(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】半導体スイッチの故障を確認する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20240222BHJP
【FI】
G01R31/26 A
(21)【出願番号】P 2021555832
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2020055142
(87)【国際公開番号】W WO2020187543
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】102019106787.1
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エック
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-159671(JP,A)
【文献】特開2004-306858(JP,A)
【文献】特開2008-164519(JP,A)
【文献】特開2001-268984(JP,A)
【文献】特開2015-119560(JP,A)
【文献】特開2008-199851(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0067129(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチの故障を確認する方法であって、
前記半導体スイッチ
(S3)が可変デューティ・サイクルを有するPWM信号で駆動され、
(a)前記半導体スイッチ
(S3)が100%又は0%のデューティ・サイクルで
駆動されるとき、
前記半導体スイッチ(S3)を流れる電流の電流測定
により前記半導体スイッチ(S3)の故障が判定され、
(b)前記半導体スイッチ
(S3)が0%より大きく100%より小さいデューティ・サイクルで
駆動されるとき
、前記半導体スイッチ
(S3)で生成された電圧パルスが評価のためにカウントされ、
前記電圧パルスの評価の結果、前記電圧パルスが生成されていない場合、前記半導体スイッチ(S3)の短絡又は開回路が検出されることを特徴とする
、方法。
【請求項2】
前記0%より大きく100%より小さいデューティ・サイクルが前記100%又は0%のデューティ・サイクル
に変化したとき、
前記(b)での前記電圧パルスの評価は中止され、
前記半導体スイッチ(S3)の故障は、
前記(a)での前記電流測定
により判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コンデンサ(C4)及びA/D変換器を備え、
前記半導体スイッチ(S3)で生成された電圧パルスは、
前記コンデンサ(C4)を介して前記半導体スイッチ(S3)から分岐され、
前記A/D変換器に印加され、前記A/D変換器は、評価のためにコントローラのカウンタ入力にデジタル信号を印加する、請求項1又は2に記載の方法を実施するためのデバイス。
【請求項4】
ダイオード(D1)を更に備え、
前記コンデンサ
(C4)によって分岐された電圧パルスが、
前記ダイオード(D1)によって、前記A/D変換器に印加される正のパルスに変換される、
請求項3に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変デューティ・サイクルPWM信号で駆動される半導体スイッチの故障を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチ(IGBT、MOSFET、又はバイポーラ・トランジスタなど)の短絡や開回路などの故障をテストするには、半導体スイッチで、又はスイッチが統合されているシステム全体で電流又は電圧の測定を行う。電流測定の場合、半導体スイッチの相電流又はシステム全体の合計電流が監視される。電圧測定では、半導体スイッチでの電圧降下が監視される。
【0003】
多くの場合、電源電圧などの様々な環境変数のもとで負荷/電力を確実に調整するために、可変デューティ・サイクルPWM信号で半導体スイッチを駆動する必要がある。可変デューティ・サイクルを有するPWM信号を使用した半導体スイッチの故障の診断は、次の2つのシナリオで限界に達する。
【0004】
デューティ・サイクルが非常に高く、例えば98%に設定されている場合、半導体スイッチを流れる電流及び半導体スイッチでの電圧は、永久短絡の電流及び電圧と有意な差はない。
【0005】
同じことが非常に低いデューティ・サイクル、例えば2%にも当てはまる。この逆の場合、永久開回路の電流及び電圧と有意な差はない。
【0006】
更に、単なる電流測定は、電源電圧などの環境変数に強く依存する結果をもたらす。
【0007】
独国特許出願公開第10 2014 214 156号は、ブレーキシステムの少なくとも一つのバルブ・コイル(L)に供給するための電気負荷回路の切断経路の第1の半導体スイッチの機能を確認する方法を開示している。第1の半導体スイッチは、動作中に導電状態で動作し、負荷回路電流は、少なくとも1秒のパルス幅変調された半導体スイッチによって調整される。第1の半導体スイッチは、車両ブレーキシステムの動作中に、それが機能しているときに遮断状態に切り替わるように駆動され、遮断状態の指定された期間の後、第1の半導体スイッチは導通状態に戻るように駆動される。
【0008】
独国特許出願公開第10 2010 042 292号は、電気半導体スイッチの機能テストのための方法を開示し、電気半導体スイッチの制御端子は、点火時間に制御ユニットによって点火パルスが供給され、半導体スイッチを流れる電流振幅がゼロの値から外れる電流の流れ時間が検出され、点火時間と電流の流れ時間との時間差が評価されることで、半導体スイッチの機能テストを実行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目的は、半導体スイッチの故障の存在を確実かつ費用効果的に判定することができる、上記のタイプの方法を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。本発明の有利な拡張は、従属請求項に明記されている。
【0011】
したがって、本発明は、半導体スイッチの故障を確認する方法を提供し、半導体スイッチは、可変デューティ・サイクルを有するPWM信号で駆動され、半導体スイッチは、100%又は0%のデューティ・サイクルで動作するとき、システム全体の電流測定が評価され、一方、半導体スイッチが0%より大きく100%より小さいデューティ・サイクルで動作するとき、半導体スイッチで(半導体スイッチの両端間に)生成された電圧パルスが評価される。
【0012】
したがって、本発明は、PWMモードで動作するときの半導体スイッチの基本的に信頼できる診断に限定される。スイッチが永続的にアクティブ又は非アクティブ(デューティ・サイクル100%又は0%)の場合、システム全体の電流測定が評価される。
【0013】
本発明による方法は、半導体の交流電圧レベルのみを評価するので、電源電圧又は負荷などのほとんどの環境条件に依存しない。
【0014】
高抵抗短絡などの故障も検出できる。このような故障は、単なる電圧及び電流測定では検出できない。
【0015】
本発明による方法は、半導体スイッチの交流電圧レベルのみを評価するので、電源電圧又は負荷などのほとんどの周囲条件に依存しない。高抵抗短絡などの故障も、したがって単なる電圧及び電流測定では検出できない故障も、本発明による方法を用いて検出することができる。
【0016】
半導体の機能故障を簡単かつ確実に判定するために、半導体スイッチで生成された電圧パルスが評価のためにカウントされる。評価の結果、電圧パルスが生成されていない場合、半導体スイッチの短絡又は開回路が検出される。
【0017】
100%又は0%のデューティ・サイクルで信頼性が高く意味のある故障判定を保証するために、半導体スイッチで生成された電圧パルスの評価は中止され、システム全体の電流を測定することによって故障の存在が判定される。
【0018】
本発明はまた、本発明による方法を実行するためのデバイスを提供し、半導体スイッチで生成された電圧パルスは、コンデンサを介して半導体スイッチから分岐され、A/D変換器に印加され、A/D変換器は、評価のためにコントローラのカウンタ入力にデジタル信号を印加する。コンデンサは、診断回路で瞬間的な電流と電圧のパルスのみを生成する。したがって、デバイスのベースとなる回路は、少数の低費用構成要素で実装できる。
【0019】
上記の診断方法を用いて、ダイオード相互接続(OR接続)を介して、2つのトランジスタからなるA/D変換器に複数の半導体スイッチを接続することができる。したがって、診断対象の半導体のPWM制御回路が位相シフトされている場合、すべての半導体はA/D変換器とコントローラのタイマ入力を介して監視できる。
【0020】
以下では、本発明は、以下の図面に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】半導体スイッチの故障を確認するための本発明による方法を実行するための、本発明によるデバイスの第1の実施形態の回路図を示す図である。
【
図2】2つの半導体スイッチを備えた回路の故障を確認するための
図1のデバイスの修正の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すデバイスは、半導体スイッチの故障を確認するための回路に基づいており、半導体スイッチは可変デューティ・サイクルPWM信号で駆動される。半導体スイッチS3のコレクタは、負荷抵抗HC3を介して正の電圧HV+に接続され、スイッチの反対側は接地GND_HCに接続される。PWM信号は半導体スイッチの入力に印加される。
【0023】
電圧パルスのみがスイッチの診断に必要なため、コンデンサC4は、PWM切り替えの場合に生成される半導体スイッチのコレクタからの電圧パルスをフィルタリングする。この回路構成は、回路の残りの部分が電源電位に永続的に接続されておらず、個々のパルスによってのみ負荷がかかるという追加の利点を提供する。これにより、継続的な損失が発生しないため、構成要素数を大幅に減らすことができる。
【0024】
コンデンサは、抵抗R10と抵抗R7を含む分圧器を介して接地GND_HCに接続されている。この分圧器は、生成された電圧パルスをより低い値に分割し、C4を流れるパルス電流を減らす。
【0025】
コンデンサC4によって送信されたパルスは、ダイオードD1を介して、正のパルスとして次の信号調整ステージに転送される。この時点で、図には示されていないが、他の診断ブランチをそれらのカソードでリンクして(位相オフセットがある場合)、論理和(OR論理ゲート)を形成できる。
【0026】
ORゲートの後に接続されたツェナー(Zener)ダイオードD9は、後続の信号調整手段を過電圧から保護する。前記手段は、2つのトランジスタQ1及びQ2を含み、Q1及びQ2は、それぞれ抵抗器R18、R11及びR6、R9を介して接続されて単純なA/D変換器を形成し、ダイオードD9のカソードで正のパルスからデジタル信号「タイマ」を生成する。デジタル信号「タイマ」は、図には示されていないが、コントローラのカウンタ入力に供給される。コントローラでは、半導体スイッチの診断がソフトウェア・レベルで実行され、入力されるデジタル信号「タイマ」パルスがカウントされる。半導体スイッチに故障が発生した場合、短絡又は開回路のいずれの場合でもパルスは生成されない。これにより、ソフトウェアは故障を検出し、適切な対策を開始できる。
【0027】
デューティ・サイクルが0%又は100%の場合、ソフトウェア・レベルでのこの診断はオフに切り替えられ、回路の合計電流を介して故障診断が実行されることが好ましい。
【0028】
コンデンサC4は、診断回路で瞬間的な電流及び電圧のパルスのみを生成する。これにより、回路を少数の低費用構成要素で実装できる。
【0029】
2つの半導体スイッチの故障を同時にテストする場合の
図1の回路の機能原理を
図2に示す。