(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】海上養殖システム
(51)【国際特許分類】
A01K 61/60 20170101AFI20240222BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A01K61/60 321
B63B35/44 Z
(21)【出願番号】P 2021525091
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 NO2019050233
(87)【国際公開番号】W WO2020091605
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】521195320
【氏名又は名称】エムビーエス インターナショナル アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エステルフス、シュテイン ウォルド
(72)【発明者】
【氏名】ウォラン、ホーヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ミッケルセン、ランナル トール
(72)【発明者】
【氏名】フォシュオード、ジョン アルノルド
(72)【発明者】
【氏名】レッペ、スヴェイン
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-001500(JP,U)
【文献】国際公開第2012/167015(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第108061010(CN,A)
【文献】特開2014-113141(JP,A)
【文献】特表平10-513059(JP,A)
【文献】特開2002-370690(JP,A)
【文献】国際公開第2018/073820(WO,A1)
【文献】特開平05-115230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0284105(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1240626(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/60
B63B 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面(10)上よりも前記海面(10)下の方が
長い延長部を有し、水中に垂直に浮かぶ細長い垂直支柱(200)と、前記細長い垂直支柱(200)を円周方向に取り囲む剛性のケージ構造体(300)と、を備える海上養殖システム(100)であって、
剛性の前記ケージ構造体(300)が、前記細長い垂直支柱(200)の長手方向に移動可能に配置され、
前記海面(10)下の前記細長い垂直支柱(200)の前記延長部が、前記細長い支柱(200)の長手方向への移動によって、前記海上養殖システム
(100)の場所では波の影響を受けない位置まで、及び/又は、前記海上養殖システム
(100)の沖合の場所では、養殖海洋種に影響を及ぼすシラミ及び同様の生物が生息する領域の下方の位置まで、剛性の前記ケージ構造体(300)を水没させることが
でき、
剛性の前記ケージ構造体(300)は、制御可能なバラストのための手段を備え、
前記海上養殖システム(100)が、前記ケージ構造体(300)内の制御可能なバラストのための手段と組み合わされた、前記細長い垂直支柱(200)の長手方向における前記ケージ構造体(300)の制御された移動のための制御可能な移動手段(800)を備えることを特徴とする、
海上養殖システム(100)。
【請求項2】
前記細長い垂直支柱(200)が、その下部に、前記細長い垂直支柱(200)の浮力中心の下に重心を提供する恒久的及び/又は制御可能なバラスト手段(210、240)を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項3】
前記細長い垂直支柱(200)が、前記細長い垂直支柱(200)の波の影響を受ける領域に配置された波減衰手段(250)を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項4】
前記ケージ構造体(300)が、
恒久的なバラストのための手段を
さらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項5】
前記波減衰手段(250)が、エネルギーを生成するように配置されていることを特徴とする、
請求項3に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項6】
前記ケージ構造体(300)が、その側面を制限
又は閉鎖するケージ側面(330)を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項7】
前記ケージ構造体(300)が、前記ケージ構造体(300)の内部を複数のサブケージ/個別ケージ(300a)に分割するケージ側面(330)を備えることを特徴とする、
請求項6に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項8】
前記海上養殖システム(100)が、水中給餌のための手段(350、351)を備えていることを特徴とする、
請求項1から
請求項7までのいずれか1項に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項9】
前記ケージ構造体(300)が、前記細長い垂直支柱(200)及び前記ケージ構造体(300)に配置された対応する手段(340、341)によって、前記細長い垂直支柱(200)に対して回転することが防止されていることを特徴とする、
請求項1から
請求項8までのいずれか1項に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項10】
前記細長い垂直支柱(200)が、その下部に、少なくとも1つの飼料貯蔵タンク(230)を備えることを特徴とする、
請求項1から
請求項9までのいずれか1項に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項11】
前記細長い垂直支柱(200)が、前記少なくとも1つの飼料貯蔵タンク(230)内の飼料量に基づいて制御可能なバラストタンク(220)を備えることを特徴とする、
請求項10に記載の海上養殖システム(100)。
【請求項12】
前記ケージ構造体(300)が、浮力中心より下にある重心を備えていることを特徴とする、
請求項1から
請求項11までのいずれか1項に記載の海上養殖システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文に記載されているように、海上養殖システム(offshore farming system)に関する。本発明は、特に、サケ、スギ、スズキ、マス、タラなどの魚の養殖に関するが、貝や昆布などの他の海洋種の養殖にも用いることができる。
【背景技術】
【0002】
世界的な人口増加と地球温暖化を背景に、人類の食料生産の新しく、より気候に優しい方法が求められている。海洋性のタンパク質(魚を含む)は、一般に、比較的気候に優しい食物と考えられており、様々な形態での魚養殖における成長が一般に望ましいと考えられている。しかしながら、魚の養殖を行う沿岸地域は、環境への悪影響や、種々の病原体やシラミの存在など、いくつかの要因により圧力を掛けられている。
【0003】
このため、最近では、特に魚の養殖のために沖合の遠隔地で使用することができる海上養殖システムに注目が集まっている。魚の養殖を沖合に移すことで、沿岸地域への悪影響を減少させ、病原体やシラミによって引き起こされる問題も軽減される。また、魚の養殖を沖合に移すことで、生物学的生産の観点からも、水質の改善、水温の安定化、水温の最適化など、他の利点を有する。
【0004】
沖合の遠隔地に海上養殖システムを配置するには、過酷で荒れた環境、即ち、波に耐え、対処できるように配置されることが必要である。このような海上養殖システムは、また、(期間にわたって)自立している必要があり、魚の生物学的生産のための様々な要件を満たすように設計されていなければならない。
【0005】
以下に説明するような解決策を提供するいくつかの試みがなされてきた。
JP19920277967Aには、海底に垂直に取り付けられた浮遊する支柱に配置され、支柱の垂直方向に移動可能に配置された魚の養殖場が記載されている。ネットケージは、潮流や波の影響を受けて水面に沿って上下に浮き沈みするように配置されている。この解決策は、波で浮遊し、支柱で海底に取り付けられているので、浅瀬や保護区域向けに設計されている。この解決策は、ネットケージが波と共に移動するため、外洋での使用には不向きであろう。
【0006】
NO312873B1には、細長い中央の垂直なスパーブイを有する、魚や貝を育てるための固定された可動式ペンが記載されている。細長い中央の垂直なスパーブイは、少なくとも1つの水平ネット支持リングによって囲まれており、連続したネットが、ブイの上端部からリングまで、そしてそこからブイの下側の水中端部まで延在して、密閉されたペンを構成している。ペンは、任意選択で、固定されず、海流に沿って自由に浮遊することができるが、従来の方法で固定されることが多くなる。ペンはさらに、ブイの下端から吊り下げられたウェーブダンパープレートを含むことができ、また、ペンが水に浮くレベルを調整するために、ダンパープレートから吊り下げられたバラストウェイトを含むことができる。ペンの可動性は、毒性プランクトンブルームのような局所的な危険を回避するという利点と、必要に応じてペンをより便利な収穫場所に移動させる能力と、を提供する。このペンは、ペンの体積を減らすことができるように、ペン用の下側支持リングを移動させるように構成されている。この解決策は、ウェーブダンパープレートを使用しても、波の中で上下に浮き沈みするため、外洋/大きな波での使用には適していない。さらに、統合されたサービス/運用設備がないため、これらに対して近距離内にあることに依存している。
【0007】
NO169932Bには、深海に設置するように設計され、魚を集中的に生産するように設計された魚の養殖場が開示されている。この魚の養殖場は、かなりの深さに沈められ、その深さを維持するように設計された養殖ケージによって構成され、その水深の調整を可能にし、水を適切な温度レベルに調整するバラストタンクを備えている。このような養殖ケージの上端部は、最小限の浮力を持つ中空の柱内に延在し、その上端部には作業施設を収容するタワーが設けられ、同様に水の表面から突出しているが、下側の養殖ケージの場合のように、波の影響の範囲外に保たれており、したがって魚の養殖場の安定性は最大である。この解決策は、タワーとケージを接続する柱が細く、浮力が制限されている以外に、波を減衰させる機能がないため、外洋で使用するようには設計されていない。この解決策は、バラストタンクの手段によって、構造物全体を下降/上昇させる必要がある。そのため、ケージと構造物が互いに独立して操作することができないため、高波の際にタワーとケージの両方を保護することができない。さらなる欠点は、ケージが常に水中に配置されるため、魚へのアクセスが困難であることである。ケージが常に水中に配置されることによって、プラントの操作と同様に、屠殺のための魚の搬入及び搬出が困難になる。
【0008】
CN105557572Bには、漁具フレームとネットカバーとを備え、柱が漁具フレームの内側に配置され、漁具フレームが柱を取り囲んでいる半潜水型で単柱型の海洋工学漁具について記載されている。中央の柱の上部には、一体的な居住/作業領域が配置されている。中央の柱の外側には、スライドウェイ、上部スリーブ及び下部スリーブが配置されており、下部スリーブはスライドウェイを通って上下に移動可能である。このシステムは更に、バラストシステムを備えている。
【0009】
US9326493B2には、水中の魚の養殖場の自動給餌システムが開示されている。また、水中養殖場に設置され、水中養殖場の内部を照明する照明装置についても記載されている。
【0010】
WO2012/092380A2には、細長いスパーブイと、このスパーブイの上端に配置された予備浮力ブイとを含む魚ペンが記載されている。下部と上部のリムアセンブリは、張力部材を用いてスパーブイと互いに取り付けられている。スパーブイ上の調整可能な上部接続プレートは、張力部材に張力を与えるための手段を提供する。
【0011】
WO2015/099540A1からは、2つの閉鎖可能な固定隔壁と、中央の柱から円周に向かって半径方向に延びる摺動隔壁とを含む、半潜水型の円筒形ネットケージが知られており、ここで摺動隔壁は、中央の柱の周りに回転可能である。
【0012】
NO342556B1には、魚介類を繁殖させるための浮遊装置が記載されている。この装置は、細長いシリンダ要素と、シリンダ要素に取り付けられ、シリンダ要素の周囲の魚介類のためのケージを画定するように構成されたフレームワークと、を備える。シリンダ要素は、浮遊装置の浮力の主要部分を構成する浮力で構成されている。
【0013】
WO2015/055867A1には、上部と下部の形態で剛性の高い要素のセットを形成する2つの明確に定義された部分からなり、必要に応じて水中に沈むことができる特異な浮遊構造が記載されている。下部は、その構造の構成において船舶と類似しており、下部の浮揚性は、下部自体の重量と、ケージが完全に沈められたときのケージの重量とを支持する。また、構造体を水中に沈めるためのバラスト手段も記載されている。
【0014】
上述した解決策の共通の欠点は、これらの解決策が沖合で受ける大きな力、即ち、波や嵐に耐え、かつ対処するように構成されていないことである。さらに、それらは、嵐の状態でも維持されるべき通常の動作(例えば、給餌)を提供するための解決策を開示していない。
【0015】
さらに、沖合の遠隔地に配置された海上養殖システムは、例えば魚が逃げ出さないような、安全性が必要である。
【0016】
さらに、それは、大規模生産が経済的に可能となるように構成されなければならない。
【0017】
さらに、海上養殖システムは、長期間の自給(魚の飼料、設備、淡水、職員、宿舎割り当てなど)が可能でなければならない。
【0018】
さらに、海上養殖システムは、運転上の問題や故障のリスクを可能な限り低くするように設計されていなければならない。
【0019】
さらに、海上養殖システムは、供給船、屠殺船、人員輸送などの到着に対応しなければならない。
【0020】
上述の先行技術文献は、これらの要件のいずれも提供していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の主な目的は、上述の従来技術の解決策の欠点及び欠陥を、部分的に又は完全に解決する海上養殖システムを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、沖合の遠隔地に配置することができる海上養殖を提供することである。
【0023】
本発明の目的は、海流や波などの過酷な環境に耐えることができ、かつ、暴風雨にも耐えることできる海上養殖システムを提供することである。
【0024】
本発明の目的は、沖合の遠隔地で大規模な養殖を可能にする海上養殖システムを提供することである。
【0025】
本発明の目的は、シラミなどの生物がシステム内の魚に影響を及ぼすリスクを低減する海上養殖システムを提供することである。
【0026】
本発明の目的は、魚が船酔いしない解決策を提供する海上養殖システムを提供することである。
【0027】
本発明の目的は、電力を自給することができる海上養殖システムを提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、補給を必要とせずに長期間にわたって運転することができる海上養殖システムを提供することである。
【0029】
さらに、本発明の目的は、波の影響を受けないようにケージ構造体を水没させて、天候の影響を受けたときの安定性と安全性とを向上させることができる海上養殖システムを提供することである。
【0030】
本発明の目的は、水中での給餌が可能な海上養殖システムを提供することである。
【0031】
本発明の目的は、設備等を配置するための少なくとも1つの作業デッキを提供する海上養殖システムを提供することである。
【0032】
本発明の目的は、連続生産を可能にする海上養殖システムを提供することである。
【0033】
本発明の目的は、多数の個別ケージを備え、異なる成長段階(サイズ)の魚を異なるケージに収容することができ、したがって異なるケージに異なる飼料(即ち、ペレットのサイズ)を適用することができ、個別ケージから魚を収穫することができる、海上養殖システムを提供することである。
【0034】
本発明の目的は、多数の個別ケージを備え、個別ケージのメンテナンスを可能にし、また魚が逃げる全体的なリスクを低減する、海上養殖システムを提供することである。
【0035】
本発明のさらなる目的は、以下の説明、特許請求の範囲、及び添付の図面から明らかになるのであろう。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明による海上養殖システムは、請求項1に開示されている。海上養殖システムの好ましい特徴は、従属請求項に開示されている。
【0037】
本発明は沖合の遠隔地、即ち、遠海に配置されるように適合された海上養殖システムに関する。
【0038】
本発明による海上養殖システムは、細長い垂直支柱と剛性のケージ構造体の形態の2つの主要構造によって形成される。
【0039】
本発明によれば、剛性のケージ構造体は、細長い垂直支柱を円周方向に取り囲み、細長い垂直支柱の長手方向に移動可能に配置されている。
【0040】
本発明による細長い垂直支柱は、海面の上及び海面の下の両方に延長部を有し、海面の下の延長部は、海面の上の延長部よりも長い。
【0041】
さらに、細長い垂直支柱は、細長い垂直支柱ができるだけ海流及び波の影響をできる限り受けないように、浮力中心より下に調整可能な重心を有し、海中で直立して浮くように配置されている。
【0042】
剛性のケージ構造体は、剛性のケージ構造体の内周を規定すると共に、剛性のケージ構造体を細長い垂直支柱に対して移動可能かつ安定に配置するために、垂直なビーム又はロッドによって連結された上部内側ケージリングと下部内側ケージリングとによって形成された取り付けアセンブリによって形成されている。剛性のケージ構造体は、剛性のケージ構造体の外周を規定する上部外側ケージリングと下部外側ケージリングとをさらに備える。取り付けアセンブリと上部外側ケージリング及び下部外側ケージリングとは、フレームワーク要素によって連結されている。
【0043】
本発明によれば、剛性のケージ構造体のフレームワーク要素/リングは、細長い垂直支柱の長手方向における剛性のケージ構造体の上昇及び下降に関連して使用することができる、長期的/恒久的なバラスト及び/又は制御可能なバラストを提供するために配置される。
【0044】
ケージ構造体は、ケージ構造体の側面(以下、屋根および底部)を制限/閉鎖し、ケージ構造体の内部を複数のサブケージに分割するためのケージ側面をさらに備える。サブケージ(個別ケージ)の使用は、魚のサイズ及び重量が大きくなるにつれて、サブケージ間で魚を移動させるために不可欠であり、また、屠殺用に魚を連続生産するためにも必要である。複数のサブケージを有することによって、異なるサブケージ間での魚を仕分けするための、最適な給餌手順と容易なアクセスとが提供される。また、個々のサブケージは、より最適なメンテナンスを提供し、必要に応じて個々のサブケージの周囲に囲い布を適用することができる。
【0045】
本発明によれば、細長い垂直支柱は、水中に配置された細長い垂直支柱の部分の内部に、飼料貯蔵部を提供するようにさらに構成される。
【0046】
本発明のさらなる実施形態によれば、細長い垂直支柱は、制御可能なバラスト手段をさらに備えている。このバラスト手段は、飼料貯蔵部内の飼料の量に関連して制御することができ、飼料が貯蔵部から取り出されるときに細長い垂直支柱内のバラストを維持する。また、このバラスト手段は、海の状況や動作状況に応じて浮力のレベルを調整する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態によれば、細長い垂直支柱は、細長い垂直支柱の波の影響を受ける部分に配置された、海上養殖システムの受動的又は能動的な減衰を提供することができる減衰手段を備える。
【0048】
さらに、細長い垂直支柱は、少なくとも1つの作業デッキをその上部で支持する。
【0049】
さらに、細長い垂直支柱は、海上養殖システムに関連するハウジング機能のために、少なくとも1つの作業デッキの上にあるハウジングを支持する。
【0050】
細長い垂直支柱は、その上端にヘリデッキをさらに備えていてもよい。
【0051】
さらに、細長い垂直支柱は、飼料貯蔵部から飼料を取り出すための飼料分配システムを備えていることが好ましい。
【0052】
さらに、海上養殖システムは、そこで養殖された魚に給餌するために、上述のハウジングからケージ構造体又はその中のサブケージへの給餌ラインを備え、ケージ構造体が水没しているときにも給餌を可能にすることが好ましい。
【0053】
さらに、海上養殖システムは、ケージ構造体が水没しているときにも、操作、メンテナンス、照明などの目的で、前記ハウジングから内部のケージ構造体又はサブケージに、電力及び加圧空気を供給することが好ましい。
【0054】
本発明の他の実施形態によれば、細長い垂直支柱の減衰手段は、更に、移動する空気及び/又は水を利用することによってエネルギーを生成するように構成される。
【0055】
本発明の他の実施形態によれば、海上養殖システムは、ケージ構造体の制御可能なバラスト又は浮力手段を使用することと組み合わせて、ケージ構造体を上昇及び下降させるために、少なくとも1つのウインチのような制御可能な移動手段を備えている。これにより、細長い垂直支柱に沿ったケージ構造体の制御された移動が実現される。
【0056】
ケージ構造体が細長い垂直支柱に移動可能に配置されることにより、ケージ構造体は波の影響を受けないように沈められて、内部の魚が船酔いするのを防ぐと共に、波や海流の影響から海上養殖システムを保護するので、海上養殖システム全体が嵐に対して安全である。
【0057】
また、海上養殖システムは、ケージ構造体の水没位置にも給餌手段が設けられているため、継続的な給餌及び動作が達成される。
【0058】
本発明はまた、ケージ構造体が多数のサブケージ/個別ケージを備え、生産サイクル中に複数回の魚の投入を可能とし、生産サイクル全体での効果的な選別を行い、頻繁な屠殺を行うことによって、連足的な生産を実現している。
【0059】
細長い垂直支柱と、その中に配置された減衰手段の設計は、波の減衰、上下動の減衰、及び固有振動数の低減を提供することによって、養殖システム全体の安定性を確保する。
【0060】
本発明によれば、従来技術の解決策が提供できなかった、大規模養殖のために沖合の遠隔地の使用を可能にする解決策が提供される。
【0061】
さらに、本発明による海上養殖システムは、再生可能エネルギー源からのエネルギー生成手段、及び、貯蔵設備や操作設備を備えることにより、外部からの供給を受けずに長期間にわたって運転することができる。
【0062】
本発明による海上養殖システムは、サイズ及びサブケージの両方において拡張可能な解決策を提供する。
【0063】
本発明のさらなる好ましい特徴及び有利な詳細は、以下の実施例の説明、特許請求の範囲、及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
以下、添付図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【
図1】
図1は、本発明による海上養殖システムの原理図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る細長い垂直支柱の断面図である。
【
図3a】
図3aは、本発明に係る細長い垂直支柱の断面図である。
【
図3b】
図3bは、本発明に係る細長い垂直支柱の断面図である。
【
図4a】
図4aは、本発明に係るケージ構造体の原理図である。
【
図4b】
図4bは、本発明に係るケージ構造体の原理図である。
【
図4c】
図4cは、本発明に係るケージ構造体の原理図である。
【
図5】
図5は、ケージ構造体と細長い垂直支柱との間の相互作用の詳細を示す原理図である。
【
図6】
図6は、本発明による海上養殖システムのさらなる特徴を示す原理図である。
【
図7a】
図7aは、ケージ構造体の昇降を補助するための移動手段の原理図である。
【
図7b】
図7bは、ケージ構造体の昇降を補助するための移動手段の原理図である。
【
図8a】
図8aは、細長い垂直支柱に対するケージ構造体のためのロック機構の原理図である。
【
図8b】
図8bは、細長い垂直支柱に対するケージ構造体のためのロック機構の原理図である。
【
図9a】
図9aは、本発明によるケージ構造体が上昇位置及び水没位置にある海上養殖システムの原理図である。
【
図9b】
図9bは、本発明によるケージ構造体が上昇位置及び水没位置にある海上養殖システムの原理図である。
【
図10】
図10は、風車を備えた本発明による海上養殖システムの原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
次に、本発明による海上養殖システム100の原理図である
図1を参照する。海上養殖システム100は、主要構造として、細長い垂直支柱200と剛性ケージ構造体300とを備える。剛性ケージ構造体300は、細長い垂直支柱200をその周方向に取り囲み、細長い垂直支柱200の長手方向に移動可能に構成されている。
【0066】
細長い垂直支柱200は、前述したように、水中で主に垂直に浮く細長い構造体であり、水中に配置されたときに中性浮力が得られるように初期設計されている。また、細長い垂直支柱200は、海面10の上よりも海面10の下により大きな延長部を有している。
【0067】
細長い垂直支柱200は、浮力中心の下方に調整可能な重心を有するように設計されており、これらの両方が、波の影響を受けるレベルの下に配置されていることが好ましい。細長い垂直支柱200は、その下端に、細長い垂直支柱200が海流や波の影響を受けても安定した垂直位置に維持されるようにする永久バラスト要素210を備えることがさらに好ましい。
【0068】
本発明の有利な実施形態による細長い垂直支柱200の断面図を示す
図2も参照する。図示の実施形態によれば、細長い垂直支柱200は、細長い垂直支柱200に沿った1つ又は複数の位置に、外部と流体連通する少なくとも1つのバラストタンク220をさらに備えることができる。バラストタンク220は、細長い垂直支柱200の制御可能なバラストのために海水を加えることができる。
【0069】
図2に示すように、細長い垂直支柱200は、好ましくは細長い垂直支柱200の下部に配置された、少なくとも1つの飼料貯蔵タンク230を備えることができる。海上養殖システムは、昇降システム420に配置された少なくとも1つのコンテナ410のような飼料分配システム400をさらに備えることができる。昇降システム420により、コンテナ410が細長い垂直支柱200の内部を移動して、必要なときに飼料を取り出すために、少なくとも1つの飼料貯蔵タンク230まで下方に移動することができる。
【0070】
図2に示すように、バラストタンク220は、少なくとも1つの飼料貯蔵タンク230の上と下の両方に配置することができ、少なくとも1つの飼料貯蔵タンク内の飼料量に応じてバラストを調整することが可能である。従って、飼料が取り出されて、少なくとも1つの飼料貯蔵タンク230内の飼料の重量が減少すると、バラストと細長い垂直支柱200の重心とを維持するために海水を加えることができる。同様に、少なくとも1つの飼料貯蔵タンク230に飼料が追加されると、細長い垂直支柱200のバラストを維持するために、少なくとも1つのバラストタンク220からバラスト水が除去される。
【0071】
本発明による細長い垂直支柱200のさらなる実施形態によれば、細長い垂直支柱200は、
図3a~bに示されるように、追加のバラストタンク240をさらに備えることができる。追加のバラストタンク240は、少なくとも1つの貯蔵タンク230内の飼料の充填度/重量に関連して制御されている上記の少なくとも1つのバラストタンク220に加えて、長期的/恒久的に制御可能なバラストを提供するために配置される。
【0072】
本発明によれば、細長い垂直支柱200は、
図2に示すように、好ましくは細長い垂直支柱200の上部、即ち、その波の影響を受ける領域に配置された、減衰(dampening)のための減衰手段250をさらに備えることができる。細長い垂直支柱200の波の影響を受ける領域に配置された減衰手段250を有する細長い垂直支柱200の原理図を示す
図3a-bを参照されたい。
【0073】
減衰手段250は、細長い垂直支柱200の長手方向の延長部と、細長い垂直支柱200の円周に沿った延長部とを有する少なくとも1つのチャンバ251によって形成され、利用されるべき内部容積を提供している。少なくとも1つのチャンバ251は、水面下と水面上の両方、即ち、波の影響を受ける領域に延在するように、細長い垂直支柱200の上部に配置されている。少なくとも1つのチャンバ251は、周囲の海水に対する少なくとも1つの開口部252を備えると共に、少なくとも1つのチャンバ251の上部には、海面より上に延在する少なくとも1つの通気用開口部253を備えている。好ましくは、細長い垂直支柱200の周方向に分布するいくつかの開口部252が存在し、波からの周囲の水が異なる方向から少なくとも1つのチャンバ251に流入することを可能にするであろう。少なくとも1つのチャンバ251は、さらに、各々が開口部252及び通気用開口部253を有する細長い垂直支柱200の周方向に分布する、複数のサブチャンバ又は複数の別個のチャンバに分割することができる。
【0074】
従って、
図3aに示すように、波が細長い垂直支柱200に片側から当たっているときには、少なくとも1つのチャンバ251は水を取り込み、
図3bに示すように、波が細長い垂直支柱200を通過するときには、波の通過中に取り込まれた水が再び流出し、通過する波による影響、特に上下動(heave)を低減することができる。
【0075】
本発明の実施形態によれば、上述した減衰手段250を、さらにエネルギーの生成のために使用することができる。例えば、少なくとも1つの空気タービンを上述の通気用開口部253内に配置することにより、少なくとも1つのチャンバ251に水が流入及び流出するに従ってエネルギーを生成することができる。これは、水が少なくとも1つのチャンバ251に流入するときに、空気が少なくとも1つのチャンバ251から流出し、水が少なくとも1つのチャンバ251から流出するときに、空気が少なくとも1つのチャンバ251に流入するためであり、これにより、空気タービンに動力が供給されてエネルギーが生成され、そのエネルギーはエネルギー貯蔵部に貯蔵されて、さらに利用される。
【0076】
さらなる実施形態によれば、周囲の水への開口部252に水タービンが配置される。この水タービンは、少なくとも1つのチャンバ251に流入する水とチャンバ251から流出する水とによって動力を得て、空気タービンの機能と同様にエネルギー生成に使用することができる。
【0077】
さらなる実施形態によれば、各々の開口部には、空気タービン及び水タービンの両方が、エネルギーを生成するために配置される。
【0078】
さらに別の実施形態によれば、さらに、開口部252に関連して、バルブ及び/又はポンプなどの減衰手段を配置することができる。これにより、制御可能な波の減衰を実現し、所望の挙動と減衰特性(ここでは、位相変位)とに応じて波の減衰を調整することができる。
【0079】
したがって、上述の開口252に関連する減衰手段は、空気又は水の流れを止めることによって受動的な位相変位を提供し、ポンプ又は圧力タンクによって圧力、空気、又は水を調整することによって能動的な位相変位を提供することができる。
【0080】
本発明による細長い垂直支柱200によって、減衰性、低固有振動数であり、浮力中心よりも下に重心があるために安全で連続動作が可能である構造が提供される。これは、魚だけでなく、人員もメリットがある。
【0081】
さらに、細長い垂直支柱200は、その設計によって、既存のすべての解決策と比較して、より低い固有振動数と改善された減衰性とを提供する。
【0082】
さらなる実施形態によれば、上部バラストタンク220と減衰手段250との間に、少なくとも1つのタンク260を配置することができる。タンク260は、浮力を得るために空気を充填したり、飼料などの追加の貯蔵部として使用することができる。
【0083】
次に、本発明による剛性ケージ構造体300の原理図である
図4a~cを参照する。剛性ケージ構造体300は、上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312とによって形成された取り付けアセンブリ310によって形成されている。上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312とは、垂直方向に離間し、上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312との間に延び、それらの周縁部に取り付けられた垂直なビーム又はロッド(beams or rods)313によって互いに取り付けられている。上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312とは、細長い垂直支柱200を取り囲み、細長い垂直支柱200の長手方向に移動するための、(低抵抗材料で覆われた)摺動面を備えている。したがって、上部内側ケージリング311及び下部内側ケージリング312と、垂直なビーム又はロッド313とは、剛性ケージ構造体300の内側フレームを形成する。取り付けアセンブリ310は、上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312との間に配置され、垂直なビーム又はロッド313に取り付けられた1つ又は複数の中間内側ケージリング314を、さらに備えることができる。
【0084】
剛性ケージ構造体300は、さらに上部外側ケージリング320と下部外側ケージリング321とを備え、上部外側ケージリング320は、上部内側ケージリング311よりも大径で、上部内側ケージリング311と同じ水平面に配置され、垂直方向に見て、下部内側ケージリング312の上方の平行な水平面に配置され、好ましくは下部内側ケージリング312よりも上部内側ケージリング311に近い位置に配置されている。
【0085】
上部外側ケージリング320と下部外側ケージリング321とは、垂直なビーム又はロッド322によって互いに取り付けられている。上部外側ケージリング320は、水平に延びるビーム又はロッド323によって上部内側ケージリング311にさらに配置され、下部外側ケージリング321は、下部内側ケージリング312と下部外側ケージリング321との間に延びるビーム又はロッド324によって下部内側ケージリング312に配置されている。
【0086】
好ましくは、下部外側ケージリング321と取り付けアセンブリ310との間に延在する主に水平方向に延在するビーム又はロッド324が配置され、垂直方向のビーム又はロッド313に接続され、好ましくは、存在する場合には中間内側ケージリング314に接続されることが好ましい。
【0087】
さらに、好ましくは、リング311、312、314、320、321の各々と、ビーム又はロッド313、323、324、325との間に、適切な角度でクロスビーム又はクロスロッド326が配置されて、1つ又は複数の区画を有する剛性の高いフレームワークのケージ構造体を形成する。三角形を形成するビーム又はロッドの数が多いほど、より剛性の高い強化な構造になる。
【0088】
全てのリング311、312、314、320、321と、ロッド又はビーム313、323、324、325、326とは、ケージ構造体300のための長期的/恒久的、又は制御可能なバラストや浮力に利用することができる内部容積を示す。下部内側ケージリング312は、好ましくは、長期的/恒久的なバラストを提供するように配置され、バラスト水、又は水よりも重い、即ち、水よりも高い密度を有する材料で充填することができる。バラストを提供する下部内側ケージリング312がケージ構造体300の最下部に配置されることによって、ケージ構造体300の浮力中心よりも下にある、ケージ構造体300の重心が提供され、その結果、ケージ構造体300の周辺部に沿って重量が減少する。
【0089】
下部外側ケージリング321は、空気や水中に浮力を提供する他の気体で満たされることによって、長期的/恒久的な浮力を提供するように構成されている。これによって下部外側ケージリング321は、水中でケージ構造体300の重量をバランスさせるのに十分な浮力を提供する。
【0090】
本発明の一実施形態によれば、取り付けアセンブリ310の垂直なビーム又はロッド313は、その内部容積から水を取り込んだり、そこから水を取り除いたりするように構成されることにより、制御可能なバラストを提供するようにさらに構成されている。垂直なビーム又はロッド313に、制御可能なバルブと少なくとも1つの空気圧手段とを備えた穴などの、制御可能なバラスト手段を設けることによって、垂直なビーム又はロッド313は、ケージ構造体300を水中に降ろしたり/沈めたりするときに、十分なバラストを提供する。このバラストを除去することによって、ケージ構造体300の浮力は、後述する制御可能な移動手段800によって補助されて、水中でケージ構造体を上昇させるのに十分なものとなる。
【0091】
本発明のさらなる実施形態によれば、下部内側ケージリング312と下部外側ケージリング321との間に延在するビーム又はロッド324は、制御可能なバラスト又は浮力を提供するためにさらに構成することができ、このバラスト又は浮力は、ケージ構造体300のバランスをとるために使用することができ、ケージ構造体300が上昇又は下降する際のジャミング(jamming)を防止することができる。
【0092】
以下でさらに説明するように、ビーム又はロッド324の制御可能なバラスト又は浮力は、例えば、ケージ構造体300と細長い垂直支柱200との間の摺動面に沿った圧力センサによって制御することができる。
【0093】
上述のケージ構造体300は、
図4b-c及び
図9a-bに示すように、ワイヤスクリーン、グリッド、ファブリック又はネットによって形成された、ここでは壁、屋根及び底部であるケージ側面330をさらに備える。汚れ(fouling)の量を減らすために、ケージ側面330は、真鍮又は他の銅合金で形成することができる。金属/銅合金のケージ側面330を使用することによって、ケージ側面330は、ケージ構造体300の強度にも寄与するであろう。ワイヤスクリーン、グリッド、ファブリック、又はネットを使用することによって、ケージ構造体300がその中の複数の開口部に起因して波や海流(waves and currents)から受ける抵抗を低減することができる。上述のケージ側面330は、ケージ構造体300内に多数のサブケージ/個別ケージ300aを形成するために、ケージ構造体300内に仕切り壁を形成するのに使用することもできる。
【0094】
上記のケージ側面330をケージ構造体300の屋根として使用することに加えて又はその代わりに、ケージ構造体300の上側全体を覆う1つのケージ側面によってケージ構造体300を覆い、屋根として機能させてもよい。屋根として機能する前記ケージ側面330は、ケージ構造体300の内部へのアクセスを可能にし、複数のサブケージ/個別ケージ300aが配置されている場合には、サブケージ/個別ケージ300aの各々へのアクセスを可能にする、少なくとも1つのハッチ(図示せず)を備えている。
【0095】
上述したように、ケージ構造体300は、細長い垂直支柱200の長手方向に移動するように配置されている。ここで、
図5を参照する。ケージ構造体300が細長い垂直支柱200に対して固定された位置で移動されるようにするために、細長い垂直支柱200は、少なくとも1つの長手方向トラック340を備え、ケージ構造体300は、少なくとも1つの長手方向トラック340と係合し、かつ長手方向トラック340に沿って移動するように適合された少なくとも1つのガイド凹部341を備えている。実施例では、長手方向トラック340が、細長い垂直支柱200の周面から突出した低摩擦材料で覆われた垂直なスチール(滑り)軸受によって形成されている。少なくとも1つのガイド凹部341は、好ましくは上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312内周に配置されると共に、存在する場合には中間内側ケージリング314の内周にも配置され、好ましくは、内側ケージリング311、312を接続する垂直なビーム又はロッド313に接続して配置される。少なくとも1つの長手方向トラック340とガイド凹部341とによって、ケージ構造体300が細長い垂直支柱200に対して回転/旋回しないことが保証され、細長い垂直支柱200の長手方向におけるケージ構造体300の効果的な上昇及び下降が保証される。好ましくは、細長い垂直支柱200の円周に沿って配置された多数のそのような長手方向トラック340と、上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312の内周に沿って、存在する場合には中間内側ケージリング314の内周に沿って配置された多数の対応するガイド凹部341と、が配置されるであろう。
【0096】
代替的な実施形態によれば、ガイド凹部341は、細長い垂直支柱200に配置され、長手方向トラック340は、上部内側ケージリング311と下部内側ケージリング312の内周、存在する場合には中間内側ケージリング314の内周に配置される。
【0097】
記載された滑り軸受の1つの代替案は、ころ軸受であり得る。その他の明らかな代替案は、当業者の知識の範囲内であろう。
【0098】
従って、ケージ構造体300が、穴としてシステムのさらなる減衰を提供し、システムに追加の質量を提供することで、固有振動数がさらに低くなるであろう。
【0099】
図1に示すように、海上養殖システム100は、1つ又は複数のチェーン、ワイヤ等の少なくとも1つのアンカー手段900によって海底20に固定されてもよい。アンカー手段900によって海底20に固定される場合、アンカー手段900は、細長い垂直支柱200の下端よりも上に距離をおいて、細長い垂直支柱200に固定されることが好ましい。これにより、細長い垂直支柱200の下端にあるバラスト210、240と、それが提供するモーメントとによって、海流や波の影響を受けても、細長い垂直支柱200の安定した垂直位置が確保される。
図1に示すように、アンカー手段900に張力を与えるために、アンカー手段900に対し浮力手段910をさらに配置することができる。
【0100】
代替的な実施形態では、アンカー手段900は、アンカー手段900に張力を与えるように構成されたウインチなど(図示せず)に配置されてもよい。
【0101】
さらに、海流及び/又は風向きに応じて、海上養殖システム100を回転させることが望まれる場合がある。これは、海底20のアンカーポイントを別の場所に移動させることによって、又は、海底20の異なる場所に配置され、海上養殖システム100を回転させるために個別に制御(緊張及び弛緩)することができる個別のチェーン、ワイヤなどによって細長い垂直支柱200に取り付けられた複数のアンカーポイントを使用することによって、達成することができる。別の代替案は、海上養殖システムを所望の位置に回転/旋回させるために、細長い垂直支柱200が、アンカー手段900のための可動式の取付点(図示せず)を(例えば、スライダ、歯車などによって)備えることである。
【0102】
さらなる代替的な実施形態では、海上養殖システム100が、海中で自由に浮遊し、推進手段によって所望の位置に保持され得るように、細長い垂直支柱200は、スラスターなどの推進手段(図示せず)と、推進手段を制御する制御システムとを備えている。
【0103】
細長い垂直支柱200は、図示するように、少なくとも1つの作業デッキ500が配置される、海面10より上の距離まで、好ましくは波の高さより上の距離まで延在するであろう。
【0104】
少なくとも1つの作業デッキ500の上では、細長い垂直支柱200は、少なくとも1つの作業デッキ500の下の細長い垂直支柱200の部分よりも小さい直径で延在するが、細長い垂直支柱200のこの部分は、細長い垂直支柱200に取り付けられた別個の部分であってもよい。
【0105】
ここで、少なくとも1つの作業デッキ500の上にある細長い垂直支柱200の部分の原理図を示す
図6を参照する。少なくとも1つの作業デッキ500の上に配置された細長い垂直支柱200の部分、又は別個の部分は、その下部において、操作設備、機械、作業場、供給タンク、制御中央部などのためのハウジング600を提供する。
【0106】
このハウジング600の上部には、典型的には、居住エリア、リビングルーム、オフィス、研究室などが配置される。
【0107】
さらに、陸上の受信者や救命ボートなどと通信するための通信手段が配置されることになる。
【0108】
細長い垂直支柱200の頂部には、ヘリパッド700が配置されてもよい。
【0109】
海面上の海上養殖システムの部分は、風力による影響を制限するために、海面下の部分よりも小さな直径を示すことが好ましい。
【0110】
次に、ケージ構造体300の上昇及び下降を補助するための制御可能な移動手段800を備えた、本発明の海上養殖システムの原理図を示す
図7a~bを参照する。
【0111】
図7a~bに示すように、ケージ構造体300のバラスト又は浮力手段と、制御可能な移動手段800とを組合せて使用することによって、細長い垂直支柱200の長手方向におけるケージ構造体300の移動を実現することができる。本発明の一実施形態によれば、制御可能な移動手段800は、少なくとも1つのウインチ810によって形成されている。この例では、少なくとも1つの作業デッキ500の下で、細長い垂直支柱200の上部に配置された2つのウインチ810が示されている。制御可能な移動手段800は、一端がウインチ810から延在し、少なくとも1つの作業デッキ500に関連して配置された1つ又は複数のプーリ830を介して、他端がケージ構造体300、好ましくは上部内側ケージリング311に取り付けられた少なくとも1つのウインチワイヤ820をさらに備える。ウインチ810は、好ましくはブレーキを備えたウインチ810である。ジャミングを回避するために、ケージ構造体300の異なる側からケージ構造体300の移動を引っ張ったり、ブレーキを掛けたりする複数のウインチ810を使用することが好ましいであろう。
【0112】
ケージ構造体300内に設けられた制御可能なバラスト及び浮力の特性を利用することによって、ケージ構造体300を、細長い垂直支柱200の長手方向に下降及び上昇させることができる。ケージ構造体300内に増大したバラストを提供することによって、ケージ構造体300は、正確に制御/移動するために、例えばウインチ810のブレーキによって補助されて、細長い垂直支柱200に沿って下降させることができる。浮力よりも依然としてバラストが多くなるように、ケージ構造体300からバラストを取り除くことによって、ウインチ810は、ケージ構造体300を吊り上げることができ、一方で残りのバラストは、ケージ構造体300を保持して海面10まであまり速く上昇しないようにすることで、ケージ構造体300が、安全かつ制御された方法で海面10まで上昇されることになる。
【0113】
例えば、細長い垂直支柱200の上述の少なくとも1つの長手方向トラック340に配置された、ピニオンラック、ベルトドライブなど、他の移動手段を使用することもできる。当業者によって考慮され得る他の解決策は、細長い垂直支柱200の外面又は長手方向トラック340と係合し、ケージ構造体300が下降したときに必要な制動力を提供し、ケージ構造体300が上昇したときに必要な巻き上げ力(hoisting force)を提供することができる駆動ホイールを使用することであろう。
【0114】
さらに別の可能な解決策は、細長い垂直支柱200の下端において1つ又は複数のプーリにわたって延在するワイヤを使用して、上述の制動力及び巻き上げ力を可能にすることである。
【0115】
ここで、細長い垂直支柱200に対するケージ構造体300の位置をその長手方向にロックするためのロック機構850の原理図を示す
図8a~bを参照する。ロック機構850は、例えば、長手方向トラック340及び凹部341に関連して配置され、ケージ構造体300が細長い垂直支柱200の所望の長手方向の位置に配置されたときに、ケージ構造体300と細長い垂直支柱200との間のロック機能を確保する。
【0116】
ロック機構850は、例えば、長手方向トラック340から突出するロック位置と、長手方向トラック340内に引っ込められる解除位置との間で移動可能な、ロック要素によって形成されてもよい。このようなロック機構850を長手方向トラック340の長手方向に多数配置して、細長い垂直支柱200に対するケージ構造体300の所望の位置でのロックを可能にしてもよい。
【0117】
ロック位置においては、ロック機構850は、その設計によって、ケージ構造体が上方又は下方のいずれかに移動することを防止するであろう。
図8aに示す解決策では、ロック機構850は、ケージ構造体300がロック位置で下方に移動するのを防止するであろう。
【0118】
一実施形態によれば、ロック機構850は、ケージ構造体300が上昇したとき、即ち、制御可能な移動手段800が作動されたときにのみ、引っ込むように構成される。
【0119】
ケージ構造体300が上側位置にあるとき、即ち、表面にあり、サービス、魚の搬入又は搬出などのケージ構造体300上の作業と関連するときに、ケージ構造体300をロックすることは、特に興味深いものとなろう。
【0120】
ロック機構850の他の代替的な解決策は、当業者には明らかであろう。
【0121】
さらに、
図8a~bに示すように、ケージ構造体300と細長い垂直支柱200/作業デッキ500(複数可)との間の接触力を吸収する、ゴムなどの衝撃吸収手段860が配置されていることが有利である。
図8aでは、少なくとも1つの作業デッキ500の下部/端部における衝撃吸収手段860が示されており、一方、
図8bでは、永久バラスト要素210の上部における衝撃吸収手段860が示されている。
【0122】
図9aには、少なくとも1つの作業デッキ500からケージ構造体300へのアクセスを可能にする上昇位置にあるケージ構造体300が示されており、
図9bには、波からの影響を受けないように水没位置にあるケージ構造体300が示されている。
【0123】
したがって、本発明により、遠隔地での大規模養殖を可能にする海上養殖システム100が実現される。
【0124】
細長い垂直支柱200の使用により、ケージ構造体300の海中での動きを最小限に抑えることができる。
【0125】
ケージ構造体300が細長い垂直支柱200の長手方向に移動可能に配置されることによって、ケージ構造体300を海中に下降/水没させることを可能にし、ケージ構造体300がいかなる波の影響も受けないことを確実にする。これはケージ構造体300が過酷な気象条件によって損傷を受けないことを確実にするために不可欠であろう。さらに、波からの影響を受けないようにケージ構造体300を下降/水没させることで、養殖魚が船酔いしないようにすることができる。魚が波にさらされると、船酔いしてしまい、その結果、魚は十分に餌を食べられず、思うように成長しなくなる。
【0126】
また、ケージ構造体300が細長い垂直支柱200の長手方向に移動可能に配置されることによって、ケージ構造体300を、シラミなどの生物が生息する領域よりも低い位置に配置することも可能である。従って、ケージ構造体300をこの領域より下に下げることで、魚はシラミなどの生物による影響を受けなくなる。また、シラミや同様の生物は、海岸線に近い場所よりも、沖合の遠隔地の方がはるかに少ないという事実がある。
【0127】
ケージ構造体300が海中に下ろされたときに魚に餌を与えることができるように、海上養殖システムは、ケージ構造体300内の各サブケージ300aへの給餌チューブ350(
図9a~bに示すように)を備える。給餌チューブ350は、ケージ構造体300の上昇及び下降に関連してそれぞれ巻き込んだり、巻き出したりするための手段(図示せず)に配置された可撓性ホース351(
図9a~bに示すように)に接続されている。可撓性ホース351は、さらに、前記ハウジング内の供給中心に配置される。
【0128】
さらに、ケージ構造体300は、ケージ構造体300又はサブケージ300aの底部から上昇するように配置された可動式の底部又はネットを備え、そこからの魚の収穫又は除去を容易にすることができる。
【0129】
海上養殖システムは、ケージ構造体300の構成要素のバラスト及び浮力の制御を可能にするために、ケージ構造体300への電力及び空気の供給部をさらに備える。これは、可撓性ホース351と同様に、ケージ構造体300の上昇又は下降に関連してそれぞれ巻き込んだり、巻き出したりするための手段(図示せず)に配置された可撓性の電力供給ケーブル352及び可撓性の空気供給チューブ353によって実現することができる。空気の供給は、上述したように、ケージ構造体300のバラスト又は浮力を制御するために必要である。また、電力供給は、ケージ構造体300のバラスト又は浮力の制御を行うバルブ、アクチュエータ、センサ等の計装、測定及び制御に必要である。
【0130】
本発明のさらなる実施形態によれば、ケージ構造体300は、上述の電力供給ケーブル352によって電力を供給される、ケージ構造体300の照明を提供するための人工照明手段(図示せず)をさらに備えている。ケージ構造体300が水中に降下すると、ケージ構造体300に到達する自然光の量がより少なくなる。従って、ケージ構造体内の魚の繁殖のために十分な光を提供し、十分な飼料の使用と望ましい魚の成長の両方を確保することが重要である。
【0131】
上述したホース、ケーブル又はチューブ351~353は、1つのユニット、例えば、アンビリカル(umbilical)として、ケージ構造体300の上昇及び下降に関連してそれぞれ巻き込んだり、巻き出したりするための手段(図示せず)に配置されてもよい。
【0132】
これにより、ケージ構造体300をより長い期間にわたって水没位置に保持することができる解決策が実現される。
【0133】
図4及び
図9a~bに示すように、さらに有利には、ケージ構造体の上端には、ケージ構造体300の上端の横方向又は円周方向に延在する通路360が設けられており、上昇位置にあるときには、人員がケージ構造体300の上を移動することができる。
【0134】
本発明による海上養殖システム100は、沖合の遠隔地で組み立てられるセクションによって形成されてもよい。例えば、細長い垂直支柱200は、最終的に細長い垂直支柱200を形成するように組み立てられる複数のセクションによって形成されてもよい。同様に、ケージ構造体300は、最終的にケージ構造体300を形成するために沖合の遠隔位置で組み立てられる複数のセクションによって形成されてもよい。海上養殖システムの構成要素が、沖合の場所で組み立てられるより小さなセクションによって形成されることによって、海上養殖システムを沖合の遠隔地に輸送することがより容易になろう。
【0135】
海上養殖システムには、エネルギー貯蔵部に貯蔵するエネルギーを追加生成するために、太陽電池、1つ又は複数の風車960(
図10に示す)を備えていてもよい。
【0136】
さらに、剛性ケージ構造体300が、船舶が接近して横づけするための安全な岸壁を提供することにも言及すべきである。
【0137】
上述した実施形態は、添付の特許請求の範囲内で変更された実施形態を形成するために組み合わせることができる。
【0138】
(変形例)
剛性ケージ構造体は、個々のサブケージの底部ネットを徐々に持ち上げて、その中にいる魚をサブケージの上部領域に向かって押し上げることができるように変更することができる。
【0139】
上述した細長い垂直支柱及び減衰手段の原理は、例えば、ブイ、プラットフォーム、風車の基礎、研究ステーション、石油製品(オイル、ガス)の採取及び貯蔵のための設備など、既存の又は将来の他の半潜水型の構造物における、波の減衰、上下動の減衰、固有振動数の低減、及びエネルギー生成に利用することができる。
【0140】
本発明によるシステムは、例えば、海上風車用の半潜水型の細長い垂直支柱を利用するように適合させることができる。これは、現在使用されている養殖システムにより類似した既存の細長い垂直支柱にシステムを適合させるか、又は、風車の細長い垂直支柱を本発明によるシステムに適合するように適合させることによって、実行することができる。
【0141】
すでに簡単に上述したように、本発明による細長い垂直支柱は、その上端に風車960を備えていてもよい。
【0142】
再生可能エネルギーの利用は今日の要求事項であり、再生可能エネルギー源(風力、波力、太陽光)を利用したエネルギー生成手段の統合は、将来的に、養殖システムの需要となるであろう。
【0143】
細長い垂直支柱におけるアンカー取り付け部は、支柱の円周方向(360度)に移動可能であってもよい。
【0144】
細長い垂直支柱は、好ましくはその下部であってアンカー取り付け部の上にあるスラスターによって増強されてもよい。
【0145】
風車と一体化された、又は海上風車のある地域に配置された本発明による海上養殖システムに関連して、海上養殖システムとの間の輸送のために、風車用のサービス船を使用することもできる。
【0146】
本発明によるケージ構造体は、上述したように、既存の又は将来の細長い垂直支柱や、基礎として使用される他の浮遊又は海底に取り付けられた構造物に適応するように、サイズ及びサブケージの数の両方に関して拡張可能である。例えば、沖合に配置された風車は、本発明によるケージ構造体を備えることができ、(保護区域のために)水没可能であるか否かを問わない。これに関連して、移動可能な船舶から支援機能やサービスの一部を提供することを選択することもできる。
【0147】
上述のサブケージは、さらに、別個の支持構造を備え、それらをケージ構造体に着脱可能に配置することができる。これにより、サブケージ全体をケージ構造体から取り外し、別のサブケージと交換することができる。ケージ構造体及びサブケージには、サブケージをケージ構造体に確実に取り付けるための相互に対応する取り付け手段が設けられる。この解決策は、船舶が1つのサブケージに接近して、サブケージを取り外し、必要に応じて別のサブケージと交換することを可能にする。