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特許7441967平面試料輸送を用いた小型臨床診断システム
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  • 特許-平面試料輸送を用いた小型臨床診断システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】平面試料輸送を用いた小型臨床診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20240222BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
G01N35/04 H
B65G54/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022555967
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021022636
(87)【国際公開番号】W WO2021188596
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】62/990,684
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ティム・ウーゼ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・レーツシュ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0011224(US,A1)
【文献】特開2008-249461(JP,A)
【文献】特開2008-286623(JP,A)
【文献】特開2017-077971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
B65G54/00-54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床診断システムであって:
少なくとも1つの分析器と;
トラックと;
複数のキャリアとを含み、
ここで、トラックとキャリアは、水平面内でキャリア動作を行うように構成され、
キャリアは、単一トラックのシステムに限定されることやトラックを一方向にのみ移動することがなく、水平面をある程度自由に移動することができ、
少なくとも1つの分析器は、トラックおよびキャリアの上方に配置されており、
デジタルビジョンシステムをさらに含み、デジタルビジョンシステムは、キャリア上に配置されたオブジェクトを臨床診断システムに対して位置合わせし、リアルタイムの位置決めをするように構成され、テレセントリック対物レンズを装備した2以上のデジタルカメラを含む、
前記臨床診断システム。
【請求項2】
電子式キャリア動作制御システムをさらに含む、請求項に記載の臨床診断システム。
【請求項3】
デジタルビジョンシステムおよび電子式キャリア動作制御システムは、キャリア上に配置されたオブジェクトを臨床診断システムに対して位置合わせし、リアルタイムの位置決めをするように構成されている、請求項に記載の臨床診断システム。
【請求項4】
1つまたはそれ以上のローダと;
生化学試薬用の1つまたはそれ以上の供給ステーションとをさらに含む、請求項1に記載の臨床診断システム。
【請求項5】
ローダのうちの少なくとも1つ、およびステーションのうちの少なくとも1つは、トラックの上方に配置される、請求項に記載の臨床診断システム。
【請求項6】
トラックとキャリアは、トラックの上面上方の水平面でキャリアの磁気浮上および動作
を行うように構成されている、請求項1に記載の臨床診断システム。
【請求項7】
少なくとも1つの分析器は、垂直軸に実質的に平行な方向の直線ピペット動作が得られるように構成されたロボットピペッタを含む、請求項1に記載の臨床診断システム。
【請求項8】
ワークフローの最適化および試料の優先順位付けを行うように構成された自動制御システムをさらに含む、請求項1に記載の臨床診断システム。
【請求項9】
自動生化学解析の方法であって:
(a)少なくとも1つの分析器と、複数のキャリアを備えたトラックとを含み、デジタルビジョンシステムをさらに含み、デジタルビジョンシステムは、複数のキャリア上に配置された複数のオブジェクトを臨床診断システムに対して位置合わせし、リアルタイムの位置決めをするように構成され、テレセントリック対物レンズを装備した2以上のデジタルカメラを含む臨床診断システムを提供する工程であって、トラックとキャリアは、水平面でキャリア動作を行うように構成され、キャリアは、単一トラックのシステムに限定されることやトラックを一方向にのみ移動することがなく、水平面をある程度自由に移動することができ、少なくとも1つの分析器は、トラックおよびキャリアの上方に配置される、工程と;
(b)臨床試料が入っている少なくとも1つの容器をキャリア上に配置する工程と;
(c)少なくとも1つの容器の位置および向きを臨床診断システムに対して位置合わせする工程と;
(d)各キャリアを、少なくとも1つの容器が分析器の下に配置される位置まで移動させる工程と;
(e)臨床試料を分析器まで移送する工程と;
(f)臨床試料の生化学分析を実施する工程と
を含む、前記方法。
【請求項10】
ステップ(c)で、キャリアおよび容器の1つ、2つまたはそれ以上のデジタル画像は、デジタルビジョンシステムを用いて取り込まれ、処理される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
生化学分析のワークフローは、電子式自動制御システムによって最適化される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
各キャリアは磁気浮上し、トラックの上面上方の水平面を移動する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
工程(e)で、ピペットは、垂直軸と実質的に平行な方向に沿って下ろされ、臨床試料に浸され、試料の一部分が吸引されて分析器まで移送される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月17日に出願された「COMPACT CLINICAL DIAGNOSTICS SYSTEM WITH PLANAR SAMPLE TRANSPORT」という名称の米国特許仮出願第62/990,684号の利益を主張し、その開示全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、1つまたはそれ以上の分析器と、1つまたはそれ以上のキャリアを備えたトラックとを含む臨床診断システムに関し、トラックとキャリアは、水平面でキャリア動作を行うように構成される。
【背景技術】
【0003】
水平面内の事前設定された経路に沿って試料容器を輸送するためのトラックを含む臨床診断システムが、当技術分野で知られている。通常、事前設定された経路は単一トラックであり、試料は通常、一方向にだけ移動する。
【0004】
特許文献1は、少なくとも1つの永久磁石をそれぞれが含む、複数の試料容器キャリアを含む検査室試料分配システムに関する。複数の固定電磁アクチュエータが輸送面の下方に配置されている。電磁アクチュエータは、磁力を試料容器キャリアに加えることによって、容器キャリアを輸送面に沿って移動させる。システムはさらに、輸送面と分析ステーションの間で試料容器キャリア、試料容器、または試料を移送するための少なくとも1つの移送デバイスを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9,239,335B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動臨床診断システムにより、医療検査の汎用性、範囲、および値ごろ感が向上している。継続的に拡大する医療検査の需要に対処するために、臨床診断システムの効率を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の実施形態では、臨床診断システムは、1つまたはそれ以上の分析器と、1つまたはそれ以上のキャリアを備えたトラックとを含み、トラックとキャリアは、水平面でキャリア動作を行うように構成され、少なくとも1つの分析器は、トラックおよび1つまたはそれ以上のキャリアの上方に配置される。キャリアは、水平面をある程度自由に移動することができ、単一トラックのシステムに限定されること、またはトラックを一方向にのみ移動することがない。
【0008】
第2の実施形態では、自動生化学解析の方法は:
(a)1つまたはそれ以上の分析器と、および1つまたはそれ以上のキャリアを備えたトラックとを含む臨床診断システムを提供する工程であって、トラックとキャリアは、水平面でキャリア動作を行うように構成され、少なくとも1つの分析器は、トラックおよび1つまたはそれ以上のキャリアの上方に配置される、工程と;
(b)臨床試料が入っている1つまたはそれ以上の容器を少なくとも1つのキャリア上に配置する工程と;
(c)少なくとも1つの容器の位置および向きを臨床診断システムに対して位置合わせする工程と;
(d)キャリアを、少なくとも1つの容器が分析器の下に配置される位置まで移動させる工程と;
(e)臨床試料を分析器まで移送する工程と;
(f)臨床試料の生化学分析を実施する工程と
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】トラック上方の水平面を移動する試料容器用のキャリアを含む臨床診断システムの概略側面図である。
図2】分析器の下方に配置されたトラックに多数の試料キャリアを備えた臨床診断システムを示す図である。
図3A】キャリアと、その上に試料容器が配置されたラックとの斜視図およびテレセントリック平面図である。
図3B】キャリアと、その上に試料容器が配置されたラックとの斜視図およびテレセントリック平面図である。
図4A】誤配置された試料容器付きラックを、機械的アライナを使用してキャリアに対して位置合わせすることを示す図である。
図4B】誤配置された試料容器付きラックを、機械的アライナを使用してキャリアに対して位置合わせすることを示す図である。
図4C】誤配置された試料容器付きラックを、機械的アライナを使用してキャリアに対して位置合わせすることを示す図である。
図4D】誤配置された試料容器付きラックを、機械的アライナを使用してキャリアに対して位置合わせすることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、高い試料スループットを設置面積および複雑さの低減とともにもたらす臨床診断システムを提供することを目的とする。
【0011】
この目的は、1つまたはそれ以上の分析器と、1つまたはそれ以上のキャリアを備えたトラックとを含む臨床診断システムによって達成され、トラックとキャリアは、水平面でキャリア動作を行うように構成され、少なくとも1つの分析器は、トラックおよび1つまたはそれ以上のキャリアの上方に配置されている。
【0012】
本発明の適切な実施形態は、以下の点を特徴とする:
臨床診断システムは、電子自動システムを備え;
電子自動システムは、1つまたはそれ以上のデジタルプロセッサを含み;
電子自動システムは、電子メモリを含み;
電子自動システムは、電子的に収納された自動プログラムを含み;
電子自動システムは、1つまたはそれ以上のキャリアのそれぞれの位置を検出するように構成された電子式キャリア動作制御システムを含み;
電子式自動制御システムは、ワークフロー優先順位付けを行うように構成され;
電子式自動制御システムは、ワークフロー最適化を行うように構成され;
自動制御プログラムは、臨床診断システムのインストール済みベースの作動中に収集されたワークフローデータを用いてワークフロー最適化を行うように訓練された人工ニューラルネットワークを含み;
自動制御プログラムは、臨床診断システムのモンテカルロシミュレーションによって生成されたワークフローデータを用いてワークフロー最適化を行うように訓練された人工ニューラルネットワークを含み;
臨床診断システムは、1つまたはそれ以上のローダを含み;
臨床診断システムは、生化学試薬用の1つまたはそれ以上の供給ステーションを含み;
1つまたはそれ以上のローダは、トラックおよび1つまたはそれ以上のキャリアの上方に配置され;
1つまたはそれ以上の供給ステーションは、トラックおよび1つまたはそれ以上のキャリアの上方に配置され;
上部トラック面と、少なくとも1つの分析器、ローダまたは供給ステーションの下部固定部材との間の最小垂直隙間が、≧50mm、≧100mm、≧150mm、≧200mm、≧250mmまたは≧300mmであり;
【0013】
臨床診断システムの基準座標系が座標軸を有し、
【数1】
【数2】
および
【数3】
であり;
【0014】
臨床診断システムの基準座標系が座標軸を有し、
【数4】
【数5】
および
【数6】
であり、座標軸
【数7】
が垂直方向と平行であり;
【0015】
臨床診断システムの基準座標系は、原点ベクトル
【数8】
を有し;
臨床診断システムの基準座標系は、メートル、ミリメートル、マイクロメートル、またはインチの単位で較正され;
【0016】
トラックは、基準座標軸
【数9】
および
【数10】
に及ぶ面に実質的に平行な上面を有し;
【0017】
トラックは、上面法線ベクトル
【数11】

【数12】
で有し、上面法線ベクトルは座標軸
【数13】
と実質的に平行であり、ここで
【数14】
であり;
【0018】
トラックとキャリアは、上部トラック面上方の水平面内の選択された連続位置でキャリアの動作および位置決めを行うように構成され;
【0019】
トラックとキャリアは、法線ベクトル
【数15】

【数16】
で有する水平面内の選択された連続位置で、キャリアの動作および位置決めを行うように構成され、法線ベクトルは座標軸
【数17】
と実質的に平行であり、ここで
【数18】
であり;
【0020】
トラックは、1つまたはそれ以上のトラックモジュールから構成され;
トラックは、タイル状のトラックモジュールから構成され;
トラックは、上面が継ぎ目なく接合されたタイル状のトラックモジュールから構成され;
トラックは、上面が矩形、正三角形、または正六角形である1つまたはそれ以上のトラックモジュールから構成され;
上部トラック面が、矩形、正三角形、または正六角形で構成された連結領域を覆い;
上部トラック面が、一重、二重、三重または多重連結された領域を覆い;
トラックとキャリアは、≦1000μm、≦100μm、≦10μm、または≦2μmの横方向精度でキャリア位置決めを行うように構成され;
トラックとキャリアは、≦1000μm、≦100μm、≦10μm、または≦2μmの横方向繰り返し精度でキャリア位置決めを行うように構成され;
トラックとキャリアは、垂直軸のまわりでキャリア回転を行うように構成され;
【0021】
トラックとキャリアは、軸
【数19】
のまわりで
【数20】
で、キャリア回転を行うように構成され、軸は、基準座標軸
【数21】
と実質的に平行であり、ここで
【数22】
であり;
【0022】
トラックとキャリアは、選択された連続回転角だけ垂直軸のまわりでキャリア回転を行うように構成され;
【0023】
トラックとキャリアは、選択された連続回転角だけ軸
【数23】
のまわりで
【数24】
で、キャリア回転を行うように構成され、軸は、基準座標軸
【数25】
と実質的に平行であり、ここで
【数26】
であり;
【0024】
トラックとキャリアは、トラックの上面上方に磁気キャリア浮上を行うように構成され;
トラックとキャリアは、トラックの上面上方に0.5mm≦D≦10mmの垂直隙間Dだけ磁気キャリア浮上を行うように構成され;
トラックとキャリアは、トラックの上面上方に0.5mm≦D≦10mmのエアギャップ隙間Dだけ磁気キャリア浮上を行うように構成され;
トラックとキャリアは、トラックの上面上方の水平面でキャリアの磁気浮上および動作を行うように構成され;
トラックとキャリアは、キャリアの重量を決定するように構成され;
トラックとキャリアは、キャリアの重量を測定してキャリアが空であるかペイロードを保持しているかを決定するように構成され;
トラックは、一定磁場または変調磁場を発生させるように構成され;
トラックは、時間変調および/または空間変調された磁場を発生させるように構成され;
トラックは、時間変調および/または空間変調された磁場を発生させ、それによって、水平方向に向けられた磁力を1つまたはそれ以上のキャリアに及ぼすように構成され;
トラックは、複数の電磁誘導器を含み;
トラックは、複数の電磁コイルを含み;
トラックは、複数の磁界センサを含み;
トラックは、複数のホールセンサを含み;
トラックは、複数の電磁誘導器のそれぞれに外部電源から電力を供給するように構成された電気アダプタを含み;
トラックは、複数の電磁コイルのそれぞれに外部電源から電力を供給するように構成された電気アダプタを含み;
トラックは、複数の電磁誘導器のそれぞれの電流を変調するように構成された電子式キャリア動作制御システムを含み;
トラックは、複数の電磁コイルのそれぞれの電流を変調するように構成された電子式キャリア動作制御システムを含み;
各磁界センサは、電子式キャリア動作制御システムに電気的に接続され;
各磁界センサの出力部は、電子式キャリア動作制御システムに電気的に接続され;
電子式キャリア動作制御システムは、デジタルプロセッサを含み;
電子式キャリア動作制御システムは、電子メモリを含み;
電子式キャリア動作制御システムは、複数の磁界センサの出力信号に基づいて1つまたはそれ以上のキャリアのそれぞれの位置を検出するように構成され;
電子式キャリア動作制御システムは、1つまたはそれ以上のキャリアのそれぞれの位置を≦1000μm、≦100μm、≦10μmまたは≦2μmの横方向精度で検出するように構成され;
電子式キャリア動作制御システムは、キャリア経路指定を行うように構成された、電子的に収納されている動作制御プログラムを含み;
電子式キャリア動作制御システムは、キャリアの衝突を防止するように構成され;
電子式キャリア動作制御システムは、キャリア経路指定を最適化するように構成され;
電子式キャリア動作制御システムは、キャリアの重量を決定するように構成され;
電子式キャリア動作制御システムは、キャリアの重量を測定してキャリアが空であるかペイロードを保持しているかを決定するように構成され;
各キャリアは、1つまたはそれ以上の永久磁石を含み;
各キャリアは、1つまたはそれ以上の永久磁石アセンブリを含み;
各キャリアは、1つまたはそれ以上のハルバッハアレイを含み;
各キャリアは、4つの矩形ハルバッハアレイを含み;
【0025】
分析器、ローダまたは供給ステーションのうちの少なくとも1つは、トラックと、垂直方向に対し実質的に垂直な法線ベクトル
【数27】
を持つ平面内の選択された連続位置でアクチュエータの動作および位置決めを行うように構成されたアクチュエータとを含み;
【0026】
分析器、ローダまたは供給ステーションのうちの少なくとも1つは、トラックと、法線ベクトル
【数28】
が垂直方向に対し実質的に垂直である平面内の選択された連続位置でアクチュエータの動作および位置決めを行うように構成された、ロボットピペッタまたはロボットハンドラなどのアクチュエータとを含み;
【0027】
分析器、ローダまたは供給ステーションのうちの少なくとも1つは、トラックと、法線ベクトル
【数29】

【数30】
で、
【数31】
であるように垂直方向に実質的に垂直に有する平面内の選択された連続位置で、アクチュエータ動作および位置決めを行うように構成されたアクチュエータとを含み;
【0028】
分析器、ローダまたは供給ステーションのうちの少なくとも1つは、トラックと、垂直方向に対し実質的に垂直な法線ベクトル
【数32】
を持つ平面でアクチュエータの磁気浮上および動作を行うように構成されたアクチュエータとを含み;
【0029】
少なくとも1つのキャリアは、1つまたはそれ以上の光学的位置合わせマークを含み;
少なくとも1つのキャリアは、矩形ストライプ、十字または円として形作られた1つまたはそれ以上のパターンを含む、1つまたはそれ以上の光学的位置合わせマークを含み;
少なくとも1つのキャリアは、ポリマー材料、金属、ガラスまたはセラミックから作られたカバープレートを含み;
少なくとも1つのキャリアは、ポリマー材料、金属、またはセラミックから作られたコーティング膜を含み;
少なくとも1つのキャリアの上面には、試料または反応物の容器を保持するラックの機械的位置合わせのための1つまたはそれ以上の凸状突起が装備され;
少なくとも1つのキャリアの上面には、円錐または円筒形状を有する1つまたはそれ以上の凸状突起がラックの機械的位置合わせのために装備され、ラックの下面には、突起に対する1つまたはそれ以上の形状適合凹部が装備されており;
1つまたはそれ以上のキャリアには、臨床試料流体および/または生化学反応物流体用の1つ、2つ、3つまたはそれ以上の容器を保持するように構成されたラックが装備され;
各ラックは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の凹部を含み;
各ラックは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の凹部を含み、各凹部には、容器を固定するための1つ、2つ、または3つのばねが装備され;
各ラックは、矩形または円筒形の1つ、2つ、3つまたはそれ以上の凹部を含み;
各ラックは、容器を保持するための1~40個、1~30個、1~20個または1~10個の凹部を含み;
少なくとも1つのローダは、キャリアからラックをそれぞれ、キャリアの上へとピックアンドプレース搬送するように構成されたロボットハンドラを含み;
少なくとも1つのローダは、キャリア上に配置されたラックから容器をそれぞれ、ラックの中へとピックアンドプレース搬送するように構成されたロボットハンドラを含み;
少なくとも1つの分析器は、キャリア上に配置されたラックから容器をそれぞれ、ラックの中へとピックアンドプレース搬送するように構成されたロボットハンドラを含み;
少なくとも1つの分析器は、キャリア上に配置されたラックに保持された容器から流体をそれぞれ、吸引して容器の中へ供給するように構成されたロボットピペットシステムを含み;
少なくとも1つの分析器は、キャリアから試薬ベッセルをそれぞれ、キャリアの上へとピックアンドプレース搬送するように構成されたロボットハンドラを含み;
少なくとも1つの分析器は、キャリア上に配置された試薬ベッセルから流体を吸引するように構成されたロボットピペッタを含み;
【0030】
ロボットピペッタは、軸
【数33】
に沿ってピペット動作を行うように構成された1つのリニアアクチュエータを含み、ここで
【数34】
であり、軸は、基準座標軸
【数35】
と実質的に平行であり、ここで
【数36】
であり;
【0031】
ロボットピペッタは、ピペットチューブ中心軸と基準座標軸
【数37】
との間の角度
【数38】
が0~10度、すなわち、
【数39】
に調整されるピペット傾斜が得られるように構成され;
【0032】
ロボットピペッタは、ピペットチューブ中心軸と基準座標軸
【数40】
との間の角度
【数41】
が0~10度、すなわち、
【数42】
に調整されるピペット傾斜が得られるように構成された三脚傾斜アクチュエータを含み;
【0033】
少なくとも1つの供給ステーションは、キャリアから試薬ベッセルをそれぞれ、キャリアの上へとピックアンドプレース搬送するように構成されたロボットハンドラを含み;
臨床診断システムは、少なくとも1つのデジタルビジョンシステムを含み;
デジタルビジョンシステムと電子式キャリア動作制御システムは、キャリア上に配置された物体を臨床診断システムに対して位置合わせしリアルタイムに位置決めするように構成され;
デジタルビジョンシステムと電子式キャリア動作制御システムは、キャリア上に配置された物体を臨床診断システムの基準座標系に対して位置合わせしリアルタイムに位置決めするように構成され;
デジタルビジョンシステムと電子式キャリア動作制御システムは、キャリア上に配置された物体をキャリアに対して位置合わせするように構成され;
デジタルビジョンシステムと電子式キャリア動作制御システムは、キャリア上に配置された物体をキャリアの座標系に対して位置合わせするように構成され;
臨床診断システムは、機械的アライナを含み;
臨床診断システムは、制御されたキャリア動作と連動してデジタルビジョンシステムを使用して、キャリア上に配置された物体を位置合わせするように構成された機械的アライナを含み;
デジタルビジョンシステムと機械的アライナは、ラックをキャリアに対して位置合わせするように構成され;
機械的アライナは、ラックを支持しているキャリアが水平面で並進運動する間、ラックを所定の位置に保持するように構成され;
機械的アライナは、ラックを支持しているキャリアが垂直軸のまわりで回転している間、ラックを所定の位置に保持するように構成され;
機械的アライナは、内面がラックの表面輪郭と一致する凹部を含み;
機械的アライナは、矩形の凹部を含み、各ラックは、矩形で垂直方向に向けられた4つまたはそれ以上の端部を含み;
デジタルビジョンシステムは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラを含み;
デジタルビジョンシステムの1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラには、テレセントリック対物レンズが装備され;
デジタルビジョンシステムの1つ、2つ、3つ以上のデジタルカメラには、少なくとも1つの方向に≧30mm、≧40mm、≧50mm、≧60mm、≧70mm、≧80mm、≧90mm、≧100mm、≧110mm、≧120mm、≧130mm、≧140mmの視野を持つテレセントリック対物レンズが装備され;
デジタルビジョンシステムは、テレセントリック対物レンズをそれぞれ装備した2つのデジタルカメラを含み;
デジタルビジョンシステムは、テレセントリック対物レンズをそれぞれ装備した3つのデジタルカメラを含み;
デジタルビジョンシステムとトラックとキャリアは、容器を保持するラックが上に配置されているキャリアのデジタル画像を線走査または回転走査によって取り込むように構成され;
デジタルビジョンシステムの1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラは、通常(透視)対物レンズまたはテレセントリック対物レンズと、1~64センサ列から構成される光電子イメージセンサとを含む走査カメラとして構成され;
デジタルビジョンシステムの1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラは、通常(透視)対物レンズまたはテレセントリック対物レンズと、それぞれが4k~32k(すなわち、4×1024~32×1024)のアクティブピクセルで構成された1~64センサ列から構成される光電子イメージセンサとを含む走査カメラとして構成され;
デジタルビジョンシステムの1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラは、ライトフィールドカメラとして構成され、電子イメージセンサとカメラの対物レンズとの間に配置されたマルチレンズアレイを含み;
デジタルビジョンシステムは、2つまたは3つのデジタルカメラを含み、2つまたは3つのデジタルカメラの光軸は、互いに実質的に垂直方向に向いており;
【0034】
デジタルビジョンシステムは、光軸
【数43】
が、
【数44】
で、基準座標軸
【数45】
と実質的に平行に向けられているデジタルカメラを含み、ここで
【数46】
であり;
【0035】
デジタルビジョンシステムは、光軸
【数47】
が、
【数48】
で、基準座標軸
【数49】
と実質的に平行に向けられているデジタルカメラを含み、ここで
【数50】
であり;
【0036】
デジタルビジョンシステムは、光軸
【数51】
が、
【数52】
で、基準座標軸
【数53】
と実質的に平行に向けられているデジタルカメラを含み、ここで
【数54】
であり;
【0037】
デジタルビジョンシステムは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラのうちの1つのデジタルカメラに向けて平行背面照射するようにそれぞれ構成された1つ、2つ、3つまたはそれ以上の光源を含み;
デジタルビジョンシステムは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラのうちの1つのデジタルカメラに向けて、その光軸に沿って平行明視野照明するようにそれぞれ構成された1つ、2つ、3つまたはそれ以上の光源を含み;
デジタルビジョンシステムは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラのうちの1つのデジタルカメラの光軸に沿って明視野照明用の平行光源を反射するように構成された、少なくとも1つの半透明鏡またはビームスプリッタを含み;
デジタルビジョンシステムは、デジタルプロセッサおよび電子メモリを含み;
デジタルビジョンシステムは、電子的に収納されたプログラムを含み;
デジタルビジョンシステムは、画像解析するように構成され;
デジタルビジョンシステムは、物体認識するように構成され;
デジタルビジョンシステムは、臨床診断システムの基準座標系において物体の位置を決定するように構成され;
デジタルビジョンシステムは、臨床診断システムの基準座標系において物体の向きを決定するように構成され;
デジタルビジョンシステムは、物体の光学的輪郭を決定するように構成され;
デジタルビジョンシステムは、物体の光学的輪郭の寸法を決定するように構成され;
【0038】
デジタルビジョンシステムは、法線ベクトル
【数55】

【数56】
で、基準座標軸
【数57】
と実質的に平行に有する第1の平面において、物体の第1の光学的輪郭の寸法を決定するように構成され、ここで
【数58】
であり;
【0039】
デジタルビジョンシステムは、法線ベクトル
【数59】
を、
【数60】
で、基準座標軸
【数61】
と実質的に平行な第2の平面において、物体の第2の光学的輪郭の寸法を決定するように構成され、ここで
【数62】
であり;
【0040】
デジタルビジョンシステムは、法線ベクトル
【数63】

【数64】
で持つ、第1の平面において物体の第1の光学的輪郭の寸法と、法線ベクトル
【数65】

【数66】
で持つ、第2の平面において物体の第2の光学的輪郭の寸法とを決定するように構成され、ここで、
【数67】

【数68】
は、互いに実質的に垂直であり、ここで
【数69】
であり、また、基準座標軸
【数70】
に対して実質的に垂直であり、ここで
【数71】
および
【数72】
であり;
【0041】
デジタルビジョンシステムは、法線ベクトル
【数73】

【数74】
で持つ、基準座標軸
【数75】
と実質的に平行な平面において、物体の光学的輪郭の寸法を決定するように構成され、ここで
【数76】
であり;
【0042】
デジタルビジョンシステムは、法線ベクトル
【数77】

【数78】
で持つ、基準座標軸
【数79】
と実質的に平行な平面において、物体の光学的輪郭の寸法を決定するように構成され、ここで
【数80】
であり;および/または
【0043】
デジタルビジョンシステムは、法線ベクトル
【数81】

【数82】
で持つ、基準座標軸
【数83】
と実質的に平行な平面において、物体の光学的輪郭の寸法を決定するように構成され、ここで
【数84】
である。
【0044】
本発明はさらに、臨床試料を自動で生化学的に分析するための柔軟かつ効率的な方法を目的とする。特に、この方法は、標準的な作業プロセスから逸脱する分析に対応し、かつ手動または自動で搬送される試料に対応するものである。
【0045】
この目的は、自動化生化学分析のための、以下の工程を含む方法によって達成される:
(a)1つまたはそれ以上の分析器と、1つまたはそれ以上のキャリアを備えたトラックとを含む臨床診断システムを提供する工程であって、トラックとキャリアは、水平面でキャリア動作を行うように構成され、少なくとも1つの分析器は、トラックおよび1つまたはそれ以上のキャリアの上方に配置される、工程と;
(b)臨床試料が入っている1つまたはそれ以上の容器を、少なくとも1つのキャリア上に配置する工程と;
(c)少なくとも1つの容器の位置および向きを、臨床診断システムに対して位置合わせする工程と;
(d)キャリアを、少なくとも1つの容器が分析器の下に配置される位置まで移動させる工程と;
(e)臨床試料を分析器まで移送する工程と;
(f)臨床試料の生化学分析を実施する工程。
【0046】
本発明の方法の適切な実施形態は、以下の点を特徴とする:
1つまたはそれ以上の試料容器がラックに保持され、このラックはキャリア上に配置され;
工程(c)で、キャリアおよび容器の1つ、2つまたはそれ以上のデジタル画像が、デジタルビジョンシステムを使用して取り込まれ、処理され;
工程(c)で、キャリア、ラック、および容器の1つ、2つまたはそれ以上のデジタル画像が、デジタルビジョンシステムを使用して取り込まれ、処理され;
工程(c)で、キャリアおよび容器は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラを使用して撮像され、少なくとも1つのデジタルカメラにはテレセントリック対物レンズが装備され;
工程(c)で、キャリア、ラックおよび容器は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のデジタルカメラを使用して撮像され、少なくとも1つのデジタルカメラにはテレセントリック対物レンズが装備され;
工程(c)で、キャリアおよび容器の相対寸法または絶対寸法が決定され;
工程(c)で、キャリア、ラック、および容器の相対寸法または絶対寸法が決定され;
工程(c)で、中心から外れた位置でキャリアによって支持されたラックが、キャリアに対して位置合わせされ;
工程(c)で、中心から外れた位置でキャリアによって支持されたラックがキャリアに対して、機械的アライナおよびデジタルビジョンシステムを使用して位置合わせされ;
工程(c)で、ラックを支持するキャリアが水平面を移動する間、ラックが機械的アライナによって所定の位置に保持され;
工程(c)で、ラックを支持するキャリアが垂直軸のまわりを回転する間、ラックが機械的アライナによって所定の位置に保持され;
工程(d)、(e)、(f)で、少なくとも1つの容器の位置がリアルタイムで監視され;
少なくとも1つのキャリアが磁気浮上し、トラックの上面上方の水平面を移動し;
工程(e)で、ピペットが垂直軸と実質的に平行な方向に沿って下ろされ、臨床試料に浸され、試料の一部分が吸引されて分析器まで移送され;
臨床診断システムは、試料分析のワークフローを最適化する電子式自動制御システムを含み;
生化学分析のワークフローは、臨床診断システムの一部を形成する電子式自動制御システムによって最適化され;
少なくとも1つの試料に優先順位が割り当てられ、前記優先順位が電子式自動制御システムに入力され、それによって処理され;
自動制御システムは、臨床診断システムのインストール済みベースの作動中に収集されたワークフローデータを用いてワークフロー最適化を行うように訓練された人工ニューラルネットワークを使用し;および/または
自動制御システムは、臨床診断システムのモンテカルロシミュレーションによって生成されたワークフローデータを用いてワークフロー最適化を行うように訓練された人工ニューラルネットワークを使用する。
【0047】
本発明の臨床分析器は、複数の構成要素、すなわち物理オブジェクトを含み、これらのオブジェクトは、その機能に基づいて、1つのオブジェクトクラスに割り当てることができる。オブジェクト指向プログラミングのパラダイムに従って、各物理オブジェクトは、電子自動システムまたは電子制御システムに収納されたデジタルデータオブジェクトとして表現される。オブジェクトクラスと、対応する物理オブジェクトおよびデータオブジェクトとのリストが表1に示されている。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に提示されたオブジェクト指向スキーマは、動作制御および位置合わせのための好ましいプログラミングおよびデータ管理技法を示している。しかし、本発明の診断システムでは、オブジェクト指向プログラミングパラダイムを具現化しない代替プログラミングおよびデータ管理技術を使用できることが強調される。
【0050】
本発明の診断システムでは、各オブジェクトクラスの1つまたはそれ以上の物理オブジェクトと、1つまたはそれ以上の対応するデータオブジェクトとを使用することができる。同じクラスの異なる物理オブジェクトは、接頭語の「第1の」、「第2の」、「第3の」などで、たとえば、第1のキャリア、第2のキャリア、第3のキャリアなどで示されている。
【0051】
各データオブジェクトは、数字および文字から構成される固有の識別子と、座標原点ベクトルと、3つの座標軸とを含む。座標原点ベクトルおよび3つの座標軸はそれぞれ、3次元ベクトル、すなわち3つの実数の配列で表される。3つの座標軸は線形独立であり、3つの直交ベクトル
【数85】
のセットを好ましくは形成し、ここでi=1、2、または3、および
【数86】
であり、クロネッカー記号δijは、i=jで1に等しく、i≠jで0に等しい。一般性を失うことなく、座標原点ベクトルは、3つのゼロの配列、すなわち、(0,0,0)によって好ましくは表される。
【0052】
各データオブジェクトはさらに、3次元並進ベクトル
【数87】
および直交回転行列
【数88】
を3行3列で、すなわち直交2次元3×3行列で含む。グローバル基準座標系に対する各物理オブジェクトの位置および向きは、オブジェクト座標系においてベクトル
【数89】
によって表される位置が、基準座標系におけるベクトル
【数90】
によって表される位置に対応するように、並進ベクトル
【数91】
および回転行列
【数92】
によって完全に特徴づけられる。
【0053】
好ましくは、一般性を失うことなく、基準原点ベクトルおよび3つの基準座標軸はそれぞれ、ベクトル
【数93】
および
【数94】
【数95】
【数96】
によって表される。
【0054】
キャリア、ラック、および容器クラスの物理オブジェクトは移動可能であり、その位置および/または向きは経時的に変化する可能性がある。したがって、移動可能なオブジェクトの並進運動行列および/または回転行列は、時間依存性であり得る。
【0055】
場合によっては、ラックをローダに導入したときなどに、基準座標系に対するそれぞれの物理オブジェクトの位置および向き、すなわちオブジェクトの並進運動ベクトル
【数97】
および回転行列
【数98】
は定義されない。このような場合、並進運動ベクトル
【数99】
および回転行列
【数100】
は、機械的アライナおよび/またはデジタルビジョンシステムによって決定される。本発明では、オブジェクトの並進運動ベクトル
【数101】
および回転行列
【数102】
を決定するプロセスは、「位置合わせ」と呼ばれる。
【0056】
一般に、トラック、ローダ、分析器、および供給ステーションクラスの物理オブジェクトは固定である。特に明示されていない限り、トラック、ローダ、分析器、またはサプライステーションクラスのオブジェクトの並進運動ベクトル
【数103】
および回転行列
【数104】
は知られており、固定されている。一般性を失うことなく、ほとんどの物理オブジェクトについて、特にトラック、ローダ、分析器、およびサプライステーションクラスの固定オブジェクトについて、回転行列
【数105】
は、単位行列、すなわち
【数106】
に対応する。
【0057】
キャリア、ラック、および容器クラスの動的オブジェクトは、グローバル基準座標系に対して回転および/または傾斜する。たとえば、動的オブジェクトの3つの座標軸
【数107】
のそれぞれが記述され、それぞれ、3つの基準座標軸
【数108】
【数109】
【数110】
のうちの1つが回転軸
【数111】
のまわりを角度ωだけ回転することによって得られる。対応する回転行列
【数112】
の係数は、次式
【数113】
で記述され、
ここで、
【数114】
は回転軸単位ベクトルであり、
【数115】
であり、δijおよびεikjはそれぞれ、クロネッカー記号およびリビ-シビタ記号を示す(https://en.wikipedia.org/wiki/Rotation_matrix;https://en.wikipedia.org/wiki/Kronecker_delta;https://en.wikipedia.org/wiki/Levi-Civita_symbol)。
【0058】
しかし、ほとんどの実際的な場合では、動的オブジェクトの回転軸
【数116】
は、基準座標軸
【数117】
と実質的に平行であり、ここで
【数118】
および
【数119】
である。
【0059】
ローダ、分析器、および供給ステーションクラスの各物理オブジェクトは、ロボットハンドラまたはロボットピペッタなどの1つまたはそれ以上の駆動されるサブ構成要素を含むことができる。一般に、駆動されるサブ構成要素の位置および向き、たとえば、駆動軸および2つのロボットグリッパフィンガ間の中間点、またはピペットシリンダ軸およびピペット先端位置は、1つまたはそれ以上の従来のエンコーダを使用して継続的に監視される。産業オートメーションの当業者であれば、リニアエンコーダおよびロータリエンコーダに精通しており、これらを日常的に使用している。通常、このようなエンコーダは、容量性センサ、誘導性センサ、磁気センサ、または光電センサを含み、その出力は、ロボット制御システムに電気的に接続されている。
【0060】
したがって、ロボットハンドラまたはロボットピペッタなどのサブ構成要素の、分析器などのその親オブジェクトの座標系における位置および方向は、任意の所与の時間において知られており、親オブジェクトの並進運動ベクトル
【数120】
および回転行列
【数121】
を用いてグローバル基準座標にリアルタイムで変換される。
【0061】
上述の詳述された概念(そのいくつかは産業オートメーションの技術分野に固有のものである)により、本発明の臨床診断システムの各構成要素の位置および向きをリアルタイムで追跡することが可能になる。
【0062】
本開示では、以下に説明する特定の意味を有する用語を用いる:
「水平または垂直平面内の選択された連続位置における動作および位置決め」とは、1つまたはそれ以上の動的構成要素を含む、かつ、任意に選択可能な平面経路に沿った構成要素の動きを示唆する前記平面内の矩形などの、連続領域内の任意の選択ポイントまで前記構成要素を移動させるように構成されている、電子アクチュエータシステムに関連し;
「リアルタイム」とは、数マイクロ秒から数ミリ秒までに開始および/または完了される自動動作に関連し;
「実質的に垂直」とは、90度から≦5度だけずれた角度を囲む2つの方向または軸を指し;
「実質的に平行」とは、≦5°の角度を囲む2つの方向または軸を指し;
「トラックおよびキャリアの上方に配置された」とは、分析器、ローダおよび/または供給ステーションに関連し、これらの水平断面の、トラックの上面への垂直投影が、その水平断面全体の≧30%、≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧80%または≧90%になり;
【数122】
または
【数123】
は、2つのベクトルのスカラー積、すなわち2つの3次元ベクトルが
【数124】
および
【数125】
である場合に、
【数126】
になる成分積の合計を示す。
【0063】
本発明の臨床診断システムの好ましい実施形態では、デジタルビジョンシステムは、ラックおよび容器などの対象物を適切に寸法表示するためのテレセントリック対物レンズを装備している1つ、2つ、または3つのデジタルカメラを含む。テレセントリック対物レンズは対象物を、その空間内の位置に関係なく同じサイズに見えるようにする。テレセントリック対物レンズは、近くの物体がカメラから遠い物体よりも大きく見えようになる遠近感または視差を取り除いて、従来の対物レンズに比べて測定精度を向上させる。当業者であれば、計測、測定、CCDによる測定、マイクロリソグラフィを含む様々な用途で、テレセントリック対物レンズを日常的に使用している。多くの場合で、テレセントリック撮像により、コンピュータベースの画像解析が非常に容易になる。
【0064】
本発明の臨床診断システムの別の適切な実施形態では、デジタルビジョンシステムは、カメラ対物レンズとイメージセンサの間に配置されたマイクロレンズアレイをそれぞれ装備する1つ、2つ、または3つのデジタルライトフィールドカメラを含む。たとえば、Raytrix(登録商標)GmbHから提供されるようなデジタルライトフィールドカメラにより、3次元計測が可能になる。
【0065】
本発明の臨床診断システムは、小設置面積、柔軟性、精度、速度、少ない機械構成要素、保守および粒子発生の低減など、様々な利点をもたらす。
【0066】
厳密なリアルタイム動作制御を用いた水平面内での連続試料輸送と、輸送面上方への分析器配置とにより、柔軟性の向上および高いスループットをもたらしながら、システムの複雑さを大幅に低減することができる。
【0067】
本発明を以下で、図1~4を参照してさらに例示する。
【0068】
図1は、1つまたはそれ以上の生化学分析器2、平面トラック4、および1つまたはそれ以上の試料キャリア5を含む臨床診断システム1の概略側面図を示す。トラック4およびキャリア5は、好ましくは磁気動作システムとして構成され、キャリア5は磁気浮上して、それぞれトラック4の上面上方の水平面40で浮遊する。キャリア5は、試料ラック6の輸送乗物として機能する。ラック6のうちの1つまたはそれ以上は、キャリア5から独立している、すなわち、キャリア5に取り付けられていない別個のユニットである。一代替実施形態では、ラック6のうちの1つまたはそれ以上がキャリア5に固定されている。
【0069】
垂直座標軸が
【数127】
である基準座標系が、臨床診断分析器1に割り当てられている。
【0070】
分析器2は、トラック4およびキャリア5の上方に配置されている。トラック4の上面と分析器2の下部固定部分との間の最小隙間は、≧5cm、≧10cm、≧15cm、≧20cm、≧25cm、または≧30cmである。少なくとも1つの分析器2は、試料容器7または試薬ベッセル8との間で試料流体および生化学試薬流体を吸引および供給するために、ピペットの直線垂直動作が得られるように構成された1つまたはそれ以上のロボットピペッタ3を含む。適切な一実施形態では、ロボットピペッタ3はさらに、偶然に傾斜した容器7の円筒中心軸にピペットの軌道、特にピペット先端の軌道を適合させるために、動的にピペット傾斜を行うように構成される。分析器2はさらに、分光測定および/または生化学的アッセイのための1つまたはそれ以上の計器を収容する。
【0071】
臨床診断システム1はさらに、1つまたはそれ以上のローダ9および/または1つまたはそれ以上の供給ステーション10を含む。ローダ9は、キャリア5から試料ラック6をピックアンドプレース移送するように構成されたロボットハンドラを含む。加えて、または別法として、ローダ9のロボットハンドラは個々の容器7を、キャリア5上に配置されたラック6の中へとピックアンドプレース搬送するように構成される。把持アクチュエータとは別に、ローダ9のロボットハンドラは、1つの垂直直線動作ステージと、1つまたは2つの水平方向の動作のための1つまたは2つのリニアステージとを装備している。さらに別の実施形態では、ローダ9のロボットハンドラは、回転ステージを含むことができる。
【0072】
臨床診断システム1はまた、少なくとも1つの分析器2によって消費される生化学試薬を補充するように構成された1つまたはそれ以上の供給ステーション10を含むこともできる。この目的のために、供給ステーション10は、生化学試薬流体を試薬ベッセル8に移送するためのロボットピペッタ、および/または試薬ベッセル8のロボットハンドラを装備している。供給ステーション10のロボットピペッタおよび/またはロボットハンドラは、(後者の場合では)ロボットグリッパとは別に垂直動作が得られるように構成された少なくとも1つのリニアステージを含む。
【0073】
分析器2と同様に、任意選択のローダ9および任意選択の供給ステーション10は、好ましくは、これらの水平断面の、トラック4の上面への垂直投影が、その水平断面全体の≧30%、≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧80%または≧90%になるようにトラック4およびキャリア5の上に配置される。分析器2、任意選択のローダ9、および任意選択の供給ステーション10をトラック4およびキャリア5の上方に垂直に配置すると、臨床診断システム1の設置面積が大幅に減少し、費用のかかる実験室スペースが節約される。
【0074】
図2は、臨床診断システム1の斜視図を示し、適切な一動作モードを例示している。臨床診断システム1は、矩形、四角形、正三角形、または正六角形の継ぎ目なしタイル状の上面を持つ、複数のトラックモジュール4Aで構成されたトラックを含む。トラックモジュール4Aの上面は、図2に示されたような単独接合領域(すなわち、開口部なし)を形成することができる。あるいは、トラックモジュール4Aの上面は、二重または三重の接合領域(すなわち、それぞれに1つまたは2つの開口部またはループがある)を形成することができる。生化学分析器2の外形は、破線で示されている。分析器2は、トラックモジュール4Aおよびキャリア5の上方に配置され、1つまたはそれ以上のロボットピペッタ(図2に図示せず)と、分光測光および/または生化学アッセイ用の1つまたはそれ以上の計器(図2に図示せず)とを含む。参照符号3Aはピペットを示しており、これは、分析器2のロボットピペッタの一部を形成し、分析器2の下に位置するキャリア5上に配置されたラック6に保持されている容器7に挿入される。
【0075】
図2の手前に示されているトラックモジュール4Aの第1の列は、アイドル状態のキャリア5が並んでいるロード領域として機能する。新たに入手された患者試料が入っている容器7を保持するラック6は、操作員によって手作業で、または臨床診断システム1の一部を形成するロボットローダによって、さもなければ外部の試料取扱者によって、ロード領域内のアイドルキャリア5上に配置される。
【0076】
キュー順序または計算された優先順位に応じて、未処理試料を保持するロード領域のキャリア5は、図2の右側前景に示された位置合わせ領域に移動する。前記位置合わせ領域に配置されたデジタルカメラ21および22は、デジタルビジョンシステムの一部を形成する。デジタルビジョンシステムは、キャリア5に対するラック6、およびそこに保持された容器7の位置を決定するように構成される。デジタルカメラ21および22は、キャリア5、ラック6、および容器7の平面視像(すなわち、上面視像)および側面視像をそれぞれ取り込むように構成される。好ましくは、デジタルカメラ21および22はそれぞれ、寸法および相対位置を正確に決定できるようにするために、テレセントリック対物レンズを装備している。適切な一実施形態では、デジタルビジョンシステムはさらに、側面視カメラ22で取り込まれるデジタル画像の品質を向上させるために、平行光源25を含む。光源25から放射された光ビームは、小型で障害物の少ない構成になるように、鏡26を使用して方向が変えられる。
【0077】
有利には、一連の側面視画像が、キャリア5、ラック6、および容器7の選択された回転位置でデジタルカメラ22によって取り込まれる。この目的のために、キャリア5は、垂直軸のまわりで選択された角度増分だけ回転される。それによって取り込まれたデジタル画像により、3次元画像合成と、最終的な光学的オクルージョンの修正とが可能になる。したがって、容器7のそれぞれの寸法、特に高さを決定することができる。
【0078】
デジタルカメラ21によって取り込まれた平面視画像は、ラック6および容器7をキャリア5に対して位置合わせし、それによってグローバル基準座標系と位置合わせするために使用される。
【0079】
分析が完了した処理済み試料が入っている容器7を保持するラック6と一緒にキャリア5は、図2の左側に示されるように、ロード領域列に対して直角に整列した一列のトラックモジュール4Aによって形成されたアンロード領域に並んでいる。アンロード領域に位置するキャリア5からラック6が取り除かれた後、キャリア5はロード領域へ送られ、それによって、プロセスサイクルが終わる。有利には、トラックとキャリアは、キャリアの重量を測定してキャリアが空であるか、またはラックなどのペイロードを搭載しているかを評価するように構成される。したがって、ロードキュー内のスペースの可用性に応じて、空のキャリアがアンロード領域からロード領域へと自動的に送られる。
【0080】
平面視カメラ21および側面視カメラ22をそれぞれ使用する、上述の画像による位置合わせおよび計測は、厳密なキャリア動作制御と、トラック上方の分析器の位置決めおよび配置とに連動して、ロボットピペッタおよびロボットハンドラが複数の直線軸または回転軸を持つ要件をなくすことができる。たとえば、図2に示される分析器2のロボットピペッタは、垂直に位置合わせされた1つの直線動作ステージを必要とするだけである。したがって、システムの複雑さおよび保守の強度が大幅に低減される。
【0081】
寸法較正(たとえば、メートル、ミリメートル、マイクロメートル、またはインチ単位)は、トラックモジュール4A、キャリア5、またはラック6のいずれかの既知の寸法に基づいて影響を受ける。そうでない場合、独立した寸法較正のために、標準定規が水平に配列され、またはラック6の横にキャリア5の上で垂直に並べられ、平面視カメラ21または側面視カメラ22をそれぞれ使用して一緒に撮像される。
【0082】
図3Aおよび図3Bは、通常(透視)対物レンズおよびテレセントリック対物レンズをそれぞれ装備したデジタルカメラによって取り込まれた画像を示す。図3Aおよび図3Bは、トラックモジュール4Aの上に位置する(浮遊させた)キャリア5と、その上に配置された、試料容器7付きラック6との対応する平面図を示す。ラック6の中心は、キャリア5の中心に対して水平方向にシフトされている。キャリア5に対して中心から外れたラック6の配置は、手作業またはロボットによる搬送エラーによって引き起こされ、後者のエラーは、電子ドリフトまたは機械的摩耗に起因することがある。
【0083】
ほとんどの場合で、図3Aおよび図3Bに示されたような回転位置合わせ不良または水平シフトは許容でき、臨床診断システムのデジタルビジョンシステムを用いる適切な位置合わせによって補償される。デジタルビジョンシステムは、キャリア5に対するラック6および容器7の位置を推測して、ラック6および容器7の座標(すなわち、位置)をグローバル基準座標に変換し、それによって、リアルタイムの動作追跡および正確な位置決めが可能になるように構成される。図3Aおよび図3Bから容易に明らかなように、テレセントリック撮像は、デジタル画像による位置合わせ、および(必要な限り)寸法較正によりよく適している。
【0084】
まれな事例では、キャリア上でのラックの重大な誤配置が不安定状態および傾斜を引き起こし、最終的に容器つり下がり、他の物体との衝突、または破損に至ることがある。図4A図4Dは、重大なラックの誤配置が、デジタルビジョンシステムを用いる機械的位置合わせによって、制御されたキャリア動作および機械的アライナによる保持と連動して、どのように修正されるかを示している。図4Aは、図3Aと同じであり、容器7がキャリア5に対して誤配置されているラック6を示しており、キャリアは、トラックモジュール4Aの上面上方に磁気浮遊している。画像による誤配置検出キャリア5、ならびにその上に配置されたラック6および容器7は、垂直軸のまわりで、図4Bに示された向きに180度回転する。次に、キャリア5は、図4Cに示されるように、ラック6の垂直端部がアライナ30の形の合っている矩形凹部に適切に嵌合するように、直線経路または階段状経路に沿って移動する。次に、キャリア5は、図4Dに示されているように、アライナ30によって保持されたラック6の下で、ラック6がキャリア5に対して中心に置かれる位置まで摺動する。その後、ラック6およびそれに保持された容器7はさらに、図2に関連して上述した方法に従って処理される。
【符号の説明】
【0085】
1 臨床診断システム
2 分析器
3 ロボットピペッタ
3A ピペット
4 トラック
4A トラックモジュール
5 キャリア
6 ラック
7 容器
8 試薬容器
9 ローダ
10 供給ステーション
21 デジタルカメラ
22 デジタルカメラ
25 光源(好ましくは平行)
26 鏡
27 光ビーム中心軸
30 機械的アライナ
40 水平面
【数128】
垂直基準座標軸
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D