前記並列キャパシタと前記アンテナは、前記周期信号の基本周波数で共振するように構成される、増幅器。
【請求項2】
前記並列キャパシタと並列に結合され、前記直列キャパシタの他方端に結合される並列インダクタと、
前記直列キャパシタの他方端と第2の直列インダクタの一方端との間に結合される第2の直列キャパシタとをさらに備え、
前記並列インダクタと前記第2の直列キャパシタと前記第2の直列インダクタは、前記周期信号の基本周波数で共振するように構成される、請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
前記並列キャパシタは、前記アンテナの前記等価インダクタンスと実質的に共振するキャパシタンス値で構成される、請求項1に記載の増幅器。
【請求項4】
前記直列キャパシタは、前記周期信号の基本周波数で前記直列キャパシタを前記直列インダクタと実質的に共振させるキャパシタンス値で構成される、請求項1に記載の増幅器。
【請求項5】
シングルエンドまたは差動モードのE級の増幅器のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の増幅器。
【請求項6】
前記チョークインダクタは、前記スイッチングトランジスタの寄生容量と前記シャントキャパシタとを実質的に共振させるインダクタンス値で構成される、請求項1に記載の増幅器。
【請求項7】
前記直列キャパシタおよび前記並列キャパシタは、非共振負荷ネットワークのための前記アンテナと共役整合するように同調される、請求項1に記載の増幅器。
【請求項8】
前記並列キャパシタおよび前記直列キャパシタに結合された変圧器をさらに備え、
前記変圧器は、前記アンテナの電圧振幅を、前記変圧器の一次巻線および二次巻線のターン比に比例してスケーリングさせる、請求項1に記載の増幅器。
【請求項9】
前記変圧器の前記一次巻線に並列の第1のキャパシタと、
前記変圧器の前記二次巻線に直列の第2のキャパシタとをさらに備え、
前記第1のキャパシタは、前記周期信号の基本周波数で前記変圧器の前記一次巻線と実質的に共振するように構成され、
前記第2のキャパシタは、前記周期信号の基本周波数で前記変圧器の前記二次巻線と実質的に共振するように構成される、請求項
8に記載の増幅器。
【請求項10】
前記スイッチングトランジスタの前記ドレインノード
と、複数の直列キャパシタ
の一方端との間にそれぞれ結合される複数の直列インダクタと、
複数のアンテナと、
前記複数の直列キャパシタ
の他方端および前記接地ノードに
それぞれ結合される複数の並列キャパシタとをさらに備え、
前記アンテナの各々は、等価抵抗と直列の等価インダクタンスを含み、
前記複数の並列キャパシタの各々は、対応するアンテナの等価インダクタンスおよび等価抵抗に並列に結合される、請求項1に記載の増幅器。
【請求項11】
前記アンテナのうちの少なくとも1つは、残りの前記アンテナとは異なる等価インダクタンスを有する、請求項
10に記載の増幅器。
【請求項12】
前記並列キャパシタの各々は、対応するアンテナの対応する等価インダクタンスと実質的に共振するキャパシタンス値で構成される、請求項
10に記載の増幅器。
【請求項13】
前記複数の並列キャパシタおよび前記複数の直列キャパシタ
の他方端に結合される複数の変圧器をさらに含む、請求項
10に記載の増幅器。
【請求項14】
前記変圧器のうちの少なくとも1つは、残りの前記変圧器のターン比とは異なるターン比で構成される、請求項1
3に記載の増幅器。
【請求項15】
第2のゲートノードと、前記接地ノードに結合された第2のソースノードと、第2のドレインノードとを備える第2のスイッチングトランジスタと、
前記第2のスイッチングトランジスタの前記第2のドレインノードにバイアスを印加するように構成される
第2の直流バイアス回路と、
前記第2のスイッチングトランジスタの前記第2のソースノード
と前記第2のドレインノード
との間に結合される第2のシャントキャパシタと、
第2の直列キャパシタ
の一方端と前記第2のスイッチングトランジスタの前記第2のドレインノード
との間に結合される第2の直列インダクタとをさらに備え、
前記第2のゲートノードは、前記周期信号と位相が略180度ずれている信号を受信するように構成され、
前記第2の直流バイアス回路は、第2のチョークインダクタを介して前記第2のドレインノードに結合され、
前記並列キャパシタは、前記直列キャパシタ
の他方端および前記第2の直列キャパシタ
の他方端に結合され、前記アンテナに並列に結合される、請求項1に記載の増幅器。
【請求項16】
複数のアンテナをさらに備え、
前記複数のアンテナの各々は、前記直列キャパシタ
の他方端および前記第2の直列キャパシタ
の他方端に結合され、
前記複数のアンテナの各々は、前記アンテナに並列に結合される、請求項1
5に記載の増幅器。
【請求項17】
第1のキャパシタ
の一方端に直列に結合された第1のインダクタと、
他方端が前記並列キャパシタに結合され、
一方端が第2のキャパシタ
の他方端に直列に結合される第2のインダクタと、
第3のキャパシタに並列に結合される第3のインダクタとを備え、
前記第1のインダクタは前記直列インダクタであり、
前記第1のキャパシタは前記直列キャパシタであり、
前記第1のインダクタおよび前記第1のキャパシタは、前記周期信号の基本周波数で実質的に共振するように構成され、
前記第2のインダクタおよび前記第2のキャパシタは、前記周期信号の前記基本周波数で実質的に共振するように構成され、
前記第3のインダクタおよび前記第3のキャパシタは、前記周期信号の前記基本周波数で実質的に共振するように構成され、
前記第3のインダクタ
の一方端および前記第3のキャパシタ
の一方端は、前記第1のキャパシタ
の他方端、前記第2のキャパシタ
の一方端に結合され、
前記第3のインダクタの他方端および前記第3のキャパシタの他方端は、前記スイッチングトランジスタの前記ソースノードに結合される、請求項1
5に記載の増幅器。
【請求項18】
アンテナを駆動するための周期信号を増幅する増幅方法であって、
スイッチングトランジスタのゲートで前記周期信号を受け取ることに応答して、スイッチングトランジスタをオンまたはオフに切り替え、
チョークインダクタを介して直流バイアスレベルで前記スイッチングトランジスタのドレインにバイアスを印加し、
前記スイッチングトランジスタをオンまたはオフに切り替えることに応答して生成される前記スイッチングトランジスタの電圧波形および電流波形を調整して、前記電圧波形および電流波形の一時的重なりを低減させ、
フィルタを使用して前記周期信号の高調波成分をフィルタリングし、
前記周期信号の基本周波数で前記チョークインダクタと前記スイッチングトランジスタの寄生容量と、前記スイッチングトランジスタの前記ドレインを接地ノードに分流するキャパシタと、直列インダクタと、直列キャパシタと、前記アンテナと並列のキャパシタと、前記アンテナとを実質的に共振させることを含み、
前記調整は、前記チョークインダクタおよび、前記ドレインを接地ノードに分流するキャパシタで前記スイッチングトランジスタの前記ドレインに結合された直列インダクタと実質的な共振に応答して行われる、増幅方法。
【請求項19】
前記直列キャパシタと前記アンテナとの間に1:Nのターン比を有する電圧変圧器を結合することによって、前記アンテナの電圧振幅をN倍にスケーリングすることをさらに含む、請求項1
8に記載の増幅方法。
【請求項20】
無線給電システムであって、
周期信号を生成するように構成された信号生成回路と、
等価インダクタンスおよび等価抵抗を備えるアンテナと、
前記信号生成回路と前記アンテナと結合され、前記周期信号を増幅するように構成される
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の増幅器とを備え、
前記スイッチングトランジスタの前記ゲートノードは、前記信号生成回路に結合され、 前記スイッチングトランジスタと並列に結合された前記並列キャパシタは、前記直列キャパシタおよび前記接地ノードと結合される、無線給電システム。
【請求項21】
前記増幅器は、シングルエンドまたは差動モードのE級の増幅器のうちの少なくとも1つを備える、請求項
20に記載の無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本文書は、2018年9月26日に出願された「PARALLEL TUNED AMPLIFIERS」と題する米国特許仮出願62/736,843に対する優先権を主張する。これは、全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
再充電可能電源を使用するデバイスの数は、ますます増加しつつある。有線電力充電の解決に関連する運用問題を解決するため、近年、無線給電技術が導入され、主に携帯電話の充電に利用されている。これからの数年間、無線給電の使用は、さらに広範な電子機器のために、さらに増加することが期待されている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】共振誘導の無線給電システムのための従来のシングルエンドのE級の増幅器の代表的な概略図である。
【
図2】並列同調共振ネットワークを有するシングルエンドのE級の増幅器の代表的な概略図である。
【
図3】昇圧変圧器を有する並列同調のE級の増幅器の代表的な概略図である。
【
図4】複数のアンテナのために構成された並列同調のE級の増幅器の代表的な概略図である。
【
図5】差動モードにおける複数のアンテナのために構成された並列同調のE級の増幅器の代表的な概略図である。
【
図6】バンドパスフィルタを有する差動モードにおける複数のアンテナのために構成された並列同調のE級の増幅器の代表的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
無線給電システムは、2つ以上の誘導結合デバイス間でエネルギーを伝送するために電磁場を使用する。たとえば、1つのデバイスは、信号を増幅することによって電力を送信するために使用される電磁場を生成する充電ステーションまたはプラットフォームなどの送信機デバイスとすることができ、他方のデバイスは、共振誘導結合を通して電磁エネルギーを受信し、かつ受信機を動作させるために、または、その電源を充電するために、受信した電磁エネルギーを電気エネルギーに変換する受信機デバイスとすることができる。
【0005】
誘導コイルに基づく共振誘導技術は、高品質(「Q」)アンテナ(すなわち、アンテナの抵抗に対して高い誘導リアクタンスを有するアンテナ)のため、コイルの直径の2倍、3倍、または4倍もの距離のなどの中距離にわたって実質的な出力効率(たとえば80%を超える)を達成するように適合されている。アンテナ固有のQ値は、アンテナに蓄えられたエネルギーに対してアンテナに放散されたエネルギーの尺度であり、アンテナの効率の指標である。Q値が高いほど、アンテナはより良好に電磁場を結合することができ、その結果、より高い電力伝送を負荷へもたらすことができる。誘導コイルは、SAR(Specific Absorption Rates)およびFCC規制より低い電場で、さらにキロワット(kW)の範囲の電力レベルで、6.78MHzおよび13.56MHzなどのISMバンド(International Scientific Medical Bands)を含む様々な周波数範囲の物体を通ることが可能な電磁場を発生させるように設計し得る。高いシステム効率を維持するために、共振誘導技術に基づく無線給電システムは、D級またはE級の増幅器などのとても効率的な増幅器トポロジーによって駆動される必要がある。しかしながら、現在の増幅器設計における制限のため、現在の無線給電システムでは、無線給電における送信機デバイスおよび受信機デバイスが強力に電磁的結合される点で短い誘導結合距離に制限される。
【0006】
本明細書では、たとえば、スマートフォン、医療機器、産業装置、およびロボット(たとえば、マイクロボット)などの電子機器を充電するための無線給電伝送を提供するために使用することができる技法、システム、および機器について説明する。開示される技術の一実施形態は、共振誘導システムのための無線電力伝送を改善するように構成された、シングルエンドまたは差動のD級およびE級の増幅器トポロジーのための送信機並列同調共振LCネットワーク、負荷ネットワーク、およびインピーダンス整合ネットワークを含む。
【0007】
ある例示的な実装形態では、開示される技術は、電磁場を生成する送信アンテナまたはアレイアンテナに電気的に結合される電源を含む無線給電システムを提供する。送信機デバイスは、電源から電力を引き込むために、シングルエンドモードまたは差動モードのいずれかで、D級またはE級の増幅回路などのスイッチング電力増幅器を含む。負荷ネットワークおよび整合ネットワークは、送信アンテナが共振キャパシタに直列ではなく並列となるように同調され、増幅器の負荷ネットワークもまた同じ対応する共振周波数で同調される。LCタンクは、システム全体が、非共振負荷ネットワークを使用するよりもむしろ完全に共振で動作するように同調される。このようにして、送信機コイルの電圧は最大化され、高調波は低減する。LCタンクの電圧が最大となることによって、特に、送信機と受信機とが物理的に遠く離れている場合のように弱い結合共振誘導システムにおいて、送信アンテナ、または、受信機と結合されるより強い磁場を通って流れるより高い振動電流がある。ある実施形態では、送信アンテナの振動電圧をさらに増加させ、それによって送信機と受信機との間の磁束鎖交および電力伝送をさらに改善するために、変圧器も含めることができる。さらに、並列共振LCタンクを有することによって、増幅器は、増幅器の効率に劇的な変化を引き起こす可能性があり、また、増幅器を修復不可能に損傷させる可能性がある、受信機の位置の移動もしくは変化、または周囲環境からの容量性および誘導性の反射からより良好に保護される。
【0008】
無線給電システムのためのE級およびD級のような効率的な増幅器トポロジーを実用的に実現することは、それらは負荷インピーダンスにおける変化に高感度である傾向があるため、困難である。インピーダンスが設計値よりも数Ωだけ異なるか、または、設計値よりもわずかに大きいリアクタンスまたはわずかに小さいリアクタンスが存在する場合、増幅器の電圧波形および電流波形がさらに同位相になり、電力損失を生じさせるので、システム効率は劇的に低下し得る。さらに、波形が同位相になるにつれて、スイッチングトランジスタなどの構成要素の電圧または電流のスパイクにより、増幅器を修復不可能に損傷する可能性が増大する。
【0009】
高いQ値の共振誘導システムの場合、インピーダンス不整合および共振周波数シフトはより問題となり、無線給電システムにおいてかなりの電力損失を生じる。高いQ値を有する送信アンテナまたは受信アンテナの場合、帯域幅は非常に狭い。たとえば、500までのQ値を有するアンテナでは、帯域幅は10kHz未満であるため、共振周波数から10kHzを超えて離れて伝送される場合、50%を超える電力が失われ得る。さらに、受信機が送信機のより近くへ移動する場合、送信機と受信機とはより良好に結合するので、反射インピーダンスは増加する。増幅器の負荷ネットワークが、受信機の反射インピーダンスを駆動するために設計される場合、これは、電流波形および電圧波形を重複させ、システムにおける膨大な損失が生じるか、または修復不可能に損傷させる可能性がある。逆に、受信機が送信機からさらに離れて移動する場合、反射インピーダンスはゼロに近づく。再び、増幅器の負荷ネットワークが受信機の反射インピーダンスを駆動するように設計される場合、これは効果的に開放負荷を駆動し、増幅器を修復不可能に損傷する可能性がある。共振時にアンテナのQ値が増大するにつれて、結合は増大し、したがって、より多くの電力が負荷に伝送され得る一方で、反射インピーダンスにおいて、より大きな電位変化もあり、これは、これらの増幅器を有する高いQ値のシステムの駆動をより一層困難にする。さらに、増幅器に対して誘導反射または容量反射を誘発する物体が近くの環境に存在する可能性があり、これは増幅器を損傷する可能性があり、また、そのシステム効率を劇的に低下させる可能性がある。送信機への反射におけるこの電位変化は、特に無線給電システムのためのE級およびD級の増幅器トポロジーの設計にとって重大な課題を生み出す。
【0010】
この課題はまた、差動モードにおけるE級の増幅器にも存在し、その場合、ゲートドライバは、各個別トランジスタの放散される電力および電圧を低減するため、および伝送される総電力を増加させるため、単一のスイッチングトランジスタというよりも、プッシュプル構成の2つのトランジスタのゲートに矩形波またはパルスを提供する。差動モードにおけるE級システムは、トランジスタのゼロ電圧スイッチング(ZVS(Zero Voltage Switching))を最適化するため、有効電力か無効電力かにかかわらず、反射におけるあらゆる電位変化に対して、依然として非常に高感度である。増幅器におけるスイッチング構成要素の電流波形および電圧波形の重なりを最小化することを試みる任意の他の増幅器トポロジーおよびD級の増幅器トポロジーにも、同じことが当てはまる。
【0011】
増幅器技術におけるこれらおよび他の技術的問題のために、共振誘導技術に基づく様々な商業的充電製品(たとえば、誘導充電パッド)は、特定の態様に制限されてきた。いくつかの既存の誘導充電パッドは、当該パッド上に配置されたときに電子機器を充電する薄いマットのような物体として構成される。これらの工学的な課題のため、これらの製品は、非常に限られた充電距離、たとえば、通常、数センチメートル(たとえば、2~5cm未満)の範囲内の充電距離を有する。
【0012】
今日の共振誘導無線給電システムは、送信機コイルの誘導リアクタンスをキャンセルするため、直列共振同調を使用する。さらに、受信機の誘導リアクタンスは、同じ共振周波数で対応する直列キャパシタによってキャンセルされる。したがって、増幅器は、1つまたは複数の受信機が送信機に物理的に近接して配置されるとき、受信機からの実効インピーダンスを「見る」。これらの増幅器は、たとえば、受信機の移動からの反射インピーダンスの変動、新しい受信機の導入からの反射インピーダンスの変動、または周囲環境からの容量性/誘導性反射からの反射インピーダンスの変動に調整するために、典型的には、広いインピーダンス範囲で非共振に同調されるように設計される。しかしながら、送信機を非共振に同調することによって、結合は、非共振システムのための距離でさらに顕著に減少するので、特に、1つまたは複数の受信機が送信機から物理的にさらに離れて移動するにつれ、受信機に潜在的に伝送される電力の量が低減される。この問題は、上述で説明したような、より狭い帯域幅を有する高いQ値の送信アンテナおよび受信アンテナにとってさらに顕著である。無線給電システムが、非共振で動作するように設計される場合、それは、送信アンテナおよび受信アンテナの設計最適化を制限する。これは、アンテナのQ値が高すぎると、より強い結合のためインピーダンスの電位変化が大きくなるためである。増幅器は、反射インピーダンスの変化に対して非常に高感度であることから、これは増幅器を損傷する可能性があり、またはシステム効率を劇的に低下させる可能性がある。さらに、増幅器の非共振負荷ネットワークは、送信アンテナの共振周波数をシフトさせ得る。非常に高いQ値のアンテナでは、これは、動作周波数が共振送信アンテナの共振周波数と異なる場合に、損失をもたらす可能性がある。
【0013】
増幅回路の様々な実施形態が本文書で説明される。本説明は、これらの実施形態の完全な理解および実施可能な説明のために具体的な詳細を提供する。しかしながら、当業者は、説明される技術が、これらの多くの詳細を伴わずに、実施され得ることを理解するであろう。さらに、様々な実施形態に関連する説明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、いくつかの周知の概略的なトポロジーは、詳細に図示または説明されないことがある。以下で提示される説明で使用される専門用語は、特定の具体的な実施形態の詳細な説明と連結して使用されていたとしても、その最も広範な合理的方法で解釈されることが意図される。
【0014】
図1は、共振誘導の無線給電システムのための従来のシングルエンドのE級の増幅器100の代表的な概略図を示す。増幅器100では、トランジスタ110は、トランジスタのゲートノード117のゲート電圧がトランジスタ110の閾値電圧を超えるとき、トランジスタのドレインノード113をトランジスタのソースノード115に接続するスイッチのように動作する。すなわち、トランジスタ110によって実装されるスイッチは、ゲートノード117が正であるときに閉じて、電流がドレインノード113からソースノード115に流れることを可能にする。ゲートノード115が接地(またはトランジスタ110の閾値電圧未満)にあるとき、トランジスタ110によって実装されるスイッチは開いて、ドレインノード113からソースノード115への電流の流れを遮断する。
【0015】
シャントキャパシタ(Csh)120、RFチョーク(Lchoke)108、および追加のインダクタ(Le)130から構成される増幅器100の負荷ネットワークは、電流波形および電圧波形が互いに位相がずれるように同調され、これにより、トランジスタ110で放散される電力を大幅に低減するトランジスタ110のゼロ電圧スイッチング(ZVS)がもたらされる。負荷ネットワークが適切に同調されるときであって、スイッチが「閉」であるときトランジスタ110の電圧は最小化され、スイッチが「開」であるときトランジスタ110の電流は最小化される。これは、増幅器100の電力効率を90%超の効率に改善し、E級の増幅器トポロジーなどを無線電力伝送に適合するようにさせる。
【0016】
増幅器100において、発振器およびゲートドライバ集積回路(Vosc)102は、所望の共振周波数で矩形波パルスを供給することができる。矩形波パルスは、トランジスタ110のゲートノード117に印加される。矩形波の立ち上がりおよび立ち下がり時間を制御することによって、矩形波は、上述で説明したZVSの波形をより調整および同調するために、ダイオードおよび抵抗器などのデッドタイム回路を用いて調整され得る。チョークインダクタ(Lchoke)108は、到達する直流電源104から高周波信号をフィルタリング除去することによって直流電源104を保護するRFチョークであり、スイッチングトランジスタ110のZVSを生成するため、シャントキャパシタ(Csh)120および追加のインダクタ(Le)130と共に選択される。直列共振キャパシタ(Cs)122の値は、所望の共振周波数において、直列インダクタ(Ltxcoil)124によって表される送信アンテナのリアクタンスをキャンセルするように選択される。負荷抵抗器(RLoad)106は、増幅器100を含む送信機デバイスの近くに配置された受信機デバイスによって受信された反射インピーダンスを表す。受信機デバイス上において、受信アンテナおよび直列共振キャパシタ(
図1には図示せず)は、送信機デバイスへの反射インピーダンスが受信機デバイスの負荷またはRload(たとえば、30Ω)であるように、互いにリアクタンスをキャンセルする。たとえば、Vosc102が周波数6.78MHzでパルスを印加する場合、LCタンク(CsおよびLtxcoilを含む)の共振周波数を6.78MHzに同調することができ、Csを66.4pFに選択することができ、Ltxcoilを8.3μHに選択することができる。Lchokeは、直流電源104を保護するために100μHのような高いインダクタンスになるように選択することができる。Csは50pF、Leは1000nHとして、ゼロ電流スイッチング用の電圧波形と電流波形を設定するために選択され得る。
【0017】
増幅器100のトポロジーにはいくつかの問題がある。たとえば、受信機デバイスが実効の反射インピーダンスを誘導するため送信機デバイスの近くにないとき、電力を伝送する負荷はなく(すなわち、Rloadは0)、それは開回路をもたらす。その結果、電力は、送信機デバイスの構成要素を通して放散され、増幅器100を修復不可能に損傷する可能性がある大きな電力損失を生じる。これを補償するために、誘導充電パッドは、増幅器100のインピーダンスの範囲を増加させる回路を追加することができ、受信機デバイスが存在しない場合に増幅器100から引き出される電流を低減することができ、それによって送信機の構成要素への損傷を防止することができる。しかしながら、このような付加的な回路は、無線給電システムのための増幅器の開発、試作、および製造のコストを増加させる。
【0018】
別の問題は、増幅器100が有効および無効反射の両方の変化に対して極めて高感度であることである。上述で論じられたような追加の回路の使用に伴って動作インピーダンス範囲が増加しても、増幅器のZVSは誘導反射または容量反射によって非常に影響を受ける。直列キャパシタ(Cs)122および直列インダクタ(Ltxcoil)124が所望の共振周波数に同調されていても、共振LCタンク(CsおよびLtxcoil)は、チョークインダクタ(Lchoke)108、シャントキャパシタ(Csh)120、および追加のインダクタ(Le)130を含む非共振ネットワークに直接接続される。直列キャパシタ(Cs)122の値が、典型的には、直列インダクタ(Ltxcoil)124のリアクタンスを完全にキャンセルするように選択されることから、非共振ネットワークと共振LCタンクネットワークとの間に絶縁がない状態では、誘導反射または容量反射は、ZVS波形を劇的にシフトさせる可能性がある。すなわち、容量反射または誘導反射は、CsおよびLtxcoilのリアクタンスが互いに完全にキャンセルしあう点で増幅器スイッチング波形を直接的に変更することができる。誘導性または容量性反射は、たとえば、共振で完全に同調されるリアクタンスを有さない受信機デバイスの導入、対になった送信機に対しての受信機デバイスの位置の変化、または容量性または誘導性反射を誘発し得る周囲環境の物体からのものであり得る。ZVSでのシフトは、追加の高調波を引き起こし、増幅器のシステム効率を低下させ、および/または増幅器100を修復不可能に損傷する可能性がある。
【0019】
上述で特定された問題のために、従来の増幅器100は、弱い結合の無線給電システムには適しておらず、無線給電パッドなどの強く結合された無線給電システムにのみ適する。無線給電パッドの場合、送信機デバイスおよび受信機デバイスは、典型的には数mm以内で、繰り返し予測可能または予め定められた距離および向きで互いに近接して配置されるので、それらは強く結合する。送信機によって生成される電磁波が受信機によって強く結合されないように送信機および受信機が物理的に遠く離れ、および/または、方向付けられる弱い結合システムでは、実効の反射インピーダンスまたはRloadは非常に小さくなり得る。このような低いRloadの値は、増幅器が電力を伝送するのに非効率的である可能性があり、または増幅器に損傷をもたらす可能性がある。さらに、Rloadの適切な設計値は、たとえば、ユーザーが受信機デバイスを送信機に対して異なる距離または向きに置くことができる場所を予測することが困難であり得る。たとえば、物理的に受信機デバイスが送信機デバイスのより近くに動かされるとき、上述のように、非共振負荷ネットワークと共振LCタンクネットワークとの間に絶縁がないので、結果として生じる相互インダクタンスの増加は、ZVS波形をシフトさせ得る。逆に、物理的に受信機デバイスが送信機デバイスからさらに離れて動かされるとき、結果としての相互インダクタンスの減少も、ZVS波形のシフトを引き起こし得る。送信機および受信機が互いに向かい合って、または互いから離れる動き、または結合の変化は、ZVS波形をシフトさせる反射を増幅器に引き起こし得る。したがって、増幅器100はしばしば使用されるが、それはロバストではなく、非常に高感度であり、弱い結合の無線給電システムアプリケーションに悪い性能をもたらす。
【0020】
上述のような弱く結合されたシステムでは、増幅器の損傷または電力効率の大幅な低下につながり得るので、従来の増幅器100などを使用する無線給電パッドは、典型的には、充電パッドに非常に近い充電デバイスのみに適している。たとえば、電気自動車の無線給電パッドが車両に搭載された受信機と弱く結合されるような、送信機デバイスと弱く結合された受信機デバイスとの間の距離が固定される場合でさえ、充電パッドと車両内の受信機との間の角度アラインメントは、たとえば、車両が充電パッドの上方に異なる角度で駐車されるとき、変動し得る。角度の変化は結合の変化をもたらすことから、角度アラインメントの変動は、結果的に、上述のように増幅器100のZVS波形をシフトさせることができる。よりロバストでありかつより感度が低い増幅器の設計が、より効率的で、より長距離の無線給電システムのために、必要である。
【0021】
図2は、並列同調共振ネットワークを有するシングルエンドのE級の増幅器200の代表的な概略図を示す。
図2において、発振器およびゲートドライバ集積回路(Vosc2)202は、所望の共振周波数で信号(たとえば、矩形波)を生成することができる。この信号は、トランジスタ210のゲートに印加される。ある実施形態では、信号は、ゲートドライバおよび発振器集積回路によって生成され得、ZVSのため増幅器200の電流波形および電圧波形をより良く同調および調整するために、ダイオードおよび抵抗器などのデッドタイム回路(
図2には図示せず)で調整され得る。増幅器200はまた、直流電源204を保護するチョークインダクタ(Lchoke2)208、シャントキャパシタ(Csh2)220、および追加の直列インダクタ(Le2)230を含むことができる。
【0022】
図1の増幅器100とは異なり、
図2の増幅器200は、送信アンテナ(Ltxcoil2)の誘導リアクタンスをキャンセルするというよりは、Vosc2 202によって生成される信号の所望の共振周波数で追加のインダクタ(Le2)230の誘導リアクタンスを同調させる直列キャパシタ(CS2)222を有する。直列キャパシタ(CS2)222は、Le2 230と共に直列共振フィルタとして作用し、高調波を低減することによって設計をよりロバストにする。増幅器200は、また、インダクタンスLtxcoil224および寄生抵抗Rtxparasitic225によって表される送信アンテナ(たとえば、送信機コイル)に並列に配置された並列キャパシタ(Cparallel)226を含む。並列キャパシタ(Cparallel)226が送信アンテナを励起するため、増幅器200を含む送信機デバイスは、上述で論じられたような
図1の増幅器100を含む送信機デバイスのように、効率的な動作のために受信機デバイスの反射された実効インピーダンスに依存しない。
【0023】
共振誘導結合は、無線給電システムにおいて、概念的な変圧器の一次および二次巻線がコアに緊密に巻かれるよりも、互いから離れて配置されることを除いて、単相変圧器と概念的に比較され得る。無線給電システムの送信アンテナおよび受信アンテナのQ値(または、概念的な一次および二次変圧器コイルの効率)は、巻線の物理的分離を補償するために磁気結合を増加させるため、共振時に増加する。この類似性に基づいて、増幅器100(
図1)は、電流変圧器または直列変圧器と比較することができる。逆に、増幅器200(
図2)は、電圧/電位変圧器または並列変圧器と比較することができる。直列変圧器または電流変圧器では、開回路が存在する場合、変圧器は、修復不可能に損傷する可能性がある。一方、並列または電圧/電位変圧器では、短絡時に変圧器が修復不可能に損傷する可能性がある。上述で論じたように、
図1の増幅器100を利用する無線給電システムでは、送信機と受信機とが弱く結合されるとき(たとえば、さらに離れて動かされることによる)、開負荷またはほぼ開放負荷状態がもたらされ得、これは(
図1の)増幅器100を損傷する可能性がある。一方、
図2の増幅器200は、共振時に所望のインピーダンスに固定された負荷ネットワークを有する高いインピーダンスの共振LCタンクを含み、それによって、たとえば、送信機デバイスおよび受信機デバイスの相対位置または向きの変化によって受信機負荷が存在しない場合に動作可能である。すなわち、電位変圧器との比較に戻ると、増幅器200を利用し、弱く結合する無線給電システムは、開放負荷状態において損傷を受けず、増幅器200における短絡状態は、(送信機デバイスが物理的に変えられたり、衝撃を受けたりしない限り)実用上発生しない。
【0024】
増幅器200では、チョークインダクタ(Lchoke2)208、シャントキャパシタ(Csh2)220、および追加の直列インダクタ(Le2)230を含む負荷ネットワークの構成要素は、電流波形および電圧波形の位相を異ならせ、これによりZVSを達成するように構成される。しかしながら、増幅器100(
図1)とは異なり、非常に高いインダクタンスのチョークインダクタを選択するというよりも、Lchoke2のインダクタンス値は、スイッチングトランジスタ210の寄生容量、シャント容量(Csh2)220、ならびに増幅器200が実装されるプリント回路基板(PCB)からの他の寄生容量を(所望の共振周波数およびVosc2 202によって生成される信号で)キャンセルするように選択される。これにより、より少ない高調波およびよりロバストな増幅器をもたらす。さらに、直列キャパシタ(Cs2)222のキャパシタンスは、所望の共振周波数における直列インダクタ(Le2)230の誘導リアクタンスをキャンセルし、ならびに高調波における電力をさらに低減する直列共振フィルタを形成するように選択される。次いで、並列キャパシタ(Cparallel)226のキャパシタンスは、所望の共振周波数でアンテナ(Ltxcoil2 224によって表される)のリアクタンスをキャンセルするように選択される。たとえば、ある実施形態では、1μHのインダクタンス224および0.1Ωの直列寄生抵抗225のアンテナを有する増幅器200のためにCsh2 220は、158pFになるように選択され得、Le2 230は、7μHになるように選択され得、Cs2 222は、78.7pFになるように選択され得、Cparallel226は、551pFになるように選択され得、Lchoke2 208は、600nHとなるように選択され得る。Vosc202は、スイッチングトランジスタ210のゲートを駆動するため、0Vと5Vとの間で交番する6.78MHzの矩形波を生成し、スイッチングトランジスタは760pFの寄生容量に寄与する。20Vの直流電源204は、チョークインダクタLchokeを介して、スイッチングトランジスタ210のドレインを駆動することができる。この例の変数から、負荷ネットワークおよびLCタンクの共振周波数は、Vosc202によって生成される6.78MHzの動作周波数と同じである。すなわち、スイッチングトランジスタQ2 210に印加される周期信号は、チョークインダクタLchoke2 208およびスイッチングトランジスタ(
図2には図示せず)の寄生容量、ならびにそのシャントキャパシタ(Csh2 220)、直列インダクタ(Le2 230)、および直列キャパシタ(Cs2 222)、および送信アンテナ(Ltxcoil2 224およびRtxparasitic225によって表される)および並列キャパシタ(Cparallel226)を、実質的に共振させる周波数と同じ周波数である。すなわち、上述で特定された受動成分(Lchoke2、寄生容量(Cparasitic)、Csh2、Le2、Cs2、Ltxcoil、Rtxparasitic、Cparallel)は、Vosc202によって生成される入力周期信号の基本周波数またはその周囲で共振する。
【0025】
増幅器200の負荷ネットワークは、(たとえば、スプリアス高調波および相互変調成分を低減することにより)電力効率を改善するように構成され、(
図1の)増幅器100よりもLCタンクから良好に絶縁されるため、反射に対してロバストである。ある実施形態では、直流電源204は、インダクタチョーク(Lchoke2)208というよりも、たとえば、(
図2には図示しない)電磁両立性(EMC)フィルタなどの別個の外部フィルタによって増幅器200内の高周波信号から保護することができる。このようにして、Lchoke208は、直流電源204を保護する高周波ブロックとしてというよりも、負荷ネットワークと共振して動作するように構成され得る。高いインピーダンスのLCタンクおよび負荷ネットワークへの高絶縁を有することによって、増幅器200は、受信機デバイスの反射インピーダンスから実質的に独立して効率的に動作する。すなわち、増幅器200は、送信機デバイスに搭載されるとき、実質的な電力損失なしに、または、修復不可能に損傷されることなく、「受信機がない」か、または「開放負荷」である状態で動作することができる。これは、増幅器200の並列共振トポロジーでは、増幅器は、受信機に結合されたときに、直流電源204からより多くの電流を引き込み、そうでなければ、送信アンテナRtxparasitic225の寄生抵抗にほとんど電力が放散されないためである。反射インピーダンスが数Ωだけであり得る、弱く結合された無線給電システムでは、増幅器200を搭載する送信機デバイスは、
図1の増幅器100を搭載する送信機デバイスには当てはまらない受信機デバイスに効果的に電力を供給することができる。
【0026】
ある実施形態では、増幅器100は、共役整合送信アンテナを駆動することによって、弱い結合システムの安定性を改善するように再構成され得る。このシステムは、増幅器200で開示される技術ほど効率的でも安定でもないが、受信機が存在しないとき、または送信機と受信機との間に非常にわずかな結合が起こるとき、動作するために増幅器100に記載されるような直列共振増幅器に接続されて、増幅器が修復不可能に損傷されないようにすることができる。これらの実施形態では、負荷ネットワークは、増幅器200のように非共振であり得、Lchoke2 208は、直流電源204を保護するために高いインダクタンス値(たとえば、100μH)で選択される。Csh2 220(たとえば、50pF)およびLe2 230(たとえば、1μH)は、ZVS波形を同調するように選択することができ、LCタンクの共振周波数およびVosc2によって印加されるパルスには同調されない。1μHのインダクタンスLtxcoil2 224および0.1Ωの直列寄生抵抗Rtxparasitic225を有するアンテナでは、増幅器によって見られるインピーダンスを約6Ωに設定するためにCs2 222を約70pFとすることができ、Cparallel226を約480pFとすることができる。増幅器100の負荷ネットワークは、高価であり、および/または共振で再設計するのが困難であり、これにより増幅器をより保護し、高調波を低減する。代わりに、共役整合送信アンテナは、増幅器100が駆動可能である、たとえば5Ωの所定のインピーダンス値で負荷ネットワークに直接接続することができる。ある実施形態では、直列共振フィルタ、バンドパスフィルタ、または変圧器は、負荷ネットワークと共役整合送信アンテナとの間に配置され得るが、これは、負荷ネットワークのZVS同調に影響を及ぼし得、共役整合アンテナを増幅器100の実施形態に接続することから得られる利益を減少させ得る。Ltxcoil2 224のリアクタンスを純粋な並列または直列に同調させるためCs2 222およびCparallel226のキャパシタンス値を選択する代わりに、キャパシタンス値は、増幅器100の実施形態による所望のインピーダンス値に基づいて選択される。たとえば、増幅器の所望の設計点が約30Ωの負荷を駆動する場合、Ltxcoil2は、所望の共振周波数でLtxcoil2に並列で直列のキャパシタを配置することによって、スミスチャートを使用して30Ωのインピーダンスに同調され得る。このトポロジーを採用するこれらの実施形態の1つの難点は、VNA(Vector Network Analyzer)のような機器を使用して反射モードで増幅器によって見られる周波数が、受信機によって送信モードで見られる周波数とは異なる可能性があるため、受信機に追加の修正を必要とし得ることである。このシステムは、中間接地に、または増幅器が共役整合アンテナを安全に動作することができ、かつ受信機がその対応する共振周波数に対する最小修正を必要とする設計点に到達するために、Ltxcoil2が非共振であり得るならば、より高い帯域幅またはより低いQ値が与えられたアンテナでより良好に動作することができる。しかしながら、送信アンテナのQ値は低すぎると、システムにおける全体のロスが増大する可能性があるため、そのようにするべきではない。さらに、これらの実施形態におけるCs2 220のキャパシタンス値の選択は、低いキャパシタンスが結果的にキャパシタCs2 220の高電圧をも誘導し得るが、増幅器に対して、より良い共役整合をもたらし得ることから、重要である。
【0027】
図3は、直列LCフィルタ(Le3 330およびCs3 322)と送信アンテナのLCタンクとの間に昇圧変圧器350を有するE級の増幅器300の代表的な概略図であり、LCタンクは、インダクタンスLtxcoil3 324および直列等価抵抗Rtxparasitic3 325を有するアンテナと並列にCparallel2 226を備える。インダクタL1 352およびインダクタL2 353は、昇圧変圧器350の(それぞれ)一次および二次巻線を表す。ある実施形態では、変圧器は1:3昇圧変圧器であってよく、変圧器のターン比は電圧比(すなわち、1:Nのターン比を有する変圧器も、1:Nの電圧比を有する)に正比例する。
【0028】
昇圧変圧器350は、メインの送信機コイルの電圧を増加させることができ、また、増幅器300が「見る」反射を低減することができ、さらに、LCタンクから増幅器300をより良好に絶縁することによって増幅器300の安定性を改善する。一般に、誘導される送信アンテナの振動電圧が高いほど、送信アンテナによって生成される振動電流または磁場強度は高くなる。共振誘導結合に基づく無線給電システムの場合、磁場が強いほど、送信アンテナと受信アンテナとの間の磁束鎖交が大きくなり、これにより、送信機デバイスから受信機デバイスに伝送される電力が大きくなる。
【0029】
図2の増幅器200と同様に、増幅器300の負荷ネットワークは、ZVSを達成し、所望の共振周波数で共振するように構成される。しかしながら、増幅器300は、一次インダクタ巻線L1 352のリアクタンスを所望の共振周波数で同調させるように選択されたキャパシタCp_transform362と、二次インダクタ巻線L2 353のリアクタンスを所望の共振周波数で同調させるように選択されたキャパシタCs_transform364とを含む。並列キャパシタCparellel2 326は、アンテナインダクタンスLtxcoil3 324のリアクタンスを所望の共振周波数で同調させるように選択される。変圧器350は、増幅器300を反射からより良好に絶縁し、Ltxcoil3 324の電圧対Ltxcoil2(
図2)の電圧のN倍(1:N変圧器のため)を有する安定した信号を確立する。増幅器300のトポロジーは、
図2の増幅器200に関して上述で論じたすべての利益を含むが、変圧器350のターン比を増加させることによって、送信機と受信機との間の磁束鎖交をより容易にスケーリングすることもできるので、工業用途および非常に弱い結合共振誘導システムにとって特に重要である。すなわち、増幅器300の構成は、高電力適用のために受信機に伝送される電力のより容易なスケーリングを可能にし、および/または、増加した充電距離の適用のために、さらなる距離でより多くの電力を伝送することができる。
【0030】
図4は、複数の送信アンテナ用に構成された並列共振のE級の増幅器400の代表的な概略図を示す。たとえば、増幅器400は、無線給電システムの充電カバレージを増加させるために、3次元アレイなどの複数の送信アンテナを駆動するように構成された送信機に搭載され得る。
図4に示すようなある実施形態では、増幅器400は、等価回路470,471,および472によって表される3つの送信アンテナを駆動するように構成され得る。
図2の増幅器200、または
図3の増幅器300のように、Lchoke4 408およびCsh4 420は、共振でZVSを同調するために配置される。しかしながら、増幅器400はまた、システムに導入される送信アンテナの各々のために追加の直列インダクタ(Le)構成要素および直列キャパシタ(Cs)構成要素、たとえば、
図4に示される3つのアンテナシステムのためのLe4a、Le4b、Le4c、Cs4a、Cs4b、およびCs4cのそれぞれを含む。これらの付加的なLeおよびCsの構成要素は、電流波形および電圧波形を位相から外れさせて設定し、ZVSを達成するように構成される。さらに、それらの値は、それらのリアクタンスが所望の共振周波数(すなわち、LCタンクの各々の周波数およびVosc4 402によって発生され、トランジスタ410のゲートに印加されるパルス電圧)で同調するように選択される。
図2の増幅器200のように、LeおよびCsの構成要素は、共振フィルタとして作用し、高調波を低減し、反射からアンテナのLCタンクの各々へのより良い絶縁を生じさせる。ある実施形態では、送信機は、1つまたは複数の送信アンテナを使用することができ、受信機は、複数の受信アンテナを使用することができ、送信アンテナの数と受信アンテナの数とは、等しい必要はない。
【0031】
図2の増幅器200または
図3の増幅器300のように、増幅器400の性能(たとえば、電力効率)は、無負荷条件下、または受信機が存在しない場合、実質的に低下しない。さらに、増幅器400では、共振LCタンクの各々に同じ電圧が印加される。すなわち、Ltxcoil4a、Ltxcoil4b、およびLtxcoil4cの電圧は全て同一であり、したがって、上述の
図2および
図3に関連して説明した実施形態のような単一の送信アンテナシステムの場合のように、全体的な性能を犠牲にすることなく、受信機が送信機とより強く結合する機会がより多くなる。さらに、増幅器400のトポロジーでは、複数の送信アンテナのために複数の増幅器は必要とされない。同じ増幅器が、アンテナRtxparasitic4a、Rtxparasitic4b、およびRtxparasitic4cの寄生抵抗だけである一次損失で送信アンテナの各々を駆動することができるので、高いQ値のシステムにおける導入コストは、特に非常に低くなることから、たとえば、自動車、家庭用電子機器、および航空宇宙用途のような異なる用途のために、システムに、追加の送信アンテナを低い導入コストで導入することができる。
【0032】
ある実施形態では、送信アンテナは同一ではない。これらの実施形態では、増幅器400は、送信アンテナの分岐において、所望の共振周波数におけるアンテナの等価インダクタンスの値をCparallelによって同調させるように構成される。他の実施形態では、変圧器(
図3の変圧器350など)は、送信アンテナの各々の振動電圧をスケーリングするために、導入されるすべての送信アンテナに対して増幅器400に追加され得、それによって、受信機に伝送される電力を増加させ、および/または、充電距離を増加させることができる。ある実施形態では、異なるアンテナ分岐に対応する変圧器のためのターン比は、送信アンテナの各々が異なる振動電圧を有し、その結果、同じ増幅器システムに接続された異なる送信アンテナのために磁束鎖交が変化するように、異なるように選択することができる。
【0033】
図5は、差動モードで複数の送信アンテナ用に構成された並列共振E級の増幅器500の代表的な概略図を示す。差動モードでは、E級の増幅器は、送信アンテナを差動的に駆動する2つの別個の負荷ネットワークを有するZVSのために同調される2つのトランジスタ(たとえば、トランジスタQ5a510aおよびトランジスタQ5b510b)を含むことができる。第1のパルスは、パルス発生器502aからトランジスタQ5a510aのゲートに結合され、相補的パルスは、パルス発生器502bからトランジスタQ5b510bのゲートに結合される。
図2に関して上述したように、パルスは、Vosc5a502aおよびVosc5b502bによって表される発振器または集積回路矩形波信号発生器によって発生され得る。トランジスタQ5a510aのゲートに印加されたパルスとは逆(または相補、または位相がほぼ180度ずれている)であるパルスをトランジスタQ5b510bのゲートに印加することにより、送信機コイルの各々(たとえば、Txcoil5a524a、Txcoil5b524b、およびTxcoil5c524cによって表されるコイル)にわたって結合された差動信号が得られる。たとえば、Vosc5a502aおよびVosc5b502bは、0Vと5Vとの間で交番する6.78MHzの矩形波を生成し、スイッチングトランジスタ510aおよび510bのゲートを駆動し、スイッチングトランジスタQ5a510aおよびQ5b510bは、別個の間隔の間にオン/オフされる。すなわち、Vosc5a502aによってQ5a510aが閉じられるかまたは5Vで駆動される場合、Q5b510bはVosc5b502bによって開かれるかまたは0Vで駆動される。ある実施形態では、相補的パルス信号(たとえば、矩形波信号)は、別個の発振器集積回路によって生成することができる。他の実施形態では、単一の発振器集積回路またはパルス発生器は、相補信号を駆動トランジスタQ5a510aおよびQ5b510bに供給するために論理回路(たとえば、NAND/ANDゲート、インバータなど)に結合される単一のパルスを生成することができる。アンテナを差動駆動することによって、増幅器500は、システム内の送信アンテナの各々にわたる利得を2倍にすることができる。さらに、非共振負荷ネットワークで直列共振に同調される典型的なE級の差動増幅器とは異なり、説明される差動並列共振トポロジーの実施形態は、
図2に関連して上述するさらなる利点を提供する。
【0034】
図2の増幅器200、または
図3の増幅器300、または
図4の増幅器400のように、チョークインダクタLchoke5a508aおよびシャントキャパシタCsh5a520aは、トランジスタQ5a510aの共振でZVSを調整するように構成される。さらに、送信機コイルに差動的に信号を印加するために、チョークインダクタLchoke5b508bおよびシャントキャパシタCsh5b520bは、トランジスタQ5b510bのための共振でZVSを調整するように構成される。増幅器500は、追加の直列インダクタ(たとえば、Le5a530aおよびLe5b530b)および直列キャパシタ(たとえば、Cs5a522aおよびCs5b522b)を含み、これらは、
図4に関連して説明した実施形態とは異なり、システムに導入されるアンテナの各々というよりも、差動ラインの各々のために選択される。すなわち、ある実施形態では、Le5a530a、Le5b530b、Cs5a522a、およびCs5b522bは、両方の差動ラインのためのZVSを達成するため、電流波形および電圧波形を位相から外して設定するように、
図5に示される差動システムのために構成される。さらに、それらの値は、それらのリアクタンスが所望の共振周波数(すなわち、LCタンクの各々の周波数およびVosc5a502aによって生成されかつQ5aトランジスタ510aのゲートに印加される)で同調するように選択される。しかしながら、
図5に示す回路は差動トポロジーを具体化するので、第2のトランジスタQ5b510bのための負荷ネットワークは、リアクタンスが第1のトランジスタQ5a510aの負荷ネットワークのように所望の共振周波数(すなわち、Vosc5b502bによって発生され、Q5bトランジスタ510aのゲートに印加されるパルスの周波数である)でも同調されるように選択することができる。
図2の増幅器200、または
図3の増幅器300、または
図4の増幅器400のように、LeおよびCsの構成要素は、共振フィルタとして作用し、高調波を低減し、アンテナの各々のLCタンクへ反射からのより良好な絶縁を生じさせる。
【0035】
図2の増幅器200、
図3の増幅器300、または
図4の増幅器400のように、増幅器500の性能(たとえば、電力効率)は、無負荷条件下で、または受信機が存在しない場合、実質的に低下しない。さらに、増幅器500では、
図4の増幅器400と同様に、同じ電圧が共振LCタンクの各々に印加される。すなわち、等価インダクタTxcoil5a524a、Txcoil5b524b、およびTxcoil5c524cの電圧は全て同一であり、したがって、
図2および
図3に関連して説明された実施形態のような単一の送信アンテナシステムの場合のように、全体的な性能を犠牲にすることなく、受信機が送信機とより強く結合する機会がより多い。しかしながら、同じ入力電圧では、増幅器500の差動信号は、増幅器400と比較して、送信アンテナの各々の発振電圧を2倍にする。これは、増幅器500が無線給電システムで使用されるとき、伝送される電力量および/または充電距離を増大させることができる。さらに、増幅器400のトポロジーのように、増幅器500を使用することは、複数の送信アンテナのための複数の増幅器の必要性を排除する。同じ増幅器が、アンテナTxparasitic5a522a、Txparasitic5b525b、およびTxparasitic5c525cの寄生抵抗の主な損失で送信アンテナの各々を駆動することができるので、たとえば、自動車、家庭用電子機器、および航空宇宙用途のような異なる用途のために、システムに、追加の送信アンテナを低い導入コストで導入することができる。これらの寄生抵抗は、特に高いQ値のシステムにおいて、小さい。
【0036】
ある実施形態では、送信アンテナ(Txcoil5a、Txcoil5b、Txcoil5c、TxParasitic5a、TxParasitic5b、TxParasitic5cによって表される)は同一ではない。これらの実施形態では、増幅器500は、送信アンテナ分岐(たとえば、第1の分岐におけるCparallel5a526a、第2の分岐におけるCparallel5b526b、および第3の分岐におけるCparallel5c526c)における並列キャパシタCparallelによって、所望の共振周波数におけるアンテナの等価インダクタンスの値を同調させるように構成される。他の実施形態では、変圧器(
図3の変圧器350など)を、導入されるすべての送信アンテナに対して増幅器500に追加して、送信アンテナの各々の振動電圧をスケーリングし、これによって、受信機に伝送される電力を増加させ、および/または充電距離を増加させることができる。ある実施形態では、異なるアンテナ分岐に対応する変圧器のターン比は、送信アンテナの各々が異なる振動電圧を有し、その結果、同じ増幅器システムに接続された異なる送信アンテナのために磁束鎖交が変化するように、異なるように選択することができる。
【0037】
ある実施形態では、1μHのインダクタンスおよび0.1Ωの直列寄生抵抗を有するアンテナを有する増幅器500のために、Csh5a520aおよびCsh5b520bは180pFになるように選択することができ、Le5a530aおよびLe5b530bは7μHになるように選択することができ、Cs5a522aおよびCs5b522bは78.7pFになるように選択することができ、Cparallel5a/b/c(526a、526b、526c)は551pFになるように選択することができ、Lchoke5a508aおよびLchoke5b508bは、600nHとなるように選択することができる。Vosc5a502aおよびVosc5b502bは、スイッチングトランジスタQ5a510aのゲートを、スイッチングトランジスタQ5b510bのゲートに駆動される信号とほぼ180度位相ずれて駆動させるために、0Vと5Vとの間で交番する相補的な6.78MHz矩形波を生成することができる。20Vの直流電源504は、600nHのチョークインダクタLchoke5aおよびLchoke5bをそれぞれ介してスイッチングトランジスタ510aおよび510bのドレインを駆動することができる。
【0038】
図6は、差動ラインの各々のための直列フィルタの代わりにバンドパスフィルタを有する並列共振のE級の増幅器600の代表的な概略図を示す。ある実施形態では、差動ラインの各々のための直列フィルタ(たとえば、
図5のLe5a530aおよびCs5a522aを含む直列フィルタ)の代わりに、3つのインダクタLband1a531a、Lband1b533a、Lband1c537a、および3つのキャパシタCband1a561a、Cband1b563a、およびCband1c567aがある。バンドパスフィルタ内のインダクタの各々は、バンドパスフィルタ内のキャパシタの各々を用いてシステム(すなわち、LCタンクの各々の周波数およびVosc6a602aおよびVosc6b602bによって生成されるパルス電圧)と同じ共振周波数で同調させられる。たとえば、Lband1a531aは、Cband1a561aと共振するように調整され、Lband1b533aは、Cband1b563aと共振するように調整され、Lband1c537aは、Cband1c567aと共振するように調整される。本開示技術の上述の実施形態の直列フィルタと比較して、バンドパスフィルタは、増幅器のために、基本周波数の高調波に、より大きな減衰を提供する。これは、プロジェクトのため大きな減衰が望まれる場合、電磁互換性または電磁干渉(EMC/EMI)のコンプライアンスにとって重要であり得る。ある実施形態では、共振直列フィルタ(たとえば、
図2のLe2およびCs2を含むフィルタ)を有する実施形態と比較すると、バンドパスフィルタは、基本周波数の高調波を30dB以上減衰させることができる。
【0039】
たとえば、ある実施形態では、Lband1aおよびLband1bは7uHとすることができ、Cband1aおよびCband1bは79pFとすることができる。一方、Lband1cは0.7uHとすることができ、Cband1cは787pFとすることができる。バンドパスフィルタ内のすべてのインダクタは、6.78MHzで同時に共振することができ、この例では、増幅器全体と同じ共振周波数(すなわち、LCタンクの各々の周波数等である。)である。さらに、Lband2a531bおよびLband2b533bは、8uHであり得る。Cband2a561bおよびCband2b563bは69pFとすることができる。Lband2cは0.8uHとすることができ、Cband2cは689pFとすることができる。Txcoil6a624a、Txcoil6b624bおよびTxcoil6c624cは、1uHであり得る。TxParasitic6a625a、TxParasitic6a625b、およびTxParasitic6a625cは、0.1Ωとすることができる。Cparallel6a626a、Cparallel6b626b、およびCparallel6c626cは、551pFとすることができる。残りの構成要素、たとえば、Lchoke6a、Lchoke6b、Csh6a、Csh6bなどは、
図5の例と同じ値を有することができる。
【0040】
すなわち、バンドパスフィルタは、第1のインダクタ(Lband1a531a)、第2のインダクタ(Lband1b533a)、第3のインダクタ(Lband1c537a)、第1のキャパシタ(Cband1a561a)、第2のキャパシタ(Cband1b563a)、および第3のキャパシタ(Cband1c567a)を備えることができる。第1のインダクタは、直列フィルタの実施形態(たとえば、
図5のインダクタLe5a530a)における直列インダクタであり、第1のキャパシタは、直列フィルタの実施形態(たとえば、
図5のキャパシタCs5a522a)における直列キャパシタである。さらに、ある実施形態では、第2のインダクタは、第1のインダクタのインダクタンスに実質的に等しいインダクタンス値(たとえば、両方が7uH)で構成され、第2のキャパシタは、第1のキャパシタのキャパシタンスに実質的に等しいキャパシタンス値(たとえば、両方が79pF)で構成される。第3のインダクタ(たとえば、0.7uH)および第3のキャパシタ(たとえば、787pF)は、LCタンクを形成するように並列に結合され、第1のキャパシタおよび第2のキャパシタに結合され、スイッチングトランジスタ(接地に結合される)のソースノードに結合される。
【0041】
バンドパスフィルタを使用するとき、出力は、直列共振フィルタと比較して6.78MHzで高調波を十分に低減する。他の種類のPiフィルタのような他のフィルタをバンドパスフィルタの代替として使用することができることが理解されるであろう。これらの代替フィルタトポロジは、
図2、
図3、
図4および
図5の増幅器実施形態に関連して説明される直列共振フィルタ(LeおよびCs)の代わりに利用することができ、増幅器の高調波に対するさらなる減衰が必要である。
<注意>
文脈が明確に別段に要求しない限り、明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの語は、排他的または網羅的な意味とは対照的に、「含むがこれらに限定されない」という包括的な意味で解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「接続される(connected)」、「結合される(coupled)」、またはそれらの任意の変形は、2つ以上の要素間における、直接的または間接的のいずれもの接続または結合を意味し、要素間の結合または接続は、物理的、論理的の結合または接続、もしくはそれらの組み合わせとすることができる。さらに、「「本(herein)明細書」、「上(above)」、「下(below)」などの単語が本願で使用される場合、本出願全体を指し、本出願のいかなる特定の部分も指さない。文脈が許可する場合、単数または複数を使用する上述の詳細な説明における単語は、複数または単数数をそれぞれ含み得る。2つ以上の項目のリストに関する単語「または(or)」は、リスト内の任意の項目、リスト内のすべての項目、およびリスト内の項目の任意の組み合わせという解釈のすべてを網羅する。
【0042】
上述の実施例の詳細な説明は、網羅的であること、または本発明を上述に開示した的確な形態に限定することを意図していない。以上、具体的な例を実施形態として説明の目的で記載したが、当業者であれば理解するように、種々の均等な変更が可能である。たとえば、プロセスまたはブロックは所与の順序で提示されるが、代替的な実施は、ステップ/ブロックを有するルーチンを実行するか、またはブロックを有するシステムを異なる順序で採用することができ、いくつかのプロセスまたはブロックは、代替的または部分的組合せを提供するために、削除、移動、追加、細分化、組み合わせ、および/または変更することができる。これらのプロセスまたはブロックの各々は、様々な異なる方法で実装することができる。また、プロセスまたはブロックは、時には直列に実行されるものとして示されているが、これらのプロセスまたはブロックは、代わりに、並列に実行または実装されてもよく、または異なる時に実行されてもよい。さらに、本明細書で言及される任意の具体的な数値は、例にすぎない。代替的な実装は、異なる値または範囲を使用することができる。
【0043】
本明細書で提供される教示は、必ずしも上述のシステムではなく、他のシステムに適用することができる。上述の様々な例の要素および動作は、本発明のさらなる実装を提供するために組み合わせることができる。本発明のいくつかの代替的な実装は、上述の実装に対する追加の要素を含むだけでなく、より少ない要素を含むこともできる。
【0044】
添付の出願書類に列挙され得るものを含む、上述の任意の特許および出願ならびに他の参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の態様は、必要に応じて、本発明の更に別の実装を提供するために上述の様々な参考文献のシステム、機能、及び概念を採用するように変更することができる。参照により組み込まれる本出願の記載または主題が本出願の記載または主題と競合する場合、本出願は優先するものとする。
【0045】
上記詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を本発明に行うことができる。上述の説明は、本発明のいくつかの例を説明し、考えられる最良の形態を説明しているが、上述の詳細な記載がどのように現れても、本発明は多くの方法で実施され得る。システムの詳細は、依然として本明細書に開示される発明により包含されるが、その具体的な実装においてかなり変わり得る。上述のように、本発明の特定の特徴または態様を説明する際に使用される用語は、その用語が、その用語が関連付けられる本発明の任意の特定の特質、特徴、または態様に限定されるように本明細書で再定義されていることを示唆すると解釈されるべきではない。概して、以下の特許請求の範囲で使用される用語は、上記詳細な説明欄がそのような用語を明示的に定義しない限り、本発明を本明細書に開示される具体的な例に限定すると解釈されるべきではない。したがって、本発明の実際の範囲は、開示された例だけでなく、特許請求の範囲の下で本発明を実行または実施するすべての同等の方法も包含する。
【0046】
請求項の数を低減するために、本発明の特定の態様は、以下の特定の請求項の形態で提示されるが、出願人は、任意の数の請求項の形態で本発明の様々な態様を考えている。たとえば、開示されるシステムのいくつかの態様は、means-plus-functionクレームとして具体化され、または他の形態で実施されるコンピュータ可読媒体などで具体化される。(35U.S.C.第112条(f)の下で処理されることを意図した特許請求の範囲は、単語「ための手段(means for)」で始まるが、他の文脈における用語「ための(for)」の使用は、35U.S.C.第112条(f)の下での処理を発動することを意図するものではない。)。したがって、本出願人は、本出願または継続出願のいずれにおいても、本出願を出願した後に、そのような追加の請求項の形態を追求するための追加の請求項を追求する権利を確保している。