(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】シクロプロパン系化合物の連続合成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C07D 209/52 20060101AFI20240222BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20240222BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
C07D209/52
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021573468
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 CN2019094345
(87)【国際公開番号】W WO2021000248
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519153006
【氏名又は名称】アシムケム ラボラトリーズ (ティエンジン) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ル,ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,シーチュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,シンファン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,フェン
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538335(JP,A)
【文献】特表2018-527373(JP,A)
【文献】特開平11-209330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロプロパン系化合物の連続合成方法であって、
第1の反応器でジアゾメタン前駆体の合成反応を連続的に行うステップと、前記第1の反応器の反応生成物が分離器に流れ込んで成層化するステップと、成層化により得られた有機相が第2の反応器にオーバーフローするステップと、前記ジアゾメタン前駆体を前記第2の反応器で連続的に消費してジアゾメタンを調製し、
また、モノオレフィンのシクロプロパン化反応をその場で行って前記シクロプロパン系化合物を得るステップと、を含み、
前記ジアゾメタン前駆体は、MNUであ
り、
前記第1の反応器は、コイルパイプ反応器又は連続撹拌反応器であり、前記第2の反応器は、連続撹拌反応器又はカラム反応器であり、
第1の供給ポンプ、第2の供給ポンプ及び第3の供給ポンプによってメチル尿素/塩酸水溶液、2-メチルテトラヒドロフラン及び亜硝酸ナトリウム水溶液をそれぞれ前記第1の反応器に連続的に圧送し、
オレフィン化合物とパラジウム含有触媒をテトラヒドロフランに溶解し、第4の供給ポンプによって前記第2の反応器に連続的に圧送すると同時に、水酸化カリウム水溶液を第5の供給ポンプによって前記第2の反応器に連続的に圧送し、
前記第1の反応器の温度は、-5℃~20℃に制御され、前記第2の反応器の温度は、0℃~25℃に制御され、
前記メチル尿素/塩酸水溶液において、メチル尿素は、1.0eqであり、36%濃塩酸は、1.1eq~2.0eqであり、精製水は、メチル尿素1g当たり2ml~8mlであり、
前記2-メチルテトラヒドロフランは、メチル尿素1g当たり10ml~50mlであ
り、
前記オレフィン化合物は、以下の構造を有することを特徴とする方法。
【化1】
(ここで、R
1
は、水素、tert-ブトキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基を表し、R
2
は、水素、フェニル基、メチル基又はピリジル基を表し、R
3
は、水素、メチル基又はエチル基を表す。)
【請求項2】
前記第1の反応器の温度は、0℃~10℃に制御され、前記第2の反応器の温度は、10℃~20℃に制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
36%濃塩酸は、1.4eq~1.6eqであり、精製水は、メチル尿素1g当たり3ml~5mlである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2-メチルテトラヒドロフランは、メチル尿素1g当たり20ml~30mlである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記亜硝酸ナトリウム水溶液において、亜硝酸ナトリウムは、1.1eq~2.0eqであり、水は、メチル尿素1g当たり2ml~8mlである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記亜硝酸ナトリウム水溶液において、亜硝酸ナトリウムは、1.4eq~1.6eqであり、水は、メチル尿素1g当たり3ml~5mlであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の反応器における材料の滞留時間は、5min~50minであり、前記第2の反応器における材料の滞留時間は、10min~60minであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の反応器における材料の滞留時間は、15min~30minであり、前記第2の反応器における材料の滞留時間は、20min~40minであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パラジウム含有触媒は、酢酸パラジウムである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
オレフィン化合物は、0.1eq~0.5eqであり、触媒は、0.0005eq~0.005eqであり、テトラヒドロフランは、メチル尿素1g当たり0.5ml~5mlである、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
オレフィン化合物は、0.1eq~0.2eqであり、触媒は、0.001eq~0.002eqであり、テトラヒドロフランは、メチル尿素1g当たり2ml~3mlである、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水酸化カリウム水溶液において、水酸化カリウムは、2eq~10eqであり、精製水は、メチル尿素1g当たり5ml~20mlであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
精製水は、メチル尿素1g当たり5ml~10mlであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シクロプロパン系化合物の連続合成方法は、前記第2の反応器の生成物を後処理するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記後処理のステップは、前記第2の反応器における反応生成物を静置し、水相と有機相に分離するステップ1)と、前記水相を、メチル尿素1g当たり5ml~10mlの2-メチルテトラヒドロフランで抽出し、前記有機相と合わせるステップ2)と、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させるステップ3)と、乾燥した有機相を濃縮するステップ4)とを含む、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬・化学工業の分野に関し、具体的には、シクロプロパン系化合物の連続合成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロプロパン系化合物は、3員環の張力と独特の二重結合特性により、さまざまな複素環化合物骨格の構築に関与でき、多くの天然物や有効成分は、いずれも、シクロプロパン系化合物であるか、又はシクロプロパン系化合物から派生するものであり、医薬・化学工業の分野で重要な応用価値を有する。オレフィンのシクロプロパン化によってシクロプロパン系化合物を合成することは、一般的な方法である。
【0003】
Simmons-Smith反応は、オレフィンのシクロプロパン化反応で広く使用される反応であり、ジエチル亜鉛又は亜鉛-銅カップル、及びジヨードメタン(又はジブロモメタン)によってカルベン中間体を生成し、オレフィンと反応してシクロプロパン系化合物を生成する。このタイプの反応は、生産のスケールアップが容易で、良好な収率を得ることができるが、金属有機試薬の量は、化学量論的であるため、反応完了後に大量の金属廃棄物が発生し、環境汚染と廃棄物処理のコストが増加する。
【0004】
触媒量の遷移金属を採用して、オレフィンへのジアゾニウム化合物の付加環化を触媒してシクロプロパン化合物を合成することは、非常に効果的な方法である。遷移金属錯体の存在下では、ジアゾニウム化合物は、非常に容易に分解されて金属カルベン中間体を形成し、窒素を放出し、金属カルベンは、エチレン結合と反応してシクロプロパン生成物を生成し、このタイプの反応は、理論的には、副生成物の窒素をのみ生成し、非常に高いアトムエコノミーを有し、後処理のコストを極めて大きく削減する。ジアゾメタンは、非置換の3員環を合成するために用いられる一般的に使用されるジアゾニウム化合物である。ただし、ジアゾメタンは、揮発しやすく、毒性が高く、発がん性があり、ジアゾメタン前駆体を含む化合物は、いずれも、光、高温、衝撃、摩擦に敏感であり、分解や爆発を引き起こす可能性がある。これらの要因は、従来のバッチ反応に、ジアゾメタンが大規模に応用されることを制限している。
【0005】
近年、Hansjoerg Lehmannらは、ジアゾメタン前駆体(MNU)の連続調製、ジアゾメタン溶液の連続調製と応用を行っており、ジアゾメタン前駆体とジアゾメタンの分離と使用のリスクを大幅に減少できるが、連続反応装置チェーンが長く、ジアゾメタン溶液の管路移動のリスクがある。Doris Dallingerらは、ジアゾメタンを連続的に調製すると同時に、透過膜技術によって、純粋なジアゾメタンを分離し、その場でそれを基質と反応させ、ジアゾメタンの調製と応用を同時に行うことに成功し、装置チェーンが短縮されたが、透過膜は、製造コストが高くなり、生産能力が小さいため、大規模な応用を短時間で実現できない。Oleg M. Nefedovらは、ジアゾメタンをその場で生成する方式によって、電子豊富なモノオレフィン(明らかな共役構造なし)のその場でのシクロプロパン化を実現し、この方法は、従来のパラジウム触媒を使用して効率的に行うことができる。Bill Morandiらは、改良された鉄ベースの触媒とワンポット法を利用して、ジアゾメタンをその場で生成し、共役オレフィンに対して高度に選択的なシクロプロパン化を行うことを実現した。これらの2つの研究はいずれも、ジアゾメタン前駆体の制御される供給に依存しており、二相系では、ジアゾメタンの生成とオレフィンのシクロプロパン化反応を同時に行うことを実現し、ジアゾメタン前駆体の供給速度が速すぎる場合に、ジアゾメタンは、単位時間あたり大量に生成され、触媒がジアゾメタンを触媒して分解させる速度が速くなり、エチレンなどの副生成物を生成し、供給速度が遅すぎると、触媒の析出を引き起こし、触媒活性に影響を及ぼす可能性があり、これらはいずれも、ジアゾメタン前駆体を操作するリスクを増加させる。
【0006】
要約すると、従来技術にある主な欠点は、1)ジアゾメタン前駆体の連続調製、ジアゾメタン溶液の連続調製及び応用は、実現され、ジアゾメタン前駆体とジアゾメタンの分離と使用のリスクを大幅に減らすことができるが、連続反応装置チェーンが長く、ジアゾメタン溶液の管路移動のリスクがあること、2)ジアゾメタンは、連続反応によって調製され、透過膜によるジアゾメタンの分離は、ジアゾメタンと基質のその場での反応を実現できるが、透過膜は、製造コストが高く、生産能力が小さいため、大規模な応用を短時間で実現できないこと、及び3)バッチワンポット法は、ジアゾメタンの生成とオレフィンのシクロプロパン化反応を同時に行うことを実現したが、ジアゾメタン前駆体を操作するリスクを増加させることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ジアゾメタン溶液の管路移動のリスクを回避するために、シクロプロパン系化合物の連続合成方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、シクロプロパン系化合物の連続合成方法を提供する。この方法は、第1の反応器でジアゾメタン前駆体の合成反応を連続的に行うステップと、第1の反応器の反応生成物が分離器に流れ込んで成層化するステップと、成層化により得られた有機相が第2の反応器にオーバーフローするステップと、第2の反応器でジアゾメタン前駆体を連続的に消費してジアゾメタンを調製し、また、電子豊富なモノオレフィンのシクロプロパン化反応をその場で行ってシクロプロパン系化合物を得るステップと、を含む。
【0009】
さらに、第1の反応器は、コイルパイプ反応器又は連続撹拌反応器であり、第2の反応器は、連続撹拌反応器又はカラム反応器である。
【0010】
さらに、第1の反応器の温度は、-5~20℃に、好ましくは0~10℃に制御され、第2の反応器の温度は、0~25℃に、好ましくは10~20℃に制御される。
【0011】
さらに、第1の供給ポンプ、第2の供給ポンプ及び第3の供給ポンプによって、メチル尿素/塩酸水溶液、2-メチルテトラヒドロフラン及び亜硝酸ナトリウム水溶液をそれぞれ第1の反応器に連続的に圧送し、好ましくは、メチル尿素/塩酸水溶液において、メチル尿素は、1.0eqで、36%濃塩酸は、1.1~2.0eqで、精製水は、2~8vであり、より好ましくは、36%濃塩酸は、1.4~1.6eqで、精製水は、3~5vであり、好ましくは、2-メチルテトラヒドロフランは、10~50vで、より好ましくは20~30vであり、好ましくは、亜硝酸ナトリウム水溶液において、亜硝酸ナトリウムは、1.1~2.0eqで、水は、2~8vであり、より好ましくは、亜硝酸ナトリウムは、1.4~1.6eqで、水は、3~5vである。
【0012】
さらに、第1の反応器における材料の滞留時間は、5~50minで、好ましくは15~30minであり、第2の反応器における材料の滞留時間は、10~60minで、好ましくは20~40minである。
【0013】
さらに、オレフィン化合物とパラジウム含有触媒をテトラヒドロフランに溶解し、第4の供給ポンプによって第2の反応器に連続的に圧送すると同時に、水酸化カリウム水溶液を第5の供給ポンプによって第2の反応器に連続的に圧送し、好ましくは、パラジウム含有触媒は、酢酸パラジウムであり、好ましくは、オレフィン化合物は、0.1~0.5eqで、より好ましくは0.1~0.2eqであり、触媒は、0.0005~0.005eqで、より好ましくは0.001~0.002eqであり、テトラヒドロフランは、0.5~5vで、より好ましくは2~3vであり、好ましくは、水酸化カリウム水溶液において、水酸化カリウムは、2~10eqで、精製水は、5~20Vで、より好ましくは5~10Vである。
【0014】
さらに、シクロプロパン系化合物の連続合成方法は、第2の反応器の生成物を後処理するステップをさらに含み、好ましくは、後処理のステップは、第2の反応器の反応生成物を静置して水相と有機相に分けるステップ1)と、水相を2-メチルテトラヒドロフラン5~10vで抽出し、有機相と合わせるステップ2)と、合わせ後の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させるステップ3)と、乾燥した有機相を濃縮するステップ4)と、を含み、好ましくは、オレフィン化合物は、以下の構造を有する。
【0015】
【化1】
ここで、R
1は、水素、tert-ブトキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基を表し、R
2は、水素、フェニル基、メチル基又はピリジル基を表し、R
3は、水素、メチル基又はエチル基を表す。
【0016】
本発明の別の態様によれば、シクロプロパン系化合物の連続合成装置を提供する。この装置は、ジアゾメタン前駆体の合成反応を連続的に行うための第1の反応器と、供給口によって第1の反応器の排出口と連通する分離器と、分離器の排出口と連通する供給口が設置された第2の反応器と、を含む。
【0017】
さらに、第1の反応器は、コイルパイプ反応器又は連続撹拌反応器であり、第2の反応器は、連続撹拌反応器又はカラム反応器である。
【0018】
さらに、装置は、メチル尿素/塩酸水溶液を収容するための第1の溶液タンクと、2-メチルテトラヒドロフランを収容するための第2の溶液タンクと、亜硝酸ナトリウム水溶液を収容するための第3の溶液タンクと、オレフィン化合物とパラジウム含有触媒を溶解したテトラヒドロフランを収容するための第4の溶液タンクと、水酸化カリウム水溶液を収容するための第5の溶液タンクと、をさらに含み、ここで、第1の溶液タンク、第2の溶液タンク及び第3の溶液タンクは、それぞれ第1の供給ポンプ、第2の供給ポンプ及び第3の供給ポンプによって第1の反応器と連通し、第4の溶液タンクと第5の溶液タンクは、それぞれ第4の供給ポンプと第5の供給ポンプによって第2の反応器と連通する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の技術方案を応用することにより、第1の反応器でジアゾメタン前駆体(MNU)を連続的に調製し、ジアゾメタンの連続調製後、それは、第2の反応器に入り、その場でのオレフィンのシクロプロパン化の連続反応に参加する。自動制御を実現し、リスクの高い材料の移動を減らし、ジアゾメタン溶液の管路移動のリスクを回避し、生産の安全性を効果的に向上させることができる。そして、装置は、シンプルであるため、装置の投資を節約でき、ジアゾメタンの生成とオレフィンのシクロプロパン化反応を同時に行うことを安全かつ定量的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本出願の一部を構成する明細書の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために使用され、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を説明するために使用され、本発明の不適切な限定を構成するものではない。
【0021】
【
図1】本発明の一実施例によるオレフィンのシクロプロパン化フローの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
なお、本出願の実施例及び実施例の特徴は、矛盾がない場合、互いに合わせることができる。以下は、図面を参照して、実施例と併せて本発明を詳細に説明する。
【0023】
従来技術における一連の技術的問題に対して、本出願は、第1の反応器(コイルパイプ反応器又は連続撹拌反応器)でジアゾメタン前駆体(MNU)を連続的に調製し、第2の反応器(連続撹拌反応器又はカラム反応器)でジアゾメタン前駆体を連続的に消費してジアゾメタンを調製し、また、電子豊富なモノオレフィンのシクロプロパン化反応をその場で行う連続プロセスを開発した。典型的な実施例では、主な化学反応は、以下のとおりである。
【0024】
【化2】
ここ
で、R
1
は、水素、tert-ブトキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基を表し、R
2は、水素、フェニル基、メチル基又はピリジル基を表し、R
3は、水素、メチル基又はエチル基を表す。
【0025】
本発明の典型的な一実施形態によれば、シクロプロパン系化合物の連続合成方法を提供する。この方法は、第1の反応器でジアゾメタン前駆体の合成反応を連続的に行うステップと、第1の反応器の反応生成物が分離器に流れ込んで成層化するステップと、成層化により得られた有機相が第2の反応器にオーバーフローするステップと、ジアゾメタン前駆体を第2の反応器で連続的に消費してジアゾメタンを調製し、また、電子豊富なモノオレフィンのシクロプロパン化反応をその場で行ってシクロプロパン系化合物を得るステップと、を含む。
【0026】
本発明の技術方案を応用することにより、第1の反応器でジアゾメタン前駆体(MNU)を連続的に調製し、ジアゾメタンの連続調製後、第2の反応器に入り、その場でオレフィンのシクロプロパン化の連続反応に参加することにより、自動制御を実現し、リスクの高い材料の移動を減らし、ジアゾメタン溶液の管路移動のリスクを回避し、生産の安全性を効果的に向上させることができる。そして、装置がシンプルであるため、装置の投資を節約でき、ジアゾメタンの生成とオレフィンのシクロプロパン化反応を同時に行うことを安全かつ定量的に実現できる。
【0027】
第1の反応器の第1段階の反応は、二相溶液の反応であるため、シール性能の良いコイルパイプを使用するか、連続撹拌反応器を使用することができ、この反応器は、二相反応に有利である。第2の反応器の第2段階の反応も二相溶液の反応であり、その違いは、反応中にガスが放出されるため、混合には不利で、コイルパイプ反応器の使用が適切ではないことであり、連続撹拌反応器とカラム反応器はいずれも、ガス放出の場合、反応溶液の混合効果を確保できる。
【0028】
温度が低すぎると、沈殿が起こり、流動性に影響を及ぼす。温度が高すぎると、第1の反応器の生成物の安定性に影響を及ぼす。したがって、好ましくは、第1の反応器の温度は、-5~20℃に、より好ましくは0~10℃に制御される。第2の反応器の温度は、0~25℃に、好ましくは10~20℃に制御される。
【0029】
連続自動生成の実現を容易にするために、本発明の典型的な一実施形態では、第1の供給ポンプ、第2の供給ポンプ及び第3の供給ポンプによって、メチル尿素/塩酸水溶液、2-メチルテトラヒドロフラン及び亜硝酸ナトリウム水溶液をそれぞれ第一反応器に連続的に圧送する。
【0030】
好ましくは、メチル尿素/塩酸水溶液において、メチル尿素は、1.0eqで、36%濃塩酸は、1.1~2.0eqで、精製水は、2~8vであり、より好ましくは、36%濃塩酸は、1.4~1.6eqで、精製水は、3~5vである(ここで、vはメチル尿素に対する体積を指し、例えば、1gのメチル尿素を供給し、3~5vの精製水は、3~5mlの精製水の供給量を表す)。このようにして、溶液の流動性を確保できると同時に、溶剤が多すぎても反応効果に影響を及ぼさない。
【0031】
反応の円滑かつ効率的な進行を確保するために、好ましくは、2-メチルテトラヒドロフランは、10~50vで、より好ましくは20~30vであり、好ましくは、亜硝酸ナトリウム水溶液において、亜硝酸ナトリウムは、1.1~2.0eqで、水は、2~8vで、より好ましくは、亜硝酸ナトリウムは、1.4~1.6eqで、水は、3~5vである。
【0032】
材料を完全に反応させるために、第1の反応器における材料の滞留時間は、5~50minで、好ましくは15~30minであり、第2の反応器における材料の滞留時間は、10~60minで、好ましくは20~40minである。
【0033】
本発明の典型的な一実施形態では、オレフィン化合物とパラジウム含有触媒をテトラヒドロフランに溶解し、それを第4の供給ポンプによって第2の反応器に連続的に圧送すると同時に、水酸化カリウム水溶液を第5の供給ポンプによって第2の反応器に連続的に圧送し、好ましくは、パラジウム含有触媒は、酢酸パラジウムであり、好ましくは、オレフィン化合物は、0.1~0.5eqで、より好ましくは0.1~0.2eqであり、触媒は、0.0005~0.005eqで、より好ましくは0.001~0.002eqであり、テトラヒドロフランは、0.5~5vで、より好ましくは2~3vであり、好ましくは、水酸化カリウム水溶液中において、水酸化カリウムは、2~10eqで、精製水は、5~20Vで、より好ましくは5~10Vである。それにより、反応の効率的な進行を確保できる。
【0034】
本発明の典型的な一実施形態によれば、シクロプロパン系化合物の連続合成方法は、第2の反応器の生成物を後処理するステップをさらに含み、好ましくは、後処理のステップは、前記第2の反応器の反応生成物を静置して水相と有機相に分けるステップ1)と、前記水相を2-メチルテトラヒドロフラン5~10vで抽出し、前記有機相と合わせるステップ2)と、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させるステップ3)と、乾燥した有機相を濃縮するステップ4)と、を含む。
【0035】
本発明の典型的な一実施形態によれば、シクロプロパン系化合物の連続合成装置を提供する。この装置は、ジアゾメタン前駆体の合成反応を連続的に行うための第1の反応器と、供給口によって第1の反応器の排出口と連通する分離器と、分離器の排出口と連通する供給口が設置された第2の反応器と、を含む。上記技術方案は、この装置を採用することで実現できる。
【0036】
好ましくは、第1の反応器は、コイルパイプ反応器又は連続撹拌反応器であり、第2の反応器は、連続撹拌反応器又はカラム反応器である。
【0037】
好ましくは、装置は、メチル尿素/塩酸水溶液を収容するための第1の溶液タンクと、2-メチルテトラヒドロフランを収容するための第2の溶液タンクと、亜硝酸ナトリウム水溶液を収容するための第3の溶液タンクと、オレフィン化合物及びパラジウム含有触媒を溶解したテトラヒドロフランを収容するための第4の溶液タンクと、水酸化カリウム水溶液を収容するための第5の溶液タンクと、をさらに含み、ここで、第1の溶液タンク、第2の溶液タンク及び第3の溶液タンクは、それぞれ第1の供給ポンプ、第2の供給ポンプ及び第3の供給ポンプによって第1の反応器と連通し、第4の溶液タンクと第5の溶液タンクは、それぞれ第4の供給ポンプと第5の供給ポンプによって第2の反応器と連通する。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の有益な効果を実施例と併せてさらに説明する。
【0039】
【0040】
連続反応:供給ポンプの速度と反応パラメータの統計は、表1に示すとおりであり、反応フローの概略図は、
図1に示すとおりである。
【0041】
(1)溶液の調製:2L三角フラスコに370gの精製水と82.5gのN-メチル尿素を加え、完全に溶解するまで撹拌し、次に190gの濃塩酸(質量分率:36%)をゆっくりと加え、均一に撹拌して使用に備える(メチル尿素/塩酸溶液)。1L三角フラスコに370gの精製水を加え、130gの固体亜硝酸ナトリウムを加え、完全に溶解するまで撹拌して(亜硝酸ナトリウム水溶液)使用に備える。1L三角フラスコに250mlの2-メチルテトラヒドロフラン、50gのオレフィン化合物(20.38mmol)、及び0.4gの酢酸パラジウムを加え、完全に溶解するまで撹拌して使用に備える(オレフィン/触媒溶液)。1L三角フラスコに600gの精製水を加え、210gの水酸化カリウムをバッチで加え、完全に溶解するまで撹拌して使用に備える(水酸化カリウム溶液)。
【0042】
(2)第1の反応器10の温度を0~10℃に制御し、第2の反応器20の温度を10~20℃に制御すると同時に、第1の供給ポンプP-1(メチル尿素/塩酸溶液)と第2の供給ポンプP-2(2-メチルテトラヒドロフラン)をオンにし、少し後で第3の供給ポンプP-3(亜硝酸ナトリウム水溶液)をオンにし、3つの材料の流れが第1の反応器10に同時に入る。反応系は、第1の反応器10から分離器30に入って成層化する。有機相が第2の反応器20に入るとき、第4の供給ポンプP-4(オレフィン/触媒溶液)と第5の供給ポンプP-5(水酸化カリウム溶液)をオンにし、30min後に反応効果を追跡するために第2の反応器20からサンプルを採取する。第2の反応器20内の系は、分液、濾過、濃縮などの操作を経て、82%の収率でシクロプロパン生成物(受入タンクに入る)を得る。材料供給の開始から材料供給の完了まで、全体の操作時間は、約4時間である。
【0043】
【0044】
(比較例1)
バッチ反応:
(1)窒素の保護下、2L四ツ口フラスコ(機械的撹拌)に135gの精製水、16.5gのN-メチル尿素、及び26gの固体亜硝酸ナトリウムを加え、完全に溶解するまで撹拌する。次に、四ツ口フラスコに400gの2-メチルテトラヒドロフランを加え、系を0~10℃まで冷却し、定圧滴下漏斗によって四ツ口フラスコに38gの濃塩酸(質量分率:36%)をゆっくりと滴下し、滴下中に固形物が析出してすぐに溶解しない場合、滴下を停止し、固形物が溶解した後に再度滴下し、滴下プロセス全体は、1時間続く。滴下完了後に、20~30min保温して撹拌し、静置して分液し、有機相は、その後の反応で使用される。
【0045】
(2)窒素の保護下で、別の1L四ツ口フラスコに50mlのテトラヒドロフラン、10gのオレフィン化合物、及び0.4gの酢酸パラジウムを加えて均一に撹拌し、完全に溶解するまで撹拌して使用に備える。事前に調製した水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム42g、精製水120g)を加え、10~20℃まで冷却し、1L四ツ口フラスコに操作(1)の有機相を滴下し、滴下開始時のガス放出の速度が速いため、供給速度を低下させ、滴下プロセスにわたって滴下速度を制御してガス放出を穏やかにし、後の段階では滴下速度を向上させることができ、滴下が完了した後に、30min保温し、サンプルを採取して反応効果を検出する。滴下プロセス全体には、約2.5時間がかかる。この系は、分液、濾過、及び濃縮などの操作を経て、シクロプロパン生成物を得る。
【0046】
典型的なサンプル:オレフィン原料が1.8%で、シクロプロパン生成物が85.2%で、収率が83%であった。
【0047】
(実施例2)
実施例1との違いは、第1の反応器の温度が30~35℃に制御されていることであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が18.8%で、シクロプロパン生成物が65.2%で、収率が63%であった。
【0048】
(実施例3)
実施例1との違いは、第1の反応器の滞留時間が5minであることであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が8.2%で、シクロプロパン生成物が75.2%で、収率が73%であった。
【0049】
(実施例4)
実施例1との違いは、2-メチルテトラヒドロフランの使用量が50vであることであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が5.7%で、シクロプロパン生成物が78.2%で、収率が77%であった。
【0050】
(実施例5)
実施例1との違いは、第2の反応器の温度が30~35℃に制御されていることであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が34.8%で、シクロプロパン生成物が52.2%で、収率が47%であった。
【0051】
(実施例6)
実施例1との違いは、第2の反応器の滞留時間が10minであることであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が6.2%で、シクロプロパン生成物が83.9%で、収率が81%であった。
【0052】
(実施例7)
オレフィン化合物:
【化4】
連続反応、実施スキームは、実施例1と同じであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が0.9%で、シクロプロパン生成物が88.2%で、収率が84%であった。
【0053】
(実施例8)
オレフィン化合物:
【化5】
連続反応、実施スキームは、実施例1と同じであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が2.2%で、シクロプロパン生成物が84.2%で、収率が80%であった。
【0054】
(実施例9)
オレフィン化合物:
【化6】
連続反応、実施スキームは、実施例1と同じであった。典型的なサンプル:オレフィン原料が0.7%で、シクロプロパン生成物が86.2%で、収率が84%であった。
【0055】
上記の説明は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。当業者にとって、本発明は、様々な修正及び変更を行うことができる。本発明の精神及び原理の範囲内で行われたいかなる修正、同等の交換、改善などはすべて、本発明の保護範囲に含まれるべきである。