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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】中間体を特定する方法
(51)【国際特許分類】
   G16B 15/20 20190101AFI20240222BHJP
【FI】
G16B15/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021528022
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 IB2019056371
(87)【国際公開番号】W WO2020021493
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】102018000007535
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521035406
【氏名又は名称】イスティトゥート・ナツィオナーレ・ディ・フィージカ・ヌクレアーレ
【氏名又は名称原語表記】ISTITUTO NAZIONALE DI FISICA NUCLEARE
(73)【特許権者】
【識別番号】511262290
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ テレトン イーティーエス
(73)【特許権者】
【識別番号】521035417
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ・デッリ・ストゥーディ・ディ・トレント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA DEGLI STUDI DI TRENTO
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ・ファッチョーリ
(72)【発明者】
【氏名】エミリアーノ・ビアジーニ
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0183452(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0270094(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0130294(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101436230(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16B 5/00-99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創薬手順のための標的として試験するのに適した標的タンパク質フォールディング中間体を特定する方法であって、電子計算によって実行される以下の工程:
- タンパク質のフォールディング経路を規定するイベントの時の配列をモデル化する工程であって、前記フォールディング経路に沿った1つまたは複数のタンパク質フォールディング中間状態の構造的特性および/またはエネルギー特性および/または物理化学的特性をモデル化および/または計算することを含む工程;
- 前記構造的特性およびエネルギー特性および/または物理化学的特性の中の特定特性に基づき、モデル化されたフォールディング経路に沿って、少なくとも1つの候補タンパク質フォールディング中間体を特定する工程;
- 前記構造的特性およびエネルギー特性および/または物理化学的特性の中の選択特性に基づき、前記少なくとも1つの候補タンパク質フォールディング中間体の中から1つまたは複数の標的タンパク質フォールディング中間体を選択する工程
を含み、
前記選択特性がタンパク質フォールディング中間体の創薬可能性に関連し、
前記標的タンパク質フォールディング中間体が、ネイティブ状態で存在しない選択特性、例えばネイティブ状態で存在しない創薬可能なポケット、またはネイティブ状態で存在するポケットからの二乗平均偏差の閾値よりも大きい二乗平均偏差を特徴とする創薬可能なポケットを有する、方法。
【請求項2】
前記特定特性が、前記タンパク質フォールディング中間体のエネルギー的および/または物理化学的特性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択特性が、
- 検討される候補タンパク質フォールディング中間体の創薬可能性に関連する構造特性、および/または
- タンパク質のホットスポット特定のためのスコアリングパラメータ
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記特定特性が、前記タンパク質の中間状態と天然状態との間の、または中間状態と天然状態に向かう次の中間体との間の、自由エネルギー障壁を含み、
候補タンパク質フォールディング中間体として中間体を特定する工程が、前記中間体と天然状態または天然状態に向かう次の中間体との間の自由エネルギー障壁が自由エネルギー閾値よりも大きいことを特徴とする、前記請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- 中間体からネイティブ状態への移行の速度の逆数または前記フォールディング経路に沿った次の中間体への移行の速度の逆数として規定される中間体の寿命を推定することを更に含み、
ここで、特定する工程が、最小寿命閾値よりも長い寿命を有する中間体を候補タンパク質フォールディング中間体として特定することを含む、前記請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの候補タンパク質フォールディング中間体を特定する工程が、準安定状態を特定することを含む、前記請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記選択特性が、検討される候補タンパク質フォールディング中間体における創薬可能なポケットの存在を含み、前記創薬可能なポケットがポケットパラメータに関して規定され、および
選択する工程が、前記ポケットパラメータとそれぞれの閾値との比較に基づき、特定された候補タンパク質フォールディング中間体の中から1つまたは複数の標的タンパク質フォールディング中間体を選択することを含む、前記請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポケットパラメータが、寸法パラメータおよび/または形状パラメータおよび/または位置パラメータおよび/または疎水性特性に対する対親水性特性の比を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポケット寸法パラメータが、ポケットの体積および/またはポケットの深さ、および/またはポケットの封入および/または露出を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記スコアリングパラメータが、「サイトスコア」および/または「Dスコア」および/または「ドラッグスコア」および/またはポケットバランスを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
- 前記自由エネルギーの閾値が7.5kJ/molである;および/または
- 前記中間体の寿命の閾値が生理学的条件でのタンパク質半減期の少なくとも3倍である;および/または
- 前記二乗平均偏差の閾値が2Åと等しい、または2Åを超える;および/または
- 前記ポケット体積の閾値が少なくとも350Åである;および/または
- 前記ポケットの深さの閾値が少なくとも13Åである;および/または
- 前記ポケット露出が≦0.49である;および/または
- 前記ポケット封入が≧0.78である;および/または
- 前記ポケットのサイトスコア閾値が≧0.8である;および/または
- 前記ポケットのDスコア閾値が≧0.98である;および/または
- 前記ポケットのドラッグスコア閾値が≧0.5であり、
- 前記ポケットバランスが≧1である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
タンパク質フォールディング経路の時間エボリューションをモデル化する工程が、分子力学(MM)または量子力学分子力学(QM-MM)アプローチに基づく計算的シミュレーションによって実施される、前記請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
タンパク質フォールディング経路の時間エボリューションをモデル化する工程が、ラチェットおよびパウル分子動力学に基づく計算的シミュレーションによって、および/またはバイアス関数計算的アプローチによって、および/またはセルフ・コンシステント・パス・サンプリング計算的アプローチによって実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
タンパク質フォールディング経路の時の配列をモデル化する工程が、タンパク質フォールディング経路の再構築またはフォールディング中間体の特定をもたらす任意のインシリコアプローチまたは実験的アプローチによって実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
フォールディング中間体標的化に基づくインシリコ創薬のための方法であって、
- 請求項1~13のいずれか一項に従い、インシリコ創薬手順のための標的として試験するのに適した標的タンパク質フォールディング中間体を特定する方法を実施すること;
- 選択した標的タンパク質フォールディング中間体にてインシリコ創薬を実施することを含
創薬可能なポケットまたはホットスポットが特定されている、選択された各標的タンパク質フォールディング中間体に対してインシリコ創薬を実施する工程が、
- 前記標的タンパク質フォールディング中間体で特定された1つまたは複数の創薬可能なポケットおよび/またはホットスポットの特性に基づいて、潜在的なリガンドを特定する工程であって、前記1つまたは複数の創薬可能なポケットおよび/またはホットスポットが可能な結合部位と見なされる、工程;
- インシリコシミュレーションを通じて、特定されたリガンドのそれぞれと特定された結合部位のそれぞれとの相互作用をモデル化する工程;
- 前記モデル化に基づいてリガンドを選択する工程を含む、方法。
【請求項16】
コンピュータによって実行されると、コンピュータに、請求項1~15のいずれか一項に記載の標的タンパク質フォールディング中間体を特定するための方法を実行させる少なくとも1つのプログラム指示を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
創薬手順のための標的として試験するのに適した標的タンパク質のフォールディング中間体を特定する方法を本明細書で説明する。本方法は電子計算によって実行される。
【背景技術】
【0002】
タンパク質がどのようにフォールディングするのか、なぜそのようにフォールディングされるのか、そして各タンパク質のフォールディング経路がその配列と構造にどのようにコードされるのかという問題は、タンパク質の構造と設計、フォールディングとミスフォールディング、調節と機能、臨床上の問題、および産業上の利用にとって根本的であり、重要である。
【0003】
B.Nolting1999(Protein Folding Kinetics:Biophysical Methods,Springer,Berlin);W.A.Eaton等、2000(Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.29,327);V.DaggettおよびA.Fersht2003(Nat.Rev.Mol.Cell Biol.4,497)は、タンパク質フォールディングの動力学を理解するための試みを記載している。取り組むべき新規な治療上の標的を特定する必要性は、長い間未解決であった必要性である。
【0004】
本明細書では、タンパク質のフォールディング過程に関連する経路の特定を可能にする新規な計算的アプローチが、創薬可能な標的タンパク質フォールディング中間体の特定に有用であることを初めて実証し、これまで取り組まれてこなかった薬理学上の標的に対する創薬の新しい道を切り開くものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】B.Nolting 1999(Protein Folding Kinetics:Biophysical Methods,Springer,Berlin)
【文献】W.A.Eaton等、2000(Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.29,327)
【文献】V.DaggettおよびA.Fersht 2003(Nat.Rev.Mol.Cell Biol.4,497)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
より具体的には、本発明は、創薬手順のための標的として試験するのに適した標的タンパク質フォールディング中間体を特定する方法に関し、およびフォールディング中間体標的化に基づくインシリコ創薬のための方法に関する。
【0007】
特に、本発明は、選択されたリガンドに結合されると安定化されるフォールディング中間体を特定することを可能にし、これは、例えば安定化されたフォールディング中間体を細胞から除去し、かくして、それらの活性を阻害する結果をもたらし得る。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、選択されたリガンドに結合されると、安定化され得る、場合により活性化され得る中間体の特定を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1はバイアス・ファンクショナル(BF)アプローチを用いて計算されたヒトPrPCのフォールディング経路におけるコンフォメーションの頻度ヒストグラムである。軌道(トラジェクトリー)が文書で説明される2つの集団変数に投影されている:ネイティブコンタクトQの割合、およびネイティブ構造(PDBコード:1QLZ)からの二乗平均偏差(RMSD)。
図2図2はPrPCのフォールディング中間体で最も訪れる構造を表す3つの主要なクラスター(クラスターC1、C2およびC3と称される)である。
図3図3はプリオンタンパク質PrPのフォールディング中間体(FI-PrP)において潜在的に創薬可能な領域である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳しい説明)
本明細書は、創薬手順のための標的として試験するのに適した標的タンパク質のフォールディング中間体を特定する方法を説明する。
前記方法は、以下に示す工程を含み、それらは電子計算によって実行される。
【0011】
前記方法は、タンパク質のフォールディング経路を規定するイベントの時の配列をモデル化する工程を提供し、前記工程は、前記フォールディング経路に沿った1つまたは複数のタンパク質フォールディング中間状態の構造的特性および/またはエネルギー特性および/または物理化学的特性をモデル化および/または計算することを含む。このモデル化する工程は、例えば、前記フォールディング経路に沿ったタンパク質フォールディング中間状態の配列をモデル化することを含み得る。
【0012】
次いで、前記方法は、特定特性(前記構造的特性およびエネルギー特性および/または物理化学的特性に含まれる)に基づき、モデル化されたフォールディング経路に沿って、少なくとも1つの候補タンパク質フォールディング中間体を特定する工程;および、選択特性(前記構造的特性およびエネルギー特性および/または物理化学的特性に含まれる)に基づき、前記少なくとも1つの候補タンパク質フォールディング中間体の中から、1つまたは複数の標的タンパク質フォールディング中間体を選択する工程を含む。
前記選択特性は、タンパク質フォールディング中間体の創薬可能性に関連する。
【0013】
本明細書によれば「フォールディング経路」は、時間の経過に伴う、フォールディングされていないタンパク質からの天然のフォールディングへの移行を示し、即ちアミノ酸鎖がその熱力学的に安定な状態に達する方法を示す。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、本明細書で言及される「タンパク質フォールディング」および「フォールディング経路」の適用内容は、内因性のタンパク質合成の範囲が意図されるのであって、変性または再生プロセスとして、または配座異性体に、もしくは「短命のコンフォメーション」とは関係しない。
【0015】
本明細書によれば「創薬可能性」は、薬物(例えば、小分子、他の任意の有機化合物、ペプチドまたは抗体)の結合を可能にし、かくして患者に潜在的な治療上の利益をもたらす、タンパク質またはタンパク質の任意の「コンフォーマー」の能力である。「コンフォーマー」は、同じポリペプチドのそれぞれの別のコンフォメーションである。コンフォーマーは、ポリペプチドのコンフォメーション異性および高分子の熱力学的状態の統計的特性を反映する。
【0016】
上記したように、本方法は「候補タンパク質フォールディング中間体の特定」(本明細書中で「特定特性」と称するフォールディング中間体状態の特性の第1セットに基づく)および「標的タンパク質フォールディング中間体の選択」(本明細書中で「特定特性」と称するフォールディング中間体状態の特性の第2セットに基づく)の2つの異なる工程を提供する。
【0017】
以下の説明部分にて「特定特性」および「選択特性」のいくつかの例を示す。「特定特性」および「選択特性」が別の物であり得ること、本発明の好ましい実施形態では実際には異なるものであることが明らかとなるであろう。
【0018】
本方法の1つの実施形態によれば、前記特定特性は、タンパク質フォールディング中間体のエネルギー特性および/または物理化学的特性を含む。
【0019】
この実施形態の実行オプションによれば、特定特性は、タンパク質の中間状態と天然状態との間の自由エネルギー障壁、または中間状態と天然状態に向かう次の中間体との間の自由エネルギー障壁を含む。この場合、特定する工程は、前記中間体と天然状態または天然状態に向かう次の中間体との間の自由エネルギー障壁が自由エネルギー閾値よりも大きいことを特徴とする中間体を、「候補タンパク質フォールディング中間体」として特定することを含む。
【0020】
実行の例において、自由エネルギーの閾値は7.5kJ/molである。
【0021】
この実施形態の別の実行オプションによれば、特定特性は、中間体からネイティブ状態への移行の速度の逆数(inverse rate of transition)またはフォールディング経路に沿った次の中間体への移行の速度の逆数として規定される中間体の寿命を含む。
【0022】
この場合、本方法は、中間体の前記寿命を推定する更なる工程を含み、特定する工程が、最小寿命閾値よりも長い寿命を有する中間体を「候補タンパク質フォールディング中間体」として特定することを含む。
【0023】
実行の例において、最小寿命閾値は、生理学的条件におけるタンパク質半減期の少なくとも3倍であってよい。
【0024】
本方法の1つの実施形態によれば、少なくとも1つの候補タンパク質フォールディング中間体を特定する工程は、準安定状態を特定することを含む。
【0025】
ここで、第2特性、即ち「選択特性」を考慮して、次に詳細を示す。
本方法の1つ実施形態によれば、選択特性は、検討される候補タンパク質フォールディング中間体の創薬可能性に関連する構造特性を含む。
【0026】
本方法の実施形態によれば、選択特性は、タンパク質ホットスポット特定のためのスコアリングパラメータを含む。
【0027】
本明細書において「ホットスポット」は、製薬研究で一般的に使用される用語と一致して、リガンド結合の傾向が高く、したがって創薬にとって潜在的に重要な標的タンパク質上の部位である。
【0028】
本方法の1つの実施形態によれば、選択する工程は、ネイティブ状態で存在しない選択特性を有する中間体を標的タンパク質フォールディング中間体として選択することをさらに含む。
【0029】
実行オプションによれば、選択する工程は、ネイティブ状態で存在しない創薬可能なポケットを有する中間体を標的タンパク質フォールディング中間体として選択することをさらに含む。
【0030】
本明細書において用語「ポケット」は、製薬研究の分野で一般的に使用される用語と一致して、小分子が結合するのに適したタンパク質の三次構造の空間領域を示す。
【0031】
特に、創薬可能ポケットの概念は、薬物様分子に結合することができ、かくしてタンパク質の生物学的機能の調節を得ることができる、疾患に関連したタンパク質標的の特異的結合部位を示す。
【0032】
結合部位が3D構造(例えば、リガンド-タンパク質複合体)または他の実験データ(例えば、薬剤耐性変異)から分からない場合、計算手法を実施して可能性のある位置を示唆することができる。
【0033】
この説明の以下の部分にて、結合部位/ポケットを特徴づけるために説明した方法に使用される幾つかの特性および/またはパラメータおよび/またはグローバルポケットの説明(およびそれぞれの例示的な値)を述べる。
【0034】
別の実行オプションによれば、選択する工程は、ネイティブ状態で存在するポケットからの二乗平均偏差(RMSD)閾値よりも大きい二乗平均偏差を特徴とする創薬可能ポケットを有する中間体を、標的タンパク質フォールディング中間体として選択することを更に含む。
【0035】
実行の例において、前記二乗平均偏差の閾値は、2オングストローム(Å)と等しいか、または2オングストローム(Å)よりも大きい。
【0036】
本方法の1つの実施形態によれば、選択特性は、検討される候補タンパク質フォールディング中間体における創薬可能ポケットの存在を含み、前記創薬可能ポケットはポケットパラメータに関して規定される。
【0037】
本方法の1つの実施形態によれば、選択する工程は、結合ポケットの特定、結合ポケットの特徴付け、結合ポケットの創薬可能性予測の工程を含む。
【0038】
この場合、選択する工程は、特定された候補タンパク質フォールディング中間体の中から、前記ポケットパラメータとそれぞれの閾値との比較に基づいて1つまたは複数の標的タンパク質フォールディング中間体を選択することを含む。
【0039】
この実施形態の異なる実行オプションによれば、上記したポケットパラメータは、寸法パラメータ、および/または形状パラメータ、および/または位置パラメータ、および/または疎水性特性に対する親水性特性の比を含む。
【0040】
特に、寸法ポケットパラメータは、ポケットの体積および/またはポケットの深さおよび/またはポケットの封入および/または露出を含み得る。露出および封入の特性は、その部位が溶媒に対してどれだけ開いているかについての異なる尺度を提供する。
【0041】
実行の例において、ポケット体積の閾値は少なくとも350Åである。
【0042】
実行の例において、ポケット露出の閾値は0.49未満であり、ポケット封入の閾値は少なくとも0.78である。
【0043】
実行の例において、ポケット深さの閾値は少なくとも13Åである。
【0044】
選択特性の中の、タンパク質のホットスポット特定のためのスコアリングパラメータは、これまでに言及している。
【0045】
本特徴に関して、本方法の別の実施形態は、そのようなスコアリングパラメータが「サイトスコア」および/または「Dスコア」および/または「ドラッグスコア」および/またはポケットバランスを含むことを提供する。
【0046】
これらのパラメータは、タンパク質およびタンパク質中間体のモデル化および特性評価の分野でそれ自体公知であり、タンパク質のネイティブ状態またはタンパク質のフォールディング中間体の「創薬可能性」を評価するのに適した、種々の特性に関連する値の組合せに基づく。
【0047】
実際、そのようなスコアリングパラメータは、既知の評価ソフトウェアパッケージに由来する。
【0048】
例えば、SiteMap(Halgren TA(2009)“Identifying and characterizing binding sites and assessing druggability”,J.Chem.Inf.Model 49:377-389)は、部位のスコア(サイトスコア)および創薬可能性スコア(Dスコア)を、3つの単一の記述:結合ポケットのサイズ、その封入(enclosure)およびその親水性に関するペナルティーのみの線形の組合せ(liner combination)を通じて予測する。
【0049】
別の例は、DoGサイトスコア(A.Volkamer,D.Kuhn,T.Grombacher,F.Rippmann,M.Rarey,“Combining global and local measures for structure-based druggability predictions”J.Chem.Inf.Model.2012,52,360-37)であり、これもまた0から1の範囲の創薬可能性スコア(ドラッグスコア)を生成する。
【0050】
明らかに、本方法の他の実施形態では、他の既知のスコアリングパラメータを使用することができ、および/または新たなスコアリングパラメータを定義して採用することができる。
【0051】
この場合もまた、選択はスコアリングパラメータとそれぞれの閾値との比較に基づく。
【0052】
本方法のいくつかの実施形態では、スコアリングパラメータの閾値は、以下のように選択される。
実行の例において、ポケットのサイトスコアの閾値は0.8である。
実行の例において、ポケットのDスコアの閾値は0.98である。
実行の例において、ポケットのドラッグスコアの閾値は0.5である。
実行の例において、ポケットバランスの閾値は1.0である。
【0053】
以上で示したように、本方法は、候補タンパク質フォールディング中間体の特定および標的タンパク質フォールディング中間体の選択の基礎として使用される特性を提供する。
【0054】
さらに、本方法はまた、上記した特定および選択工程の基準を提供する。これらの基準は、例えば、特定および/または選択について選択された特性に関連するパラメータおよび/または値とそれぞれの閾値との比較に基づく。
【0055】
閾値の例示的な値は、上記の説明で提供した。それにもかかわらず、当業者は、閾値がタンパク質の種類または他の要件に従ってケースバイケースで選択することができるため、本方法が上述した例示的な値に限定されないことは理解できる。
【0056】
本方法の1つの実施形態によれば、タンパク質フォールディング経路の間の配列をモデル化する工程は、分子力学(MM)または量子力学分子力学(QM-MM)アプローチに基づく計算的シミュレーションによって実行される。
【0057】
本実施形態の異なる可能な実行オプションによれば、上記した計算的シミュレーションは、ラチェットおよびパウルの分子動力学に基づく計算的シミュレーションによって、および/またはバイアス関数計算的アプローチによって、および/またはセルフ・コンシステント・パス・サンプリング計算的アプローチによって実施される。
【0058】
当業者は、上記したアルゴリズムおよび計算的アプローチが本開示内容を明確にするために提供された単なる例であると容易に理解でき、また、本方法が本明細書で明示的に言及されていない同じ種類の結果を与える他のアルゴリズムおよび計算的アプローチを使用して実行できることを容易に理解できる。
【0059】
タンパク質フォールディング経路の時間エボリューションをモデル化する上記した工程を実行するために効果的に使用できる例示的なアルゴリズムの詳細は、科学論文“S.Orioli,S.a BeccaraおよびP.Faccioli,J.Chem.Phys.147,064108(2017)”;“C.Camilloni,R.A.BrogliaおよびG.Tiana,J.Chem.Phys.134,045105(2011)”;“S.a Beccara,L.FantおよびP.Faccioli,Phys.Rev.Lett.114,098103(2015)”に記載されている。
【0060】
本方法の他の可能な実施形態によれば、タンパク質フォールディング経路の時の配列をモデル化する工程は、タンパク質フォールディング経路の再構築の再構成またはフォールディング中間体の特定をもたらす任意の他のインシリコアプローチに基づく計算的シミュレーションによって実行される。
【0061】
本方法の他の可能な実施形態によれば、タンパク質フォールディング経路の時の配列をモデル化する工程は、タンパク質フォールディング経路の再構築またはフォールディング中間体の特定をもたらす任意の実験的アプローチによって実行される。
【0062】
本発明に含まれるフォールディング中間体の標的化に基づくインシリコ創薬のための方法を、以下に説明する。
【0063】
そのような方法は、上記した実施形態のいずれか1つに従って、インシリコ創薬手順の標的として試験されるのに適した標的タンパク質フォールディング中間体を特定するための方法を実施する工程を含む。
【0064】
これに基づき、インシリコ創薬の方法は、選択された標的タンパク質フォールディング中間体に対してインシリコ創薬を実行することを提供する。
【0065】
本方法の実施形態によれば、創薬可能なポケットまたはホットスポットが特定されている、選択された各標的タンパク質フォールディング中間体に対してインシリコ創薬を実施する工程は、標的タンパク質フォールディング中間体で特定された1つまたは複数の創薬可能なポケットおよび/またはホットスポットの特性に基づいて潜在的なリガンドを特定する工程であって、前記1つまたは複数の創薬可能なポケットおよび/またはホットスポットは可能な結合部位と見なされる、工程;次いで、インシリコシミュレーションを通じて、特定されたリガンドのそれぞれと特定された結合部位のそれぞれとの相互作用をモデル化する工程;最後に上記したモデル化に基づいてリガンドを選択する工程、を含む。
【0066】
本方法の異なる実行オプションにおいて、原則として、インシリコ創薬のための任意の既知の手順を用いることができる。
【0067】
本開示はまた、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、上記の例示した実施形態のいずれかに記載されるように、標的タンパク質フォールディング中間体を特定するための方法を実行させる、少なくとも1つのプログラム指示を含む、コンピュータプログラムを包含する。
【0068】
本開示はさらに、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、上記の例示された実施形態のいずれかに記載されるようなインシリコ創薬のための方法を実行させる、少なくとも1つのプログラム命令を含むコンピュータプログラムを包含する。
【0069】
自明なように、用語「コンピュータ」は、本詳細な説明の文脈において、その最も広い意味が意図されるものであり、スーパーコンピュータおよび/またはコンピュータクラスタ、または他のタイプの既知の電子プロセッサを含む。
【0070】
本開示はまた、前記コンピュータプログラムまたは複数のプログラムを運搬するキャリアおよび/またはメディアおよび/またはサポートを含む。
【0071】
以下の説明部分では、本発明の例示的な非限定的な実施形態についての更なる説明を提供する。
以下に示すフェーズは、本方法を実行する間に当業者によって実行される実際の動作の概要を示す。
【0072】
(i)標的の特定
標的の特定および選択タスクは上記で詳細に説明されている。
【0073】
(ii)創薬可能なポケットの特定
選択された候補タンパク質フォールディング中間体のインシリコ・スカウト分析は、選択されたタンパク質フォールディング中間体に固有であり、前記タンパク質のネイティブ形態には存在しない、溶媒に露出された創薬可能なポケットを有する標的タンパク質フォールディング中間体の選択をもたらす。
【0074】
(iii a)小分子の特定
本発明による実施形態では、選択する工程は、最も高くランク付けされたポケット、即ち最も高くランク付けされた標的タンパク質フォールディング中間体を選択することを含み、それ若しくはそれらは、次いで、潜在的な小さいリガンドを特定するための仮想の薬物スクリーニングキャンペーンを実施するために使用される。研究分野/標的に応じて、アドホック仮想の化学ライブラリ(ad-hoc virtual chemical libraries)を設計し、構築する。最も有望な候補を選択するために、技術水準で利用可能な計算的アプローチ/ツール、例えばドッキングベースの仮想のスクリーニング、リガンド親和性、リガンド効率(LE)およびリガンド脂溶性効率(LLE)の評価、汎アッセイ干渉化合物(Pan-Assay Interference Compounds)および潜在的な凝集体の除去、物理化学的化合物特性およびADMET化合物の特性の分析、仮想化合物の類似性およびクラスタリング分析が適用される。
【0075】
本明細書で説明したアプローチおよび特許請求するアプローチは、後に、より費用がかかり時間を消費するインビトロ実験で試験される、最も有望な候補を効率的な様式で選択することを可能にする。
【0076】
(iii b)その他の分子の特定
本発明による他の実施形態において、記述の方法に従って特定された化合物には、抗体(および抗体誘導体)、毒素、核酸が含まれてよく、そのような分子はまた、内因性代謝物によって代表され得る。
【0077】
(iv)細胞ベースのアッセイ
例として、仮想のスクリーニングによって予測されたリガンドは、安定的にトランスフェクトされた異種の細胞システムにおいて、用量依存的な様式で標的タンパク質の発現を翻訳後に減少させるそれらの能力を試験することによって検証される。
【0078】
原則として、十分に高い親和性でもってタンパク質のフォールディング中間体に結合する任意の化合物は、そのエネルギー状態を低下させ、その構造を安定させ、かくしてその半減期を延長し得る。細胞の文脈では、そのような安定化効果は、細胞のフォールディング品質管理機構によって認識される異常に長寿命のフォールディング中間体を生成し、翻訳後修飾の正しい追加を妨げ、および/またはその分解(例えば、プロテアソーム関連の分解および/またはオートファジー)をもたらし得る。この原則に従い、特定されたフォールディング中間体のインシリコで予測された候補リガンドを、標準的な異種の細胞システム(例えば、HEK293、CHO、SH-SY5YまたはHeLa細胞)において試験して、標準的な生化学的手法(例えば、ウエスタンブロッティング)によってアッセイされる用量依存的な方法での標的タンパク質(例えば、適切な標的フォールディング中間体が特定されたタンパク質)の全体的な発現を低下させる、または完全に抑制することができる化合物を選択する。標的タンパク質が利用可能な細胞系で内因的に発現されない場合、前記標的タンパク質の発現を得るために、発現ベクターを設計して、細胞を安定的にトランスフェクトする。
【0079】
(実施例)
プリオン病は、内因性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)に固定された細胞表面の糖タンパク質であるPrPCが、罹患者の中枢神経系に蓄積する「スクレイピー型のPrP」(またはPrPSc)と称される誤ったフォールディングアイソフォームへコンフォメーション転換することと関連する。PrPScは、検出可能な情報をコードする核酸を欠く感染性のタンパク質(プリオン)であり、それはPrPCに直接結合して、そのコンフォメーション再配列をトリガーすることによって新らたなPrPSc分子を複製する。多くの証拠は、プリオンの生物学的特性を指定する必要な情報がPrPScの構造に排他的にコードされていること、ならびに異なるPrPSc配座異性体がさまざまな形態のプリオン病の根底にある神経病理学的および臨床的特徴を含む異なる株の特性を生成し得ることを示す。PrP遺伝子の疾患関連変異は、PrPCの凝集性で病原性のPrPSc様形態への誤ったフォールディングに有利に働くと考えられる。これらの特有の特徴にもかかわらず、遺伝的研究、生物物理学的研究および生化学的研究から生じた証拠の増加は、プリオン病で機能する病原性メカニズムが他のいくつかの障害で発生する神経変性経路の根源にある可能性を示唆する。大きく増加する一連の証拠は、PrPCの発現および/または活性を調節することができる化合物が、幾つかの神経変性疾患に完全に新しい治療的展望を提供する可能性があるという結論に向けさせる。
【0080】
本明細書に記載の方法は、PrPCのフォールディング中間体を標的とする小分子を特定するために適用され、従ってPrPCの発現を翻訳後に阻害し得る潜在的な可能性がある。
【0081】
明示的な溶媒中でのBF手順を用い、Gromacs4.6.5を使用したTIP3P溶媒モデルを用いたAmberff99SB-ILDN力場を使用して、PrPのフォールディング経路を計算した。前記BFアプローチは、Plumed2.0.2プラグインに統合されている。サーマル・アンフォールディングMDシミュレーションによって、エネルギーが最小化されたPrPネイティブ構造から開始して得られた、12個の独立したアンフォールドされたコンフォメーションを検討した。12個の初期のアンフォールドされた条件のそれぞれについて、rMDによって生成された20個のrMD試行トラジェクトリー(軌道)すべてを、それらのBFファンクショナルを評価することによってスコア付けした。3つのトラジェクトリーは、フォールディング経路がいずれもネイティブ状態に収束しなかったため、破棄した。このスキームを使用し、S.a Beccara、L.FantおよびP.Faccioli、Phys.Rev.Lett.114,098103(2015)に詳述されているようにBF手順に従って、最小バイアス・トラジェクトリー(LBT)を選択することにより、9個の独立したフォールディングトラジェクトリーを収集した。
【0082】
フォールディング中間体の候補を探すために、ラチェット・ポール分子動力学(S.a Beccara、L.FantおよびP.Faccioli、Phys.Rev.Lett.114,098103(2015)に詳述される)と称されるアルゴリズムを使用して計算されたフォールディングトラジェクトリーを用いて、ネイティブコンタクトの集団変数Qの割合とネイティブ構造からのRMSDとの2次元頻度ヒストグラムを計算機で計算した。タンパク質構成の変数Qは、7.5オングストローム未満の相対距離にある前記構成中の原子ペアの数を、前記ネイティブ構成中の7.5オングストローム未満の相対距離にある原子ペアの数で割ることによって得た。
【0083】
0.5nm<RMSD<0.9nmおよび0.65<Q<0.85での経路上のフォールディング中間体の存在が観察された(図1、丸で囲んだ部分を参照)。得られたフォールディング経路を説明するコンフォメーションを抽出するために、LBTの2段階フィルタリングを適用した:
(i) LBTによって調べられたコンフォメーションの各セットについて、図1のプロットの密度の高い領域に存在するコンフォメーションのみを保持した。このタスクを実行するために、特定のコンフォメーションを観察する確率についての負の対数(QおよびRMSDで定義)を計算し、そして3.5kBTを超える高いグローバルミニマム(長寿命な領域)に対する安定の偏差を有するすべてのポイントを除外した。
(ii) 関心のある領域のみに焦点を合わせるために、コンフォメーションを0.5nm<RMSD<0.9nmおよび0.65<Q<0.85を示すコンフォメーションのみを保持することにより更にフィルタリングした。
【0084】
中間コンフォメーションのクラスタリングは、k-means[RStudio:Integrated Development for R.RStudio、Inc.、Boston、MA]を用いて実施した。クラスターの数は「エルボー法(Elbow Method)」を用いて選択した。コンタクトマップ距離はクラスタリングメトリックとして用いた。クラスタリング手順により、クラスターC1、C2およびC3と称する3つの異なる母集団グループが生成された(図2を参照)。そのようなクラスター(C2およびC3)の中で最も集合が多いものからサンプリングされたコンフォメーションは、潜在的な結合部位を提供する変位したヘリックス-1を示す。3つのクラスター(C1、C2およびC2)のそれぞれで単一の代表的なコンフォメーションを特定するために、はじめに、我々はグループ内の平均コンタクトマップを計算し、次いで、そのコンタクトマップとそのクラスター内の平均コンタクトマップとの間の距離が最小となるようなそのグループ内の構造を特定した。
【0085】
FI-PrPの潜在的なリガンドを特定するために、C3の代表的なエレメントに存在し、かつPrPCの天然型には存在しない固有の結合部位に焦点を当てたインシリコモデル化および仮想薬物スクリーニングを実施した(図3)。この部位でのインシリコ薬物スクリーニングは、以下の手順に従って実施した:
1) 我々は、クラスターC3の代表的なコンフォメーションから出発して、300Kでの明示的な溶媒モデルにて50nsの分子動力学(MD)を実行した。このようなシミュレーションでは、側鎖の配置のみをサンプリングするために、バックボーン原子の相対位置を固定した。
2) MD軌道が2つの主要なポケットの存在を示唆したため、このようなMD軌道が通ったコンフォメーションは2つのグループに構造的にクラスター化された。我々は、各グループから無作為に10個のコンフォメーションを抽出した。
3) 我々は、創薬可能性が最も高い部位を含むものを特定するために、サイトマップを使用して、結果として得られた20個のコンフォメーションを分析した。
4) 前の工程で特定されたコンフォメーションを、約250,000個の小分子を含むAsinex商用ライブラリを使用して、薬物スクリーニングのターゲットとして使用した。
5) このような仮想スクリーニングの結果は、予測された薬力学および薬物動態に従ってフィルタリングされ、275個の仮想ヒットからなる最終プールとなった。我々は、本実施例で、結合親和性が最も高いと予測されるこのグループの候補薬の化学構造を報告する:
【化1】
式1
【0086】
原則として、十分な親和性でもってタンパク質のフォールディング中間体に結合する化合物は、そのエネルギー状態を低下させ、その構造を安定させ、かくしてその半減期を延長させる可能性があります。細胞の文脈では、PrPCのように小胞体(ER)の内腔で直接合成されたタンパク質の場合、そのような安定化効果は、ER品質管理(ERQC)機構によって認識され得る異常に長寿命のフォールディング中間体を生成する可能性があり、翻訳後修飾の正しい追加を起こりそうであり、またおそらく分解(例えば、ER関連分解および/またはオートファジー)につながる。この原理に従って、提案されたスクリーニングプロトコルによって特定されたFI-PrPの推定リガンドは、安定的にトランスフェクトされたHEK293細胞にて発現される野生型(WT)PrPCの分解を誘導および/または翻訳後プロセシングを変更する能力を試験できる。まず、細胞を、各分子の濃度を上げながら(0.01~50μMを示す)インキュベートする。次に、得られたPrPC発現レベルをウエスタンブロッティングで分析する。親和性が高い小分子は、PrP細胞発現の用量依存的な減少を誘発すると予想される。
【0087】
上述のとおり、記載した方法は、その特徴により、上記したように、本発明の範囲を達成することを可能にする。
【0088】
特に、この方法は、独自の方法で、フォールディング中間体の結合ポケットを特定することを可能にし(既知の解決策では特定できない)、これは、薬物の潜在的な標的の特定に関連する明らかな利点をもたらす。
図1
図2
図3