(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】容器クロージャーシールを備えた回転式真空容器クロージャー
(51)【国際特許分類】
B65D 53/02 20060101AFI20240222BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
B65D53/02
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2022526519
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2019084454
(87)【国際公開番号】W WO2021115571
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】512129859
【氏名又は名称】アクテガ ディエス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】メンゲル ダニー
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510779(JP,A)
【文献】独国実用新案第202012009538(DE,U1)
【文献】特表2014-518815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0006532(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0026127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/02
B65D 53/00
C09K 3/00
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に脂肪含有充填材料用の回転式真空容器クロージャーであって、前記回転式真空容器クロージャーは、ポリマー化合物を含む容器クロージャーシールを有し、前記シールは
、全体的に前記ポリマー化合物から構成され、
a)前記ポリマー化合物は、PVCを含まず、少なくとも1種のTPS及び少なくとも1種のco-PPを含み、
b)前記ポリマー化合物は、ショアA硬さ(ASTM D2240、DIN ISO 7619-1)が70℃で30~85であり、MFR(DIN ISO 1133、5kg/190℃)が20g/10min未満であり、
c)前記ポリマー化合物は、20℃で10%以下の液体構成成分を含み、
前記ポリマー化合物は、少なくとも1種のSEEPS、ポリブテン又はスチレン含有量レベルが20%~40%である線状SEBSを含む、回転式真空容器クロージャー。
【請求項2】
前記ポリマー化合物は、POEを含まない、請求項1に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項3】
前記ポリマー化合物は、ホモPPを含まない、請求項1又は2に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項4】
前記ポリマー化合物は、少なくとも1%のTPSを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項5】
前記ポリマー化合物は、ショアA硬さ(ASTM D2240、DIN ISO 7619-1)が23℃で50~90のTPSを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項6】
前記ポリマー化合物は、ショアD硬さ(ASTM D2240、DIN ISO 7619-1)が23℃で55未満、かつ、15より大きいco-PPを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項7】
前記ポリマー化合物は、MFRが、2.16kg/230℃で測定されると、30g/10min未満のco-PPを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項8】
前記ポリマー化合物は、MFR(2.16kg/230℃)が少なくとも0.1g/10min、最大15g/10minのco-PPを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項9】
前記ポリマー化合物は、融点が165℃未満のco-PPを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項10】
前記ポリマー化合物は、1%~80%のco-PPを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項11】
前記ポリマー化合物は、少なくとも1種のLLDPEを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項12】
前記ポリマー化合物は、10%以下の潤滑剤を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項13】
前記ポリマー化合物は、20℃で、7%以下の液体成分を含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項14】
低温殺菌可能、又は滅菌可能である、請求項1~13のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項15】
前記回転式真空容器クロージャーを用いてキャッピング、又はシーリングされた容器が、真空保持を示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【請求項16】
前記ポリマー化合物は、圧縮永久歪み(ASTM D395-97方法B)が23℃で最大50%である、請求項1~15のいずれか一項に記載の回転式真空容器クロージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に係る、PVCを含まない容器クロージャーシール(容器閉鎖用パッキン)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーベースの容器クロージャーシールの主な課題は、シール成分の充填材料への移行である。可塑剤及び希釈剤などの移行物質が脂溶性であることが多いため、移行の課題がグリース又は油含有充填材料で特に頻繁に発生する。
【0003】
本明細書で検討されているタイプの大型容器クロージャーは、特に、典型的には食品又は飲料用のねじ蓋付きのガラス瓶の閉鎖に用いられるラグ(爪)クロージャーである。これらの食品は、調理済み食品、ソース、デリカテッセン、魚肉の油漬け、アンチパスト、スパイスペーストなどの脂肪含有製品であることが多く、その脂肪又は油の含有量は、包装材の脂溶性成分が食品に溶解するリスクを高める。
【0004】
また、これらの要件は、典型的にはPress-On Twist-Off(登録商標)のクロージャー(本明細書でPTクロージャー又はPTキャップとも呼ばれる)付きの瓶で販売される乳児用食品に特に関連する。
【0005】
本明細書に関連する容器クロージャーは、通常、少なくとも35mm、例えば38mm又はそれ以上、例えば82mmの開口幅を有する。ラグクロージャーは、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上のラグを有してもよい。
【0006】
従来のPVCベースの容器クロージャーは、良好なシール性を有する。軟質PVC技術に基づいて、低移行のシーラントを配合することも可能であり、このシーラントは、ポリアジペートを使用することが多い。ポリアジペートは、脂肪と接触しているとき、その分子量のために移行しにくい。
【0007】
移行は、規則(EU)310/2011及びDIN EN 1186で定義されたルールに従って評価される。特に室温での保存の場合、40℃での10日間の試験時間後の評価が移行を決定するのに十分であると想定される。しかしながら、分析の実施によれば、シール材に軟質化PVCを使用する場合、これらの試験条件は不十分であり、植物油と接触して室温で数か月保存した後、移行限界が大幅に超えられる場合があることが教示される。
【0008】
PVC含有化合物を包装材に使用することも望ましくない。通常の家庭用廃棄物の燃焼では、ハロゲン化プラスチックから、大気中への放出が有害である酸性ガスが発生する。また、微量のPVCでもプラスチック廃棄物の材料リサイクルを阻害する。また、このようなPVCベースのシール要素には、可塑剤を用いる必要があり、これも食品の許容できない変質、及びエポキシ化大豆油を可塑剤として使用する場合の毒性評価されていないエピクロロヒドリンの潜在的な形成という理由からも懸念される。そのため、周知のPVC含有シールの好ましい特性にできる限り近づけるような、PVCを含まない容器クロージャーシールが求められている。
【0009】
本発明によれば、PVCを含まない化合物が使用される。本発明に係る製品では、移行は、液体成分を使用しないこと、及び/又は移行しにくいポリマーを使用すること、並びに他の手段によって、大部分又は完全に回避することができる。
【0010】
包装(該当する場合は容器クロージャーのシールインサートも含んでもよい)の成分の食品への移行は、一般的に望ましくないだけでなく、法的規定によって厳しく規制されている。このような規定の例としては、追補(EU)321/2011、(EU)1282/2011、(EU)1183/2012、(EU)202/2014、(EU)174/2015、(EU)2016/1416、(EU)2017/752、(EU)2018/79、(EU)2018/213、(EU)2018/831、(EU)2019/37及び(EU)2019/1338を含むEC規則1935/2004、2023/2006、(EU)10/2011などが挙げられる。現在、乳幼児用食品には、最大レベル60ppmの移行成分が許容されている。
【0011】
該当する場合、観察された移行の程度の測定は、特にDIN EN 1186で定義された方法によって実施される。このような方法は、本発明の文脈においても使用される。
【0012】
本明細書で検討されているタイプの容器クロージャーのために、PVCを含まないシールインサートを設けることは、これらのクロージャーがその化学成分の移行の可能性に関する上記の規定に適合しなければならない場合、些細な問題ではない。また、シール機能は、充填条件下でも保証されなければならない。
【0013】
容器の開口の内径がより大きい(少なくとも35mm)容器クロージャーのためのシール材に対する要求は、シール内の材料量が比較的多いため、より厳しいものになる。このような目的のためには、シール要素の製造におけるポリマー材料の十分な流動性と、シール状態での十分なシール性とを組み合わせることが特に重要であり、これには、ガスの侵入又は脱出に対して現在要求されている気密性も含まれ、必要に応じて加熱中又は他の理由による容器内の過圧力の発生の際の容器の破裂を防止する圧力解放弁の効果と組み合わされる。また、特に開口径がより大きい容器(例えば、缶詰)の典型的な用途では、シール要素は低温殺菌、場合によって滅菌条件でも使用できることが要求される。
【0014】
全てのこれらの特性を有するシールは、可能性のある化学成分の移行に関しても、上記要件を満たさなければならない。
【0015】
これらの課題に対する解決手段は、これまでに成功裏に導入されており、本発明者らの欧州特許出願第09 756 681号、現在の欧州特許第2 470 435号明細書に開示されている。その明細書に記載されたシールは、PVCを含まず、少なくとも1種のオレフィンブロックコポリマー(OBC)と、少なくとも1種のポリオレフィンエラストマー(POE)、高密度ポリエチレン(HDPE)又はポリプロピレン又はプロピレンコポリマー((co-)PP)との組み合わせに基づいている。任意のTPSは含有すべきではない。ショアA硬度は室温で45~95であり、圧縮永久歪み(DVR)は70℃で30%~90%である。DVRは、欧州特許第2 470 435明細書に従って、そして、本発明の文脈において、規格ASTM D395-97方法Bに従って決定される。欧州特許第2,470,435明細書の前に知られている化合物の処理を容易にするために、通常、希釈剤及び/又は可塑剤がそれらに添加されていた。特に、伸展油又は可塑剤(好ましくはホワイトオイル)などの液体成分は、適用温度で使用されていた。しかしながら、20℃での潤滑剤及び液体成分は、移行を促進することができるため、欧州特許第2 470 435明細書に従って既知の配合物では実質的に排除される。
【0016】
欧州特許第2 470 435号明細書から知られている製品は、多くの用途に理想的であるが、いくつかの使用では改良が可能である。例えば、機械的なシールプロセスでは、閉鎖距離が非常に短く、機械が限られた範囲だけでしか調整できない場合、シールの切断につながる可能性がある。非常に高速に作動する機械を使用すると、クロージャーの十分なウォームアップに蒸発時間が十分でないことがある。
【0017】
したがって、欧州特許出願第09 756 681号から知られているシールよりも熱的及び機械的に安定であり、しかも柔らかいシールを有することが望ましい。これは、切断のリスクが低い、より簡単なシーリングを実現することが意図されている。このシールは、好ましくは、公知のシールの有利な特性を有するべきである。
【0018】
また、シールは、カムクロージャ(Twist-Off(登録商標) クロージャー)、ラグクロージャー(Press-On Twist-Off(登録商標) クロージャー)などのスクリュークロージャー及び他のスクリュークロージャーが容易に開くことができるように、可能な限り低い開度を有するべきである。クロージャーが意図せずに開いてしまうことがないように確保しなければならないため、開度を低くしすぎることはできない。
【0019】
従来の82mmのTwist-Off(登録商標) クロージャーでは、PVC含有シールの開度は4.8~6.2Nm(42~55インチ/LBS)以上の範囲であることが多い。開口に必要なトルクを低減するように設計された、移行値が低いPVCベースのシールを備えた技術的に複雑なOrbit(登録商標) クロージャーは、4Nm未満である。欧州特許出願第09 756 681号に準拠した周知のシールを備えた、Twist-Off(登録商標) クロージャーの典型的な開度は、4.3~5.1Nmである。PVCを含まないクロージャーの場合、より低い開度が有利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
このようなシールの製造は、本発明の本質的な目的である。本発明は、原則として、独立請求項で特定された特徴の組み合わせによって、これら及び他の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
参照により開示の完全に本願の開示に組み込まれる欧州特許出願第09 756 681号による解決手段と同様に、本発明のシールは、好ましくは、熱的に十分に流動可能な形態で金属又はプラスチック製のクロージャーの未加工物(ブランク)に導入されることにより、所望の形状となるようにスタンピングなどが行われ、冷却後に該形状が保持されるポリマー化合物を含む。これらの場合には、完成したシールは、通常、完全にポリマー化合物で構成される。対応する製造プロセスの機械は、例えば、SACMIから入手可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「シール」、「シールインサート」及び「シール要素」という用語は、本明細書の文脈において同義である。
【0024】
本発明に係る容器クロージャーの場合にも、シール要素は、公知のクラウンキャップ(王冠)又はスクリュークロージャーの場合と同様に、容器クロージャーの内面にインサートとして形成される。
【0025】
原則として、本発明に係る製造方法では、好ましくは、最初に内側が適切なコーティング系で前処理される金属製の容器クロージャーの未加工物が想定される。プラスチック製の容器クロージャーの場合には、この前処理は不要である。
【0026】
通常、コーティング系は、ベースコートと接着剤ワニスとからなり、その両方は、エポキシフェノール樹脂系又は(通常は規制上の理由から)ポリエステルをベースとすることが可能である。
【0027】
この目的に特に適しているのは、ACTEGA Rhenania(アクテガ・レナニア)社のコーティング系(接着剤ワニスTPE1500を伴うベースコートTPE279、又はACTEbond(登録商標) TPE-655-MFを伴うACTEcoat(登録商標) TPE515)であり、これに、本発明に係る最も好ましい化合物が特によく接着する。
【0028】
或いは、適当なプライマーコーティングは、ラミネート法又は場合によって共押出法によっても施すことができる。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、このように前処理された未加工物に、熱的に流動可能な形態でポリマー材料が内部に施されて、シールを形成する。これに特に適切なものは、シール化合物が100℃~260℃の温度範囲で与えられる押出である。
【0030】
押出は、シールインサートが円板状となる場合には、未加工物の内面のほぼ中央で行うことができる。押出のためのポリマー材料の投与(注入)は、規定量のポリマー化合物をノズルから吐出することによって行われる。続いて、シール要素は、好ましくは、適切なスタンピング(周知の圧縮成形法に類似)によって、まだ流動性のある押出された材料から形成される。
【0031】
或いは、ポリマー材料は、例えば、ストランドとして押出され、適切な長さに切断されてもよい。次いで、このようにして得られたストランド部は、予熱されたクロージャーの未加工物に挿入され、必要に応じて更に予熱された後、シールインサートのためにスタンピングされる。接着品質を向上させるために、焼成工程を続けることができる。その後、クロージャーは冷却される。
【0032】
本発明の他の好ましい実施形態では、米国特許第9409324B2号明細書に記載されているように、シール材の溶融リングを押出し、アプリケータによって未加工物に挿入して、シールに形成することができる。
【0033】
公知のボトルクロージャー(クラウンキャップなど)の場合、シール要素は、通常、容器クロージャーの内側に円板状として形成されるが、本発明に係る大型容器クロージャーのような場合、代わりに、容器の閉鎖状態において開口領域内の容器壁上に存在するポリマー材料のリングのみを形成することが好ましい場合がある。
【0034】
変更形態では、シール要素は、適切なポリマー材料をスタンピングすることによって、クロージャー又はクロージャーの未加工物の外側に形成され、その後にクロージャー又は未加工物に挿入されることが可能である。この方法は、SACMIによって外殻成形(outshell-moulding)としても知られている。
【0035】
主成分又は単一成分として、シールインサートの材料は、少なくとも2種の異なるポリマー、即ち、少なくとも1種のTPS及び少なくとも1種のco-PPを含むポリマー成分を含む。この主ポリマー成分の特性は、更なる成分、例えば、更なるポリマーを添加することによって好適に変更することができる。
【0036】
したがって、本発明は、欧州特許出願第09 756 681号から公知の、所望のシール又はシールのポリマー化合物がOBCを含まなければならないという概念から逸脱している。OBCは、本発明に係るシールに含有されることが可能であるが、含有されなければならないわけではない。
【0037】
重要なさらなる相違点は、本発明の特に好ましい実施形態において、関連する含有量レベルのPOEが省略されることにある。驚くべきことに、周知のシールにおけるPOEは、他のポリマーによって置き換えることができる。
【0038】
ガラス容器は、通常、例えばPEワックスでコーティングすることによって仕上げられるため、このPOEの省略は、公知のシールで時折発生する問題を解決することに役立つ。POE含有のシールは、特定の条件下でそのようなガラスと共に使用すると、不快な粘着性を示すことがあり、これにより、クロージャーの開度が望ましくない形で増加する。
【0039】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、シールは、分析的に検出可能な含有量のPOEを含有しない。他の好ましい実施形態では、低含有量の少なくとも1種のPOEは、存在してもよいが、このPOEは、シールの開度が、POEを含有しない同一のシールと比較して有意に変化しないほど低く維持される。
【0040】
更に、本発明は、欧州特許出願第09 756 681号による、シール又はシール化合物がTPSを含有しなくてもよいという概念から逸脱している。
【0041】
本発明は、ポリマー化合物が特定のタイプのTPS、特に、特定のタイプのco-PPと組み合わせたSEBSを含む場合、熱的及び機械的に安定であるが、より軟質の汎用シールが得られるという知見に基づくものである。以下に説明するように、全ての既知のタイプのTPS及び全ての公知のタイプのco-PPがこれに適しているわけではない。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明に係るポリマー化合物は、少なくとも1種のOBC及び/又はポリエチレン、特に例えばLLDPEなどの少なくとも1種のポリオレフィンを更に含む。ポリオレフィンは、類似する物理的特性を有する他のポリマーによって置き換えることができることが多い。ポリマー化合物は、選択的に、さらなるポリマーを含有してもよい。
【0043】
好ましくは、シールインサートの材料では、適用温度で液体である成分の含有量が非常に低く、特に好ましくは全く含まれない。適用温度は、通常、周囲温度と等しく、即ち、屋外又は暖房された部屋での通常の周囲温度の範囲内である。典型的には、適用温度は20℃である。
【0044】
したがって、好ましくは、特にホワイトオイルのような液体希釈剤は、シールインサートの材料に少量だけしか添加されず、又は好ましくは全く添加されない。
【0045】
好ましくは、上記材料は、10%以下、好ましくは7%以下、特に4%以下、更に1%以下の潤滑剤、特に、40℃で10日間の移行試験において限定的にしか脂肪含有充填材料を通過しない潤滑剤を含有する(パーセントは、本願では、特に明記しない限り、常にシール中の化合物の総重量を基準とする重量パーセントである)。
【0046】
本発明に係るポリマー化合物は、ショアA硬度(ASTM D2240、DIN ISO 7619-1)が一般的に70℃で30~85であり、より具体的には、40~75である。硬度が低いほど、クロージャーを取り付けやすくなる。蒸気真空キャッピング機で使用する場合、硬度が70℃でショアA30未満になると、切断のリスクが高くなる。硬度がショアA85を超えると、シーリングができなくなるリスクが高くなる。予熱を行わない冷却真空シーリング機で使用する場合、ショアA硬度が85を超えると、真空にならない。
【0047】
ポリマー化合物のDVR(23℃、ASTM D395-97方法B)は、好ましくは最大50%、より好ましくは最大40%、特に好ましくは最大30%である。最適化された実施形態では、DVRは、25%以下であることができる。
【0048】
ポリマー化合物は、好ましくは、溶融物に状態で比較的高い粘度を有し、これは、DIN ISO 1133に準拠したメルトマスフローレート(MFR)が、5kgの重量と190℃の測定温度で、20g/10min未満、好ましくは15g/10min未満であることを意味する。
【0049】
特に、冷却真空キャッピング機で処理する場合には、他の粘度を選択することが有用であってもよい。
【0050】
シーリングした後、冷却プロセス中及び冷却プロセス後、またシーリングされた容器の保管中にも、PVCを含まない化合物にはポリマー化合物の結晶化プロセスが発生することが多い。これらのことは、シールの硬さ及び弾性に影響を与えることにより、クロージャーと容器との間の張力、及びシールの表面での潤滑剤の移行に影響を与える。結晶化が遅いほど、ポリマー化合物が緩和する時間が長くなるため、張力は低くなる。化合物の結晶含有量が少ないほど、潤滑剤の移行はより有利になる。
【0051】
ポリマー化合物の結晶化度は、結晶化面積、結晶化プロセスの開始及び終了、並びに最大結晶化度の値を与える公知の方法を使用して測定することができる。
【0052】
ピーク結晶化温度と重量に関する結晶化エンタルピーとは、最初の冷却曲線からDSC測定(動的走査熱量測定)により決定される。そのルールは、ISO 11357規格又はそのサブチャプタ(特に15011357-3)に記載されている。量は、Mettler Toledo(メトラー・トレド)のDSC1システムを用いて測定された。
【0053】
真空スクリュークロージャーのシール材の適性を説明するときに、発熱ピークの温度が容器クロージャーの予想最高使用温度よりも高くなるようにポリマー化合物を設計することが有効であることが明らかになった。結晶化プロセスからのこの発熱ピーク温度は、吸熱溶融ピークの温度よりも十分に低いことが多い。
【0054】
基本的に、本発明は、低い結晶化エンタルピーを有するこのようなポリマーを使用することが好ましく、特に結晶性ポリオレフィン、例えばホモPP、LLDPE、LDPE及びHDPEは、好ましくは、使用されないか又は低下した程度でのみ使用される。
【0055】
好ましいポリマー化合物は、室温を超える温度で特定の全結晶化エンタルピーが50J/g未満、より好ましくは最大40J/g、より好ましくは最大30J/gである。
【0056】
本発明に用いられるTPSは、SEBSであることが好ましい。スチレン含有量レベルが26%~34%、特に29%~33%の線状SEBSは、一般的に好ましい。31%~32%のスチレンを含むSEBSは、通常、最も好ましい。
【0057】
特に好ましいSEBSは、タイプS-E/B-Sの線状トリブロックコポリマーである。KRATON(登録商標) G1651及びCALPRENE(登録商標) 6174などの製品が特に好適である。スチレン含有量レベルが25wt未満であると共に、分子量が上述した基準物質よりも低いSEBSポリマーをKRATON(登録商標) G1651と混合して使用することにより、(ホワイトオイルの代わりに、可塑剤の意味で)化合物の柔軟性及び流動性を高めることができる。
【0058】
SEBSの代わりに、又はSEBSと組み合わせて使用できる他のTPSは、SEEPS、ポリブテン、及び類似するTPSを含む。
【0059】
好ましいポリマー化合物は、一般的に最大60%、より具体的には最大55%、より好ましくは最大50%のTPSを含む。好ましくは、そのようなポリマー化合物は、少なくとも1%、具体的には少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%のTPSを含む。他の好ましい実施形態では、そのようなポリマー化合物は、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、通常、好ましくは少なくとも40%のTPSを含む。
【0060】
好ましいTPSは、一般的に、スチレン含有量レベルが28%~35%である。トルエン中の10%溶液は、粘度が、Brookfiled(ブルックフィールド) LVT粘度計で測定されると、2.5Pa・s未満である。密度は、好ましくは、0.90~0.93g/ccmである。
【0061】
TPSはそれ自体、グリース及び油のシールへの侵入を容易にするため、脂肪含有又は油性の充填物と接触するシーリング化合物には特に適したポリマーではない。これは、低温殺菌又は滅菌などの熱処理された製品に特に当てはまる。欧州特許出願第09 756 681号によれば、ポリマー化合物中のTPS含有量を可能な限り排除する必要がある。
【0062】
しかしながら、驚くべきことに、ポリマー化合物が特定のポリプロピレンコポリマー(co-PP)を含有する場合、TPSは、グリース及び油の適用のためのシール化合物にもうまく使用できることが判明した。明らかに、含有されるco-PPの量は、TPSの存在下でも、また低温殺菌、更に滅菌(最大132℃の温度)においても、シールを通して脂肪及び油の吸収を防止する。これは、ホモPPを使用することによりも達成できるが、ホモPPは、このようなTPSベースの化合物においてシールの要求される物理的特性を得ることができない。したがって、ホモPPは、本発明の好適な実施形態では、co-PPの代わりに使用されない。
【0063】
好ましいco-PPは、ショアD硬度が55未満、好ましくは45未満、より好ましくは40未満である。ショアD硬度は、好ましくは15より大きく、より良好には20より大きく、より好ましくは30より大きい。
【0064】
co-PPのMFRは、好ましくは2.16kg及び230℃の測定温度で30g/10min未満、より好ましくは20g/10min未満、更により好ましくは10g/10min未満である。
【0065】
特に好ましいのは、MFR(2.16kg/230℃)が少なくとも0.1、より具体的には少なくとも0.3、更により具体的には少なくとも0.5、最大15、より具体的には最大12、更により具体的には最大10のco-PPである。
【0066】
co-PPの融点は、好ましくは165℃未満、より好ましくは160℃未満、最も好ましくは150℃未満である。
【0067】
化合物におけるco-PPの使用量は、好ましくは、通常5%~265%である。より高い含有量レベルが可能である。
【0068】
co-PPは、好ましくは、比較的高い融点で低い結晶化度を有する。好ましいco-PPは、135℃を超える、又は更に160℃を超える融点で、50J/g未満の全結晶化エンタルピーを有する。
【0069】
特に適した製品は、LyondellBasell(リヨンデルベーセル)のADFLEXシリーズ又は三井化学のTAFMERシリーズのポートフォリオで見つけることができる。ExxonMobil(エクソンモービル)からのVISTAMAXXタイプも適している。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、co-PPは、他のポリマー、例えばLLDPEによって部分的に置き換えることができる。
【0071】
ポリマー材料は、最大100℃の熱間充填に最大60分間耐えることができる。
【0072】
任意選択的に、色素の移行を除くために、色素、好ましくは無機色素を、化合物の配合物に添加することも可能である。(不飽和)脂肪含有酸アミド、ワックス、シリコーン及び他の一般的な添加剤などの他の添加剤を、例えば、加工特性及び性能特性を改善するために、ポリマー化合物に添加することができることも示される。
【0073】
以下において、本発明の例示的な実施形態が、本発明に係る容器クロージャーシールが上述したように形成されたポリマー化合物の組成に基づいて説明される。
【実施例】
【0074】
例示的な実施形態1
40%のco-PP
10%のSEBS
47%のOBC
3%の潤滑剤
【0075】
例示的な実施形態2
30%のco-PP
40%のSEBS
30%のLLDPE
【0076】
例示的な実施形態3
60%のco-PP
40%のSEBS