(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】音楽用管楽器のバルブアセンブリ用のバルブブロック及び音楽用管楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 9/04 20200101AFI20240222BHJP
G10D 7/10 20060101ALI20240222BHJP
G10D 9/08 20200101ALI20240222BHJP
【FI】
G10D9/04
G10D7/10
G10D9/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094130
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】32021033010.8
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
(73)【特許権者】
【識別番号】516151900
【氏名又は名称】ヌーボ インストルメンタル (エイジア) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nuvo Instrumental (Asia) Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリソルド, マクシミリアン スペンサー
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0086587(US,A1)
【文献】特表2016-505892(JP,A)
【文献】特開2004-354492(JP,A)
【文献】特開昭50-067125(JP,A)
【文献】特開昭49-107222(JP,A)
【文献】国際公開第02/099782(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0098020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00-9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽用管楽器のバルブアセンブリ用のバルブブロックであって、前記バルブブロックは、
複数の平行で直線的に離れたバルブ孔を有する単一構造であって、バルブ孔は少なくとも部分的に単一構造を通って延び、その中に対応する複数のバルブピストンを受け入れる単一構造と、
バルブブロックの外側からバルブブロックを通って延び、バルブブロックの外側と第1のバルブ孔との間で流体を連通させる空気流出ポートと、
バルブブロックの外側からバルブブロックを通って延び、バルブブロックの外側と
更なるバルブ孔との間で流体を連通させる空気流入ポートと、
隣接するバルブ孔間で流体を連通させるための複数の横方向の接続通路と、
複数対のチューニング部ポートであって、夫々がバルブブロックの外部からバルブブロックを通って延び、バルブブロックの外側とバルブ孔との間で流体を連通させる複数対のチューニング部ポートとを備
え、
更に、前記バルブブロックは、マニホールドと係合して、チューニング部ポートの対の少なくとも1つから流体の連通路及び空気の通路を提供する係合面を備えている、バルブブロック。
【請求項2】
複数のバルブ孔が当該バルブブロックを全面的に通って延びる、請求項1に記載のバルブブロック。
【請求項3】
前記バルブブロックは、第1のバルブ孔、第2のバルブ孔、第3のバルブ孔として3つのバルブ孔を含み、該3つのバルブ孔はその中に対応する3つのバルブピストンを受け入れ、第1の横方向の通路は第1のバルブ孔と第2のバルブ孔の間を延び、第2の横方向の通路は第2のバルブ孔と第3のバルブ孔の間を延びる、請求項1又は2に記載のバルブブロック。
【請求項4】
空気流入ポートはバルブブロックの外側と第3のバルブ孔との間で流体を連通させ、空気流出ポートはバルブブロックの外側と第1のバルブ孔との間で流体を連通させる、請求項3に記載のバルブブロック。
【請求項5】
空気流入ポートが音楽用管楽器のリードパイプから空気の振動柱を受信し、空気流出ポートが音楽用管楽器のベルパイプと流体を連通させ、チューニング部ポートは、対応するチューニング部を通って流体の連通路及び空気の通路を提供する、請求項1又は2に記載のバルブブロック。
【請求項6】
前記バルブブロックの単一構造が、金属又は金属合金から形成される、請求項1又は2に記載のバルブブロック。
【請求項7】
前記バルブブロックの単一構造が、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される、請求項1又は2に記載のバルブブロック。
【請求項8】
前記バルブブロックが高分子材料から形成される、請求項1又は2に記載のバルブブロック。
【請求項9】
空気流入ポートと空気流出ポートの中心軸が同軸で同一線上である、請求項1又は2に記載のバルブブロック。
【請求項10】
空気流入ポート及び空気流出ポートの中心軸と、横方向の接続通路が複数のバルブ孔の中心軸を通る長手方向の中間面に沿って、同軸であり、同一線上にある、請求項1又は2に記載のバルブブロック。
【請求項11】
請求項1又は2に係るバルブブロックと、
各々が前記バルブブロックのバルブ孔に配置された複数のバルブピストンと、
当該バルブブロックの空気流入ポートと流体を連通させるリードパイプと、
空気流出ポートと流体を連通させるベルパイプと、
チューニング部ポートの各対と流体を連通させるチューニング部を備える、音楽用管楽器。
【請求項12】
前記バルブブロックと前記リードパイプとの間に配置される先端部のマニホールドと、前記バルブブロック間に配置される基端部のマニホールドとをさらに備える、請求項
11に記載の音楽用管楽器。
【請求項13】
前記先端部のマニホールドは、第3のチューニング部ポートと対応するチューニング部との間にさらに配置され、前記基端部のマニホールドは、第1及び第2のチューニング部ポートと前記対応するチューニング部との間に配置される、請求項
12に記載の音楽用管楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器及び該楽器の部品及び該楽器の製造に関するものである。より具体的には、本発明は、バルブのある管楽器及び該管楽器の部品及び該管楽器の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の管楽器が存在し、このような管楽器は、典型的には演奏者が、典型的にはマウスピースによって、振動する空気を空気流入開口部に強制的に入れることを必要とする。
【0003】
楽器のチューブの長さが楽器の音色又はピッチを決定する。ラッパのような真鍮タイプの楽器の特定のチューブ長さにより、幾つかの異なるハーモニーについて演奏者が楽器のベルからトーンを変化させることが可能になり、そのような音符を使用する必要がある音楽又は楽曲のピースを再生することができる。
【0004】
しかし、幾つかのオクターブに亘って全ての半音階を提供できるようにするには、楽器のチューブ全体の長さを、全ての半音階を演奏することができるように変更する必要がある。
【0005】
スライドトロンボーンの場合、楽器の長さは連続的に変化し、音階と音符を再生するために必要な間隔を提供するためには、演奏者が通常7つの位置であるトロンボンボンのスライドの関連位置を学習し、異なるハーモニーを有するように変化する振動を利用することで、半音階についての間隔の要件を満たすことができる。
【0006】
対照的に、トランペット、コルネット、フリューゲルホルン、フレンチホルン、テナーホーン、チューバ、ユーフォニアムなどの他の楽器は、マウスピースと楽器のベルの間のチューブの長さを変更するように、バルブを介して利用できるチューブの長さが有限であり、通常、ハーモニーとともにトーン間隔を提供するために、いくつかの長さの金属チューブを利用して、それにより、楽器のマウスピースの端部からベルパイプ端部までの楽器のチューブの長さが、異なるチューブの異なる組合せを通して、演奏者によって変更され、適切なピッチ又はトーンレンジが提供される。
【0007】
楽器のチューブの長さを変更するために、楽器は、チューブの長さを増加させるチューニングアセンブリを含む。チューニングアセンブリは、バルブアセンブリ及びチューニング部を備える。
【0008】
バルブアセンブリにおいては、演奏者が操作可能なバルブ装置があり、それにより演奏者が操作可能な1以上のバルブの動きは、楽器のチューブの長さを増加させ、他のものを封じ込めつつ、「チューニングセクション」と呼ばれる1つ以上の更なるチューブを通って空気が流れ、望ましい楽譜用の楽器の必要なチューブ長さを提供する。そのようなバルブは、バルブが含められるか、収容されているバルブケースに対して移動可能である可動バルブ部材で構成される。
【0009】
トランペット、コルネット、チューバ、フリューゲルホルン、ユーフォニウムなどのほとんどのバルブタイプの金管楽器は、演奏者の指の動きからの線形力に応答して円筒形のハウジング内で線形方向に移動するバルブピストンとして線形操作可能なバルブを使用する。その後、バルブピストンは戻しばねを介して初期状態に戻される。
【0010】
いくつかの他の金管楽器では、フレンチホルンに利用されるような回転バルブが使用されてもよく、鍵部材によって操作可能であり、回転バルブピストンを円筒形のハウジング内の回転方向に同様に移動させて、演奏中に楽器の管状本体内の空気通路の長さを変化させ、それによって楽器のピッチを変化させる。
【0011】
半音階を提供できるようにするために、大部分のバルブタイプの楽器には、単一ピッチのキー内に、通常、第1のバルブ、第2のバルブ、第3のバルブの3つのバルブが設けられており、これらは通常、演奏者の人差し指、中指、及び薬指によって直接的に操作可能である。
幾つかの楽器では、半径方向にオフセットされた機構を備えたバルブピストンに接続された機構があり、より一般的にはフレンチホルンなどの回転バルブ付き楽器を備えている。
【0012】
バルブピストンが第1の位置から第2の位置に移動すると、楽器のチューブの全体長さをチューニング部であるチューブを所定量だけ効果的に延ばし、楽器の音色又は周波数を変える。
【0013】
第3のバルブケースは、しばしば「ナックル」と呼ばれる接続パイプを介して第2のバルブケースと流体が流れるように繋がっており、次いで、第2のバルブケースは、バルブケース間に延びるさらなる接続パイプ又はナックルを介して第1のバルブケースと流体が流れるように繋がっている。
【0014】
バルブアセンブリの各バルブは、独自のチューニング部を設けており、第1のバルブが押圧されると、第1のバルブのチューニング部の長さに従って楽器のチューブ長さが増加し、第2のバルブが押圧されると、第2のバルブのチューニング部の長さだけ楽器のチューブ長さが増加し、第3のバルブが演奏者によって押圧されると、第3のバルブのチューニング部の長さだけ楽器のチューブ長さが増加する。
【0015】
そのようにして、半音階の間隔を提供するようにチューブの適切な長さを得るべく、バルブの組み合わせは、そのような間隔を達成するために押圧される。公知の如く、このような3つのバルブ付き楽器の中には、7つの主要な位置又は組み合わせがあり、これらの組み合わせは、各位置のハーモニーと組み合わせることにより、演奏者が半音階の複数オクターブを提供することを可能にする。
【0016】
線形バルブ及び回転バルブは、製造に比較的高い精度を必要とする傾向があり、これにはバルブピストン又はバルトロータの曲面加工が含まれる。これは円筒形のバルブ本体の曲面内に位置し、該曲面を通って延びる通路の開口部が、バルブが回転したときにバルブケースの対応する開口部と正確に整列できることを確実にして、チューブの長さを適切に増加させるためである。また、このような線形バルブ及び回転バルブの精密加工は、バルブハウジングの湾曲した内面とバルブ要素の湾曲した外面とによって形成される接触部の間から空気が漏れ出ることを防止するために必要とされ、これは音質の損失を引き起こす。
【0017】
楽器の組立中、バルブケースは、しばしば「交差留め具」又は「ステー」と呼ばれるスペーサ要素とナックルを介して互いに対して固着され、該スペーサ要素はバルブケースの壁の外面に半田付け又はろう付けされ、ナックルはバルブチューニング部と係合する。リードパイプ及びベルパイプのナックルは、また、バルブケースにろう付け又は半田付けされ、また、チューニング部とリードパイプ及びベルパイプとの間に延在する交差留め具のステーによって互いに対して固着され、固着された構造を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
楽器及び該楽器の部品及び該楽器の製造を提供することが本発明の目的である。より具体的には、本発明は、先行技術に関連する少なくともいくつかの欠陥を克服し、又は少なくとも部分的には改善する価値のあるバルブ付きの管楽器、及び該管楽器の部品及び該管楽器の製造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様において、本発明は、音楽用管楽器のバルブアセンブリ用のバルブブロックであって、前記バルブブロックは、複数の平行で直線的に離れたバルブ孔を有する単一構造であって、バルブ孔は少なくとも部分的に単一構造を通って延び、その中に対応する複数のバルブピストンを受け入れる単一構造と、バルブブロックの外側からバルブブロックを通って延び、バルブブロックの外側と第1のバルブ孔との間の流体の流路を提供する空気流入ポートと、バルブブロックの外側からバルブブロックを通って延び、バルブブロックの外側とさらなるバルブ孔との間の流体の流路を提供する空気流出ポートと、隣接するバルブ孔間の流体の流路を提供するための複数の横方向の接続通路と、複数対のチューニング部ポートであって、夫々がバルブブロックの外部からバルブブロックを通って延び、バルブブロックの外部とバルブ孔との間の流体の流路を提供する複数対のチューニング部ポートとを備える。
【0020】
バルブ孔は、好ましくは、前記バルブブロックを完全に貫通して延びるのが好ましい。
バルブブロックは、その中に3つの対応するバルブピストンを受け入れるための3つのバルブ孔を含むことが好ましい。
【0021】
空気流入ポートは、バルブブロックの外側と第3のバルブ孔との間の流体の流路を提供し、空気流出ポートは、バルブブロックの外側と第1のバルブ孔との間の流体の流路を提供する。
【0022】
空気流入ポートは、音楽用管楽器のリードパイプから空気の振動柱を受け、空気流出ポートは、音楽用管楽器のベルパイプと流体の流路を提供するためのものであり、チューニング部ポートは、対応するチューニング部を通る流体の流路及び空気の通路を提供するためのものである。
【0023】
バルブブロックの一体構造は、金属又は金属合金から形成されてもよい。好ましくは、バルブブロックの一体構造は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。
別の方法として、バルブブロックが高分子材料から形成されることもある。空気流入ポート及び空気流出ポートの中心軸は、同軸及び同一線上であってもよい。
【0024】
空気流入ポートと空気流出ポートの中心軸は、上記複数のバルブ孔の中央軸を通して延びる長手方向の中間面に沿って、同軸であり、同一線上であってもよい。
バルブブロックは、さらに、一対のチューニング部ポートのうちの少なくとも1つからの流体の流路及び空気の通路を提供するためのマニホールドと係合する係合面を備えてもよい。
【0025】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に基づくバルブブロックから成る音楽用管楽器を提供し、各々が当該バルブブロックのバルブ孔に配置される複数のバルブピストン、当該バルブブロックの空気流入ポートと流体の流路を提供するリードパイプ、空気出口ポートと流体の流路を提供するベルパイプ、及び各チューニング部ポートの各々と流体の流路を提供するチューニング部、を提供する。
【0026】
音楽用管楽器は、バルブブロックとリードパイプとの間に配置された先端部のマニホールドと、バルブブロック間に配置された基端部のマニホールドとを備えることができる。
【0027】
先端部のマニホールドは、さらに、第3のチューニング部ポートと対応するチューニング部との間にさらに配置され、前記基端部のマニホールドは、第1のチューニング部ポート及び第2のチューニング部ポートと前記対応するチューニング部との間に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
上記発明をより正確に理解することができるように、添付した図面に示される具体的な実施形態を参照して、上述した発明のより具体的な説明を簡潔に説明する。ここに示されている図面は、寸法通りに記載されず、また、図面又は以下の記載の寸法のいかなる参照も開示された実施形態に固有のものである。
【
図1】先行技術のバルブ付き楽器のバルブアセンブリを含むチューニングアセンブリの概略図である。
【
図2a】本発明によるバルブブロックの第1の斜視図を示す。
【
図2b】
図2aのバルブブロックの第2の斜視図を示す。
【
図3a】本発明によるバルブブロックと併せて使用するためのバルブピストンの第1の実施形態の正面図を示す。
【
図4a】本発明によるバルブブロックと併せて使用するためのバルブピストンの第2の実施形態の正面図を示す。
【
図4b】
図4aのバルブピストンの左側面図を示す。
【
図4h】第1の回転角における、
図4a―
図4gによるバルブピストンの上面図を示す。
【
図4i】第2の回転角における、
図4a-
図4gに係るバルブピストンの上面図を示す。
【
図5a】本発明に係るバルブブロックを組み入れた楽器の第1の実施形態の第1の斜視図を示している。
【
図5b】
図5aの実施形態の第2の斜視図を示している。
【
図6a】
図5a及び
図5bの楽器の実施形態の第1の斜視図を示している。
【
図6b】
図6aの楽器の実施形態の第2の斜視図を示している。
【
図6c】
図6a及び
図6bの実施形態の斜視図を示し、第3のチューニングスライドが延びている。
【
図6d】バルブアセンブリを分解して配置にした、
図6a‐
図6cの楽器の斜視図を示す。
【
図8a】本発明に係るバルブブロックを取込んだ、楽器の更なる実施形態の第1の斜視図を示している。
【
図8b】
図8aの更なる実施形態の第2の斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者は、楽器、その部品及びその製造の欠点を確認し、かつ先行技術の問題点を明らかにした上で、先行技術の問題点を克服したバルブ付き管楽器及びその部品及び製造を提供した。
【0030】
発明の背景の説明
典型的な3つのバルブピストンを備えた金管楽器において、楽器はチューニングアセンブリ100を備え、該チューニングアセンブリは、チューニング部144、154及び164と連通するバルブアセンブリ105を含む。
【0031】
このバルブアセンブリ105は、3つの平行な円筒状のバルブケース110a、110b及び110cを備え、該バルブケースは「ステイ」又は「コネクタ」とも呼ばれる交差留め具120を介して互いに固定され、交差留め具は定位置に半田付け又はろう付けされる。典型的には、2つの交差留め具120は、各バルブケース110a、110b、110cを隣接するバルブケース110a、110b、110cに固定するために使用される。
【0032】
第1のバルブケース110a及び第2のバルブケース110bは、バルブケース110a、110bの壁を通って延びるナックル穴又はポートに半田付け又はろう付けされた接続チューブである第1の接続ナックル130aを介して互いに流体が連通するように繋がっている。
【0033】
同様に、第2のバルブケース110b及び第3のバルブケース110cは、第2のナックル130bによって互いに流体が連通するように繋がっており、これは当業者によって知られるように、楽器の他方の側面からより容易に見ることができ、再びバルブケース110b、110cの壁を通って延びるナックル穴又はポートで半田付け又はろう付けされる。
【0034】
第3のバルブケース110cは、この表現では示されていない楽器のリードパイプを受け入れるための空気流入ナックル140と、第3のバルブチューニング部144を受け入れるための2つの第3のバルブチューニング部ナックル142a、142bとを有する。
【0035】
第2のバルブケース110bは、第2のバルブチューニング部154を受け入れるための2つのチューニング部ナックル152a、152bを有する。
第1のバルブケース110aは、ベルパイプを受け入れるための空気流入ナックル160と、第1のバルブチューニング部を受け入れるための2つの第1のバルブチューニング部ナックル162a、162bとを有する。
【0036】
各バルブケース内には、線形動作可能なバルブピストンがあり、これは上方に付勢されている。バルブピストンが上位置にあるとき、バルブは、夫々のチューニング部を通る空気流を閉塞し、リードパイプナックルからベルパイプナックルへの流体通路があり、バルブピストンによって提供される通路と接続ナックルを通る。
バルブが押され、より低い位置に移動されると、流体通路も、夫々のチューニング部の長手方向を通過する。
【0037】
上記のように、このようなバルブの使用は、楽器のチューブ全体の長さを変化させることができ、例えば、7つの組合せ又はそれ以上のチューブ長さを提供することができ、これと楽器のチューブの各長さのハーモニーと組み合わせることにより、演奏者は、楽器がいくつかのオクターブに亘って構成されるキー又はピッチ内の半音階を提供することができる。
【0038】
一部のバルブ型楽器では、楽器内にチューブの追加の全長を加える、さらなるバルブが設けられて、楽器のキーを変更する。
注記するように、上記はバルブケースにおける線形バルブピストンを参照して説明されてきたが、バルブケースにおける回転バルブピストンは同じように動作し、そのようなケースは線形ピストンタイプのバルブに関連するものと同じような特徴を有し、例えばフランチホルン又は回転バルブトランペットで使用されるような回転バルブシステムに適用されるものと同じように記述される。
【0039】
本発明者は、修理、保守及び製造からの問題点を含む、従来技術の金管楽器用のバルブシステムの問題点を特定した。
【0040】
本発明者によって識別された先行技術の製造問題
金管楽器のバルブアセンブリ、並びに楽器クライアントの残りの部分の組立工程は、金管楽器を形成する種々の構成要素、及び楽器のバルブ部分を含むチューニング部を形成する構成要素が、正しく且つ頑丈に組み立てられることを確実にするために、高精度、並びに熟練した労力を必要とする。
【0041】
バルブ部分を組み立てる際には、3つのバルブケースすべてを互いに正確に整列させ、次いで、上述のような交差留め具を介して互いに対して固定する必要がある。
また、隣接するバルブケース間を相互に接続する接続ナックル及び接続チューブを正確に形成する必要がある。
【0042】
バルブケースは、組立のために正しい位置に配置され、適切に整列され、回転されることが要求され、接続ナックルは、バルブケースの壁を通って延びるナックル穴又はポートに配置されることが要求される。
【0043】
次いで、交差留め具及び接続ナックルは、全てのバルブケースが平行に正しく整列され、かつ離間されている状態で、接続ナックルが隣接するバルブケース間の正しい空気流通路長さを提供するように、適所に半田付け又はろう付けされなければならない。
【0044】
次に、バルブケース上の接続チューブ又はナックル、及び交差留め具を所定の位置に硬質の半田付け又はろう付けし、夫々が適切に半田付けされていることを確認することが重要である。
ろう付け工程、すなわち接続ナックルへの硬質半田の塗布の間、バルブケースは約1100度に加熱される。冷却されると、バルブケースは、極端な熱により生じる張力の一部を維持することがある。
【0045】
一部の楽器製造業者では、バルブを取り付ける前にケース内部のチューブの縁部の周囲にて少量の材料を取り除いているため、バルブピストンの固着の可能性を減らすのに役立つ。
【0046】
しかしながら、多くの楽器は、バルブの線形穴の縁部とバルブケースのナックルポートとの間の隙間の欠如に起因するバルブの固着に関する問題を有しており、この問題は、その後、バルブケースのポートを半径スクレーパで掻き取り、次いで、バルブを微細ラッピング合成物でラッピングすることによって軽減され得る。
【0047】
理解されるように、楽器のバルブアセンブリの製造には、高い精度が必要であるとともに、製造技術が必要であり、場合によっては、金管楽器で必要とされる範囲内でバルブケース内のバルブピストンの自由運動を歪めたり阻害したりする可能性があり、また、適切にチューニングされた正確な楽器を有するためには、空気流れの長さが正しいように正確な間隔が必要である。
【0048】
本発明者によって識別された先行技術の影響と被害の問題
注記するように、金管楽器は、楽器に損傷を与える可能性のある他の無数の物理的衝撃と同様に、他の楽器や物体との衝突、スタンドや椅子からの落下、硬い表面への転倒、落下、敷設又は座り、清掃、分解、再組み立ての際に損傷を受ける可能性がある。
【0049】
さらに、金管楽器を取り扱う際の通常の摩耗及び破損は、金管楽器のバルブ部分に損傷及び疲労をもたらすことも見出されている。
【0050】
本発明者が指摘したように、バルブケース間の交差留め具は、摩耗や破損から、また衝撃からも、緩くなり、互いにバルブケースに堅く固定されなくなることがある。一方のバルブケースの他方のバルブケースに対する少量の運動は、この問題をさらに悪化させる可能性があり、場合によっては、交差留め具とバルブケースとの間の共振及び振動を引き起こす可能性があり、これは、演奏者にとって摂動となり得る。さらに、このような応力の増大は、他の交差留め具に大きな応力を与え、更なる故障を引き起こし、楽器に損傷を与え得る。
【0051】
このような場合、修理のために楽器を修理店又は製造業者に送り、交差留め具を再度半田付けするとともに傷を除去する必要がある。このような再半田及び加熱は、金管楽器のラッカー被覆又は銀被覆に損害を与え、及び不注意な修理をもたらし、並びに金管楽器を酸化から保護するラッカーを撤去することにより、交差留め具及びバルブケースのインターフェースにおける酸化タイプの損害の機会を提供し、従って更なる損害をもたらす。
【0052】
さらに、バルブケースが別のバルブケースに対して動く可能性がある場合、これはまた、接続ナックルの接合部に応力を加え、これが楽器に更なる損傷を与える可能性がある。
【0053】
特にトランペット及びコルネットの別の一般的な問題は、トランペット及びコルネット上の第2のバルブスライド又はチューニング部がナックル位置にてバルブケース内に押し込まれ、これがピストンを押さえたり、移動中にピストンを詰まらせたりすることである。
【0054】
この問題を解決する方法はいくつかあり、1つは第2のバルブスライドをつかみ、外側に曲げてケースでの応力を緩和することである。修理業者によっては、第1のバルブスライドを使用して手順を活用できる、これにより、外側のバルブスライドチューブの半田接合が破損する可能性が高くなり、その結果として修理に時間と費用がかかる可能性がある。
【0055】
また、曲がったベルパイプによって第1のバルブケースナックルに加えられる圧力は、ピストンをつかみ、又はバルブピストンの移動を困難にするのに十分であり得る。
バルブケースが損傷する可能性のある別の方法は、バルブケースの下端のねじ部にあり、このねじ部は、バルブピストンがそのストロークの底部で詰まる原因となる。これは、下側のバルブケースの端部キャップを取り外したとき、及び清掃中に発生することが多く、ねじ部の損傷の原因にもなる。
【0056】
バルブピストンの動きが妨害されるバルブピストン及びバルブケースの損傷には、ナックルの損傷及び交差留め具の損傷が含まれ、それによって、楽器本体にかかる応力が、ナックル又は交差留め具をケース壁内に突出させ、その結果、楽器の修理にコストと時間がかかることがある。このような損傷は、適切に矯正される必要のあるバルブケースの損傷を引き起こすだけでなく、バルブピストンの損傷を引き起こす可能性もあり、その結果、更なる修理作業及び矯正が行われ、また、バルブピストンに打痕除去が行われる必要がある。
【0057】
理解されるように、金管楽器が破損した場合、高額な修理が必要になるだけでなく、場合によっては楽器が元の状態に戻らないこともある。
【0058】
楽器のバルブ部へのこのような損傷は、バルブの緩みや粘着性、不完全な空気シール、ギャップからの空気の損失を引き起こし、楽器の完全性と演奏時の性能を損なう可能性がある。場合によっては、技術者又は修理業者が、楽器を元の状態に戻すのは非常に困難であり、コストもかかる。
【0059】
さらに、バルブ金管楽器の音楽演奏者により、特に学生レベル及び入門レベルの楽器に対して、非常に一般的に報告されているフラストレーションは、楽器の演奏中のバルブの不安定さ、及びバルブの固着である。これは、楽器の物理的な性能が学習と演奏を続けることへの進歩と興味を妨げ、落胆させる可能性がある場合、演奏者、特に若い演奏者にとって非常に不満を抱かせる可能性がある。
【0060】
さらに、楽器の修理費用は、楽器のバルブ部に損傷が生じ、特に金管楽器の修理及び再構成に熟練した者による専門的な技術的修理を必要とする場合には、かなり高くなり得る。入門レベルや中間レベルの楽器の場合、そのような修理はかなりコストがかかる可能性がある。場合によっては、修理費用が楽器の初期購入費用の実際の費用を上回ることもあり、修理費用を支払う必要があるとともに、修理作業店にいる間に、学生が楽器を使用できるようになるのを遅らせるときには、特に若い世代の演奏者の親やそれ以上の世代の演奏者にとって、不満を抱かせ、トラブルとなることがある。
【0061】
本発明
本発明者は、少なくともバルブを備えた金管楽器の製造、保守、修理において認識された上記の問題点を考慮して、認識された問題点を解決するものを提供し、この問題点を解決するために、管楽器用のバルブアセンブリと、製造維持及び修理の立場から、このような問題点と従来技術の欠点を克服した金管楽器を提供した。
【0062】
ここで用いられている「金管楽器」又は「音楽用金管楽器」という用語は、当該技術分野内における従来の意味で使用されており、これは、一端部が演奏者の唇のためにカップ状のマウスピースを受け取り、他端部が楽器から音が排出されるベルを有する音楽管楽器を意味することに留意しなければならず、理解されなければならない。
【0063】
「金管」という用語は、当業者によって知られており、理解されるであろうが、このような楽器は、通常、真鍮、銅及び亜鉛の合金から作られ、かつ、そのような楽器は金管楽器として知られており、且つそのような楽器が演奏されるオーケストラ又はバンドの部門は、しばしば「金管楽器部」と呼ばれる。
【0064】
しかしながら、公知のように、いわゆる「金管楽器」又は「音楽用金管楽器」は、しばしば真鍮から形成されるが、他の金属及び金属合金からも作ることができる。
さらに、このような楽器は、高分子材料、複合材料、混合高分子ブレンド、繊維強化高分子などを含む他の材料から形成することもできる。
【0065】
従って、本発明は、かかる金管楽器に向けられ、この用語は、アルミニウム又はアルミニウム合金のような他の金属又は金属合金、ならびに繊維強化高分子材料を含む高分子材料及び複合材料、ならびにいかなる真鍮部品又はその他の金属部品も含まない楽器から構成される、他の金属合金から成る楽器及びその一部を含む。
【0066】
従って、本発明で用いられる「楽器」という用語は、任意の金属又は非金属材料ならびにそれらの組み合わせから形成されうる「金管楽器」又は「音楽用金管楽器」として伝統的に知られている楽器と定義され、可動バルブピストンによって楽器の長さを変化させるバルブアセンブリを含み、該可動バルブピストンは対応するチューニング部によって楽器の長さを延ばすことができる。
【0067】
このように、本発明による「音楽用管楽器」は、多くの場合、「金管楽器」又は「音楽用金管楽器」と呼ばれ、バルブ部及びチューニング部から構成されるチューニングアセンブリを有する。
バルブ部は、使用者が操作可能かつ移動可能なピストンを可能にし、このピストンは、移動すると、関連するバルブピストンによって係合されるチューニング部の長さだけチューブの長さを増加させる。
【0068】
したがって、本発明の「管楽器」及びバルブアセンブリは、バルブ付きの金管楽器に関するが、理解されるように、楽器はそのために真鍮材料又は他の特定の材料から必ず形成されたものに限定されない。
本発明及び明細書内で、「チューニングアセンブリ」という用語は、楽器のチューブの全長を増加させる複数の「チューニング部」と組み合わせたバルブ付き管楽器の「バルブアセンブリ」を意味すると理解される。
【0069】
更に、本発明の範囲内では、「バルブアセンブリ」という用語は、バルブケース又はハウジングのようなバルブピストンハウジングの組み合わせを意味すると理解され、「バルブピストン」はバルブピストンハウジング内に配置される。
更に、用語「バルブピストン」は、トランペットのような楽器に典型的に実装されるような両方向に線形動作可能なバルブのバルブ本体を含むと共に、フランチホルンのような楽器に典型的に実装されるような回転動作可能なバルブも含むと理解される。
【0070】
認識されたこのような欠点及び欠点を克服するために、また、
図2a乃至
図2gを参照するために、本発明の例示的な実施形態が示されており、ここに、音楽管楽器のバルブアセンブリのためのバルブブロック200が設けられている。
バルブブロック200は、図面には示されていない使用者が操作可能なバルブピストンを収容し、チューニング部と係合可能であってバルブアセンブリを形成し、バルブブロックは、さらに、リードパイプ及びベルパイプと係合可能にして、管楽器を形成する。
【0071】
バルブブロック200は、バルブブロックを通って延びる3つのバルブ孔210a、210b、210cを含み、各バルブ孔内にバルブピストンを受け入れる。本実施形態では、バルブ孔210a、210b、210cは、バルブブロック200を完全に貫通して延びている。しかしながら、代替の実施形態では、バルブ孔は、バルブブロックを上から下へ部分的に通るだけであって、バルブ孔の下部が封止され、このような実施形態は、本発明の範囲にも含まれるものと理解される、何故なら一部の実施形態では、孔は、バルブブロックを全て通して延びる必要がないからである。
【0072】
バルブブロック200は、好ましくは、金属又はアルミニウム又はアルミニウム合金のような金属合金材料から形成される。
本発明の実施形態では、バルブブロックは、押出し成形部分を介して形成され、外面は必要な所定の幾何形状を有し、バルブピストンを受け入れるために各々を通って延びる複数の通路を有する。
【0073】
バルブブロック200の外面は、本実施形態に示されるように、トランペット型又はコーント型の楽器で使用されるが、理解されるように、他の管楽器で使用されても、このような楽器に典型的なように保持の容易さに適した連続性を有する。
他の又は代替の実施形態では、必要に応じて、バルブブロックの外面の所定幾何形状が異なることがある。
【0074】
さらに、バルブブロック200の本実施形態と同様に、バルブブロック200の波状断面形状は、材料の低減を可能にする一方で、バルブ孔と端部間に十分かつ適切な強度を提供し、本発明の目的及び本発明の利点を達成することを可能にし、これは、、以下にさらに詳細に論じるように、交差留め具及びナックルの衝撃からバルブ孔への損傷を防ぎ、衝撃からバルブ孔の端部及びケースへの損傷を防ぐ。
【0075】
このような押出工程における材料使用量の低減の利点は、更にバルブブロック200の重量低減の利点を含み、このように取り扱い及び使用の容易さのために十分に低減した重量を有する楽器を提供する。これは、演奏者、特に公知の如く、練習中や演奏中など、長期間そのような楽器を保持することによる疲労や倦怠感に苦しむ可能性のある若い演奏者による疲労を防止又は軽減するのに役立つ。
【0076】
さらに、バルブブロックがアルミニウム又はアルミニウム合金から押出されると、バルブブロックの外面が仕上げ状態にあり、さらなる表面仕上げを必要としない可能性があり、経済的及び製造上の利点をもたらす。
そのような実施形態において、バルブブロック200が押し出しプロセスによって形成されることにより、通路は、その後にバルブピストンを受け入れるための適切なサイズの仕上げられたバルブ孔を提供するために、ボーリング工程とそれに続くホーニングなど、バルブピストンを受け入れる前にいくつかのさらなる処理を必要とする場合がある。
【0077】
更に、バルブ孔としてその後の仕上げのために、このような通路を押出し工程に含めることにより、機械加工工程によって固体ビレット材料にバルブ孔を形成するよりも、バルブピストンを受け入れるための必要なバルブ孔を形成するために、使用される材料の低減の製造上及びコスト上の利点並びに通路のボーリング及びホーニングのみの製造上及びコスト上の利点を提供する。
【0078】
また、バルブブロック200は一体構造として形成されていることが望ましく、アルミニウム等の金属又は合金から形成される場合には、上記のような押出法により形成されるバルブブロック200の様々な側面をさらに後述するが、3軸CNCミリング機によるCNC(コンピュータ数値制御)切削、精細加工、バルブ孔、ポートの形成、通路接続、開口、表面係合、ネジ孔等の加工工程に従い、これらの特長について述べる。
【0079】
理解されるように、バルブブロック200は、押出工程から必ずしも形成される必要はなく、実際には、他の又は代替の実施形態では、機械加工の方法により固形ビレット材料から、形成されるか、又は、例えば成形工程の方法により高分子材料から形成されることがある。
【0080】
第1のバルブピストンを受け入れるための、第1のバルブ孔210aは、第1のバルブチューニング部と接続するために、第1のバルブ孔210aと流体が流れるように繋がるチューニング部ポート211a及び211bを含み、その詳細は、好ましい実施形態では、以下の図面を参照して後述される。
【0081】
第2のバルブピストンを受け入れるための、第2のバルブ孔210bは、第2のバルブチューニング部と接続するために、第2のバルブ孔210bと流体が流れるように繋がるチューニング部ポート212a及び212bを含み、その詳細は、好ましい実施形態では、以下の図面を参照して後述される。
【0082】
第3のバルブピストンを受け入れるための、第3のバルブ孔210cは、第3のバルブチューニング部と接続するために、第3のバルブ孔210cと流体が流れるように繋がるチューニング部ポート213a及び211bを含み、その詳細は、好ましい実施形態では、以下の図面を参照して後述される。
【0083】
また、第3のバルブ孔210cに関連して、第3のバルブ孔210cと流体が流れるように繋がる空気流入ポート220も設けられている。空気流入ポート220は、バルブブロック200が楽器内に実装される場合に、リードパイプと流体が流れるように繋がるためのものである。
【0084】
再び第1のバルブ孔210aに関連して、第1のバルブ孔210aと流体が流れるように繋がる空気流出ポート230が存在し、該空気流出ポートはバルブブロック200が楽器内に実装されるときに、楽器のベルパイプと流体が流れるように繋がる出口経路を提供する。
なお、以上のように、本実施形態では、空気流入ポート220は、空気流出ポート230と同軸且つ同一線上であり、空気流出ポート230と整列され、両ポートはバルブブロック200の幅に沿って中間に位置する。
【0085】
さらに、本実施形態では、隣接するバルブ孔間に流体を連通させるための横方向の接続通路がある。
これは、バルブアセンブリの長手方向中央面からオフセットされている従来技術の空気流入ポート及び空気流出ポートと対照的であり、本発明は、空気流入ポート220及び空気流出ポート230をバルブブロック200の中央面上に同軸及び同一直線上に有することにより、機械加工及び製造のさらなる容易化及びそれに伴う利点を提供する。
【0086】
理解されるように、隣接するバルブ孔間に流体を連通させるためのの横方向の接続通路が設けられ、第1の接続通路が延びて、第1のバルブ孔と第2のバルブ孔との間で流体を連通させ、第2の接続通路が延び、第2のバルブ孔と第3のバルブ孔との間で流体を連通させる。
【0087】
また、注目され理解されるように、第1のバルブ孔210aと第2のバルブ孔210bとの間で流体を連通させるための第1の横方向の接続通路、及び第2のバルブ孔210bと第3のバルブ孔210cとの間で流体を連通させるための第2の横方向接続通路も、空気流入ポート220及び空気流出ポート230と同軸であり、本実施形態では、すべて同じ直径を有する。
【0088】
図2c及び
図2fに見られるように、第3のバルブ孔210c内に延びる空気流入ポート220によって形成される直線状の通路は、バルブブロック200の外部から、バルブブロック200の全体を通って、第2の横方向の接続通路を経由してバルブブロック200の本体を通って、第3のバルブ孔210cと第2のバルブ孔210bとの間の通路及び流体の流路を形成して延び、第1の横方向の接続通路を経由して第2のバルブ孔210bから延びて、更に第1のバルブ孔210aとの間で流体を連通し、直線状の通路は、バルブブロック200の外体と空気流出ポート230を通って延びる。
【0089】
従って、本発明の実施形態では空気流入ポート220、第1の接続通路、第2の接続通路及び空気流出ポート230は同軸かつ同一線上であり、同径を有する。
【0090】
理解されるように、空気流入ポート220及び空気流出ポート230は、必ずしも同一線上且つ同軸である必要はなく、代替の実施形態において、バルブ孔の長軸方向で互いにオフセットする。しかし、後述するように、本実施形態では、空気流入ポート及び空気流出ポートと横方向の接続通路とを備えることにより、製造の容易さと共に、3つの同じバルブピストンを使用することができる。
【0091】
また、理解されるように、横方向の接続通路は必ずしも同一線上且つ同軸である必要はない。例えば、空気流入ポート及び空気流出ポートが垂直にオフセットされる場合、横方向の接続通路はまた、第1の横方向の接続通路が空気流出ポートと同軸及び同一線上であり、第2の横方向の接続通路が空気流入ポートと同軸及び同一線上であるようにオフセットされてもよい。
【0092】
また、理解されるように、別の実施形態では、空気流入ポート及び空気流出ポートがオフセットされることにより、空気流入ポートと第1の横方向の接続通路と第2の横方向の接続通路は同軸且つ同一線上であり、又は、代替的に他の実施形態では、空気流出ポートと第1の横方向の接続通路と第2の横方向の接続通路は同軸且つ同一線上である。
【0093】
さらに、理解されるように、他の又は代替の実施形態では、空気流入ポート及び空気流出ポートは、必ずしもバルブブロックの中間面に沿って整列される必要はなく、従来のトランペットと同様に、バルブブロックの側部に向かって配置されてもよい。
【0094】
本発明のバルブブロックは、金属/高分子複合材料との使用について説明されているが、本発明のバルブブロックは、他の実施形態においても、従来の金管楽器と共に使用することができることは理解されなければならない。
【0095】
本発明では、本実施形態では、さらに、以下にさらに説明するように、バルブブロック200にマニホールドを固定するための複数のねじ穴214を含み、それによって、先端部のマニホールドが、先端係合面205aで、バルブブロック200に固着されて、(i)リードパイプと第3のバルブ孔210cとの間、及び(ii)第3のバルブチューニング部とバルブブロック200の第3のバルブ孔201cとの間で流体を連通させる。
【0096】
先端部のマニホールドは、(i)ベルパイプと第1のバルブ孔210aとの間、(ii)第1のバルブチューニング部と第1のバルブ孔210aとの間、及び(iii)第2のバルブチューニング部と第2のバルブ孔210bとの間で流体を連通させ、これらの実施形態は以下の図面で記載され及び説明される。
【0097】
図示されているように、先端係合面205aは先端部のマニホールドとの係合用に設けられており、基端係合面205bは、後述の実施形態で示されるように、基端部のマニホールドとの係合用に設けられている。
先端係合面205a及び基端係合面205bは、CNC機械加工によって形成されてもよい。
【0098】
図3a乃至
図3eを参照すると、
図2a乃至
図2gのバルブブロック200と関連して利用され得るバルブピストン300の一例が示されている。このようなバルブはバルブを通って延びる開口部310を含み、バルブ孔間の空気の通路、ならびに第1のバルブ、第2のバルブ及び第3のバルブに関連するチューニング部への空気の通路を提供する。
【0099】
図2a乃至
図2gのバルブブロック200を利用することによって、本発明者は、同じバルブを各バルブ孔に利用することができ、例えば、バルブブロック200の特定のバルブ孔のための特定の又は特定のバルブピストンは存在しないことを見出した。
従って、及び有利なことには、このようなバルブ配置は、特に若い演奏者にとって便利であり、バルブが間違ったバルブ孔に入れられ、それらが存在する楽器が損傷を受ける可能性を緩和する。
【0100】
このようなバルブピストン300は、多くのバルブタイプの楽器と同様に、内部ばねによって、ピストンの下方の外部ばねによって、又は代わりにピストンの上方の外部ばねによって、飛び出させることができる。このように、適切な復元力がばねを開いている位置として知られている通常の待機位置に戻し、バルブばねに打ち勝って閉じた位置にバルブを移動させるための力が制限的でなく、楽器の遊びやすさを許容するとの条件で、いかなる配置も本発明に適用可能である。
【0101】
次に、
図4a乃至
図4jを参照すると、
図2a乃至
図2gのバルブブロック200に従って利用され得る、バルブピストン400の代替の実施形態が示される。
バルブピストン400は、バルブピストン400の本体を通って延びる開口410と、開放型の通路であり、バルブピストン400の本体を部分的に通って延び、バルブピストン側で開口した通路420及び430とを含む。
【0102】
ここでも、
図2a乃至
図2gのバルブブロック200を利用することによって、本発明者は、同じバルブを各バルブ孔に利用することができ、例えば、バルブブロック200の特定のバルブ孔のための特別な又は特定のバルブピストンは存在しないことを見出した。
【0103】
ここでも、このようなバルブ配置は、特に若い演奏者にとって利便性を提供し、バルブが間違ったバルブ孔に入れられ、バルブが存在する楽器に損害を与える可能性を緩和する。
【0104】
このようなバルブピストン300は、多くのバルブタイプの楽器と同様に、内部ばねによって、ピストンの下方の外部ばねによって、又は代わりにピストンの上方の外部ばねによって、飛び出させることができる。このように、適切な復元力がばねを開いている位置として知られている通常の待機位置に戻し、バルブばねに打ち勝って閉じた位置にバルブを移動させるための力が制限的でなく、楽器の遊びやすさを許容するとの条件で、いかなる配置も本発明に適用可能である。
【0105】
次に、
図5a及び
図5bを参照すると、本発明によるバルブブロックアセンブリ510を組み込んだ楽器500の第1の実施形態が示されている。
本実施形態では、楽器は、本発明のバルブブロックアセンブリ510を含むトランペット500である。楽器は、さらに、リードパイプ520と、第1のバルブチューニング部540と、ベル550と、第2のバルブチューニング部570と、第3のバルブチューニング部580とを含む。
【0106】
図6a乃至
図6dを参照し、本発明に係る上記のようなバルブブロックを組み込んだ本発明に係る楽器の実施形態が示されている。
本実施形態では、楽器をトランペットとして記載し、楽器は、高分子材料と金属材料との組合せであるマルチ素材の構成品として提供される。
【0107】
バルブブロック610は、アルミニウム又はアルミニウム合金であってもよい金属合金材料として提供されており、本発明に係るバルブブロックであり、上記したとおりである。
【0108】
楽器600は、マウスピース612からバルブブロック610に空気を導入するためのリードパイプ613を含む。リードパイプ613は、当該技術分野によるトランペットに典型的なように、楽器のチューニングのためのチューニング部614をさらに含む。リードパイプ613は、任意の適当な金属又は金属合金材料から形成され、本実施形態ではステンレス鋼から形成され、リードパイプ613はバルブブロックに向けて部分的に延び、以下の図面で詳細に記載する受入ポート内で受け入れられる。留意されるように、リードパイプ613は、リードパイプ部613aによって高分子材料内に部分的に封入され、ステンレス鋼のリードパイプは、図示のようにスロット615を介して見ることができる。
【0109】
ベルパイプ620が設けられており、これはバルブブロック610と連通しており、以下で更に詳しく記載する高分子ポート内に受け入れられる。ベルパイプ620は、トランペット600のベル622と連結した上ベルパイプ部621を有しており、上ベルパイプ部621とベル622は、高分子材料から形成されている。
【0110】
リードパイプ613及び上ベルパイプ部621は、基端リードパイプ-ベルパイプ留め具615a及び先端部のリードパイプ-ベルパイプ留め具615bを介して互いに固着され、従来のトランペットと同様に配置される。
理解されるように、種々の高分子材料又は複合材料、混合高分子ブレンドなどが、本発明に従って利用され得、例えば、本発明の関与において、ABSとポリカーボネートとのブレンドが、楽器により強い強度及び共振を提供するために利用され得る。
【0111】
楽器600は、さらに、演奏者が操作可能なチューニングスライドアセンブリ652を含む、第1のバルブチューニング部630と、第2のバルブチューニング部640と、第3のバルブチューニング部650とを含む。
【0112】
バルブピストンは、例えば、
図4又は
図3を参照して図示及び説明されるようなものを利用することができ、このようなバルブピストン660は、ユーザの演奏者によってバルブを押圧するための指ボタン662、バルブ本体664、バルブブロック610の下部に係合される下側バルブキャップ668を含み、及びピストン664を上方向に付勢するための戻しばね669を含む。
【0113】
今度は
図6eを参照し、
図6a―
図6dの楽器600の部分拡大図が示されている。図示のように、好ましくは締結具によってバルブブロック610の上端部に固着される上部保持部材670が設けられている。上部保持部材670は、単一構造として提供されることが望ましく、本実施形態に示されているように、望ましくは、高分子材料の形態で提供される。理解されるように、上部保持部材670は、代替的に複数の部材から構成されてもよいし、また、代替の実施形態では、金属又は金属合金材料から形成されてもよい。
【0114】
上側バルブキャップ672は、従来のバルブ型管楽器におけるものと同様の機能で提供されるが、本実施形態に示されるように、上側バルブキャップ672は、高分子材料から形成されることによって提供される。あるいは、他の実施形態では、上側バルブキャップ672は、金属又は金属合金から形成されてもよい。
【0115】
本実施形態では、バルブピストンは互いに同一である。しかしながら、従来の金管楽器とは対照的に、楽器は、バルブピストンを1つの回転方向にしか固定できないように構成されている。これを達成するために、位置決め凹部671が設けられており、この凹部は、バルブピストン上に対応する突出部を有し、バルブピストンは、1つの回転態様においてのみ配向され得る。
【0116】
留意されるように、第1のバルブ孔及び第2のバルブ孔に対応する位置決め凹部671は、互いに同じ向きであり、一方、第3のバルブ孔に対応する位置決め凹部671は、第1のバルブ孔及び第2のバルブ孔に対応する位置と比較して、ほぼ半回転で位置決めされる。
本発明によって提供される利点は、バルブ孔のいずれかに挿入され得るバルブピストンを有することによって、若い演奏者が困惑せず、不正確なバルブ孔に不正確なバルブピストンを挿入することがないことである。
【0117】
さらに、当業者によって知られているように、バルブピストンをその正しいバルブ孔内に不正確な回転方向に挿入することが一般的に可能である。各バルブピストンを、そのバルブ孔内の1つの特定の回転方向でのみ配置可能にすることによって、これは、若い演奏者がしばしば遭遇するこのような問題を克服する。
【0118】
更に、好ましくは締結具によってバルブブロック610の下端に固定されるより下部保持部材667が提供される。下部保持部材667は、好ましくは、一体構造として設けられ、本実施形態に示されるように、好ましくは、高分子材料の形態で設けられてもよい。
理解されるように、下部保持部材667は、代替的に複数の部材から構成され、代替の実施形態では、金属又は金属合金材料から形成されることができる。
【0119】
下側バルブキャップ668は、従来のバルブ型管楽器と同様に提供されるが、本実施形態に示されるように、下側バルブキャップ668は、高分子材料から成形されることによって提供される。あるいは、他の実施形態では、下側バルブキャップ668は、金属又は金属合金から形成されてもよい。
【0120】
図示のように、下側バルブキャップ668の上面とバルブピストンの下部との間のバルブ孔内に保持され、上方向にピストンを付勢する戻しばね669が設けられている。
本実施形態における上側バルブキャップ672及び下側バルブキャップ668の両方は、部分的な回転によってそれぞれの保持部材670及び667にロックされ、端部キャップと保持部材との間の相補的係合手段は、バヨネット型の係合機構と同様であるとみなすことができる。そのようにしばしば若い演奏者によって経験されるような、、修理の困難さをもたらす、バルブケースへの端部キャップのクロススレッディングの問題は、本発明によって対処され、緩和される。
【0121】
図7aを参照すると、
図6a―
図6dの楽器の一部が演奏者側から、すなわち楽器のマウスピースの側から示されている。
図示されるように、バルブブロック700が設けられ、これは、
図2a乃至
図2g及びその特徴に関連して上述されるように、バルブブロック200と共に保持する際に考慮され得る。
基端部のマニホールド710が設けられ、これは、ねじ又は締結具の形で、又は他の手段で、バルブブロック700の基端係合面に取り付けられ、カバーキャップ712の下に位置する。マニホールドは、好ましくは高分子材料から形成される。
【0122】
基端部のマニホールド710のポート720と係合するための金属スライド部分732及び734を含む、第1のバルブチューニング部730が設けられる。上記のように、スライド部分732及び734は、必ずしも金属材料から形成される必要はないが、本実施の形態では、ステンレス材料が好ましい。
【0123】
図7bを参照すると、
図7aを参照して同様に、演奏者端部から楽器の一部が示されている。基端部のマニホールド710は、楽器のベルパイプ740を受け入れるための受入れポート750も含む。本実施形態では、ベルパイプ742の一部は、受入れポート750に挿入されるステンレス鋼材料に設けられている。
【0124】
基端部のマニホールド710は、(i)ベルパイプ740とバルブブロック700の第1のバルブ孔との間、(ii)第1のバルブのチューニング部730とバルブブロック700の第1のバルブ孔との間、及び(iii)第2のバルブのチューニング部742とバルブブロック700の第2のバルブ孔との間で流体を連通させる。
【0125】
好ましくは、基端部のマニホールド710とバルブブロック700の基端係合面との間に配置されるシリコーン材料から好適に形成されるシーリングガスケットがある。
次に、
図7cを参照すると、
図6a―
図6dの楽器の一部が、楽器700のベル及び音出力端部から示されている。先端部のマニホールド750は、より望ましくは高分子材料から形成され、シールキャップ712で覆われる締結具又はねじなどによってバルブブロック700に再び固定される。
【0126】
係合ポート760が、第3のバルブの、チューニング部770を受け入れる先端部のマニホールド754上に設けられ、本実施形態では、受入れポート760と摺動可能に係合されるステンレス鋼部分772及び774を含む。
図7dに示すように、リードパイプ790は、、締結具を介して先端係合面に固着された先端部のマニホールド750の受入れポート780に係合されて、楽器のバルブブロック700内への空気の流入を可能にする。繰り返しになるが、本実施形態では、ステンレス鋼又はその他の適当な金属部分が受入れポート780との係合のために存在する。
【0127】
次に、
図7eを参照すると、示されるように、3つ全てのチューニング部、第1のバルブのチューニング部730、第2のバルブのチューニング部742及び第3のバルブのチューニング部770が、基端部のマニホールド及び先端部のマニホールドの各受入れポートに係合されるように示される。
先端部のマニホールド754は、(i)リードパイプ790とバルブブロック700の第3のバルブ孔との間、及び(ii)第3のバルブのチューニング部770とバルブブロック200のバルブブロック700の第3のバルブ孔との間で、流体を連通させる。
【0128】
繰り返しになるが、望ましくは、先端部のマニホールド754とバルブブロック700の基端係合面との間に配置され、シリコーン材料から好適に形成されるシーリングガスケットがある。
【0129】
理解されるように、チューニング部を本発明のバルブブロック700とを係合させるには多くの方法があり、本実施形態では、本発明の範囲を限定しないと理解される一体的に形成されたマニホールドと受入れポートによってであり、チューニング部をバルブブロックとを直接係合させることを含む他の方法は本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0130】
次に、
図8a及び
図8bを参照すると、本発明によるバルブブロックアセンブリ810を組み込んだ楽器800のさらなる実施形態が示されている。
本実施形態では、楽器は、本発明のバルブブロックアセンブリ810を含むトランペット800である。楽器は、さらに、リードパイプ820と、第1のバルブチューニング部840と、ベル850と、第2のバルブチューニング部870と、第3のバルブチューニング部880とを含む。
【0131】
次に
図8cを参照すると、
図8a及び
図8bのトランペットの一部が示されており、ベルが除去され、ベルパイプの一部が除去されるとともに、第1のバルブのチューニング部840、第2のバルブのチューニング部870、及び第3のバルブのチューニング部880が除去され、これは本実施形態の態様を実証する目的からである。
【0132】
比較のために、
図6a乃至
図6eの実施形態を参照すると、リードパイプ613及び上ベルパイプ部621は、基端部のリードパイプ-ベルパイプ留め具615a及び先端部のリードパイプ-ベルパイプ留め具615bを介して互いに対して固着される。
対照的に、
図8a乃至
図8cに示されるような本実施形態では、先端部のリードパイプ-ベルパイプ留め具はない。
【0133】
むしろ、かつ対照的に、リードパイプとベルパイプとの間の支持及び留め具は、上ベルパイプ821とリードパイプ813との間に延在する留め部材860によって提供される。
以上述べるように、本実施の形態では、留め部材870は、
図6a-
図6eの実施形態の上部保持部材670の機能を交換して提供するとともに、リードパイプ813とベルパイプ821との間に留め具をも提供する。
【0134】
なお、
図8a―
図8eの本実施形態では、リードパイプ部613a、ベルパイプ及び留め部材860が高分子材料から形成されている。
本発明の実施形態として、現在図示、記載されているように、リードパイプ部613a、ベルパイプ及び留め部材860は、一体構造としての高分子材料から一体的に形成されてもよい。
【0135】
このような実施形態は、組立の容易さを提供するだけでなく、製造の立場からも有利であり、また有利である。本発明者は、バルブブロックとチューニング部との間の中間部としてマニホールドを提供することにより、リードパイプ及びベルパイプが、特に高分子材料から形成される場合、硬質表面を有する楽器の影響からの被害をさらに軽減し、さらに本発明のバルブブロックと併せて、頑丈で堅牢な構造を提供し、これによりバルブブロック及びチューニング部の損害に対する耐性を実質的に高めることができることを発見した。
【0136】
さらに、本発明は、ナックルの使用を不要としたため、このようなマニホールドを使用することによって、特に高分子マニホールドを使用した場合に、ナックルへの損傷及びその凹みを本質的に防ぐことができる。
さらに、マニホールドに損害が生じた場合、本発明の特徴によりバルブブロックへの損害がなく、上述した理由により、楽器の修理は比較的容易であり、単にマニホールドを除去し、破損し又は損傷したマニホールドを交換すべく、新たなマニホールドを固定することが必要であり、必要か望ましい場合は、修理時に代替のガスケットが挿入されることができる。
【0137】
そのため、マニホールドが高分子材料から形成されるものであれ、高分子複合材料から形成されるものであれ、金属又は金属合金から形成されるものであれ、そのようなマニホールドを提供し、マニホールドの撤去が容易であれば、楽器の当該部分が損害した場合には、専門の管楽器の修理技術者のサービスを利用する必要がなくなる。このようなマニホールドの交換は比較的単純な工程であり、半田付けやろう付けが必要でなく、マニホールドを楽器に固定した締結具を単純に撤去することを考慮すると、マニホールドは容易に撤去され、通常の技能を有し、当該技術分野で標準的である典型的な価格の楽器の修理に必要な熟練した技術者のトレーニングやスキルを必要でない人によって交換される。
【0138】
従って、本発明のこの側面は、音楽用金管楽器の修理技術者の技能とサービスを契約する必要がなくなることにより、経済的かつ修理が容易な音楽管楽器を提供し、また、損傷時にこのような修理技術者から、納品され、回収される楽器を必要としないとの、更なる利点をもたらす。
【0139】
本発明は、さらに、メンテナンス及び修理が必要である場合に、費用対効果がある楽器を提供し、機器が損傷した場合に、そのような修理費用が楽器の費用のかなりの部分となり得る入門レベルの金管楽器と比較した場合の修理費用とは対照的に、交換する楽器の費用のごく一部となりうる。
【0140】
本発明の代替的な実施形態の例
本発明は、トランペットを参照して説明されたが、当業者は、本発明が、コルネット、ロングコルネット、テナーホーン、バルブ型のトロンボーン、ホルン、フレンチホルン、ユーホニウム、及びチューバ、並びにフルゲルホルン、テナーホルン、バリトンホルン、ユーホニウム、ベース、スーザフォン、メロフォンなどのあらゆるタイプの伝統的な金管楽器に等しく適用可能であることを理解するであろう。
【0141】
図示の実施形態は、バルブブロックが、アルミニウムなどの金属又は金属合金から形成されるものとして示されている。留意すべきで、かつ理解されているように、他のいかなる金属又は金属合金も、高分子材料を含むバルブブロックを形成するために同様に適用可能であり、本発明の範囲に入ると考えられる。
【0142】
さらに、バルブブロックは、単一の材料片から形成されるものとして記載されているが、理解されるように、代替の実施形態において、バルブブロックは、2つの半体に形成され、例えばねじ又は締結具、接着剤等により一体とされてもよい。
【0143】
他の代替の実施形態において、バルブブロックは、高分子材料から形成され、本発明に従い、バルブブロックの幾何学的要件を形成するように成型されることができる。このような場合、バルブブロックは、一部の実施形態において、2つの半体に形成され、例えば、超音波溶接、接着剤、締結具などによって一体となってもよい。
【0144】
本発明の実施形態は、楽器を金属と高分子材料との複合体として描写しているが、他の代替の実施形態においては、楽器は全面的に金属又は金属合金から形成することができ、また、本発明によって提供されるバルブブロックは、全面的な標準タイプの金属金管管楽器にも適用可能である。
【0145】
本発明の利点
本発明のバルブアセンブリのバルブブロックは、交差留め具を含まない。さらに、バルブブロックは、第1のバルブ孔と第2のバルブ孔との間に延在する第1の連結ナックル、又は第2のバルブ孔と第3のバルブ孔との間に延在する第2の連結ナックルを含まない。
【0146】
バルブ孔間に交差留め具が存在しない場合、及び接続ナックルが存在しない場合、本発明は、交差留め具又は接続ナックルによる任意のバルブケース又はバルブケースの一部の衝撃及び圧縮による損傷の影響を受けないバルブアセンブリを提供し、該バルブアセンブリは、機能的に同等であると考えられる。
【0147】
そのように、本発明は、固形の単一バルブブロックが、交差留め具及び接続ナックルである、このような損傷の原因である要素又は構成要素を含まないので、金管楽器のバルブアセンブリのバルブケースの損傷を回避する。また、このような要素によるバルブピストンの損傷を回避することができる。
【0148】
さらに、本発明の実施形態では、第1のバルブピストン、第2のバルブピストン、及び第3のバルブピストンのチューニング部が、従来技術のようにバルブケース上に半田付け又はろう付けされたナックル構成ではなく、マニホールド構成を含み、本発明はまた、バルブピストンの損傷だけでなく、バルブ孔の損傷も回避する。
【0149】
本発明者は、更に先行技術の製造上の欠点を特定し、本発明によるバルブブロックは、先行技術で必要とされる3つ以上のバルブケースの正確な位置合わせ、交差留め具の半田付け及びろう付け、又はバルブケース間の接続ナックルの位置合わせ及び半田付けのステップを必要としない、何故ならバルブブロックは従来技術のバルブケースを含まず、むしろ単一のブロック内に、そして少なくとも部分的にブロックを通って延びる孔を含むからである。
【0150】
したがって、本発明は、組み立てが容易であり、真鍮製の管楽器の組み立て及び製造において適切な結果を達成するために時間がかかり、熟練した職人技を必要とする製造工程を不要にすることによって、従来技術の利点を超える利点を提供する。
【0151】
さらに、本発明の実施形態では、修理が容易であり、それによって、取り外し及び/又は再取り付けのための半田付け又はろう付けを必要とせずに、チューニング部、リードパイプ又はベルパイプを楽器から簡単に取り外して交換することができる。
【0152】
本発明の他の有利な点及びその実施形態には、バルブ孔を含む楽器の部分の洗浄の容易さ、及びバルブが引き出されたバルブ孔と同じバルブ孔内のバルブを交換する不要性が含まれる。
【0153】
高分子材料の利用、特に本発明の実施形態におけるバルブブロックに固定されたマニホールドとしての利用は、先行技術の問題と同様に、バルブケース内に急き立てられるナックルの問題、及びバルブケース及びバルブの損傷を軽減する。本発明は、適切かつ十分に強く衝撃耐性のある高分子材料又は複合高分子材料を用いて実施することができ、さらに、マニホールド構造を用いた実施形態と同様に、チューニング部等にナックル部がない等、ナックルがない場合には、バルブ孔の損害は軽減される。
【0154】
さらに、バルブブロックの単一型構造又は一体構造を提供することにより、所有する楽器が特に低コストで予算型の初心者用楽器である小学生であることが多い学生や初心者に必要とされるように、衝撃に対する強さと抵抗力を高めることができる。このように、高度な演奏者の楽器の中間物よりも一般に市場参入のための低価格である強力な楽器を有することは、先端技術による損傷と修理を回避し、したがって、楽器修理店及び技術者による修理とメンテナンスの大幅な減少によるより費用効率の高い楽器を提供する。
【0155】
従って、本発明は、特に専門的修理サービスの修理及び保守に関連する費用の欠如及び不要化を含む、費用対効果の高い楽器を提供する。
【0156】
有利なことには、本発明の実施形態もまた、洗浄の容易さを提供し、公知の如く、学生レベルにおける特に洗浄過程において、多くの場合、楽器が落とされ、ひっくり返されたり、硬質表面に影響を受けたりして、上記のようなモードによって楽器に損傷を与えたりする。繰り返しになるが、このことは、本発明が提供する堅牢性と衝撃への抵抗のために、費用対効果の高い手段をさらに提供する。
【0157】
さらに、本発明は、望ましくは金属製又は金属合金製のバルブブロックと組み合わせて、高分子又は高分子複合材料から形成されるマニホールド部及びベル部のような楽器内のマニホールド要素を実施することによる衝撃耐性及び凹みへの耐性に加えて、楽器全体の質量又は重量を減少させることも可能であり、これはまた、楽器を長期間保有する際に疲労に苦しむ可能性がある若い演奏者である学生にとって有利でありうる。
【0158】
さらに、本発明の実施形態におけるステンレス鋼の利用は、特にリードパイプにおいて酸化しやすい伝統的な金管楽器の問題、及びその有害性を克服する。これはまた、楽器の空気経路でステンレス鋼が利用されることによって、衛生状態を高めることを可能にする。
本発明及び明細書内で、「チューニングアセンブリ」という用語は、楽器のチューブの全長を増加させるための複数の「チューニング部と組み合わせたバルブ付き管楽器の「バルブアセンブリ」を意味すると理解される。
【0159】
さらに、本発明の範囲内では、「バルブアセンブリ」という用語は、バルブピストンとバルブピストンハウジングとの組み合わせを意味すると理解される。
更に、用語「バルブピストン」は、トランペットのような楽器に典型的に実装されるような両方の線形動作可能なバルブのバルブ本体を含むと共に、フレンチホルンのような楽器に典型的に実装されるような回転動作可能なバルブを含むと理解される。
【0160】
従来技術で知られているように、このようなバルブピストンのハウジングはバルブケースから構成され、このバルブケースは、通常、真鍮のような金属又は金属合金から形成された円筒形の要素であり、交差留め具によって隣接するケースに接続されている。
対照的に、本発明のバルブアセンブリは、複数のバルブケースを含んでおらず、むしろ、単一のバルブケースを有しており、これは、自動車のエンジンブロックに類似していると考えられる。
【0161】
単一ブロックの形態のバルブピストンのハウジングを設けることにより、より構造的に健全な構成要素が提供され、これにより、両方の交差留め具、ならびにチューニング部と接続するナックルからの衝撃に対する抵抗が増大し、したがって、バルブピストンと同様にバルブハウジングへのそのような衝撃によって生じる損傷に対する抵抗が増大する。
【0162】
理解されるように、添付の図面及び上記の説明に示されるような好ましい実施形態はトランペットを参照しているが、本発明は、コルネット、ロングコルネット、テナーホーン、バルブタイプのトロンボーン、ホーン、フレンチホルン、ユーフォニウム、及びチューバ、並びにフルーゲルホルン、テナーホルン、バリトンホルン、ユーフォニウム、ベース、スーザフォン、メロフォンなどの他のタイプのバルブタイプの管楽器にも同様に適用可能であることが理解されるだろう。
【0163】
繰り返しになるが、理解されるように、本発明は、フランチホルンで典型的に使用されるような回転式バルブピストン体にも適用可能であり、それによって回転式バルブピストン体が円筒状の孔又はハウジングの内部で回転し、及び、トランペット等のような大部分の楽器で典型的に使用されるもののように、中央の長手方向軸に沿う方向に軸方向に動き、配備されるバルブ孔内で動く線形バルブピストン体にも適用可能である。