(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240222BHJP
F16J 15/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J15/12 A
(21)【出願番号】P 2021550341
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2020026027
(87)【国際公開番号】W WO2021065129
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2019178229
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020074781
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】稀代 昌道
(72)【発明者】
【氏名】西村 宣宏
(72)【発明者】
【氏名】目黒 直樹
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-133271(JP,U)
【文献】特開2017-198253(JP,A)
【文献】特開2009-103177(JP,A)
【文献】特開2017-089801(JP,A)
【文献】特開2014-101897(JP,A)
【文献】実開昭51-067961(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16J 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、
前記弾性体部は、
前記隙間に配置される環状の本体部と、
前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から径方向外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、
前記フランジ部の反密封対象側の面に周方向に亘って形成された突起部と、を有し、
前記フランジ部において前記突起部と前記サイドリップ部の間に溝部が形成されており、
反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記サイドリップ部の裏面が前記突起部に接触することを特徴とする密封装置。
【請求項2】
内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、
前記弾性体部は、
前記隙間に配置される環状の本体部と、
前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から径方向外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、
前記サイドリップ部の裏面に周方向に亘って形成された突起部と、を有し、
反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記突起部が前記フランジ部に接触することを特徴とする密封装置。
【請求項3】
内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、
前記弾性体部は、
前記隙間に配置される環状の本体部と、
前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、
前記サイドリップ部の表面における当該サイドリップ部の延出方向の複数個所に周方向に亘って形成された突起部と、を有し、
反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記突起部が前記相手部材に接触し且つ前記サイドリップ部の裏面が前記フランジ部の反密封対象側の面に接触することを特徴とする密封装置。
【請求項4】
前記突起部の断面形状は、先細り形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかの一項に記載の密封装置。
【請求項5】
内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、
前記弾性体部は、
前記隙間に配置される環状の本体部と、
前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、
前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、
前記サイドリップ部の裏面側を凸側として周方向に亘って屈曲している屈曲部と、を有し、
反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記屈曲部が前記フランジ部に接触することを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンのエンジンヘッドに設けられた点火装置のプラグチューブと、エンジンのヘッドカバーとの環状の隙間を密封する密封装置が開示されている。当該密封装置は、オイルをシールするプラグチューブシール部材と、断面コ字状の防水シール部材とで構成されているが、これらの部材を一体化して部品点数を削減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密封装置の一体化にあたり、新たにリップ部を設けることが考えられる。しかし、相手部材(例えば、点火装置のコイル本体上部)の位置のばらつきが大きいため、新たなリップ部の潰し代が小さい場合は所望の面圧が得られるが、潰し代が大きい場合は接触面積が大きくなり(ベタ当りとなり)所望の面圧が得られないおそれがある。
そこで、本発明は、部品点数を削減することができるとともに、サイドリップ部の潰し代が小さい場合のみならず、潰し代が大きい場合であっても所望の面圧を得ることで、シール性を確保できる密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、前記弾性体部は、前記隙間に配置される環状の本体部と、前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から径方向外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、前記フランジ部の反密封対象側の面に周方向に亘って形成された突起部と、を有し、前記フランジ部において前記突起部と前記サイドリップ部の間に溝部が形成されており、反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記サイドリップ部の裏面が前記突起部に接触することを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、前記弾性体部は、前記隙間に配置される環状の本体部と、前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から径方向外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、前記サイドリップ部の裏面に周方向に亘って形成された突起部と、を有し、反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記突起部が前記フランジ部に接触することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、前記弾性体部は、前記隙間に配置される環状の本体部と、前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、前記サイドリップ部の表面における当該サイドリップ部の延出方向の複数個所に周方向に亘って形成された突起部と、を有し、反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記サイドリップ部の裏面が前記フランジ部の反密封対象側の面に接触し、前記突起部は前記相手部材に接触することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、内側部材と外側部材との間の環状の隙間を密封する弾性体部を備える密封装置であって、前記弾性体部は、前記隙間に配置される環状の本体部と、前記本体部の密封対象側から延設され、前記内側部材に接触するシールリップ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から外側に延設され、密封対象側の面が前記外側部材に接触するフランジ部と、前記本体部の反密封対象側の端部から密封対象側から離間する方向に延設されたサイドリップ部と、前記サイドリップ部の裏面側を凸側として周方向に亘って屈曲している屈曲部と、を有し、反密封対象側に配置された相手部材によって前記サイドリップ部が押圧されることにより、前記屈曲部が前記フランジ部に接触することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、弾性体部にシールリップ部及びサイドリップ部を設けることにより、オイル等の密封対象流体のシール機能と、防水機能の両立を図ることができるとともに、部品点数を削減することができる。また、密封装置の組み込み時に、相手部材の位置のばらつきにより、相手部材とシール部分との隙間が小さい場合、サイドリップ部がフランジ部に設けられた突起部に接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。また、相手部材とシール部分との隙間が大きい場合、相手部材にサイドリップ部が接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。
【0010】
または、サイドリップ部に突起部がある場合も、相手部材の位置のばらつきにより、相手部材とシール部分との隙間が小さい場合、サイドリップ部の突起部がフランジ部に接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。また、相手部材とシール部分との隙間が大きい場合、相手部材にサイドリップ部が接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。
【0011】
または、サイドリップ部の表面に複数の突起部がある場合でも、相手部材の位置のばらつきにより、相手部材とシール部分との隙間が小さい場合、サイドリップ部の複数の突起部が相手部材に接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。また、相手部材とシール部分との隙間が大きい場合、相手部材にサイドリップ部が接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。
【0012】
または、サイドリップ部の裏面側を凸側として周方向に亘って屈曲している屈曲部がある場合でも、相手部材の位置のばらつきにより、相手部材とシール部分との隙間が小さい場合、屈曲部の凸形状がフランジ部に接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。また、相手部材とシール部分との隙間が大きい場合、相手部材にサイドリップ部が接触するので、所望の面圧を得てシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る密封装置によれば、部品点数を少なくすることができるとともに、サイドリップ部の潰し代が小さい場合のみならず、潰し代が大きい場合であっても所望の面圧を得ることで、シール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込む前の半断面図である。
【
図2】実施例1に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込み時の半断面図である。
【
図3】実施例1に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込み時の半断面図である。
【
図4】実施例2に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込む前の半断面図である。
【
図5】実施例2に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込み時の半断面図である。
【
図6】実施例3に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込む前の半断面図である。
【
図7】実施例3に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込み時の半断面図である。
【
図8】実施例3に係る密封装置において、横軸を潰し代とし、縦軸をピーク面圧とした場合のグラフである。
【
図9】実施例4に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込む前の半断面図である。
【
図10】実施例4に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込み時の半断面図である。
【
図11】実施例4に係る密封装置において、横軸を潰し代とし、縦軸をピーク面圧とした場合のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、「表面」は「裏面」と反対側の面という意味である。
図1に示すように、実施形態に係る密封装置1は、内側部材101と外側部材102との間の環状の隙間を密封する弾性体部2を備えている。弾性体部2は、本体部11と、シールリップ部12と、フランジ部13と、サイドリップ部14と、突起部15とを備えている。
【0016】
図2に示すように、反密封対象側Oに配置された相手部材103によってサイドリップ部14が押圧されることにより、サイドリップ部14の裏面14bが突起部15に接触する。このように、弾性体部2にシールリップ部12とサイドリップ部14を設けることにより、部品点数を削減することができる。また、密封装置1の組み込み時に、相手部材103の位置のばらつきによって、相手部材103と外側部材102との隙間が小さい場合でも、潰し代の大きいサイドリップ部14がフランジ部13に設けられた突起部15を押圧して突起部15の潰し代を大きくするので、所望の面圧を得ることで、シール性を確保することができる。また、
図3に示すように、相手部材103と外側部材102との隙間が大きくて潰し代の小さいサイドリップ部14の押圧によって突起部15の潰し代がない、又は潰し代が小さい場合でも、所望の面圧を得ることで、シール性を確保することができる。以下、実施例1~4について詳細に説明する。
【0017】
[実施例1]
実施例1に係る密封装置1は、
図1に示すように、図示しないエンジンのエンジンヘッドに取り付けられている点火プラグの周囲を覆う柱状の内側部材101(例えば、プラグチューブ)と、内側部材101の径方向外側に配置される外側部材102(例えば、エンジンのヘッドカバー)との間の環状の隙間を密封する部材である。密封装置1は、本実施例ではプラグチューブシールとして用いている場合を例示するが、インジェクターポンプシール等他の用途で用いてもよい。密封装置1は、弾性体部2と、補強環3と、ばね部材4とで主に構成されている。
【0018】
弾性体部2は、本体部11と、シールリップ部12と、フランジ部13と、サイドリップ部14と、突起部15とを備えている。弾性体部2は、例えば、各種ゴム材で一体形成されている。ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムを用いることができる。
弾性体部2は、成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際、成形型の中に配置された補強環3及びばね部材4が弾性体部2に架橋接着され、各部材が一体的に形成される。
【0019】
本体部11は、円環状を呈する。本体部11は、内側部材101の外周面101aと外側部材102の内周面102aとの間の隙間に配置されている。本体部11の外周面11aは、外側部材102の内周面102aに接触している。
シールリップ部12は、本体部11の密封対象側Mの端部から、内側部材101側に向けて斜め上側(反密封対象側O)に延設された板状部である。シールリップ部12のリップ部12aは、内側部材101の外周面101aに周方向に亘って接触している。これにより、密封対象流体がシールされる。
【0020】
フランジ部13は、本体部11の反密封対象側Oの端部から、径方向外側に張り出す板状部である。フランジ部13は、本体部11に沿って周方向全体に亘って形成されている。フランジ部13の裏面(密封対象側の面)13cは、外側部材102の端面102bに接触している。
サイドリップ部14は、本体部11の反密封対象側Oの端部から、反密封対象側O側(密封対象側Mから離間する側)に向けて延設された板状部である。サイドリップ部14は、本体部11の周方向全体に亘って設けられ、先端に向かうにつれて板厚が薄くなっている。サイドリップ部14は、組み込み前においては
図1に示すように、反密封対象側Oに拡径する形状に傾斜している。一方、サイドリップ部14は、
図2に示す相手部材103によって押圧されることにより、突起部15との間で水、泥水等の侵入を防ぐシール領域を形成する。相手部材は、例えば、点火装置のコイル本体上部である。
【0021】
突起部15は、フランジ部13の表面(反密封対象側の面)13aにおいて周方向全体に亘って形成された突起である。突起部15の断面形状は特に制限されないが、本実施例では先端に向けて先細りとなっている。すなわち、突起部15の先端部からフランジ部13の表面13aまでは下り傾斜しており、フランジ部13の表面13a側とは突起部15の反対側でも、突起部15の先端部から溝部13dの底部に向けて下り傾斜している。これによって、突起部15は基端部に近い部分程厚くなっている。そして、溝部13dの底部は、フランジ部13の表面13aよりも深くなっている。突起部15は、フランジ部13の表面13aにおいて、サイドリップ部14と接触可能な位置に形成されている。
【0022】
フランジ部13において、突起部15とサイドリップ部14との間に溝部13dが設けられている。溝部13dの大きさ、深さを調節することで、相手部材103に押圧された時のサイドリップ部14の傾倒具合を調節することができる。
補強環3は、本体部11及びフランジ部13を補強する補強部材である。補強環3は、例えば、ステンレス鋼、SPCC(冷間圧延鋼)などで形成されたものである。補強環3は、本体部11の内部に配置される側部3aと、フランジ部13の内部に配置される張出部3bとを有し、断面L字状を呈する。補強環3は、例えば、プレス加工や鍛造によって製造される。
【0023】
ばね部材4は、シールリップ12の先端部において周方向に亘って配置されている。ばね部材4として、例えば、ガータースプリングを用いることができる。ばね部材4は、シールリップ12のリップ部12aにおいて縮径する方向に緊迫力を付与している。
【0024】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
図2は、実施例1に係る密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す組み込み時の半断面図である。シールリップ部12は、内側部材101側に傾倒する付勢力及びばね部材4の緊迫力で内側部材101と周方向に亘って接触する。これにより、密封対象流体がシールされる。
また、密封装置1が組み込まれ、サイドリップ部14の表面14aが相手部材103により押圧されることにより、サイドリップ部14の先端側が径外方向に傾倒され、サイドリップ部14の裏面14bが突起部15に接触する。サイドリップ部14の裏面14bと突起部15との間で水、泥水等の侵入を防ぐシール領域が形成される。
【0025】
実施例1によれば、弾性体部2にシールリップ部12及びサイドリップ部14を設けることにより、オイル等の密封対象流体のシール機能と、防水機能の両立を図ることができるとともに、部品点数を削減することができる。また、密封装置1の組み込み時に、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が小さい場合でも、潰し代の大きいサイドリップ部14によって、サイドリップ部14がフランジ部13に設けられた突起部15の潰し代も大きくなるので、所望の面圧を得ることで、シール性を確保することができる。
【0026】
また、
図3に示すように、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が大きい場合には、突起部15は潰し代がない、あるいは小さい状態となるが、サイドリップ部14と相手部材103とが当接することで所望の面圧が得られ、シール性を確保することができる。
ここで、仮に、フランジ部に突起部を設けず、当該フランジ部とサイドリップ部とを接触させると、フランジ部とサイドリップ部とがベタ当りとなり面圧を大きくすることが困難となる。しかし、本実施例によれば、先細りとなる突起部15を設けているため、サイドリップ部14と突起部15との面圧を大きくすることができる。また、相手部材103の位置のばらつき(軸心Z方向のばらつき)によって、相手部材103と外側部材102との隙間が小さくても大きくても所望の面圧を得ることができる。よって、サイドリップ部14と突起部15との間のシール性を確保することができる。
【0027】
[実施例2]
次に、実施例2に係る密封装置1Aについて説明する。実施例2では、サイドリップ部14に突起部15Aを設ける点で実施例1と相違する。実施例2では、実施例1と相違する部分を中心に説明する。
【0028】
図4に示すように、サイドリップ部14の裏面14b(サイドリップ部14のフランジ部13側の面)の先端側には、突起部15Aが設けられている。突起部15Aは先端部からサイドリップ部14の先端まで上り傾斜しており、その反対側のサイドリップ部14の基端側に近い側でも突起部15Aは先端部からサイドリップ部14の裏面14bまで昇り傾斜している。これによって、突起部15Aは基端部に近い部分程厚くなっている。突起部15Aは、周方向全体に亘って形成されている。突起部15Aの断面形状は、先端に向けて先細りとなっている。フランジ部13の表面(反密封対象側の面)13bは、平坦になっている。
【0029】
図5に示すように、密封装置1が組み込まれ、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が小さく潰し代が大きい場合は、サイドリップ部14の表面14aが相手部材103により押圧されることにより、サイドリップ部14の先端側が径外方向に傾倒され、サイドリップ部14の突起部15Aがフランジ部13の表面13bに当接して突起部15Aの潰し代が大きくなる。これにより、サイドリップ部14の突起部15Aとフランジ部13の表面13bとの間で水、泥水等の侵入を防ぐシール領域が形成される。また、実施例1と同様に、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が大きい場合には、突起部15Aは潰し代がない、あるいは小さい状態となるが、サイドリップ部14と相手部材103とが当接することで所望の面圧が得られ、シール性を確保することができる。
【0030】
実施例2によれば、弾性体部2にシールリップ部12及びサイドリップ部14を設けることにより、オイル等の密封対象流体のシール機能と、防水機能の両立を図ることができるとともに、部品点数を削減することができる。また、密封装置1Aの組み込み時に、相手部材103の位置のばらつき(軸心Z方向のばらつき)によって相手部材103と外側部材102との隙間が小さくても大きくても所望の面圧を得ることで、シール性を確保することができる。
【0031】
[実施例3]
次に、実施例3に係る密封装置1Bについて説明する。実施例3では、サイドリップ部14の表面14aにおけるサイドリップ部14の延出方向の複数個所に突起部15Bを設ける点で実施例1と相違する。実施例3では、実施例1と相違する部分を中心に説明する。
【0032】
図6に示すように、突起部15Bは、サイドリップ部14の表面14a(半密封対象側の面)におけるサイドリップ部14の延出方向の複数個所に周方向に亘って形成されている。突起部15Bは、サイドリップ部14の延出方向に互いに所定間隔を空けて複数個設けられている。本実施例では、2つの突起部15Bが、一つはサイドリップ部14の延出方向の外側に、他の一つはサイドリップ部14の延出方向の内側に設けられている。いずれの突起部15Bも先細り形状をしている。なお、本実施例では突起部15Bを2つ設けたが、突起部15Bを3つ以上設けてもよい。
【0033】
図7に示すように、密封装置1Bが組み込まれ、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が小さく潰し代が大きい場合は、サイドリップ部14の表面14aが相手部材103により押圧される。よって、サイドリップ部14の先端側が径外方向に傾倒されて、サイドリップ部14の裏面14bがフランジ部13の表面13aに当接し、突起部15B,15Bは相手部材103に当接する。これにより、サイドリップ部14の裏面14bとフランジ部13の表面13aとの間で水、泥水等の侵入を防ぐシール領域が形成される。この際、突起部15Bに対応する位置では、フランジ部13とサイドリップ部14とがベタ当りとならずに面圧を大きくすることができる。また、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が大きい場合には、サイドリップ部14と相手部材103とが当接することで所望の面圧が得られ、シール性を確保することができる。より詳しくは、サイドリップ部14の突起部15Bと相手部材103とが1箇所又は2箇所で当接するため、突起部15Bに対応する位置で面圧を大きくすることができ、シール性を確保することができる。
【0034】
図8は、密封装置1Bにおいて、横軸をサイドリップ部14の潰し代とし、縦軸をサイドリップ部14と相手部材103との間の面圧の最大値(ピーク面圧)とした場合のグラフを示している。グラフ線50は、密封装置1Bの値を示している。グラフ線150は、実施例1の密封装置1から突起部15を除いた構成である比較例の値を示している。グラフ線50,150に付された吹き出しは、その値をとった際のサイドリップ部14の潰れ状態を示している。
【0035】
図8において、密封装置1Bのグラフ線50の値は、比較例のグラフ線150と比べ、横軸の潰し代の大小にかかわらず、一貫して大きなピーク面圧を示している。
実施例3によれば、弾性体部2にシールリップ部12及びサイドリップ部14を設けることにより、オイル等の密封対象流体のシール機能と、防水機能の両立を図ることができるとともに、部品点数を削減することができる。また、密封装置1Bの組み込み時に、相手部材103の位置のばらつき(軸心Z方向のばらつき)によって相手部材103と外側部材102との隙間が小さくても大きくても所望の面圧を得ることで、シール性を確保することができる。
【0036】
[実施例4]
次に、実施例4に係る密封装置1Cについて説明する。
図9に示すように、実施例4では、サイドリップ部14に、その裏面14b側(密封対象側)を凸側として周方向に亘って屈曲させた屈曲部15Cを形成している。そのため、サイドリップ部14の屈曲部15Cよりも先端側は、反密封対象側Oに向けて立ち上がった状態となっている。
【0037】
図10に示すように、密封装置1C組み込まれ、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が小さく潰し代が大きい場合は、サイドリップ部14の表面14aが相手部材103により押圧される。よって、サイドリップ部14の先端側が径外方向に傾倒されて、サイドリップ部14の裏面14b側で屈曲部15Cの凸形状がフランジ部13の表面13aに当接し、サイドリップ部14の裏面14b側は相手部材103に当接する。これにより、サイドリップ部14の裏面14bとフランジ部13の表面13aとの間で水、泥水等の侵入を防ぐシール領域が形成される。この際、屈曲部15Cに対応する位置では、フランジ部13とサイドリップ部14とがベタ当りとならずに面圧を大きくすることができる。また、相手部材103の位置のばらつきによって相手部材103と外側部材102との隙間が大きい場合には、サイドリップ部14の先端と相手部材103とが当接するため、所望の面圧が得られ、シール性を確保することができる。
【0038】
図11は、密封装置1Cにおいて、横軸をサイドリップ部14の潰し代とし、縦軸をサイドリップ部14と相手部材103との間の面圧の最大値(ピーク面圧)とした場合のグラフを示している。グラフ線51は、密封装置1Cの値を示している。グラフ線151は、実施例1の密封装置1から突起部15を除いた構成である比較例の値を示している。グラフ線51,151に付された吹き出しは、その値をとった際のサイドリップ部14の潰れ状態を示している。
【0039】
図11において、密封装置1Bのグラフ線51の値は、比較例のグラフ線151と比べると、横軸の潰し代の大小にかかわらず、一貫して略一定のピーク面圧を維持できることがわかる。そのため、密封装置1Bによれば、潰し代の大小にかかわらず、ピーク面圧が過度に弱くなってしまうことがない。
実施例4によれば、弾性体部2にシールリップ部12及びサイドリップ部14を設けることにより、オイル等の密封対象流体のシール機能と、防水機能の両立を図ることができるとともに、部品点数を削減することができる。また、密封装置1Cの組み込み時に、相手部材103の位置のばらつき(軸心Z方向のばらつき)によって相手部材103と外側部材102との隙間が小さくても大きくても所望の面圧を得ることで、シール性を確保することができる。
【符号の説明】
【0040】
1,1A,1B,1C 密封装置
2 弾性体部
11 本体部
12 シールリップ部
13 フランジ部
14 サイドリップ部
14a 表面
14b 裏面
15,15A,15B 突起部
15C 屈曲部
101 内側部材(プラグチューブ)
102 外側部材(ヘッドカバー)
103 相手部材