(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】組立式コンクリート建物及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
E04B1/348 D
E04B1/348 F
E04B1/348 Q
(21)【出願番号】P 2023129738
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2023-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯▲崎▼ 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】藤田 優真
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-088009(JP,U)
【文献】特開昭49-064231(JP,A)
【文献】実開昭61-197102(JP,U)
【文献】特開2013-142237(JP,A)
【文献】特開2005-273265(JP,A)
【文献】実開平05-081405(JP,U)
【文献】特開2006-037359(JP,A)
【文献】特開平08-177133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 1/32
E04B 1/61
E04H 1/02
E04H 1/04
E04H 9/14
E02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の上面部、底面部及び左右の側面部を有するとともに、前後方向両端面を開口した本体ユニットと、
建物本体の前後方向一方の端面部、上面部、底面部及び左右の側面部を有するとともに、前後方向他方の面を開口した端部ユニットとを備え、
本体ユニットは、上面部及び上側側面部が一体に形成された第1の本体側コンクリート部材と、底面部及び下側側面部が一体に形成された第2の本体側コンクリート部材とからなり、第1及び第2の本体側コンクリート部材は互いに上側及び下側側面部の上下方向の接合端面を突き合わせることにより接合され、
端部ユニットは、上面部、上側端面部及び上側側面部が一体に形成された第1の端部側コンクリート部材と、底面部、下側端面部及び下側側面部が一体に形成された第2の端部側コンクリート部材とからなり、第1及び第2の端部側コンクリート部材は互いに上側端面部及び上側側面部と下側端面部及び下側側面部の上下方向の接合端面を突き合わせることにより接合され、
互いに前後方向の接合端面を突き合わせることにより前後方向に接合された複数の本体ユニットまたは一つの本体ユニットの前後方向少なくとも一方の端部に端部ユニットを接合することにより建物本体を形成した
ことを特徴とす
る組立式コンクリート建物。
【請求項2】
前記建物本体に前後方向のプレストレスを付与する緊張材を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の組立式コンクリート建物。
【請求項3】
前記建物本体を上下方向に複数配列した
ことを特徴とする請求項1記載の組立式コンクリート建物。
【請求項4】
前記各建物本体に上下方向のプレストレスを付与する緊張材を備えた
ことを特徴とする請求項3記載の組立式コンクリート建物。
【請求項5】
前記建物本体を左右方向に複数配列した
ことを特徴とする請求項1記載の組立式コンクリート建物。
【請求項6】
前記建物本体を左右方向及び上下方向にそれぞれ複数ずつ配列し、
上下方向各列の建物本体を支持する複数の梁と、
各梁を支持する支柱とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の組立式コンクリート建物。
【請求項7】
前記第2の本体側コンクリート部材と、第2の本体側コンクリート部材の両端側に接合された一対の第2の端部側コンクリート部材によって形成され、内面が防水加工された湯水貯留槽を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の組立式コンクリート建物。
【請求項8】
前記接合端面の一方に配置される雄側継手と、接合端面の他方に配置され、雄側継手が結合される雌側継手とを備え、
雄側継手は雌側継手側に挿入される継手部材を有し、
雌側継手は、雌側継手に挿入された継手部材に係合することにより継手部材の反挿入方向への移動を規制する係合部材を有する
ことを特徴とする請求項1記載の組立式コンクリート建物。
【請求項9】
前記雄側継手は、継手部材が雌側継手に挿入されている結合状態で継手部材を分離可能に構成されている
ことを特徴とする請求項8記載の組立式コンクリート建物。
【請求項10】
前記雄側継手は、雄側継手から分離され且つ雌側継手に挿入されている既存の継手部材を雄側継手に新たに取り付けられた継手部材によって雌側継手内の奥に押し込みながら新たな継手部材を雌側継手内に挿入して係合部材に係合可能に構成されている
ことを特徴とする請求項9記載の組立式コンクリート建物。
【請求項11】
請求項8記載の組立式コンクリート建物を組み立てる組立方法において、
複数の本体ユニットまたは本体ユニット及び端部ユニットを建物本体の設置箇所に互いに建物本体の前後方向に間隔をおいて配置した後、
各本体ユニットまたは本体ユニット及び端部ユニットを互いに接近する方向に押圧装置で押圧しながら移動させることにより接合端面同士を突き合わせて前記雄側継手と前記雌側継手とを結合する
ことを特徴とする組立式コンクリート建物の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば仮設住宅、多目的シェルター、バンガロー、倉庫、商業施設、簡易住居、学校、病院、オフィスビルなど、主に小規模の建物として使用される組立式コンクリート建物及びその組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自然災害(地震、津波、洪水、台風等)による緊急事態が発生した場合、被災者のために仮設住宅を設置することにより、避難所として一時的な住居を提供する対策がとられる。しかしながら、仮設住宅は一戸建やマンション等の一般住宅と比べて構造が簡素であるため、耐久性、耐火性、遮音性、断熱性に劣るという欠点がある。このため、居住者にとって仮設住宅は必ずしも快適とはいえず、特に長期間居住する被災者にとっては生活面で支障を来すことも少なくない。
【0003】
そこで、コンクリート建築による仮設住宅を設置すれば、耐久性、耐火性、遮音性を向上させることができるが、コンクリート建築は基礎工事、型枠工事、コンクリート打設等の大掛かりな施工が必要になるとともに、建築コストも高くなることから、仮設住宅として用いることは現実的ではない。
【0004】
また、建物本体を複数のコンクリート部材に分割し、各コンクリート部材を工場等で製作するとともに、設置場所に運搬して現場で組み立てることにより、一般のコンクリート建築の工法よりも容易且つ安価に小規模住居を構築するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように工場等で製作したコンクリート部材を用いて建物本体を現場で組み立てるようにしたものでは、コンクリート部材を工場等から現場まで運搬する運搬車両の積荷に高さ制限があるため、一つのコンクリート部材の寸法を大きくすることができず、建物本体の高さ寸法または横幅寸法を小さくせざるを得なかった。このため、コンクリート構造により耐久性や遮音性に優れていても、十分な広さの居住空間を確保することができず、快適性が損なわれるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、設置場所での組立作業を容易且つ迅速に行うことができるとともに、十分な広さの内部空間を確保することのできる組立式コンクリート建物及びその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の組立式コンクリート建物は、前記目的を達成するために、建物本体の上面部、底面部及び左右の側面部を有するとともに、前後方向両端面を開口した本体ユニットと、建物本体の前後方向一方の端面部、上面部、底面部及び左右の側面部を有するとともに、前後方向他方の面を開口した端部ユニットとを備え、本体ユニットは、上面部及び上側側面部が一体に形成された第1の本体側コンクリート部材と、底面部及び下側側面部が一体に形成された第2の本体側コンクリート部材とからなり、第1及び第2の本体側コンクリート部材は互いに上側及び下側側面部の上下方向の接合端面を突き合わせることにより接合され、端部ユニットは、上面部、上側端面部及び上側側面部が一体に形成された第1の端部側コンクリート部材と、底面部、下側端面部及び下側側面部が一体に形成された第2の端部側コンクリート部材とからなり、第1及び第2の端部側コンクリート部材は互いに上側端面部及び上側側面部と下側端面部及び下側側面部の上下方向の接合端面を突き合わせることにより接合され、互いに前後方向の接合端面を突き合わせることにより前後方向に接合された複数の本体ユニットまたは一つの本体ユニットの前後方向少なくとも一方の端部に端部ユニットを接合することにより建物本体を形成している。
【0010】
これにより、予め工場等で製作された第1及び第2の本体側コンクリート部材及び第1及び第2の端部側コンクリート部材を設置場所に搬入し、これらコンクリート部材を現場で接合することにより建物本体が組み立てられる。その際、本体ユニットは互いに建物本体の上下方向略中央で分割された第1及び第2の本体側コンクリート部材からなり、端部ユニットは互いに建物本体の上下方向略中央で分割された第1及び第2の端部側コンクリート部材からなるので、トラック等の運搬車両によって設置場所まで運搬する際、積荷の高さ制限を超えない範囲で一つ当たりのコンクリート部材の高さ寸法を十分に大きくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、設置場所に搬入したコンクリート部材を接合することにより、現場で建物本体を組み立てることができるので、コンクリート構造の建物本体を設置場所に容易且つ迅速に設置することができる。これにより、例えば建物本体を仮設住宅として用いる場合には、耐久性、耐火性、遮音性、断熱性に優れた居住空間を居住者に提供することができ、特に長期間居住する居住者にとっては生活面での支障を少なくすることができる。その際、一つ当たりのコンクリート部材の高さ寸法を十分に大きくすることができるので、現場で組み立てられる建物本体を車両で運搬可能なコンクリート部材の約2倍の高さ寸法にすることができ、十分な広さの居住空間を有する建物本体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す組立式コンクリート建物の斜視図
【
図12】雄側継手及び雌側継手の結合工程を示す側面断面図
【
図13】雄側継手及び雌側継手の結合状態を示す側面断面図
【
図14】第1の本体側コンクリート部材の運搬状態を示す平面図
【
図15】第2の本体側コンクリート部材の運搬状態を示す平面図
【
図26】本発明の第2の実施形態を示す雄側継手及び雌側継手の側面断面図
【
図27】雄側継手及び雌側継手の結合工程を示す平面断面図
【
図28】雄側継手及び雌側継手の結合状態を示す平面断面図
【
図29】雄側継手及び雌側継手の結合解除工程を示す平面断面図
【
図30】雄側継手及び雌側継手の結合解除工程を示す平面断面図
【
図31】本発明の第3の実施形態を示す雄側継手及び雌側継手の結合工程を示す平面断面図
【
図32】雄側継手及び雌側継手の結合状態を示す平面断面図
【
図33】雄側継手及び雌側継手の結合解除工程を示す平面断面図
【
図34】雄側継手及び雌側継手の結合解除工程を示す平面断面図
【
図35】雄側継手及び雌側継手の再結合工程を示す平面断面図
【
図36】雄側継手及び雌側継手の再結合状態を示す平面断面図
【
図37】ボルト及びナットを用いた継手を示す側面断面図
【
図38】ボルト及びナットを用いた継手を示す側面断面図
【
図39】ボルト及びナットを用いた他の継手を示す側面断面図
【
図40】ボルト及びナットを用いた他の継手を示す側面断面図
【
図41】本発明の第4の実施形態を示す組立式コンクリート建物の側面図
【
図42】本発明の第5の実施形態を示す組立式コンクリート建物の正面図
【
図43】第5の実施形態の変形例を示す組立式コンクリート建物の正面図
【
図44】本発明の第6の実施形態を示す組立式コンクリート建物の正面図
【
図45】本発明の第7の実施形態を示す湯水貯留槽の側面図
【
図46】電熱ヒータを用いた湯水貯留槽を示すA-A線矢示方向断面図
【
図47】給湯器を用いた湯水貯留槽を示すA-A線矢示方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図25は本発明の第1の実施形態を示すもので、例えば仮設住宅として用いられる組立式コンクリート建物を示すものである。
【0014】
本実施形態の組立式コンクリート建物は、建物本体1の前後方向中間部に配置される少なくとも一つの本体ユニット10と、建物本体1の前後方向の一端側または両端側に配置される端部ユニット20とを用いて形成される。
【0015】
本体ユニット10は、上面部10a、底面部10b、上側側面部10c及び下側側面部10dを有し、前後方向両端面を開口している。本体ユニット10は、上面部10a及び幅方向両側の上側側面部10cが一体に形成された第1の本体側コンクリート部材11と、底面部10b及び幅方向両側の下側側面部10dが一体に形成された第2の本体側コンクリート部材12とからなり、第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12は、それぞれプレキャストコンクリートによって形成されている。第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12は、上側及び下側側面部10c,10dが本体ユニット10の上下方向略中央位置で分割されるように形成されており、互いに上側及び下側側面部10c,10dの上下方向の端面を突き合わせることにより接合されるようになっている。
【0016】
第1の本体側コンクリート部材11は、上面部10aが上方に向かって凸状をなすアーチ状に形成され、上面部10aの幅方向両側にはそれぞれ直壁状の上側側面部10cが下方に延びるように形成されている。また、第1の本体側コンクリート部材11の上面の幅方向両端には上側側面部10cの上端に沿って前後方向に延びる平面部11aがそれぞれ設けられている。
【0017】
第2の本体側コンクリート部材12は、底面部10bが平坦状に形成され、底面部10bの幅方向両側にはそれぞれ直壁状の下側側面部10dが上方に延びるように形成されている。また、第2の端部側コンクリート部材11の下面の幅方向両端には前後方向に延びる架台13がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
端部ユニット20は、上面部20a、底面部20b、上側側面部20c、下側側面部20d、上側端面部20e及び下側端面部20fを有し、前後方向一方の端面を開口している。端部ユニット20は、上面部20a、幅方向両側の上側側面部20c及び上側端面部20eが一体に形成された第1の端部側コンクリート部材21と、底面部20b、幅方向両側の下側側面部20d及び下側端面部20fが一体に形成された第2の端部側コンクリート部材22とからなり、第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22は、それぞれプレキャストコンクリートによって形成されている。第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22は、上側及び下側側面部20c,20dと上側及び下側端面部20e,20fが端部ユニット20の上下方向略中央位置で分割されるように形成されており、互いに上側及び下側側面部20c,20dと上側及び下側端面部20e,20fの上下方向の端面を突き合わせることにより接合されるようになっている。
【0019】
第1の端部側コンクリート部材21は、上面部20aが上方に向かって凸状をなすアーチ状に形成され、上面部20aの幅方向両側及び端部側にはそれぞれ直壁状の上側側面部20c及び上側端面部20eが下方に延びるように形成されている。また、第1の端部側コンクリート部材21の上面の幅方向両端には上側側面部20cの上端に沿って前後方向に延びる平面部21aがそれぞれ設けられている。
【0020】
第2の端部側コンクリート部材22は、底面部20bが平坦状に形成され、底面部20bの幅方向両側及び端部側にはそれぞれ直壁状の下側側面部20d及び下側端面部20fが上方に延びるように形成されている。また、第2の端部側コンクリート部材21の下面の幅方向両端には前後方向に延びる架台23がそれぞれ取り付けられている。
【0021】
また、第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12と第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22は、一方の接合端面に配置される雄側継手30と他方の接合端面に配置される雌側継手40とを結合することによって接合されるようになっている。以下、
図11乃至
図13では、第1の本体側コンクリート部材11の接合端面に設けられた雄側継手30及び雌側継手40を示す。
【0022】
雄側継手30は、一方の接合端面から突出する棒状の継手部材31と、第1の本体側コンクリート部材11に埋設されたアンカー部材32とからなり、継手部材31はアンカー部材32の一端に取り付けられている。
【0023】
継手部材31は、長手方向先端側に形成された第1の大径部31aと、長手方向中央側に形成された第2の大径部31bと、第1の大径部31aと第2の大径部31cとの間に形成された小径部31cと、長手方向先端側に形成された雄ネジ部31dとを有し、第1及び第2の大径部31a,31bはそれぞれ先端側に向かって徐々に縮径するようにテーパ状に形成されている。
【0024】
アンカー部材32は、接合端面に直交する方向に延びる異形棒鋼等の鉄筋からなり、一端面を接合端面と面一になるように第1の本体側コンクリート部材11に埋設されている。また、アンカー部材32の一端にはネジ孔32aがアンカー部材32と同軸状に設けられ、雄側継手30の雄ネジ部31dをネジ孔32aに螺合することにより、雄側継手30がアンカー部材32に固定されている。
【0025】
雌側継手40は、他方の接合端面に配置される継手板41と、雄側継手30の継手部材31を受容するハウジング42と、雄側継手30の継手部材31に係合する係合部材43と、継手板41の背面側に設けられた一対のアンカープレート44と、各アンカープレート44に接合されたアンカー部材45とからなり、継手板41の前面(外面側)を除く部分が第1の本体側コンクリート部材11に埋設されている。
【0026】
継手板41は、前面が接合端面と面一になるように設けられ、その中央には継手部材31を挿通する挿通孔41aが設けられている。
【0027】
ハウジング42は、一端側が挿通孔41aを含む継手板41の背面の一部を覆うように形成され、その他端側は一端側よりも径が小さく、継手部材32の挿入方向に延びるように形成されている。
【0028】
係合部材43は、径方向に拡径及び縮径可能なリング状の部材からなり、バネ材等により縮径方向に付勢されている。係合部材43は、縮径状態で継手部材31の第1の大径部31aよりも小さく開口しており、第1の大径部31aの圧入によって開口部が径方向に拡大し、第1の大径部31aが挿通されるようになっている。
【0029】
各アンカープレート44は、継手板41の背面側に互いに上下方向に間隔をおいて配置された板状の鋼材からなり、継手板41の背面と垂直になるように継手板41の背面に溶接等により接合されている。
【0030】
各アンカー部材45は、継手板41の背面と直交する方向に延びる異形棒鋼等の鉄筋からなり、一端側をアンカープレート44に溶接等により接合されている。
【0031】
前記構成からなる雄側継手30及び雌側継手40においては、
図12に示すように雄側継手30の継手部材31を雌側継手40に挿入すると、
図13に示すように継手部材31の第1の大径部31aが係合部材43の開口部に圧入される。その際、第1の大径部31aが先端側のテーパ部で係合部材43を押し広げながら係合部材43を乗り越え、係合部材43が継手部材31の小径部31cに係合する。これにより、継手部材31の反挿入方向への移動が第1の大径部31aと係合部材43との係止によって規制され、雄側継手30と雌側継手40とが互いに結合する。
【0032】
また、前記構成からなる建物本体1を組み立てる場合には、
図18及び
図19示す組立装置50が用いられる。尚、同図では二つの本体ユニット10を接合する場合を示す。
【0033】
組立装置50は、接合しようとする各本体ユニット10の前後方向一端側に配置される第1の押圧部材51と、各本体ユニット10の前後方向他端側に配置される第2の押圧部材52と、第1及び第2の押圧部材51,52を連結する幅方向一対の連結部材53と、各連結部材53を介して第1及び第2の押圧部材51,52を互いに接近する方向に移動させる押圧装置としての一対の油圧シリンダ54と、各油圧シリンダ54の荷重を検出する一対のロードセル55とから構成されている。
【0034】
第1及び第2の押圧部材51,52は、各本体ユニット10の幅方向に延びる鋼材からなり、各本体ユニット10の幅寸法よりも長く形成されている。
【0035】
各連結部材53は、第1及び第2の押圧部材51,52の長手方向両端側に配置された棒状の鋼材からなり、一端側が第1の押圧部材51を摺動自在に貫通するとともに、他端側が第2の押圧部材51に連結されている。この場合、各連結部材53と第2の押圧部材51との連結位置は連結部材53の長手方向任意の位置に移動可能になっている。
【0036】
各油圧シリンダ54は、第1の押圧部材51の背面(第2の押圧部材52に対して反対側の面)に連結部材53と同軸状に固定され、連結部材53が油圧シリンダ54及び油圧シリンダ54の駆動ロッド54aを貫通するように設けられている。
【0037】
各ロードセル55は、一端側が油圧シリンダ54の駆動ロッド54aに固定され、その他端側にはロードセル55を貫通する連結部材53の他端側が固定されている。
【0038】
以上のように構成された組立装置50では、各油圧シリンダ54によって第1の押圧部材51を第2の押圧部材52に向かって移動させることにより、
図19に示すように各本体ユニット10が第1及び第2の押圧部材51,52に押圧されながら互いに接近する方向に移動して接合されるようになっている。その際、各ロードセル55によって油圧シリンダ54の荷重が検出されることから、各本体ユニット10同士の接触を各ロードセル55によって検知することができるとともに、各本体ユニット10への押圧力が過剰にならないように管理することができる。
【0039】
尚、本実施形態では、押圧装置として油圧シリンダ54を用いているが、油圧シリンダ以外の駆動機器によって押圧装置を構成することもできる。例えば、周知のチェーンブロックによって第1の押圧部材51と第2の押圧部材52とを連結し、チェーンブロックで第1及び第2の押圧部材51,52を互いに接近する方向に引き寄せることにより、第1及び第2の押圧部材51,52で各本体ユニット10を押圧するようにしてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、ロードセル55によって油圧シリンダ54の荷重を検出するようにしているが、ロードセル55を設けずに、各本体ユニット10同士の接触を目視で確認するようにしてもよい。
【0041】
ここで、
図16乃至
図25を参照し、前記建物本体1の組立工程について説明する。ここでは、二つの本体ユニット10と、その前後方向両端にそれぞれ配置される二つの端部ユニット20を用いて建物本体1を組み立てる場合を示す。
【0042】
まず、予め工場等で製作された第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12と第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22をそれぞれトラック等の運搬車両Sによって設置場所に搬入する。その際、第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12と第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22は、
図14及び
図15に示すように運搬車両Sに積載された状態での路面からの高さHが道路法による高さ制限(例えば、3.8m)を超えない高さになる寸法に形成される。尚、
図14では第1の本体側コンクリート部材11を積載した例を示し、
図15では第2の本体側コンクリート部材12を積載した例を示す。尚、雄側継手30の継手部材31は現場で取り付けられる。
【0043】
次に、
図16に示すようにワイヤWで吊り下げられた第1の本体側コンクリート部材11を図示しないクレーン等によって第2の本体側コンクリート部材12に上方から吊り降ろし、
図17に示すように第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12の接合端面同士を突き合わせる。その際、第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12の一方の接合端面に設けられた雄側継手30の継手部材31が他方の接合端面に設けられた雌側継手40に圧入され、雄側継手30と雌側継手40とが結合して第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12の接合端面同士が接合される。これにより、本体ユニット10が組み立てられる。
【0044】
続いて、前述のようにして二つの本体ユニット10を組み立てた後、
図18及び
図20に示すように各本体ユニット10を互いに前後方向に間隔をおいて配置するとともに、組立装置50の第1及び第2の押圧部材51,52を各本体ユニット10の前後方向両側に配置し、
図19及び
図21に示すように第1及び第2の押圧部材51,52によって各本体ユニット10を互いに接近する方向に押圧しながら移動させて各本体ユニット10の接合端面同士を突き合わせる。その際、各本体ユニット10の一方の接合端面に設けられた雄側継手30の継手部材31が他方の接合端面に設けられた雌側継手40に圧入され、雄側継手30と雌側継手40とが結合して各本体ユニット10の接合端面同士が接合される。この場合、第1の押圧部材51が接触する端面に配置される雄側継手30の継手部材31は、押圧時に第1の押圧部材51と干渉しないように押圧後に取り付けられる。
【0045】
次に、本体ユニット10と同様にして第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22を上下方向に接合することにより一方の端部ユニット20を組み立てた後、
図22に示すように一方の端部ユニット20を一方の本体ユニット10の一端側と間隔をおいて配置するとともに、組立装置50の第1及び第2の押圧部材51,52を端部ユニット20の前後方向一端側及び他方の本体ユニット10の前後方向他端側に配置する。その際、各連結部材53と第2の押圧部材51との連結位置を端部ユニット20及び各本体ユニット10の位置に応じて調整する。次に、
図23に示すように第1及び第2の押圧部材51,52によって一方の端部ユニット20を一方の本体ユニット10に接近する方向に押圧しながら移動させて一方の端部ユニット20と一方の本体ユニット10の接合端面同士を突き合わせる。その際、一方の端部ユニット20に設けられた雄側継手30の継手部材31が一方の本体ユニット10に設けられた雌側継手40に圧入され、雄側継手30と雌側継手40とが結合して一方の端部ユニット20と一方の本体ユニット10の接合端面同士が接合される。
【0046】
続いて、一方の端部ユニット20と同様にして第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22を接合することにより他方の端部ユニット20を組み立てた後、
図24に示すように他方の端部ユニット20を他方の本体ユニット10の他端側と間隔をおいて配置するとともに、組立装置50の第1及び第2の押圧部材51,52を一方の端部ユニット20の前後方向一端側及び他方の端部ユニット20の前後方向他端側に配置する。その際、各連結部材53と第2の押圧部材51との連結位置を端部ユニット20及び各本体ユニット10の位置に応じて調整する。次に、
図25に示すように第1及び第2の押圧部材51,52によって他方の端部ユニット20を他方の本体ユニット10に接近する方向に押圧しながら移動させて他方の端部ユニット20と他方の本体ユニット10の接合端面同士を突き合わせる。その際、他方の本体ユニット10に設けられた雄側継手30の継手部材31が他方の端部ユニット20に設けられた雌側継手40に圧入され、雄側継手30と雌側継手40とが結合して他方の端部ユニット20と他方の本体ユニット10の接合端面同士が接合される。
【0047】
以上のようにして組み立てられた建物本体1は、例えば仮設住宅として使用される。この場合、図示していないが、建物本体1には扉や窓が設けられ、扉や窓はプレキャストコンクリートを製作する際に組み込まれる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、建物本体1の前後方向中間部に配置される本体ユニット10と、建物本体1の前後方向の端部に配置される端部ユニット20とを備え、本体ユニット10の上部側を形成する第1の本体側コンクリート部材11と、本体ユニット10の下部側を形成する第2の本体側コンクリート部材12とを互いに接合することにより本体ユニット10を形成するとともに、端部ユニット20の上部側を形成する第1の端部側コンクリート部材21と、端部ユニット20の下部側を形成する第2の端部側コンクリート部材22とを互いに接合することにより端部ユニット20を形成し、本体ユニット10と端部ユニット20とを互いに接合することにより建物本体1を形成するようにしたので、予め工場等で製作された第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12と第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22を設置場所に搬入し、現場で建物本体1を組み立てることができ、コンクリート構造の建物本体1を設置場所に容易且つ迅速に設置することができる。これにより、例えば建物本体1を仮設住宅として用いる場合には、耐久性、耐火性、遮音性、断熱性に優れた居住空間を居住者に提供することができ、特に長期間居住する居住者にとっては生活面での支障を少なくすることができる。
【0049】
また、本体ユニット10及び端部ユニット20は、互いに建物本体1の上下方向略中央で分割された第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12と第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22からなるので、トラック等の運搬車両Sによって設置場所まで運搬する際、積荷の高さ制限を超えなければ、これらのコンクリート部材一つ当たりの高さ寸法を十分に大きくすることができる。これにより、現場で組み立てられる建物本体1を車両で運搬可能なコンクリート部材の約2倍の高さ寸法にすることができ、十分な広さの居住空間を有する建物本体1を形成することができる。
【0050】
更に、接合端面の一方に配置される雄側継手30と、接合端面の他方に配置される雌側継手40とを備え、雄側継手30は雌側継手40側に挿入される継手部材32を有し、雌側継手40は、雌側継手40に挿入された継手部材32に係合することにより継手部材32の反挿入方向への移動を規制する係合部材43を有しているので、雄側継手30の継手部材32を雌側継手40側に挿入するだけで接合を完了することができる。これにより、人手によるボルトやナットの締結作業等を必要とせず、接合作業を極めて容易に行うことができる。
【0051】
この場合、複数の本体ユニット10または本体ユニット10及び端部ユニット20を建物本体1の設置箇所に互いに建物本体1の前後方向に間隔をおいて配置した後、組立装置50により、各本体ユニット10または本体ユニット10及び端部ユニット20を互いに接近する方向に押圧しながら移動させ、接合端面同士を突き合わせて各継手30,40を接合するようにしたので、重量物である本体ユニット10及び端部ユニット20の接合を容易に行うことができ、現場での組立作業を効率よく行うことができる。
【0052】
尚、前記実施形態の建物本体1は、居室以外にもトイレ、倉庫、機械室、電源室、サウナ室、食堂など、多種多様な目的に使用することができ、これらを任意に組み合わせることにより、必要な機能を備えた施設を構成することができる。また、建物本体1の上面に太陽光パネルを設置すれば、太陽光発電による電力の供給も可能となる。
【0053】
図26乃至
図30は本発明の第2の実施形態を示すものであり、前記雄側継手30に代わる他の構成の雄側継手を用いたものである。尚、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0054】
本実施形態の雄側継手60は、一方の接合端面に埋設される継手板61と、継手板61の外面側から突出する棒状の継手部材62と、継手板61の背面側に設けられた一対のアンカープレート63と、各アンカープレート63に接合されたアンカー部材64とからなり、継手板61の前面(外面側)を除く部分が第1の本体側コンクリート部材11に埋設されている。
【0055】
継手板61は、前面が第1の本体側コンクリート部材11の接合端面と面一になるように設けられ、その中央には継手部材62の基端側を挿通する挿通孔61aが設けられている。
【0056】
継手部材62は、長手方向先端側に形成された第1の大径部62aと、長手方向中央側に形成された第2の大径部62bと、第1の大径部62aと第2の大径部62cとの間に形成された小径部62cと、長手方向先端側に形成された雄ネジ部62dとを有し、第1及び第2の大径部62a,62bはそれぞれ先端側に向かって徐々に縮径するようにテーパ状に形成されている。継手部材62は、雄ネジ部62dを継手板61の挿通孔61aに挿通され、雄ネジ部62dに螺合するナット62eによって継手板61に締結されるようになっている。
【0057】
各アンカープレート63は、継手板61の背面側に互いに上下方向に間隔をおいて配置された板状の鋼材からなり、継手板61の背面と垂直になるように継手板61の背面に溶接等により接合されている。
【0058】
各アンカー部材64は、継手板61の背面と直交する方向に延びる異形棒鋼等の鉄筋からなり、一端側をアンカープレート63に溶接等により接合されている。
【0059】
また、継手板61の背面側には継手部材62へのナット62eの着脱を行うためのボルトボックス65が設けられている。ボルトボックス65は一側面を第1の本体側コンクリート部材11の外面に開口した四角形の凹状空間からなり、コンクリートの型抜きによって形成されている。尚、ボルトボックス65は、例えばアンカー部材64と近接している場合や、水の侵入が懸念される場合、或いはコンクリート型抜きの脱型勾配用スペースを確保することができない場合には、コンクリートに埋設される箱状の鋼材によって形成するようにしてもよい。
【0060】
雌側継手40は、第1の実施形態の雌側継手40と同様、他方の接合端面に配置される継手板41と、雄側継手60の継手部材62を受容するハウジング42と、雄側継手60の継手部材62に係合する係合部材43と、継手板41の背面側に設けられた一対のアンカープレート44と、各アンカープレート44に接合されたアンカー部材45とからなり、継手板41の前面(外面側)を除く部分が第1の本体側コンクリート部材11に埋設されている。尚、これら各部材の構成は第1の実施形態の雌側継手40と同等であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態においては、
図27に示すように雄側継手60の継手部材62を雌側継手40に挿入すると、
図28に示すように継手部材62の第1の大径部62aが係合部材43の開口部に圧入される。その際、第1の大径部62aが先端側のテーパ部で係合部材43を押し広げながら係合部材43を乗り越え、係合部材43が継手部材62の小径部62cに係合する。これにより、継手部材62の反挿入方向への移動が第1の大径部62aと係合部材43との係止によって規制され、雄側継手60と雌側継手40とが互いにロックされる。これにより、第1の実施形態と同様、雄側継手60を雌側継手40に挿入するだけで接合が完了するので、接合端面の接合を容易に行うことができる。
【0062】
また、建物本体1が不要になった場合には、各コンクリート部材11,12,21,22の接合を解除して建物本体1を解体することにより、搬入時と同様、コンクリート部材ごとに運搬車両Sで設置場所から搬出することができる。
【0063】
その際、
図29に示すように雄側継手60のボルトボックス65内で継手部材62の雄ネジ部62dからナット62eを取り外すことにより、雄側継手60と雌側継手40との結合が解除され、
図30に示すように継手部材62を雌側継手40内に残したまま一方の接合端面と他方の接合端面とを分離することができる。
【0064】
これにより、建物本体1の解体作業をナット62eの取り外しのみによって行うことができるので、解体作業を極めて容易に行うことができる。尚、建物本体1を他の場所に移設する場合など、各コンクリート部材11,12,21,22を再利用する場合は、例えば専用の治具等を用いて雌側継手40の係合部材43を径方向に広げて継手部材62を取り出し、継手部材62を雄側継手60に再度取り付けることにより、雄側継手60及び雌側継手40を再利用することができる。
【0065】
図31乃至
図36は本発明の第3の実施形態を示すものであり、前記雌側継手40に代わる他の構成の雌側継手を用いたものである。尚、第1及び第2の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0066】
本実施形態の雌側継手70は、第2の実施形態の雌側継手40と同様、他方の接合端面に配置される継手板71と、雄側継手60の継手部材62を受容するハウジング72と、雄側継手60の継手部材62に係合する係合部材73と、継手板71の背面側に設けられた一対のアンカープレート74と、各アンカープレート74に接合されたアンカー部材75とからなり、継手板71の前面(外面側)を除く部分が第1の本体側コンクリート部材11に埋設されている。尚、これら各部材のうち、ハウジング72以外の構成は第2の実施形態の雌側継手40と同等であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
ハウジング72は、継手部材62を受容する部分が第2の実施形態のハウジング42よりも軸方向に長く形成され、係合部材73に係合する継手部材62に加え、他の係合部材73の継手部材62を受容可能な長さを有している。
【0068】
本実施形態においては、
図31に示すように雄側継手60の継手部材62を雌側継手70に挿入すると、
図32に示すように継手部材62の第1の大径部62aが係合部材73の開口部に圧入される。その際、第1の大径部62aが先端側のテーパ部で係合部材73を押し広げながら係合部材73を乗り越え、係合部材73が継手部材62の小径部62cに係合する。これにより、継手部材62の反挿入方向への移動が第1の大径部62aと係合部材73との係止によって規制され、雄側継手60と雌側継手40とが互いに結合する。これにより、第1の実施形態と同様、雄側継手60を雌側継手70に挿入するだけで接合が完了するので、接合端面の接合を容易に行うことができる。
【0069】
また、建物本体1の解体時に各コンクリート部材(
図33乃至
図36では第1の本体側コンクリート部材11)同士の接合を解除する場合は、
図33に示すように雄側継手60のボルトボックス63f内で継手部材62の雄ネジ部62dからナット62eを取り外すことにより、
図34に示すように雄側継手60と雌側継手70との結合が解除され、継手部材62を雌側継手40内に残したまま一方の接合端面と他方の接合端面とを分離することができる。
【0070】
更に、各コンクリート部材を再利用して建物本体1を組み立てる場合は、
図35に示すように第1の本体側コンクリート部材11の一方の接合端面の雄側継手60に新たな継手部材62を取り付け、
図36に示すように雄側継手60の継手部材62を雌側継手70に挿入する。その際、雌側継手70には既存の継手部材62が挿入されたままになっているが、既存の継手部材62の基端を新たな継手部材62の先端で押圧すると、既存の継手部材62の第2の大径部62bが先端側のテーパ部で係合部材73を押し広げながら係合部材73を乗り越え、新たな継手部材62が既存の継手部材62をハウジング72内の奥に押し込みながら係合部材73に係合する。これにより、既存の継手部材62を雌側継手70から取り出すことなく、雄側継手60を雌側継手70に再度結合することができ、再利用先での建物本体1の組立作業を効率よく行うことができる。
【0071】
尚、前記実施形態では、雄側継手30,60及び雌側継手40,70からなる、いわゆるワンパス継手を用いて各コンクリート部材11,12,21,22を接合するようにしたものを示したが、ボルト及びナットからなる継手で接合するようにしてもよい。また、一部の継手をワンパス継手とし、他の継手にボルト及びナットからなる継手を用いることにより、まずワンパス継手で仮接合した後に、他の箇所をボルト及びナットで接合するようにしてもよい。
【0072】
ボルト及びナットからなる継手としては、
図37及び
図38に示す継手80のように、各コンクリート部材(
図37及び
図38では第1の本体側コンクリート部材11)の接合端面に埋設される継手板81と、継手板81の背面側に設けられた一対のアンカープレート82と、各アンカープレート82に接合されたアンカー部材83とからなり、継手板81の前面(外面側)を除く部分を第1の本体側コンクリート部材11に埋設するとともに、継手板81の背面側に一側面を第1の本体側コンクリート部材11の外面に開口したボルトボックス84を設けたもの用いることができる。
【0073】
この場合、各本体側コンクリート部材11の接合端面の両方に継手80を設け、各継手板81に設けられた挿通孔81aを挿通するボルト85とナット86により各継手板81を締結することにより、接合端面同士が接合される。
【0074】
また、
図39及び
図40に示すように一方の本体側コンクリート部材11の接合端面に継手80を設けるとともに、他方の本体側コンクリート部材11に異形棒鋼等の鉄筋からなるアンカー部材87を埋設し、継手80の継手板81を挿通するボルト84をアンカー部材87の一端面に設けられたネジ孔86aに螺合して継手板81をアンカー部材87に締結することにより、接合端面同士を接合するようにしてもよい。
【0075】
図41は本発明の第4の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0076】
本実施形態の建物本体1は、前後方向に接合された4つの本体ユニット10と、各本体ユニット10の両端に接合された一対の端部ユニット20とから構成され、建物本体1には前後方向のプレストレスを付与する複数の緊張材2が設けられている。
【0077】
緊張材2は前後方向に延びる鋼棒または撚り線等の鋼材からなり、建物本体1の前後方向一端側から他端側に亘って建物本体1を貫通するように設けられている。尚、緊張材2には、耐食性の高いアラミド繊維、炭素繊維等の繊維を用いることも可能である。緊張材2のプレストレスには、例えばポストテンション方式が用いられ、緊張材2は建物本体1の上端側及び下端側に幅方向二箇所ずつ設けられている。尚、緊張材2のプレストレスにはプレテンション方式を用いることも可能であり、緊張材2の配置箇所も本実施形態に限定されず、建物本体1の上端側及び下端側の何れか一方に幅方向一箇所または複数箇所ずつ設けるようにしてもよい。
【0078】
本実施形態では、各本体ユニット10及び各端部ユニット20を接合した建物本体1に前後方向のプレストレスを付与する緊張材2を備えているので、本体ユニット10の数を多くしても建物本体1の強度を十分に保つことができ、大型の建物本体1であっても耐久性を高めることができる。
【0079】
尚、前記実施形態では、緊張材2を建物本体1の上端側及び下端側に幅方向二箇所ずつ設けたものを示したが、建物本体1の上端側または下端側のみに緊張材2を設けるようにしてもよい。
【0080】
図42は本発明の第5の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0081】
本実施形態の建物は、互いに上下に配列された二つの建物本体1から構成され、建物本体1には上下方向のプレストレスを付与する複数の緊張材3が設けられている。
【0082】
各建物本体1の間には、上方の建物本体1を下方の建物本体1と上下方向に間隔をおいて支持する幅方向一対の支持部材4が設けられ、支持部材4は下方の建物本体1の各平面部11aにそれぞれ載置されている。支持部材4は、成形されたコンクリート、鋼材、樹脂等、上下方向の圧縮強度の高い部材からなる。
【0083】
緊張材3は、第4の実施形態と同等の部材からなり、各建物本体1の上下方向一端側から他端側に亘って各建物本体1及び支持部材4を貫通するように設けられている。この場合、緊張材3の下端側は地中に埋設されている。緊張材3のプレストレスには、第4の実施形態と同様、ポストテンション方式が用いられ、緊張材3は各建物本体1の幅方向二箇所に設けられ、図示していないが、前後方向複数箇所にも設けられている。
【0084】
本実施形態では、二つの建物本体1を上下に配列しているので、二階建ての建物を構築することができ、設置場所のスペースが少ない場合でも建物本体1の数を多くすることができ、居住空間を拡大することができる。
【0085】
この場合、各建物本体1に上下方向のプレストレスを付与する緊張材3を備えているので、建物本体1を上下に重ねても横方向に対する安定性を高めることができ、二階建て建物であっても地震等の揺れに対する強度を十分に保つことができる。
【0086】
尚、前記実施形態では、各建物本体1の間に建物本体1の幅方向両端側にそれぞれ配置される一対の支持部材4を設けたものを示したが、
図43に示すように各建物本体1の間の空間を埋めるように形成されたコンクリート、鋼材、樹脂等からなる支持部材5であってもよい。
【0087】
図44は本発明の第6の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0088】
本実施形態の建物は、左右方向及び上下方向にそれぞれ3つずつ配列された建物本体1と、上下方向各列の建物本体1を支持する複数の梁6と、各梁6を支持する左右一対の支柱7とから3階建てに構成されている。
【0089】
各梁6は横方向に延びる鋼材からなり、左右方向に配列された各建物本体1が互いに側面を接するようにして載置されている。また、最上階の各建物本体1の上方にも梁6が配置されている。
【0090】
各支柱7は上下方向に延びる鋼材からなり、左右方向に配列された各建物本体1の側面に接するように配置されている。各支柱7の下端は地中の基礎7aに支持され、各支柱7には各梁6の両端が接合されている。
【0091】
本実施形態では、建物本体1を左右方向及び上下方向にそれぞれ3つずつ配列しているので、各階に3つずつの居室を有する3階建ての建物を構築することができ、例えば集合住宅や商業施設など、規模の大きい建物を構築することができる。
【0092】
この場合、複数の梁6及び支柱7からなる鉄骨構造で各建物本体1を支えるようにしているので、左右方向に配列された複数の建物本体1を上下方向に積み重ねて構成した場合でも、横方向に対する安定性を高めることができ、3階建て以上の建物であっても地震等の揺れに対する強度を十分に保つことができる。
【0093】
尚、前記各実施形態で示した本体ユニット10の前後方向の個数、建物本体1の左右方向の個数、建物本体1の上下方向の個数は一例であり、前記実施形態で示したもの以外の個数の本体ユニット10及び建物本体1を備えた建物を構成することも可能である。
【0094】
図45乃至
図47は本発明の第7の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0095】
本実施形態の建物は、第2の本体側コンクリート部材12と、第2の本体側コンクリート部材12の両端側に接合された一対の第2の端部側コンクリート部材22によって形成された湯水貯留槽90を備えている。
【0096】
湯水貯留槽90は、内面が防水層91によって防水加工されており、防水層91は、例えば遮水性の防水セメントによって形成されている。湯水貯留槽90の底面部10bには排水口92が設けられ、湯水貯留槽90内にはスノコ93が設けられている。
【0097】
湯水貯留槽90は、前記建物本体1に付帯するように設置され、内部に水または温水を投入して貯留することにより、入浴等を行うことができる。この場合、
図46に示すように外部の電源94で駆動される電熱ヒータ95により湯水貯留槽90内の水を加熱するようにしたり、或いは
図47に示すように周知の給湯器96によって生成した温水を湯水貯留槽90内に供給するようにしてもよい。
【0098】
このように、本実施形態では、建物本体1の構成部材として用いられる第2の本体側コンクリート部材12と第2の端部側コンクリート部材22を流用し、上面を開口した湯水貯留槽90を形成するようにしたので、住居としての建物本体1とは別に、風呂やプールとして使用可能な湯水貯留槽90を建物本体1用の部材を用いて現場で製作することができ、入浴や水泳の可能な居住施設を提供することができる。
【0099】
尚、前記各実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記各実施形態に記載されたものに限定されない。また、本発明は、仮設住宅以外にも、多目的シェルター、バンガロー、倉庫、商業施設、簡易住居、学校、病院、オフィスビルなど、各種の建物に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1…建物本体、2,3…緊張材、6…梁、7…支柱、10…本体ユニット、11…第1の本体側コンクリート部材、12…第2の本体側コンクリート部材、20…端部ユニット、21…第1の端部側コンクリート部材、22…第2の本体側コンクリート部材、30…雄側継手、31…継手部材、40…雌側継手、43…係合部材、50…組立装置、60…雄側継手、62…継手部材、70…雌側継手、73…係合部材、90…湯水貯留槽。
【要約】
【課題】設置場所での組立作業を容易且つ迅速に行うことができるとともに、十分な広さの内部空間を確保することのできる組立式コンクリート建物及びその組立方法を提供する。
【解決手段】建物本体1の前後方向中間部に配置される本体ユニット10と、建物本体1の前後方向の端部に配置される端部ユニット20とを備え、本体ユニット10及び端部ユニット20は、互いに建物本体1の上下方向略中央で分割された第1及び第2の本体側コンクリート部材11,12と第1及び第2の端部側コンクリート部材21,22からなるので、トラック等の運搬車両Sによって設置場所まで運搬する際、積荷の高さ制限を超えない範囲でこれらのコンクリート部材一つ当たりの高さ寸法を十分に大きくすることができ、十分な広さの居住空間を有する建物本体1を形成することができる。
【選択図】
図1