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特許7441970高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイル及びその製造方法
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  • 特許-高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイル及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/86 20060101AFI20240222BHJP
   C04B 33/22 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
C04B41/86 D
C04B41/86 R
C04B33/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022564844
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2020138894
(87)【国際公開番号】W WO2021258691
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】202010587634.7
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515266393
【氏名又は名称】蒙娜麗莎集団股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 一軍
(72)【発明者】
【氏名】▲でん▼ 来福
(72)【発明者】
【氏名】楊 元東
(72)【発明者】
【氏名】王 賢超
(72)【発明者】
【氏名】張 克林
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107586096(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107176790(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103467103(CN,A)
【文献】特開平06-191920(JP,A)
【文献】特開平01-133960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/86
C04B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルの製造方法であって、
素地粉状材料をプレスして成形した後に乾燥させて生地タイルを成形するステップ(1)と、
生地タイルの表面に下釉を施すステップ(2)と、
下釉を施した後の生地タイルの表面にパターンをインクジェット印刷し、隔離釉薬を施すステップ(3)と、
隔離釉薬を施した後の生地タイルの表面に完全研磨釉薬を施すステップ(4)と、
完全研磨釉薬を施した後の生地タイルを乾燥させ、焼成、研磨して高硬度と高耐摩耗性である完全研磨釉薬セラミックタイルを得るステップ(5)と、を含み、
ここで、前記隔離釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:10.0~12.0%、MgO:1.0~2.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:1.5~2.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、強熱減量:4.0~6.0%を含み、
前記隔離釉薬の溶融温度は1150~1170℃であり、
前記隔離釉薬の塗布方法はスクリーン印刷であり、
前記隔離釉薬の比重は1.25~1.35g/cmであり、
前記隔離釉薬の塗布量は20~30g/mであり、
前記完全研磨釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:8.5~10.5%、MgO:4.0~6.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:0.5~1.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、ZrO:0.5~2.0%、強熱減量:4.0~6.0%を含み、
前記隔離釉薬の溶融温度は、前記完全研磨釉薬の溶融温度より10~20℃低く、
前記完全研磨釉薬の塗布方法はスクリーン印刷であり、
前記完全研磨釉薬の比重は1.50~1.70g/cmであり、
前記完全研磨釉薬の施釉量は90~140g/mであり、
前記焼成後の完全研磨釉薬の相組成は、質量パーセントで、コランダム10~20%、重土長石20~30%、ヘマタイト0.5~1.0%、およびアモルファス相50~68%であることを特徴とする高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルの製造方法。
【請求項2】
前記下釉の化学組成は、質量パーセントで、SiO:55~60%、Al:21~24%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.15~0.25%、CaO:0.1~0.3%、MgO:0.1~0.3%、KO:4.0~5.0%、NaO:2.0~3.0%、ZrO:6.0~10.0%、強熱減量:3.0~4.0%を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記下釉の塗布方法はスプレー釉薬であり、前記下釉の比重は1.40~1.45g/cm、施釉量は400~550g/mであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
最高焼成温度は1210℃~1230℃、焼成サイクルは60分~70分であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記最高焼成温度1210℃~1230℃での温度保持時間は、12分~20分であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)において、乾燥時間は1~1.5hであり、乾燥後の生地タイルの水分は0.3~0.5wt%であり、ステップ(5)において、乾燥温度は100~150℃であり、乾燥後の生地タイルの水分は0.9wt%以内に制御されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックタイルの生産および製造の技術分野に属する、高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
完全研磨釉薬シリーズの製品は、その豊かな設計模様とシンプルで簡単な操作であるプロセスのため消費者に好まれており、従来の研磨タイル市場に大きな割合で取って代わっている。しかし、耐用年数の延長に伴い、完全研磨釉薬シリーズ製品の表面のひっかき傷や摩耗は、研磨タイルよりも明らかであり、一部の公共の場所でさえ、過度の釉薬表面の摩耗とデカールの欠落のため改装しなければならない現象がある。現在、市場に出回っている完全研磨釉薬セラミックタイルでは、完全研磨釉薬の処方は、基本的に低アルミニウムと高カリウムナトリウムのシステムを採用し、この処方システムの研磨釉薬は、焼成後に釉薬層に形成されるアモルファス相の含有量が高く、硬度の高い結晶性物質が少なく、さらに、高カリウムナトリウム処方システムの研磨釉薬におけるNa-OとK-Oの結合強度は、Ca-OとMg-Oの結合強度よりもはるかに低いため、釉薬表面の硬度と耐摩耗性を向上させるために、アルカリ金属含有量を減らし、部分的にアルカリ土類金属に置き換えられる必要がある。上記の研磨釉薬の施釉方法は、現在、一般的にウォーターフォール釉薬を使用しており、ウォーターフォール釉薬の施釉量が多く、ある程度釉薬のコストが高くなり、研磨深さが増すと、その硬度や耐摩耗性もある程度低下する。耐摩耗性を考慮しているため、市場工学的応用で完全研磨釉薬シリーズ製品の割合が減少する。したがって、完全研磨釉薬の耐摩耗性を改善し、完全研磨釉薬の市場工学的応用の割合を拡大することが急務である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第107586096号明細書
【文献】中国特許出願公開第107176790号明細書
【文献】中国実用新案第207483619号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題を考慮して、本発明は、高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルおよびその製造方法を提供し、完全研磨釉薬の処方と施釉方法等を調整することにより、完全研磨釉薬の耐摩耗性が大幅に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、高硬度、高耐摩耗性、完全研磨釉薬セラミックタイルの製造方法を提供し、
素地粉状材料をプレスして成形した後に乾燥させて生地タイルを成形するステップ(1)と、
生地タイルの表面に下釉を施すステップ(2)と、
下釉を施した後の生地タイルの表面に模様をインクジェット印刷し、隔離釉薬を施すステップ(3)と、
隔離釉薬を施した後の生地タイルの表面に完全研磨釉薬を施すステップ(4)と、
完全研磨釉薬を施した後の生地タイルを乾燥させ、焼成、研磨して高硬度と高耐摩耗性である完全研磨釉薬セラミックタイルを得るステップ(5)と、を含む。
【0006】
ここで、前記焼成後の完全研磨釉薬の相組成は、質量パーセントで、コランダム10~20%、重土長石20~30%、ヘマタイト0.5~1.0%、およびアモルファス相50~68%である。
【0007】
好ましくは、前記完全研磨釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:8.5~10.5%、MgO:4.0~6.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:0.5~1.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、ZrO:0.5~2.0%、強熱減量:4.0~6.0%を含む。
【0008】
好ましくは、前記完全研磨釉薬の塗布方法はスクリーン印刷である。好ましくは、前記完全研磨釉薬の比重は1.50~1.70g/cm、施釉量は90~140g/mである。
【0009】
好ましくは、前記隔離釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:10.0~12.0%、 MgO:1.0~2.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:1.5~2.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、強熱減量:4.0~6.0%を含む。
【0010】
好ましくは、前記隔離釉薬の塗布方法はスクリーン印刷である。好ましくは、前記隔離釉薬の比重は1.25~1.35g/cmである。より好ましくは、前記スクリーン印刷では、120メッシュ~180メッシュのスクリーンプレートを使用する。
【0011】
好ましくは、前記下釉の化学組成は、質量パーセントで、SiO:55~60%、Al:21~24%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.15~0.25%、CaO:0.1~0.3%、MgO:0.1~0.3%、KO:4.0~5.0%、NaO:2.0~3.0%、ZrO:6.0~10.0%、強熱減量:3.0~4.0%を含む。
【0012】
好ましくは、前記下釉の塗布方法はスプレー釉薬である。好ましくは、前記下釉の比重は1.40~1.45g/cm、施釉量は400~550g/mである。
【0013】
好ましくは、最高焼成温度は1210℃~1230℃、焼成サイクルは60分~70分である。
【0014】
好ましくは、ステップ(1)において、乾燥時間は1~1.5hであり、乾燥後の生地タイルの水分は0.3~0.5wt%であり、ステップ(5)において、乾燥温度は100~150℃であり、乾燥後の生地タイルの水分は0.9wt%以内に制御される。
【0015】
第2の態様では、本発明はまた、上記のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる、高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、完全研磨釉薬の処方と施釉方法等を調整することにより、完全研磨釉薬の耐摩耗性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による、高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルの製造フローチャートである。
図2】本発明の実施例1による、高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルのタイル表面効果図である。
図3】本発明の実施例1による、高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルを研磨した後のタイル表面のXRD図である。
図4図4のAおよびBは、本発明の実施例1による、高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルを研磨した後の、電子顕微鏡下での異なる拡大倍率の釉薬表面結晶形態図である。
図5図5のAおよびBは、本発明の実施例1による、高硬度および高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルを研磨した後の、光学顕微鏡下での異なる拡大倍率の釉薬表面結晶形態図である。研磨後も釉薬表面には結晶が多く残っており、これらの結晶が高硬度で耐摩耗性に優れた釉薬表面を提供していることがわかる。
図6】比較例1の完全研磨釉薬セラミックタイルの電子顕微鏡下での結晶形態図である。該完全研磨釉薬処方で生成された結晶は比較的無秩序であり、結晶の総量が比較的少ないため、釉薬表面の硬度と耐摩耗性が低いことがわかる。
図7】比較例2の完全研磨釉薬セラミックタイルの手作りの拡大鏡(100倍の拡大倍率)の下での細孔効果図である。ウォーターフォール研磨釉薬の施釉量が多く、釉薬層の厚みが増し、釉薬表面の透明性が低下し、釉薬層の排気が困難になり、研磨後の細孔が多くなることがわかる。
図8図8のAは、本発明の実施例1で使用された完全研磨釉薬の電子顕微鏡エネルギースペクトル分析図である。図8のBは、一部の領域(Aの対応する位置)でポイントを取得した後の後方散乱電子画像と成分分析のテスト結果表である。
図9】本発明の実施例1で使用される完全研磨釉薬のO、Mg、Al、Si、K、Ca、Ba、Zn元素の後方散乱電子画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の最適な実施形態
本発明は、以下の実施形態によってさらに説明され、以下の実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことを理解されたい。特に指定のない限り、各パーセンテージは質量パーセンテージを指す。
【0019】
以下は、図1による本発明による高硬度、高耐摩耗性の完全研磨釉薬セラミックタイルの製造方法を例示的に説明する。
【0020】
素地粉状材料を利用して成形して生地タイルを得る。プレスで乾式プレスして生地タイルを形成することができる。前記素地粉状材料の組成は限定されず、当技術分野における従来のセラミックタイル素地粉状材料を使用することができる。例えば、前記素地粉状材料の化学組成は、質量パーセントで、SiO:60.0~70.0%、Al:19.0~25.0%、Fe:0.5~1.5%、TiO:0.2~0.5%、CaO:0.2~0.8%、MgO:0.3~0.8%、KO:2.0~4.0%、NaO:1.50~3.5%、強熱減量:4.0~6.0%を含む。
【0021】
生地タイルを乾燥させる。乾燥した後の生地タイルの水分を0.3~0.5wt%に制御する。上記の乾燥時間は1~1.5hであることができる。
【0022】
乾燥した後の生地タイル表面に下釉を施す。下釉は主に素地のベースカラーと傷を覆い、研磨釉薬の排気に役立ち、研磨後の細孔を減らす。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記下釉の化学組成は、質量パーセントで、SiO:55~60%、Al:21~24%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.15~0.25%、CaO:0.1~0.3%、MgO:0.1~0.3%、KO:4.0~5.0%、NaO:2.0~3.0%、ZrO:6.0~10.0%、強熱減量:3.0~4.0%を含むことができる。
【0024】
前記下釉の塗布方法はスプレー釉薬であることができる。例えば、前記下釉の比重は1.40~1.45g/cm、施釉量は400~550g/mであることができる。
【0025】
下釉を施した後の生地タイルの表面に模様をインクジェット印刷する。模様をインクジェット印刷する色及び模様はレイアウト効果により異なる。
【0026】
インクジェット印刷した後の生地タイルの表面に隔離釉薬を施す。隔離釉薬の役割は、発色を助け、研磨後の製品の黄色いエッジを減らすことである。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記隔離釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:10.0~12.0%、 MgO:1.0~2.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:1.5~2.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、強熱減量:4.0~6.0%を含む。
【0028】
前記隔離釉薬の塗布方法はスクリーン印刷であることができる。スクリーン印刷は、施釉量をより適切に制御し、施釉の均一性を確保できる。前記隔離釉薬の比重は1.25~1.35g/cmであることができる。隔離釉薬の塗布量は20~30g/mであることができる。隔離釉薬の施釉量が多すぎると、完全研磨釉薬の耐摩耗性がある程度低下する。これは主に、隔離釉薬が比較的低温でナトリウム含有量が比較的多いためである。Na-Oの結合強度はMg-Oよりもはるかに低いため、隔離釉薬の施釉量が多すぎると、完全研磨釉薬と反応して過度のアモルファス相を形成して耐摩耗性を低下させる。本発明は、異なるメッシュ数のスクリーン印刷を採用し、隔離釉薬の比重を調整することにより、隔離釉薬の施釉量を制御するという目的を達成する。いくつかの実施形態では、前記スクリーン印刷は、120~180メッシュのスクリーンを使用することができる。
【0029】
上記の隔離釉薬の溶融温度は1150~1170℃であり、釉薬表面の高い硬度と耐摩耗性を確保することができ、同時に、釉薬表面の細孔はより優れ、研磨すると黄色のエッジがある現象を回避する。好ましくは、前記隔離釉薬の溶融温度は、完全研磨釉薬より10~20℃低く、釉薬表面の発色を改善し、研磨後の細孔を減らすと同時に、完全研磨釉薬の釉薬ピットの欠陥を避けることができる。
【0030】
隔離釉薬を施した後の生地タイルの表面に完全研磨釉薬を施す。いくつかの実施形態では、完全研磨釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:8.5~10.5%、MgO:4.0~6.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:0.5~1.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、ZrO:0.5~2.0%、強熱減量:4.0~6.0%を含む。
【0031】
エネルギースペクトル分析とXRD分析を組み合わせた電子顕微鏡検査(図3図4図8図9)により、黒い点はコランダムであり、柱状および針状の結晶は重土長石であることがわかる。さらに、XRDの定量分析により、該焼成後の完全研磨釉薬の相組成は、質量パーセント、コランダム10~20%、重土長石20~30%、ヘマタイト0.5~1%、アモルファスフェーズ50~68%である。
【0032】
上記の完全研磨釉薬の原料組成は、質量パーセントで、コランダム9.0~15.0%、石英8.0~13.0%、ウォラストナイト15.0~20.0%、焼成タルク5.0~10.0%、カリウム長石8~13が%、曹長石1.0~5.0%、酸化亜鉛4~8%、カオリン8.0~13.0%、炭酸バリウム8.0~13.0%、ジルコニア0.5~2.0%、コーディエライト10.0~15.0%を含むことができる。
【0033】
該完全研磨釉薬処方中のコランダムとコーディエライトの含有量は比較的高く、同時に処方中の炭酸バリウムが増加するため、該完全研磨釉薬は焼成プロセス中により多くの重土長石結晶を形成することができ、同時に、アルカリ土類金属のカルシウムとマグネシウムが、処方中のカリウムとナトリウムの含有量の一部を置き換えるために使用され(これは主に、K-OとNa-Oの結合強度がCa-OとMg-Oの結合強度よりもはるかに低いためである)、釉薬表面の硬度と耐摩耗性を効果的に改善することができる。また、少量のジルコニア(核剤)を導入して重土長石結晶の析出を促進し、高硬度、高耐摩耗性という目的を達成する。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記完全研磨釉薬の製造方法は、上記の原料を処方量で秤量し、次に原料を粉砕し、200~250メッシュの標準ふるいを通過させて粒状原料を得て、粒状の原料と水をボールミリングして釉薬スラリーを得て、粒状原料と水の質量比は100:50にすることができ、細かさが325メッシュを超える場合、標準のふるい残留物は0.6~1.0wt%であるまでボールミルし、上記の完全研磨釉薬の流速は80~90秒にすることができ、釉薬スラリーを乾燥させ、粉末化し、ふるいにかけて、完全研磨釉薬粉末を得ることを含むことができる。
【0035】
完全研磨釉薬の塗布方法はスクリーン印刷であることができる。ウォーターフォール研磨釉薬の方法は、主に、ウォーターフォール研磨釉薬の施釉量が多く、釉薬層の厚さが増加し、釉薬表面の透明性が低下し、釉薬層に排気が低下するため、研磨後の細孔が増加する傾向があるため、本発明には適していない。完全研磨釉薬を塗布することによって形成される完全研磨釉薬層の厚さは、0.15~0.30mmにすることができる。スクリーン印刷のメッシュ数は80~120メッシュにすることができる。例えば、完全研磨釉薬の塗布プロセスパラメータは、3回厚くする100メッシュのスクリーンで1回印刷することである。
【0036】
完全研磨釉薬の比重は1.50~1.70g/cmであることができる。完全研磨釉薬の施釉量は90~140g/mであることができ、釉薬表面の硬度と耐摩耗性を確保すると同時に、透明性と発色も良好である。
【0037】
調整前の完全研磨釉薬は、ウォーターフォール釉薬の施釉方法を採用し、この施釉方法は、より厚い完全研磨釉薬量、素地釉薬の中間層が比較的薄く、それに対応する釉薬表面の硬度および耐摩耗性も低下することをもたらす。これは主に、完全研磨釉薬の釉薬層の結晶化度が、釉薬表面の中層と上層、および下釉と接続する場所で発生し、施釉量が多すぎると、釉薬層の厚さが増加すると、釉薬表面の透明性が低下し、釉薬層が排気されにくくなり、研磨後の細孔が増加する傾向があるためである。したがって、それに応じて、より良い透明性と鏡面効果を得るためには、より高い研磨深さが必要であり、研磨深さが増すと、中層と上層の耐摩耗性結晶が捨てられ、より多くのアモルファス相が露出し、釉薬表面の硬度と耐摩耗性が低下する。
【0038】
完全研磨釉薬の施釉方法を調整した後、スクリーン印刷を使用して、施釉量と均一性をより適切に制御でき、同時に、施釉量が少ないほど、釉薬層が薄くなり、素地釉薬の中間層が比較的厚くなり、釉薬表面の硬度と耐摩耗性が向上する。また、釉薬層が薄いため、ガスの排出が促進され、研磨後の細孔が減少するため、釉薬表面の硬度と耐摩耗性が向上する。
【0039】
完全研磨釉薬を施した後の生地タイルを乾燥させる。乾燥温度は100~150℃であることができ、乾燥後の水分を0.9wt%以内に制御する。乾燥した後の素地を焼成する。最高焼成温度は1210℃~1230℃、焼成サイクルは60~70分であることができる。コランダムのモース硬度は9であり、重晶石長石のモース硬度は6~6.5であるため、釉薬表面に高硬度の結晶が含まれている場合、その釉薬表面もそれに応じてより高いモース硬度と耐摩耗性を示す。理論的には、硬度の高い結晶の含有量が多いほど、その硬度と耐摩耗性が向上する。適切な範囲内で、焼成サイクルが長いほど、結晶化がより有利になり、高温領域での長時間は原料を十分に溶融して反応させることができ、冷却帯での長サイクルはより多くの結晶が析出することを保証できる。したがって、結晶の析出を促進するために、本発明は、全研磨釉薬処方および施釉方法の処方を調整するだけでなく、結晶の析出の促進と協調するように焼成システムを調整する。焼成サイクルが長いほど、釉薬中の酸化物が十分に溶融し、冷却および温度保持時間が長くなるほど、より多くの結晶が析出する。いくつかの実施形態では、本発明の焼成システムの高温領域時間は、約12~20分であり、例えば、15分であり得る。該高温領域の温度は1210℃~1230℃である。
【0040】
焼成されたセラミックタイルを研磨し、エッジンググレーディングし、完全研磨釉薬セラミックタイルを得る。
【0041】
本発明により製造された完全研磨釉薬セラミックタイルは、高い硬度および良好な耐摩耗性を有する。ここで、モース硬度は5.5~6に達し、耐摩耗性では、明るい色の製品は12,000rpmでグレード5に達する。耐摩耗性の試験方法はGB/T 3810.6-2016に基づいており、摩耗痕は肉眼で観察されるため、比較的言えば、暗いタイルの釉薬表面の摩耗痕がより明確になり、観察しやすくなり、したがって、判断すると、明るい色のタイルは通常、暗い色のタイルよりも耐摩耗性が高くなる。
【0042】
本発明の実施形態
以下は、さらに実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。以下の実施例は、本発明をさらに説明するためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことも理解されるべきである。本発明の上記の内容に従って当業者によってなされたいくつかの本質的でない改善および調整は、本発明の保護範囲に属する。以下の例における特定のプロセスパラメータなどは、適切な範囲の例にすぎない。すなわち、当業者は、本明細書の説明を通じて適切な範囲内で選択を行うことができ、以下に例示する特定の数値に限定されることを意図したものではない。
【0043】
実施例1
(1)素地粉状材料をプレスで乾式プレスして成形した。
(2)乾燥して生地タイルを形成し、乾燥時間は1~1.5h、乾燥後の生地タイルの水分は0.3~0.5wt%であった。
(3)乾燥後の生地タイルの表面に下釉をスプレーし、下釉比重は1.40~1.45g/cm、施釉量は400~550g/mであった。
(4)下釉をスプレーした生地タイルの表面に模様をインクジェット印刷した。
(5)模様をインクジェット印刷した後のタイルの表面に140メッシュのスクリーンで隔離釉薬を印刷し、隔離釉薬の比重は1.30g/cmであり、施釉量は20~30 g/mであった。
(6)隔離釉薬の印刷が完了した後、3回厚くする100メッシュのスクリーン印刷を使用して、1回に完全研磨釉薬し、完全研磨釉薬の比重は1.56g/cm、完全研磨釉薬の施釉量は100g/mであり、前記完全研磨釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:8.5~10.5%、MgO:4.0~6.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:0.5~1.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、ZrO:0.5~2.0%、強熱減量:4.0~6.0%を含む。
(7)完全研磨釉薬を印刷した生地タイルを乾燥させ、乾燥温度は100~150℃であり、乾燥後の生地タイルの水分を0.9wt%以内に制御した。
(8)乾燥した後の生地タイルを焼成し、最高焼成温度は1220℃、焼成サイクルは60分であった。
(9)研磨してエッジンググレーディングした。
【0044】
この実施例で得られた完全研磨釉薬セラミックタイルは、高い硬度(モース硬度5.5~6.0)と12,000rpmでのグレード5の優れた耐摩耗性を持っている。
【0045】
比較例1
(1)素地粉状材料をプレスで乾式プレスして成形した。
(2)乾燥して生地タイルを形成し、乾燥時間は1~1.5h、乾燥後の生地タイルの水分は0.3~0.5wt%であった。
(3)乾燥後の生地タイルの表面に下釉をスプレーし、下釉比重は1.40~1.45g/cm、施釉量は400~550g/mであった。
(4)下釉をスプレーした生地タイルの表面に模様をインクジェット印刷した。
(5)模様をインクジェット印刷した後のタイルの表面に140メッシュのスクリーンで隔離釉薬を印刷し、隔離釉薬の比重は1.30g/cmであり、施釉量は20~30g/mであった。
(6)隔離釉薬の印刷が完了した後、バッチウォーターフォール釉薬の方法で伝統的な完全研磨釉薬を施し、完全研磨釉薬の比重は1.80g/cm、施釉量は450~600 g/mであり、該完全研磨釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:43.0~50.0%、Al:12.0~16.0%、Fe:0.1~0.5%、TiO:0.1~0.3%、CaO:7.0~9.0%、MgO:3.5~4.5%、KO:3.5~4.5%、NaO:1.5~2.5%、ZnO:3.0~5.0%、BaO:7.0~12.0%、強熱減量:6.0~9.0%を含む。
(7)完全研磨釉薬をウォーターフォールした後の生地タイルを乾燥させ、乾燥温度は100~150℃であり、乾燥後の生地タイルの水分を0.9wt%以内に制御した。
(8)乾燥した後の生地タイルを焼成し、最高焼成温度は1220℃、焼成サイクルは60分であった。
(9)研磨してエッジンググレーディングした。
【0046】
焼成した後の完全研磨釉薬表面の相組成は、質量パーセントで、コランダム1~3%、重土長石3~5%、亜灰長石3~5%、ヘマタイト0.5~2%、アモルファスフェーズ85~90%であった。
【0047】
比較例1で得られた完全研磨釉薬セラミックタイルは、モース硬度が4.5であり、2100rpmでグレード3の耐摩耗性を有する。図4図6を比較すると、図6では、研磨された釉薬表面の結晶が乱れており、コランダムの数が少ないため、硬度と耐摩耗性が劣っている。
【0048】
比較例2
(1)素地粉状材料をプレスで乾式プレスして成形した。
(2)乾燥して生地タイルを形成し、乾燥時間は1~1.5h、乾燥後の生地タイルの水分は0.3~0.5wt%であった。
(3)乾燥後の生地タイルの表面に下釉をスプレーし、下釉比重は1.40~1.45g/cm、施釉量は400~550g/mであった。
(4)下釉をスプレーした生地タイルの表面に模様をインクジェット印刷した。
(5)模様をインクジェット印刷した後のタイルの表面に140メッシュのスクリーンで隔離釉薬を印刷し、隔離釉薬の比重は1.30g/cmであり、施釉量は20~30g/mであった。
(6)隔離釉薬の印刷が完了した後、バッチウォーターフォール釉薬の方法で完全研磨釉薬を施し、完全研磨釉薬の比重は1.80g/cm、施釉量は450~600g/mであり、前記完全研磨釉薬の化学組成は、質量パーセントで、SiO:42~50%、Al:21~25%、Fe:0.16~0.46%、TiO:0.10~0.20%、CaO:8.5~10.5%、MgO:4.0~6.0%、KO:0.5~1.5%、NaO:0.5~1.5%、ZnO:4.5~7.5%、BaO:6.0~10.0%、ZrO:0.5~2.0%、強熱減量:4.0~6.0 %を含む。
(7)完全研磨釉薬をウォーターフォールした後の生地タイルを乾燥させ、乾燥温度は100~150℃であり、乾燥後の生地タイルの水分を0.9wt%以内に制御した。
(8)乾燥した後の生地タイルを焼成し、最高焼成温度は1220℃、焼成サイクルは60分であった。
(9)研磨してエッジンググレーディングした。
【0049】
比較例2で得られた完全研磨釉薬セラミックタイルは、釉薬表面の透明性が比較的低下し、細孔が比較的多く、モース硬度が5.0、6000rpmでグレード4の耐摩耗性を有する。得られたセラミックタイルの硬度および耐摩耗性はわずかに悪く、ウォーターフォール研磨釉薬の方法が本発明に適していないことを示した。その主な理由は、ウォーターフォール研磨釉薬の施釉量が多く、釉薬層の厚みが増し、釉薬表面の透明性が低くなり、及び釉薬層が排気されにくくなり、研磨後の細孔が増加する傾向があることであり、これを図7に示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9