(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】複数の流体ポンプを介した流体の流れ制御及び送出
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20240222BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
F04B43/02 F
F04B43/12 T
(21)【出願番号】P 2022118677
(22)【出願日】2022-07-26
(62)【分割の表示】P 2019552207の分割
【原出願日】2018-03-19
【審査請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522285358
【氏名又は名称】フレゼニウス カービ ユーエスエー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー イー アンブロジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ジー パワーズ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0026148(US,A1)
【文献】特表2016-512972(JP,A)
【文献】特表2016-537081(JP,A)
【文献】国際公開第2015/144628(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
F04B 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送出を制御する流体送出システムの作動方法であって、流体送出システムが、
第1の流体ポンプのチャンバに流体を引き込むこと、
前記第1の流体ポンプを動作させ、前記第1の流体ポンプのチャンバ内の流体を下流に導管を介して第2の流体ポンプに出力することであって、前記第1の流体ポンプが前記第2の流体ポンプへの流体の送出を測定し、
前記第1の流体ポンプの動作中に、前記第1の流体ポンプによる前記測定された流体の送出に基づいて前記第2の流体ポンプの動作を活性化させ、前記第2の流体ポンプは、前記第1の流体ポンプから受け取った流体をレシピエントにポンプで送り込むこと、
前記第1の
流体ポンプを介しての流体の流量率の測定を利用して前記第2の流体ポンプの動作速度を制御すること、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法はさらに、
前記第1の流体ポンプと前記第2の流体ポンプとの間に配置された弁を制御することを含み、前記弁の制御は、前記第1の流体ポンプから前記第2の流体ポンプを通ってレシピエントへの流体の流量を調整する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の流体ポンプの動作を活性化させることは、
前記第1の流体ポンプを通って流れる第1の測定された流体の流量が所望の流量設定よりも大きいことの検出に応答して、レシピエントに流体を送出する前記第2の流体ポンプの流量を減少させ、
前記第1の流体ポンプを通って流れる第2の測定された流体の流量が所望の流量設定よりも少ないことの検出に応答して、レシピエントに流体を送出する前記第2の流体ポンプの流量を増加させる、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記第1の流体ポンプを通って前記導管への流体の流量が、前記第2の流体ポンプからレシピエントに出力される流体の流量に関して変化する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法はさらに、
前記第1の流体ポンプのチャンバ内の計算された流体量に基づいて、前記導管を介して前記第1の流体ポンプから送出する流体の流量を計算することを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法はさらに、
前記第2の流体ポンプによって、前記第1の流体ポンプからレシピエントへの流体の流れを遮断することを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法はさらに、
前記第2の流体ポンプによって、i)前記導管を介して前記第1の流体ポンプから流体を受け取ること、ii)前記導管および前記第2の流体ポンプを通って下流のレシピエントへの流体の流れを制御することを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法はさらに、
前記第1の流体ポンプが前記導管を通して流体を送出する速度を示すフィードバックに基づいて、前記第2の流体ポンプからの流体の流れを制御することを含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の流体ポンプがダイアフラムポンプであり、前記第2の流体ポンプが容積式ポンプである、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法はさらに、
流量設定で指定された流量で、前記第2の流体ポンプからレシピエントへの流体の送出を制御することを含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法はさらに、
複数のサンプル時間の各々について、前記第1の流体ポンプのチャンバ内の流体のそれぞれの残りの部分の測定に基づいて、前記第2の流体ポンプへの流体の送出を測定することを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記流体の送出を測定することは、
複数のサンプル時間での前記第1の流体ポンプのチャンバ内の複数の計算された残りの流体の量に基づいて、前記第1の流体ポンプから導管を通って前記第2の流体ポンプに流体を送出する流量を決定することを含み、前記複数のサンプル時間は、チャンバの流体が充填された状態とチャンバの空の状態との間で生じる、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2の流体ポンプの作動を活性化させることは、
前記第1の流体ポンプから導管内に下流の前記第2の流体ポンプに向けてポンプされている流体の速度を示す第1の流れ信号を受信すること、
目標流量値を受け取ること、
前記第1の流れ信号と前記目標流量値との間の差に基づいて流体流れ誤差信号を生成すること、
前記流体流れ誤差信号を介して前記第2の流体ポンプを制御すること、を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記第2の流体ポンプがぜん動流体ポンプであり、前記流体流れ誤差信号を介して前記第2の流体ポンプを制御することは、導管の変形可能な部分に沿って前記第2の流体ポンプの機械的ポンプ要素を掃引する速度を制御することを含む、方法。
【請求項15】
流体送出システムであって、
第1の流体ポンプと、
第2の流体ポンプと、
コントローラとを含み、
前記コントローラは、
第1の流体ポンプのチャンバに流体を引き込むこと、
前記第1の流体ポンプを動作させ、前記第1の流体ポンプのチャンバ内の流体を下流に導管を介して第2の流体ポンプに出力することであって、前記第1の流体ポンプが前記導管を通って前記第2の流体ポンプへの流体の送出を測定し、
前記第1の流体ポンプの動作中に、前記第1の流体ポンプによる前記測定された流体の送出に基づいて前記第2の流体ポンプの動作を活性化させ、前記第2の流体ポンプは、前記第1の流体ポンプから受け取った流体をレシピエントにポンプで送り込むこと、
前記第1の
流体ポンプを介しての流体の流量率の測定を利用して前記第2の流体ポンプの動作速度を制御すること、
を動作可能である、流体送出システム。
【請求項16】
請求項15に記載の流体送出システムはさらに、
前記第1の流体ポンプと前記第2の流体ポンプとの間に配置されたバルブを含み、前記コントローラは、前記バルブの開閉を介して前記第1の流体ポンプからレシピエントへの流体の流れを制御するように動作する、流体送出システム。
【請求項17】
請求項15に記載の流体送出システムであって、前記コントローラがさらに、前記第2の流体ポンプの動作を介して前記第1の
流体ポンプを流れる流体の速度を制御するように動作する、流体送出システム。
【請求項18】
請求項15に記載の流体送出システムであって、前記コントローラがさらに、送出段階中の複数の異なる時間におけるチャンバ内の計算された流体の量に基づいて、導管を介してチャンバから送出する流体の流量を計算するように動作する、流体送出システム。
【請求項19】
請求項15に記載の流体送出システムであって、前記コントローラがさらに、前記第2の流体ポンプによって、i)導管から流体を受け取り、ii)導管からレシピエントへの流体の流量を遮断するように動作する、流体送出システム。
【請求項20】
請求項19に記載の流体送出システムであって、前記コントローラがさらに、前記第1の流体ポンプが導管を通して流体を送出する速度を示すフィードバックに基づいて、前記第2の流体ポンプからの流体の流れを制御するように動作する、流体送出システム。
【請求項21】
請求項20に記載の流体送出システムであって、前記コントローラがさらに、前記第1の流体ポンプを通る測定された流体の流れの速度を利用して、前記第2の流体ポンプの動作速度を制御するように動作する、流体送出システム。
【請求項22】
請求項21に記載の流体送出システムであって、前記第2の流体ポンプが容積式ポンプである、流体送出システム。
【請求項23】
請求項21に記載の流体送出システムであって、前記コントローラがさらに、所望の設定値の流量設定によって指定された流量で、前記第2の流体ポンプからレシピエントへの流体の送出を制御するように動作する、流体送出システム。
【請求項24】
命令が格納されているコンピュータ読出し可能ストレージであって、当該命令は、コンピュータプロセッサハードウェアによって実行されるとき、前記コンピュータプロセッサハードウェアに、
第1の流体ポンプのチャンバに流体を引き込むこと、
前記第1の流体ポンプを動作させ、前記第1の流体ポンプのチャンバ内の流体を下流に導管を介して第2の流体ポンプに出力することであって、前記第1の流体ポンプが前記第2の流体ポンプへの流体の送出を測定し、
前記第1の流体ポンプの動作中に、前記第1の流体ポンプによる前記測定された流体の送出に基づいて前記第2の流体ポンプの動作を活性化させ、前記第2の流体ポンプは、前記第1の流体ポンプから受け取った流体をレシピエントにポンプで送り込むこと、
前記第1の
流体ポンプを介しての流体の流量率の測定を利用して前記第2の流体ポンプの動作速度を制御すること、
を生じさせる、コンピュータ読出し可能ストレージ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ダイアフラムポンプを用いてレシピエント(病院又はその他の患者ケア環境における患者など)に流体を送出する従来の技法は、流体を、負圧の印加を介して流体源からダイアフラムポンプのチャンバ内に引き込むことを含むことがある。チャンバが充填された後、それぞれの流体送出システムが正圧をチャンバに印加し、チャンバにおける流体を、対応する患者に送出させる。流体をレシピエントに送出するレートは、チャンバに印加される正圧の大きさに依存して変動し得る。充分な量の時間にわたり正圧をチャンバに印加した後、最後には、チャンバにおける流体は空にされ、チャンバは、再び負圧を用いて再充填される。
【0002】
たいていの応用例において、ダイアフラムポンプのチャンバ内に引き込まれる流体の量は、患者に送出されるように意図された流体の全量よりも実質的に少ない。経時的に適切な量の流体を患者に送出するために、予め充填されたチャンバを空にした後、流体送出システムは、流体を流体源からチャンバ内に引き込み、その後、正圧をチャンバに印加して流体をレシピエントに送出するサイクルを繰り返す。
【0003】
ダイアフラムポンプの従来の使用によれば、流体をチャンバ内に引き込むことと、流体をダイアフラムポンプにおけるチャンバから完全に放出することとの時間的に連続した動作間の経過時間の量に基づいて、流体送出システムは、対応する患者に流体を送出するレートを決定することができる。
【0004】
前述したように、流体ポンプの1つのタイプは、従来のダイアフラムポンプである。典型的に、使用中、負圧が従来のダイアフラムポンプに印加されて、流体をそれぞれの流体チャンバ内に引き込む。その後、正圧が従来のダイアフラムポンプに印加されて、流体を流体チャンバから放出する。
【0005】
流体ポンプの別のタイプは、従来のぜん動ポンプである。ぜん動ポンプは、種々の流体を注入するために用いられる容積式ポンプのタイプである。流体は、円形のポンプ筐体の内部に適合する可撓性のチューブ内に収容される(とは言え、線形ぜん動ポンプがつくられてきた)。ロータが可撓性のチューブを圧縮する。ロータは、ロータの外部円周に取り付けられるいくつかの「ローラー」、「シュー」、「ワイパー」、又は「ローブ」を備える。ロータが回転すると、圧縮された状態のチューブの一部が、挟まれて閉じられ(又は「閉塞し」)、それゆえ、流体をレシピエントに注入させる。また、チューブが、カムの通過の後、その自然な状態まで開くと(「回復」又は「復元」)、流体の流れはポンプに誘導される。
【0006】
注入ポンプや透析マシンなど、医療において用いられる現在入手可能なたいていのポンプは、開ループの、容積式スタイルのポンプである。これらの従来のタイプのポンプは、固定の既知の状況においてキャリブレートされる。使用の実際の状況がキャリブレート状況と異なる場合、実際の流体送出レートは、所望の流量率から著しく逸脱することがある。そのようなシステムでは、流体の流れを測定する方法がないので、流体流量率に関して問題があるかどうかを使用者が知る方法がない。これらのタイプの従来のポンプの流量率は、インレット圧力(例えば、ポンプの上方の流体源の高さ)、アウトレット圧力又は背圧(例えば、小径カテーテルからの下流の流れの制限)、流体粘度(例えば、バッグ入りの赤血球は、塩水の16倍の粘度である)の変化に影響されることがある。これら及びその他の環境的要因が、容積式ポンプの動作に劇的に影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【0007】
幾つかの従来の流体ポンプの重大な欠点は、患者に送出されている流体の実際の流量率を監視及び/又は測定する方法がないことである。
【0008】
レシピエントに対する流体の流量率を測定する1つの方法は、従来の流量率センサを用いることである。流れを測定するために流量率センサを実装する主な難点は、異なるレートでの流体の送出を正確に検出するために必要とされる、非常に大きな必須のダイナミックレンジである。例えば、幾つかの例において、静脈ポンプは、最低0.1ml/時間から最大1200ml/時間又はそれ以上で動作することが望ましい。これは、少なくとも10,000から1のダイナミックレンジであり、たいていの従来のセンサ及び測定技術の能力をはるかに超えている。
【0009】
流体の送出に用いられる従来の流れセンサ技術の別の要件は、送出される流体が、無菌の使い捨てアセンブリ内に完全に収容されなければならないことである。流体がセンサに直接接触することはできず、又は、流体がセンサに接触すると、そのセンサは、使用後、汚染に起因して処分されなければならない。それゆえ、所望の動作範囲にわたって流量率を正確に測定することのできる使い捨てセンサの実装は、コストが非常に高くなり得る。
【0010】
従来の流れセンサ技術の別の制限は、静脈流体及び薬剤が、絶えず変化し、時と共に進化していることである。使用者には、それゆえ送出システムには、送出されている流体の固有の流体特性について知識がない。それゆえ、流れ測定システムは、分配される流体のタイプの熱的、光学的、又は密度(粘度)特徴を事実上使用できず、又は、それらに基づくことができない。
【0011】
本願における実施形態は、従来の技法に勝る、新規且つ改善された流体送出を提供する。
【0012】
より具体的には、1つ又は複数の実施形態によれば、流体送出装置が、コントローラハードウェア、ニューマチックに(気体)駆動されるダイアフラムポンプ、ポンプ、下流ポンプ(容積式ポンプなど)、及び、ダイアフラムポンプから容積式ポンプを介してレシピエントまで延在する流体導管(流体を運ぶための流体密封の経路)を含む。ダイアフラムポンプは、遠隔に位置される流体源から流体を受け取るように構成され得る。従って、本願における実施形態は、可変容積式ポンプ(回転ぜん動ポンプ、線形ぜん動ポンプ、回転ローブポンプ、プログレッシブキャビティポンプ、回転ギアポンプ、ピストンポンプ、ダイアフラムポンプ、スクリューポンプ、ギアポンプ、油圧ポンプ、回転羽根ポンプ等など)に供給する、圧力制御される可変容量ポンプ(ダイアフラムポンプなど)を含む。
【0013】
流体をレシピエントに送出する動作の間、コントローラハードウェアは、初期的に、負圧の印加を介して、ダイアフラムポンプのチャンバ内に流体を引き込む。チャンバを充填することに続いて、コントローラハードウェアは、(ダイアフラムポンプの)チャンバにおける流体を、下流に、流体導管を介して容積式ポンプに出力するように、ダイアフラムポンプのチャンバに正圧を印加する。容積式ポンプは、ダイアフラムポンプから受け取られる流体をレシピエントに送出する。
【0014】
更なる実施形態によれば、容積式ポンプ(これは、例えば、流体の流れを挟み、閉塞し、制御する)とダイアフラムポンプとの間の、容積式ポンプの上流の流体導管の第1の部分における流体の圧力は、容積式ポンプの下流の流体導管の第2の部分における流体の圧力より大きい。
【0015】
更なる実施形態によれば、容積式ポンプ(これは、流体の流れを挟む)とダイアフラムポンプとの間の、容積式ポンプの上流の流体導管の第1の部分における流体の圧力は、容積式ポンプの下流の流体導管の第2の部分における流体の圧力より小さい。
【0016】
別の実施形態によれば、本願において説明されるような流体送出装置のコントローラハードウェアは、さらに、ダイアフラムポンプのチャンバから、下流に、容積式ポンプに放出される流体のレートを測定するように動作可能である。一実施形態において、コントローラハードウェアは、容積式ポンプからレシピエントに流体を送出するレートを制御するように、チャンバから放出された流体の測定されたレートを用いる。
【0017】
ダイアフラムポンプを介する流体の流量率は、任意の適切な方式で測定され得る。例えば、一実施形態において、コントローラハードウェアはさらに、複数のサイクルのそれぞれにわたって、複数の充填時間の各々において、共通点なく位置される流体源コンテナからダイアフラムポンプのチャンバ内へ或る量の流体を周期的に受け取る(引き込む)ように動作可能である。
【0018】
一実施形態において、コントローラハードウェアは、流体源コンテナから流体を引き込むように、ダイアフラムポンプのチャンバに負圧を印加する。所望であれば、ダイアフラムポンプから容積式ポンプを介してレシピエントへと受け取られる流体の流れを容積式ポンプがブロックする状況の間、コントローラハードウェアは、流体源コンテナからダイアフラムポンプのチャンバ内に流体を引き込むように構成されてもよい。このように、容積式ポンプから或る方向に流体を引き込むのではなく、容積式ポンプが流体の流れをブロックするので、ダイアフラムポンプは、上流の流体源コンテナから流体を引き込む。
【0019】
更なる実施形態によれば、重力の力が、ダイアフラムポンプのチャンバを充填するための方法として用いられてよい。例えば、流体のコンテナは、ダイアフラムポンプの上方に配置され得る。従って、流体をチャンバ内に引き込むために、負圧を必要としなくてもよい。
【0020】
前述したように、ダイアフラムポンプのチャンバ内に流体を引き込むことに続いて、コントローラハードウェアは、チャンバにおける流体を、下流に、容積式ポンプに送出するように、ダイアフラムポンプのチャンバに圧力を印加する。
【0021】
別の更なる実施形態において、精密な流体の流れの制御を、大きな可能な範囲にわたって提供するために、コントローラハードウェアは、チャンバにおける流体の残りの部分を経時的に測定することに基づいて、レシピエントに送出される流体の流量率を測定する。例えば、一実施形態において、コントローラハードウェアは、ダイアフラムポンプのチャンバから、下流に、容積式ポンプに放出される流体の流量率を測定するように動作可能である。前述したように、容積式ポンプは、ダイアフラムポンプからレシピエントに受け取られる流体の流れを制御可能にブロックする。コントローラハードウェアは、容積式ポンプからレシピエントに流体を送出するレートを制御するように、流体の測定された流量率(ダイアフラムポンプのチャンバにおける流体のそれぞれの残りの部分を測定することから検出される)を利用する。
【0022】
ダイアフラムポンプを介した流体の流れの測定が、所望の流量率設定より高い場合、コントローラハードウェアは、容積式ポンプからレシピエントに流体を送出するレートを低減させる。逆に、コントローラハードウェアによって検出される、ダイアフラムポンプを介した流体の流れの測定が、所望の流量率設定より低い場合、コントローラハードウェアは、容積式ポンプからレシピエントに流体を送出するレートを増加させる。従って、一実施形態において、ダイアフラムポンプを介した流体の流れの測定されたレートは、下流の容積式ポンプを制御して正確な流体の流れを提供するための基礎として用いられ得る。
【0023】
別の更なる実施形態によれば、コントローラハードウェアは、チャンバを充填する第1の時間と、流体源からチャンバ内に流体を充填する次の連続する時間との間の複数の測定時間の各々で、チャンバから下流にセグメントに流体を送出するレートを測定するように、ダイアフラムポンプのチャンバへの複数のサンプルウィンドーの各々で、圧力の大きさを一時的に変化させる。より具体的には、一実施形態によれば、容積式ポンプへの流体の送出レートを測定するために、ダイアフラムポンプにおける圧力の大きさが一時的に修正される或る時間ウィンドーにおいて、コントローラハードウェアはさらに容積式ポンプを制御して、容積式ポンプからレシピエントに流体の対応する連続的な流れを提供する。時間ウィンドーにおける複数の測定ウィンドーの各々の間、コントローラハードウェアは、ダイアフラムポンプに残っている流体のそれぞれの部分を測定して、それぞれの流体流量率を判定する。
【0024】
コントローラハードウェアは、複数の測定ウィンドーの間測定された、ダイアフラムポンプに残っている流体のそれぞれの測定された部分を利用して、容積式ポンプによってレシピエントに送出される流体のレートを計算する。前述したように、一実施形態において、容積式ポンプは、容積式ポンプによってレシピエントに送出される流体の量を制御する、対応する機械ポンプ要素を含むように構成され得る。
【0025】
本願における実施形態(例えば、流体送出レートを測定するためのダイアフラムポンプと、レシピエントへの流体の物理的移送を制御するための容積式ポンプとの組み合わせ)は、従来の技法に勝って有利である。例えば、本願における実施形態によれば、ダイアフラムポンプを含むことが、i)流体の流量率を測定する方法を提供し、ii)ポンプの上方又は下方のソースから流体を引き込む方法(負圧を用いる)を提供し、iii)容積式ポンプのインレットに対して、流体の一定且つ信頼できる圧力を提供する。また、本願において説明されるような流体送出装置及び対応する方法は、従来の技法に勝る以下の利点の1つ又は複数を提供する。すなわち、i)所望の送出流量率設定ポイントに達するための迅速な開始及び終了時間、ii)0.1又はそれ以下から1200又はそれ以上までの流量率を制御するための広いダイナミックレンジ、iii)インレット又はアウトレット圧力変化に影響されない流量率制御、iv)流体特性(例えば、粘度)の大きな変動に影響されない流量率制御、安全性を改善するためのリアルタイムの流れ測定等、である。
【0026】
これら及びその他の一層具体的な実施形態が、以下でより詳細に開示される。
【0027】
本願で説明される手段のいずれかは、本願で開示される方法動作のいずれか又は全てを実行及び/又はサポートするために、1つ又は複数のコンピュータ化されたデバイス、流体送出システム、サーバ、基地局、ワイヤレス通信機器、通信管理システム、ワークステーション、ハンドヘルド又はラップトップコンピュータ等を含んでよいことに留意されたい。言い換えれば、1つ又は複数のコンピュータ化されたデバイス又はプロセッサが、本発明の様々な実施形態を実行するために、本願で説明されるように動作するようにプログラム及び/又は構成され得る。
【0028】
本願における更に他の実施形態は、上記で概説され、以下でより詳細に開示されるステップ及び動作を行うためのソフトウェアプログラムを含む。1つのそのような実施形態は、非一時的コンピュータ読出し可能記憶媒体(すなわち、任意の物理的コンピュータ読出し可能ハードウェア記憶媒体)を含むコンピュータプログラム製品を含み、その記憶媒体上で、ソフトウェア命令が、後続の実行のために符号化されている。命令は、プロセッサを有するコンピュータ化されたデバイス(例えば、コンピュータ処理ハードウェア)において実行される場合、本願で開示される動作を行うようにプログラムし、及び/又は、プロセッサに、本願で開示される動作を行わせる。そのような構成は、典型的に、光学媒体(例えば、CD-ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、メモリスティック等などの非一時的コンピュータ読出し可能記憶媒体、又は、1つ又は複数のROM、RAM、PROM等におけるファームウェア又はショートコードなどの他の媒体上に構成又は符号化された、ソフトウェア、符号、命令、及び/又はその他のデータ(例えば、データ構造)として、或いは、特定用途向け集積回路(ASIC)等として提供される。ソフトウェアもしくはファームウェア又はその他のそのような構成は、コンピュータ化されたデバイス上にインストールされて、そうしたコンピュータ化されたデバイスに、本願で説明される技法を行わせてよい。
【0029】
従って、本願における実施形態は、本願で説明されるような動作をサポートする方法、システム、コンピュータプログラム製品等を対象とする。
【0030】
本願における一実施形態は、そこに記憶された命令を有するコンピュータ読出し可能記憶媒体及び/又はシステムを含む。命令は、コンピュータプロセッサハードウェアによって実行される場合、コンピュータプロセッサハードウェアに、ダイアフラムポンプのチャンバ内に流体を引き込ませ、ダイアフラムポンプのチャンバにおける流体を、下流に、流体導管を介して容積式ポンプに出力するように、ダイアフラムポンプのチャンバに圧力を印加させ、チャンバへの圧力の印加及びチャンバにおける流体を下流に出力する間、容積式ポンプからレシピエントに流体を注入するように容積式ポンプを作動させる。
【0031】
上記の動作の順番は、理解しやすいように付けられている。本願で説明される処理ステップは任意の適切な順番で行われてよいことに留意されたい。
【0032】
本開示の他の実施形態が、上記で概説され以下でより詳細に開示される動作のいずれかを行うように、ソフトウェアプログラム及び/又はそれぞれのハードウェアを含む。
【0033】
また、本願で説明されるようなシステム、方法、装置、コンピュータ読出し可能記憶媒体上の命令等が、ソフトウェアプログラム、ファームウェアとして、ソフトウェア、ハードウェア及び/又はファームウェアの混成物として、又は、プロセッサ内もしくはオペレーティングシステム内もしくはソフトウェアアプリケーション内などのハードウェア単体として厳密に具現化され得ることを理解すべきである。
【0034】
本願で説明されるように、本願における技法は、任意の適切な対象のレシピエントに対する流体の送出における使用に良好に適している。しかし、本願における実施形態がそのような応用例における使用に限定されないこと、及び、本願で説明される技法が他の応用例にも良好に適していることに留意すべきである。
【0035】
また、本願における様々な特徴、技法、構成等の各々が、本開示の様々な場所で説明されるであろうが、適切であれば、概念の各々が、任意選択で、互いとは別個に、又は、互いと組み合わせて実行されてよいことに留意されたい。従って、本願において説明される1つ又は複数の本発明は、多くの様々な方法で具現化及び理解され得る。
【0036】
また、本願における実施形態のこの前置きの説明は、本開示又は特許請求の範囲の発明の一つ一つの実施形態を、及び/又は、斬新的な新規的側面を、目的をもって具体化するものではないことに留意されたい。むしろ、この簡潔な説明は、単に、一般的な実施形態及び従来の技法に勝る新規性の対応する点を表す。本発明の付加的な詳細及び/又は可能な観点(置換)に関して、読み手は、以下でさらに説明される、本開示の詳細な説明部分及び対応する図面に導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本願における実施形態に従った流体送出システムを図示する例示の図である。
【
図2】本願における実施形態に従った、それぞれのレシピエントに流体を送出するためのダイアフラムポンプ及び容積式ポンプを実装する例示の図である。
【
図3】本願における実施形態に従った、それぞれの流体源からダイアフラムポンプのチャンバ内に流体を引き込むことを図示する例示の図である。
【
図4】本願における実施形態に従った、それぞれの下流の容積式ポンプに流体を運ぶため、ダイアフラムポンプのチャンバへの正圧の印加を図示する例示の図である。
【
図5】本願における実施形態に従った、流体(ダイアフラムポンプから受け取られる)を、下流のレシピエントに送出するための、機械ポンプ要素の動きを図示する例示の図である。
【
図6】本願における実施形態に従った、複数のポンプサイクルと関連するタイミングウィンドー及び各サイクル内の複数の測定ウィンドーを図示する例示のタイミング図である。
【
図7】本願における実施形態に従った、それぞれのダイアフラムポンプによって送出される流体の計算された流体流量率に基づくそれぞれの容積式ポンプの制御を図示する例示の図である。
【
図8】本願における実施形態に従った、ダイアフラムポンプと容積式ポンプとの組み合わせを用いて、それぞれのレシピエントに流体を送出する方法を図示する例示の図である。
【
図9】本願における実施形態に従った、流体測定サイクルの間、推定される気体温度の変化を図示する例示の図である。
【
図10A】本願における実施形態に従った、対象のレシピエントに流体を送出するための、経時的な、ダイアフラムポンプへの異なる圧力の印加を図示する例示のタイミング図である。
【
図10B】本願における実施形態に従った、対象のレシピエントに流体を送出するために、経時的な、ダイアフラムポンプへの異なる圧力の印加を図示する例示のタイミング図である。
【
図11】本願における実施形態に従った、ダイアフラムポンプへの正圧の印加の一時的終了又は低減、及び、気体温度の推定を図示する例示的タイミング図である。
【
図12】本願における実施形態に従った、機能性の任意のものを実行する例示のコンピュータアーキテクチャを図示する図である。
【
図13】本願における実施形態に従った、流れ制御測定及び管理を促進する方法を図示する例示の図である。
【
図14】本願における実施形態に従った、流れ制御測定及び管理を促進する方法を図示する例示の図である。
【
図15】本願における実施形態に従った、流れ制御測定及び管理を促進する方法を図示する例示の図である。
【0038】
本発明の前述及びその他の目的、特徴、及び利点が、添付の図面に示されるような、本願における好ましい実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかとなろう。添付の図面において、同様の参照文字は、異なる図面を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも等倍ではなく、実施形態、原則、概念等を図示することに重きが置かれている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
前述したように、一実施形態において、流体送出装置が、コントローラハードウェア、ダイアフラムポンプ、容積式ポンプ、及び、ダイアフラムポンプと容積式ポンプとの間に延在する流体導管を含む。動作、及び、下流のレシピエントに流体を送出する間、コントローラハードウェアは、ダイアフラムポンプのチャンバ内に流体を引き込む。コントローラハードウェアは、ダイアフラムポンプのチャンバにおける流体を、下流に、流体導管を介して容積式ポンプに出力するように、ダイアフラムポンプのチャンバに圧力を印加する。チャンバへの圧力の印加、及び、チャンバにおける流体を下流に容積式ポンプに出力する間、コントローラハードウェアは、セグメントにおける流体を、容積式ポンプから下流のレシピエントに注入するように、容積式ポンプを作動させる。
【0040】
次に、より具体的には、
図1は、本願における実施形態に従った流体送出システムを図示する例示の図である。
【0041】
図示されるように、流体送出環境91は、流体送出システム100を含む。流体送出システム100は、レシピエント108への送出のための流体を溜める流体源120-1を含む。
【0042】
一実施形態において、カセット104は、流体送出システム100に関連する流体送出デバイス101のハウジングのキャビティ内に挿入される使い捨てカートリッジである。送出の間、流体源120-1からの流体は、カセット104、チューブ103、及び以下で更に説明されるようなその対応する構成要素を含む使い捨てチューブセットに接触することを制限される。異なる患者に流体を送出するとき、介護者は、新しいカセットを流体送出システム100のキャビティ内に挿入する。この新しいカセットは、新しい(無菌の)チューブの対応するセットを含む。
【0043】
このように、流体送出システム100は、洗浄される必要なく多くの患者に用いることができ、送出される各流体のために新しいカセットが用いられる。
【0044】
上述のように、動作の間、流体送出システム100のコントローラ140は、源120-1からレシピエント108(患者又はその他の適切な対象など)への流体の送出を制御する。チューブ105-1(流体導管)は、流体源120-1からカセット104に流体を運ぶ。チューブ105-3は、カセット104からレシピエント108に流体を運ぶ。
【0045】
コントローラ140は、流体源120-1から受け取られる流体を、チューブ105-3を介してレシピエント108に送出するように、カセット104における1つ又は複数の構成要素を制御する。
【0046】
図2は、本願における実施形態に従った、それぞれのレシピエントに流体を送出するためにダイアフラムポンプ及び容積式ポンプを実装する例示の図である。
【0047】
より具体的には、1つ又は複数の実施形態によれば、流体送出システム(装置、デバイス等)は、コントローラ140(ハードウェア及び/又はソフトウェア)、ダイアフラムポンプチャンバ130、容積式ポンプ184(例えば、回転ぜん動ポンプ、線形ぜん動ポンプ、回転ローブポンプ、プログレッシブキャビティポンプ、回転ギアポンプ、ピストンポンプ、ダイアフラムポンプ、スクリューポンプ、ギアポンプ、油圧ポンプ、回転羽根ポンプ、ロープポンプ、可撓性の渦巻きポンプ等)、及び、ダイアフラムポンプ130と、容積式ポンプ184を介してレシピエント108との間を延在する流体導管を含む。下流のレシピエント108に流体を送出する動作の間、コントローラ140は、初期的に、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1内に、(例えば、チャンバ130-2に印加される負の気体圧力を介して)流体を引き込む。
【0048】
一実施形態において、容積式ポンプは、非ニューマチック制御ポンプ(例えば、回転ぜん動流体ポンプ、線形ぜん動ポンプ、回転ローブポンプ、プログレッシブキャビティポンプ、回転ギアポンプ、ピストンポンプ、スクリューポンプ、ギアポンプ、回転羽根ポンプ、ロープポンプ、可撓性の渦巻きポンプ等)である。ダイアフラムポンプ130は、ニューマチックに駆動され、コントローラが、本願で説明されるような流量率を計算するのを可能にする。
【0049】
更なる実施形態によれば、容積式ポンプ184は、別のダイアフラムポンプ(すなわち、ニューマチックに駆動されるポンプ)であってよい。本願でさらに説明されるように、流体源120-1からの流体でチャンバ130-1を充填することに続いて、コントローラ140は、(ダイアフラムポンプ130の)チャンバ130-1における流体を、下流に、流体導管を介して容積式ポンプ184に出力するように、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1に(例えば、チャンバ130-2に印加される負の気体圧力を介して)圧力を印加する。
【0050】
一実施形態において、容積式ポンプ184はぜん動流体ポンプである。図示されるように、流体送出システム100の流体導管のセグメント1110は、容積式ポンプ184によって駆動される弾性的に変形可能な導管(例えば、ゴム、プラスチック等の任意の適切な材料製)である。(チャンバ130-2を経時的により多くの気体で充填することを介した)チャンバ130-1への正の(気体)圧力の印加、及び、チャンバ130-1における流体を、下流に、容積式ポンプ184に出力する間、コントローラ140は、機械ポンプ要素186-1(例えば、ローラーぜん動ポンプ要素、非ニューマチックポンプ要素、又は、流体で充填されたセグメント1110を移動可能に圧縮するためのその他の適切な要素)の下流に、セグメント1110の部分に配置される流体を、下流のレシピエント108に向かう流体導管に沿って注入するように、容積式ポンプ184を作動させる。
【0051】
従って、一実施形態において、ダイアフラムポンプ130は、弾性的に変形可能な導管(セグメント1110)に流体を送出し、コントローラ140は、レシピエント108に向かう下流方向に、セグメント1110における流体を送出するように、(
図2において下流方向の)スイープ(sweep、なでるように動くまたは掃引)の動きにおいて容積式ポンプ184及び対応する機械ポンプ要素186-1を制御する。
【0052】
より具体的には、図示されるように、一実施形態において、機械ポンプ要素186-1は、位置#1で、弾性的に変形可能な導管と接触し、当該導管を挟む(及び/又はふさぐ)。挟むことによって、機械ポンプ要素186-1は、ダイアフラムポンプ130から、位置#1のさらに下流に、機械ポンプ要素186-1の下流のセグメント1110の部分への流体の流れをブロックする。
【0053】
弾性的に変形可能な導管に対する機械ポンプ要素186-1のスイーピングする物理的接触(sweeping physical contact)は、弾性的に変形可能な導管における流体を、さらに下流に、レシピエント108に、制御可能に運ぶ。従って、一実施形態において、機械ポンプ要素186-1は複数の動作を行い、こうした動作には、i)ダイアフラムポンプ130からセグメント1110(弾性的に変形可能な導管)への、機械ポンプ要素186-1の上流で受け取られる流体の流れを制限すること(又は、抑制すること)、及び、ii)容積式ポンプ184を介して、レシピエント108(例えば、人、動物、機械等)に対する、機械ポンプ要素186-1の下流のセグメント(弾性的に変形可能な導管)における流体の送出を制御することが含まれる。
【0054】
更なる実施形態によれば、機械ポンプ要素186-1の上流の流体の圧力(圧力#1)は、機械ポンプ要素186-1の下流の流体の圧力(圧力#2)とは異なる。より具体的には、一実施形態において、流体を下流にダイアフラムポンプ130から容積式ポンプ184に注入する間、機械ポンプ要素186-1(これは、流体を運ぶ流体導管を挟むこと/ふさぐことを介して、流体の流れをブロックする)の上流の流体導管の第1の部分における流体の圧力#1は、機械ポンプ要素186-1の下流の流体導管の第2の部分における流体の圧力(圧力#2)より大きい。
【0055】
逆に、注入する幾つかの例において、レシピエント108はチューブ105-3を介して送出される流体に背圧を印加し得る。そのような例において、機械ポンプ要素186-1(これは、流体を運ぶ流体導管を挟むこと/ふさぐことを介して、流体の流れをブロックする)の上流の流体導管のそれぞれの部分における流体の圧力#1は、機械ポンプ要素186‐1の下流の流体導管の第2の部分における流体の圧力(圧力#2)より小さい。例えば、容積式ポンプ184が流体を注入する一方で、レシピエント108は、チューブ105-3を介して流体経路のそれぞれのアウトレットから流体を受け取るように背圧を提供し得る。
【0056】
別の実施形態によれば、本願において説明されるような流体送出装置のコントローラ140は、さらに、後続の
図9~
図15及び文章において説明されるような技法を用いて、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1から、下流に、流体導管のセグメントに放出される流体のレートを(任意の適切なやり方で)測定するように動作可能である。そのような例において、コントローラ140は、複数の測定ウィンドーの各々(
図10Aにおける測定D、測定E、測定F、測定G、及び測定Hとして示す)にわたって、チャンバ130-1から放出された流体の測定されたレートを用いる。機械ポンプ要素186-1を動かすレートを制御して所望の流量率でレシピエントに流体を送出するために、それぞれの測定ウィンドーの例が
図11に示される。そのような実施形態において、ダイアフラムポンプ130は、容積式ポンプ184によってそれぞれのレシピエント108に送出される流体を測定する正確な方法として機能する。
【0057】
容積式ポンプ184が、セグメント1110における流体を、下流に、レシピエント108に送出するのと実質的に同様のレートで、ダイアフラムポンプ130が流体をセグメント1110に送出するように、ダイアフラムポンプ130(ニューマチックポンプ)及び容積式ポンプ184を動作させるレートが同期され得ることに留意されたい。
【0058】
以下で更に説明されるように、ダイアフラムポンプ130を介する流体の流体流量率が、理想気体の法則に基づいた、当業者に知られた従来のアルゴリズムを用いて測定され得ることに留意されたい。例えば、一実施形態において、コントローラ140はさらに、複数の充填サイクルの各々にわたって、共通点なく位置される流体源コンテナ(流体源120-1など)から、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1内に、複数の充填時間の各々において、或る量の流体を周期的に受け取る(引き込む)ように動作可能である。各充填の後、前述したように、コントローラ140は、チャンバ130-2を気体で充填し、これが、正圧をチャンバ130‐1に印加する。前述したように、メンブレン130-1は、チャンバ130‐1における流体を、チャンバ130-2における気体から隔離する。
【0059】
一実施形態において、流体送出システム100は、バルブ125-2を含む。バルブ125-2の開閉設定は、コントローラ140により生成される信号V9によって制御される。バルブ125-2は任意選択であることに留意されたい。すなわち、容積式ポンプ184の機械ポンプ要素186の少なくとも1つは、セグメント1110を挟み又はふさぎ、任意又は全ての時間で、セグメント1110を介する流体の流れを妨げるように構成され得る。
【0060】
図3は、本願における実施形態に従った、それぞれの流体源からダイアフラムポンプのチャンバ内への流体の引き込みを図示する例示の図である。
【0061】
前述したように、コントローラ140は、バルブの状態を、開いた位置又は閉じた位置のいずれかに制御するために、それぞれの制御信号を生成する。一実施形態において、バルブ125-3(本実施形態において、制御可能な完全に開いた又は完全に閉じたバルブ)が開いている一方で、バルブ160-5は開いており、バルブ160-1が開いている一方、バルブ160-4及び160-3は閉じており、コントローラ140は、負圧を、(負のタンク170-2を介して)ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2に印加する。これが、チャンバ130-2から気体を排気させ、メンブレン127に、流体源120-1(流体コンテナ)からバルブ125-3を介してチャンバ130-1内に流体を引き込ませる。
【0062】
所望であれば、任意の下流の流体の流れがチャンバ130-1内へ逆方向に押されることを、容積式ポンプ184の機械ポンプ要素186-1(又は一般に容積式ポンプ184それ自体)がブロックする状況の間、コントローラ140は、流体源120-1からダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1内に流体を引き込む。言い換えれば、容積式ポンプ184の機械ポンプ要素186-1は、
図3に示されるような閉じた位置におけるバルブとして働く。このように、弾性的に変形可能な導管の更なる下流からチャンバ130-1内に流体を引き込むのではなく、チャンバ130-2に対する負圧の印加によって、ダイアフラムポンプ130が、上流の流体源120-1からチャンバ130-1内に流体のみを引き込む。前述したように、
図2におけるバルブ125-2は任意選択である。
【0063】
図4は、本願における実施形態に従った、それぞれの下流の容積式ポンプに流体を運ぶために、ダイアフラムポンプのチャンバへの正圧の印加を図示する例示の図である。
【0064】
前述したように、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1内に流体を引き込むことに続いて、コントローラ140は、バルブ125-3及びバルブ160-1を(それぞれの制御信号V8及びV1の生成を介して)閉じる。コントローラ140は、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2に正の気体圧力を印加して、チャンバ130-1における流体を、下流に、容積式ポンプ184に送出するように、バルブ160-5及びバルブ160-4を(それぞれの制御信号V5及びV4の生成を介して)開く。
【0065】
図示されるように、チャンバ130-1における流体に正圧を印加する間、容積式ポンプ184の機械ポンプ要素186-1は、ダイアフラムポンプ130からの流体が、下流に、セグメント1110内に流れることを可能するレートを制御する。前述したように、機械ポンプ要素186-1の上流のセグメント1110において受け取られる流体の量を制御することに加えて、(下流方向の)機械ポンプ要素186-1の動きが、セグメント1110におけるそれぞれの流体をレシピエント108に送出するレートを制御する。
【0066】
前述したように、容積式ポンプ184が、セグメント1110における流体を、下流に、レシピエント108に送出するのと実質的に同じレートで、ダイアフラムポンプ130が流体をセグメント1110に送出するように、コントローラ140は、ダイアフラムポンプの流体流量率及び容積式ポンプ184の流体流量率を同期的に動作させるように構成され得ることに留意されたい。
【0067】
図5は、本願における実施形態に従った、ダイアフラムポンプから流体を受け取る間、機械ポンプ要素の連続した動きを図示する例示の図である。
【0068】
図示されるように、機械ポンプ要素186-1がセグメント1110の端部に達するとき、次の機械ポンプ要素186-2が、セグメント1110を挟む又はふさぐためにセグメント1110の開始位置に接触するように、容積式ポンプ184(ぜん動流体ポンプなど)は、それぞれの軸(機械ポンプ要素186の中心)の周りを経時的に回転し続けるように構成され得る。これが、容積式ポンプ184の機械ポンプ要素186-1を、セグメント1110の開始位置に設定する。これによって、セグメント1110に沿って機械ポンプ要素186-2をスイープする新しいサイクルが開始し、それぞれのレシピエント108に流体が送出される。
【0069】
前述したように、一実施形態において、機械ポンプ要素186の少なくとも1つは、セグメント1110からダイアフラムポンプ130への流体の逆流を防止するように、セグメント1110を常に、例えば、挟み、閉塞し、圧縮し、又は、ふさぐ。そのため、バルブ125-2を必要としなくてよい。
【0070】
下流ポンプセグメント1110が、決して開かれず、ダイアフラムポンプ130からレシピエント108への流体の自由な流れを可能にしないのであれば、容積式ポンプ184は、任意のタイプのぜん動メカニズム(回転、線形、ピストン等)であってよいことに留意されたい。言い換えれば、一実施形態において、容積式ポンプ又はその対応する要素(例えば、機械ポンプ要素186-1、186-2等)は、ダイアフラムポンプ130から、下流に、レシピエント108への流体の流れを常に閉塞するように構成され得る。そのような例において、容積式ポンプ184は、常に、レシピエント108に対する流体の流れを制御する。
【0071】
チャンバ130-1内に引き込まれる流体の体積の比率は、セグメント1110における流体の体積と実質的に同じであってよく、又は、異なってもよいことに留意されたい。従って、チャンバ130-1に溜められた流体の全てを空にするためには、i)セグメント1110に沿って機械ポンプ要素186-1をスイープする単一サイクル、ii)セグメント1110に沿って機械ポンプ要素186-1をスイープする単一サイクルより少ないサイクル、又は、iii)セグメント1110に沿って機械ポンプ要素をスイープする複数のサイクルが、必要とされ得る。
【0072】
さらに、所望であれば、機械ポンプ要素186の連続的な流れ及び動きの間、コントローラ140が、チャンバ130-1の再充填を不定期又は周期的に開始しても、流体の連続的な流れをそれぞれのレシピエント108に提供する連続的なやり方で容積式ポンプ184が動作され得ることに留意されたい。あるいは、所望であれば、コントローラ140は、チャンバ130-1が流体源120-1からの流体で再充填される状況の間、容積式ポンプ184の動作を中断するように構成されてもよい。
【0073】
更なる実施形態によれば、コントローラ140は、容積式ポンプ184と、セグメント1110と接触した及び対応する1つ又は複数のポンプ要素(ぜん動ポンプ要素など)との動きを停止する(終わらせる)ように構成され得る。ポンプ要素が停止される一方で、コントローラ140は、前述したようなやり方で、ダイアフラムポンプに残っている流体のそれぞれの部分を測定するように、ダイアフラムポンプのチャンバに印加される圧力を一時的に調整する。このように、所望であれば、本願における実施形態は、チャンバ130-1に残っている流体の量が、それぞれのサンプルウィンドーにおいて測定されている間、容積式ポンプ184からレシピエント108への流体の流れを中断するように、容積式ポンプメカニズムを休止することを含み得る。
【0074】
図6は、本願における実施形態に従った各ポンプサイクル内の複数の測定ウィンドーを示す例示のタイミング図である。
【0075】
本願における実施形態によれば、時間T51における充填#1の間、前述したようなやり方で、コントローラ140は、チャンバ130-2及びチャンバ130-1に負圧を印加し、一方で、バルブ125-3は開いており、機械ポンプ要素186-1は流体の流れをふさいで、チャンバ130-1に対するセグメント1110における流体の逆流を防止する。充填#2の、チャンバ130-1を充填する次の連続した時間の間、コントローラ140は、チャンバ130-2に再び負圧を印加し、一方で、バルブV8は開いており、機械ポンプ要素186-1は、チャンバ130-1に対するセグメント1110における流体の逆流を防止する。
【0076】
充填#1を充填する第1の時間と、次の充填する充填#2との間の複数の測定時間の各々において、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1における流体を測定するために、コントローラ140は、ウィンドー(流体駆動ウィンドーFDW1、FDW2、FDW3、FDW4等)間で、チャンバ130-2に対する正圧の印加、及び、印加される正圧の大きさを一時的に調整する。これは、充填#1と充填#2の充填時間の間で生じる。
【0077】
チャンバ130-2に対する圧力の印加を遮ることは(一方で、信号V8によって制御されるバルブ125-3は閉じられる)、それぞれの時間T61、T62、T63、T64、T65等で、チャンバ130-1に残っている流体の量を測定するために、複数のウィンドー(D1、E1、F1、G1、H1等)の各々において、チャンバ130-2からの気体圧力を一時的に変化させることを含み得る。
【0078】
コントローラ140は、チャンバ130-1から、下流に、セグメント1110に流体を送出するレートを導き出すように、複数のサンプル時間で、チャンバ130-1の流体の測定された量を用いる。例えば、チャンバは、0.5ml(ミリリットル)の流体の流れである充填#1を維持し得る。時間T61の近辺のウィンドーD1における測定が、チャンバにおいて0.5mlを示し、時間T62近辺のウィンドーD2における測定が、チャンバにおいて0.4mlを示し、時間T63近辺のウィンドーD3における測定が、チャンバにおいて0.3mlを示し、時間T64近辺のウィンドーD4における測定が、チャンバにおいて0.2mlを示す等と想定されたい。測定ウィンドーが4秒離間される場合、コントローラ140は、ダイアフラムポンプ184を介する流れのレートを、0.3ml/12秒=毎時90ミリリットルであると判定する。
【0079】
より具体的な実施形態によれば、コントローラ140はさらに、容積式ポンプ184と、流体導管のセグメント1110と接触した機械ポンプ要素186-1とを、(例えば、充填#1、充填#2等の間でさえ)セグメント1110の長さに沿って継続的に動くように制御して、それぞれの送出ウィンドーにおいて、セグメント1110からレシピエント108への流体の対応する連続的な流れを提供する。
【0080】
前述したように、送出ウィンドー内の圧力の印加を遮る複数の測定ウィンドー(サイクル#1のためのD1、E1、F1、G1、H1、サイクル#2のためのD2、E2、F2、G2、H2等)の各々の間、コントローラ140は、ダイアフラムポンプ130に残っている流体のそれぞれの部分を測定する。チャンバ130-1における流体の量を測定することについての詳細は、
図10Aにおいて及び本明細書全体の別の箇所で説明されることに、やはり留意されたい。
【0081】
容積式ポンプ184によってレシピエント108に送出される流体のレートを計算するために、コントローラ140は、複数の測定ウィンドー(サイクル#1のためのD1、E1、F1、G1、H1、サイクル#2のためのD2、E2、F2、G2、H2等)の間に測定される、ダイアフラムポンプ130に残っている流体のそれぞれの測定された部分を利用する。上記の例において、前述したように、コントローラ140は、ダイアフラムポンプ184を介する流れのレートを、0.3ml/12秒=毎時90ミリリットルであると判定する。これは、容積式ポンプ184によって送出される流体のレートが毎時90ミリリットルであることを示す。従って、コントローラ140は、容積式ポンプ184によってレシピエント108に送出される流体のレートを計算するために、複数の測定ウィンドーの間に測定される、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1に残っている流体のそれぞれの測定された部分を利用する。
【0082】
以下で更に説明されるように、容積式ポンプ184が、所望のレートでレシピエントに流体を送出するように、コントローラ140は、測定された流量率を用いて容積式ポンプ184の動作を制御するように構成され得る。例えば、以下で更に説明されるように、経時的なチャンバ130-1の測定によって示される、流体を送出する流量率が、所望のレートより低い場合、コントローラ140は、レシピエントに流体を送出する容積式ポンプ184のレートを増加させる。一実施形態において、コントローラ140は、レシピエント108に対する流体の流れのレートを増加させるために、セグメント1110に沿って機械ポンプ要素186-1を動かすレートを増加させる。逆に、経時的なチャンバ130-1の測定によって示される、流体を送出する流量率が、所望のレートより高い場合、コントローラ140は、レシピエント108に流体を送出する容積式ポンプ184のレートを低減させる。一実施形態において、コントローラ140は、レシピエント108に対する流体の流れのレートを低減させるように、セグメント1110に沿って機械ポンプ要素186-1を動かすレートを低減させる。
【0083】
図7は、本願における実施形態に従った、それぞれのダイアフラムポンプによって送出される流体の計算された流体流量率に基づくそれぞれの容積式ポンプの制御を図示する例示の図である。
【0084】
前述したように、大きな可能な範囲にわたって精密な流体の流れ制御を提供するために、コントローラ140は、複数のサンプル時間(例えば、サイクル#1のための測定ウィンドーD1、E1、F1、G1、H1、サイクル#2のための測定ウィンドーD2、E2、F2、G2、H2等)の各々にわたって、チャンバ130-1における流体のそれぞれの残りの部分の測定に基づいて、レシピエント108に送出される流体の流量率を測定する。
【0085】
一実施形態において、図示されるように、コントローラ140は、ダイアフラムポンプインターフェース1640を含む。前述したようなやり方(例えば、時間ウィンドー内の複数の測定ウィンドーを用いる)で、ダイアフラムポンプインターフェース1640は、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1から、下流に、流体導管のセグメント111に放出される流体の流量率を測定するように動作可能である。上述のように、流量率を測定する技法は、
図9~
図15において説明される。動作の間、ダイアフラムポンプインターフェース1640は、ダイアフラムポンプ130から、下流に、容積式ポンプ184までの計算された流体流量率を示す信号1630を生成する。ダイアフラムポンプ130を介する流体の流量率は、概ね、(経時的にわずかなばらつきはあるが)容積式ポンプ184が、下流に、レシピエント108に流体を送出するのと同じ流量率である。
【0086】
更なる実施形態によれば、コントローラ140は、流体の測定された流量率(複数のサンプル時間T61、T62、T63、T64等にわたって、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1におけるそれぞれの流体の残りの部分を測定することから検出される)を利用して、流体導管のセグメント1110に沿って機械ポンプ要素186を動かすスイープレートを制御(調整)し、所望の流量率設定(例えば、使用者が選択したレート)によって特定される、容積式ポンプ(及び対応する弾性的に変形可能な導管)からレシピエント108までの流体の送出を提供する。
【0087】
例えば、差異論理1620は、信号1630によって示される計算された流体流量率(ダイアフラムポンプ130から測定される)と、ターゲット流量率1610との間の差を示す、それぞれの流れ誤差信号1660を生成する。
【0088】
ダイアフラムポンプ130を介して流れる流体の測定(経時的に測定される)が、所望の流量率設定より高い場合、正の流れ誤差信号1660となり、コントローラ140の容積式ポンプ速度コントローラ1650は、セグメント1110に沿って機械ポンプ要素186-1をスイープするレートを低減することによって、流体を送出する容積式ポンプ184の現在のレートを低減させる。逆に、コントローラ140によって検出される、ダイアフラムポンプ130を介して流れる流体の測定が所望の流量率設定より低い場合、負の流れ誤差信号1660となり、コントローラ140のポンプ速度コントローラ1650は、機械ポンプ要素186-1をスイープするレート増加させることによって、レシピエントに流体を送出する容積式ポンプ184のレートを増加させる。
【0089】
このように、コントローラ140は、流体の流れをターゲット流量率1610に制御するように、流れ誤差信号1660を用いる。従って、一実施形態において、ダイアフラムポンプ130を介する流体の流れの測定されたレートは、大きな範囲にわたって非常に正確な流体の流れを提供するように下流のぜん動ポンプ184を制御するための基礎として用いられ得る。
【0090】
更なる例として、時間T61と時間T64との間、コントローラ140が、機械ポンプ要素186-1を、上記のように毎時90ミリリットルの流量率となる、毎秒2.0ミリメートルの線形レートでセグメント1110に沿って動くように制御していると想定されたい。ターゲット流量率が毎時108ミリリットルの場合、誤差信号1660は毎時-18ミリリットルを示す。毎時108ミリリットルの適切なレートで流体を送出するために、コントローラ140は、機械ポンプ要素186-1を動かすレートを、セグメント1110に沿って、毎秒2.4ミリメートルのレートに増加させる。
【0091】
前述したように、(流体送出レートを測定するための)ダイアフラムポンプ130と、(レシピエント108に対する流体の物理的なポンピングを制御するための)容積式ポンプ184とを含む固有の流体送出装置は、従来の技法と比較して、流体の有利な送出を提供する。例えば、本願において説明されるような流体送出装置及び対応する方法は、従来の技法に勝る以下の利点、すなわち、i)所望の送出流量率設定ポイントに達するための迅速な開始及び終了時間、ii)毎時0.1ミリリットル又はそれ以下から、毎時1200ミリリットル又はそれ以上までの流量率を制御するための広いダイナミックレンジ、iii)インレット又はアウトレット圧力変化に影響されない流量率制御、iv)流体特性(例えば粘度)の大きな変動に影響されない流量率制御等の、1つ又は複数を提供する。
【0092】
また、本願で説明されるようなダイアフラムポンプへの正圧の印加は、容積式ポンプに流体を与え、結果として、流れの連続性が良好になる。また、ダイアフラムポンプは、負圧を用いて流体を引き込むように動作可能である。そのような例において、ダイアフラムポンプは、ダイアフラムポンプよりも低い高さに配置されるコンテナ源から流体を引き込むことができる。
【0093】
図8は、本願における実施形態に従った、ダイアフラムポンプとぜん動ポンプとの組み合わせを用いて、それぞれのレシピエントに流体を送出する方法を図示する例示の図である。
【0094】
フローチャート800の処理動作810において、コントローラ140(ハードウェア及び/又はソフトウェアの実行される命令)は、流体源120-1からダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1内に流体を引き込む。
【0095】
処理動作820において、コントローラ140は、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1における流体を、下流に、流体導管を介して容積式ポンプ184に出力するように、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1に圧力を印加する。
【0096】
処理動作830において、チャンバ130-1における流体に圧力を印加し、及び、チャンバから、下流に、容積式ポンプ184に流体を出力する間、コントローラ140は、容積式ポンプ184からレシピエント108に流体を注入するように、容積式ポンプ184の動作を作動させる。
【0097】
制御システム
一実施形態において、既知の参照体積C1(チャンバ150)を用いて、既知でない体積C2(ポンプチャンバ130-2)の体積が、理想気体の法則を用いて測定され得、
PV=nRT
であり、ここで、
P=圧力
V=体積
n=分子の数
R=気体定数
T=温度
である。
【0098】
基本的な流体の流れ測定は、複数の地点で適時に、C2の瞬間の体積を計算することを含む。経時的な体積の変化は、そのような時間にわたる平均の流量率であり、
である。ここで、
Q=流量率
t=それぞれの体積測定が要する時間
C2=ポンプチャンバ130-2の体積
である。
【0099】
体積測定は、C1(チャンバ150)及び隔離バルブ160-5を利用する。体積測定サイクルは以下の通りである。
1.流体バルブ125-3及び125-2(任意選択)が閉じられ、チャンバ内への又はチャンバの外への流体の流れを終わらせ、一時的に、チャンバ130-1の体積を一定に保つ。その結果、チャンバ130-2(C2)における空気量も測定の間一定となる。
2.空気バルブ160-5は閉じられ、チャンバ130-2(C2)及びチャンバ150(C1)を隔離する。また、バルブ160-4及び160-1も閉じられ、さらにこれらのチャンバを隔離する。
3.空気バルブ160-3が開かれ、チャンバ150を大気圧に対して通気する。
4.空気バルブ160-3が再び閉じられ、チャンバ150を隔離する。
5.この地点で適時に、センサ135-5の圧力読み取り値(リーディング)が記録され(P2)、センサ135-3の圧力読み取り値が記録される(P1)。これらの2つの圧力値が、グラフ610の時間t1で示される。
6.次に、バルブ160-5が開かれ、チャンバ130-2(C2)とチャンバ150(C1)を接続する。
7.グラフ610の時間t2として示した時間のこの地点で、統合された圧力(Pmerge)が、圧力センサ135-5及び135-3によって記録される。チャンバはこの時点で接続されているので、センサ135-5及び135-3の各々による圧力は同じである。
【0100】
このサイクルの間記録される圧力測定は、チャンバ130-2(C2)の既知でない体積を計算するために、以下の式において用いられる。
P1=チャンバ150(C2)の圧力
P2=チャンバ130-2(C1)の圧力
V1=チャンバ150(C2)の体積
V2=チャンバ130-2(C1)の体積
T1=チャンバ150(C2)の温度
T2=チャンバ130-2(C1)の温度
チャンバ150(C2)に関して、
であり、
チャンバ130-2(C1)に関して、
である。
チャンバが隔離される時間t1で、
である。
【0101】
既に述べたように、V2によって示されるチャンバ130-2(C2)の体積は、既知でない。V2を測定するために、チャンバはバルブ160-5を介して接続され、気体の分子が、一方のチャンバから他方に移動される。
【0102】
チャンバが接続され、圧力が同じである時間t2で、
である。
【0103】
ここで、この場合のPmは、組み合わされたチャンバの統合された圧力であり、P1及びP2の圧力読み取り値は実質的に等しい。質量が保存され、この測定サイクルの間、両方のチャンバにおける気体の分子の総数は変化しないので、
として式が記され得る。
【0104】
この地点で、ボイルの法則を利用することによって式を簡略化することは一般的であり、システムの温度は、測定サイクルの間一定であると想定する。この想定に従って、式は、
PmV1+PmV2=P1V1+P2V2
に変形(reduce)される。
【0105】
チャンバ130-2(C2)の既知でない体積(V2)を解くために、
として式が記され得る。
【0106】
システムが一定温度であるという想定は、式を大幅に簡略化するが、既に説明したように、システムダイナミクスは過渡温度変化を引き起こし得、こうした温度変化は、体積計算誤差をもたらし得る誤った圧力読み取り値となることがある。より迅速な測定速度又は改善された正確性が必要とされる場合、一定温度の推定は適切でないことがある。所望であれば、推定された温度が、以下で更に説明されるような、より正確な流れ測定読み取り値を提供するために用いられ得る。
【0107】
気体が非常に低い質量を有するという理由で、例えば、熱電対、RTD等の容易に利用可能な温度センサ技術を用いて気体温度を素早く且つ正確に測定することは、不可能でないにしても、困難である。温度を用いて体積計算の正確性を改善するための唯一の実際的なやり方は、システム状態と、制御バルブ160-1~160-5及び流体バルブ125-3、125-2の操作によって誘発される動的変化との知識を用いて、気体の温度変化を推定することである。
【0108】
不連続な流体の流れを実装する測定アルゴリズム、及び/又は、流体の流れを計算するための推定された温度
レシピエント108への流体の流れを測定するために、従来の技法を用いることに対する代替策として、さらなる非限定的な例示の実施形態によって、コントローラ140は、理想気体の法則及び質量保存を考慮に入れるために、質量流体の流れをベースとした測定アルゴリズムを実装するように構成され得ることに留意されたい。式は、閉システムに対して成り立つ。
M
a1+M
b1=M
a2+M
b2 (式1)
Rは一定であり、そのため、式は以下に因数分解(factor down)される。
【0109】
本願で開示されるような温度の推定によって、流体の流れの素早い測定が可能となり、流体送出システム100(デバイス、ハードウェア等)及びコントローラ140が、システム状態がサイクルを通して一定であることを想定するのではなく、全面的なシステム状態(温度など)を考慮することによって、流体の流れ測定の間、流体の流れを停止することなく動作できる。
【0110】
より具体的には、一実施形態において、ダイアフラムポンプ130の流体チャンバ側(チャンバ130-1)における流体を、対象のレシピエント108に送出するために、適切な駆動圧力が、ダイアフラムポンプ130の駆動チャンバ側(チャンバ130-2など)に印加され得る。本願におけるさらなる実施形態は、体積確認を実施して、どれ程の流体が経時的にダイアフラムポンプ130の流体チャンバ130-1内にあるかを識別するために、送出サイクルの間、1つ又は複数の時間で、チャンバ130-2に印加される気体圧力の大きさを一時的に修正することを含み得る。
【0111】
一実施形態において、対象のレシピエントに注入される流体の流量率は、経時的な、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2における流体の体積の変化と等しい。
【0112】
チャンバ130-2に対する圧力の印加を修正する時間の間、本願における実施形態は、ダイアフラムポンプ130を介して、下流に、容積式ポンプ184に向かう流体の流量率を計算するとき、1つ又は複数のチャンバの急速な圧力変化に起因した断熱(adiabatic)加熱及び冷却によって引き起こされる気体の温度の推定される変化を考慮に入れることを含み得る。
【0113】
一実施形態において、質量バランス測定は、動いている(working)流体の温度に依存する。上述の必要とされる測定速度を仮定すると、気体は、測定サイクルの間、断熱加熱及び冷却を経験する。必要とされる時間枠において直接的に気体温度を(温度センサによって)測定することは、不可能でないにしても、実際的でない。それゆえ、温度推定器が、気体温度を予測するために用いられる。言い換えれば、本願で説明されるような1つ又は複数の体積における気体の温度は、素早く変化することがあるので、物理的温度センサは、温度のそれぞれの変化を検出することができない。
【0114】
図9は、本願における実施形態に従った、送出サイクルの間、異なるリソースにおける気体の温度を示す1つの例示の図である。本願において説明されるように、1つ又は複数の温度は、以下でより詳細に説明されるような既知のシステム情報に基づいて推定され得る。
【0115】
注入システムの別の要件は、連続的な流れを維持することであろう。一実施形態において、本願で説明されるような流体送出システムは、流量率測定の間、ポンピング(例えば、容積式ポンプ184を介して流体を注入すること)を停止しない。このように、本願における実施形態は、流体送出の連続的又は実質的に連続的な流れを、それぞれの対象のレシピエントに提供することを含み得る。
【0116】
測定誤差を生じさせないために、体積測定サイクルは、例えばミリ秒台など、極めて迅速に行われ得る。本願における実施形態によれば、或る測定サイクルは、200ミリ秒より少ないものであり得る。また、ダイアフラムポンプのチャンバを流体で充填するなど、充填サイクルが、流れのばらつきを最小化するように、非常に迅速に行われ得る。
【0117】
気体が、上記の理由の全てのため、こうした高速で移動されるとき、理想気体の法則及びボイルの法則を簡略化するために典型的に用いられる等温推定は無効となる。
【0118】
具体的には、測定サイクルの間、気体が1つの一定温度であるという推定は、もはや当てはまらない。
【0119】
気体が、測定サイクルの間、断熱加熱及び冷却を経験することが観測される。前述したように、本願における実施形態は、これらの誤差を補償するために気体温度を推定することを含む。
【0120】
気体の断熱加熱及び冷却に起因した温度効果を説明するために、圧力と体積の関係が、
をもたらす。
【0121】
非限定的な例として、温度は、制御ループの各時間ステップで、システム状態変数を追跡することによって推定され得る。体積、流体導管のサイズ(流体導管において、流体は空気である)、及び、測定された圧力と組み合わされる熱伝達係数など、送出システムの物理的パラメータによって、システムは、次のエネルギー平衡式を用いて、ポンプサイクルの間、任意の地点で、気体体積の各々の推定された温度を計算することができる。
ここで、
V=体積
Cv=一定の体積での比熱
Cp=一定の圧力での比熱
T=温度
Q=質量の流れ
H=熱伝達係数
である。
【0122】
実施形態のより詳細な説明
1つの非限定的な例示の実施形態において、本願において説明されるような流体ポンピングシステムは、ニューマチックに駆動されるダイアフラム(例えば、ダイアフラムポンプ130)を中心とした、中間ポンピングチャンバ(「IPC、Intermediate Pumping Chanber」)であり、このIPCは、可撓性のダイアフラム(メンブレン127)によって二又に分岐される体積から構成される。IPCの一方の側は、流体システムのニューマチック部分に接続される。IPCの他方の側は、流体システムの油圧部分に接続される。前述したように、油圧ポンピングは、正圧及び負圧を、IPCのニューマチック側(チャンバ130-2)に交互に印加することによって達成され、それゆえ、ダイアフラム(メンブレン127)を前後に(又は内外に)動かす。
【0123】
図2を参照すると、前述したように、流体送出システム100のコントローラ140は、流体源120-1などの1つ又は複数の流体源から、下流に、容積式ポンプ184に、流体を精密に送出するように、使い捨てカセット104におけるダイアフラムポンプ130の動作を制御する。容積式ポンプ184は、流体を、それぞれのレシピエント108に注入する。
【0124】
一実施形態において、システムを介した液体の流れが、正のタンク170-1からの駆動圧力に対する調整によって制御される。この例示の実施形態において、流量率は、以下に示される周期的な体積計算を用いて測定され、それに応じて制御パラメータが調整されて、測定される流量率とターゲット流量率との間の誤差をゼロにする。
【0125】
ポンプサイクル概略
以下の実施形態において、流体源120-1からダイアフラムポンプ130内に流体を引き込み、ダイアフラムポンプ130に圧力を印加して、流体を、下流に、容積式ポンプ184のセグメント1110に送出する動きとして、ポンプサイクルが規定されることに留意されたい。具体的な非限定的な例示の実施形態によれば、或るポンプサイクルは、一つの極端な状態(例えば、「充填」)から別の極端な状態(例えば、「空(カラ)」)への、ダイアフラムポンプ130におけるメンブレン127の少なくとも部分的な動きとして規定され得る。
【0126】
図2に示されるように、また、
図3においてより具体的に示されるように、メンブレン127は、チャンバ130-1及びチャンバ130-2を含むように、ダイアフラムポンプ130を分割する。メンブレン127は、チャンバ130-1における流体がチャンバ130-2を通過すること、及びその逆を防止する。
【0127】
ダイアフラムポンプ130を、チャンバ130-1及びチャンバ130-2に分割するメンブレン127は、可撓性(弾性的に変形可能)である。負の(気体)圧力が、チャンバ130-2に印加されるとき、チャンバ130-1の体積は膨張し、流体を、流体源120-1から、開いたバルブ125-3を介して、チャンバ130-1内に引き込む。
【0128】
逆に、正圧がチャンバ130-2に印加されるとき(一方で、バルブ125-3は閉じられ、任意選択のバルブ125-2は開かれている)、チャンバ130-1の体積は低減し、流体を、チャンバ130-1から、下流に、容積式ポンプ184に排出する。
【0129】
容積式ポンプ184は、任意の適切なタイプのポンプデバイスであってよいことに再び留意されたい。
【0130】
チャンバ130-1及びチャンバ130-2の全体の体積又は容量は、メンブレン127の位置に関わらず実質的に一定である。チャンバ130-2における流体の体積を知ることに基づいて、チャンバ130-1の対応する体積を決定することできる。例えば、ダイアフラムポンプ130の全体の体積がVtotalであり、チャンバ130-2の体積がV2である場合、流体送出システム100は、概して、VtotalからV2を減算することによって、チャンバ130-1の体積を決定し得る。
【0131】
この例示の実施形態において、
図2において示されるように、温度センサ152は、チャンバ150(共通タンク)の温度(例えば、Tct)を測定し、以下のリソース(resource)、すなわち、チャンバ150、ポンプチャンバ130‐2、正のタンク170-1、負のタンク170-2等の1つ又は複数における気体の温度を推定するためのベースラインを提供する。
【0132】
以下で更に説明されるように、温度の推定は、ポンプチャンバ130-1におけるどれ程の流体が、導管経路138(例えば、ダイアフラムポンプ130から、バルブ125-2(任意選択)、流体導管セグメント1110、気体検出リソース110の組み合わせを介した、レシピエント108までの経路)を通じて、対象のレシピエント108に向かう方向に注入されたかについて、より正確な評価を可能にする。
【0133】
初期的に、流体源120-1からの流体でチャンバ130-1を充填するために、流体送出システム100のコントローラ140は、負圧又は陰圧をチャンバ130-2に印加する(一方で、バルブ125-2は閉じられており、及び/又は、容積式ポンプ184は、流体がダイアフラムポンプ130に逆流しないようにセグメント1110をふさぐ)。そのような時間において、ポンプチャンバ130-2は体積が減り、チャンバ130-1を、流体源120-1から、開いたバルブ125-3(例えば、コントローラ140からの制御入力V8によって制御されるアクティブバルブ)を介して受け取られる流体で充填させる。
【0134】
充填の前に、チャンバ130-1には実質的に流体が無いと想定されたい。一実施形態において、上述のように、タンク170-2からの負圧を用いてチャンバ130-1内に流体を引き込むために、コントローラ140-1は、対応するバルブ160-1、160-5、及びバルブ125-3を開いて(一方で、全ての他のバルブは閉じられる)、流体源120-1から、開いたバルブ125-3を介してチャンバ130-1内に流体を引き込むように、それぞれの制御信号V1、V5、及びV8を生成する。
【0135】
チャンバ130-1が流体で充填されることに続いて、コントローラ140は、タンク170-1からの正圧を、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2に印加するように、バルブ160の設定を制御する。例えば、制御信号V4、V5、及びV9の生成を介して、コントローラ140は、バルブ160-4、160-5、及びバルブ125-2を開き、全ての他のバルブを閉じる。正のタンク170-1からポンプチャンバ130-2への気体の流れは、チャンバ130-1からバルブ125-2を介して、流体導管に沿って、容積式ポンプ184及び対応するセグメント1110への、流体のポンピングを生じさせる。前述したように、チャンバ130-2に正圧を印加する間、バルブ125-3を閉じることによって、チャンバ130-1内の流体が、流体源120-1内に逆流することが防止される。
【0136】
また、導管経路138が、気体検出器リソース110を含み得ることに留意されたい。気体検出器リソース110は、導管経路138を介して対象のレシピエント108に注入されている流体における空気(又はその他の気体)の存在を検出するように構成され得る。コントローラ140によって監視される、気体検出器リソース110からのフィードバックに基づいて、コントローラ140は、対象のレシピエント108に注入される流体における気体の存在を検出した場合、流れを停止し、アラームを鳴らすように構成され得る。
【0137】
前述したように、送出フェーズの間、コントローラ140は、主に、タンク170-1又はタンク150からの気体でチャンバ130-2に圧力を印加して、チャンバ130-1における流体を、下流に、容積式ポンプ184に対して流すように構成され得る。容積式ポンプ184から導管経路138を介して対象のレシピエント108までの流体の送出は、本願で説明されるように(
図7における例を参照)、予め選択された流体送出レートに従って、コントローラ140によって制御され得る。以下で更に説明されるように、本願における実施形態は、チャンバ130-1に残っている流体のそれぞれの測定を行うために、(複数の測定ウィンドーの各々における)チャンバ130-2に対する圧力の印加を少なくとも一時的に中断することを含み得る。図示及び説明されるように、ダイアフラムポンプ130から、下流に、容積式ポンプ184に対する、先の流体の流れを測定するために、本願で説明されるようなやり方でチャンバ130-2に対する圧力の印加を調整することは、チャンバ130-1から容積式ポンプ184への流体の流れを一時的に低減又は停止する。
【0138】
流体送出フェーズの間、コントローラ140は、チャンバ130-2に対して実質的に一定の圧力を供給する。メンブレン127が可撓性なので、チャンバ130-2における圧力は、チャンバ130-1における流体に力を作用させる。一般に、チャンバ130-2への適切な圧力の印加を介して、コントローラ140は、実質的に一定のレートで、下流に、(不定期に遮られるが)容積式ポンプ184に流体を与えることが可能である。送出システム100は乱されることがあり、その結果、流量率の誤差となることに留意されたい。例えば、既に言及したように、流体源120-1は、圧搾され得、流体源120-1の高さは変更されることがある。これらの状況のいずれも、所望の流体送出レートの正確性に影響することがある。
【0139】
流体送出フェーズの間、ポンプチャンバ130-2に正圧を印加することに加えて、本願における実施形態は、チャンバ130-1内に引き込まれる流体のうちのどれ程が、流体導管経路を介して対象のレシピエント108に向かって注入されたかを不定期に確認することを含み得る。これにより、システム状況が乱されている時間の間であっても、コントローラ140は、流体の実際の流量率を正確に判定することが可能となる。
【0140】
より具体的には、それぞれの送出フェーズの間、流体送出レートを測定するための1つの方法は、送出フェーズの間、1つ又は複数の測定時間で、チャンバ130-1における流体のどれ程が、導管経路138上で、対象のレシピエント108に向かって注入されたかを繰り返し測定することである。例えば、コントローラ140は、正圧送出サイクルの複数のサンプル時間にわたって、チャンバ130-2における気体の体積を確認し始めてよい。送出フェーズの始めに、どれ程の気体が、初期的に、チャンバ130-2内にあるかが知られているので、また、異なる時間において、どれ程の気体がチャンバ130-2にあるかを計算すること等に基づいて、コントローラは、チャンバ130-2を充填する時間の合間に、流体源120-1から導管経路138をわたって対象のレシピエント108に流体を注入又は送出するレートを正確に測定することができる。このように、コントローラ140は、付加的な流体でチャンバ130-1を再充填する連続したサイクル間の非常に小さな時間刻みで、流体送出を正確に測定することができる。
【0141】
本願における一実施形態は、チャンバ130-2の体積を知ることに基づいて、どれ程の流体がチャンバ130-1に残っているかを計算することを含む。すなわち、チャンバ130-1の体積は、ダイアフラムポンプ130における両方のチャンバの(既知の)総容量から、チャンバ130-1の体積を減算することによって計算され得る。後述するように、チャンバ130-2の体積は、初期的に既知でない量であるが、圧力及び推定された温度に基づいて計算される。
【0142】
図10Aは、本願における実施形態に従った、流体送出の間の流体測定を図示する例示の図である。図示されるように、グラフ510-1は、送出サイクルのうちの95%以上にわたっての圧力の印加を示す。信号PCは、チャンバ130-2における気体の圧力を示し、信号COMは、チャンバ150における気体の圧力を表す。
【0143】
チャンバ130-2に圧力を印加する時間(例えば、「流体送出」と標示される時間)の合間において、流体送出システム100のコントローラ140は、周期的又は不定期に、複数の時間において、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2に残された流体の体積を判定するために、測定を行う(「測定」と標示される)。非限定的な例示の実施形態として、コントローラ140は、流体送出サイクルの「流体送出」部分の間、おおよそ一定の圧力の印加を開始し、一方で、チャンバ130-2に印加される圧力は、前述したように、各それぞれの「測定」ウィンドーD、E、F等の間、一時的に低減される。
【0144】
この例示の実施形態において、グラフ520-1は、測定の各々の間生じるそれぞれの気体の温度の変化を表す。例えば、信号Tcomは、チャンバ150における気体の推定された温度を示し、信号Tpcは、チャンバ130-2における気体の温度を表す。
【0145】
一般に、1つの非限定的な例示の実施形態において、測定の実施対流体の送出のデューティサイクルは、比較的小さい。すなわち、1つの非限定的な例示の実施形態において、流体送出サイクル(送出フェーズ)のほとんどが、ポンプ130のチャンバ130-1における対応する流体を、レシピエント108に送出するために用いられ得る。送出サイクルのわずかな部分にわたって、チャンバ130-1における体積確認の間、コントローラ140は、図示されるように、チャンバ130-2の対応する体積「測定」を行うように、それぞれのリソースを動作させる。チャンバ130-1及びチャンバ130-2の全体の可能容量が既知であるので、チャンバ130-2の体積が既知となった後、チャンバ130-1の体積が容易に決定され得ることを思い起こされたい。
【0146】
図10Bは、本願における実施形態に従った、流体送出サイクルのより特定の詳細を図示する例示の図である。
【0147】
グラフ510-2は、流体送出サイクルの間、システムにおいて測定される圧力を示す。グラフ520-2は、流体送出サイクルの間、システムにおいて測定される推定された温度を示す。
【0148】
図10Bにおける時間[A]において、又はその近辺で、正のタンク170-1及び負のタンク170-2における圧力を再設定することによって、送出サイクルが開始する。コントローラ140は、ソレノイドバルブ160-1、160-4、160-5、及び160-3を(制御信号V1、V4、V5、及びV3の生成を介して)閉じた位置に設定する。コントローラ140は、タンク170を所望の動作圧力にさせるように、エアポンプ180を作動させる(オンにする)。
【0149】
時間[B]において、バルブ125-2及び160-3が閉じており、バルブ125-3が開いている一方で、バルブ160-1(V1)及び160-5(V5)が、負のタンク170-2における負の気体圧力をチャンバ130-2に印加するように、開かれる。前述したように、負圧は、ダイアフラムメンブレン127を、タンク150に向かって引き込み、チャンバ130-1を、流体源120-1からの流体で、バルブ125-3を介して充填する。流体源120-1からの液体などの流体は、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1内に引き込まれる。チャンバ130-1が充填された後、コントローラ140は、バルブ125-3及びバルブ160-1を閉じる。
【0150】
時間[C]において、正のタンク170-1における圧力を、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2に印加するように、バルブ160-4が(信号V4の生成を介して)、及び、バルブ160-5が(信号V5の生成を介して)開かれる。これにより、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2における液体が、導管経路上で、下流に、容積式ポンプ184に流れ、最終的に、対象のレシピエント108に流れる。
【0151】
一実施形態において、チャンバ130-1における流体を、下流に、セグメント1110に注入するように、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2が正圧にされた後のどこかで、コントローラ140は、例えば、時間[D]、[E]、[F]等において体積計算を行う。体積計算の態様が、以下でより詳細に説明される。前述したように、1つ又は複数の体積計算は、チャンバ130-1が空である時間の間(例えば、時間[C]から[I]の間)、周期的に行われ得る。
【0152】
時間[I]における最後の体積測定の後、又は、送出フェーズの間の任意の時間において、コントローラ140は、体積測定から流量率を計算する。計算された流量率に基づいて、コントローラ140は、流れ制御パラメータ、すなわち、ぜん動ポンプ速度などの容積式ポンプ184の送出レートに対して調整が必要かどうかを判定し得る。
【0153】
正のタンク170-1及び負のタンク170-2における圧力を再び再設定するように、時間[J]においてエアポンプ180がオンにされるとき、流体送出サイクルが再開することに留意されたい。
【0154】
特定の測定サイクルの詳細な考察
図11は、本願における実施形態に従った、流体送出サイクルの間、(時間CからIのいずれかにおける)例示の測定サイクルを図示する例示の図である。本図は、本願における実施形態に従った流体流量率測定を行うことについてのより具体的な図である。
【0155】
グラフ610は、複数の体積の各々における気体圧力を示す。この例示の実施形態において、グラフ610においてPCと標示される圧力信号は、圧力センサ135-5(これは、圧力信号P5を生成する)によって測定される、チャンバ130-2における気体の圧力を表す。グラフ610においてCOMと標示される圧力信号は、(圧力信号P5を生成する)圧力センサ135-3によって測定される、チャンバ150における気体の圧力を表す。
【0156】
グラフ620は、チャンバ150及びチャンバ130-2におけるそれぞれの気体の推定された温度(Tcom及びTpc)を示す。
【0157】
それぞれの流体送出サイクルの開始において、チャンバ150(共通タンク又は参照チャンバ)、正のタンク170-1、及びダイアフラムポンプ130が全て、システムの駆動圧力など、同じ圧力である。駆動圧力は、時間T1の前、流体がダイアフラムポンプ130から、下流に、容積式ポンプ184に送出される間の、チャンバ130-2に印加される気体の圧力を表す。
【0158】
グラフ610における地点[1]で、コントローラ140は、気体体積を隔離するためにバルブ160の全てを閉じるように、適切な制御信号を生成する。コントローラ140は、周囲圧力に対してチャンバ150(共通タンク)を通気するために、バルブ160-3を(信号V3を介して)開いた状態に制御する。
【0159】
チャンバ150における圧力が、おおよそ地点[2]で周囲圧力に達するとき、コントローラ140は、気体体積の全てが再び隔離されるように、バルブ160-3を(信号V3の生成を介して)再び閉じた位置に制御する。
【0160】
バルブ125-3及びバルブ125-2が閉じられるおおよそ時間T1で(地点[3]及び[4]として示される)、チャンバ130-2における気体を、チャンバ150における気体と統合(素早く等化)するように、コントローラ140は、バルブ160-5を(信号V5の生成を介して)開いた状態に制御する。図示されるように、チャンバ130-2及びタンク150における気体圧力は、グラフ610における地点[5]において、又はその付近で、等化される。
【0161】
一実施形態において、チャンバ130-2及びチャンバ150の体積はおおよそ同じである。
【0162】
グラフ610に示したこの例示の測定サイクルにおいて、前述したような方法でバルブ160-5を開くことによって、チャンバ130-2における圧力が、おおよそ50%低減されると想定されたい。チャンバ130-2に印加される圧力の低減の量は、チャンバ130-2の体積及びチャンバ150の体積に依存して変化する。
【0163】
別の短い安定化期間の後、又は地点[6]において、チャンバ130-2の圧力によって、チャンバ130-1が、それぞれの流体を対象のレシピエント108に注入する間、チャンバ130-2(IPC)及びチャンバ150を、気体経路を介して正のタンク170-1に接続して、全ての3つの気体体積を再び駆動圧力にさせるように、コントローラ140は、バルブ160-4を(信号V4の生成を介して)再び開いた状態に制御する。それゆえ、本願における実施形態は、異なる時間における圧力測定を得るために、下流のバルブ125-2を閉じること又は容積式ポンプ184の動きを休止することによって、流体の流れを少なくとも一時的に停止すること又は低減することを含む。
【0164】
一実施形態において、コントローラ140によって生成される実際の体積計算は、地点[3]、[4]、及び[5]において、又はそれらの近辺で、コントローラ140によって得られる圧力の測定に基づいて生じる。
【0165】
実質的に時間T1又は地点[4]において、コントローラ140は、チャンバ130-2に印加される気体の圧力Ppcを判定するために、圧力センサ135-5によって生成される信号P5を受け取る。
【0166】
実質的に時間T1又は地点[3]において、コントローラ140は、チャンバ150における気体の圧力Pcomを判定するために、圧力センサ135-3によって生成される信号P3を受け取る。
【0167】
実質的に時間T2又は地点[5]において、コントローラ140は、チャンバ150における気体の圧力Pmergeを判定するために、圧力センサ135-3及び/又は圧力センサ135-5によって生成される信号P3又はP5を受け取る。
【0168】
一実施形態によれば、コントローラ140は、理想気体の法則と、測定の間システムが等温である(温度変化を無視する)という推定とを用いて、次のように、チャンバ130-2における気体の体積を判定する。
P1V1=P2V2 (式6)
【0169】
V
pc=ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2の既知でない体積
V
com=チャンバ150(共通タンク)の既知の体積
P
pc=地点[4]におけるチャンバ130-2の圧力
P
com=地点[3]におけるチャンバ150(共通タンク)の圧力
P
merge=P
pc=P
com 地点[5]において2つのチャンバ(130-2及び150)が等化されるときの圧力
V
pcP
pc+V
comP
com=V
pcP
merge+V
comP
merge (式7)
.
.
.
【0170】
等温計算は、考慮中のシステムが、観察時間期間の間、一定温度のままであることを想定する。システムの詳細に依って、気体のこうした等化(及び/又は安定化)は、生じるのに数秒を要することがある。システムが熱平衡に戻る前に体積計算が行われる場合、残留温度差は、体積計算の誤差を生じさせ、これが、結果として生じる流量率計算の誤差を引き起こす。
【0171】
一実施形態によれば、注入ポンプシステムにおいて必要とされる流量率の範囲を達成するために、及び、測定サイクルの間の体積変化に起因する誤差を最小化するために、本実施形態は、過渡的熱効果が等化される前に、対象のレシピエント108に注入される流体の体積を計算するように構成され得る。体積計算の正確性を維持するために、本願における実施形態は、より正確な流体送出レートを生成するように熱効果を考慮に入れる。
【0172】
一実施形態において、気体の温度変化は、標準的な温度センサによって測定できない程速く生じる。言い換えれば、温度センサは、グラフ600に示されるそれぞれの圧力変化の間、タンク150、チャンバ130-2等における、迅速に変化する気体の温度を正確に測定することができないであろう。この問題に対処するために、本願における一実施形態は、実際の流体送出レートを計算するために、対象の体積の温度を推定することを含む。上述のように、一実施形態において、温度センサ152は、共通タンク150における気体の平均温度を測定する。しかし、その熱質量に起因して、温度センサ152は、チャンバ150における気体の実際の温度に対する素早い変化を正確に検出することができないであろう。
【0173】
異なる体積(例えば、タンク150、チャンバ130-2等)における気体の温度に経時的に影響を及ぼすいくつかのパラメータがある。例えば、熱変化は、主に、ニューマチックシステムにおける3つの原因に由来する。
1.チャンバにおける圧力変化に起因する断熱加熱又は冷却
2.気体とチャンバ壁との間の熱伝達
3.IPCチャンバからの量流率に起因する体積変化
【0174】
本願における一実施形態は、対象のチャンバの温度を正確に推定するために、流体送出システム100をモデリングすることを含む。例えば、上述のように、
図11に関して示され及び説明されるようなチャンバ(ポンプチャンバ130-2及びチャンバ150など)の圧力の変化は、ポンプチャンバ130-2及び共通タンク150の温度を変化させる。より具体的には、
図6における地点1と地点2との間で、共通タンク150の圧力は著しく降下し、チャンバ150(共通タンク)における気体の温度Tcomを降下させる。前述したように、それぞれのチャンバにおける気体の圧力(例えば、P5、P3等)は、それぞれの圧力センサ135-5、135-3等を用いて継続的及び正確に測定される。
【0175】
一実施形態において、第1のモデルが、断熱加熱及び/又は冷却に起因するチャンバの温度変化を推定するために用いられる。言い換えれば、任意の適切な式が、圧力変化の結果として、チャンバにおける気体の温度の変化を判定するために用いられ得る。気体の圧力の増加は、温度の上昇を引き起こし、気体の圧力の低減は、温度の低下を引き起こす。
【0176】
チャンバにおける気体の温度に影響を及ぼす別のパラメータは、チャンバそれ自体と、その間の導管との熱的特徴である。
図2における太線は、流体送出システム100における異なる構成要素を相互接続する流体導管(チューブ、チャンネル等)を表す。例えば、ダイアフラムポンプ130とバルブ160-5との間に延在する太線は導管を表し、チャンバ150とバルブ160-5との間の太線は導管を表す。それぞれの導管を介して、流体送出システム100における構成要素(バルブ125-3、ダイアフラムポンプ130、バルブ160-5等など)の各々が相互接続される。
【0177】
本願における実施形態によれば、チャンバ(例えば、共通タンク150、ポンプチャンバ130-2等)の熱特性が特徴付け及びモデリングされて、圧力の変化によって引き起こされる温度の変化があるとき、チャンバが熱をどれ程素早くシンク又はソースするかを識別し得る。一例として、説明されるように、タンクの圧力の低減が、タンクにおける気体の温度を低下させ得る。タンクそれ自体の温度は、気体の温度より大きさが一層高いことがあり、その結果、タンク又はチャンバからその中の気体への熱の流れとなる。熱流が、チャンバにおける気体の温度を、経時的にそれぞれのタンク内の温度と、最後には実質的に同じにさせる。逆に、タンクの圧力の増加が温度を上昇させ得る。気体からタンク又はチャンバへの熱の流れが、気体の温度を低減させる。
【0178】
本願における一実施形態は、気体の温度を推定すること、及び、それぞれの熱モデルを用いて温度の熱の流れ(thermal heat flow)を考慮に入れることを含む。熱モデルは、気体からそれぞれのチャンバ又はタンクへの熱の伝達、及び/又は、それぞれのチャンバ又はタンクから気体への熱の伝達を考慮する。熱伝達は、タンク及びそれぞれの相互接続をつくるために用いられる材料のタイプに因り変動し得る。金属などの一定の材料は、熱伝導が一層良好であり、プラスチックなどの材料は、熱伝導率が劣る。
【0179】
上述のように、圧力の変化に起因する気体の温度の変化は確定的なものであり、それゆえ、正確に推定され得る。しかし、タンクから気体又は気体からタンクへの力の流れは、温度に影響する。本願における実施形態は、熱モデリングに基づき異なる時間における力のこれらの流れを考慮に入れることによって、温度のより正確な推定をもたらすことを含む。
【0180】
チャンバにおける気体の温度に影響を及ぼす別の要因は、ポンプチャンバ130-2の体積であり、且つ、ダイアフラムポンプチャンバにおける流体を容積式ポンプ184及び対象のレシピエントに注入することに起因して、そうした体積が経時的にどれほど素早く変化するか、である。例えば、ポンプチャンバ130-2における流体が、非常に遅いレートで対象のレシピエント108に注入される場合、体積変化効果はわずかであり、場合によっては無視してもよい。逆に、ポンプチャンバ130-1における流体が、比較的高いレートで容積式ポンプ184及び対象のレシピエント108に注入される場合、体積変化効果は一層著しいものとなる。本願で説明されるように、本願における実施形態は体積変化を考慮に入れる。
【0181】
一実施形態において、コントローラ140は、1秒と1ナノ秒との間など、時間における別個の地点での温度の推定を生成する。制御システムの各時間ステップ(すなわち、温度の推定を成す各別個の時間)の間、これらの3つの原因に起因する温度の変化が、測定された圧力を入力として用いて、各ニューマチック体積に対して計算される。構成要素(例えば、断熱効果、熱伝達効果、体積変化効果)は、それぞれの推定された温度を生成するために、個別に及び/又は組み合わせて測定され得る。
【0182】
以下の式において、下付き文字「i」及び「j」は、ニューマチック体積130-2、150、170-1、170-2の各々を示すために用いられる。下付き文字「i」は、温度が推定されているチャンバを表し、下付き文字「j」は、温度が推定されているチャンバに接続されるチャンバを表す。例えば、ポンプチャンバ130-2の温度を推定するとき、下付き文字「i」はポンプチャンバ130-2を表し、下付き文字「j」は共通タンク150を表す。共通タンク150の温度を推定するとき、下付き文字「i」は共通タンク150を表し、下付き文字「j」はポンプチャンバ130-2を示す。
【0183】
非限定的な例として、時間(n+1)における温度は、そうした変化レートに基づいて計算される。
【0184】
熱伝達効果は、チャンバにおける気体の温度、チャンバ壁の温度、及びこれらの2つの間の熱伝達係数に基づく。例えば、一実施形態において、
熱伝達効果 H(T
wall-T
i) (式11)
であり、
T
i=チャンバiに対する温度の最新の推定
H=熱伝達係数
T
wall=温度センサ152によって感知される周囲温度T
tc
である。圧力変化効果は、2つのチャンバの圧力差に起因する、1つのチャンバから別のチャンバへの質量の流れに基づく。
ここで、
M
i=チャンバiにおける気体の質量
Q
ij=チャンバiからチャンバjへの質量流量率
C
ij=チャンバiとjとの間のバルブの流量係数(discharge coefficient)
A
ij=チャンバiとjとの間のバルブのオリフィスの領域
p
i=チャンバiにおける気体の密度
Cv=一定の体積での比熱
Cp=一定の圧力での比熱
である。
【0185】
体積変化効果は、問題となっているチャンバの実際の体積のどんな変化にも基づく。一実施形態において、この効果はチャンバ130-2にのみ適用され、これが、メンブレン127の動きに起因してサイズを変化させ得る。
ここで、
V=体積
Cv=一定の体積での比熱
Cp=一定の圧力での比熱
である。
【0186】
ポンプピング(注入)及び測定サイクルを通して、推定された温度曲線は、
図10A、
図10B、及び
図11において示され得る。
【0187】
この方法で、制御システムは、温度を考慮に入れた、修正された理想気体の法則体積計算において用いられ得る、各気体チャンバに対する推定された温度を有する。
ここで、
V
pc=ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-2の既知でない体積(例えば、左IPC)
V
com=チャンバ150の既知の体積
P
com1=地点[3]におけるチャンバ150の圧力センサ135-3からの圧力P
3
P
com2=地点[5]におけるチャンバ150の圧力センサ135-3からの圧力P
3
P
pc1=地点[4]におけるチャンバ130-2の圧力センサ135-5からの圧力P
5
P
pc2=地点[5]におけるチャンバ130-2の圧力センサ135-5からの圧力P
5
T
com1=地点[3A]におけるチャンバ150の推定された温度
T
com2=地点[5A1]におけるチャンバ150の推定された温度
T
pc1=地点[4A]におけるチャンバ130-2の推定された温度
T
pc2=地点[5A2]におけるチャンバ130-2の推定された温度
である。
【0188】
前述したように、チャンバ130-1の体積は、ダイアフラムポンプ130の総体積から、計算されたVPC(例えば、ポンピングチャンバ130-2の体積)を減算することによって計算され得る。ダイアフラムポンプ130の総体積は、チャンバ130-1の体積+チャンバ130-2の体積に等しく、既知の量である。
【0189】
更なる実施形態において、チャンバ130-1の体積は計算されず、流量率は、単に、チャンバ130-2の体積の後続の計算間の体積の差を取ることによって計算される。言い換えれば、経時的なポンプチャンバ130-2の体積の変化は、ポンピング流量率を示し、流量率を計算するための基礎として用いられ得る。コントローラ140は、
図10Bにおける時間C、D、E等で成される複数の測定に基づいて、ダイアフラムポンプ130のチャンバ130-1から流体を送出するそれぞれの流量率を精密に判定するように構成され得る。流量率=(チャンバ130-2における体積の変化)/(体積測定間の経過時間)である。
【0190】
温度補正された体積計算(本願において説明されるような気体温度の推定に基づく)を用いることにより、システムは、秒オーダーではなく、80ミリ秒オーダーで生じる測定シーケンスを有することができ、一方で、計算正確性を保つことができる。
【0191】
図12は、本願における実施形態に従った、本願で説明されるような動作のいずれかを実施するためのコンピュータデバイスの例示のブロック図である。
【0192】
一実施形態において、流体送出システム100は、コントローラ140を実行するためのコンピュータシステム750(ハードウェア)を含む。
【0193】
図示されるように、本例のコンピュータシステム750は、相互接続711、プロセッサ713(例えば、1つ又は複数のプロセッサデバイス、コンピュータプロセッサハードウェア等)、コンピュータ読出し可能記憶媒体712(例えば、データを記憶するためのハードウェアストレージ)、I/Oインターフェース714、及び通信インターフェース717を含む。
【0194】
相互接続711は、プロセッサ713、コンピュータ読出し可能記憶媒体712、I/Oインターフェース714、及び通信インターフェース717間の接続を提供する。
【0195】
I/Oインターフェース714は、リポジトリ780への接続を提供し、もしあれば、再生デバイス、表示スクリーン、入力リソース792、コンピュータマウス等など、他のデバイスへの接続を提供する。
【0196】
コンピュータ読出し可能記憶媒体712(例えば、非一時的ハードウェア媒体)は、メモリ、光学ストレージ、ハードドライブ、回転ディスク等などの任意のハードウェアストレージリソース又はデバイスであり得る。一実施形態において、コンピュータ読出し可能記憶媒体712は、プロセッサ713によって実行される命令を記憶する。
【0197】
通信インターフェース717は、コンピュータシステム750及びプロセッサ713が、190などのリソースを介して通信して、遠隔ソースから情報を取り出すこと及び他のコンピュータと通信することを可能にする。I/Oインターフェース714は、プロセッサ713がリポジトリ780から、記憶された情報を取り出すことを可能にする。
【0198】
図示されるように、コンピュータ読出し可能記憶媒体712は、プロセッサ713によって実行されるコントローラアプリケーション140-1(例えば、ソフトウェア、ファームウェア等)で暗号化される。コントローラアプリケーション140-1は、本願で説明される動作のいずれかを実施するための命令を含むように構成され得る。
【0199】
一実施形態の動作の間、プロセッサ713(例えば、コンピュータプロセッサハードウェア)は、コンピュータ読出し可能記憶媒体712に記憶された、コントローラアプリケーション140-1における命令を、開始、進行、実行、解析又は実施するために、相互接続711の使用を介して、コンピュータ読出し可能記憶媒体712にアクセスする。
【0200】
コントローラアプリケーション140-1の実行が、プロセッサ713におけるコントローラプロセス140-2などの処理機能性をもたらす。言い換えれば、プロセッサ713に関連するコントローラプロセス140-2は、コンピュータシステム750におけるプロセッサ713により又はプロセッサ713上でコントローラアプリケーション140-1を実行する1つ又は複数の態様を表す。
【0201】
コンピュータシステム750が、コントローラアプリケーション140-1を実行するためにハードウェアリソースの割当て及び使用を制御するオペレーティングシステムなど、他のプロセス及び/又はソフトウェア及びハードウェア構成要素を含み得ることを、当業者は、理解するであろう。
【0202】
異なる実施形態によれば、コンピュータシステムが、種々のタイプのデバイスの任意のものであり得、これには、以下に限定されないが、ワイヤレスアクセスポイント、モバルコンピュータ、パーソナルコンピュータシステム、ワイヤレスデバイス、基地局、電話機、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、ノートブック、コンピュータ、メーンフレームコンピュータシステム、ハンドヘルドコンピュータ、ワークステーション、ネットワークコンピュータ、アプリケーションサーバ、ストレージデバイスや、カメラ、カムコーダ、セットトップボックス、モバイルデバイス、ビデオゲーム機、ハンドヘルドビデオゲーム機などの家電デバイスや、スイッチ、モデム、ルータなどの周辺機器、又は、一般に任意のタイプのコンピュータデバイス又は電子デバイスが含まれることに留意されたい。1つの非限定的な例示の実施形態において、コンピュータシステム850は、流体送出システム100にある。しかし、コンピュータシステム850が、任意のロケーションにあってもよく、又は、本願で説明されるような機能性を実施するために、ネットワーク環境100における任意の適切なリソース内に含まれてもよいことに留意されたい。
【0203】
次に、異なるリソースによってサポートされる機能性が、
図13、
図14、及び
図15におけるフローチャートを用いて説明される。以下のフローチャートにおけるステップが、任意の適切な順で実行されてよいことに留意されたい。
【0204】
図13は、実施形態に従った例示の方法を示すフローチャート1300である。上述の概念に関していくつかの重複があることに留意されたい。
【0205】
処理ブロック1310において、コントローラ140は、第1の体積(例えば、チャンバ150)及び第2の体積(例えば、チャンバ130-2)における圧力の大きさを制御する。第1の体積は、既知の大きさ(すなわち、サイズ、容量等)から成り、第2の体積は、既知でない大きさ(すなわち、サイズ)から成る。
【0206】
処理ブロック1320において、コントローラ140は、第1の体積における圧力の測定及び第2の体積における圧力の測定に基づいて、第1の体積における気体の温度及び第2の体積における気体の温度を推定する。
【0207】
処理ブロック1330において、コントローラ140は、第1の体積及び第2の体積における気体の測定された圧力及び推定された温度に基づいて、第2の体積の大きさを計算する。
【0208】
図14は、実施形態に従った例示の方法を示すフローチャート1400である。上述の概念に関していくつかの重複があることに留意されたい。
【0209】
処理ブロック1410において、コントローラ140は、ダイアフラムポンプのチャンバ130内に流体を引き込む。
【0210】
処理ブロック1420において、送出フェーズの間、コントローラ140は、チャンバ130-1に圧力を印加する。印加される圧力は、チャンバ130-1における流体を、下流に、容積式ポンプ184及び対応するセグメント1110に注入する。
【0211】
処理ブロック1430において、容積式ポンプ184に流体を送出する送出フェーズの間の複数の異なる時間において、コントローラ140は、チャンバ130-2に印加される圧力の大きさを一時的に修正して、(ダイアフラムポンプ130を介した容積式ポンプ184への流体の流れのレートを中断又は低減し、)チャンバ130-1における流体のどれ程が、それぞれのサンプルウィンドーにおいて、容積式ポンプ184及び対応する対象のレシピエント108に注入されたかを計算する。
【0212】
図15は、本願における実施形態に従った例示の方法を示すフローチャート1500である。上述の概念に関していくつかの重複があることに留意されたい。
【0213】
処理ブロック1510において、コントローラ140は、第1の体積(例えば、チャンバ150)及び第2の体積(例えば、チャンバ130-2)における圧力の大きさが異なるように制御する。第1の体積は既知の大きさから成る。第2の体積は既知でない大きさから成る。
【0214】
処理ブロック1520において、コントローラ140は、第1の体積及び第2の体積における圧力を等化するように、第1の体積と第2の体積との間のバルブ160-5を開き始める(一方で、他のバルブは閉じられる)。
【0215】
処理ブロック1530において、コントローラ140は、第1の体積における測定された圧力及び第2の体積における測定された圧力に基づいて、第1の体積における気体の温度及び第2の体積における気体の温度を推定する。
【0216】
処理ブロック1540において、コントローラ140は、第1の体積及び第2の体積における気体の測定された圧力及び気体の推定された温度に基づいて、第2の体積の大きさを計算する。
【0217】
本願における技法が、流体送出システムにおける使用に良好に適していることに再び留意されたい。しかし、本願における実施形態がそのような応用例における使用に限定されず、本願で説明される技法が、他の応用例にも良好に適していることに留意すべきである。
【0218】
本願で述べた説明に基づいて、多くの具体的な詳細を、特許請求の範囲の主題の完全な理解を提供するために説明してきた。しかし、特許請求の範囲の主題が、これらの具体的な詳細を伴わずに実施され得ることが、当業者によって理解されよう。他の例において、当業者に知られた方法、装置、システム等は、特許請求の範囲の主題を不明瞭にしないように、詳細に述べられていない。詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリなどのコンピューティングシステムメモリ内に記憶された、データビット又は二値デジタル信号上の動作のアルゴリズム又は象徴的表現という観点で表されている。これらのアルゴリズムの説明又は表現は、データ処理分野おける当業者によって、別の分野の当業者に研究の趣旨を伝えるために用いられる技法の例である。本願において説明されるような、及び一般的なアルゴリズムが、所望の結果を導く動作の自己矛盾の無いシーケンス又は同様の処理であると考えられる。この文脈において、動作又はプロセスは、物理的量の物理的操作を含む。典型的に、必ずしもそうではないが、そのような量は、記憶、転送、結合、比較、又は操作可能な電気又は磁気信号の形態をとり得る。主に共通仕様の理由から、ビット、データ、値、要素、シンボル、文字、言語、数、数字等などの信号に言及することが、ときに好都合であった。しかし、これら及び類似の用語の全てが、適切な物理的量に関連し得、好都合な標示に過ぎないことを理解すべきである。そうではないと具体的に述べられる場合を除いて、以下の説明から明らかなように、明細書全体を通して、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「決定(判定)」等などの用語を用いた説明が、コンピュータ又は類似の電子コンピューティングデバイスなどのコンピューティングプラットフォームの動作又はプロセスに言及し、そうしたコンピュータプラットフォームは、コンピューティングプラットフォームのメモリ、レジスタ、又は他の情報ストレージデバイス、伝達デバイス、又は表示デバイスの物理的電子量又は磁気量として表されるデータを操作又は変換することが認められる。
【0219】
本発明が、その好ましい実施形態に関連して具体的に図示及び説明されたが、形態及び詳細の様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって規定される本願の精神及び範囲から逸脱することなく成されてもよいことが、当業者によって理解されよう。そのような変形形態は、本願の範囲によってカバーされることが意図される。このように、本願の実施形態の前述の説明は限定的であることを意図しない。むしろ、発明に対するいかなる限定も、以下の特許請求の範囲に表される。