(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】生体試料内への試薬の浸透を評価するためのIR分光法の使用
(51)【国際特許分類】
G01N 21/552 20140101AFI20240222BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240222BHJP
G01N 21/35 20140101ALI20240222BHJP
【FI】
G01N21/552
G01N21/27 B
G01N21/35
(21)【出願番号】P 2022554554
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 US2021024480
(87)【国際公開番号】W WO2022010550
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504462571
【氏名又は名称】サクラ ファインテック ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミット ディー. シャー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ アール. フローレス
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/150408(WO,A1)
【文献】特表2020-515841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0277755(US,A1)
【文献】特表2020-514701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0197725(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111307739(CN,A)
【文献】特開2012-185045(JP,A)
【文献】特表2021-507770(JP,A)
【文献】特表2019-519256(JP,A)
【文献】特表2018-534587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
G01N 33/48-G01N 33/98
C12Q 1/00-C12Q 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IR源およびIR検出器に動作可能に接続されたサンプル受容面または界面を画定する結晶を含むATR-IRサンプル測定デバイスを有する分光システムまたはデバイスを構成することと、
サンプル材料を前記ATR-IRサンプル測定デバイス上に配置して、前記サンプル材料を前記サンプル受容面または界面と直接接触させることと、
前記IR源を採用して、前記サンプル材料が前記サンプル受容面または界面に接している間に、前記結晶を通って伝播する内部反射IRビームを生成することと、
前記IR検出器を使用して、前記結晶の減衰IRビームの出力を記録することと、
前記減衰IRビームを使用して1または複数のIRスペクトルを生成または提供することと、
1または複数のIRスペクトルを評価して、前記サンプル材料内の固定物質の存在を示す信号が存在するかどうかを判定することと、
を含み、
前記固定物質は、ホルムアルデヒドであ
り、
前記サンプル材料は、組織サンプルである、減衰全反射赤外線(Attenuated Total Reflection Infrared:ATR-IR)サンプル材料測定方法。
【請求項2】
サンプル材料を前記ATR-IRサンプル測定デバイス上に配置して、前記サンプル材料を前記サンプル受容面または界面と直接接触させることと、
前記IR源を採用して、前記サンプル材料が前記サンプル受容面または界面に接している間に、前記結晶を通って伝播する内部反射IRビームを生成することと、
前記IR検出器を使用して、前記結晶の減衰IRビームの出力を記録することと、
前記減衰IRビームを使用して1または複数のIRスペクトルを生成または提供することと、
1または複数のIRスペクトルを評価して、前記サンプル材料内の固定物質の存在を示す信号が存在するかどうかを判定することは、
前記サンプル材料の対象領域の周囲またはそれに隣接するさまざまな位置で
繰り返し実行される、請求項1に記載の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル材料測定方法。
【請求項3】
前記サンプル材料を配置する前に、前記サンプル材料内の選択された深さ位置で材料を露出させるために前記サンプル材料を切断することをさらに含み、
サンプル材料を配置するステップは、前記サンプル材料を前記ATR-IRサンプル測定デバイス上に配置して、前記選択された深さ位置での露出した材料を前記サンプル受容面または界面と直接接触させることを含む、請求項1に記載の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル材料測定方法。
【請求項4】
前記選択された深さ位置は、前記サンプル材料の厚さの約半分である、請求項
3に記載の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル材料測定方法。
【請求項5】
前記サンプル材料を切断した後、前記サンプル材料を配置する前に、前記選択された深さ位置での前記露出した材料を含む前記サンプル材料上の余分な流体を洗浄および除去することをさらに含む、請求項
3に記載の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル材料測定方法。
【請求項6】
前記減衰IRビームを使用して1または複数のIRスペクトルを生成または提供するステップは、異なる時間に取られる測定値から得られる測定結果をそれぞれ示すスペクトルパターンの視覚的な表示を生成または提供することを含む、請求項1に記載の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル材料測定方法。
【請求項7】
前記減衰IRビームを使用して1または複数のIRスペクトルを生成または提供するステップは、異なる時間および/または前記サンプル材料上もしくは前記サンプル材料の露出面での異なる位置で取られる測定値から得られる測定結果を示すスペクトルパターンの視覚的な表示を生成または提供することを含む、請求項1に記載の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル材料測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の様々な実施形態は、一般に、組織処理、特に、組織サンプル内の固定物質(例えば、ホルマリン)の存在を評価するためのIR分光法を利用する技術、計装、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病気の経過の診断のために身体から取られる組織は、多くの場合、薄い組織切片を生成するために組織実験室で処理される。当該組織切片は、分析のために病理医によって、組織スライド上に載せられ、染色され、顕微鏡下で見られ得る。これらの分析前処置は、一般に、順に、肉眼的検査固定、脱水、透徹、パラフィン浸潤、および包埋を含む。当該処置は、生検材料を含む組織、手術で除去される大きな試料、または検死からの組織を処理するために使用される。
【0003】
肉眼的検査は、一般に、肉眼試料を説明すること、および当該肉眼試料のすべてまたは選択された部分を小さいプラスチックカセット内に配置することで構成されている。当該プラスチックカセットは、組織がパラフィンブロックに処理されている間、当該組織を保持している。最初に、カセットを固定剤内に配置する。
【0004】
肉眼的検査の後、組織を固定する。固定の目的は、自己分解による劣化が生じないようにタンパク質の構造を変更することによって、可能な限り生きているような状態で組織を永久に保存することである。存在する組織の種類および実証される特徴に応じて、様々な固定剤が利用可能である。作用のメカニズムによって分類される固定剤の主なグループは、アルデヒド、水銀、アルコール、酸化剤、およびピクラートを含む。ホルマリンは、ホルムアルデヒド(気体)の水溶液である。実際の固定は、ホルムアルデヒドで行われる。ホルマリン固定は、中性pH付近、例えば6~8の範囲で最善に行われる。組織の低酸素症は、pHを低下させる傾向があるため、過度の酸度を防ぐために固定剤に緩衝能力が存在すべきである。一般的な緩衝剤は、リン酸塩、炭酸水素塩、リンゴ酸塩、カコジル酸塩、およびベロナールを含む。例えば、市販のホルマリンは、pH7で、リン酸塩で緩衝され得る。組織の浸透は、個々の各固定剤の拡散性に依存する。固定剤の浸透を改善するための1つの方法は、組織を薄く(2~3ミリメートル(mm))グロス(切断)することである。薄い組織切片内への浸透は、厚い切片よりも速く生じる。一般に、固定剤の量が重要であり、固定剤対典型的な目標の組織の比は10:1以上である。また、固定剤での試料の撹拌は、多くの場合、固定を向上させる。
【0005】
一度、組織が固着または固定されると、組織が微視的検査のために薄い切片にされ得る形態に組織を処理する必要がある。これが行われる通常の方法には、パラフィンが用いられる。組織がパラフィンで包埋され、それにより、組織に固体支持マトリックスが提供され、2~20ミクロンのオーダーの厚さで当該組織を切片化することが可能になる。切片化するために、固着された組織をパラフィン内に入れることは、組織処理と呼ばれ、この処置の主なステップは、脱水、透徹、浸潤、および包埋である。
【0006】
水溶液で固着される組織は、パラフィンで直接浸潤させることができない。まず、脱水によって、組織から水を除去する必要がある。これは、異なる濃度(例えば、70パーセント→95パーセント→100パーセント)の一連のアルコールを用いて行われ得る。代替的には、脱水は、ホルマリンおよびアルコールの混合物で行われる。アセトンまたは異なる溶媒の混合物などの他の脱水剤も使用され得る。
【0007】
脱水の後、組織を透徹する。「透徹」は、包埋媒体(例えば、パラフィン)と混和できる物質を用いた、脱水剤および脂質の一部の除去で構成されている。最も一般的な透徹剤は、キシレンである。
【0008】
一度、透徹すると、組織は、パラフィンなどの包埋剤で浸潤される。最後に、カセット内の組織または当該カセットから除去される組織は、溶融パラフィン内に配置され、次いで、パラフィンが冷却されて、組織を切片化できるように組織を包埋またはカプセル化する固化ブロックを形成する。代替的には、組織は、切片化可能なカセットで処理され、カセットとともにパラフィンで包埋され、切片化され得る。一度、組織が固体パラフィンブロックで包埋されると、組織は、スライド上に配置され得る切片に切断され得る。これは、ミクロトームを用いて行われる。一度、切片が切断されると、当該切片は、任意のしわを除去するのに役立つ温水バスに浮かべられる。次いで、パラフィン内の組織切片は、温水バスからピックアップされ、ガラスの顕微鏡スライド上に配置される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
さらに固定に関して、組織の処理の準備ができているかどうかを判定するために、組織固定の程度の理解を提供するのに役立つように、組織サンプルへの固定剤(例えば、ホルマリンに存在するホルムアルデヒド)の浸透を評価できることが有用であろう。
【0010】
より厚い、および/またはサイズ(面積)がより大きい組織サンプル内の固定物質(例えば、ホルマリンに存在するホルムアルデヒド)の存在を評価できることが有用であろう。
【0011】
組織サンプル内の選択された深さ位置に固定物質(例えば、ホルマリンに存在するホルムアルデヒド)が存在するかどうかを示す測定データの取得が可能であり、当該取得を容易にする、組織サンプル測定デバイスを有するIR分光システム/デバイスを構成または提供できることが有用であろう。
【0012】
組織サンプルの複数の異なる位置に(および組織サンプル内のそれぞれの選択された深さに)固定物質(例えば、ホルマリンに存在するホルムアルデヒド)が存在するかどうかを示す測定データを同時に取得するための組織サンプル測定装置を有するIR分光システム/デバイスを構成または提供できることが有用であろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】腎臓組織内へのホルマリン/ホルムアルデヒドの浸潤の間の異なる時間に測定される腎臓組織についてのIRスペクトルのプロット(吸光度対波数[cm-1])を示す。
【
図1B】肺組織内へのホルマリン/ホルムアルデヒドの浸潤の間の異なる時間に測定される肺組織についてのIRスペクトルのプロット(吸光度対波数[cm-1])を示す。
【
図2】ホルマリン浸潤を受ける組織からのサンプルを評価するための分光測定システムの例示的な実施形態を示す。
【
図3A】サンプル測定デバイスの結晶によって画定される単一のサンプル受容面/界面を有するサンプル配置構造(組織サンプルが配置される面)の例示的な実施形態を示す。
【
図3B】4つ(4)の空間的に分離された別個のサンプル受容面/界面を有するサンプル配置構造(組織サンプルが配置される面)であって、各サンプル受容面/界面が、サンプル測定デバイスの結晶によって画定されるサンプル配置構造の別の例示的な実施形態を示す。
【
図3C】9つ(9)の空間的に分離された別個のサンプル受容面/界面を有するサンプル配置構造(組織サンプルが配置される面)であって、各サンプル受容面/界面が、サンプル測定デバイスの結晶によって画定されるサンプル配置構造の別の例示的な実施形態を示す。
【
図4】ホルマリン湿潤を受ける組織からのサンプルを評価するための分光測定システムであって、サンプル受容面/界面を画定する結晶を含む減衰全反射赤外線(Attenuated Total Reflection Infrared:ATR-IR)サンプル測定デバイスの形態で提供されたシステムの例示的な実施形態を示す。
【
図5】組織サンプル内に進められて(押し進められて)、組織サンプル内の選択された深さ位置(「L」で表す)での組織(面または塊)をサンプル受容面/界面と直接接触させる、サンプル受容面/界面を画定する結晶を含む減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスで構成された組織プローブの例示的な実施形態を示す。
【
図6A】プローブの遠位開放端でピアス構造を含む組織プローブの別の例示的な実施形態を示し、当該組織プローブは、(プローブの)遠位端に隣接する前方/延長位置と、遠位開放端から離れたプローブの筐体内に引っ込んだ後方/収縮位置との間で再配置可能に構成されたサンプル受容面/界面を含む。
【
図6B】(プローブの遠位開放端でバリアを提供する)延長位置と収縮位置との間で再配置可能に構成されたシールド/ピアス構造を含む組織プローブの別の例示的な実施形態を示し、当該組織プローブは、(プローブの)遠位端に隣接する前方/延長位置と、遠位開放端から離れたプローブの筐体内に引っ込んだ後方/収縮位置との間で再配置可能に(任意で)構成されたサンプル測定デバイスを含む。
【
図7】例示的な減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル(例えば、組織サンプル)測定方法のステップまたは当該測定方法に対応付けられたステップを示すフローチャートである。
【
図8】計装設計の例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図9】サンプル材料を貫通するためのプローブの使用を伴わない(または必要としない)例示的な減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル(例えば、組織サンプル)測定方法のステップまたは当該測定方法に対応付けられたステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の様々な実施形態は、例えば、固定剤(例えば、ホルマリン)湿潤を受ける組織からのサンプル内の固定剤(例えば、ホルマリンに存在するホルムアルデヒド)の存在を評価する(任意で定量化する)ためにサンプル受容面/界面を画定する結晶を含む減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスを構成すること、および/または利用することを含む。例示的な実施形態では、サンプル受容面/界面は、サンプル材料内の選択された位置(または深さ)までサンプル受容面/界面を進める(押し進めるか、もしくは他の方法で再配置する)のに好適なプローブもしくは他の構造の形態で提供されるか、または当該プローブもしくは他の構造内に含まれる。例示的な実施形態では、プローブは、侵襲を最小限にして、試験の間にサンプル材料が著しく損傷しないようにサンプル材料内の選択された位置(深さ)まで通路を作るように構成された、プローブの遠位(開放)端でのピアス構造またはピアス機構を含む。例示的な実施形態および実装は、異なる位置で同時に測定するために測定機器のサンプル配置構造/エリア内の複数の異なる位置でそのような評価を容易にするように構成または提供された計装を含む。
【0015】
図2を参照すると、この例示的な実施形態では、ホルマリン浸潤を受ける組織からのサンプルを評価するために分光測定システム200が提供/構成されている。分光測定システム200は、グロシングステーション(任意)に配置するためのスタンド220によって支持され得るIR分光計202と、スタンド220を支持するコンピュータ/プロセッサコンポーネント(任意)を含み得るベースプレート230と、を含む。分光測定システム200は、サンプル配置構造300(組織サンプルが配置される面)と、いくつかのインジケータと、を含む。当該インジケータは、プロセッサ制御ライト、または人間および/もしくは機械感知可能な他の現象であり得、この例示的なシステムでは、分析状態インジケータ210(例えば、完了/継続中)と、存在が不十分な固定剤のインジケータ212(例えば、十分ではないホルムアルデヒドが検出される)と、存在が十分な固定剤のインジケータ214(例えば、ホルムアルデヒドが検出される)と、を含む。
【0016】
図1Aおよび
図1Bも参照すると、(IR、FTIR、およびATR-IR分光技術のうちの1つ以上を利用するように構成され得る)分光測定システム200は、動作中、固定剤化学物質が組織に(組織の内側位置または組織内の特定位置まで)十分に浸透したかどうかを判定するための組織サンプルの試験を容易にする。例示的な実施形態および実装では、IR分光法は、C=O伸縮によって示されるホルムアルデヒドの存在の情報を提供するために利用される。本発明者らは、いくつかの動物組織を試験した。
図1Aおよび
図1Bでは、固定前(すなわち、固定剤湿潤の開始前)、および典型的には少量の緩衝塩が含まれる95~97%の水H
2Oでの約3.7%のホルムアルデヒドCH
2Oの溶液である10%中性緩衝ホルマリン(Neutral Buffered Formalin:NBF)溶液で固定中(すなわち、固定剤湿潤中)に定期的に、動物組織のIRスペクトルをまず確認する。組織内のホルマリンの存在を示す、毎時間より強くなった約1000cm
-1~1100cm
-1での(
図1Aおよび
図1Bで、P
Aで表す)吸光度ピークを有する新しい伸縮が発生したことが観察された。スペクトルでのメチレン結合の存在も、固定の評価のために使用され得る。例示として、組織を試験するために使用される機器は、ATR-IRダイヤモンドによって画定されるサンプル受容面/界面を有するサンプル配置面を含み(または当該サンプル配置面が提供されるか、もしくは当該サンプル配置面で構成されており)、固定液を除去する必要がある場合、試験される組織サンプルが洗浄された後に当該組織サンプルが配置される。
【0017】
ある試験方法では、固定される組織サンプルは、二分または切断されて、当該組織サンプルの最も深いもしくは最も届きにくいエリアを露出させるか、または試験される面を露出させる。対象のエリアを汚染することなく露出させるために、清潔なナイフが使用される。必要な場合、露出されたエリアは、水で洗浄され得、余分な水は、ペーパータオルまたは吸収性材料を使用して吸収される。次いで、ATR-IR結晶/ダイヤモンド上に対象の組織エリアが配置され、分析が行われる。ソフトウェア(例えば、実行可能なコンピュータプログラム)は、当業者に理解されている一般的なプログラミング技術および慣行を利用して、IRスペクトル(データ)の処理を容易にして、対象の特定のIR伸縮の存在および強度を識別し、緑/赤の光による続行/中止の表示または合格/不合格などの表示を提供するように構成/プログラムされている。伸縮の存在は、ホルムアルデヒドまたは形成される新しい結合の存在を意味し得、したがって、固定が完了していない場合でも、温度処理および曝露の間、十分に固定された組織として組織が機能することが観察された(一部の状況では、想定され得る)。
【0018】
図3Aは、サンプル配置構造/エリアの例、すなわち、例えば、ATR-IRダイヤモンドなどの結晶によって画定されるサンプル受容面/界面を有する(単一の)サンプル測定デバイス310を有するサンプル配置構造300-1(例えば、測定される組織サンプルが配置される面)を示す。ダイヤモンド以外の結晶材料、例えばゲルマニウム(Ge)ATR結晶は、いくつかの組織サンプル測定デバイス構成で利用され得る。例示的な実施形態および実装では、サンプル受容面/界面は、ATR-IRサンプル測定デバイスの結晶の一部であり、当該結晶によって画定される。
【0019】
図4は、サンプル材料(例えば、ホルマリン湿潤を受ける組織からのサンプル)を評価するための分光測定システム400の例示的な実施形態を示す。システム400は、結晶404によって画定され、かつ周辺境界406内に配置されたサンプル受容面/界面402を含む(例えば、ATR-IRサンプル測定デバイスの形態で提供された)サンプル測定デバイス310を含む。サンプル受容面/界面402は、IR源410およびIR検出器420にそれぞれ、(結晶404の両端で)対応付けられた光学系412、422を介して動作可能に接続されている。IR源410およびIR検出器420との結晶404の他の接続(coupling)も想定される。動作中、組織サンプル(TSで表す)は、サンプル受容面/界面402上に配置される。結晶404の内部反射率は、結晶のサンプル受容面/界面402を越えて、結晶と接触している(保持された)サンプル内に延在するエバネッセント波(EWで表す)を生成する。ホルムアルデヒドまたは固定剤湿潤組織で形成される新しい結合の存在は、赤外線吸収に寄与し、各エバネッセント波からの減衰エネルギーが、IRビームに戻される。サンプル受容面/界面402は、特定の測定デバイス、適用要件、およびサンプル材料(例えば、組織サンプル)の特性について適宜、単一または複数の反射ATR要素によって提供/画定され得る。したがって、複数の反射ATR要素を含むものとしてのサンプル測定デバイス310の
図4の例示、および本明細書での説明は、サンプル測定デバイス310が単一の反射ATR要素を含む実施形態に明確なサポートをさらに提供することが理解されるべきである。この例示的な実施形態では、分光測定システム400は、IR検出器420と動作可能に接続された(coupled)またはインターフェース接続された、データ収集、スペクトル分析、およびユーザインターフェースコンポーネント430を含む。分光測定システム400は、定性分析および定量分析の両方を行うように構成され得る。定量的には、ソフトウェアは、固定を判定するためにもさらに使用され得るホルマリン存在のレベル/量/程度の表示を提供することを容易にするように構成/プログラムされ得る。これを達成するための1つの解決法は、組織に存在する一連の様々な濃度の固定剤対吸光度を求め、次いで、そのデータを使用して試験サンプル内の固定剤の濃度を推定することである。データ収集、スペクトル分析、およびユーザインターフェースコンポーネント430は、ユーザインターフェース(例えば、1つ以上のディスプレイスクリーン、タッチスクリーン、またはリモートディスプレイ/モニタ)と、データ収集、検出器出力信号/IRスペクトル処理、必要に応じてアプリケーションプログラミング(および他の)インターフェース、ならびに本明細書に記載されるような視覚的な表示(複数可)、インジケータ、および他の出力の提供/生成を容易にするようにプログラムされたソフトウェアで構成された、コンピュータやサーバなどと、を含み得る。例示として、フーリエ変換赤外(Fourier Transform Infrared:FTIR)分光法が、解釈可能なスペクトルパターン(例えば、
図1Aおよび
図1Bに示されるようなものなど)にIR検出器420の出力を変換するために利用される。データ収集、スペクトル分析、およびユーザインターフェースコンポーネント430は、制御ライブラリおよび他のデータリソースへのアクセスを維持および提供する、記録のための(例えば、機器上の)データ記憶デバイスを含み得る。代替的または追加的に、データ収集、スペクトル分析、およびユーザインターフェースコンポーネント430は、ネットワークおよび外部データリソース、ソフトウェアリソース、ならびに制御入力へのアクセスだけでなく、収集されたデータの転送およびリモートストレージも容易にするように構成され得る。
【0020】
サンプル受容面/界面402を含むサンプル測定デバイス310は、サンプル材料(例えば、組織サンプル)内の選択された位置(または深さ)までサンプル受容面/界面を進める(押し進めるか、もしくは他の方法で再配置する)のに好適なプローブ(例えば、組織プローブ)もしくは他のツール、器具、もしくは構造の形態で提供され得るか、または当該プローブもしくは他のツール、器具、もしくは構造内に含まれ得る。
【0021】
図5は、サンプル測定デバイス310、例えば、
図4に対して前述したようなサンプル受容面/界面を画定する結晶を含む減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスで構成されたサンプルプローブ500(例えば、組織プローブ)の例示的な実施形態を示す。サンプルプローブ500は、サンプル測定デバイス310が隣接して配置された遠位開放端504を含む。サンプル測定デバイス310のサンプル受容面/界面は、遠位開放端を通って進んでサンプル受容面/界面に配置される(押し付けられる)サンプル材料を収容するために、遠位開放端504に対して遠位に向いている(すなわち、位置しており、配向されている)。この例示では、サンプル材料50(例えば、組織サンプル)内に進められて(押し進められて)、選択された深さ位置(「L」で表す)での材料(例えば、組織面または塊)をサンプル受容面/界面と直接接触させるプローブ500が示されている。サンプルプローブ500は、この例示的な実施形態では、開放端504に向けてプローブに沿って遠位に移動して内向きに細くなる面/縁506を含む。面/縁506は、一般に、非鋭利および鋭利(またはピアス)のカテゴリ内に入る本明細書の目的で、様々な形態で提供され得る。面/縁506が非鋭利である実施形態では、プローブ500は、既に形成された開口、チャネルなどに(非破壊的に)進められるのに好適な測定棒または測定デバイスとして機能し得る。面/縁506が鋭利(例えば、切断縁)である実施形態では、プローブ500は、サンプル材料を通る経路を、サンプル材料内の選択された深さ位置までユーザが切断(スライスまたは穿孔)することを可能にする。したがって、プローブ500は、プローブが鋭利なデバイスまたは切断デバイスとして構成されているときに、サンプル内の選択された深さ位置だけでなく、サンプル材料の上面または(例えば、グロシングによって作られる)露出面でサンプル材料を測定するように(例えば、変更可能/交換可能な外部筐体で)様々に構成され得ることが理解されるべきである。本明細書に記載される面/縁は、直線状、曲線状、および円形の切断縁を含むがこれらに限定されない様々な形状の鋭利なもの(例えば、切断縁)として提供され得ることも理解されるべきである。
【0022】
例示的な実施形態では、サンプルプローブ(例えば、組織プローブ)は、侵襲を最小限にして、試験の間にサンプル材料が著しく損傷しないようにサンプル材料(例えば、組織)内の選択された位置(深さ)まで通路を作るように構成された、プローブの遠位(開放)端でのピアス構造および/またはカッターを含む。
【0023】
図6Aは、サンプル測定デバイス310、例えば、
図4に対して前述したようなサンプル受容面/界面を画定する結晶を含む減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスで構成されたサンプルプローブ600(例えば、組織プローブ)の別の例示的な実施形態を示す。サンプルプローブ500は、サンプル測定デバイス310が隣接して配置された遠位開放端504を含む。サンプル測定デバイス310のサンプル受容面/界面は、遠位開放端を通って進んでサンプル受容面/界面に配置される(押し付けられる)サンプル材料を収容するために、遠位開放端504に対して遠位に向いている(すなわち、位置しており、配向されている)。この例示的な実施形態では、プローブ600は、プローブの遠位開放端でピアス構造を提供するように構成された(形状の)面/縁506を含む。サンプル測定デバイス310は、(プローブの)遠位端に隣接する前方/延長位置と、(例えば、図示するような)遠位開放端504から離れたプローブの筐体内に引っ込んだ(破線で示される)後方/収縮位置610との間で(双方向矢印602によって表されるように)再配置可能に構成されている。
【0024】
図6Bは、サンプル測定デバイス310、例えば、
図4に対して前述したようなサンプル受容面/界面を画定する結晶を含む減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスで構成されたサンプルプローブ650(例えば、組織プローブ)の別の例示的な実施形態を示す。サンプルプローブ650は、サンプル測定デバイス310が隣接して配置された遠位開放端604を含む。サンプル測定デバイス310のサンプル受容面/界面は、遠位開放端を通って進んでサンプル受容面/界面に配置される(押し付けられる)サンプル材料を収容するために、遠位開放端604に対して遠位に向いている(すなわち、位置しており、配向されている)。この例示的な実施形態では、プローブ650は、(プローブの)遠位開放端604に対して遠位に延在し、かつ遠位開放端604でバリアを提供する前方/延長位置と、(例えば、図示するような)遠位開放端604から離れたプローブの筐体内に引っ込んだ(破線で示される)後方/収縮位置666との間で(双方向矢印652によって表されるように)再配置可能であるシールド/ピアス構造を提供するように構成された(形状の)面/縁656を含む。任意で、本実施形態では、サンプル測定デバイス310は、(プローブの)遠位端に隣接する前方/延長位置と、(例えば、図示するような)遠位開放端604から離れたプローブの筐体内に引っ込んだ(破線で示される)後方/収縮位置610との間で(双方向矢印602によって表されるように)再配置可能に構成されている。
【0025】
サンプルプローブの再配置可能な構成要素/部品に関して、例えば、手動、バイアスばね、ばねベースおよび/またはアクチュエータ駆動の要素を含み、延長可能/収縮可能な刃を有するガード付き外科用メスまたは外科用器具で採用される技術に類似する、より小さいスケールの機構に潜在的に組み込まれる様々な再配置機構が利用され得る。
【0026】
図6Aおよび
図6Bを参照すると、本明細書に記載されるプローブは、約6cmの最長プローブ長さL
Pを有し、0~5mm(典型的には、約1~2mm)で可変であり得るプローブ長さL
Pを有する。本明細書に記載されるプローブは、試験の間にサンプル材料(例えば、組織)が著しく損傷しないように約1mm以下であり得るプローブ幅W
P(または直径)を有する。
【0027】
図7は、例示的なATR-IRサンプル測定方法700のステップまたは当該測定方法に対応付けられたステップを示すフローチャートである。方法700は、702で(いくつかの例示的な方法では任意)、IR源およびIR検出器に動作可能に接続された(例えば、結晶の光路の両端で、対応付けられた光学系を介して光学的に接続された(coupled))サンプル受容面/界面を画定する結晶を含むATR-IRサンプル測定デバイスを含むプローブを有する分光システムまたはデバイスを構成することを含む。方法700は、704で、プローブをサンプル材料(例えば、組織サンプル)内に進めて、サンプル材料内の選択された深さ位置(
図5で「L」で表す)での材料(組織)をサンプル受容面/界面と直接接触させることを含む。方法700は、次に706で、IR源を採用して、選択された深さ位置での材料(例えば、組織)がサンプル受容面/界面に接している間に、結晶を通って伝播する内部反射IRビームを生成することを含む。方法700は、708で、IR検出器を使用して、(インターフェログラム信号として)結晶の減衰IRビームの出力を記録することを含む。そして、方法700は、710で、減衰IRビームを使用して、IRスペクトル(複数可)(の視覚的な表示)を生成/提供することを含む。方法700は、712で(いくつかの例示的な方法では任意)、IRスペクトル(複数可)を評価して、選択された深さ位置でのサンプル材料内の固定物質(例えば、ホルマリン)の存在を示す信号(例えば、約1000cm
-1~1100cm
-1の信号ピーク)が存在するかどうかを判定することをさらに含む。例示的な方法では、サンプル材料は、組織サンプルである。例示的な方法では、固定物質は、ホルマリン/ホルムアルデヒドである。例示的な方法では、選択された深さ位置は、サンプル材料の厚さの約半分(または、サンプルの外側/上面とサンプルの真ん中の位置との間の別の深さ位置)である。減衰IRビームを使用してIRスペクトル(複数可)を生成/提供するステップ710は、異なる時間に取られる測定値から得られる測定結果をそれぞれ示すスペクトルパターンの視覚的な表示を生成/提供することを含み得る。減衰IRビームを使用してIRスペクトル(複数可)を生成/提供するステップ710は、異なる時間および/またはサンプル材料上もしくは当該サンプル材料内の異なる位置で取られる測定値から得られる測定結果を示すスペクトルパターンの視覚的な表示を生成/提供することを含み得る。例示的な方法では、方法700は、対象のエリアでのサンプル材料のグロシングの間(または後)、対象のエリアの周囲または隣接する異なる位置で取られる測定値を得ることをさらに含む。例えば、より大きいサンプルの場合、病理医/指定医は、組織サンプルを視覚的に検査し、調査のために処理される対象のエリアを切除し得る(当該処置は「グロシング」と呼ばれる)。グロシングの間、ユーザは、対象のエリアの直ぐ周囲のエリアをスキャン(評価)して、固定の程度を判定し、対象のエリアの周囲の位置が固定の存在を示す場合、対象のエリアも固定剤の占有率(十分な量)を得ていると想定し得る。例示的な方法では、プローブをサンプル材料内に進めるステップ704は、サンプル材料の対象のエリアの周囲または隣接する異なる位置で取られる測定値を得ることを含む。
【0028】
例示的な実施形態および実装は、(例えば、異なる位置で同時に測定するために)測定機器のサンプル配置構造/エリア内の複数の異なる位置で(を介して)固定剤の存在および強度のそのような評価を容易にするように構成または提供された計装を含む。
図3Bは、そのようなサンプル配置構造/エリアの例、すなわち、例えば、ATR-IRダイヤモンドなどの結晶によって画定されるサンプル受容面/界面を各々有する4つ(4)の空間的に分離された別個のサンプル測定デバイス310を有するサンプル配置構造300-2(例えば、測定される組織サンプルが配置される面)を示す。
図3Cは、そのようなサンプル配置構造/エリアの別の例、すなわち、例えば、ATR-IRダイヤモンドなどの結晶によって画定されるサンプル受容面/界面を各々有する9つ(9)の空間的に分離された別個のサンプル測定デバイス310を有するサンプル配置構造300-3(例えば、測定される組織サンプルが配置される面)を示す。
【0029】
例示的な実施形態は、サンプル材料内に貫通するように構成された鋭利な先端上に提供された複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含む隆起ピアス構造で構成された分光システムまたはデバイスを含む。例えば、
図3Bまたは
図3Cで示されるようなATR-IRサンプル測定デバイスの空間分布を有するサンプル配置構造/エリアは、サンプル材料内に貫通するように構成された鋭利な先端上に提供された複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含む隆起ピアス構造の形態で提供され得る。代替的には、サンプル配置構造/エリアは、複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含む隆起ピアス構造の形態で提供され得、複数のATR-IRサンプル測定デバイスの各々は、サンプル材料内に貫通するように構成された別個の(個々の)鋭利な先端上に提供される。さらに、サンプル配置構造/エリアおよび先端または他のピアス構造は、サンプル配置構造/エリア上に配置されるサンプル材料内の異なる深さまで貫通するように構成され得る。例示的な実施形態では、複数のATR-IRサンプル測定デバイスは、ダイヤモンド結晶を含む。
【0030】
図8は、例示的な計装設計方法800を示すフローチャートである。方法800は、802で、(IR源およびIR検出器に動作可能に接続された)サンプル受容面/界面を画定する結晶を各々含む1つ以上の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスを含むプローブまたは隆起ピアス構造を有する分光システムまたはデバイスを提供または構成することを含む。
【0031】
したがって、例示的な実施形態では、計装方法は、サンプル受容面/界面を画定する結晶を各々含む1つ以上の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスを含むプローブまたは隆起ピアス構造を有する分光システムまたはデバイスを提供または構成することを含む。
【0032】
したがって、例示的な実施形態では、サンプル材料を測定するための装置は、サンプル受容面/界面を画定する結晶を各々含む1つ以上の減衰全反射赤外線(ATR-IR)サンプル測定デバイスを含む構造を含むか、または当該構造で構成された分光システムまたはデバイスを含む。ATR-IRサンプル測定デバイスの各々のサンプル受容面/界面は、IR源およびIR検出器に動作可能に接続されている。例示的な実施形態および実装では、分光システムまたはデバイスは、(プローブの遠位端に隣接する)前方/延長位置と、遠位端から離れたプローブの筐体内に引っ込んだ後方/収縮位置との間で再配置可能に構成されたサンプル測定デバイスを有するプローブを含む。例示的な実施形態および実装では、分光システムまたはデバイスは、プローブの遠位端でピアス構造および/またはカッターを有するプローブを含む。例示的な実施形態および実装では、分光システムまたはデバイスは、プローブの遠位開放端でバリアを提供する延長位置と、収縮位置との間で再配置可能に構成されたシールド/ピアス構造を有するプローブを含む。例示的な実施形態および実装では、分光システムまたはデバイスは、隆起ピアス構造を含み、当該構造は、サンプル材料内に貫通するように構成された(当該構造の)鋭利な先端上に提供された複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含む。例示として、複数のATR-IRサンプル測定デバイスは、ダイヤモンド結晶を含む。例示的な実施形態および実装では、1つ以上のATR-IRサンプル測定デバイスは、サンプル材料内の異なる深さそれぞれでサンプル材料を測定するように構成された複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含む。例示的な実施形態および実装では、1つ以上のATR-IRサンプル測定デバイスは、サンプル材料での空間的に分離された異なる位置それぞれでサンプル材料を測定するように構成された複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含む。例示的な実施形態および実装では、1つ以上のATR-IRサンプル測定デバイスは、サンプル材料での空間的に分離された異なる位置それぞれでサンプル材料を測定するように構成された複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含む。例示的な実施形態および実装では、分光システムまたはデバイスは、複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含むサンプル配置構造/エリアを有するプローブを含む。例示的な実施形態および実装では、分光システムまたはデバイスは、複数のATR-IRサンプル測定デバイスを含むサンプル配置構造/エリアを有する隆起ピアス構造を含む。
【0033】
図9は、サンプル材料を貫通するためのプローブの使用を伴わない(または必要としない)例示的なATR-IRサンプル測定方法900のステップまたは当該測定方法900に対応付けられたステップを示すフローチャートである。方法900は、902で(いくつかの例示的な方法では任意)、IR源およびIR検出器に動作可能に接続された(例えば、結晶の光路の両端で、対応付けられた光学系を介して光学的に接続された(coupled))サンプル受容面/界面を画定する結晶を含むATR-IRサンプル測定デバイスを有する分光システムまたはデバイスを構成することを含む。方法900は、904で、サンプル材料(例えば、組織サンプル)をATR-IRサンプル測定デバイス上に配置して、サンプル材料(例えば、組織サンプル)をサンプル受容面/界面と直接接触させることを含む。方法900は、次に906で、IR源を採用して、サンプル材料(例えば、組織)がサンプル受容面/界面に接している間に、結晶を通って伝播する内部反射IRビームを生成することを含む。方法900は、908で、IR検出器を使用して、(インターフェログラム信号として)結晶の減衰IRビームの出力を記録することを含む。そして、方法900は、910で、減衰IRビームを使用して、IRスペクトル(複数可)(の視覚的な表示)を生成/提供することを含む。方法900は、912で(いくつかの例示的な方法では任意)、IRスペクトル(複数可)を評価して、サンプル材料内の固定物質(例えば、ホルマリン)の存在を示す信号(例えば、約1000cm-1~1100cm-1のピーク)が存在するかどうかを判定することをさらに含む。例示的な方法では、サンプル材料は、組織サンプルである。例示的な方法では、固定物質は、ホルマリン/ホルムアルデヒドである。例示的な方法では、方法900は、サンプル材料を配置する前に、サンプル材料内の選択された深さ位置で材料を露出させるためにサンプル材料をグロスすることをさらに含み、サンプル材料を配置するステップ904は、サンプル材料をATR-IRサンプル測定デバイス上に配置して、選択された深さ位置での露出した材料をサンプル受容面/界面と直接接触させることを含む。例示的な方法では、選択された深さ位置は、サンプル材料の厚さの約半分(または、サンプルの外側/上面とサンプルの真ん中の位置との間の別の深さ位置)である。例示的な方法では、方法900は、サンプル材料をグロスした後、サンプル材料を配置する前に、選択された深さ位置での露出した材料を含むサンプル材料上の余分な流体を洗浄および除去することをさらに含む。減衰IRビームを使用してIRスペクトル(複数可)を生成/提供するステップ910は、異なる時間に取られる測定値から得られる測定結果をそれぞれ示すスペクトルパターンの視覚的な表示を生成/提供することを含み得る。減衰IRビームを使用してIRスペクトル(複数可)を生成/提供するステップ910は、異なる時間および/またはサンプル材料上もしくは当該サンプル材料の露出面での異なる位置で取られる測定値から得られる測定結果を示すスペクトルパターンの視覚的な表示を生成/提供することを含み得る。例示的な方法では、方法900は、対象のエリアでのサンプル材料のグロシングの間(または後)、対象のエリアの周囲または隣接する異なる位置で取られる測定値を得ることをさらに含む。例えば、より大きいサンプルの場合、病理医/指定医は、組織サンプルを視覚的に検査し、調査のために処理される対象のエリアを切除し得る(当該処置は「グロシング」と呼ばれる)。グロシングの間、ユーザは、対象のエリアの直ぐ周囲のエリアをスキャン(評価)して、固定の程度を判定し、対象のエリアの周囲の位置が固定の存在を示す場合、対象のエリアも固定剤の占有率(十分な量)を得ていると想定し得る。例示的な方法では、ATR-IRサンプル測定デバイス上にサンプル材料を配置するステップ904は、サンプル材料の対象のエリアの周囲または隣接する異なる位置で取られる測定値を得ることを含む。
【0034】
「コンピュータ」、「コンピュータシステム」、「計算装置」、「コンポーネント」、または「コンピュータプロセッサ」は、例えば、限定されないが、プロセッサ、マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、サーバ、メインフレーム、ラップトップ、パーソナルデータアシスタント(Personal Data Assistant:PDA)、無線電子メールデバイス、スマートフォン、携帯電話、電子タブレット、セルラー電話、ポケットベル、ファックス機器、スキャナ、またはデータを送信、処理、および/もしくは受信するように構成された任意の他のプログラマブルデバイスもしくはコンピュータ装置であり得る。本明細書で開示されるコンピュータシステムおよびコンピュータベースのデバイスは、情報の取得、処理、および通信で使用される特定のソフトウェアアプリケーションを保存するためのメモリおよび/またはストレージコンポーネントを含み得る。開示された実施形態の動作に関して、そのようなメモリは内部であっても外部であってもよいことが理解され得る。様々な実施形態では、「ホスト」、「エンジン」、「ローダ」、「フィルタ」、「プラットフォーム」、または「コンポーネント」は、様々なコンピュータまたはコンピュータシステムを含み得るか、またはソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアの合理的な組合せを含み得る。特定の実施形態では、「モジュール」は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の合理的な組合せを含み得る。
【0035】
一般に、本明細書に記載される様々な実施形態、またはその構成要素もしくは部品が、ソフトウェア、ファームウェア、および/もしくはハードウェア、またはそれらのモジュールの多くの異なる実施形態で実装され得ることは、当業者に明らかであろう。本実施形態の一部を実装するために使用されるソフトウェアコードまたは専用制御ハードウェアは、本発明を限定するものではない。例えば、本明細書で上述した実施形態は、例えば、従来の技術またはオブジェクト指向の技術を使用するNETまたはHTMLなどの任意の好適なコンピュータプログラミング言語を使用するコンピュータソフトウェアで実装され得る。コンピュータソフトウェアおよび他のコンピュータ実装命令のためのプログラミング言語は、実行前にコンパイラまたはアセンブラによって機械語に変換され得、および/またはインタプリタによって実行時に直接変換され得る。アセンブリ言語の例には、ARM、MIPS、およびx86が含まれ、高級言語の例には、Ada、BASIC、C、C++、C#、COBOL、Fortran、Java(登録商標)、Lisp、Pascal、Object Pascalが含まれ、スクリプト言語の例には、Bourneスクリプト、JavaScript(登録商標)、Python(登録商標)、Ruby、PHP、およびPerlが含まれる。様々な実施形態は、例えば、Lotus Notes(登録商標)環境で採用され得る。そのようなソフトウェアは、例えば、磁気または光学記憶媒体などの任意の種類の好適なコンピュータ可読媒体またはメディアで保存され得る。
【0036】
ソフトウェア、エンジン、および/またはモジュールの例には、ソフトウェアコンポーネント、プログラム、アプリケーション、コンピュータプログラム、アプリケーションプログラム、システムプログラム、マシンプログラム、オペレーティングシステムソフトウェア、ミドルウェア、ファームウェア、ソフトウェアモジュール、ルーチン、サブルーチン、関数、メソッド、プロシージャ、ソフトウェアインターフェース、アプリケーションプログラムインターフェース(Application Program Interface:API)、命令セット、計算コード、コンピュータコード、コードセグメント、コンピュータコードセグメント、単語、値、記号、またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。実施形態がハードウェア要素および/またはソフトウェア要素を使用して実装されるかどうかの判定は、所望の計算レート、電力レベル、熱耐性、処理サイクル予算、入力データレート、出力データレート、メモリリソース、データバス速度、および他の設計または性能制約などの任意の数の要因に従って変わり得る。
【0037】
一部の場合、様々な実施形態は、製造物品として実装され得る。製造物品は、1つ以上の実施形態の様々な動作を行うためのロジック、命令、および/またはデータを保存するように配置されたコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。様々な実施形態では、例えば、製造物品は、プロセッサまたは特定用途向けプロセッサによる実行に好適なコンピュータプログラム命令を含む磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリ、またはファームウェアを備え得る。
【0038】
特に記載がない限り、「処理」、「計算」、「算出」、「判定」などの用語は、コンピュータもしくは計算システム、もしくは同様の電子計算デバイス、DSP、ASIC、FPGAもしくは他のプログラマブルロジックデバイス、離散ゲートもしくはトランジスタロジック、離散ハードウェアコンポーネント、またはそれらの任意の組合せの動作および/または処理を指し、当該組合せは、レジスタおよび/またはメモリ内の物理量として表されるデータ(例えば、電子)を、メモリ、レジスタ、または情報ストレージ、送信、もしくは表示デバイスなどの他のものの物理量として同様に表される他のデータに操作および/または変換する、本明細書に記載される機能を行うように設計されていることが理解され得る。
【0039】
特定の実施形態は、当該実施形態の派生形とともに、「接続された(coupled)」および「接続された(connected)」という表現を使用して記載され得る。これらの用語は、必ずしも互いに同義語として意図されているわけではない。例えば、いくつかの実施形態は、2つ以上の要素が互いに直接物理的または電気的に接触していることを示すために、「接続された(connected)」および/または「接続された(coupled)」という用語を使用して記載され得る。しかしながら、「接続された(coupled)」という用語はまた、2つ以上の要素が互いに直接接触していないにも関わらず、互いに協働または相互作用していることを意味し得る。ソフトウェア要素に関して、例えば、「接続された(coupled)」という用語は、インターフェース、メッセージインターフェース、アプリケーションプログラムインターフェース(API)、メッセージの交換などを指し得る。
【0040】
当業者は、本明細書に明示的に記載されていないか、または示されていないが、本開示の原理を具体化し、かつ本開示の範囲内で構成される様々な配置を想到できることが理解されよう。さらに、本明細書に記載されるすべての例および条件用語は、主に、本開示で記載される原理および当該技術の促進に寄与する概念を読者が理解するのを助けることを意図しており、そのような具体的に記載された例および条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、原理、態様、および実施形態、ならびにそれらの具体例を記載する本明細書のすべての記述は、それらの構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物、および将来開発される等価物、すなわち、構造に関わらず、同じ機能を果たすように開発される任意の要素の両方を備えることが意図される。したがって、本開示の範囲は、例示的な態様、および本明細書に示され、記載される態様に限定されることを意図したものではない。
【0041】
本明細書に記載される様々なシステムは、上述したようなハードウェアによって実行されるソフトウェアまたはコードで具体化され得るが、また、代替として、同じものが、専用ハードウェアまたはソフトウェア/ハードウェアおよび専用ハードウェアの組合せで具体化され得る。専用ハードウェアで具体化される場合、各々が、複数の技術のうちのいずれか1つ、または複数の技術の組合せを採用する回路または状態機械として実装され得る。これらの技術には、1つ以上のデータ信号の適用時に様々な論理機能を実装するためのロジックゲートを有する離散論理回路、適切なロジックゲートを有する特定用途向け集積回路、または他のコンポーネントなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書に記載されるフローチャートおよび方法は、様々な実装の機能性および動作を示す。ソフトウェアで具体化される場合、各ブロック、ステップ、または動作は、特定の論理機能を実装するためのプログラム命令を備えるコードのモジュール、セグメント、または部分を表し得る。プログラム命令は、プログラミング言語で書かれた人間が読める記述を含むソースコード、コンピュータシステム内の処理コンポーネントなどの好適な実行システムによって認識可能な数値命令を含むマシンコードの形態で具体化され得る。ハードウェアで具体化される場合、各ブロックは、特定の論理機能を実装するための回路または複数の相互接続された回路を表し得る。
【0043】
上記の説明では、説明のために、実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これらの具体的な詳細の一部がなくても、1つ以上の他の実施形態が実施され得ることは、当業者に明らかであろう。記載される特定の実施形態は、本発明を限定するために提供されるのではなく、本発明を説明するために提供される。本発明の範囲は、上記で提供される具体例によって決定されるのではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ決定される。他の例では、周知の構造、デバイス、および動作は、ブロック図の形態で示されているか、または説明の理解を不明瞭にするのを回避するために詳細を示していない。適切であると考えられる場合、参照数字または参照数字の末尾部分は、対応または類似する要素を示すために図の間で繰り返されており、当該要素は、同様の特性を任意で有し得る。
【0044】
本明細書を通じて、例えば「一実施形態」、「実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「異なる実施形態」への参照は、特定の特徴が本発明の実施に含まれ得ることを意味することも理解されるべきである。同様に、本明細書では、本開示を合理化し、かつ様々な発明の態様の理解を助ける目的で、単一の実施形態、図、またはそれらの説明で、様々な特徴が時にはグループ化されることが理解されるべきである。しかしながら、本開示の方法は、本発明が各請求項に明示的に記載されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、単一の開示された実施形態のすべての特徴よりも少なく存在し得る。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、各請求項が本発明の別個の実施形態として独立した状態で、ここで明示的にこの詳細な説明に組み込まれる。
【0045】
本発明の様々な実施形態が本明細書に記載されてきたが、当該実施形態に対する様々な修正、変更、および適応が、本発明の利点の一部またはすべてを達成して当業者に想起され得ることは明らかであろう。したがって、開示された実施形態は、本明細書に記載されるような本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、そのようなすべての修正、変更、および適応を含むことが意図される。