(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】コンデンサ構造
(51)【国際特許分類】
H01G 4/38 20060101AFI20240222BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240222BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20240222BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20240222BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
H01G4/38 B
H01G4/30 540
H01G4/33 102
H01L27/04 C
(21)【出願番号】P 2021577893
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 FI2020050443
(87)【国際公開番号】W WO2020260759
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】PCT/FI2019/050513
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】521567022
【氏名又は名称】コアエイチダブリュー セミコンダクター オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハカモ、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】タカロ、トミ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】コチライネン、ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘリオ、ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】クイリ、タピオ
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-501159(JP,A)
【文献】特表2009-540541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0022948(US,A1)
【文献】米国特許第06037621(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/33
H01G 4/38
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に配置された複数の誘電体および金属化層を備える層状構造として実現されたコンデンサ構造であって、
前記金属化層が金属パターン、および誘電体材料を備え、
前記コンデンサ構造は:
前記金属化層の2つ
の中の金
属パターンによって形成された
略平行な2つの第1の電極を備える少なくとも1つの横方向平行板コンデンサ部分(LPP部分)
であって、前記2つの第1の電極が、前記交互に配置された複数の層の誘電体材料によって互いに分離された、少なくとも1つの横方向平行板コンデンサ部分(LPP部分)と、
重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部を各々が備える2つの第2の電極を備える少なくとも1つの垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)
であって、重ね合わせられたスラブまたは棒部それぞれが、前記金属化層の1つにおいてパターン化され、前記第2の電極それぞれの前記重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部は、ビアによって互いに電気的に結合された、少なくとも1つの垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)と、
前記少なくとも1つのVPP部分に結合された第1の電気接点および第2の電気接点であって、前記少なくとも1つのVPP部分の前記2つの第2の電極それぞれが、前記第1の電気接点および前記第2の電気接点の一方に結合された、第1の電気接点および第2の電気接点と、
を備え、
前記少なくとも1つのLPP部分は、前記コンデンサ構造を形成するために、
前記第1の電気接点および前記第2の電気接点の少なくとも一方を介して、前記少なくとも1つのVPP部分と電気的に結合され、および、
前記2つの第1の電極を分離する前記交互に配置された複数の層の少なくとも1つの層
における誘電体材料の厚さのバラツキであって垂直次元における前記2つの第1の電極間の距離の公称値との差を生じさせる厚さのバラツキによ
る前記少なくとも1つのLPP部分の静電容量値のバラツキ
による、前記コンデンサ構造の静電容量値のバラツキが、垂直次元における前記2つの第2の電極の幅の公称値との差を生じさせる厚さの同じバラツキのために、前記交互に配置された複数の層の同じ少なくとも1つの同じ厚さのバラツキによる前記少なくとも1つのVPP部分の静電容量値の
バラツキによる、前記コンデンサ構造の静電容量値の正反対のバラツキによって
実質的に補償される、コンデンサ構造。
【請求項2】
前記少なくとも1つのLPP部分および前記少なくとも1つのVPP部分は、並列にまたは直列に互いに電気的に結合される、
請求項1記載のコンデンサ構造。
【請求項3】
少なくとも2つのLPP部分および少なくとも2つのVPP部分を備え、
少なくとも1つのLPP部分および少なくとも1つのVPP部分が、互いに並列に電気的に結合され、少なくとも1つの他のLPP部分および少なくとも1つの他のVPP部分が、互いに直列に電気的に結合される、
請求項1または2記載のコンデンサ構造。
【請求項4】
前記第2の電極は両方とも、重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部によって各々が形成された複数の電極指状部を備え、前記2つの第2の電極の前記複数の電極指状部は、交互配置された電極指状部を有する櫛状構造を形成し、前記櫛状構造においては、隣接する電極指状部は、交番極性を有し、および/または
前記重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部は、前記重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部を備える2つの隣接する金属化層を分離する誘電体材料層各々を横切る1つまたは複数の導電性ビアで、互いに電気的に接続される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のコンデンサ構造。
【請求項5】
前記2つの第1の電極は、前記第2の電極の最上部および底部のスラブまたは棒部を備える前記コンデンサ構造の金属化層
において存在し、前記最上部および底部のスラブまたは棒部は、垂直次元における前記第2の電極の幅を画定する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンデンサ構造。
【請求項6】
前記2つの第1の電極の一方は、垂直次元における前記第2の電極の幅の上限を定める前記第2の電極のスラブまたは棒部を備える前記金属化層の上方に垂直次元において位置する前記コンデンサ構造の層
において存在し、および、前記2つの第1の電極の他方は、垂直次元における前記第2の電極の幅の下限を定める前記第2の電極のスラブまたは棒部を備える前記コンデンサ構造の層
において存在し、または、
前記2つの第1の電極の一方は、垂直次元における前記第2の電極の幅の下限を定める前記第2の電極のスラブまたは棒部を備える前記金属化層の下方に垂直次元において位置する前記コンデンサ構造の層
において存在し、および、前記2つの第1の電極の他方は、垂直次元における前記第2の電極の幅の上限を定める前記第2の電極のスラブまたは棒部を備える前記コンデンサ構造の層
において存在する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のコンデンサ構造。
【請求項7】
前記2つの第1の電極の一方は、垂直次元における前記第2の電極の幅の上限を定める前記第2の電極のスラブまたは棒部を備える前記コンデンサ構造の前記金属化層の上方に位置する前記コンデンサ構造の層
において存在し、および、前記2つの第1の電極の他方は、垂直次元における前記第2の電極の幅の下限を定める前記第2の電極のスラブまたは棒部を備える前記コンデンサ構造の前記金属化層の下方に位置する前記コンデンサ構造の層
において存在する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のコンデンサ構造。
【請求項8】
前記2つの第1の電極の隣接する面間の垂直距離は、垂直次元における前記2つの第2の電極の幅を画定する層の厚さによって画定される、
請求項7記載のコンデンサ構造。
【請求項9】
半導体素子構造、任意に前記半導体素子構造の最上部上の1つまたは複数の中間層、および、
前記半導体素子構造の最上部上または前記中間層の最上部上のいずれかに配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンデンサ構造、
を備える電子素子。
【請求項10】
交互に配置された複数の誘電体および金属化層を備える層状構造としてのコンデンサ構造を製造する方法であって、
前記金属化層が金属パターン、および誘電体材料を備え、
前記方法は、製造プロセス中に:
前記交互に配置された複数の層の誘電体材料によって分離される2つの
略平行な第1の電極を備える少なくとも1つの横方向平行板コンデンサ部分(LPP部分)を、前記コンデンサ構造の2つの異なる
金属化層
における2つの金
属パターンを形成することによって生成するステップと、
2つの第2の電極を備える少なくとも1つの垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)
であってビアによって互いに電気的に結合されている重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部を前記複数の金属化層において前記第2の電極それぞれが備える少なくとも1つの垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)を生成するステップと、
前記少なくとも1つのVPP部分に結合された第1の電気接点および第2の電気接点であって前記少なくとも1つのVPP部分の前記2つの第2の電極それぞれが、前記第1の電気接点および前記第2の電気接点の一方に結合された、第1の電気接点および第2の電気接点を生成するステップと、
前記コンデンサ構造を形成するために
、前記第1の電気接点および前記第2の電気接点の少なくとも一方を介して、前記少なくとも1つのLPP部分を前記少なくとも1つのVPP部分と電気的に結合するステップと、
を備え、
前記2つの第1の電極を分離する前記交互に配置された複数の層の少なくとも1つの層上の誘電体材料の厚さのバラツキであって垂直次元における前記2つの第1の電極間の距離の公称値との差を生じさせる厚さのバラツキによる、前記少なくとも1つのLPP部分の静電容量値のバラツキ
による、前記コンデンサ構造の静電容量値のバラツキは、垂直次元における前記2つの第2の電極の幅の公称値との差を生じさせる厚さの同じバラツキのために、前記交互に配置された複数の層の同じ少なくとも1つの同じ厚さのバラツキによる少なくとも1つのVPP部分の静電容量値の
バラツキによる、前記コンデンサ構造の静電容量値の正反対のバラツキによって
実質的に補償される、方法。
【請求項11】
電子素子を製造する方法であって、前記方法が:
半導体素子構造を製造するステップ;および
任意に前記半導体素子構造の最上部上に1つまたは複数の中間層を製造するステップ;
を備え、
前記方法が:
請求項10に記載の方法を用いて、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンデンサ構造を、前記半導体素子構造の最上部上に、または前記1つまたは複数の中間層の最上部上に製造するステップをさらに備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子構造、およびそのような構造を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1aは、導体板の長さL、導体板の幅Wを有する横向きの2枚の導体板を有する平行板コンデンサを示し、および、2枚の板電極(100、102)間の垂直距離はDである。第1の板電極(100)と第2の板電極(102)との間の間隙は、厚さDおよび比誘電率ε
rを有する誘電体媒質(101)で充填され、および、ε
0は、真空の誘電率の定数である。平行板コンデンサの静電容量は、式:
によって与えられる。
【0003】
半導体業界では、絶縁体が誘電体媒質(101)として使用される場合、この種のコンデンサは、絶縁体材料の1つまたは複数の層を2枚の平坦な金属シート間に配置することによって通常、製造され、および、したがって、これは、金属-絶縁体-金属(MIM)コンデンサと一般的に呼ばれている。このタイプのコンデンサは、水平方向コンデンサまたは横方向コンデンサと呼ばれてもよい。というのは、導体板が、横方向と考えてもよい水平方向に延在しているからである。
【0004】
板電極(100、102)の寸法、特にその幅(W)および長さ(L)が共に、距離(D)よりも明らかに大きい場合、式(1)は略正確である。というのは、この場合において、電界がこれらの板間で一定であると考えることができ、および、フリンジング電界が存在していても実際には無視できるからである。静電容量は、寸法WおよびLに正比例し、ならびに、Dに逆比例するので、W、L、およびDの絶対許容差が同じ桁数であるが、WおよびLが共に明らかにDよりも大きいと仮定すると、静電容量許容差の観点から最も重要な寸法は、明らかにDである。
図1bは、
図1aのコンデンサの断面を示している。板電極(100、102)間の電束(103)は主に、板電極(100、102)間に位置している。
【0005】
上記コンデンサ板の幅または長さのいずれかが、上記板間の距離と比較して大きくない場合、コンデンサの縁周りのフリンジング電界(104)は、総静電容量に著しく寄与し、および、考慮すべきである。これは、
図2aに示される垂直方向平行板(VPP)コンデンサ構造の場合にあてはまる。その構造は、
図1aの構造と比較して、電束の方向が90°回転させられ、および、これらの板間で水平方向に延在する一方、コンデンサ板(200、202)は、垂直方向に延在する。この特別な場合において、コンデンサ板の幅Wは、上記板(200、202)間の距離Dよりも著しく大きいと考えることはできない。式(1)に対応する式(2)は、静電容量を粗く見積もるためになお使用できる。
【0006】
図2bは、
図2aのコンデンサの断面を示している。板電極(200、202)に対して完全に垂直である訳でない平行な板電極(200、202)の縁でのフリンジング電界(104)は、より著しい影響を総静電容量に与える。
【0007】
フリンジング静電容量は、金属板電極の形状、および板電極間の距離に応じて、直接的な静電容量(direct capacitance)よりも一層大きくなり得る。集積回路の一般的な相互接続線においては、それらの線が通常、長く、および狭いので、フリンジング静電容量が支配的である。
【0008】
半導体素子構造上でコンデンサを作製する様々の製造方法が知られているが、多くの場合、コンデンサ構造は、コンデンサの物理的なサイズを削減するために、高誘電体材料、つまり、セラミック、ガラス、またはサファイアなどの、高い誘電率を有する材料を用いて作製される。また、酸化ケイ素は、誘電体材料として使用される場合がある。高誘電体材料とは、少なくとも4である比誘電率を有する材料のことをいう。高誘電体材料を使用することにより、コンデンサはより高い静電容量密度を有することになり、したがって、より小さなサイズで、要求される静電容量を実現することを可能にする。半導体素子はよって、複数の半導体層、および、誘電体層と金属化層とを交互に配置した、層状の構造の両方を備える場合があり、この場合においては、少なくとも1つのコンデンサ構造が、上記半導体素子部分の最上部に配置されたこの層状の誘電体-金属化構造に含まれる。一般的な素子においては、半導体層は、誘電体および金属化層の下方に存在し、このことにより、たとえば、回路に必要な配線および受動部品に備えることができる。金属化層は、誘電体材料によって取り囲まれた金属化パターンを備えている。当該技術分野において知られているように、1つまたは複数の中間層が、上記半導体層と、層状の誘電体-金属化構造との間に設けられる場合がある。中間層は、たとえば、複数のポリシリコン層および/または複数の酸化ケイ素層を備える場合がある。
【0009】
[先行技術の記載]
特許文献1は、導電性ビアで互いに結合された導電層によって形成された、交互配置された垂直方向板電極によって画定された垂直方向平行板コンデンサを開示している。
【0010】
特許文献2は、交互に互いの間で延在する電極指状部を有する櫛状構造を第1の面に備えるコンデンサ構造を開示し、および、電極のさらなる組が、上記第1の面と略平行となる少なくとも1つのさらなる平面上で画定されている。異なる層上の異なる極性の電極指状部の配置を調節することによって、中間層の誘電体の厚さの変化による静電容量のバラツキが減少させられる。
【0011】
特許文献3は、交互の金属相互接続層内に金属線および金属板を含む集積回路内の誘電体スタック内に形成されたコンデンサを開示している。
【0012】
特許文献4は、基板上の導電性細長片の複数の層と、遮蔽を行うための当該細長片構造の上方および下方の導電性板とによって形成された静電容量を開示している。
特許文献5は、交互に、および繰り返し積み重ねられた負および正の電極指状部を有するコンデンサ構造を開示している。
【0013】
現行の最先端のコンデンサは、たとえば、製造プロセスにおける層の厚さのバラツキによって引き起こされる非常に大きな許容差を有している。
【0014】
コンデンサによって費やされる面積は、設計上の1つの大きな制約である。静電容量密度を向上させるための、知られている1つの方法は、たとえば、以上で言及された先行技術にあるように、交互配置された複数の電極指状部を使用することである。しかし、このタイプのコンデンサ素子の製造プロセスにおけるバラツキのために、このタイプのコンデンサの静電容量値の許容差は大きい。つまり、静電容量値の精度が、かなり悪く、これは、正確なコンデンサ値を要求する応用のために大量に生産される素子を製造する際に問題を引き起こす。チップアンテナ、および
アンテナ整合のために無線装置において使用されるコンデンサが、そのような応用の典型例である。
【0015】
コンデンサの個々の選定は、大量生産においては商業的に実現可能でない。知られている1つの解決策は、コンデンサのトリミングを行うことであり、これは、幾分有用であるが、時間およびリソースを必要とし、ならびに、したがってコストの追加となる。したがって、費用効率の高いやり方で、大量のコンデンサ素子における静電容量値のバラツキをコントロールする必要がある。
【0016】
図3は、N個の電極指状部を有する垂直コンデンサ構造を示している。これら電極指状部各々は、1つまたは2つの隣接する電極指状部で容量性板対を形成し、および、垂直コンデンサ構造の総静電容量は、垂直に向けられた隣接するコンデンサ板対すべての組み合わせとして実現される。
図3の例においては、この例示的な配置は、一方の電極を併せて形成する奇数番号の電極指状部1、3、5、...と、他方の電極を併せて形成する偶数番号の電極指状部2、4、6、...とを有している。任意の2つの隣接する電極指状部間の距離Dは、等しい場合があり、または異異なる場合がある。垂直コンデンサの一般的な設計においては、電極指状部間の複数の距離Dは等しい。しかし、これら距離を等しくする必要はなく、および、現在のシミュレーションツールが、任意の種類のコンデンサ構造の公称静電容量を容易に、および正確に計算する。
【0017】
図4aは、例示的な垂直方向平行板コンデンサの金属化パターンの上面図を示し、この例示的な垂直方向平行板コンデンサにおいては、正および負の電極(200、202)が、重ね合わせられた金属化層を併せて接続する複数のビアを有する重ね合わせられた、交互配置された金属電極指状部のパターンを備える。上記構造間の誘電体材料は図示されていない。
図4bは、
図4aに示される切断線A-Aに沿った、同じ構造の金属部分の斜視図を示す。この図は、複数の金属化層(L1、L3、L5、L7、L9)および、これら金属化層上に形成されたスラブまたは棒部間の相互接続ビア(40)を示している。この構造は基本的には、以上で言及された特許文献1に類似している。この例示的な素子の垂直方向のスタックは、2つの厚い金属化層(L7、L9)と、3つのより薄い金属化層(L1、L3、L5)とを備える。
【0018】
たとえば、厚い金属のオプションを用いた、無線周波数集積回路の配線工程(RFIC BEOL)金属化に対して一般的である、
図4bに示される層構造では、厚い金属層は、たとえば、低損失RFコイルまたは伝送線を作製するために有用である。半導体デバイスに対するそれほど重要ではない微細ピッチのルーティングおよび接続のための複数のより薄い層(L1、L3、L5)も存在する。残念ながら、この種の層構造は、製造許容差の観点から必ずしも最適な層構造でない。というのは、2つの厚い金属化層(L7、L9)が厚さのバラツキにおいて支配的となる可能性があるからであり、これは、静電容量のバラツキの増加に寄与する。これらの特性は、垂直方向平行板コンデンサのそのようなタイプが、そういうものとして、たとえば、正確なコンデンサ値が必要とされるアンテナおよび/またはアンテナインターフェースなどに好適でなくなる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第6690570号明細書
【文献】米国特許第6542351号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0123213号明細書
【文献】米国特許第6969680号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0022948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
目的は、多層構造の材料層の厚さのバラツキによる、静電容量値のバラツキの影響を受けにくいコンデンサ構造を提供することである。本発明の目的は、請求項1の特徴部分によるコンデンサ構造および請求項9に記載の電子素子で達成される。これら目的は、請求項10に記載の、コンデンサ構造を製造する方法、および請求項11に記載の、電子素子を製造する方法でさらに達成される。
【0021】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項において開示される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、垂直方向平行板コンデンサ部分と横方向平行板コンデンサ部分の両方を有する組み合わせられたコンデンサ構造の考えに基づいている。そのような組み合わせられたコンデンサ構造においては、製造許容差による、特にコンデンサ構造の誘電体層および/または金属化層の厚さのバラツキの変化による上記垂直方向および横方向部分の静電容量の変化が、互いを事実上打ち消す。概して、金属化層上の金属パターニングが、多数の形状に作られ得るが、通常は狭い線、スラブもしくは棒部、または矩形板が相互接続とコンデンサとの両方に使用され、および、誘電体材料が、それぞれの金属層において金属パターンを囲んでいる。これらの形状は、以下の記載で使用されるが、その他の形状も排除されるものでない。
【0023】
第1の態様によれば、交互に配置された複数の誘電体および金属化層を備える層状構造として実現されるコンデンサ構造が提供される。このコンデンサ構造は、上記交互に配置された複数の層の誘電体材料によって分離された2つの異なる層において略平行な2つの金属化パターンによって形成された2つの第1の電極を備える少なくとも1つの横方向平行板コンデンサ部分(LPP部分)、および、上記複数の金属化層に配置された、重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部を各々が備える2つの第2の電極を備える少なくとも1つの垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)を備える。少なくとも1つのLPP部分は、コンデンサ構造を形成するために、少なくとも1つのVPP部分と電気的に結合される。2つの第1の電極を分離する上記交互に配置された複数の層の少なくとも1つの層上の誘電体材料の厚さのバラツキであって垂直次元における2つの第1の電極間の距離の公称値との差を生じさせる厚さのバラツキによる、上記少なくとも1つのLPP部分の静電容量値のバラツキは、垂直次元における2つの第2の電極の幅の公称値との差を生じさせる厚さの同じバラツキのために、上記交互に配置された複数の層の同じ少なくとも1つの同じ厚さのバラツキによる少なくとも1つのVPP部分の静電容量値の正反対のバラツキによって少なくとも部分的に補償される。
【0024】
第2の態様によれば、少なくとも1つのLPP部分および少なくとも1つのVPP部分は、並列にまたは直列に互いに電気的に結合される。
【0025】
第3の態様によれば、上記コンデンサ構造は、少なくとも2つのLPP部分および少なくとも2つのVPP部分を備え、少なくとも1つのLPP部分および少なくとも1つのVPP部分が、互いに並列に電気的に結合され、および、少なくとも1つの他のLPP部分および少なくとも1つの他のVPP部分が、互いに直列に電気的に結合される。
【0026】
第4の態様によれば、上記第2の電極は両方とも、重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部によって各々が形成された複数の電極指状部を備え、2つの第2の電極の複数の電極指状部は、交互配置された電極指状部を有する櫛状構造を形成し、この櫛状構造においては、隣接する電極指状部は、交番極性を有し、および/または上記重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部は、これら重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部を備える2つの隣接する金属化層を分離する誘電体材料層各々を横切る1つまたは複数の導電性ビアで、互いに電気的に接続される。
【0027】
第5の態様によれば、上記2つの第1の電極は、上記第2の電極の最上部および底部のスラブまたは棒部を備える上記コンデンサ構造の金属化層において存在し、最上部および底部のスラブまたは棒部は、垂直次元における第2の電極の幅を画定する。
【0028】
第6の態様によれば、上記2つの第1の電極の一方は、垂直次元における第2の電極の幅の上限を定める第2の電極のスラブまたは棒部を備える金属化層の上方に垂直次元において位置するコンデンサ構造の層において存在し、および、上記2つの第1の電極の他方は、垂直次元における第2の電極の幅の下限を定める第2の電極のスラブまたは棒部を備えるコンデンサ構造の層において存在する。あるいは、上記2つの第1の電極の一方は、垂直次元における第2の電極の幅の下限を定める第2の電極のスラブまたは棒部を備える金属化層の下方に垂直次元において位置するコンデンサ構造の層において存在し、および、上記2つの第1の電極の他方は、垂直次元における第2の電極の幅の上限を定める第2の電極のスラブまたは棒部を備えるコンデンサ構造の層において存在する。
【0029】
第7の態様によれば、上記2つの第1の電極の一方は、垂直次元における第2の電極の幅の上限を定める第2の電極のスラブまたは棒部を備えるコンデンサ構造の金属化層の上方に垂直次元において位置するコンデンサ構造の層において存在し、および、上記2つの第1の電極の他方は、垂直次元における第2の電極の幅の下限を定める第2の電極のスラブまたは棒部を備えるコンデンサ構造の金属化層の下方に垂直次元において位置するコンデンサ構造の層において存在する。
【0030】
第8の態様によれば、上記2つの第1の電極の隣接する面の間の垂直距離は、垂直次元における上記2つの第2の電極の幅を画定する層の厚さによって画定される。
【0031】
別の態様によれば、半導体素子構造、任意に半導体素子構造の最上部上の1つまたは複数の中間層、および、上記半導体素子構造の最上部上または上記中間層の最上部上のいずれかに配置された上記態様のいずれか1つによるコンデンサ構造を備える電子素子が、提供される。
【0032】
方法の第1の態様によれば、交互に配置された複数の誘電体および金属化層を備える層状構造であるコンデンサ構造を製造する方法が、提供される。
【0033】
上記方法は、製造プロセス中に、上記交互に配置された複数の層の誘電体材料によって分離される2つの第1の電極を備える少なくとも1つの横方向平行板コンデンサ部分(LPP部分)を、コンデンサ構造の2つの異なる層において略平行な2つの金属化パターンを形成することによって生成するステップと、2つの第2の電極を備える少なくとも1つの垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)を、上記複数の金属化層上の重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部を作製することによって生成するステップと、コンデンサ構造を形成するために上記少なくとも1つのLPP部分を上記少なくとも1つのVPP部分と電気的に結合するステップと、を備える。上記2つの第1の電極を分離する上記交互に配置された複数の層の少なくとも1つの層上の誘電体材料の厚さのバラツキであって垂直次元における上記2つの第1の電極間の距離の公称値との差を生じさせる厚さのバラツキによる、上記少なくとも1つのLPP部分の静電容量値のバラツキは、垂直次元における2つの第2の電極の幅の公称値との差を生じさせる厚さの同じバラツキのために、上記交互に配置された複数の層の同じ少なくとも1つの同じ厚さのバラツキによる少なくとも1つのVPP部分の静電容量値の正反対のバラツキによって少なくとも部分的に補償される。
【0034】
方法の別の態様によれば、半導体素子構造を製造するステップと、任意に上記半導体素子構造の最上部上に1つまたは複数の中間層を製造するステップと、方法の上記第1の態様による方法を用いて、第1~第8の態様のいずれかによるコンデンサ構造を、上記半導体素子構造の最上部上に、または上記1つまたは複数の中間層の最上部上に製造するステップと、を備える方法が、提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明の考えは、様々な金属パターニングを用いて、様々な方法で実現され得る。しかし、コンデンサ構造が、a)静電容量がコンデンサ構造の層の厚さの関数として増加する部分と、b)静電容量がコンデンサ構造の層の厚さの関数として減少する部分と、の両方を有することが本質的であり、これら部分の層の厚さが、同じ層によって少なくとも部分的に、好ましくは主として、画定されることが本質的である。このことが、層の厚さのバラツキによる、コンデンサ構造の総静電容量のバラツキの補償を可能にする。理想的には、そのような補償は、使用されるすべての層とコンデンサ構造のすべての部品を対象とするが、一般的な場合では、すべての層バラツキは、この補償の仕組みに含まれることは不可能である。たとえば、コンデンサ構造を作製するのに使用される製造プロセスには複数の制限がある場合がある。しかし、部分的な補償であっても静電容量のバラツキを低減させる。
【0036】
コンデンサ構造の静電容量のバラツキが所望の許容差範囲内にあるように、フリンジング静電容量の影響が考慮に入れられる。現行の設計ツールが、たとえば正確なシミュレーションを通じてフリンジング静電容量を考慮にいれることを可能にする。
【0037】
本発明は、本発明に基づくコンデンサ構造の静電容量の許容差が改善されるという利点を有している。言い換えれば、発明された本コンデンサ構造を有するコンデンサの静電容量値は、個々の選定もトリミングもなしで正確である。発明された本コンデンサ構造は、製造許容差による静電容量値への層の厚さのバラツキの効果を有利に補償し、したがって静電容量のバラツキを低減する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下において、本発明は、添付図面を参照して、好適な実施形態に関して、さらにより詳細に記載される。
【0039】
【
図3】複数の垂直方向板電極を有する垂直方向コンデンサ構造を示す。
【
図5】第1の実施形態による、横方向および垂直方向平行板コンデンサ部分を有する素子の断面を示す。
【
図6】第2の実施形態による、横方向および垂直方向平行板コンデンサ部分を有する素子の断面を示す。
【
図7】第3の実施形態による、横方向および垂直方向平行板コンデンサ部分を有する素子の断面を示す。
【
図8】第4の実施形態による、横方向および垂直方向平行板コンデンサ部分を有する素子の断面を示す。
【
図9】第5の実施形態による、横方向および垂直方向平行板コンデンサ部分を有する素子の断面を示す。
【
図10】複数の横方向平行板コンデンサ部分および複数の垂直方向平行板コンデンサ部分の相互の結合を模式的に示す。
【
図13a】第2の非限定的な実装例の等角斜視図を示す。
【
図13b】第2の非限定的な実装例の等角斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
「バラツキ」および「変化」との語は、物理量の値がその公称値と異なる状況を指す。たとえば、製造許容差による、層の厚さのバラツキまたは変化は、最終生産物における層の厚さが、関連する物理量の所望の特性を達成するために設計において使用された公称値と異なることを意味する。同様に、層の厚さのバラツキによる、静電容量値のバラツキまたは変化は、静電容量値が、複数の層すべてがコンデンサを設計する際に使用されたようなそれらの公称厚さを有していた場合に、達成されたであろう公称値と異なることを意味している。
【0041】
当該技術分野において知られているように、金属-誘電体素子は、一般的には、層状に製造される。層状構造においては、「横方向」および「水平方向」との語は共に、材料の層に沿って延びる、構造、または電界などの場を指す。横方向の構造は、他の横方向の複数層間に配置され得るか、または上記層状構造の側方表面に沿って延在し得る。それに応じて、「垂直方向」との語は、横方向の層に垂直な方向に延びる構造または場のことを指すのに使用される。層状構造においては、垂直方向の構造は、重ね合わせられた複数の材料層において配置された部分を備え、および、したがって、垂直方向の構造は、複数の材料層にわたって延在する。垂直方向の構造は、上記複数の材料層の少なくともいくつかの層を垂直方向に横断し、または上記複数の材料層の少なくともいくつかの間を横切ってもよく、および、任意の中間層においてビアのような接続部分が存在してもよい。垂直方向の構造は、異なる複数の材料層上にいくつかの重ね合わせられた部分を備えていてもよい。横方向および垂直方向の構造は、したがって、略90°転置を有する。同様に、横方向および垂直方向の場は、略90°転置を有する。
【0042】
隣接する2つの垂直方向の構造は、横方向の静電容量を生成するために使用されてもよく、横方向の電界がこれら2つの垂直方向の構造間で生成され得る。垂直方向に分離された2つの異なる層上に重ね合わせられた2つの横方向の金属パターンは、垂直方向の静電容量を生成し、垂直方向の電界が2つの横方向の金属パターン間で生成され得る。本発明の便益を実現するために、垂直方向平行板コンデンサ部分の横方向の静電容量と、横方向平行板コンデンサ部分の垂直方向の静電容量との両方に影響を及ぼす層の個数を最大にすることは有益である。
【0043】
「横方向平行板コンデンサ部分(LPP部分)」との語は、平行板コンデンサタイプのものであるコンデンサ部分を指し、および、2つの横方向平行板電極を備え、ならびに、「垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)」との語は、平行板タイプのものであるコンデンサ部分を指し、および、2つの垂直方向平行板電極または2より大きい数の交互配置された直方向平行板電極指状部を備えてもよく、これら垂直方向平行板電極指状部は、簡潔には、垂直方向電極指状部と呼ばれてもよい。垂直方向平行板電極および垂直方向電極指状部は、重ね合わせられた複数の金属化スラブまたは棒部を一般的に備えるが、単一の金属化層上に形成されていてさえもよい。
【0044】
以下では、
図5~
図9を援用して実施形態のいくつかの基本的な特性および原理が説明される。図面は、縮尺通りでなく、および、横次元と垂直次元で使用されている縮尺は異なり得る。また、コンデンサ構造の複数の層が、垂直方向で略等しい厚さで示されているが、実施形態は、上記構造の層のいかなる特定の個数にも、厚さが等しい複数の層を有する構造にも限定されないが、
図4bに示されているもののように、上記原理は、任意の個数の複数の層、および層の厚さの任意の組合せに適用可能である。水平方向の破線は、誘電体および金属化層の限界を表している。
【0045】
図5は、第1の実施形態による、VPP部分とLPP部分とを有するコンデンサ構造の断面を示す。コンデンサ素子は、複数の層(L0、L1、L2、...、L6)を備える。この例は、7つの層を示しているが、任意の数の層が適用可能である。特に、7より大きい数の層が適用されてもよい。LPP部分の金属化電極板(100、102)、およびVPP部分の電極の複数の金属化スラブまたは棒部(200a~c、202a~c)が、奇数で番号付けられた層L1、L3、およびL5上に配置され、これらの層は、一般に、金属化層と呼ばれてもよい。複数の金属パターンが、金属化層
において誘電体材料によって取り囲まれている。偶数で番号付けられた層L0、L2、L4、L6は、誘電体層と呼ばれてもよい。というのは、これらの層は、ガラス、セラミック、サファイア、または酸化物材料などの非導電性誘電体材料を主に含んでいるからである。
【0046】
第1の実施形態においては、VPP部分の重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部は、2つの金属化層間の中間誘電体層を通って延びる1つまたは複数の金属化ビア(40)で、互いに結合される。上記複数のスラブまたは棒部間のこれらビア(40)の形状、大きさ、個数、および位置は、設計オプションである。
【0047】
以下の実施形態においては、電極間の距離(D)に言及するのに参照符号LDおよびVDを、電極の幅(W)に言及するのに参照符号LWおよびVWを、ならびに、LPP部分およびVPP部分の長さに言及するのに参照符号LLおよびVLをそれぞれ使用する。
【0048】
第1の実施形態においては、LPP部分の正および負の複数の板電極(100、102)間の距離LDは、これら板電極間の3つの層(L2、L3、L4)の厚さによって定められる。これらの中間層の1つまたは複数が、意図したものよりも厚い場合、LPP部分の複数の横方向板電極(100、102)間の距離(LD)は増加することになり、これは、式(1)による、実現される静電容量を減少させることになる。一方、これらの中間層(L2~L4)の1つまたは複数の厚さの同程度の増加も、VPP部分の幅(VW)を増加させ、これは、VPP部分の電極の面積を事実上、増加させ、および、したがって、VPP部分の静電容量値を増加させる。
【0049】
LPPおよびVPP部分を適切に寸法入れし、および組み合わせることにより、静電容量値のこれらの変化は、少なくとも互いの大部分を補償する。層の厚さのバラツキによる、静電容量値のバラツキは、両方のコンデンサ部分の静電容量に、しかし、逆方向に影響することになる。LPP部分およびVPP部分の公称静電容量値は、フリンジング静電容量の影響を考慮することとともに、必要な総静電容量値、利用可能な面積の要件を満たすように設計されてもよい。公称静電容量値は、両方のコンデンサ部分の金属化部分の層の公称厚さおよび横方向の公称寸法で実現される静電容量値を指す。
【0050】
第1の実施形態においては、LPP部分の電極がそれらの上に存在するそれらの金属化層L1および金属化層L5の厚さのバラツキは、LPP部分の静電容量に大きな影響を及ぼすものでないが、VPP部分の静電容量に影響を及ぼすことになる。層L1およびL5の厚さのバラツキの影響は、補償できないが、この配置は、いくつかの応用において十分である、静電容量のバラツキの補償を可能にする。
【0051】
この補償効果を利用するために、VPP部分およびLPP部分は、互いに電気的に組み合わせられるものであり、よって、コンデンサ構造の実現可能な総静電容量値は、VPP部分およびLPP部分両方の静電容量に基づいて定められる。実現可能な静電容量値を最大に、したがって、実現可能な静電容量密度を最大にするために、これら2つのコンデンサ部分を並列に結合することが有益である。しかし、LPPおよびVPP部分が直列に結合されている場合、静電容量の変化の補償のための同じ基本的な原理があてはまる。
【0052】
LPP部分の電極間の層における層の厚さの変化Δtによる静電容量の変化は、数学的に以下のように表され得る。VPP部分の静電容量の変化ΔC
vertは、以下の関数で表され得る:
層の厚さの同じ変化Δtによる、LPP部分の静電容量の変化は、以下の関数で表され得る:
LPPおよびVPP部分が並列に接続されるとき、距離LDの変化Δtのおおよその効果は、および、したがって、総静電容量における幅VWの変化も、したがって、以下の関数で表され得る:
この簡略化された式は、フリンジング静電容量の変化を考慮していない。上記静電容量部分を直列に結合する場合には、総静電容量における距離LDおよび幅VWの変化Δtの組み合わせられた効果は、以下の関数で表され得る:
【0053】
図6は、第2実施形態による、VPP部分およびLPP部分を有するコンデンサ構造の模式断面図を示し、第2の実施形態は、VPP部分の複数のスラブまたは棒部(200a~c、202a~c)間にビアが存在しないという点で第1の実施形態と異なる。VPP部分での電界の主要な部分は、同じ層、すなわち、200aおよび202a、200bおよび202b、ならびに200cおよび202c
において存在する隣接する複数のスラブまたは棒部間に生じることになる。複数の板電極(100、102)間の距離(LD)を変化させる、LPP部分の複数の電極間の1つまたは複数の中間層(L2~L4)の厚さの変化は、第1の実施形態と同様に、VPP部分の上記有効幅(VW)の同様の変化を引き起こす。2つの電極により、単一のVPP部分を実現するために、各電極の複数の棒部およびスラブ(200a、200b、200c;202a、202b、202c)は、相互に電気的に接続されることになる(図示せず)。この相互の接続は、複数のスラブまたは棒部の任意の部分で、たとえば、一端でまたは当該一端の近くで、確立されてもよい。重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部(200a、200b、200c;202a、202b、202c)は、それらの長さの大部分において誘電体層によって電気的に分離されるが、それらは、したがって、VPP部分の2つの電極を形成するように電気的に結合され、および、したがって、垂直方向平行板コンデンサタイプの変形例として考えてもよく、ならびに、したがって、VPP部分と呼ばれてもよい。相互に結合された重ね合わせられた複数のスラブまたは棒部(200a、200b、200c;202a、202b、202c)は、したがって、その中に孔を有するその垂直方向平面電極を形成すると考えられ得る。重ね合わせられた棒部またはスラブはそれぞれ、同じ電位を有し、および、電界が、1つの垂直平面での重ね合わせられた棒部またはスラブ、および隣接する垂直平面でのスラブまたは棒部間に形成される。この種の配置は、第1の実施形態よりも、より著しいフリンジング電界の効果を有することになる。この場合においては、VPP部分の静電容量は、隣接するスラブまたは棒部の対向する面の間の横方向電界、およびスラブまたは棒部の露呈された縁のフリンジング電界の両方に基づく。層の厚さの変化の補償が実現され得るように、フリンジング静電容量の影響が、素子の設計に考慮されてもよい。フリンジング静電容量に関する設計の諸問題は、本発明の焦点でなく、および、したがって、ここでは詳細に議論しないが、それらは、フリンジング静電容量を考慮に入れるコンデンサの設計方法とともに、当業者によってよく知られている。このタイプの電極を用いて実現される総静電容量は、中実の板電極を用いて実現される総静電容量よりも幾分小さい。
【0054】
図7は、第3の実施形態による、VPP部分およびLPP部分を有するコンデンサ構造の模式断面を示す。第1の実施形態と比較して、VPP部分は、この場合には、2よりも大きい数の垂直方向電極指状部を有し、これら垂直方向電極指状部は、たとえば、
図4aに示されているような、交番極性を有する配置における交互配置された電極指状部として、配置されてもよい。4つの垂直方向電極指状部が、この図に示されているが、設計に応じて、任意の数の垂直方向電極指状部が適用されてもよい。
図7に、ならびに
図4aおよび4bにも示されているような交互配置されたVPP部分構造は、当該技術分野においては通常、VPPコンデンサと呼ばれ、および、本出願の文脈においては、垂直方向平行板コンデンサ部分(VPP部分)と呼ばれる。隣接する電極指状部の異なる対間の距離VDは、等しくてもよいが、設計に応じて異なっていてもよい。単一のVPP部分を実現するために、電極指状部は、たとえば、一端または一端近くのみで相互に接続されていてもよい。さらなる代替例によれば、第3の実施形態はさらに、
図6に関連して説明したように、VPP部分の電極指状部の複数のスラブまたは棒部間の複数のビア(40)なしで実現されてもよい。単一のVPP部分を実現するために、複数の棒部またはスラブ(200a、200b、200c;202a、202b、202c)が、VPP部分の2つの電極を形成するように電気的に結合される。
【0055】
図8は、第4の実施形態による、VPP部分およびLPP部分を有するコンデンサ構造の簡略化された模式断面を示す。本実施形態では、VPP部分は、第3の実施形態と比較した場合、本質的に変わっていない状態にとどまっていてもよく、および、任意の数の垂直方向電極指状部が、設計に応じて適用されてもよい。本実施形態の設計オプションは、櫛状の配置における任意の数の交互配置された垂直方向電極指状部、または第1および第2の実施形態において示されたような、2つのみの垂直方向板電極も含んでいる。LPP部分の1つの板電極(100)が、誘電体層L6上に配置されている。このタイプの金属パターン配置は、現在利用可能ないくつかの独自の製造プロセスにおいて利用可能である。さらに、誘電体層上に配置されたLPP部分の電極の厚さは、それぞれの誘電体層の厚さよりも、上記製造プロセスが主に誘電体層上のそのような金属化構造を作製することを可能にした場合、薄くてもよい。それぞれの金属化層(L5)の厚さが、製造プロセスが理由で変化した場合、これは、LPP部分の複数の板電極(100、102)間の距離(LD)、および、VPP部分の複数の電極の幅(VW)両方に影響を与える。したがって、第1~第3の実施形態における補償の仕組みに含まれる層L2~L4における変化に加えて、層L5の厚さの変化の効果も、物理的な測定量、ならびに、したがって、LPPおよびVPPコンデンサ部分両方のコンデンサ値に、しかし、逆方向に、影響を与える。したがって、本実施形態は、静電容量補償の全体の仕組みにおいて、さらなる層(L5)を含み、前述した実施形態と比較して補償能力をさらに向上させる。本実施形態の別の変形例は、複数のスラブまたは棒部を結合する複数のビア(40)なしで
図6のVPP部分に関して開示された原理を使用する。
【0056】
図9は、第5の実施形態に基づくVPP部分およびLPP部分を有するコンデンサ構造の簡略化された模式断面を示す。第4の実施形態と比較して、LPP部分の第2の板電極(102)は、底部の誘電体層(10)上に配置されている。このタイプの金属化パターン配置は、現在、または将来の独自の製造プロセスにおいて可能にされ得る。金属化層L1の厚さが、製造プロセスが理由で変化した場合、これは、LPP部分の2つの板電極(100、102)間の距離(LD)およびVPP部分の複数の電極の幅(VW)両方にさらに影響を与えることになる。したがって、層L2~L4における変化に加えて、層L1およびL5両方の厚さの変化の効果も、この場合、LPPおよびVPP部分の両方に、しかし逆方向に、影響を与えることになる。したがって、本実施形態は、この構成において、製造許容差により、これらの層の厚さが変わる場合に静電容量補償の全体の仕組みに影響を与え得る考えられる層(L1~L5)すべてを備える。つまり、LPP部分の複数の電極間の距離LDはVPP部分の複数の電極の幅VWと等しく、上記層の1つまたは複数の層の厚さの変化による、距離(LD)および幅(VW)のいかなる変化も等しい。したがって、式(3)~(6)において、Δt=ΔLD=ΔVWであること、つまり、ΔtはVPP部分の幅VWを画定するすべての層の厚さのバラツキを含んでいることをこの場合には仮定できる。第1~第4実施形態と比較して、LPP部分の静電容量は幾分低い。というのは、LPP部分の2つの板電極(100、102)が、互いからさらに離れているからである。この変化は、たとえば、LPP部分の板電極(100、102)の側面積をわずかに増大させることによって、補償されてもよい。
【0057】
図5~9に示されているすべての実施形態において、LPP部分およびVPP部分の電極は、好ましくは、実質的に異なる領域上に横方向に、それらが互いに重なり合わないように配置される。あるいは、たとえば、LPPおよびVPP部分をLおよび/またはT字状に配置することによって、横次元においてLPPおよびVPP部分の重なり合いが存在していてもよく、この板電極では、VPP部分は、TまたはL字状のステム部を形成し、および、LPP部分の板電極は、優先権主張出願である国際特許出願PCT/FI2019/050513号に開示されているような腕部または脚部を形成する。そのような場合においては、LPP部分およびVPP部分は事実上、並列に電気的に結合される。なおさらには、横次元における(複数の)LPP部分および(複数の)VPP部分の重なり合いは、たとえば、ステム部が腕部にも脚部にも取り付けられていない改変されたLおよび/またはT字形状を用いて実現されてもよい。そのような配置が、LPPおよびVPP部分の並列および直列結合の両方を可能にする。
【0058】
図10は、複数のLPP部分およびVPP部分間の相互結合を模式的に示す。コンデンサ構造の総静電容量は、この場合には、それら各々がこれらのタイプのいずれかであるそれらの全ての組み合わせられたコンデンサ部分の組み合わせによって実現され、および、各VPP部分は、LPP部分と並列にまたは直列に結合され、逆もまた同様である。この例は、2つのVPP部分(Cvert1、Cvert2)および2つのLPP部分(Clat1、Cvlat2)を備えるが、任意の数のVPP部分およびLPP部分が適用されてもよい。
【0059】
コンデンサ構造の静電容量の精度、つまり、層の厚さのバラツキによる、静電容量値の分散の補償は、同じコンデンサ構造において並列に、ならびに直列に結合されたLPP部分およびVPP部分の両方を利用することにより、さらに改善されてもよい。LPP部分およびVPP部分が直列に結合されるとき、LPPおよびVPP部分の直列結合で実現された補償後の残りの静電容量のバラツキは、並列に結合されたLPPおよびVPP部分で実現された補償後の残りの静電容量のバラツキと逆の極性を有する。同じコンデンサ構造において、直列および並列結合両方により、可能にされる補償を利用することにより、静電容量値の補償されていない残りのバラツキが、したがって、更に低減され得る。LPPおよびVPP部分の単一対の並列または直列結合のいずれか一方を使用することによって、静電容量値の精度の増加が、公称静電容量値からの静電容量値のバラツキの顕著な低減を通じて実現される。直列に結合された、ならびに並列に結合されたLPPおよびVPP部分両方を同じコンデンサ構造に含めることによって、静電容量値の実現される精度は、さらに増加させられ得る。最良の補償結果は、(複数の)LPP部分および(複数の)VPP部分の静電容量値に影響を与えるすべての層が上記補償の仕組みに含まれるときに実現される。上記補償の仕組みに含まれないVPP部分の層は、静電容量値のバラツキの主な要因となる可能性が高い。正確な静電容量値を有することが意図されたコンデンサ構造を設計するときに、他の種類の製造許容差、たとえば、金属化パターンの横方向の寸法の不正確さも、考慮に入れる必要がある。本発明による、コンデンサ構造の横方向の寸法の不正確さのかなりの部分が、距離VDの選択によって、つまり、隣接する垂直方向板電極または電極指状部間の距離の選択によってコントロールされ得る。
【0060】
図11は、上述された、発明の補償原理を適用したコンデンサ構造の第1の非限定的な実装例の上面図を示す。LPP部分は、第1の電気接点(60)に結合された第1の横方向板電極(100)、および第2の電気接点(62)に結合された第2の横方向板電極(102)を備える。第1の横方向板電極(100)および第2の横方向板電極(102)は、実質的に重なり合っている。VPP部分は、第1の電気接点(60)に結合された第1の垂直方向電極(200)、および第2の電気接点(62)に結合された第2の垂直方向電極(202)を備える。上記VPP部分(200、202)は、交互配置された櫛状構造を備える。この例では、第2の垂直方向電極(202)と、第2の電気接点との間の電気的接触は、第2の垂直方向電極(202)とともに同じ電位にある第2の横方向板電極(102)を介して実現されてもよい。LPP部分(100、102)およびVPP部分(200、202)は、したがって、並列に結合される。この例では、VPP部分(200、202)は、別の場合では四角形のLPP部分(100、102)に形成された開口(210)内に実現される。LPP部分(100、102)およびVPP部分(200、202)の電極は、したがって、横方向に重なり合うものでない。
【0061】
図12は、上述された、発明の補償原理を適用したコンデンサ構造の第2の非限定的な実装例の上面図を示す。LPP部分は、第1の電気接点(60)に結合された第1の横方向板電極(100)、および第2の電気接点(62)に結合された第2の横方向板電極(102)を備える。この図では他の構造の下に隠れた、第1の横方向板電極(100)および第2の横方向板電極(102)は、好ましくは四角形の形状を有する。VPP部分は、第1の電気接点(60)に結合された第1の垂直方向電極(200)、および第2の電気接点(62)に結合された第2の垂直方向電極(202)を備える。上記VPP部分(200、202)は、交互配置された櫛状構造を備え、この櫛状構造では、金属化結合構造(70、72)が、それぞれの電極(200、202)の指状部間の接続をもたらす。これら金属化結合構造(70、72)は、LPP部分(100、102)およびVPP部分(200、202)の電極を、第1および第2の電気接点(60、62)に向けて、さらに電気的に結合する。この例では、LPP部分(100、102)およびVPP部分(200、202)は、並列に結合される。VPP部分(200、202)およびLPP部分(100、102)は、LPP部分(100、102)およびVPP部分(200、202)の板電極が横方向に重なり合わないように、横に並んで配置される。
図12に示されているコンデンサ構造は、たとえば、金属化結合構造(70、72)ならびに/または第1および第2の電気接点(60、62)を再設計することによって、VPPおよびLPP部分の直列接続に再設計され得る。
【0062】
図13aおよび13bは、以上で説明した、発明の補償原理を適用したコンデンサ構造の第2の非限定的な実装例の異なる2つの等角斜視図を示す。第1の垂直方向電極(200)の電極指状部は、これら電極指状部の一端で、互いに、および、上記電極と第1の電気接点(60)との間に配置された金属化結合パターン(70)を介して第1の電気接点(60)にさらに電気的に結合される。第2の垂直方向電極(202)の電極指状部は、1つまたは複数の金属化結合パターン(72)で互いに電気的に結合される。これらの図は、第2の垂直方向板電極(202)の電極指状部を金属化結合パターン(72)と結合するためのビア(42)を示す。
【0063】
上述した設計すべてにおいて、第1および第2の電気接点の形状および位置は、設計オプションである。上記コンデンサ構造の下方での外部回路および/または半導体素子への結合のための電気接点は、たとえば、コンデンサ構造の上方および/または下方に、および/または上記層状構造の中間層においてさえ、設けられてもよい。
【0064】
技術の進歩に伴って、本発明の基本的な考えは様々な方法で実現できることは、当業者にとって明白である。したがって、本発明およびその実施形態は、上記実施例に限定されない一方、請求項の範囲内で変わり得る。