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特許7441902計時器用ムーブメントのための保護リング、及び保護リングを備える計時器用ムーブメント
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  • 特許-計時器用ムーブメントのための保護リング、及び保護リングを備える計時器用ムーブメント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】計時器用ムーブメントのための保護リング、及び保護リングを備える計時器用ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 43/00 20060101AFI20240222BHJP
   G04G 17/00 20130101ALI20240222BHJP
   G04C 3/00 20060101ALI20240222BHJP
   G04B 5/18 20060101ALI20240222BHJP
   G04B 1/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G04B43/00 A
G04G17/00 H
G04C3/00 K
G04B5/18
G04B1/02
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022126928
(22)【出願日】2022-08-09
(65)【公開番号】P2023050098
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】21199919.8
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・クリスタン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543983(JP,A)
【文献】特表2009-503487(JP,A)
【文献】特表平11-513493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
G04C 1/00-99/00
G04G 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レート(21)とこのプレート(21)に固定されたブリッジアセンブリ(22)とによって形成されるケージを備える計時器用ムーブメント(20)であって、
前記プレート(21)は、前記プレート(21)の下面(210)において前記ブリッジアセンブリー(22)に対する半径方向の肩部を形成し、
前記計時器用ムーブメント(20)は、さらに、前記ケージに対して回転可能でありかつ前記ブリッジアセンブリー(22)の下面を越えて半径方向に延在している振動錘(23)を備え、
前記計時器用ムーブメント(20)は、強磁性である材料によって作られたリング(10)を備え、
前記リング(10)には、第1の軸方向の端(11)と第2の軸方向の端(12)の間に延在している管状の本体があり、
前記リング(10)は、前記ブリッジアセンブリー(22)を囲み前記振動錘(23)の方へと軸方向に延在しているように構成しており、
前記リング(10)は、前記第1の軸方向の端(11)によって、前記振動錘(23)の半径方向の軸のまわりの角変位を制限する止めを形成するように構成しており、
前記リング(10)には、その第2の軸方向の端(12)から延在している固定用メンバー(15)があり、
前記固定用メンバー(15)は、前記下面(210)に形成されたハウジング(25)内にて係合し、これによって、前記計時器用ムーブメント(20)によって前記リング(10)を固定する
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(20)。
【請求項2】
前記リング(10)には、前記リング(10)の前記第1の軸方向の端(11)と前記第2の軸方向の端(12)の間に形成されている軸方向の空欠部(14)があり、
前記軸方向の空欠部(14)は、前記リング(10)の2つの長手方向の端どうしを離間させる
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項3】
前記軸方向の空欠部(14)は、前記第1及び第2の軸方向の端(11、12)の一方から他方までにわたって形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項4】
前記軸方向の空欠部(14)は、前記第2の軸方向の端(12)から前記第1の軸方向の端(11)までにわたって形成されており、
前記第1の軸方向の端(11)の高さにおいて前記リング(10)の2つの前記長手方向の端どうしを材料のブリッジが接続する
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項5】
前記リング(10)には、弾性があり、
前記固定用メンバー(15)が前記ハウジング(25)内にて係合するときに、機械的に拘束された状態となるように構成しており、これによって、前記固定用メンバー(15)が前記ハウジング(25)に対してクランプ力を与える
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項6】
各固定用メンバー(15)は、舌の形であり、
前記固定用メンバー(15)の第1の部分は、近位部分(150)であり、前記リング(10)の前記第1の軸方向の端(11)の方とは反対側の方向である軸方向を向いており、
前記固定用メンバー(15)の第2の部分は、遠位部分(151)であり、前記近位部分(150)に接続され、前記リング(10)の半径方向に延在する平面内にて前記リング(10)の外側の方へと延在している
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項7】
前記軸方向の空欠部(14)の直径的に反対側に固定用メンバー(15)が配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項8】
前記リング(10)の前記長手方向の端それぞれに固定用メンバー(15)が配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項9】
前記リング(10)には、前記第1の軸方向の端(11)と前記長手方向の端それぞれの間の交差部に面取り部(16)がある
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項10】
前記固定用メンバー(15)は、前記ハウジング(25)に溶接される
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項11】
前記固定用メンバー(15)は、前記ハウジング(25)に接着結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【請求項12】
前記固定用メンバー(15)は、弾性相互ロックによって前記ハウジング(25)と連係する
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用ムーブメント(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の分野に関し、特に、磁場から保護し、振動錘からの潜在的な衝撃から保護するための計時器用ムーブメントの保護リングに関する。本発明は、さらに、このような保護リングを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0002】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の駆動メンバーにパワー供給するために機械的パワーを与えるように意図された振動錘を備える任意の機械式又は電子式の計時器用ムーブメントに適用され、この振動錘は、特に、機械式の計時器用ムーブメントをワインドし、又は発電機を介して電子回路に電気を供給する。
【背景技術】
【0003】
磁場に暴露されることによって発生する外乱から携行型時計の計時器用ムーブメントを保護するために多くの手法がある。
【0004】
このような手法の中で最も効果的なものは、強磁性体によって作られたケース内に計時器用ムーブメントを入れることである。
【0005】
しかし、この手法には、特に、比較的かさばり、携行型時計をかなり重くしてしまい、そして、携行型時計の製造を複雑にしてしまうという課題がある。
【0006】
また、計時器用ムーブメントを機械的衝撃から保護するために、機械的応力の吸収を可能にする、ある程度の弾性を有する支持体が開発されている。このような支持体は、計時器用ムーブメントと携行型時計のミドル部の間に挿入され、このために上記のものと同じ課題がある。
【0007】
また、このような手法では、携行型時計が衝撃を受けたときに発生する角変位が発生させる振動錘からの潜在的な衝撃からは計時器用ムーブメントを保護することができない。
【0008】
また、機械的衝撃に加えて磁場の影響からも計時器用ムーブメントを保護するような適切な手法がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決することによって、振動錘の磁場の影響、及び携行型時計に対する衝撃によって発生する潜在的な衝撃の影響の両方から携行型時計の計時器用ムーブメントを保護するための手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、計時器用ムーブメントに固定されるように意図された、計時器用ムーブメントのための耐磁性及び耐衝撃性の保護リングに関する。このリングには、第1の軸方向の端と第2の軸方向の端の間にある管状の本体があり、このリングは、強磁性である材料によって作られている。このリングは、第1の軸方向の端によって、計時器用ムーブメントに接続される振動錘の半径方向の軸のまわりの角変位を制限する止めを形成するように構成している。なお、「半径方向の軸」という文言は、振動錘の回転軸に垂直な軸を意味する。
【0011】
このような特徴のおかげで、前記リングは、携行型時計が衝撃を受けた後に回転軸に垂直な軸のまわりの角変位が与えられるときにも、振動錘の潜在的な衝撃と、磁場の影響との両方から計時器用ムーブメントを保護することを可能にする。
【0012】
また、前記リングには、携行型時計が衝撃を受けたときに振動錘を支えて、計時器用ムーブメントに取り付けることを可能にする要素を潜在的な変形や破損から保護するような効果もある。
【0013】
また、本発明の手法は、管状のリングを用い、この管状のリングは、計時器用ムーブメント内においてわずかな空間しか占めない。管状リングを用いることによって発生する別の利点として、リングの領域に対する振動錘の潜在的な衝撃が、そのリングの領域の横断方向の寸法構成が小さいために、肉眼では見えない又はほとんど見えないということがある。このリングの領域の横断方向の寸法構成は、リングの本体の厚みを形成する。
【0014】
また、リングは一体鋳造され、このために、少ない費用で容易に製造することができる。例えば、リングは、スタンピング操作の後に曲げ操作をすることによって形成することができる。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、さらに、以下の特徴のうちの1つ又は複数を、単独で又は技術的に可能な任意の組み合わせで、有することができる。
【0016】
特定の実施形態において、前記リングには、前記リングの前記第1の軸方向の端と前記第2の軸方向の端の間に形成されている軸方向の空欠部があり、前記軸方向の空欠部は、前記リングの2つの長手方向の端どうしを離間させる。
【0017】
特定の実施形態において、前記軸方向の空欠部は、前記第1の軸方向の端から第2の軸方向の端までにわたって形成されている。
【0018】
特定の実施形態において、前記軸方向の空欠部は、前記第2の軸方向の端から第1の軸方向の端までにわたって形成されている。
【0019】
特定の実施形態において、前記軸方向の空欠部は、前記第2の軸方向の端から前記第1の軸方向の端までにわたって形成されており、前記第1の軸方向の端の高さにおいて前記リングの2つの前記長手方向の端どうしを材料のブリッジが接続する。
【0020】
特定の実施形態において、前記リングは、前記計時器用ムーブメントにおいて形成されるハウジングに係合するように意図されている、前記第2の軸方向の端から延在している固定用メンバーを備え、これによって、前記リングを前記計時器用ムーブメントに固定する。
【0021】
特定の実施形態において、前記リングには、弾性があり、前記固定用メンバーが前記ハウジング内にて係合するときに、機械的に拘束された状態となるように構成しており、これによって、前記固定用メンバーが前記ハウジングに対してクランプ力を与える。
【0022】
特定の実施形態において、各固定用メンバーは、舌の形であり、前記固定用メンバーの第1の部分は、「近位部分」と呼ばれ、前記リングの前記第1の軸方向の端の方とは反対側の方向である軸方向を向いており、前記固定用メンバーの第2の部分は、「遠位部分」と呼ばれ、前記近位部分に接続され、前記リングの半径方向に延在する平面内にて前記リングの外側の方へと延在している。
【0023】
特定の実施形態において、前記軸方向の空欠部の直径的に反対側に固定用メンバーが配置される。
【0024】
特定の実施形態において、前記リングの前記長手方向の端それぞれに固定用メンバーが配置される。
【0025】
特定の実施形態において、前記リングには、前記第1の軸方向の端と前記長手方向の端それぞれの間の交差部に面取り部がある。
【0026】
特定の実施形態において、前記リングは、前記計時器用ムーブメントに支えられるように構成するように意図されている、前記第2の軸方向の端から延在している半径方向のカラーの形態である固定用メンバーを備える。
【0027】
別の主題によると、本発明は、ブリッジアセンブリーが固定されるプレートによって形成されるケージと、及びケージに対して回転するように動くことができ前記ブリッジアセンブリーを越えて半径方向に延在している振動錘と、を備える計時器用ムーブメントに関する。
【0028】
前記計時器用ムーブメントは、さらに、前記ブリッジアセンブリーを囲み前記振動錘の方へと軸方向に延在しているように構成している前記リングを備える。
【0029】
好ましいことに、本発明は、携行型時計のミドル部に計時器用ムーブメントを導入する前に、計時器用ムーブメントのアセンブリーを組み付けることを可能にする。これは、リングの寸法構成を収容することを可能にするリングの設計による。
【0030】
特定の実施形態において、前記プレートは、「下面」と呼ばれる表面によって、前記ブリッジアセンブリーに対する半径方向の肩部を形成し、前記固定用メンバーを受けるハウジングが前記下面に形成される。
【0031】
特定の実施形態において、前記固定用メンバーは、例えばレーザーによって、ハウジングに溶接される。
【0032】
特定の実施形態において、前記固定用メンバーは、ハウジングに接着結合される。
【0033】
特定の実施形態において、前記固定用メンバーは、弾性相互ロックによって前記ハウジングと連係する。
【0034】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。なお、この説明は、例として与えられるものであり、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係るリングの好ましい例の斜視図である。
図2図1のリングを備える計時器用ムーブメントの斜視図である。
図3図2の計時器用ムーブメントを横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の第1の態様に係る、計時器用ムーブメント20のための耐磁性及び耐衝撃性の保護リング10を示している。
【0037】
図2及び3に示しているように、リング10は、計時器用ムーブメント20に対して固定されるように意図されており、リング10自体が、携行型時計ケースのミドル部(図示せず)の内部体積内に収容されるように意図されている。
【0038】
計時器用ムーブメント20には、回転するように動くことができる振動錘23があり、この振動錘23は、当業者に知られている形態で、計時器用ムーブメントが機械式であるか電子式であるかに応じてバレル又は発電機などである計時器用ムーブメント20のメンバーにエネルギー供給するように構成している。
【0039】
リング10には、2つの軸方向の端の間にて軸方向に延在している管状の本体があり、これらの2つの端は、以下の文章においてはそれぞれ、「第1の軸方向の端」(11)及び「第2の軸方向の端」(12)と呼ぶ。リングの本体10には、計時器用ムーブメント20のケージに対向するように配置されるように意図されている内面13がある。図に示している本発明の好ましい実施形態において、リング10の本体は、実質的に円形の断面を有する。
【0040】
より正確には、計時器用ムーブメント20のケージには、当業者であれば当然わかるように、ブリッジアセンブリー22が固定されたプレート21がある。特に図2及び3に示しているように、リング10は、計時器用ムーブメント20のブリッジアセンブリー22を囲むように構成している。すなわち、リング10は、リング10の本体の内面13がブリッジアセンブリー22の周部に対向するように配置されるように構成している。
【0041】
なお、ケージと振動錘23以外の計時器用ムーブメント20のコンポーネントは、当業者によく知られており、したがって、本発明に直接関連しないので、本文章においては説明しない。
【0042】
リング10は、好ましいことに、磁場に対して高い透磁率を有するように強磁性である材料によって作ることができる。このような材料は、軟鉄によって構成していることができる。したがって、リング10は、計時器用ムーブメント20を包囲する磁力線を導き、したがって、磁場の影響から計時器用ムーブメント20を保護することを可能にする。
【0043】
図1及び2に示しているように、本発明の好ましい実施形態において、リング10には、好ましいことに、軸方向の空欠部14が形成されていることができ、この軸方向の空欠部14は、例えば、リング10の第1及び第2の軸方向の端11及び12の間に形成されて、半径方向に横断する。軸方向の空欠部14は、対向するように配置されるリング10の2つの長手方向の端どうしを離間する。
【0044】
軸方向の空欠部14の利点として、図に示しているように、セッティング又はワインド用ステム24、又は押しボタン、又はより一般的には計時器用ムーブメント20に接続される他の任意の制御メンバーを、この軸方向の空欠部14が通り抜けるときに、通すことを可能にすることがある。
【0045】
図1~3に示している好ましい例において、軸方向の空欠部14は、第1及び第2の軸方向の端11及び12の一方から他方まで形成されている。したがって、軸方向の空欠部14は、軸方向に通り抜けることができる。
【0046】
軸方向の空欠部14は、通り抜けるかどうかにかかわらず、リング10に弾性を与えることに寄与する。特に、リング10は、好ましいことに、リング10の2つの長手方向の端どうしを離間する距離を変えるように弾性的に変形することができる。実際に、軸方向の空欠部14は、通り抜けなくても、リング10にある程度の可動性を与える弱い領域を構成する。
【0047】
このような特徴は、下記に詳細に説明するように、特に、計時器用ムーブメント20に対するリング10の取り付けを容易にすることに寄与する。
【0048】
図示していない実施形態において、材料のブリッジがリング10の2つの長手方向の端どうしを第1の軸方向の端11の高さにて接続するように、軸方向の空欠部14は、第2の軸方向の端12から第1の軸方向の端11の方へと部分的にのみ形成されていることができる。
【0049】
また、この実施形態において、軸方向の空欠部14は、リング10に弾性を与えることに寄与する。
【0050】
本発明の他の実施形態において、リング10には、互いに離れている又は互いに特定の距離離れている複数の軸方向の空欠部14があることができる。
【0051】
図2及び3に示しているように、リング10が計時器用ムーブメント20に固定されているときに、その第1の軸方向の端11は、振動錘23に対向するように位置するように意図されており、第2の軸方向の端12は、プレート21に対向するように位置するように意図されている。
【0052】
特に、リング10が計時器用ムーブメント20に固定されているときに、リング10は、その第1の軸方向の端11とともに、回転軸に垂直な軸のまわりの振動錘23の角変位を制限する止めを形成するように構成しており、これによって、振動錘23が、計時器用ムーブメント20のブリッジアセンブリー22のブリッジと接触することができなくなり、潜在的な変形や潜在的な破損を維持し、これらの要素によって、振動錘23を計時器用ムーブメント20に固定することが可能になる。
【0053】
すなわち、振動錘23は、リング10の領域に影響を与える可能性が高い。
【0054】
このような変位は、計時器用ムーブメント20、具体的にはそれを備える携行型時計、が衝撃、特に、軸方向の成分がある衝撃、を受けたときに、発生することがある。
【0055】
好ましいことに、振動錘23からのいずれの衝撃もリングの領域に対して与えられるために、これによってマークやスクラッチが発生しても、このリングの領域の横断方向の寸法構成が、典型的には数十分の一ミリメートルのオーダーであるように、比較的小さいかぎり、肉眼では見えないかあまり見えない。
【0056】
本発明は、図1及び2に示しているように、ブリッジアセンブリー22を半径方向に越えて延在する振動錘23を備える計時器用ムーブメントに適している。実際に、このときに、図3の横から見た図において示しているように、振動錘23は、リング10に対してカンチレバー構成で支えられ、したがって、リング10が止めとして機能することができる。
【0057】
これを達成するために、リング10は、図2及び3に示しているように、振動錘23の方へとブリッジアセンブリー22を越えて軸方向に延在するように構成していることができる。
【0058】
リング10には、固定用メンバー15があり、これによって、自由度なしでリング10を計時器用ムーブメント20に機械的に接続することが可能になる。
【0059】
図1に示しているように、本発明の好ましい実施形態において、リング10の固定用メンバー15は、第2の軸方向の端12から延在していることができる。これらの固定用メンバー15は、計時器用ムーブメント20、特に計時器用ムーブメント20のプレート21、において形成されるハウジング25に係合して、リング10と計時器用ムーブメント20を一緒に固定するように意図されている。
【0060】
特に、図1~3に示している本発明の好ましい実施形態において、各固定用メンバー15は、舌の形態であり、固定用メンバー15の第1の部分は、「近位部分」150と呼ばれ、リング10の第1の軸方向の端11とは反対側の方向の軸方向を向いており、固定用メンバー15の第2の部分は、「遠位部分」151と呼ばれ、近位部分150に接続しており、リング10の半径方向に延在する平面内にてリング10の外側の方へと延在している。
【0061】
好ましいことに、リング10は、好ましくは、計時器用ムーブメント20のまわりに配置されるときに拘束された状態になるように構成しており、各固定用メンバー15がハウジング25内にて係合する。したがって、リング10は、この位置に配置されるときに、計時器用ムーブメント20にクランプ力を及ぼし、これによって、リング10が計時器用ムーブメント20に対して所定の位置に保持されるようにすることができ、したがって、計時器用ムーブメント20に対するリング10の固定を大幅に容易にする。この技術的効果は、リング10の弾性のおかげで可能になる。
【0062】
特に、本発明の好ましい実施形態において、遠位部分151の少なくともいくつかは、自身が係合するように意図されているハウジング25に対してクランプ力を与えるように構成している。
【0063】
図1に示しているように、本発明の好ましい実施形態において、リング10は、3つの固定用メンバー15を備え、そのうちの1つの固定用メンバー15は、軸方向の空欠部14の両側におけるリング10の長手方向の端のそれぞれに配置され、1つの固定用メンバー15は、軸方向の空欠部14とは直径的に反対側に配置される。
【0064】
したがって、このようなリング10の固定用の点は、計時器用ムーブメント20のまわりにてバランスのとれた形態で分散している。
【0065】
好ましいことに、特に、図2に示しているように、固定用メンバー15は、リング10の第2の軸方向の端12がプレート21から特定の距離離れて配置されるような寸法構成を有し、これによって、固定用メンバーの遠位部分151がハウジング25に支えられることが確実になる。
【0066】
この構成は、計時器用ムーブメント20に対するリング10の固定を容易にする。
【0067】
プレート21には、「上面」と呼ばれる面の反対側に、ブリッジアセンブリー22の方を向いている「下面」210と呼ばれる面がある。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、図2及び3に示しているように、計時器用ムーブメント20のプレート21は、ブリッジアセンブリー22を越えて半径方向に延在し、プレート21の下面210の周部によって、ブリッジアセンブリー22に対する半径方向の肩部を形成する。
【0069】
このプレート21の下面210の周部上にハウジング25が形成される。
【0070】
固定用メンバー15の遠位部分151は、好ましくは、係合するハウジング25に溶接され、例えば、レーザー溶接法によって溶接される。
【0071】
代わりに、遠位部分151を、ハウジング25に接着結合することができ、又はハウジング25に圧入することによって組み付けることができる。
【0072】
本発明の他の実施形態において、弾性相互ロックによって遠位部分151をハウジング25に固定することができる。
【0073】
本発明の別の実施形態において、遠位部分151には、プレート21のハウジング25にあるねじ穴と連係するように意図されているねじの係合を可能にする貫通穴があることができる。ハウジング25を含まない代替的実施形態において、ねじは、プレート21の下面210に形成された、又はねじ頭を沈み込ませるように意図されたカウンターボアの底部に形成された、ねじ穴と連係する。
【0074】
代わりに、遠位部分151に、プレート21内に入り込むように意図された釘の係合を可能にする貫通穴が形成されていることも可能である。
【0075】
また、図1~3に示しているように、リング10には、第1の軸方向の端11とリング10の長手方向の端それぞれの間の交差部に面取り部16がある。したがって、これらの面取り部16はそれぞれ、固定用メンバー15の反対側にある。
【0076】
この特徴は、振動錘23がリング10の鋭角やエッジに当たってしまうリスクを回避することを可能にする。このように当たってしまうと、計時器用ムーブメント20が適切に機能しなくなってしまうことがある。
【0077】
なお、図1~3に示している実施形態においては、リング10が回転体の円筒の管状の形であるが、図示していない他の実施形態においては、リング10が他の管状の形であることができる。例えば、リング10は、楕円形、多角形、又は保護するべき計時器用ムーブメント20のブリッジアセンブリー22の断面の周部の形に対応する任意の他の適切な形である断面を有することができる。
【0078】
また、図示していない他の実施形態において、上記と比較して固定用メンバー15がリング10の外部の方ではなく内部の方へと延在しており、その他は上記と同様であるようにすることができる。また、この実施形態において、固定用メンバー15は、ブリッジ22又はプレート21において形成された対応する形態であるハウジング25と連係することができる。
【0079】
本発明の別の実施形態において、固定用メンバー15は、起伏がある形態であることができ、これは、例えば、リング10の内側の方を向いており、リング10の長手方向の端どうしの間に延在している環状のボスによって形成される。この場合に、前記起伏は、ブリッジアセンブリー22の周部に形成された溝と連係するように意図されている。
【0080】
本発明の別の実施形態において、固定用メンバー15は、リングの本体10の第2の軸方向の端12からリング10の外側の方へと延在している半径方向のカラーの形態であることができ、この固定用メンバー15とリングの本体10は、計時器用ムーブメント20とミドル部の間の圧入によって固定されるように意図されている。
【0081】
代わりに、前記カラーは、プレート21に接着結合することによって固定される。
【0082】
固定用メンバー15の形態にかかわらず、プレート21には、その下面210に、計時器用ムーブメント20に対してリング10を固定するように意図された固定用ねじを受けるために形成されたねじ穴があることができる。代わりに、固定用フランジを用いることも可能である。
【0083】
本発明の他の実施形態において、リング10の固定用メンバー15を、リングの本体10の第2の軸方向の端12から軸方向に延在しているタブによって形成することができ、これらのタブは、プレート21を貫通する穴にて係合して、これらのタブの自由端がそれらの穴を越えて突き出て、プレート21の上面の方に折り曲げられるように意図されている。
【0084】
本発明の他の実施形態において、リング10の本体には、貫通穴があり、これらの貫通穴はそれぞれ、計時器用ムーブメント20のブリッジアセンブリー22から半径方向に延在しているピン又はスタッドを受けるように形成される。
【符号の説明】
【0085】
10 リング
11 第1の軸方向の端
12 第2の軸方向の端
13 内面
14 軸方向の空欠部
15 固定用メンバー
16 面取り部
20 計時器用ムーブメント
21 プレート
22 ブリッジアセンブリー
23 振動錘
25 ハウジング
150 近位部分
151 遠位部分
210 下面
図1
図2
図3