(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】試料を輸送および混合するためのシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240222BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20240222BHJP
B01F 31/20 20220101ALI20240222BHJP
B01F 31/24 20220101ALI20240222BHJP
B01F 29/80 20220101ALI20240222BHJP
B01F 35/22 20220101ALI20240222BHJP
【FI】
G01N35/02 D
G01N35/04 G
B01F31/20
B01F31/24
B01F29/80
B01F35/22
(21)【出願番号】P 2022550719
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(86)【国際出願番号】 US2021019276
(87)【国際公開番号】W WO2021173577
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-17
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー-ジョセフ・パイパー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・グリエルミ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0011224(US,A1)
【文献】特表2005-537127(JP,A)
【文献】特開2005-321306(JP,A)
【文献】特開平10-137569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
B01F29/00-33/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料輸送システムであって:
輸送および混合予定の試料用の試料管を保持するように構成されたキャリアと;
キャリアを支持するように構成された輸送体と;
輸送体上でキャリアに運動を与え、キャリアを目的位置に送達するように構成された案内部分と;
制御装置と、を含み、該制御装置は:
試料の混合を引き起こすように構成された動きプロファイルを含む、試料に関連付けられた命令を識別し、
案内部分と通信して、それにより、キャリアが、
試料の混合を引き起こすために輸送体上で動きプロファイルに従い、
試料を目的位置に送達する、
ように構成される、
ここで、輸送体は、制限付き経路を画成するトラックを含み、
制限付き経路は、混合のために試料に向心力を誘発するための湾曲部分を含み、
動きプロファイルは、制限付き経路の湾曲部分に沿った2方向での動きを含む、
前記試料輸送システム。
【請求項2】
動きプロファイルは、制限付き経路に沿ったキャリアの加速および減速を含む、請求項
1に記載の試料輸送システム。
【請求項3】
動きプロファイルは、制限付き経路に沿った2つの方向でのキャリアの加速および減速を含む、請求項
2に記載の試料輸送システム。
【請求項4】
動きプロファイルは、直線経路に沿った加速および減速のみを含む、請求項
2に記載の試料輸送システム。
【請求項5】
試料輸送システムであって:
輸送および混合予定の試料用の試料管を保持するように構成されたキャリアと;
キャリアを支持するように構成された輸送体と;
輸送体上でキャリアに運動を与え、キャリアを目的位置に送達するように構成された案内部分と;
制御装置と、を含み、該制御装置は:
試料の混合を引き起こすように構成された動きプロファイルを含む、試料に関連付けられた命令を識別し、
案内部分と通信して、それにより、キャリアが、
試料の混合を引き起こすために輸送体上で動きプロファイルに従い、
試料を目的位置に送達する、
ように構成される、
ここで、輸送体は、該輸送体上で複数の経路に沿って自由に動くようにキャリアが構成されるような開放表面であり、
動きプロファイルは、開放表面輸送体上でのキャリアの回転を含む、
前記試料輸送システム。
【請求項6】
試料輸送システムであって:
輸送および混合予定の試料用の試料管を保持するように構成されたキャリアと;
キャリアを支持するように構成された輸送体と;
輸送体上でキャリアに運動を与え、キャリアを目的位置に送達するように構成された案内部分と;
制御装置と、を含み、該制御装置は:
試料の混合を引き起こすように構成された動きプロファイルを含む、試料に関連付けられた命令を識別し、
案内部分と通信して、それにより、キャリアが、
試料の混合を引き起こすために輸送体上で動きプロファイルに従い、
試料を目的位置に送達する、
ように構成される、
ここで、輸送体は、該輸送体上で複数の経路に沿って自由に動くようにキャリアが構成されるような開放表面であり、
動きプロファイルは、開放表面輸送体上での曲線経路を含む、
前記試料輸送システム。
【請求項7】
曲線経路は8の字経路を含む、請求項
6に記載の試料輸送システム。
【請求項8】
試料輸送システムであって:
輸送および混合予定の試料用の試料管を保持するように構成されたキャリアと;
キャリアを支持するように構成された輸送体と;
輸送体上でキャリアに運動を与え、キャリアを目的位置に送達するように構成された案内部分と;
制御装置と、を含み、該制御装置は:
試料の混合を引き起こすように構成された動きプロファイルを含む、試料に関連付けられた命令を識別し、
案内部分と通信して、それにより、キャリアが、
試料の混合を引き起こすために輸送体上で動きプロファイルに従い、
試料を目的位置に送達する、
ように構成される、
ここで、キャリアが輸送体上にある間に混合を誘発するためにキャリアと相互作用するように構成された混合要素をさらに含み、
混合要素は、輸送体に沿って所定位置に選択的に可動な複数の障害物を含む、
前記試料輸送システム。
【請求項9】
プロセッサがメモリからの命令を実行することによって、試料管内の試料を輸送および混合するためのコンピュータ実装方法であって、
試料管を保持するキャリアに関する動きプロファイルを含む、試料に関する混合命令を受け取る工程と、
輸送体上で動きプロファイルによって画成される経路に沿ってキャリアを動かすように案内要素に命令を提供する工程と、
ここで、混合命令を受け取る工程は、試料を識別する情報を受け取ること、およびプロセッサによって、試料を識別する情報に基づいて混合命令を選択することを含み、
輸送体は、該輸送体上で複数の経路に沿って自由に動くようにキャリアが構成されるような開放表面であり、
動きプロファイルは、キャリアの回転を含む、
を含む前記方法。
【請求項10】
試料を識別する情報を受け取ることは、試料管のバーコードをスキャンすることを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
輸送体は、制限付き経路を含み、動きプロファイルは、制限付き経路に沿ったキャリアの加速および減速を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
加速および減速は、経路に沿った2つの方向におけるものである、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年2月24日に出願された「SYSTEM FOR TRANSPORTING AND MIXING SAMPLES」という名称の米国仮特許出願第62/980,942号の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の開示全体をあらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、一般に、診断システム用の試料を輸送するための機構に関し、詳細には、キャリア上の試料管用の複合輸送および混合システムに関する。
【背景技術】
【0003】
体外診断(IVD)システムなどの試料試験システムは、患者流体試料に対して実施されるアッセイに基づく疾患の診断を有効にする。IVDは、患者の診断に関連する様々なタイプの分析試験およびアッセイ、ならびに患者から採取された液体試料の分析によって実施することができる療法を含むことがある。アッセイは、一般に、患者試料を含む管またはバイアルなどの流体容器が装填されている自動臨床化学分析装置(分析器)を用いて行われる。いくつかのシステムでは、容器は、入力/出力モジュールに装填され、トラック輸送によって分析器に輸送される。次いで、分析器は、バイアルから液体試料を抽出し、その液体試料を特別な反応キュベットまたは管(すなわち反応ベッセル)内で様々な試薬と組み合わせることができる。
【0004】
いくつかの試料管は、分析前に混合される必要がある。検査室診断会社が提供している現在の解決策は、管を管輸送システムから取り外し、混合サブアセンブリに配置することである。この解決策は、コスト、管のターンアラウンドタイムに対する影響(解決策を施した後、試料管をオペレータに返すまでに解決策がかかる時間)、結果ターンアラウンドタイムに対する影響(結果を報告するまでに解決策がかかる時間)、および混合サブアセンブリ専用の検査室空間の点で、顧客にとって高価である。
【0005】
混合サブアセンブリを購入しない顧客に対する1つの現在の解決策は、試料を手動で混合することである。直接的または間接的にミキサと容易にはインターフェースできない検査室用分析器を購入する顧客は、混合プロセスを自動化することができるが、試料を分析器に手動で輸送しなければならない。これらのシナリオはそれぞれ、完全に統合された自動混合に比べて、労働コストを増加させ、管のターンアラウンドタイムに影響を及ぼす。後者のシナリオ(分析器とインターフェースしない混合サブアセンブリ)は、混合サブアセンブリ専用の検査室空間も必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、従来技術のこれらおよび他の問題に対処するための機構を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくともいくつかの実施形態では、本開示は、試料輸送システムを対象とする。この試料輸送システムは、輸送および混合予定の試料用の試料管を保持するように構成されたキャリアと、キャリアを支持するように構成された輸送体と、輸送体上でキャリアに運動を与え、キャリアを目的位置に送達するように構成された案内部分と、制御装置と、を含む。制御装置は、試料の混合を引き起こすように構成された動きプロファイルを含む、試料に関連付けられた命令を識別し、案内部分と通信して、それにより、キャリアが、試料の混合を引き起こすために輸送体上で動きプロファイルに従い、試料を目的位置に送達する、ように構成される。
【0008】
少なくともいくつかの実施形態では、本開示は、プロセッサがメモリからの命令を実行することによって、試料管内の試料を輸送および混合するためのコンピュータ実装方法を対象とする。この方法は、試料管を保持するキャリアに関する動きプロファイルを含む、試料に関する混合命令を受け取る工程と、輸送体上で動きプロファイルによって画成される経路に沿ってキャリアを動かすように案内要素に命令を提供する工程と、を含む。
【0009】
本発明の前述および他の態様は、添付図面に関連付けて読めば、以下の詳細な説明から最良に理解される。本発明を例示する目的で、現在好ましい実施形態が図面に示されているが、本発明は開示された特定の手段に限定されないことを理解されたい。図面には、以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】開示される実施形態による、例示的な試料輸送および混合システムのブロック図である。
【
図1B】本明細書に開示される特定の実施形態で使用することができる輸送制御装置を含む制御システムのシステムブロック図である。
【
図2】トラックベースの輸送および混合機構を含む例示的な試料試験システムの上面図である。
【
図3】開放表面輸送および混合機構を含む例示的な試料試験システムの上面図である。
【
図4】直線トラックに沿った直線運動によって混合を生成するための様々な工程の上面図である。
【
図5】トラックの湾曲部分に沿った動きによって混合を生成するための様々な工程の上面図である。
【
図6】開放表面での回転運動によって混合を生成するための様々な工程の上面図である。
【
図7】開放表面での2次元運動によって混合を生成するための様々な工程の上面図である。
【
図8】直線トラックに沿った直線運動によって混合を生成するための代替実施形態の上面図である。
【
図9】直線トラックに沿った直線運動によって混合を生成するための別の代替実施形態の様々な工程の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、試料試験システムの構成要素に試料を送達するための輸送システムを含む。この輸送システムは、輸送段階中の試料の制御された動きにより試料の混合を有効にする機能を含む。いくつかの実施形態では、試料を十分に混合するように動きが制御され、試料を試験するための適切に混合された溶液を実現するために別個の混合機構が必要とされないようにする。
【0012】
いくつかの実施形態では、輸送システムは、特定の試料に関して混合が必要とされるかどうかを決定し、十分な混合を引き起こす動きを誘発するために、制御される輸送要素(例えば輸送パック)に命令を提供する輸送制御装置を含む。命令される動きは、例えば輸送システムの構成に依存することがある。例えば、いくつかの実施形態は、輸送のための1次元トラックによる動きを含むことがある。他の実施形態は、混合を生成するためのより複雑な運動を有効にする、より多くの開放表面輸送システムを含むことがある。
【0013】
図1Aは、例示的な試料試験システム100のブロック図である。試料試験システム100は、輸送システム110およびステーション120を含むことがある。輸送システム110は、試料管をステーション120に送達する機能を含むことがある。ステーション120は、混合された試料の試験のために、試料管などの試料を受け取るように構成された任意のシステムの任意の構成要素であり得る。
【0014】
例示的実施形態では、輸送システム110は、輸送体112、キャリア114、輸送制御装置116、および電源118を含む。輸送体112は、キャリア114を物理的に支持して輸送するための機能であり得る。キャリア114は、例えば、試料(例えば試験管)用のパックまたは他のホルダであり得る。輸送制御装置116は、例えば(例えば電磁制御によって)輸送体112でのキャリア114の動きを制御するための命令を生成するように構成されたプロセッサであり得る。電源118は、輸送システム110の機能要素に電力供給するように構成される。
【0015】
例示的実施形態では、ステーション120は、キャリア114から試料を取り出すためのロボットアームなどの受取り機能122を含む。ステーション120は、ステーション制御装置124、収納領域126、および電源128を含むこともある。ステーション120が、輸送システム110から受け取られる試料の取扱いに関連付けられる任意の構成要素を含むことができることを理解すべきである。例えば、ステーション120は収納領域のみを含み、分析機能を実施しないことがある。
【0016】
開示される実施形態に従って、試料試験システムまたは他の試料取扱いシステムは、試料をステーション120に送達するための手段として輸送システム110を含むことがある。いくつかの例では、試料は、生物学的物質、およびその物質と混合予定の希釈組成物またはマーキング溶液など、1つまたはそれ以上の成分の溶液であり得る。混合予定の物質の任意の組合せは、開始ステーションでまたは技術者によって手動で試料に加えられ、次いで輸送システム110のキャリア114に自動または手動で配置される。輸送制御装置116は、試料管(または他の容器)内の成分を混合するために選択的にキャリア114の動きを制御するための命令を受け取ることができる。いくつかの実施形態では、キャリア114の動きは、制御装置が試料管内の物質の状態または組成を同定することに基づくことがある。
【0017】
制御装置によってキャリア114に与えられる運動は、輸送体112およびその構成にも依存することがある。例えば、輸送体112が制限付きトラックであり、キャリア114がトラックの経路に沿った双方向運動に制限されている場合、制御装置116は、経路に沿った2つの方向のうちの1つまたはそれ以上での加速および減速を利用して、混合を誘発する。別の例では、輸送体112が開放表面である場合、制御装置116は、選択された経路または軌道に沿った曲線運動など、より複雑な運動を表面で行うことができる。別の例では、制御装置116は、キャリア114に回転運動を与えて、試料の混合を誘発することができる。
【0018】
図1Bは、輸送システム110など例示的な輸送システム200の例示的な構成のトップレベルシステム図を示す。輸送システム200は、輸送システム200を操作するのに必要とされるナビゲーション、保守、運動、およびセンサ活動を取り扱うのに十分な処理能力を含む制御装置201(例えば輸送制御装置116であり得る)によって制御される。いくつかの実施形態では、輸送システム200は、例えばバッテリを含む電力システム203を含む。
【0019】
制御装置201は、システムメモリ204と通信することがある。システムメモリ204は、データおよび命令メモリを含むことがある。メモリ204の命令メモリは、制御装置201に運動命令を提供するなど、輸送システム200を操作するのに十分なプログラム、アプリケーション、または命令を含む。これは、ナビゲーション手順およびセンサ取扱いアプリケーションを含むことがある。メモリ204でのデータメモリは、現在の位置、速度、加速度、ペイロードコンテンツ、ナビゲーション計画、キャリアまたはペイロードの識別子、または他のステータス情報に関するデータを含むことができる。輸送システム200に搭載メモリを含めることによって、制御装置201は、現在のステータスおよび使用情報を追跡して、トラックを巡るようにキャリアをインテリジェントにルーティングする、またはステータス情報をトラックもしくは他のキャリアに伝達することができる。
【0020】
制御装置201は、運動システム205、混合ハンドラ212、位置デコーダ213、バーコードリーダ214、通信システム215、ステータスディスプレイ216、および試料センサ217の操作を担当することもある。これらの周辺機器は、例えばバス210を介して制御装置201によって操作することができる。バス210は、複数の周辺機器と通信することが可能なCANバスなどの任意の標準バスでよく、または個々の周辺機器への個々の信号経路を含むことができる。周辺機器は、独自の電源または共通の電源システム203を利用することができる。
【0021】
運動システム205は、本明細書で述べる運動システムのいずれかを操作するのに必要な制御論理を含むことができる。例えば、運動システム205は、従動輪を使用する実施形態ではモータ制御装置を含むことができる。他の実施形態では、運動システム205は、輸送システム200のキャリアに原動力を提供するのに必要な任意の能動トラックシステムと通信するために必要な論理を含むことができる。これらの実施形態では、運動システム205は、制御装置201によって実行され、通信システム215を利用して取扱い面(例えばトラック)および/または取扱い面上のキャリアと通信するソフトウェア構成要素であり得る。運動システム205によって制御されるモータ、アクチュエータ、電磁石などのデバイスは、これらのデバイスがキャリアに搭載されている実施形態では、電力システム203によって電力供給することができる。トラック内のコイルに通電することによってリニア同期モータ(LSM)などの原動力デバイスが原動力を提供する実施形態などいくつかの実施形態では、外部電源が電力を供給することもできる。いくつかの実施形態では、運動システム205は、キャリア上または外のデバイスを制御して原動力を提供する。いくつかの実施形態では、運動システム205は、トラックにある制御装置などの他の制御装置と協働して、例えばトラック内の近くのコイルに通電することを要求する、またはローカルローラの動きを要求することによって原動力を調整する。これらの実施形態では、運動システム205は、通信システム215と協働してキャリアを動かすことができる。
【0022】
輸送システム200は、運動を検出するためおよび/または混合を確認するための1つまたはそれ以上のセンサを有する混合ハンドラ212を含むことがある。混合ハンドラ212は、キャリアの運動を決定するための輸送システム200の前部または後部にセンサを含むことがある。例示的なセンサは、IR測距、磁気センサ、マイクロ波センサ、または光学検出器を含むことができる。混合ハンドラ212は、いくつかの実施形態では、輸送中の混合を誘発または促進するように構成された機能を含むことがある。
【0023】
いくつかの実施形態では、混合ハンドラ212は、通信システム215を介して制御装置201に情報を提供することがある。例えば、いくつかの実施形態では、混合ハンドラ212は、取扱い面112上のキャリア114の位置および速度を観察し、混合状況を評価し、制御装置201にフィードバックを提供する。他の実施形態では、混合ハンドラ212は、混合のために指定されたトラックの部分にキャリアを移動させるための接触障害物、撹拌機、またはスイッチなど、混合を誘発または促進する1つまたはそれ以上の機械的機能を操作することができる。
【0024】
輸送システム200は、位置デコーダ213を含むこともできる。このセンサは、本明細書で述べるように、キャリアの位置を推定することができる。例えば、位置デコーダ213は、トラック内の目印を識別するため、またはトラック内の光エンコーディングを観察するために、カメラまたは他の光学的手段を含むことができる。いくつかの実施形態では、位置デコーダ213は、キャリアの現在の位置、方向、速度、加速度、および/またはジャークを決定するのに十分な慣性センサ、磁気センサ、または他のセンサを含むこともできる。
【0025】
輸送システム200は、場合によりバーコードリーダ214を含むことができる。バーコードリーダ214が装備されている場合、輸送システム200は、試料がキャリアに装填される時点、またはその後の任意の時点で、そのペイロードのバーコードを観察することができる。試料管の識別子を読み取って記憶することによって、またはこの情報をシステム全体に伝達することによって、輸送システム200は、どの試料が混合される必要があるかをより効率的に決定し、動きに関して混合命令を実施することができ、混合を必要としない試料は単純にステーション120に送達することができる。
【0026】
通信システム215は、キャリアが自動化システム全体と通信できるようにするのに十分な任意の機構を含むことができる。通信システム215は、トランシーバ、アンテナ、およびRF通信プロトコルを操作するための論理を含むことがある。いくつかの実施形態では、通信システム215は、近距離通信、光通信、または電気接触構成要素を含むこともできる。
【0027】
いくつかの実施形態では、輸送システム200は、ステータス表示モジュール216を含むこともできる。ステータス表示モジュール216は、制御装置と、LCDパネルまたはEインクディスプレイなどの書き換え可能な電子ディスプレイとを含むことができる。いくつかの実施形態では、制御装置は、制御装置201がステータスディスプレイ216を容易に更新することができるように、メモリのアドレス可能な部分として扱われる。
【0028】
いくつかの実施形態では、輸送システム200は、試料センサ217も含む。この試料センサ217を使用して、キャリアの管ブラケット(管ホルダとも呼ばれる)内の流体容器の有無を示すことができる。いくつかの実施形態では、これは、管の存在によって押し下げられ、管が存在しないときには押し下げられない機械的なモーメンタリスイッチである。この情報を使用して管のステータスを決定することができ、ステータス表示モジュール216によるステータス情報の表示を支援することができる。
【0029】
図2は、トラックシステム305を有する試料試験システム300の一実施形態を示す。トラック305は、試料キャリア310がステーション320間で時計回り(または反時計回り)に動く長方形/卵形/円形のトラックである。トラック305は、単方向でも双方向でもよい。キャリア310は、流体試料、試薬、または廃棄物など任意の適切なペイロードを試料環境内で輸送することができる。患者試料などの流体は、キャリア310によって輸送することができる試験管、バイアル、キュベットなどの容器またはベッセルに入れることができる。キャリア310、ひいては試料などのペイロードは、メイントラック305上を動く、または決定点を介して進路変更することができる。これらの決定点は、機械的なゲート、または試料をメイントラックからサイドトラックに進路変更させてステーション320の1つに到達させるのに適した他の機構でよい。トラック305上の試薬が適切なステーション320に到達すると、モジュールは、トラックから試薬を取り出してステーション320用の試薬収納部に試薬を配置するアームまたはフィーダシステムなどの機械的システムを利用することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、トラックシステム305は、双方向であるように設計することができる。これは、試料キャリアが外側の経路および/または任意のサブ経路をどちらの方向にも通り抜けることができることを意味する。このようにして、輸送中に搬送される試料の混合を誘発するために、キャリア310を加速および減速し、方向を変えることができる。
【0031】
キャリア310は、パックまたは他のホルダであり得る。キャリア310は、異なる実施形態では異なるペイロードを保持することができる。1つのペイロードは、血液や尿などの流体試料を含む試料管であり得る。他のペイロードは、管もしくは試薬カートリッジのラック、または任意の他の適切なカートリッジを含むことがある。キャリア310は、内部電子構成要素を収容することができる本体を含むことがある。本体はペイロードを受け入れることができる。いくつかの実施形態では、本体は、試料管などの流体容器を受け入れ、流体容器を摩擦嵌めで保持するように設計された浅い穴である。いくつかの実施形態では、摩擦嵌めは、保持力を生み出すためにばねによって固定または付勢することができる弾性ボアまたはクランプを使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、試料ラックおよび試薬カートリッジは、本体または取り付けられたブラケットに取り付けられるようにも設計することができ、キャリア310が複数のペイロードタイプのためのユニバーサルベースとして機能できるようにする。
【0032】
図3は、輸送用の開放表面405を有する別の試料試験システム400の実施形態である。開放表面405は、キャリア410のための制限トラックを有さない表面であり、それによって、ステーション420間の少なくとも2次元での運動を有効にする。試料試験システム400の構成要素は、トラック305と比較した開放表面405の運動能力以外は、試料試験システム300の構成要素と同様であり得る。
【0033】
図4は、トラック305の直線部分においてキャリア310での試料管500の輸送中に混合するための第1の輸送制御オプションの例である。混合のための第1の輸送制御オプションは、試料管500内の流体をスロッシングおよび混合させるために突然の加速および減速を使用して、トラック305の既存のセクションで試料管500を前後に移動させるための制御命令を含む。
【0034】
図4に示されるように、トラック305は、キャリア310がトラック305の経路をたどることを可能にするトラック305の案内部分505を含むことがある。いくつかの実施形態では、案内部分505は、キャリア310の要素である。案内部分505は、例えば、トラック305の1つまたはそれ以上のレールを受け入れるためのスロットを含むことができ、横方向および/または垂直方向の支持を提供する。いくつかの実施形態では、案内部分505は、トラフ形状のトラックの壁などトラック305の壁510によってキャリア310が案内されることを可能にする。案内部分505は、キャリア310のモータがトラック305でキャリア310を前方または後方に駆動することを可能にする摩擦ホイールなどの1つまたはそれ以上の駆動機構を含むこともできる。案内部分505は、磁石または誘導コイルなど、本明細書を通して述べる実施形態での使用に適した他の駆動構成要素を含むことができる。
図5は、トラック305の湾曲セクションに沿った動きを示す。トラック305の湾曲セクションでは、追加の向心力が流体に加えられ、異なる混合プロファイルを引き起こす。
【0035】
制御装置116は、(例えばキャリア310および/またはトラック305の)案内部分505に命令を提供して、試料管500内の試料の適切な混合を引き起こすために所望の動きプロファイルに従って、トラック305に沿ったキャリア310の動きを引き起こすように構成される。例えば、制御装置116は、管500内の物質のスロッシングおよび混合を引き起こすために、トラック305に沿って1つまたはそれ以上の方向でいくつかの加速-減速サイクルを引き起こすことがある。いくつかの実施形態では、制御装置116によって選択される動きプロファイルは、試料に関するステータスまたはプロファイル情報など1つまたはそれ以上の因子に依存することがある。
【0036】
図6は、キャリア410の2次元または3次元の動き(例えば、トラックでの特定の経路に限定されない動き)を有効にする輸送機構の部材として開放表面405を有する輸送体で混合するための代替の輸送制御オプションの例である。キャリア410は、試料管600を含むことができ、キャリア410および/または開放空間405に関連付けられた案内部分605を通って、少なくともXおよびY軸内および/またはそこを巡って自由に動くことができる。例えば、案内部分605は、開放空間405にある電磁制御要素と相互作用するように構成されたキャリア410にある磁気要素であり得る。
【0037】
試料管600は、キャリア410内に配置され、タイルに沿って推進され、所定の経路をたどる。いくつかの実施形態では、試料管で適切に混合されるように管を動かすために運動プロファイルを開発することができる。
図6に示されている第1の例は、管輸送で試料管をスピンさせるものであり、これは、流体のスロッシングを引き起こし、混合を誘発する。
図7に示されている第2の例は、「8の字」経路などの所定の経路でキャリアを動かして、試料管内の流体の混合を誘発する。
【0038】
制御装置116は、開放表面405でのキャリア410の経路を制御するための命令を提供するために、キャリア410および/または開放表面405と通信するように構成される。制御装置116は、管600がステーション120に向かっている間に管600内の試料の適切な混合を提供するために、所要のレベルの混合を識別し、動きプロファイルを選択することができる。
図6に示される回転経路および
図7に示される「8の字」経路は例示であり、例えば開放表面405のサイズ、案内部分505の能力、試料、必要とされる混合の程度、開始ステーション120、宛先ステーション120などを含む様々な因子に応じて他の経路も選択されることを理解すべきである。
【0039】
図8および9は、試料管700および/または試料管700を保持するキャリア710と接触および/または他の形で相互作用するように構成された混合要素705を含む、混合のためのさらに別の代替輸送制御オプションの例である。いくつかの実施形態では、混合要素705は、輸送中に試料管700と接触するように構成された一組の障害物であり得る。例えば、混合要素705は、試料管700を移動および/または衝突させ、スロッシングおよび/または混合を引き起こすように構成された一組の波状曲線体であり得る。別の実施形態では、混合要素705は、例えば、トラック、キャリア、および/または試料700を振るように構成された撹拌機であり得る。
図9に示されるように、混合要素705は、トラックに沿って通る特定の試料のみの混合を選択的に制御するために、所定位置に選択的に動かされる。例えば、制御装置116は、特定の試料が試料輸送システムによって輸送されているときに混合を必要とするとき、障害物を所定位置に動かすように混合要素705に命令を提供することがある。
【0040】
例示的実施形態では、オペレータまたは開始ステーションもしくは試料輸送システムが試料管のバーコードをスキャンし、試料管をキャリアに配置し、制御装置がキャリアの識別子を決定し、それを試料の識別子と照合する。次いで、制御装置は、試料に関する記録を見つけて、試料に関する混合命令を決定することができる。混合命令は、例えば、輸送中に試料が混合される必要があるかどうかの判断(例えば混合に対するイエスまたはノーの答え)を含むことができる。別の実施形態では、混合命令は、輸送中に適切な混合の程度を誘発する運動プロファイルを含むことがある。制御装置は、例えば、必要な混合の程度に応じて、複数の記憶されている動きプロファイルから選択することができる。
【0041】
キャリアが輸送体に配置されると、試料輸送システムのルーティング機能および位置取得システムにより、制御装置は、キャリアが輸送体のどこにあるか(例えばトラックでの位置)、およびキャリアが輸送体のどこに進む必要があるかを決定することを可能にする。制御装置は、動きプロファイルを関連構成要素に提供して、原動力を提供し、宛先ステーションに向かう途中で特定の方法でキャリアを動かすことができる。動きプロファイルは、例えば、1つもしくはそれ以上の方向でのおよび/または曲線経路に沿った加速および減速、回転運動、開放表面での曲線自由運動、1つもしくはそれ以上の混合要素との相互作用、または試料を宛先ステーションに送達する前に混合を引き起こすように構成された他の運動を含むおよび/または規定することができる。その結果、試料輸送システムは、分析器などのステーションへの試料の送達と組み合わせて混合を提供する混合機構でもあり得る。その結果、試料取扱いシステムは、別個の混合専用ステーションまたはシステムを有することを必要とされず、そのようなシステムの効率が向上され、全体的なコストが低減される。
【0042】
開示される実施形態は例示であり、他の実施形態は、試料の輸送と混合との組合せである運動を誘発するための他の構成を含むことがあることを理解されたい。例えば、原動力は、多くの方法でキャリアに提供することができる。いくつかの実施形態では、トラックは、個別化された原動力を各キャリアに提供することに能動的に関与する。いくつかの実施形態では、原動力は、キャリア内の1つまたはそれ以上の磁石を推進するトラック内の電磁コイルによって提供される。この磁気運動システムを利用するこれらの従来のシステムは、本明細書で述べるキャリアの統合されたインテリジェンスを有さない受動キャリアを含んでおり、すべてのルーティングおよび決定が中央制御装置によって行われ、ルーティングおよび識別プロセスに関与する能動キャリアを必要としない。
【0043】
磁気運動を利用する実施形態では、電磁コイルおよび磁石はLSMとして動作し、速度、加速度、およびジャークの正確な制御と共に、選択された方向に個々のキャリアそれぞれを推進する。トラックでの各コイル(またはコイルのローカルセット)を個別に操作することができる場合、これにより、個々のキャリアへの高度に局所化された原動力が可能にされ、個々のキャリアが、それら独自の個別に調整された加速度および速度で動くことができるようにする。コイルの近くを通る個々のキャリアの方向、速度、加速度、およびジャークの正確な制御を提供するために、任意の所与の瞬間にキャリアの近くにあるコイルを起動することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、トラックは、局所的にカスタマイズ可能な摩擦トラックとして機能する、多数の個別に関節運動可能なローラから構成される。トラックの個々のマイクロセクションは個別に管理することができるので、キャリアのすぐ周囲のローラを制御して、個別化された速度、加速度、およびジャークを提供することができる。いくつかの実施形態では、局所化された個々の原動力を各キャリアに提供する他の能動トラック構成を使用することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、トラックは、ほぼ受動的であり得て、床、壁、レール、またはキャリアの運動に対する任意の他の適切な制限を提供して、単一次元に沿ってキャリアを案内する。これらの実施形態では、原動力はキャリア自体によって提供される。いくつかの実施形態では、個々のキャリアはそれぞれ、トラックとキャリアとの間で自己推進型の摩擦ベースの原動力を提供するために車輪を駆動する1つまたはそれ以上の搭載モータを有する。トラックがコンベアである従来の摩擦トラックとは異なり、従動輪を有するキャリアは、トラックを個別に通り抜け、個別に加速/減速することができる。これにより、各キャリアは、任意の瞬間にその速度、加速度、およびジャークを制御してそのペイロードに加えられる力を制御し、個別に調整されたルートに沿ってトラックを通り抜けることができる。いくつかの実施形態では、トラックに永久磁石が提供され、キャリアにある電磁石が操作されてキャリアを前方に推進し、それにより、駆動磁力を提供するキャリアを有するLSMとして機能することができる。ウォータージェットなどによってキャリアが自律的に浮遊して動くことを可能にする流体トラック、トラックによって提供される空気のポケットの上でキャリアが浮遊することを可能にする低摩擦トラック(例えば、局所化されたエアホッケーテーブルのように作用する)、または個々のキャリアがトラックを通り抜けるときに個別化された原動力を受けることを可能にする他の構成など、他の受動的なトラック構成も企図される。
【0046】
本発明の実施形態は、既存の分析器および自動化システムと統合することができる。キャリアは、企図される任意の分析器または機器での使用に適したレイアウトおよび物理的構成を含む多くの形状およびサイズで構成することができることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、キャリアは、自動化トラックを巡るように複数の試料を搬送するための複数のスロットを含むことがある。例えば、一実施形態は、1つまたはそれ以上の輸送ラックに複数のスロットを有するキャリアの管保持部分の物理的レイアウトを含むことがある。各ラックは複数のスロット(例えば5つ以上のスロット)を含むことがあり、各スロットは管(例えば試料管)を保持するように構成される。
【0047】
例示的実施形態を参照して本発明を述べてきたが、本発明はそれらに限定されない。本発明の好ましい実施形態に対して多数の変更および修正を行うことができ、そのような変更および修正を本発明の真の精神から逸脱することなく行うことができることを当業者は理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内に入るすべてのそのような等価な変形形態を網羅するものと解釈されることが意図されている。