(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】イメージング方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/204 20060101AFI20240222BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01N23/204
A61N5/10 H
(21)【出願番号】P 2021559704
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020060539
(87)【国際公開番号】W WO2020212393
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-26
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519260876
【氏名又は名称】ディテクション テクノロジー オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー アレックス
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214760(JP,A)
【文献】特開2017-42311(JP,A)
【文献】特開2019-45404(JP,A)
【文献】特開2001-242101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148134(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198489(US,A1)
【文献】国際公開第2017/209059(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 -G01N 23/2276
G01N 21/00 -G01N 21/01
G01N 21/17 -G01N 21/61
G01N 21/84 -G01N 21/958
G01T 1/00 -G01T 1/16
G01T 1/167-G01T 7/12
A61N 5/00 -A61N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージング方法(100)であって、
中性子を材料に放出する工程(101)であって、前記材料は、放出された前記中性子の少なくとも一部を第1の複数のγ線光子に変換し、放出された前記中性子の少なくとも一部は前記材料を通過
する工程と、
前記材料を通過した前記中性子の少なくとも一部を第2の複数のγ線光子に変換する工程(102)と、
第1のエネルギー範囲、B
1、におけるγ線光子の数、N
1、を検出する工程(103)であって、前記B
1は0~511キロ電子ボルト(keV)の範囲に含まれる工程と、
第2のエネルギー範囲、B
2、におけるγ線光子の数、N
2、を検出する工程(104)であって、前記B
2は500~520keVの範囲に含まれる工程と、
第3のエネルギー範囲、B
3、におけるγ線光子の数、N
3、を検出する工程(105)であって、前記B
3は511~660keVの範囲に含まれる工程と、
第4のエネルギー範囲、B
4、におけるγ線光子の数、N
4、を検出する工程(106)であって、前記B
4の下限は650keV以上である工程と
を含み、
但し、エネルギー範囲B
1
~B
4
は重複しておらず、
かつ前記N
1、前記N
2、前記N
3、及び前記N
4に基づいて、前記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程(107)
をさらに含む
イメージング方法(100)。
【請求項2】
前記B
1が100~509keVの範囲に含まれ、
前記B
2が509~516keVの範囲に含まれ、
前記B
3が516~656keVの範囲に含まれ、かつ/又は
前記B
4の前記下限が656keV以上である
請求項1に記載のイメージング方法(100)。
【請求項3】
前記N
2が、消滅イベントの数に対応する請求項1又は請求項2に記載のイメージング方法(100)。
【請求項4】
前記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程が、
前記N
1、前記N
2、前記N
3、及び前記N
4に基づいて、前記材料中の少なくとも1種の元素を特定することを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載
のイメージング方法(100)。
【請求項5】
前記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程が、
前記N
1、前記N
2、前記N
3、及び前記N
4に基づいて、前記材料中の前記少なくとも1種の元素の濃度を推定することをさらに含む請求項4に記載のイメージング方法(100)。
【請求項6】
前記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程が、
N
3に基づいて、前記材料を通過した中性子の数を推定すること
を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載
のイメージング方法(100)。
【請求項7】
前記材料がホウ素10を含み、前記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程が、
前記N
1、前記N
2、前記N
3、及び前記N
4に基づいて、前記材料中のホウ素10濃度を推定すること
を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載
のイメージング方法(100)。
【請求項8】
ホウ素中性子捕捉療法のための患者の腫瘍に対する放射線量を、前記ホウ素10濃度に基づいて計算する工程
をさらに含む請求項7に記載のイメージング方法(100)。
【請求項9】
前記材料の少なくとも1つの特性が、前記材料の構造的な特性を含む請求項1から請求項6のいずれかに記載のイメージング方法(100)。
【請求項10】
前記材料が油を含み、前記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程が、
前記N
1、前記N
2、前記N
3、及び前記N
4に基づいて、前記油の化学組成を推定すること
を含む請求項1から請求項6のいずれかに記載のイメージング方法(100)。
【請求項11】
前記材料を通過した前記中性子の少なくとも一部を前記第2の複数のγ線光子に変換する工程が、カドミウムを含む検出器を用いて行われる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載
のイメージング方法(100)。
【請求項12】
前記検出器が、
テルル化カドミウム、
テルル化カドミウム亜鉛、
テルル化カドミウムマグネシウム、及び
セレン化テルル化カドミウム亜鉛
のうちの少なくとも1種を含む請求項11に記載のイメージング方法(100)。
【請求項13】
イメージングシステム(200)であって、
中性子源(201)であって、中性子(202)を材料(203)に放出することであって、前記材料(203)は、放出された前記中性子(202)の少なくとも一部を第1の複数のγ線光子(205)に変換し、放出された前記中性子の少なくとも一部(204)は前記材料(203)を通過することを行うように構成されている中性子源(201)と、
検出器(206)であって、
前記材料を通過した前記中性子の少なくとも一部(204)を第2の複数のγ線光子(304)に変換すること、
第1のエネルギー範囲(408)、B
1、におけるγ線光子の数、N
1、を検出することであって、前記B
1(408)は、0~511キロ電子ボルト(keV)の範囲に含まれること、
第2のエネルギー範囲(409)、B
2、におけるγ線光子の数、N
2、を検出することであって、前記B
2(409)は500~520keVの範囲に含まれること、
第3のエネルギー範囲(410)、B
3、におけるγ線光子の数、N
3、を検出することであって、前記B
3(410)は511~660keVの範囲に含まれること、及び
第4のエネルギー範囲(411)、B
4、におけるγ線光子の数、N
4、を検出することであって、前記B
4の下限(411)は650keV以上であること
を行うように構成されている検出器(206)と、
計算装置(207)であって、前記N
1、前記N
2、前記N
3、及び前記N
4に基づいて、前記材料(203)の少なくとも1つの特性を推定することを行うように構成されている計算装置(207)と
を含
み、
但し、エネルギー範囲B
1
~B
4
は重複していない、
イメージングシステム(200)。
【請求項14】
前記検出器(206)が、カドミウムを含む直接変換材料(302)を含む請求項13に記載のイメージングシステム(200)。
【請求項15】
前記直接変換材料(302)が、
テルル化カドミウム、
テルル化カドミウム亜鉛、
テルル化カドミウムマグネシウム、又は
セレン化テルル化カドミウム亜鉛
のうちの少なくとも1種を含む請求項14に記載のイメージングシステム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イメージングに関し、より詳細には、イメージングシステム及びイメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子が材料と相互作用すると、材料は、放射線の中でも、いわゆる中性子捕獲反応に起因するγ線光子を放出することがある。これらのγ線光子は、そのエネルギーが十分に高ければ、ほとんど減衰せずにその生成材料を離れる可能性がある。
【0003】
しかしながら、特定の中性子捕獲反応の数は、多くの材料では少ない場合がある。従って、γ線光子によって生成された信号は、例えば、測定中に存在する他の材料、又は処理に由来する可能性があるバックグラウンド及び中性子誘導バックグラウンドのために、検出が困難な場合がある。それゆえ、これらのγ線光子をイメージング用途等に直接使用することが困難な場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この要約は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の一部を簡略化して紹介するために提供される。この要約は、請求項に係る主題の主要な特徴又は必須の特徴を特定することを意図しておらず、請求項に係る主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。
【0005】
イメージング方法及びイメージングシステムを提供することが目的である。この目的及び他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実施態様は、従属請求項、説明及び図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、イメージング方法は、中性子を材料に放出する工程であって、この材料は、放出された中性子の少なくとも一部を第1の複数のγ線光子に変換し、放出された中性子の少なくとも一部はその材料を通過する工程と、上記材料を通過した中性子の少なくとも一部を第2の複数のγ線光子に変換する工程と、第1のエネルギー範囲、B1、におけるγ線光子の数、N1を検出する工程であって、B1は0~511キロ電子ボルト(keV)の範囲に含まれる工程と、第2のエネルギー範囲、B2、におけるγ線光子の数、N2、を検出する工程であって、B2は500~520keVの範囲に含まれる工程と、第3のエネルギー範囲、B3、におけるγ線光子の数、N3、を検出する工程であって、B3は511~660keVの範囲に含まれる工程と、第4のエネルギー範囲、B4、におけるγ線光子の数、N4、を検出する工程であって、B4の下限は650keV以上である工程と、上記N1、N2、N3、及びN4に基づいて、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程とを含む。上記N1、N2、N3、及びN4に基づいて、例えば、上記材料を効率的にイメージングすることが可能となる場合がある。
【0007】
第1の態様の一実施態様では、B1は100~509keVの範囲に含まれ、B2は509~516keVの範囲に含まれ、B3は516~656keVの範囲に含まれ、及び/又はB4の下限は656keV以上である。このような範囲であれば、材料のイメージングの精度を向上させる可能性がある。
【0008】
第1の態様のさらなる実施態様では、N2は消滅(対消滅)イベントの数に対応する。従って、消滅イベントの数が推定されてもよく、これにより、材料に関する追加の情報が提供されてもよい。
【0009】
第1の態様のさらなる実施態様において、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、上記材料中の少なくとも1種の元素を特定することを含む。この少なくとも1種の元素に基づいて、例えば、材料の他の特性を推定することが可能となる場合がある。
【0010】
第1の態様のさらなる実施態様では、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、上記材料中の上記少なくとも1種の元素の濃度を推定することをさらに含む。この少なくとも1種の元素の濃度に基づいて、例えば、材料の他の特性を推定することが可能となる場合がある。
【0011】
第1の態様のさらなる実施態様では、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N3に基づいて、上記材料を通過した中性子の数を推定することを含む。材料を通過した中性子の数に基づいて、例えば、材料中の様々な元素の濃度が推定されてもよい。
【0012】
第1の態様のさらなる実施態様では、上記材料はホウ素10を含み、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、材料中のホウ素10濃度を推定することを含む。従って、材料中のホウ素10濃度を効率的に推定することが可能となる場合がある。
【0013】
第1の態様のさらなる実施態様では、当該イメージング方法は、ホウ素中性子捕捉療法のための患者の腫瘍に対する放射線量を、上記ホウ素10濃度に基づいて計算する工程をさらに含む。従って、送達剤の投与からの遅延を少なくして、又は現在可能なものよりも高い精度で、治療のための放射線量を計算することが可能となる場合がある。
【0014】
第1の態様のさらなる実施態様では、上記材料の少なくとも1つの特性は、材料の構造的な特性を含む。従って、当該イメージング方法は、例えば、非破壊検査(NDT)に使用されてもよい。
【0015】
第1の態様のさらなる実施態様では、上記材料は油(石油)を含み、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、その油の化学組成を推定することを含む。従って、当該イメージング方法は、例えば、石油パイプの検査に使用されてもよい。
【0016】
第1の態様のさらなる実施態様では、上記材料を通過した中性子の少なくとも一部を第2の複数のγ線光子に変換する工程は、カドミウムを含む検出器を用いて行われる。検出器がカドミウムを含む場合には、中性子を高効率でγ線光子に変換することが可能となる場合がある。
【0017】
第1の態様のさらなる実施態様では、検出器は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛、テルル化カドミウムマグネシウム、及びセレン化テルル化カドミウム亜鉛のうちの少なくとも1種を含む。検出器がこれらの材料のうちの少なくとも1種を含む場合、中性子をγ線光子に変換し、次いでγ線光子を同一材料内で電子-正孔対に変換することが可能となる場合がある。そして、電子-正孔対の移動によって検出器信号が生成されてもよい。
【0018】
第2の態様によれば、イメージングシステムは、中性子を材料に放出することであって、この材料は、放出された中性子の少なくとも一部を第1の複数のγ線光子に変換し、放出された中性子の少なくとも一部は上記材料を通過することを行うように構成されている中性子源と、上記材料を通過した中性子の少なくとも一部を第2の複数のγ線光子に変換すること、第1のエネルギー範囲、B1、におけるγ線光子の数、N1、を検出することであって、B1は0~511キロ電子ボルト(keV)の範囲に含まれること、第2のエネルギー範囲、B2、におけるγ線光子の数、N2、を検出することであって、B2は500~520keVの範囲に含まれること、第3のエネルギー範囲、B3、におけるγ線光子の数、N3、を検出することであって、B3は511~660keVの範囲に含まれること、及び第4のエネルギー範囲、B4、におけるγ線光子の数、N4、を検出することであって、B4の下限は650keV以上であることを行うように構成されている検出器と、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、上記材料の少なくとも1つの特性を推定することを行うように構成されている計算装置とを含む。これらの構成により、当該イメージングシステムは、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、材料を効率的にイメージングすることができる可能性がある。
【0019】
第2の態様の一実施態様では、検出器は、カドミウムを含む直接変換材料を含む。これらの構成により、検出器は、中性子を高効率でγ線光子に変換することができる可能性がある。
【0020】
第2の態様のさらなる実施態様では、直接変換材料は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛、テルル化カドミウムマグネシウム、及びセレン化テルル化カドミウム亜鉛のうちの少なくとも1種を含む。直接変換材料がこれらの元素のうちの少なくとも1種を含む場合、直接変換材料は、中性子をγ線光子に変換し、次いでγ線光子を電子-正孔対に変換することができる可能性がある。
【0021】
上述した第2の態様の実施態様は、互いに組み合わせて使用されてもよいことを理解されたい。実施態様のいくつかを一緒に組み合わせて、さらなる実施態様を形成してもよい。
【0022】
付随する特徴の多くは、添付の図面と関連して考慮される以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるようになると、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下では、例示的な実施形態が、添付の図及び図面を参照してより詳細に説明される。
【0024】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るイメージング方法の概略フローチャートを示す。
【
図2a】
図2aは、実施形態に係るイメージングシステムの模式図を示す。
【
図2b】
図2bは、実施形態に係るイメージングシステムの模式図を示す。
【
図2c】
図2cは、実施形態に係るイメージングシステムの模式図を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るイメージングシステムに含まれる検出器の模式図を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るスペクトルの模式図を示す。
【
図5】
図5は、実施形態に係るエネルギー範囲の模式図の模式図を示す。
【0025】
以下では、同一の参照符号は、同一の又は少なくとも機能的に同等の特徴部を指す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明では、本開示の一部を構成し、そして本開示が関係しうる特定の態様が例示のために示されている添付図面が参照される。本開示の範囲から逸脱しない範囲で、他の態様を利用したり、構造的又は論理的な変更を行ったりすることができることを理解されたい。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0027】
例えば、記載された方法に関連する開示は、その方法を実行するように構成された対応するデバイス又はシステムにも当てはまる可能性があり、その逆もまた同様であることが理解される。例えば、特定の方法工程が記載されている場合、対応するデバイスは、記載された方法工程を実行するユニットが図に明示的に記載又は図示されていなくても、そのようなユニットを含んでもよい。他方、例えば、特定の装置が機能ユニットに基づいて記載されている場合、対応する方法は、記載された機能を実行する工程が図に明示的に記載又は図示されていなくても、そのような工程を含んでもよい。さらに、本明細書に記載されている様々な例示的な態様の特徴は、明確に特段の注記がない限り、互いに組み合わせられてもよいことが理解される。
【0028】
図1は、一実施形態に係るイメージング方法100の概略フローチャートを示す。本明細書では、イメージング方法100を、方法100と呼ぶことがある。
【0029】
一実施形態によれば、イメージング方法100は、中性子を材料に放出する工程101であって、この材料が、放出された中性子の少なくとも一部を第1の複数のγ線光子に変換し、放出された中性子の少なくとも一部は材料を通過する工程を含む。イメージング方法100は、材料を通過した中性子の少なくとも一部を第2の複数のγ線光子に変換する工程102をさらに含んでもよい。
【0030】
一実施形態によれば、イメージング方法100は、第1のエネルギー範囲、B1、における(にある)γ線光子の数、N1、を検出する工程103であって、B1は0~511キロ電子ボルト(keV)の範囲に含まれる(範囲で構成される)工程をさらに含んでもよい。
【0031】
イメージング方法100は、第2のエネルギー範囲、B2、におけるγ線光子の数、N2、を検出する工程104であって、B2は500~520keVの範囲に含まれる工程をさらに含んでもよい。
【0032】
イメージング方法100は、第3のエネルギー範囲、B3、におけるγ線光子の数、N3、を検出する工程(105)であって、B3は511~660keVの範囲に含まれる工程をさらに含んでもよい。
【0033】
イメージング方法100は、第4のエネルギー範囲、B4、におけるγ線光子の数、N4、を検出する工程106であって、B4の下限は650keV以上である工程をさらに含んでもよい。
【0034】
イメージング方法100は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程107をさらに含んでもよい。
【0035】
当業者が理解できるように、イメージング方法100における工程101~工程107は、任意の順序で実行されてもよく、又は一部の工程若しくはすべての工程が実質的に同時に実行されてもよい。
【0036】
一実施形態によれば、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、材料中の少なくとも1種の元素を特定することを含む。
【0037】
別の実施形態によれば、上記材料の少なくとも1つの特性を推定することは、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、材料中の上記少なくとも1種の元素の濃度を推定することをさらに含む。
【0038】
本明細書中では、用語「元素」は、例えば、化学元素、同位体、又は2種以上の元素を含む化学化合物を指すことがある。
【0039】
別の実施形態によれば、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N3に基づいて、上記材料を通過した中性子の数を推定することを含む。
【0040】
別の実施形態によれば、上記材料を通過した中性子の少なくとも一部を第2の複数のγ線光子に変換する工程は、カドミウムを含む検出器を用いて行われる。例えば、検出器は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛、テルル化カドミウムマグネシウム、及びセレン化テルル化カドミウム亜鉛のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0041】
イメージング方法100におけるN1、N2、N3、N4の使用は、改善されたイメージングを提供してもよい。光子カウント数は、異なるエネルギー間隔を含んでもよいので、材料中の様々な元素を特定することが可能となる場合がある。さらには、材料を通過した中性子の数及びγ線光子の数の両方からの情報が、材料に関するより多くの情報を提供するために、当該方法において利用されてもよい。
【0042】
図2aは、一実施形態に係るイメージングシステム200の模式図を示す。中性子源201は、中性子202を材料203に放出してもよい。中性子202に応答して、材料は光子205を放出してもよい。光子205は、例えば、γ線光子を含んでもよい。さらには、一部の中性子204は、材料203を通過してもよい。通過した中性子204及び/又は光子は、検出器206によって検出されてもよい。検出器206は、計算装置207に結合されてもよい。あるいは、検出器206が計算装置207を含んでもよい。
【0043】
一実施形態によれば、イメージングシステム200は、中性子源201を含む。中性子源201は、中性子202を材料203に放出するように構成されていてもよい。材料203は、放出された中性子202の少なくとも一部を、第1の複数のγ線光子205に変換してもよい。放出された中性子の少なくとも一部204は、材料203を通過してもよい。
【0044】
当該イメージングシステムは、検出器206をさらに含んでいてもよい。検出器206は、材料を通過した中性子の少なくとも一部204を、第2の複数のγ線光子に変換するように構成されていてもよい。
【0045】
検出器206は、第1のエネルギー範囲、B1、におけるγ線光子の数、N1、を検出するようにさらに構成されていてもよく、B1は0~511キロ電子ボルト(keV)の範囲に含まれる。
【0046】
検出器206は、第2のエネルギー範囲、B2、におけるγ線光子の数、N2、を検出するようにさらに構成されていてもよく、B2は500~520keVの範囲に含まれる。
【0047】
検出器206は、第3のエネルギー範囲、B3、におけるγ線光子の数、N3、を検出するようにさらに構成されていてもよく、B3は511~660keVの範囲に含まれる。
【0048】
検出器206は、第4のエネルギー範囲、B4、におけるγ線光子の数、N4、を検出するようにさらに構成されていてもよく、B4の下限は650keV以上である。
【0049】
イメージングシステム200は、計算装置207をさらに含んでもよい。計算装置207は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、材料203の少なくとも1つの特性を推定するように構成されてもよい。計算装置207は、検出器206に電気的に結合されてもよい。
【0050】
検出器206は、光子をカウントするように構成されていてもよい。当業者が理解できるように、検出器206は、すべての個々の光子をカウントするように構成される必要はない。代わりに、検出器206は、いくらかの計数効率を含んでもよい。計数効率は、検出器206の量子効率及び検出器206における電気的損失によって決定されてもよい。量子効率は、検出器206が吸収された光子を電子-正孔対に変換することができる効率を定量化してもよい。
【0051】
検出器206は、ピクセルを含んでもよい。各ピクセルは、本明細書に開示されているように、γ線光子及び/又は中性子を検出するように構成されてもよい。
【0052】
検出器206及び/又は計算装置207のいくつかの構成要素は、中性子線等の電離放射線に起因する損傷又は誤動作に対して耐性を有するように構成されてもよい。そのような構成要素は、耐放射線強化と呼ばれてもよい。
【0053】
場合によっては、2つ以上のγ線光子が検出器206によってほぼ同時に検出されてもよい。このような状況では、検出器206は、これらの光子を別々の事象(イベント)として認識できない場合がある。これは、パイルアップ(重層、pile-up)と呼ばれることがある。検出器206は、この影響を軽減するために、パイルアップ除去の何らかの手段を使用するように構成されてもよい。
【0054】
計算装置207は、少なくとも1つのプロセッサを含んでいてもよい。この少なくとも1つのプロセッサは、例えば、コプロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、付随するDSPを伴う若しくは伴わない処理回路、又は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)、マイクロコントローラユニット(MCU)、ハードウェアアクセラレータ、特別目的のコンピュータチップ等の集積回路を含む、様々な処理装置のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0055】
計算装置207は、メモリをさらに含んでいてもよい。メモリは、例えば、コンピュータプログラム等を格納するように構成されていてもよい。メモリは、1つ以上の揮発性メモリデバイス、1つ以上の不揮発性メモリデバイス、及び/又は、1つ以上の揮発性メモリデバイスと不揮発性メモリデバイスとの組み合わせを含んでもよい。例えば、メモリは、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、磁気テープ等)、光磁気記憶装置、及び半導体メモリ(マスクROM、PROM(プログラマブルROM)、EPROM(イレーサブルPROM)、フラッシュROM、RAM(ランダムアクセスメモリ)等)として具現化されてもよい。
【0056】
当業者が理解できるように、計算装置207が何らかの機能を実行するように構成されている場合、上記少なくとも1つのプロセッサ及び/又はメモリ等、計算装置207のいくつかのコンポーネント及び/又は構成要素は、この機能を実行するように構成されていてもよい。さらには、上記少なくとも1つのプロセッサが何らかの機能を実行するように構成されている場合、この機能は、例えば、メモリ内に含まれたプログラムコードを使用して実行されてもよい。
【0057】
計算装置207は、逆畳み込み(デコンボリューション)等、当該技術分野で公知の任意の手続きを用いて電荷共有補正を実施するように構成されてもよい。これは、検出器206内の隣接するピクセル間の光電荷の拡散を低減してもよい。電荷共有は、測定されたスペクトルに低エネルギーのテールを引き起こす可能性があり、小さなピクセルサイズでは特に顕著になる可能性がある。電荷共有補正は、検出器206のエネルギー分解能を向上させる可能性がある。
【0058】
本明細書中で、用語「γ線」、「γ線光子」等は、光子の起源によらず、100キロ電子ボルト(keV)を超える光子エネルギーを有する電磁放射線を指すことがある。
【0059】
図2bは、別の実施形態に係るイメージングシステム200の模式図を示す。
図2bの実施形態に示されているように、通過した中性子204の全てが検出器206によって捕捉されるとは限らない。それどころか、中性子源201及び検出器206の位置関係に応じて、通過した中性子204の一部が検出器206に捕捉されなくてもよい。
図2bの実施形態は、例えば、ホウ素中性子捕捉療法において使用されてもよい。
【0060】
図2cは、別の実施形態に係るイメージングシステム200の模式図を示す。
図2cの実施形態に示されているように、通過した中性子204は、材料203を通過した後に、例えば空気中で散乱してもよい。このような散乱は、ランダムであってもよい。従って、いくつかの中性子204は、検出器206によって吸収される前に非線形経路で移動してもよい。
【0061】
図3は、一実施形態に係る検出器206の模式図を示す。検出器206は、直接変換材料302と、検出器に電気的に結合された特定用途向け集積回路(ASIC)303とを含んでいてもよい。
【0062】
直接変換材料302は、カドミウム(Cd)を含んでいてもよい。例えば、直接変換材料302は、カドミウム-113(113Cd)を含んでいてもよい。直接変換材料302は、テルル(Te)も含んでいてもよい。直接変換材料302は、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)、テルル化カドミウムマグネシウム(CdMgTe)、又はセレン化テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTeSe)等の化合物半導体を含んでいてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、直接変換材料302は、層として配置されてもよい。検出器206は、他の層をさらに含んでいてもよい。直接変換材料302は、直接変換層と呼ばれてもよい。あるいは、直接変換材料302は、様々な他の形状/配列に配置されてもよい。
【0064】
直接変換材料302は、入射中性子204をγ線光子304に変換するように構成されていてもよい。入射中性子204は、材料203を通過した中性子であってもよい。直接変換材料302は、γ線光子304を、電子-正孔対とも呼ばれる電子306及び正孔305の対に変換するようにさらに構成されてもよい。さらには、直接変換材料302は、材料203内で生成されたγ線光子205等の任意の他のγ線光子を、電子306及び正孔305の対に変換するように構成されてもよい。
【0065】
電子306及び正孔305は、直接変換材料302にわたって印加される電圧によって分離されてもよい。従って、電子306は、ASIC303によって検出されてもよい。従って、検出器206は、中性子204及びγ線光子205の両方を、同時に検出するように構成されてもよい。
【0066】
ASIC303及び/又は直接変換材料302は、ピクセルを含んでいてもよい。各ピクセルは、ピクセルの位置で入射中性子204及び/又はγ線光子205を検出するように構成されてもよい。従って、検出器206は、材料203を通過した中性子204の空間分布及び/又は材料から放出されたγ線光子205の空間分布を検出してもよい。各ピクセルは、強度値を、例えば、電圧又は電流に変換してもよい。
【0067】
図4は、一実施形態に係るスペクトル400の模式図を示す。スペクトル400は、光子エネルギー412の関数としての光子カウント413を表している。
【0068】
図4の実施形態では、スペクトル400は、検出器206によって生成されてもよい。例えば、中性子源201は、中性子202を材料203に放出してもよく、材料203は、ホウ素10(
10B)を含んでもよい。検出器206は、Cdを含んでいてもよい。この検出器は、
図3の実施形態と同様であってもよい。検出器206の各ピクセルは、スペクトル400を生成するように構成されてもよい。
【0069】
スペクトル400の約478keVのピーク401は、材料203における以下の反応によるものであってもよい。
10B + n → α + γ + 7Li
この反応は、ホウ素中性子捕獲(BNC)反応と呼ばれることがある。材料203中の10Bが中性子(n)を吸収すると、α粒子(α)、γ線光子(γ)、リチウム7(7Li)が放出されることがある。γ線光子のエネルギーは、約477.59keVであってもよい。このようなγ線光子が検出器206によって吸収されると、スペクトル400において、このエネルギーでピーク401を観測することができる。
【0070】
スペクトル400におけるエネルギー511keVのピーク402は、いわゆる消滅(対消滅)ピークを含んでいてもよい。γ線光子のエネルギーが1022keVを超える場合、γ線光子は、検出器206において電子-陽電子対を生成してもよい。その後、電子-陽電子対が消滅して、それぞれエネルギー511keVの2つのγ線光子を生成してもよい。これは、消滅(対消滅)イベントと呼ばれてもよい。従って、対応するピーク402は、スペクトル400において、このエネルギーで検出することができる。
【0071】
消滅イベントは、検出器206で起こってもよい。例えば、検出器206が、例えば鉛を含んでいてもよい遮蔽物を含む場合、多数の消滅イベントがそのような遮蔽物の中で起こってもよい。また、直接変換材料302等、検出器206の任意の他の部分で消滅イベントが起こってもよい。
【0072】
エネルギー535keVのピーク403は、エスケープピークと呼ばれてもよい。558keVのピーク404は、エスケープイベントによって光子のエネルギーを失う可能性がある。エスケープイベントは、初期化イベントよりも低い。
図4の実施形態では、558keV-23keV=535keVである。23(.1)keVのエネルギー損失は、Cd原子の電子殻内で生成され、後にエスケープしたCd
KαのX線光子によるものである。従って、対応するピーク403は、スペクトル400において、このエネルギーで検出できる。
【0073】
エネルギー558keVのピーク404は、以下の反応によるものであってもよい。
113Cd + n → 114Cd + γ
この反応では、検出器206内のカドミウム113(113Cd)が中性子(n)を捕獲し、カドミウム114(114Cd)に核変換してもよい。核変換後、114Cdは励起状態にあってもよく、114Cdが緩和する際に、558.46keVのγ線光子を放出してもよい。このγ線光子は、カドミウム即発ガンマ(CdPG)と呼ばれることがある。このようにして、スペクトル400において、ピーク404が観測されてもよい。
【0074】
本明細書中で、用語「即発ガンマ」は、核分裂イベントの間又は実質的に直後に放出されるγ線光子を指すことがある。これは、核分裂生成物のβ崩壊から生じる可能性のある遅延γ線とは対照的である。
【0075】
上述のカドミウム反応は、558.46keV以外のエネルギーのγ線光子も生成する可能性がある。例えば、エネルギー576.08keVのピーク405及びエネルギー651.26keVのピーク406は、上述したカドミウム反応によって生成されたγ線光子によるものであってもよい。ピーク405及び406は、ピーク404に比べてサイズが小さいことから、マイナーな放出ピークと呼ばれることがある。ピーク404は主要な放出ピークと呼ばれてもよい。
【0076】
図4の実施形態では、5つのエネルギー範囲が図示されている。グローバル閾値(GT)エネルギー範囲407は、0keVから第1のエネルギー閾値までのエネルギーをカバーしてもよい。
図4の実施形態では、第1のエネルギー閾値は、約470keVであってもよい。あるいは、GTエネルギー範囲407は、これのいくつかの部分範囲をカバーしてもよい。GTエネルギー範囲407は、所定の用途にとって関心がない可能性があるエネルギー範囲を含んでいてもよい。例えば、
図4の実施形態では、470keV未満に関心のあるエネルギーピークがない場合がある。従って、第1のエネルギー閾値は470keVであってもよい。
【0077】
第1のエネルギー範囲(B
1)408は、第1のエネルギー閾値から第2のエネルギー閾値までのエネルギー範囲をカバーしてもよい。例えば、
図4の実施形態では、第2のエネルギー閾値は、約509keVであってもよい。あるいは、B
1 408は、これのいくつかの部分範囲をカバーしてもよい。従って、
図4の実施形態では、B
1 408は、上述した478keVのピーク402を含んでいてもよい。第1及び第2の閾値、ひいてはB
1 408のエネルギー範囲は、材料に応じて変化してもよい。
【0078】
B1で検出された光子の数は、N1と呼ばれてもよい。
【0079】
第2のエネルギー範囲(B
2)409は、第2のエネルギー閾値から第3のエネルギー閾値までのエネルギー範囲をカバーしてもよい。
図4の実施形態では、第3のエネルギー閾値は、例えば、516keVであってもよい。従って、B
2 409は、上述の消滅ピーク402を含んでいてもよい。
【0080】
B2で検出された光子の数は、N2と呼ばれてもよい。
【0081】
イメージング方法100及び/又はイメージング装置200では、BNC反応で発生したγ線光子と、対消滅消滅イベントで発生したγ線光子とを確実に区別できるように、消滅イベントがカウントされてもよい。これを達成する効率的な方法は、両方を別々にカウントすることであってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、N2は、BNC反応で発生したγ線光子を消滅イベントで発生したγ線光子と区別する以外の方法で利用されてもよい。例えば、消滅イベントの数は、材料203に関する追加の情報を提供してもよい。例えば、フッ素18(18F)を用いたPETイメージングでは、主なエミッタはβ粒子、特に陽電子粒子とすることができ、この陽電子粒子は体内で消滅して2つの511keV光子を生成することができる。このような場合には、N2を主信号とみなし、光子カウント数をサポート信号として使用して、本明細書に記載されているように精度を高めることができよう。
【0083】
第3のエネルギー範囲(B
3)410は、第3のエネルギー閾値から第4のエネルギー閾値までのエネルギー範囲をカバーしてもよい。
図4の実施形態では、第4のエネルギー閾値は、例えば656keVであってもよい。このように、B
3 410は、ピーク403~406を含んでもよい。それゆえ、B
3 410における総光子カウントは、検出器206におけるCdPGの反応の数をカウントするために使用されてもよい。
【0084】
B3で検出された光子の数は、N3と呼ばれてもよい。
【0085】
第4のエネルギー範囲(B
4)411は、第3のエネルギー閾値以降のエネルギー範囲を含んでいてもよい。B
4 411の上限(上側の境界)は、例えば、スペクトル400の終わりであってもよい。スペクトル400の終わりは、例えば、検出器206の特性によって決定されてもよい。例えば、
図4の実施形態では、B
4 411の上限は、800keVであってもよい。
【0086】
B4で検出される光子の数は、N4と呼ばれてもよい。
【0087】
図4の実施形態に関連して上述したエネルギー範囲は、あくまでも例示的なものであり、用途に応じて変化してもよい。とりわけ、GT 407、B
1 408、及びB
4 411は、異なる材料に中性子が放出されたときに異なる反応が起こる可能性があるため、材料203に依存して変化してもよい。
【0088】
図5は、一実施形態に係るエネルギー範囲の模式図を示す。
図5の実施形態で示されたエネルギー範囲及びエネルギー範囲間の関係は、あくまでも例示的なものである。例えば、
図5の実施形態では、いくつかのエネルギー範囲が連続しているように示されてもよい。しかしながら、すべての実施形態においてそうであるとは限らない。さらには、いくつかのエネルギー範囲は、重なっているようなエネルギー範囲が
図5の実施形態で提示されていなくても、重なっていてもよい。
【0089】
GT 407は、0~511keVの範囲に含まれていてもよい。また、GT 407は、この範囲の任意の部分範囲に含まれていてもよい。例えば、GT407は、100~511keV、200~511keV、又は、100~400keVの範囲に含まれていてもよい。
【0090】
B1 408は、0~511keVの範囲に含まれていてもよい。B1 408は、この範囲の任意の部分範囲に含まれていてもよい。例えば、B1 408は、100~500keV、200~500keV、100~511keV、470~509keV、又は300~511keVの範囲に含まれていてもよい。B1 408はエネルギー範囲であるため、B1 408が他の範囲に含まれる場合、B1 408はこの範囲の任意の部分範囲に含まれていてもよいことを理解しておくべきである。例えば、B1 408が0~511keVの範囲に含まれている場合、B1 408は、例えば470~509keVの範囲に対応していてもよい。そのような場合、検出器206は、470~509keVの範囲のγ線光子を検出するように構成されていてもよく、方法100は、470~509keVの範囲のγ線光子を検出することを含んでもよい。同様の注記は、GT 407、B2 409、B3 410、及び/又はB4 411にも適用されてもよい。
【0091】
B2 409は、500~520keVの範囲に含まれていてもよい。B2 409は、この範囲の任意の部分範囲に含まれていてもよい。例えば、B2 409は、505~515keV、509~516keV、又は504~516keVの範囲に含まれていてもよい。
【0092】
B1 408及びB2 409は、連続していてもよい。例えば、B1 408の上限がE1であってもよく、B2 409の下限(下側の境界)がE1であってもよい。E1は、例えば、500~511keV、505~511keV、又は509~511keVの範囲にあってもよい。
【0093】
B3 410は、511~660keVの範囲に含まれていてもよい。また、B3 410は、この範囲の任意の部分範囲に含まれていてもよい。例えば、B3 410は、516~656keV又は515~656keVの範囲に含まれていてもよい。
【0094】
B2 409及びB3 410は、連続していてもよい。例えば、B2 409の上限がE2であってもよく、B3 410の下限がE2であってもよい。E2は、例えば、511~520keV、511~516keV、又は511~513keVの範囲にあってもよい。
【0095】
B3 410は、511~660keVの範囲に含まれていてもよい。また、B3 410は、この範囲の任意の部分範囲に含まれていてもよい。例えば、B3 410は、516~656keV又は515~656keVの範囲に含まれていてもよい。
【0096】
B4 411の下限は、650~670keVの範囲にあってもよい。例えば、B4 411の下限は、651keV以上であってもよい。
【0097】
B3 410及びB4 411は、連続していてもよい。例えば、B3 410の上限がE3であってもよく、B4 411の下限がE3であってもよい。E3は、例えば、650~670keV、650~660keV、又は652~658keVの範囲にあってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、エネルギー範囲B1~B4は重複しなくてもよい。例えば、エネルギー範囲B1~B4は、連続していてもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー範囲B1~B4は、連続していなくてもよい。例えば、エネルギー範囲B1~B4のいくつかの間に、いわゆるガードバンド、又はギャップがあってもよい。
【0099】
一実施形態によれば、N1及びN4に基づいて、又はN3に基づいて、材料に関する情報を抽出することができる。
【0100】
別の実施形態によれば、材料に関する情報は、B1及び/又はB4の変化と比較したN3の変化に基づいて、抽出することができる。このような変化は、例えば、参照値と比較することができる。
【0101】
N2は、N3がCdPG反応に関する情報のみを含むことを保証するために使用することができる。
【0102】
イメージング方法100及び/又はイメージングシステム200は、例えば、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に利用されてもよい。BNCTは、頭頸部腫瘍や脳腫瘍等の難治性腫瘍に対する放射線療法である。イメージング方法100及び/又はイメージングシステム200は、BNCT中の患者についての腫瘍及び健康な組織に対する線量を計算するために使用されてもよい。
【0103】
一実施形態によれば、材料203は、ホウ素10を含み、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、材料中のホウ素10濃度を推定することを含む。例えば、材料203は、腫瘍細胞を含んでいてもよい。
【0104】
一実施形態によれば、イメージング方法100は、ホウ素中性子捕捉療法のための患者の腫瘍に対する放射線量を、ホウ素10濃度に基づいて計算する工程をさらに含む。放射線量は、例えば、中性子線量であってもよい。代替的又は追加的に、放射線量は、本明細書に記載されているもののような、何らかの他の放射線量を含んでいてもよい。当業者が理解できるように、中性子線量は、他の放射線量を含んでいてもよい。
【0105】
本明細書中で、「熱中性子」、「熱化中性子」等の用語は、周囲の物質の粒子の平均エネルギーに相当する運動エネルギーを有する自由中性子を指すことがある。熱中性子の運動エネルギーは、例えば、約0.025keVとしてもよい。これは、約2000メートル/秒(m/s)の中性子速度と約2×10-10メートルの中性子波長に対応してもよい。
【0106】
10Bは、当該技術分野で公知の様々な手順を用いて、患者の腫瘍細胞に蓄積させることができる。例えば、10Bは、投与量の送達剤を患者に投与することによって、腫瘍細胞に蓄積させることができる。様々な送達剤が当該技術分野で公知である。10Bを含むこれらの腫瘍細胞に熱化中性子が当たると、上述したBNC反応を介して即発ガンマ(PG)が生成されることができる。本明細書では、この反応で生成される即発ガンマは、ホウ素PG又はbPGと呼ばれることがある。bPGは、高エネルギー(478keV)であり、ほとんど減衰せずに患者の身体を離れる。イメージング方法100を用いて、これらの光子が検出されてもよい。線量計算のために、腫瘍の3D再構成が生成されてもよい。
【0107】
BNC反応によるbPGの数は非常に少なくて済むことに留意すべきである。とりわけ、治療中に発生しうるバックグラウンド及び中性子誘導バックグラウンドと比較して。このバックグラウンドは、中性子ビームの近くに存在する他の物質に由来することもある。
【0108】
患者の外に散乱され、腫瘍内のBNC反応で10Bによって変換されない中性子の数は、腫瘍内で起こったBNC反応の数に関連することができる。腫瘍内でBNC反応が多く起こるほど、患者の外に散乱される中性子の数は少なくなることができる。同様に、逆に、BNC反応が少ないほど、患者の外に散乱される中性子の数は大きくなることができる。
【0109】
これらの中性子は、例えば、
図3の実施形態の検出器206を用いて検出することができる。患者の外に散乱され、さらに検出器206に散乱される中性子は、検出器206の内部でカドミウムPGに変換されうる。これらのPGは、CdPGと呼ばれることがある。これらのCdPGの大部分のエネルギーは、上述の558keVであることができる。これらのCdPGは、検出器206によって高効率で検出することができ、その結果、上述の558keVにピークが発生する。中性子のCdPGへの変換だけでなく、CdPGの電荷への変換も、同じ検出器材料内で、高効率で行うことができる。
【0110】
さらには、検出器206に到達する散乱中性子の数(それゆえ、CdPGの数)は、BNC反応によるbPGの数よりも数桁大きくなることができる。
【0111】
BNCTにおける健常組織及び腫瘍組織への線量は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて計算することができる。このアプローチは、検出器に向かう散乱中性子のフラックスが、迅速な読み出しのために十分高いが、検出器を飽和させたり損傷させたりしないように十分低いので、治療中の信号(複数可)のリアルタイム評価を可能にする可能性がある。
【0112】
N1はbPGの数に対応してもよく、N3はCdPGの数に対応してもよい。当然ながら、検出器206がPGを電子-正孔対に変換することができるいくつかの効率及び/又は非効率を含む可能性があるので、N1はbPGの数に等しくなくてもよく、N3はCdPGの数に等しくなくてもよい。
【0113】
これに関して、2つの量が互いに対応するとき、それらの量の間には対応関係があるかもしれない。例えば、それらの量は、互いに比例又は反比例していてもよい。
【0114】
システム200は、10B濃度のより正確な推定値を得るために、N1及びN3に加えて、N2及びN4を利用してもよい。N2は、消滅イベントの数に対応する可能性があるので、N2が、検出器206に入射するγ線光子の数をより正確に推定するために使用されてもよい。
【0115】
BNCTにおける線量計算は、例えば、以下の工程を用いて実行されてもよい。
・患者内の放射活性の強度マップが、測定中に取得されてもよい。
・強度マップは、解剖学的参照のためのCTスキャンに登録(結合)されてもよい。これはオプションであってもよい。
・強度マップから核反応+最終生成物の数を算出することができる。BNCTでは、この核反応の数はBNC反応の数に対応する可能性がある。
・そして、核反応の数に基づいて、例えば医療内部被曝線量(Medical Internal Radiation Dose、MIRD)データベースで公開されている比較値を介して、線量を推定することができる。
【0116】
核反応の数は、BNC反応とそれに続く478keVの光子を介して直接的に測定することができ、かつ/又はBNC反応で変換されなかった中性子の数を介して間接的に測定することができる。
【0117】
BNC反応の数NBNCは、下記式を用いて計算することができる。
NBNC=(Nn-NCdNC)×c
上記式中、Nnは患者に投与された中性子の数であり、NCdNCはCdNC反応の数であり、cは補正係数である。cは、検出器206の測定に影響を与える可能性のある、検出器206の幾何学的形状、治療の設定及び位置、並びに/又は患者固有の詳細を考慮してもよい。これらは、cが考慮してもよい考慮事項の例に過ぎず、制限的であると考えるべきではない。cは、他の様々な考慮事項も考慮してよい。
【0118】
CdNC反応の数は、N3を用いて決定することができる。B3は、1000keVまでのCdNC反応の全ガンマ放射量の約83%をカバーできる。それゆえ、例えば17%の誤差が生じる可能性がある。
【0119】
B4 411は、CdNC反応からのいくつかの追加のマイナーなガンマ放射量を含むことができる。これらの放射量をB3 410の強度に加えることによって、CdNC反応の誤差は、2.5%という低い値まで低減することが可能である可能性がある。これにより、より正確なBNC反応の計算が可能となり、ひいてはより正確な線量計算が可能となる。
【0120】
一実施形態によれば、イメージング方法100において、材料の少なくとも1つの特性は、材料の構造的特性を含む。例えば、材料は、石油パイプ等の構造物の一部であってもよく、イメージング方法100は、構造物の非破壊検査(NDT)を行うために使用されてもよい。構造的な特性は、例えば、材料の構造的完全性を含んでもよい。
【0121】
別の実施形態によれば、イメージング方法100において、材料は油(石油)を含み、上記材料の少なくとも1つの特性を推定する工程は、N1、N2、N3、及びN4に基づいて、油の化学組成を推定することを含む。例えば、イメージング方法100は、内部の油及び石油パイプの化学組成を推定するために用いられてもよい。
【0122】
例えば、B3 410を用いて得られたCdNC信号を用いることにより、パイプラインの断層撮影(トモグラフィー)を行い、石油パイプラインの障害物を確認することができる。
【0123】
原油の組成は、以下のようになっている場合がある。
・炭素(主に12C、13C) 83~85%、
・水素(主に1H、2H) 10~14%、
・窒素(主に14N) 0.1~2%、
・酸素(主に16O、17O、18O) 0.05~1.5%、
・硫黄(主に32S、33S、34S、36S) 0.05~6.0%、
・金属(主に鉄、ニッケル、銅、及びバナジウム) <0.1%。
【0124】
原油成分の中には、B1 408のエネルギー範囲のγ線放出を有するものがある。そのような成分は、例えば、同位体の窒素14(14N)、酸素18(18O)、硫黄32(32S)、硫黄33(33S)、及び硫黄34(34S)であってもよい。
【0125】
上述したBNCTの線量計算と同様に、B1からの信号の強度マップと、米国Brookhaven National Laboratory(ブルックヘブン国立研究所)のNational Nuclear Data Center(米国国立核データセンター)が提供するCapGamデータベース等のデータベースとを用いて、油の組成を推定することができる。
【0126】
B1のエネルギー範囲のγ線を放出する同じ元素は、B4のエネルギー範囲のγ線も放出することができる。いくつかの他の元素もB4で放出する可能性があり、例えば、炭素13(13C)、窒素14(14N)、酸素16(16O)、酸素17(17O)、酸素18(18O)、硫黄32(32S)、硫黄33(33S)、硫黄34(34S)、及び硫黄36(36S)等の同位体が挙げられる。一方、16O及び32Sは、B4のエネルギー範囲で最も強いγ線放出を有していてもよい。
【0127】
上述のBNCT線量計算と同様に、N4は、B1等の別のエネルギー範囲における強度情報を改善するために使用することができる。
【0128】
本明細書に記載された任意の実施形態では、より多くのエネルギー範囲を追加することによって、精度をさらに向上させることができる。例えば、エネルギー範囲B1~B4を部分範囲に分割してもよい。こうして、各エネルギー範囲の分解能を向上させてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、光子カウントN1~N4は、対応する参照値と比較されてもよい。参照値と比較した変化は、材料203に関する情報を得るために使用されてもよい。参照値は、例えば、システム100に材料203を入れずにシステム100を較正することによって得られてもよい。このような較正は、例えば、定期的に行われてもよい。
【0130】
上述したBNCT及びNDTに関連する実施形態は、イメージング方法100及び/又はイメージングシステム200の例示的な応用例に過ぎない。イメージング方法100及び/又はイメージングシステム200は、セキュリティ用途等の他の用途にも用いられてよい。例えば、イメージング方法100及び/又はイメージングシステム200は、重要なインフラストラクチャの場所で、爆発物や揮発性化合物がないか荷物をチェックするために使用されてもよい。
【0131】
本明細書で与えられた任意の範囲又は装置の値は、求める効果を失わない範囲で拡張又は変更されてもよい。明示的に禁止されていない限り、任意の実施形態が別の実施形態と組み合わされてもよい。
【0132】
主題は構造的特徴及び/又は行為に特有の言葉で説明されてきたが、添付の請求項で定義される主題は、必ずしも上述の特定の特徴又は行為に限定されないことを理解されたい。むしろ、上述の特定の特徴及び行為は、請求項を実施する例として開示されており、他の同等の特徴及び行為は、請求項の範囲内であることが意図されている。
【0133】
上述した利点及び長所は、1つの実施形態に関するものであってもよく、複数の実施形態に関するものであってもよいことが理解されるであろう。実施形態は、記載された課題のいずれか若しくはすべてを解決するもの、又は記載された利点及び長所のいずれか若しくはすべてを有するものに限定されない。さらに、「ある」項目への言及は、それらの項目の1つ又は複数を指してもよいことが理解されるであろう。
【0134】
本明細書に記載の方法の工程は、任意の適切な順序で、又は適切な場合には同時に実施されてもよい。加えて、本明細書に記載された主題の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、個々のブロックがいずれかの方法から削除されてもよい。上述した実施形態のいずれかの態様は、求める効果を失わない範囲で、記載された他の実施形態のいずれかの態様と組み合わされて、さらなる実施形態が形成されてもよい。
【0135】
用語「comprising(含む)」は、本明細書において、特定された方法、ブロック又は要素をincludingする(含む)ことを意味するために使用されるが、そのようなブロック又は要素は排他的なリストを構成するものではなく、方法又は装置は追加のブロック又は要素を含んでもよい。
【0136】
上記の説明は例として与えられているに過ぎず、当業者であれば様々な改変が可能であることが理解されるであろう。上記の明細書、例、及びデータは、例示的な実施形態の構造及び使用に関する完全な説明を提供する。上記では、様々な実施形態をある程度特定して、又は1つ以上の個別の実施形態を参照して説明してきたが、当業者なら、本明細書の趣旨又は範囲から逸脱しない範囲で、開示された実施形態に多くの変更を加えることができよう。